弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、被告人Aに関する部分を破棄する。
     右被告人に関する本件を東京高等裁判所に差し戻す。
     被告人B、同Cの本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人三名の弁護人満尾叶、同井出甲子太郎の上告趣意第一点および同第二点は、
いずれも、事実誤認の主張、同第三点は、量刑不当の主張であつて、すべて刑訴四
〇五条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても、被告人B、同Cにつき刑訴四一一条を適用すべきものとは
認められない。
 被告人Aにつき職権をもつて調査すると、原判決の維持した第一審判決は、同被
告人が一七回にわたりD商事株式会社の業務に関し同会社の取得した非居住者Eに
対する外貨債権の期限の到来後遅滞なく標準決済方法によりこれを取り立てなかつ
たとの事実を認定し、これに対し、外国為替及び外国貿易管理法(以下「法」とい
う。)二二条三号、七〇条二二号、外国為替管理令(以下「令」という。)一〇条
(第一審判決に「同法施行令一〇条」とあるのは、誤記と認める。)、刑法六〇条
を適用している。しかし、法二二条は、対外支払手段等の集中義務を定めた規定で
あつて、債権の回収義務を定めた規定ではない。また債権の回収義務を定めた法二
六条は、遅滞なく債権を取り立てるべきことを要求しているにとどまり、その際標
準決済方法によるべきことを要求していない(令一〇条一項は、標準決済方法によ
るべきことを定めているが、法二六条は、かような定めをおくことを政令に委任し
ていないから、右は、罰則を伴う義務を定めたものとは解せられない。)。したが
つて、右第一審判決認定の事実は、それのみでは罪とならないものであつて、これ
に対して法二二条等を適用した第一審判決には法令の適用を誤つた違法があり、こ
れを看過した原判決もまた違法であるというべきである。そして、右違法は、判決
に影響を及ぼすこと明らかであり、かつ原判決を破棄しなければ著しく正義に反す
るから、原判決中、同被告人に関する部分は、破棄を免れず、なお、この点に関し
ては、さらに事実を調査する必要があるから、同被告人に関する本件を原裁判所に
差し戻すのが相当である。
 よつて被告人Aについては、刑訴四一一条一号、四一三条本文により、被告人B、
同Cについては、同四一四条、三九六条により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り判決する。
 検察官 上田次郎出席
  昭和三七年七月一三日
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
 裁判長裁判官藤田八郎は出張につき署名押印することができない。
            裁判官    池   田       克

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