弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一年六月に処する。
     押収してある証第二十五号手形割引契約書、同第二十六号担保差入証、
同第二十七号特別定期預金証書各一通はいずれも没収する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人藤井稔提出の控訴趣意書記載の通りであるから、ここ
にこれを引用する。
 控訴趣意第一点法令違反の主張について
 <要旨>しかし原判決の掲げる証拠を綜合すれば、被告人はA銀行B支店の支店長
代理として、同銀行所有の現金保管等の事務に従事中、同判決第一記載の日
時場所において、既に同支店より限度額一杯の貸付を受け、または本来信用資力の
関係等から、正規の手続によつては貸付を受けることの不可能ないしは困難な判示
の者等に対し、いずれも正規の貸付手続を採らず、従つて銀行備付の帳簿等にも何
等の記載をも止めず、その利息の如きも被告人個人の収入として天引処理するな
ど、全く被告人個人の計算において、保管中の行金を擅に貸付けたことを認めるに
十分であつて、弁護人の所論及び引用にかかる証拠を中心に本件記録を精査して見
ても、被告人が同支店の支店長代理たる地位において、同支店の事務処理として、
換言すれば同支店の計算においてその貸付をしたものとは到底認められない。
 して見れば被告人はただ単に他人の事務を処理するに当つてその任務に背いたと
いうのではなく、自己の占有する他人の物を擅に自己の物として他人に貸付け、以
つてこれを横領したものといわねばならない。原判決が右の如き事実関係を業務上
横領罪に問擬したのはまことに正当であつて、所論のような違法はない。
 同第二点事実誤認の主張について
 所論払戻請求書二通が、いずれもC名義を以つて作成せられ行使せられているこ
とは論旨の指摘する通りである。
 しかし原判決の挙示する証拠によれば、右Cなる名義は、笠岡市ab番地に居住
し現に実在するDが租税の点を考慮し、前記支店に対する預金その他の取引に使用
していた別名であつて、同支店においても通用していたものであることが明らかで
ある。従つてすくなくとも右支店との取引関係にあつては、Cなる名義は実在人で
あるDを指すのであつて、虚無人の名義として捨て去るわけにはゆかないものであ
る。原判決が同名義を冒用して所論請求書を作成した被告人の所為を以つて、私文
書偽造罪と認定処断したのは正当であつて、所論のような違法はない。論旨は理由
がない。
 同第三点量刑不当の主張について、
 記録を精査し本件犯行の動機、被害回復の程度、被告人の弁償の努力、改悛の情
その他諸般の情状を斟酌するときは、原判決の科刑は重きに過ぎるものといわねば
ならない。論旨は理由がある。
 よつて刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十一条に従い原判決を破棄し、同法第
四百条但書によつてつぎの通り自判する。
 原判決の認定した事実を法律に照すと、被告人の所為のうち、業務上横領の点は
刑法第二百五十三条に、有印私文書偽造の点は同法第百五十九条第一項に、その行
使の点は同法第百六十一条、第百五十九条第一項に、有価証券偽造の点は同法第百
六十二条第一項に、その行使の点は同法第百六十三条第一項に、各該当し、右各偽
造と各行使の間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、同法第五十四条後段、第
十条によつて、犯情の重い各行使罪の刑に従うべく、これ等の各牽連一罪と前記各
業務上横領の罪とは、同法第四十五条前段の併合罪となるので同法第四十七条第十
条に従い最も重い原判示第三の(一)の(2)の偽造有価証券行使罪の刑に法定の
加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、押収してある主文掲記の
物件はいずれも偽造文書行使罪の組成物件で何人の所有にも属しないので刑法第十
九条第一項第一号、同条第二項によりこれを没収する。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 宮本誉志男 判事 幸田輝治 判事 浅賀栄)

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