弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 (申  立)
 控訴人「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審と
も被控訴人の負担とする。」との判決を求める。
 被控訴人 主文第一項同旨の判決を求める。
 (主張および証拠)
 当事者双方の主張および証拠関係は、左記のとおり補うほか、原判決事実摘示の
とおりであるから、これを引用する。
 控訴人
 一、 別紙(乙)のとおり主張する。
 二、 被控訴人主張二の事実―後記―は認める。
 三、 証拠(省略)
 被控訴人
 一、 別紙(甲)のとおり主張する。
 二、 控訴会社の発行済株式総数三〇、〇〇〇株のうちその約三割に当る九、〇
〇〇株を被控訴人が買受けたものである。
 なお現在控訴会社の発行済株式総数は六〇、〇〇〇株で、資本金は三、〇〇〇万
円である。
 三、 証拠(省略)
         理    由
 一、 当裁判所も、原判決と同様に、被控訴人の本訴請求を理由ありとして認容
すべきものと判断する。その理由は、左記のとおり付加するほか、原判決理由記載
のとおりであるから、これを引用する。
 1 本件株式譲渡契約が既に解除され被控訴人は正当な株主ではない旨の控訴人
の主張について、
 まず右株式譲渡契約につき控訴人主張のような全株式買受の「前提」ないしそれ
ができない場合の解除の「約定」が存していたとの事実については、これにそうか
のような当審での控訴会社代表者Aの尋問の結果(第一、二回)は当審証人B、
C、原審証人Dの各証書および当審での被控訴会社代表者I尋問の結果に対比し
て、にわかに採用することができず、その他、当審証人E、F、Gの各証言、右B
の証言により成立が認められる乙第一、二号証、右Aの供述(第二回)により成立
が認められる乙第四〇、四一号証等控訴人の提出援用にかかる全立証によつても、
これを肯認し難く、他にこれを認めるに足りる証拠がないので、控訴人の前記主張
は右の点で既に前提を欠き採用し難い。
 <要旨>2 次に、被控訴人の本件株式の取得ないし所有が私的独占の禁止及び公
正取引の確保に関する法律(以下、単に独禁法という。)に違反し、被控訴
人は控訴人に対し右株式の取得ないし権利行使を主張しえない旨の控訴人の主張に
ついては、
 (一) 控訴人と被控訴人とはともに―道路運送法にいう―「一般乗用旅客自動
車運送事業」(タクシー営業)を営む会社であることは当事者間に争いがなく、い
わゆるタクシー営業は道路運送法によつて運輸大臣の免許、認可による規制を受け
るものとされ(同法第四条第八条等参照)、独禁法第二一条にいわゆる「その性質
上当然に独占となる事業」に当ると解されるが、同条により、同法の適用が除外さ
れるのは、さような「事業を行う者の行う生産、販売又は供給に関する行為であつ
てその事業に固有のものについて」であるから、しよせん、右、株式の取得ないし
所有については、同法の適用は免れないものというべきである。
 (二) しかし、右株式の取得ないし所有が、独禁法違反のもの(なかんづく、
同法第一〇条第一項後段にいわゆる「不公正な取引方法」によるもの)とは、本件
にあらわれた全資料に徴しても、とうてい、さように認めることはできない。―な
お、不公正な取引方法(昭和二八年九月一日公正取引委員会告示第一一号。以下一
般指定という。)の五、十二等参照。
 けだし、当審証人B、E、F、Gの各証言および当審での控訴会社代表者A(第
一、二回)尋問の結果によつても、被控訴会社の本件株式の取得ないし所有が一般
指定十二に定めるように、控訴会社―被控訴会社がこれと競争関係にあることは認
められるが―の「不利益となる行為をするように」本件株式の譲渡人であるBらを
「不当に(すなわち、公正かつ自由な競争を阻害するおそれのある方法で、以下同
じ)誘引し、そそのかし、または強制すること」によつてなされたものとは認める
に足りず、乙第一号証(後記乙第二、第四〇号証とも)も右Bの証言および弁論の
全趣旨に徴すると、それを認める資料となし難く、他にこれを認めるに足りる資料
なく、却つて、前記甲第九三ないし九七号証、右Bの証言およびこれによつて成立
が認められる乙第二号証、前記Aの供述(第二回)によつて成立が認められる乙第
四〇号証、原審証人D、当審証人C、H(第一、二回)の各証言および当審での被
控訴会社代表者I尋問の結果をあわせると、控訴会社はもと、同会社代表者Aが発
起人代表としてタクシー事業の免許を得て、設立されたものであり、Bはその頃―
昭和三六年―以来右事業経営に協力することとなつたものであるが、本件株式譲渡
人のうち、右BおよびDは、いずれも、かねて取締役に就任していたが、近頃取締
役を退任して監査役に就任させられたことなどもあつて、控訴会社代表者Aととか
く融和を欠く間柄となつていたが、さようないわば内部事情に起因し、Bが、ま
ず、友人や後援者の慫慂勧告もあつて、訴外Cを介して、被控訴人への本件株式譲
渡の折衝に入り、その間Dとも語らい、ともに被控訴会社代表者Iとも面談の上、
本件株式のうち他の譲渡人の株式をもあわせ、(なおそれぞれ転換社債―内訳甲第
九三ないし第九七号証所載―とも)これらを被控訴人に譲渡する旨の話合を遂げた
ものであり、その譲渡株式(総数)の対価は譲渡転換社債の対価をもあわせ右Bら
の申出もあつて、金一五〇〇万円と合意決定され―右被控訴会社代表者は控訴会社
の資産総評価額を金一億九〇〇〇万円と見積り右譲渡価格をもつて投資上の採算に
あうものと考えた。―既に譲渡証を作成して、株券等及び代金の授受をもなしたこ
とが認められ、本件譲渡株式総数は、当時の控訴会社発行済株式総数三〇、〇〇〇
株のうち約三割に当る九〇〇〇株―この額面総額四五〇万円―であり、現在控訴会
社の発行済株式総数は六〇、〇〇〇株で、資本金は三、〇〇〇万円であることは当
事者間に争いがなく【なお右株式数の増加は社債の転換によるものであつて、増加
株式数の中には前記譲渡転換社債―但し転換手続未了―が含まれていることは前記
Aの供述(第二回)によつて明らかである。】、以上の認定事実にさらに前記Iの
供述および弁論の全趣旨をあわせ考えると、本件株式譲渡の前記対価は必ずしも不
当にすなわち、公正かつ自由な競争を阻害するおそれがあるほどに高額のものとも
いえないし、被控訴会社の本件株式の取得ないし所有が、控訴会社のいうように、
「その会社の不利益となる行為をするように」右Bらを「不当に誘引しそそのか
し、または強制すること」によつてなされたものとはいえないことが分明である。
 そして、叙上認定の事実に弁論の全趣旨をあわせると、被控訴会社の本件株式の
取得ないし所有が、その他の「不公正な取引方法」によるものに当らないことはも
とより、これにより独禁法第一〇条前段にいわゆる「一定の取引分野における競争
を実質的に制限することとなる場合」にも当らないことはもちろん、民法第九〇条
にも違反しないことが諒せられる。
 そうすると、控訴人の独禁法違反に関する主張は、その余の点について言及、判
断するまでもなく、すべて採用し難いものというべきである。
 二、 右のとおりであるから、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないの
で、これを棄却することとし、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用
して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 久利馨 裁判官 三和田大士 裁判官 栗山忍)
(別 紙)
<記載内容は末尾1添付>
別 表 (一)
<記載内容は末尾2添付>
別 表 (二)
<記載内容は末尾3添付>
被控訴人の主張(甲)
<記載内容は末尾4添付>

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