弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人和久井宗次、同吉原弘子、同白川一一、同湯川竜の上告理由第一点な
いし第三点について。
 原判決は、旧商標法施行規則(大正一〇年農商務省令第三六号)一五条所定の商
品類別(以下単に商品類別と称する。)の解釈として、硅藻土(珪藻土)はその一
三類に属するものであつて、七〇類には属せず、同一商品が一三類と七〇類の両類
にわたつて存することはありえないと断じたうえ、セメント混合材たる硅藻土は、
原料硅藻土につき数段階の加工を施し、その用途に適切な化学反応を期待しうるよ
う一定の材質にしたものであつて、原料硅藻土とは別異の商品であるとする上告人
の主張に対しては、挙示の証拠に基づき、上告人が現実に本件(イ)号商標を使用
している商品の製造過程も、硅藻土原土から土砂その他の不純物を除去し、天日乾
燥したのちに製粉機にかけて粉状とするものであることは明らかであるから、要す
るに右商品は粉状の硅藻土にほかならないとし、右の事実と乙第七号証の二(吉木
文平著「鉱物工学」の記事)の珪藻土はセメント混合材として使用される旨の記載
とを併せ考えれば、本件確認審判において(イ)号商標を使用する商品として特定
されたものは、右の意味の硅藻土であつて、それは被上告人の登録商標の指定商品
である商品類別一三類に属し、上告人の登録商標の指定商品である七〇類には該当
しない旨を判示したのである。論旨は、それがケイ酸の純化と石灰と化合しやすい
よう調整された商品であるかどうかについて判断しなかつたのを違法というが、叙
上の判示からは、その製造過程は硅藻土のもつ物理的および化学的性質をセメント
混合材として適当に発揮できるようその純度、形状を調整するのにすぎず、その製
品が硅藻土であることには変りはないとする趣旨を明らかに窺うことができるので
あるから、所論の点につき判示するまでもなく、前示判断を下した原判決を瑕疵あ
るものとはなしがたい。
 論旨は、なお本件(イ)号商標使用の商品と天然硅藻土とは全く取引市場を異に
することを挙げるが、そのような事実が原審において具体的に主張されたとは認め
がたく、従つて原判示がそれに触れるところがなかつたとしても、なんら違法は存
しない。また論旨は、右の主張と同じく、(イ)号商標使用の商品と硅藻土とは取
り扱われる営業部門を異にする事実の存在を前提とし、当裁判所昭和三六年六月二
七日第三小法廷判決(民集一五巻六号一七三〇頁)を引用し、取り扱われる営業部
門を異にする商品間には類似性はないと解すべきものとして、前示商品を被上告人
の登録商標の指定商品たる商品類別一三類「硅藻土其の他本類に属する商品一切」
に該当するものと解した原判決を判例違反として非難する。しかし、右裁判例は、
同一または類似の商標を使用するときは同一営業主の製造または販売にかかる商品
と誤認混同される虞れあるものは、旧商標法(大正一〇年法律第九九号)二条一項
九号にいう類似の商品にあたる旨を判示したものにすぎず、本件の場合について適
切でないことは、多言を要しない。
 このほか論旨は、本件(イ)号商標使用の商品は、上告人においてその有する登
録商標の指定商品たる商品類別七〇類該当のセメント急結剤、念結剤として広く販
売してきたものであり、かつそれは硅藻士とは関係のない商品として取引されてい
た事実等を主張したのにかかわらず、原判決がこれについて判断を示さないのを違
法と論ずるが、上告人が自己の登録商標を右商品に使用したからといつて、そのた
めに右商品が商品類別七〇類に該当するものとなるはずはなく、また右商品を世人
に硅藻土とは関係のない製品のように信ぜしめたとしても、そのために商品類別の
規定の解釈が左右されるものでもない。そのいずれもが右商品が商品類別上一三類、
七〇類のいずれに属するかの判定に考慮さるべき事情ではないのであるから、これ
につき原判決が判示を欠くとしても、違法と目することはできない。
 論旨はいずれも理由がない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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