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平成30年2月28日判決言渡し名古屋高等裁判所
平成29年(行コ)第3号退去強制令書発付処分等取消請求控訴事件
(原審・名古屋地方裁判所平成28年(行ウ)第45号)
主文
1原判決を取り消す。
2名古屋入国管理局長が平成27年12月17日付けで控訴人
に対してした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく控
訴人の異議の申出には理由がない旨の裁決を取り消す。
3名古屋入国管理局主任審査官が平成27年12月17日付け
で控訴人に対してした退去強制令書発付処分を取り消す。
4訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
主文同旨
2被控訴人
(1)本件控訴を棄却する。
(2)控訴費用は控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,フィリピン共和国(以下「フィリピン」という。)国籍
を有する外国人女性である控訴人が,名古屋入国管理局(以下「名
古屋入管」という。)入国審査官から,出入国管理及び難民認定法
(以下「入管法」という。)24条4号ロ(不法残留)に該当する
等の認定を受けた後,名古屋入管特別審理官から,上記認定に誤り
がない旨の判定を受けたため,入管法49条1項に基づき,法務大
臣に対して異議の申出をしたところ,法務大臣から権限の委任を受
けた名古屋入国管理局長(以下「名古屋入管局長」という。)から,
控訴人の異議の申出には理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」と
いう。)を受け,引き続き,名古屋入管主任審査官から,同日付け
で退去強制令書発付処分(以下「本件処分」という。)を受けたた
め,本件裁決及び本件処分の取消しを求めた事案である。
原審は控訴人の請求をいずれも棄却し,これを不服とする控訴人
が,本件控訴を提起した。
2前提事実,争点及び当事者の主張は,原判決「事実及び理由」第
2の2及び3に記載のとおりであるから,これを引用する。
第3当裁判所の判断
1控訴人の退去強制事由該当性について
前提事実によれば,控訴人は,入管法24条4号ロ(不法残留)
の退去強制事由に該当し,かつ,出国命令対象者(同法24条の3)
に該当しない外国人であることが認められる。
2認定事実
前提事実,甲1ないし3(枝番のあるものは枝番を含むこともあ
る。以下同じ。),5ないし34,乙1ないし20,24,25,当
審における証人Aの証言及び控訴人本人尋問の結果並びに弁論の全
趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(1)控訴人の本国での生活状況等
ア控訴人は,昭和61年(西暦1986年)12月●日に,母
国フィリピンのマニラで出生した外国人女性である。控訴人は,
フィリピンで大学の看護学科を卒業して看護師の資格を取得し,
薬局で短期間働いたこともあった。控訴人には,姉3人,兄1
人,弟1人があり,このうち2番目の姉と3番目の姉は日本に
居住している。(甲1,5,乙11,控訴人本人)
イ控訴人は,日本に住む2番目の姉が妊娠中に夫と死別したこ
とから,産前産後の姉やその子どもの世話をするために,平成
25年5月12日(26歳のとき)に,在留資格を「短期滞在」,
在留期間を「90日」とする上陸許可を受けて,日本に入国し
た。(甲1,5,乙1,11)
(2)控訴人の本邦入国後の生活状況
ア控訴人は,本邦入国後,愛知県岡崎市の2番目の姉の家に同
居して姉の第2子出産を手伝い,平成25年7月23日に在留
期間更新許可を受けた。(甲1,5,乙1,11)
イその後,控訴人は,「短期滞在」の在留資格では就労すること
ができないことを知りつつも,本国の家族に送金するために,
フィリピンパブで働くようになり,客として来店したB(昭和
30年6月●日生の日本人男性)から結婚を申し込まれ,平成
25年9月頃から岡崎市内のB宅で同居するようになり,同年
10月17日にBと婚姻し,同年11月7日に,名古屋入管豊
橋港出張所において,在留資格を「日本人の配偶者等」に変更
することを内容とする本件在留資格変更許可申請をした。(甲5,
乙2,11,13)
ウBとの同居を開始してから,控訴人は,洗濯,掃除,炊事等
の家事を担い,Bから家計を任されるようになった。しかし,
控訴人とBは,金銭の使途をめぐって喧嘩が絶えず,このよう
な生活の中で,Bは,控訴人の荷物を外に放り出し,控訴人を
B宅から追い出した。控訴人は,しばらくの間,Bの気持ちが
変化するのを待っていたが,その兆しが認められなかったため,
やむなく,Bとの協議離婚届にサインし,岐阜県a市のフィリ
ピンパブで働いていた従姉妹を頼ってa市へ転居した。控訴人
とBは平成25年12月4日に協議離婚した。(乙2,控訴人本
人)
エ名古屋入管豊橋港出張所入国審査官は,平成25年12月3
日及び同月13日に,愛知県岡崎市内のB宅宛てに,控訴人に
対し出頭を求める通知書を送付した。しかし,当時,控訴人と
Bとの関係が上記のようなものであったことから,その事実は
控訴人には伝わらず,控訴人が同出張所に出頭することのない
まま,特例期間の満了日である平成26年1月8日が経過し,
結果的に上記申請手続を放置することになり,控訴人は,同月
9日以降不法残留状態になった。(乙3,4,24)
(3)控訴人とAとの同居開始
ア控訴人は,平成25年12月11日頃から,a市のフィリピ
ンパブで働き始め,平成26年1月頃から,同店の客として知
り合ったA(昭和34年7月●日生まれの日本人男性)と交際
するようになり,平成26年3月頃,自己の荷物の多くをa市
のAの自宅(控訴人の肩書住所地。以下「A宅」ともいう。)に
移し,Aとの同居を開始した(ただし,店のママの指示で,仕
事関係の衣装等は店の3階に残していた。)。
イAは,平成23年頃からa市の自宅兼店舗(A宅)で新聞販
売店を経営しており,交際開始当初から控訴人との結婚を考え
ていた。
控訴人は,Aと同居して以降,午後7時から12時までフィ
リピンパブで働いた後,Aの車の迎えで帰宅し,翌朝起床して
から夕方出勤するまでの間は,炊事,掃除,洗濯等の家事をこ
なす傍ら,新聞販売店の店番や,チラシの仕分けの手伝い,集
金した新聞代の受け取り・保管等の手伝いをしていた。2人は,
Aの休日には一緒に旅行したり,互いの家族のことについて話
し合ったりするなどしながら,互いに対する理解を深めていっ
た。
ウ控訴人は,Aとの結婚を考えるようになったが,本国フィリ
ピンでは前夫Bとの婚姻が解消されておらず,控訴人がAと正
式に婚姻するためにはフィリピンにおいて控訴人とBとの婚姻
を無効にする手続をとる必要があり,それには多額の費用がか
かると悩んでいた。
(以上につき,甲5,6,24,25,乙11,13,証人A,
控訴人本人)
(4)控訴人とAの婚姻の約束と婚姻への努力
ア平成26年8月頃,Aは,バイクを運転中に転倒して足を負
傷し,一人で仕事をすることが困難になった時期があった。そ
の間,控訴人は,毎日朝と晩にAの傷の手当をし,深夜,Aの
運転する車の助手席に乗って新聞配達を手伝った。控訴人とA
との絆は一層深まり,Aは控訴人に正式にプロポーズし,両者
は婚姻の約束をした。
イAは,日本に住んでいる控訴人の2番目,3番目の姉たちと
も,A宅に招いて宿泊させ控訴人と一緒に過ごしてもらうなど,
親密に交流しており,控訴人は,姉たちや,3番目の姉の出産
を手伝うために来日した控訴人の母に対し,Aを結婚相手とし
て紹介していた。
ウAは,a市役所で,控訴人との国際結婚の手続を確認した。
すると,両者の婚姻届を受理するには,フィリピン人である控
訴人が独身であることの証明書が必要であり,それを得るため
には,控訴人の本国フィリピンにおいて前夫Bとの裁判上の婚
姻無効手続を経る必要があるとのことであった。そこで,控訴
人とAは,Aの収入を2人の生活費に充てるとともに,控訴人
の収入を生活費に使うことを控えて,フィリピンの弁護士に同
手続を依頼する費用として貯めることを決意した。
エところがこの頃,控訴人が働いていた店の売上げが減少し,
それまで月約18万円程度あった給料が月約12万円程度にま
で激減した。控訴人は,a市内でこれまでのような給料の仕事
を見つけることができなかったため,Aと結婚するために必要
な,フィリピンにおけるBとの婚姻無効の裁判の費用を稼ぐた
めに,やむなく,平成26年11月頃から愛知県b郡c町所在
の自動車部品の組立工場で働くことにした。
オAは,この頃,控訴人から,不法残留となっている事実を告
白され,ショックを受けたが,控訴人を幸せにしてやりたいと
いう思いがゆらぐことはなく,控訴人を守るためにあらゆる困
難に立ち向かう決意をし,控訴人と正式に婚姻するために必要
な,控訴人とBとの婚姻無効の裁判をするための費用を貯める
ことを最優先に生活することを決め,控訴人のc町での出稼ぎ
生活を物心ともに支援し続けた。
カ控訴人は,平日は,岡崎市の姉宅もしくは従姉妹と一緒に借
りたc町内の借上社宅から工場に通勤して夜勤で働き,夜勤明
けの土曜日の朝にAが車で迎えに来てa市のA宅に戻り,週末
はこれまでどおりAと一緒に過ごし,月曜日の午後にAの車で
a市からc町の工場に直接出勤し,金曜日まではc町の工場で
夜勤をするという生活を送り,手取り月約19万円の給料を得
て,フィリピンの家族に送金しながら(控訴人が本邦で働きな
がらフィリピンの家族に送金した金額の総額は合計約100万
円であった。),フィリピンにおけるBとの婚姻無効の裁判のた
めの費用を貯め続けた。
キ控訴人は,フィリピンの両親を通じて,Bとの婚姻無効の裁
判をフィリピンの弁護士に依頼した。ところが,Bが過去にフ
ィリピン人女性と婚姻していたことがあり,その女性と協議離
婚後に控訴人と婚姻したことから,大阪のフィリピン領事館で
Bと控訴人の婚姻証明書が発行されたにもかかわらず,フィリ
ピンではBが二重結婚状態となっているという大きな問題があ
ると言われ,控訴人とBの婚姻無効の裁判が決着する目途は立
たない状態であった。
(以上につき,甲2,5,6,24,25,乙11,13,証人
A,控訴人本人)
(5)本件裁決及び本件処分
控訴人は,このような生活の中で,前記引用した前提事実(3)ア
ないしキのとおり,平成27年11月●日に入管法24条4号ロ
(不法残留)により摘発・逮捕され,同月25日に不起訴処分と
なり名古屋入管に引き渡されて名古屋入管収容場に収容され,名
古屋入管入国審査官から入管法24条4号ロ(不法残留)に該当
する等の認定を受け,名古屋入管特別審理官から上記認定に誤り
がない旨の判定を受けて入管法49条1項に基づく異議の申出を
し,平成27年12月17日付けで,名古屋入管局長から控訴人
の異議の申出には理由がない旨の本件裁決を受け,名古屋入管主
任審査官がこれを控訴人に通知し本件退令を発付する旨の本件処
分をし,名古屋入管入国警備官に本件退令を執行されるという一
連の手続を経て,引き続き名古屋入管収容場に収容された。
(6)本件訴えの提起と仮放免後の生活状況
ア平成28年4月11日,控訴人は,本件訴訟を提起し,本件
裁決及び本件処分の各取消しを求めた。(顕著な事実)
イ同年5月24日,控訴人は,仮放免されて,A宅に戻った。
控訴人は,現在も仮放免中であり,就労することはできないた
め,A宅での家事を担い,日本語の勉強をしながら,周囲の社
会に溶け込んで平穏に生活している。
控訴人は,母国語であるタガログ語の会話及び読み書きに不
自由はない。日本語についても,現在,深い内容のものは別と
して,ある程度できるようになっている。控訴人とAとの会話
は日本語でなされ,2人のコミュニケーションをうまく図るこ
とができるように,Aが,控訴人にとって難しい言葉を易しい
日本語で細かく説明したり,2人がいろいろな例えを使ったり
することによって,互いに理解し合うことができている。
(甲5,6,24,25,乙19,20,証人A,控訴人本人,
弁論の全趣旨)
(7)フィリピンにおける婚姻無効手続の進捗状況
ア控訴人は,a市役所でAとの婚姻届受理のために必要である
と指示された,フィリピンでの裁判によって控訴人とBとの婚
姻無効宣告判決を得るための手続(以下「婚姻無効手続」とい
う。)を早急にとるために,平成28年3月頃,控訴人が不法残
留で摘発・逮捕される前に依頼していた弁護士とは別の弁護士
に対し,同手続を依頼した(甲3の1・2)。
イフィリピンでの裁判による婚姻無効手続は,平成28年12
月9日の予備会議を経て公判期日が重ねられ,平成29年4月
20日の次回期日は同年5月18日午前8時30分と設定され
ていた。しかし,裁判長がセミナー出席中のため,同期日は8
月3日午前8時30分に再設定され,再度,同年9月14日午
前8時30分及び同年10月5日午前8時30分に再設定され
た。
同年9月14日の公判で,原告側証人として出廷した臨床心
理士が,婚姻無効事由である心理的不能(フィリピン家族法3
6条)の存否(Bと控訴人の関係やBの性格等)に関し証言し,
次回公判は予定どおり同年10月5日午前8時30分に設定さ
れた。
ところが,同年10月5日の公判は,同事件の原告である控
訴人が出廷しなかったため,同年11月16日午前8時30分
に再設定することを余儀なくされ,同年11月16日の公判も,
控訴人が再び出廷しなかったため,実質的な審理は行われなか
った。結局,控訴人がフィリピンの法廷に出廷できる見込みが
立たないことから,次回公判期日は決められておらず,フィリ
ピンでの婚姻無効手続は,現在,保留となっている。
(以上につき,甲7ないし23,26ないし32,控訴人本人)
ウそこで,控訴人代理人から,上記フィリピンの弁護士に対し,
今後の手続について問い合わせをしたところ,証拠提出は全て
完了しており,後は,控訴人が出廷しさえすれば,99%の確
率で婚姻無効宣告判決が得られる見込みであるが,そのために
は,法律上,1回は控訴人がフィリピンの法廷に出廷する必要
があるということであった。
控訴人とAは,本人が出廷しなくても婚姻無効宣告判決を得
ることができると聞いて多額の弁護士費用(着手金約60万円)
を支払い,手続の進捗状況を一日千秋の思いで見守りつつ,婚
姻届が受理される日を待ちわびていたことから,この状況に接
して,騙された思いで,非常に落胆したものの,今後とも,両
者の正式な婚姻の実現に向けてあらゆる手段を尽くす覚悟を示
している。
(以上につき,甲33,34,証人A,控訴人本人)
(8)控訴人とAの将来設計等
控訴人とAは,現在31歳と58歳で27年の年齢差があり,
控訴人は,Aとの間の子が授かることを強く願っているが,Aは,
自己の年齢では生まれてくる子を成年に達するまで養育する責任
が持てないと考えて逡巡しており,現在,両者間に子はいない。
Aは,新聞販売店の仕事を控訴人に教えつつ,控訴人のために
できるだけの財産を残してやりたいと考えている。両者の年齢差
からすると,将来的には控訴人がAの介護等を担うようになるこ
とも考えられるが,控訴人は,そうなったときにこそ,これまで
と同様に,控訴人の愛情が伝わるようにAのことを大切にしてい
きたいと考えている。
(以上につき,証人A,控訴人本人)
3本件裁決の違法性について
(1)本件裁決当時の控訴人とAの関係
前記認定のとおり,控訴人とAは,平成26年1月頃から交際を
始め,同年3月からa市のA宅で同居するようになり,同年8月に
は正式に婚姻する約束をし,Aは,直ちにa市役所で控訴人との婚
姻について相談した。そして,a市役所で,2人の婚姻届を受理す
るためには,フィリピン人である控訴人の独身証明書が必要であり,
それを得るためには,控訴人の本国フィリピンで前夫Bとの裁判上
の婚姻無効手続を経る必要があると言われたことから,2人は,正
式に婚姻するために,フィリピンの弁護士に上記手続を依頼するた
めの費用を貯めようと決意した。控訴人が,平日,a市を離れて,
c町の自動車部品工場で働くようになったのは,かかる理由による
ものであり,控訴人とAは,平成26年11月以降も,Aの車によ
る送迎で,土曜日の朝から月曜日の午後までAと一緒に過ごしてお
り,実質的な夫婦関係は続いていた。控訴人は,このような生活を
しながらBとの婚姻無効の手続のための費用を貯め続けていた。
控訴人は,不法残留で摘発・逮捕され,本件裁決及び本件処分を
受ける前に,フィリピンの弁護士に対し,Bとの婚姻無効の手続を
依頼していたが,前夫Bにフィリピン人女性との離婚歴があったた
めに,控訴人とBの婚姻無効手続は進まない状態であった。
本件裁決時において,控訴人とAが正式な婚姻に至ることができ
ていなかったことは,被控訴人主張のとおりであるが,上記のよう
な経緯からすれば,本件裁決時において,控訴人とAとの間には既
に成熟かつ安定した実質的な夫婦関係が成立していたものと認め
られ,これは,控訴人に対する在留特別許可の許否の判断に当たっ
て特に考慮すべき重要な事情であり,本件裁決に当たって十分に斟
酌されるべき事柄であったといえる。
なお,控訴人とAは,本件裁決後,早急に正式な婚姻をするため
に,以前依頼していた弁護士とは別の弁護士にBとの婚姻無効手続
を依頼し,実際に,フィリピンにおいて,裁判上の婚姻無効手続が
進められていた。ところが,控訴人がフィリピンの法廷に出廷する
必要があるとして,現在,手続は保留とされてしまい,フィリピン
本国からの控訴人の独身証明書の発行が望めないため,控訴人とA
の婚姻届は,当審における口頭弁論終結時点においても受理されて
いない。しかし,この事実は上記認定を左右するものではなく,む
しろ,控訴人とAが正式な婚姻の実現に向けてあらゆる努力を尽く
していることの一例を示すものであって,本件裁決時における控訴
人とAとの実質的な夫婦関係が安定かつ成熟したものであったこ
とをより強くうかがわせる事情というべきである。
(2)これに対し,被控訴人は,控訴人の不法残留の態様に酌むべき
事情はなく,控訴人は,短期滞在の資格では稼働することができな
いことを知りながらフィリピンパブで稼働していたほか,不法残留
となった後もフィリピンパブや自動車部品組立工場で稼働し,フィ
リピンで生活する家族に対しこれまでに約100万円を送金して
おり,控訴人のこれら一連の行動は,入管法の目的である出入国の
公正な管理(入管法1条)を害する悪質なものであり,控訴人に対
する在留特別許可の許否の判断に当たって看過し難い消極要素で
あるところ,控訴人はフィリピンで生まれ育ち,看護師の資格を有
するなど十分な稼働能力を有する成人女性で,母国語であるタガロ
グ語の会話や読み書きに支障がなく,26歳で来日するまで我が国
とは特段関わりのなかった者であり,フィリピン国内に両親及びき
ょうだい(1番目の姉と,兄,弟)もいること等から,控訴人を本
国に送還することに特段の支障があるとはいえない等と主張する。
しかし,控訴人は,前夫Bとの喧嘩が絶えず,B宅から追い出さ
れて離婚となり,a市の従姉妹を頼って岡崎市から転居し所在不明
となった際に,入管からの出頭通知がB宅に届いたことを知らない
まま特例期間の満了日が経過したことにより,不法残留となってし
まったものであり,本件在留資格変更許可申請の手続を放置したこ
と自体については,控訴人にも酌むべき事情がある。控訴人が,そ
の後摘発を受けるまで不法残留を継続していたことが消極要素と
して評価されることはやむを得ないが,在留特別許可制度は,退去
強制事由が存在する外国人に対して在留資格を付与する制度であ
るから,これを過度に重視することはできない。また,控訴人が不
法就労をした事実は,在留資格の存在を前提とする入管法70条1
項4号の資格外活動罪には該当しないから,就労の事実そのものを
犯罪視することはできず,控訴人が本邦での日々の糧を得るために
働くこと自体はもとより,控訴人とAとの間に既に実質的な婚姻関
係が成立していたことに照らすと,これを法的に適式なものとする
目的で前夫との婚姻無効手続に要する費用を捻出するために働く
こともまた,人道上非難されるべきことでもない。
控訴人は,平成26年3月からAと同居を開始し,控訴人とAは
同年8月には正式に婚姻することを約束し,それ以降,婚姻届を提
出できるようになるために日々努力を重ねてきたものであり,両者
が婚姻に至ることができなかったのは,控訴人と前夫Bとのフィリ
ピンにおける婚姻無効手続が完了せず,婚姻届提出の際に添付を求
められていた控訴人の独身証明書がフィリピンから発行されない
状態が続いていたからにすぎない。
控訴人がフィリピンに送還されれば,新聞販売店を経営しており
休日が1か月に1日しかないAが,控訴人とフィリピンや第三国で
面会することにも非常な困難を伴うこととなるから,これまで平穏
に続いてきた控訴人とAの成熟かつ安定した実質的な夫婦関係に
重大な不利益を与えることになる。
(3)以上からすれば,本件裁決は,控訴人とAとの間に成熟かつ安
定した実質的な夫婦関係が成立していたことや,控訴人をフィリ
ピンへ帰国させることによる控訴人やAの不利益を無視又は著し
く軽視する一方で,控訴人の不法残留や不法就労をことさら重大
視することによってなされたものというべきであり,その判断の
基礎になる事実に対する評価において明白に合理性を欠くことに
より,その判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことは明
らかであるから,裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法なものと
いうほかない。
よって,控訴人による本件裁決の取消請求には理由がある。
4本件処分の違法性について
本件処分は,名古屋入管局長から本件裁決をした旨の通知を受け
た名古屋入管主任審査官が,入管法49条6項に基づいてしたもの
であるが,上記3において述べたとおり,本件裁決に裁量権の範囲
を逸脱濫用した違法性があって取り消されるべきものである以上,
これを前提とする本件処分も違法というほかなく,その取消請求に
も理由がある。
5結論
以上によれば,控訴人の本件各請求はいずれも理由があるから認
容すべきところ,これと結論の異なる原判決は失当であるから取り
消すこととし,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第4部
裁判長裁判官藤山雅行
裁判官水谷美穂子
裁判官朝日貴浩

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