弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成15年7月15日宣告
平成14年(わ)  第281号
殺人被告事件
主文
被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中150日をその刑に算入する。
理由
(犯罪事実)
被告人は,A及びBと共謀の上,C(当時58歳)を殺害しようと企て,平成1
4年4月8日午前4時50分ころ,北海道亀田郡a町字bc番地d所在のアパート
であるe敷地内において,Aが,同アパートf号室前記C方居間のガラス窓越しに,
殺意をもって,同居間内にちょ立していた同人に向け,所携の自動装てん式けん銃
を用いて銃弾2発を発射し,うち1発を同人の顔面に命中させ,よって,そのころ,
同所において,同人を銃創による頸部血管の破綻に伴う血液吸引により窒息死させ
て殺害した。
(法令の適用)
被告人の判示所為は刑法60条,199条に該当するので,所定刑中無期懲役刑
を選択して被告人を無期懲役刑に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中15
0日をその刑に算入し,訴訟費用については刑事訴訟法181条1項ただし書を適
用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の事情)
本件は,被告人が,元夫である被害者の死亡保険金の取得を目論んで,暴力団組
長であるAに多額の報酬の支払いを約束して被害者の殺害を依頼し,これを承諾し
たAがBを誘い込んで順次共謀を遂げた上,Aらがけん銃という極めて殺傷能力の
高い凶器を用いて被害者を殺害したという確定的殺意に基づく計画的な犯行であり,
動機,態様,結果のいずれの点においても,極めて凶悪かつ重大な殺人の事案であ
る。
被告人は,被害者の生命と引換えに3000万円という高額な保険金の取得を目
論んだものであって,その動機ないし目的は正に言語道断といわざるを得ず,酌む
べきものは全くない。関係証拠によれば,被告人が,Aに被害者殺害を持ち掛けた
当時,被告人が金銭的に窮していたことがうかがわれるばかりか,被告人は,Aに
対し保険金は1000万円であると殊更虚偽の事実を申し向けたことなどに照らせ
ば,被告人が保険金の大半を被告人側で取得することを目論んだのは疑いの余地が
ない(なお,被告人は,当公判廷において,被害者殺害の動機に関し,金に困って
いたAに対する同情心,婚姻中における被害者の行状に対する憎しみや離婚後にお
ける被害者の行動が自己及び家族の生活を脅かすおそれがあるとの不安があったな
どと供述する。上記の自利目的に加え,被告人の述べるところが動機の一部を形成
しているとすれば,本件の動機は被害者の生命と引換えに暴力団組長であるAの組
関係の義理事等に用いる金員を用立てるためでもあったと解さざるを得なくなり,
被告人の罪責が重くなることはあっても軽くなることはあり得ないというべきであ
る。また,後の点は,被告人が自認するように,平成5年3月の離婚後,被害者の
ことを思い出すことは多くなかった,離婚後は被害者からさしたる迷惑を被ってい
なかったというのであるから,このような事情は酌むべきものに値しない。)。
殺害の実行犯であるAは,早朝,被害者の不意を突いて,被害者方居間のガラス
窓越しに至近距離から被害者の顔面目掛けてけん銃の弾丸2発を発射し,うち1発
を被害者の右鼻翼に命中させ死に至らせたのであって,殺害方法自体大胆で残忍か
つ冷酷無比なものである。
被害者は,突然,顔面に銃弾を受け,銃創による頸部血管の破綻により流出した
血液を吸い込んで窒息死するに至ったものであって,関係証拠によれば,銃弾を受
けてから死亡するまでには数十分を要したことが認められるのであり,その死に至
る苦しみは想像を絶するものがある。被害者は殺害される真の理由も分からないま
ま,58歳というなお有意義な人生を歩めるであろう年齢で人生を閉じなければな
らなかったのであり,その無念さは察するに余りある。
住宅街の中でけん銃を使用した凶悪な殺人が行われたという本件が地域社会に与
えた影響も軽視し得ない。
被告人は,自らは手を汚さずに,しかも,自己に疑いが掛からず,確実に,被害
者を殺害し保険金を取得するため,長年弟のように付き合い義理堅く口の堅いと信
頼していたAに対し,同人がかねて金銭に窮していると見て多額の報酬を提示し,
被告人に対する同情心を巧みに煽り,被害者殺害を承諾させた上,被害者の居所や
行動などの情報を提供するとともに,自ら溺死など事故死に見せかけて被害者を殺
害する方法を提案し,さらに連絡用にAにテレホンカードを渡すなど同人との接触
に当たって細心の注意を払うなどした。のみならず,被告人は,被害者をけん銃で
殺害することを了承し,そのとおり被害者の殺害が実行された翌日には保険外交員
に対して保険金請求のために必要な手続きを問い合わせ,約1か月後には保険金の
支払請求をする一方で,被害者が関西の暴力団関係者から付け狙われていた状況に
あったことを利用して,被害者が暴力団関係者に殺害されたかのように見せかける
ため,警察官,保険外交員らに対し,被害者が暴力団関係者から追われていたこと
を吹聴し,自らは無関係を装うなどしていたのである。被告人は被害者殺害ばかり
か保険金取得も含めて完全犯罪を目論んだ本件の首謀者である。本件のごとき凶悪
かつ重大な犯罪を犯したにもかかわらず,被告人には,自らが逮捕されたことやそ
れに伴って家族らに迷惑を掛けるに至ったことへの強い後悔の念こそうかがえるも
のの,被害者を殺害したことに対する真摯な悔悟,反省の情は汲み取れない。
本件の罪質,目的,犯行態様,結果,被告人の地位及び果たした役割などの事情
を総合考慮すれば,被告人の罪責は非常に重いといわざるを得ないのであって,本
件においては有期懲役刑を選択する余地はないというべきである。そして,被告人
に前科前歴がないこと,被告人の身を案ずる家族がいることなど被告人のために酌
むべき諸事情をもってしても,無期懲役刑を減軽するほどのものがあるとはいえな
い。被告人に対しては無期懲役刑をもって臨むのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑無期懲役)
平成15年7月15日
函館地方裁判所刑事部
裁判長裁判官園原敏彦
裁判官伊藤聡
裁判官野村武範

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