弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原告の第一次の訴はこれを却下する。
     予備的請求はこれを棄却する。
     訴訟費用は原告の負担とする。
         事    実
 原告訴訟代理人は
 第一次の請求として、昭和二六年四月二三日行われた岡山県勝田郡a村の村長選
挙に関する訴願に対し同年七月二三日被告のなした訴願棄却の裁決を取り消す、右
村長選挙を無効とする、旨の判決を求め、その請求の原因として、
 一、 原告は前記村長選挙の選挙人であつた。
 二、 右選挙にあたりAと被告補助参加人の両名が立候補したが選挙の結果投票
総数は九五六票であつたところ、村選挙会は有効投票を九四四票、無効投票を一二
票とし、得票四七四票の参加人を当選人とし、得票四七〇票のAは落選した。
 そこで右選挙並に当選の効力に関し選挙人B1より村選挙管理委員会に対し異議
の申立をしたが該申立は棄却されたので更に選挙人B2より被告に対し訴願したこ
とろ、被告は同年七月二三日前記無効投票中の三票をAの有効投票と認定したが結
局訴願棄却の裁決をした。
 三、 しかし右選挙は次の理由により無効である。
 1、 参加人の運動員であつたB3、C外数名は選挙人を威嚇し、投票前日には
同村大字bと大字cの境のいわゆる堀切で焚火をして飲酒しながら夜を徹しで気勢
を昂げ、投票当日には投票所に至る通路の数箇所で投票に赴く選挙人に大声で呼び
掛け、参加人に投票しなければ害悪を加える態度を示して参加人に投票させた。
 2、 前記B3は同村大字dにある公会堂に設けられた第二投票所で、右村長選
拳と同時に行われた村議会議員選挙ではこれに立候補した実兄Dに投票すべきを殊
更にEに投票し、同候補者の氏名を記載した投票用紙を選拳長外投票立会人並に同
所に居合わせた多数の選挙人に示した後投票箱に入れ、実兄の代りにEに投票した
代償として同人に投票すると思はれる選挙人をして村長選拳では参加人に投票させ
た。
 3、 前記第二投票所において文盲の選挙人B4が代理投票した際投票立会人F
1を立ち合わせ同F2が代筆して投票したところ、参加人の参謀格であつたG、参
加人の実兄H、前記B3外弐名は右両投票立会人はA派の者であるからB4の投票
もその意に反してAに投票されているとして右投票所になだれ込み「代筆は誰がし
たのか、お前がしなくてもする者はある。F2もF1も同じ派じや。相談した札じ
やから投票は無効じや」、「お前等はうそを書いたのではないか」等と呶鳴り立
て、投票所外に集合して参加人派の者数十名もこれに呼応して騒ぎ立てゝ、そのた
めに投票は約四十分間中止されたが投票管理者B5が右騒擾を鎮めるため「Aに投
票するつもりであつたが参加人に投票するからB4の投票についてはいわないよう
にしてくれ」と宥めてようやく騒擾者等を退散させた。
 4、 選挙人B6は老齢且つ病気のためF3の助をかつて不在者投票をしたとこ
ろ、前記G等はF3がA派の者であるから右投票はB6の意に反し同候補者に投票
されたものであるとし、第二投票所の投票管理者に対し強硬に交渉した結果投票を
し直すことになり、右選挙人は他人に背負われて第二投投票所に赴き代理投票した
が、同人の自宅より投票所に至る途中及び投票所附近には前記3掲記の四〇名位の
者が居て右B6に対し参加人に投票するよう口々に強請した。
 5、 第二投票所においては後記第二2のとおり七三票もの多数の代理投票がな
されたが、以上はいずれも参加人派の者の暴力的活動に威圧された選挙人が後難を
恐れ、代理投票事由がないのに参加人に投票したことを明かにするため代理投票を
申請し、投票補助者に候補者の氏名を告げるに当りわざわざ参加人の氏名を他に聞
えるように大声で呼称してなしたものであるところ、投票管理者は投票の秘密保持
に反する右行為を放任し、又何等代理投票事由の有無を調査しなかつたものである
から公職選挙法第四六条、第六八条の投票自書の原則に反する投票管理の違法があ
り、その結果投票の秘密は侵され、選挙の自由公正は害された。
 6、 選挙人B5、B7及びその母、B8等は威嚇と強制によりその意に反した
投票をさせられた。
 以上の如き情況手段によつて行われた選挙は選挙人の自由意思により公明適正に
行われることを目的とする選挙の規定に違反し、そのため選挙の結果に異動を及ぼ
す虞があつて無効である。
 第二、 予備的請求として前記村長選挙における当選の効力に関する訴願に対し
同年七月二三日被告のなした訴願棄却の裁決を取り消すとの判決を求め、その請求
の原因として、前記の如く被告は訴願の裁決理由において参加人の得票を四七四
票、Aの得票を四七三票と認定したのでその差は一票となるところ、左記事由によ
り参加人の当選は無効である。
 1 前記第一の三4記載のB6のした不在者投票は有効であつて、後にした代理
投票は多数の強要による真意に反するものであるのみならず自書能力を有し代理投
票事由はなかつたから無効である。ところが前者はAに投票したものであり、後者
は参加人に投票したものであるからこれを両候補者の得票数より加除すればAの得
票は四七四票となり参加人の得票は四七三票となる。
 2 次に第二投票所においては代理投票数は七三票の多きに達しているが、その
うち選挙人B9、B10、B11、B3、B12、B13、B14、B15、B1
6、B17、B18、B19、B20、B21、B22、B23、B24、B2
5、B26、B27、B28、B29、B30、B31、B32、B33、B3
4、B35、B36、B37、B38、B39、B40、B41の三五名は自書能
力があり身体の故障はなかつたのに拘らず代理投票をしたものであるから公職選挙
法第四八条に違反し右代理投票は全部無効である。
 3 選挙人B42は強度の白痴であるのに代理投票しているが素より選挙権行使
の能力のない者のした投票であつて無効である。
 右2、3の投票は何人に対してなされたか帰属不明の潜在無効投票であるから参
加人の得票数より控除さるべきものである。
 4 参加人の有効投票中の「Iジントウ」なる投票は参加人の実兄Hに対してな
されたものであつて、参加人に対してなされたものでないから無効である
 以上いずれの点よりするも参加人の当選は無効である。
 よつて原裁判を取り消し、本件選挙を無効とする判決を、右請求が理由のないと
きは予備的に参加人の当選を無効とする判決を求めるため本訴請求に及ぶ次第であ
ると述べ、
 被告代表者の第一次の請求に対する本案前の答弁に対し、本件の異議申立及び訴
願は主として当選の効力に関してなされているが、開票管理の違法を主張して選挙
の効力に関しても異議を述べている。又選挙訴訟は通常の行政訴訟と異り公共的性
質を有するものであるから、当選の効力について異議決定及び訴願裁決を経ておれ
ば選挙訴訟をも提起し得ると述べ、
 補助参加人の主張しているように無効投票(検丙第一号証)があつたことは認め
るが、本件の選挙と同時に行われた村議会議員選挙の候補者中に左子角一なる者が
いたので、☆「サイム/サコ」☆のサコは右左子角一を指し二人の候補者の氏を記
載した投票で無効である。又2の事実中Aの有効投票中にその主張のような投票の
あつたことはこれを認めるが、Jが一般にJと呼ばれているかどうかは知らぬと述
べた。
 被告代表者は
 第一次の請求につき、本案前の答弁として訴却下の判決を求め、その理由として
本件の村選挙管理委員会の異議決定及び被告委員会の訴願裁決は当選の効力のみに
ついてなされているのであるから、右異議決定及び訴願裁決を経由しない選挙訴訟
を提起することは許されない。よつて訴却下の判決を求めると述べ、本案につき請
求棄却の判決を求め、答弁として、原告主張の事実中第一、の一、二の事実及び三
4の事実中選挙人B6が最初不在者投票をし後に代理投票をしたこと、並に5の事
実中原告主張の数に達する代理投票がなされたことはいずれもこれを認めるがその
余は総て否認する。B6は自宅で自書投票すべきを、原告宅においてその甥である
F3に代筆させた違法があつたので改めて適法な投票をさせたのであつて後の代理
投票は有効である、又代理投票が多数にのぼつたのは選挙人の教育程度が低く、文
盲の者が多かつたのと、身体の故障により代理投票を申請したので、投票管理者に
おいて相当と認めたから代理投票をさせたのであつて全部有効である。投票管理者
は代理投票をさせたのであつて全部有効である。投票管理者は代理投票を申請する
選拳人が果して文盲であるか否かを識別することはできないから、申請のあつた場
合は投票立会人の意見を聞き、相当と判断すればそれで管理義務を尽したものでそ
れ以上調査する義務はなく又それは不可能である。尚身体の故障により自書できな
いときにも代理投票をし得るのであるから、有筆者の代理投票が当然無効とはいわ
れない。以上いずれの点よりするも選挙の管理執行に違法はない。又選挙訴訟にお
ける選挙無効の原因は選挙の規定に違反したことと、その違反のために選拳の結果
に異動を及ぼす虞あることに限定されている。しかるに原告が選挙無効の原因とし
て主張しているところはいずれも選挙の規定に違反するものではないから右主張は
それ自体理由がない。
 次に予備的請求につき、請求棄却の判決を求め、答弁として、原告主張の事実中
冒頭の事実、第二、1の事実中B6が不在者投票をした後代理投票をしたこと、
2、3の事実中原告主張のように代理投票がなされたこと、四の事実中参加人の有
効投票中にその主張のような投票のあつたことはいずれもこれを認めるがその余の
事実は全部これを否認する。右1、2の投票が有効であることは前に述べたところ
である。3のB42は智能の程度は低いが教えられれば投票能力なしとしない。4
の投票は本件選挙の候補者中に参加人の他にI姓の者はいないから勿論参加人の有
効投票である。よつて予備的請求も理由がないと述べた。
 補助参加代理人は
 1 前記無効投票中に「サイム・サコ」(検内第一号証)と記載したものがある
ところ、サコはサマの誤記であり敬称と認むべきものであるからこれは参加人の有
効投票とすべきである。
 2 次に候補者Aの有効投票中の「ヒサ四郎」と記載されたものは同村の被選挙
権を有するJに対する投票であつて無効である。
 但し原告主張の如く村議会議員の候補者に左子角一がいたことは争わないと述べ
た。
 証拠として
 原告代理人は甲第一乃至第三号証、第四号証の一、二、第五乃至第六号証を提出
し、証人F4(第一、二回)、F2(第一、二回)、F1、F3(第一、二回)、
F5、F6、B1、F7、B2、F8、F9、F10、F11、F12、B8、F
13、F14、F15、F16、(第一、二回)F17、B5(第一回の一部)、
F18(一部)、F19、F20の各証言及び原告本人尋問の結果を援用し、検甲
第一号証を提出し、乙号各証並に検丙第一号証の各成立を認め、同第五号証を援用
し、
 被告代表者は乙第一乃至第五号証を提出し、証人B5(第一、二回)F21、F
18、F22(第一、二回)、F23、F24、F25、B6、F26の各証言を
援用し甲第一乃至第三号証、第七号証並に検甲第一号証の各成立を認め、その余の
同号各証につき不知を以て答え、被告補助参加代理人は証人F27、F28の各証
言を援用し検丙第一号証を提出した。
         理    由
 第一次の請求について、
 先づ被告の本案前の答弁について判断する。
 選挙訴訟は選挙の管理執行が決規に違背することを理由として選挙それ自体の効
力を争う訴訟であり、当選訴訟は選挙会が当選人を決定したその決定の効力を争い
当選人と決定せられた者の当選の無効を主張する訴訟であつて両者は性質を異にす
るのみならず、公職選挙法第二〇三条第二項によれば選挙訴訟は当該各選挙管理委
員会の異議申立に対する決定及び訴願に対する裁決を受けた後でなければ提起し得
ないし、又同法第二〇七条第二項によれば当選訴訟にも右第二〇三条第二項の規定
が準用されるから、右各訴法はいずれも異議決定及び訴願裁決を経なければ提起し
得ないのであつて、両者のうち一方について訴願裁決経由の要件を満たしてもそれ
を以て他方についてもその要件を具えたものということはできない。
 原告は当選訴訟についてのみならず選挙訴訟についても異議決定及び訴願裁決を
経由している旨主張し、成立に争のない乙第三号証訴願書中には、開票立会人であ
るGが一旦決定した候補者Aの有効投票中数票の投票を独断で無効としたがそのこ
とは公職選挙法に牴触し、又その際開票管理者及び他の開票立会人は一言も発せず
右Gのなすがままに任せたが、それでは開票管理者の職責を果したものでないから
総体的に投票の審議を求める趣旨の記載があり、成立に争のない乙第四号証(甲第
三号証と同一)裁決書の裁決理由にもこの点に関しては開票手続は適法に行われた
ものであると判断しており、選挙訴訟についても訴願裁決を経ている如く見られる
節もあるが、右乙第三、四号証及び各成立に争のない同第一号証選挙開票再審査請
求書(異議申立書)、同第二号証異議決定書を通読すれば異議申立及び訴願の趣旨
としたところは開票管理者が無効投票と決定した一二票中の「ムサシ」、「ホニゴ
ウ」、「ホンゴタ」、「ヒリシ」の四票は一旦Aの得票と決定されていたものを前
記Gが激烈な言動で右候補者の有効投票の再調査を主張し他の開票立会人等を畏怖
させた上これを無効投票と決定したが、以上四票はAの有効投票とすべきであり従
つてIの当選は無効であるというに帰するから、被告が右のように開票手続にも違
法はなかつたといつたのは、たゞ前記四票が無効とされるにいたつた事情に対する
被告の判断を示したに止りこれを捉えて選挙訴訟についても訴願裁決を経たものと
いうことはできない。
 又原告は当選訴訟について訴願を提起しておれば選挙訴訟も当然提起し得ると主
張するがその理由のないことは前段説示のとおりである。尤も前記選挙法第二〇九
条には当選訴訟においても裁判所が選挙の規定に違反するところありそれが選挙の
結果に異動を及ぼす虞ありと認めるときは選挙の全部又は一部を無効とする判決を
すべきことを規定しているが、その趣旨とするところは選挙に関する訴訟は公益に
関するところ重大であり、選挙が無効であれば当選訴訟は存立の余地がないから裁
判所がたまたまその訴訟における全資料にもとずき当該選挙自体が無効であること
を認めたときは例外的に特に当事者の主張を待たず、すすんで選挙の無効を宣言す
る判決をすべしというにあるのであつて、選挙訴訟の提起について訴願裁決を経由
しなくともよいとの趣旨ではない。本件に顕れた総ての資料によるも選挙を無効と
する理由はない。
 以上により明らかな如く第一次の請求については本案の判断を俟つまでもなく不
適法として訴却下を免れない。
 予備的請求について
 1、 証人B6、F3(第一回但し一部)、F21、F26(一部)、F25、
F18、F27の各証官をあわせ考えれば、選挙人B6は八五歳の高齢で歩行も著
しく困難であつたところ、F3及び原告が不在者投票の手続をしてやるといつたの
でこれに従い該手続を一任し、よつて親族でないF3において医師の診察を受けず
してB6に対する診断書を作成させた上、村選挙管理委員会委員長に申請して投票
用紙及び投票用封筒の交付を受け、これを右B6方に持ち帰つたが、右不在者投票
は同村内のB6の自宅で自ら候補者の氏名を記載してなすべきものであつたのを、
原告宅においてしかも文盲であつたので右F3に候補者の氏名を告げて代筆させ、
果してその告げた候補者の氏名が記載されたかどうかを確めずして投票用紙を投票
用封筒に入れ、所定の記載及び署名も代筆させた上、これを自書したものとしてF
3に頼んで村選挙管理委員会の委員長に提出させたこと、しかるに投票当日右B6
の義妹に当るF26がB6方に行つたとき投票所人場券があり又B6が不在者投票
をしたことを話さなかつたので、B6に投票さすべくB6を他人に背負わせて第二
投票所に向つたがその途中で既に投票したことを聞いたのに、F26は投票所に行
つた際これを誰にも話さなかつたから投票管理者B5はB6は既に投票していると
話したところ、右F26はB6の寝食の世話をしている自分を差し置き他人が勝手
に投票しているのは怪しいといい容易に承服しなかつたので一先ずB6等を帰宅さ
せ、村選挙管理委員会の委員長及び同委員会書記と協議の上如何なる経緯により前
記投票がなされたかを調査したところ前叙の如き事情が判明したが、右投票は自宅
において自書してすべぎを原告宅においてF3が代書しており、しかも果してB6
の告げた候補者に投票されているかどうかの疑もあつたので、その投票が無効とな
つては困ると思い、県選挙管理委員会にその取扱方について指示を仰いだに対し、
投票用紙在中の封筒等がまだ投票管理者に送致されていなかつたのでB6の意向を
確めた上投票させ直しては如何との回答を得たので、再投票させることとしてその
旨B6に伝え、よつて同人はB18に背負われて再び第二投票所に行き代理投票し
たことを認め得べく、証人F3、F26の各供述中右認定に反する部分は信用しな
い。
 右認定事実によれば厨子春歳のした不在者投票は春歳の現在する場所である自宅
でしないで原告宅でしかもF3に投票の記載をさせた無効のものであつて春歳が投
票所でした投票は有効なものといわねばならぬ。
 <要旨>もつとも前記選挙法施行令第六四条によれば自宅において不在者投票をし
ようとする選挙人は投票用紙及び投票用封筒の交付を受けても選挙の期日の
前日までに投票しなかつたときはこれを投票管理者に返し選挙の期日に投票所にお
いて投票し得るが、前認定の如く既に不在者投票したに拘らず選挙の当日これをし
なかつたものとして更に投票し直すことは本来許されないところである。しかし不
在者のした投票は投票箱を閉じるまでは不在者投票管理者より送致を受けた投票管
理者が一時保管しているのであるから容易に識別し得るものであるところ、選挙人
は選挙の期日に投票所において投票するのが原則であるから前段認定の如き真情よ
り不在者投票をしなかつたものとして再投票させてもその間に何等の不正の行われ
たことの認められない本件においてはこれを有効と解するを相当とする。従つて右
不在者投票を無効とする原告の主張は採用しない。
 原告は右B6は自書能力あるに拘らず代理投票したのであるから後の投票は無効
であると主張し、証人F19、F16(第二回)の各証言によれば甲第四号証の
一、二は右B6の自書したものと認められるがその文字は甚だ幼稚拙劣である上誤
字もあり、この程度の能力であるのに前記認定事実でも明かなように、当時B6は
病体で自書する気力もなかつたのであるから、その代理投票は有効であつて、この
点に関する原告の主張も亦理由がない。
 2、 原告は第二投票所でなされた代理投票中三五票の投票は自書能力ある者の
した代理投票で無効であると主張し、成立に争のない乙第五号証及び甲第七号証を
綜合すれば、そのうち特別の事情がなければ自ら候補者の氏名を記載し得た者も存
することを推認し得るが、前記選挙法第四八条第一項によれば、普通の状態では自
書能力があつても投票の際身体の故障により候補者の氏名を自書できないときは、
代理投票事由があることが明らかであるところ、原告提出援用の全証拠によるもそ
の主張の代理投票をした選挙人が当時身体の故障がなく、候補者の氏名を自書し得
たものであることを認めることはできぬから右主張は採用しない。
 3、 B42の投票について、
 選挙人B42が代理投票したことは当事者間に争がないけれども、証人F20、
F2(第二回)の各証言はB5の証言と対照すれば、たやすく信を措けず他に原告
の主張するように同人に選挙権行使の能力がないことを認めるに足る証拠はない。
 4、 「Iジントウ」と記載した投票について、
 参加人の有効投票中に右投票のあることは当事者間に争がない。原告は右投票は
参加人の実兄Hに対する投票であると主張するところ、その氏名を完全に記載して
あるのであれば同人に対する投票と認めるべきであらうが、そうではないから投票
者の意思を推測尊重し候補者中これと氏名の類似する参加人に対する投票と認める
を相当とする。
 5、 「サイム・サコ」と記載した投票について、
 被告及び補助参加人は右投票(検丙第一号証)は参加人に対する投票であると主
張し、無効投票中に右投票のあつたことは当事者間に争ないところであるが、検丙
第一号証の候補者氏名記載欄には中央にサイムの記載があり、その左側にこれと並
んでサコの記載があるところ、右サコのコははつきりとコと読まれこれをマと読む
余地はないから、サマの誤記であり敬称であるとは到底認められない。そして本件
村長選挙と同時に行われた村議会議員選挙の候補者中にKがいたことは当事者間に
争なく、右サコはその候補者を指すものと認められる可能性もあるから、右投票は
二人の候補者の氏名を記載したものでなければ候補者の氏の外に他事を記載したも
のであつていずれにしても無効と認めるを相当とする。
 6、 「ヒサ四郎」と記載した投票について
 被告及び補助参加人は右投票は候補外の実在するJに対する投票であると主張
し、前記Aの有効投票中に右投票のあること及びa村にJなる人物が実在すること
はいずれも当事者間に争のないところであるが、完全にJの氏名を記載したもので
はないからこれを同人に対する投票と認めることはできずかえつて投票者の意思を
推測尊重して候補者中これと名の類似するAに対する投票と認めるを相当とする。
 以上認定の如く原告の予備的請求も亦理由がない。
 よつて訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決
する。
 (裁判長判事 三宅芳郎 判事 森歓一 判事 佐藤清)

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