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平成28年(わ)第204号逮捕,暴力行為等処罰に関する法律違反,監禁,傷
害致死被告事件
平成28年12月15日千葉地方裁判所刑事第2部判決
主文
被告人両名をそれぞれ懲役8年に処する。
被告人両名に対し,未決勾留日数中各230日を,それぞれそ
の刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人Aは,職場の後輩である被害者を自宅に住まわせていたところ,幼い時か
ら被害者を知っていた被告人Bは,平成27年10月頃,被告人Aが被害者を監禁
している旨の話を聞き,友人らとともに被害者を助け出そうとしたが,それが誤解
だったと分かり,以後,被告人A方を出た被害者を一時自宅に住まわせる一方,同
被告人と親交を深めていた。
第1被告人両名は,同年12月15日,被害者の金銭問題等について被害者と話
し合い,今後真面目に働いて給料から金を払うことなどを約束させたが,翌1
6日,被害者が仕事に遅刻したなどとして憤慨し,制裁を加えようと考え,
1共謀の上,被告人Bが,同日午後9時40分頃,千葉県勝浦市内の船揚場に
おいて,座らせた被害者(当時17歳)の両親指を結束バンドで後ろ手に緊縛
した上,同結束バンドと同所に設置された船舶係留用の金輪とを別の結束バン
ドで縛り,被害者を同所に約5分間放置し,もって不法に人を逮捕し,
2友人ないし知人であるC及びDと共同して,同日午後9時45分頃から翌1
7日午前零時頃までの間,前記船揚場付近の路上において,被害者に対し,被
告人Aがその胸部を足で蹴って同所から約1.2メートル下方の草地に転落さ
せるなどし,被告人Bが小便をかけるなどし,Cがその顔面を平手で1回叩
き,Dがその頭部を拳骨で1回殴り,もって数人共同して暴行を加えた。
第2被告人両名は,平成28年1月3日から翌4日にかけての夜,被害者がうそ
をついて遊びの誘いを断ったとして憤慨し,制裁を加えようと考え,
1Cと共謀の上,同月4日午前3時30分頃,千葉県我孫子市内の路上におい
て,Cが被害者の胸倉をつかむなどして,被害者を同所にとめた普通乗用自動
車(トヨタヴォクシー。以下「本件車両」という。)の2列目座席に乗り込
ませ,その脇にCが,助手席に被告人Bがそれぞれ乗った状態で,被告人Aが
同車を発進させて,同日午前3時35分頃,同県印西市内の手賀川河川敷付近
まで走行させ,次いで,いったん降車した被害者に対し,同日午前3時55分
頃,同所において,「次は橋から飛べ。」「お前,濡れてるから,トランクな。」
などと申し向けて,被害者を本件車両の荷台部分(3列目座席を収納してでき
た部分)に乗り込ませ,C及び被告人Bが2列目座席及び助手席に乗った状態
で,被告人Aが同車を発進させて,同日午前4時16分頃,同県我孫子市内の
アパート敷地内まで走行させ,これらの間被害者が本件車両内から出ることを
著しく困難にし,もって不法に人を監禁し,
2Cと共同して,同日午前3時35分頃から同日午前3時55分頃までの間,
前記手賀川河川敷付近において,被害者に対し,被告人Bがその顔面付近等を
殴り,前記手賀川に投げ落とすなどし,被告人Aが同川に投げ落とし,その臀
部を足で蹴るなどし,Cがその臀部を足で1回蹴り,もって数人共同して暴行
を加えた。
第3被告人両名は,被害者が,かねて,次にうそをついたら橋から川に飛び込む
旨述べていたとして,これを実行させようと考え,平成28年1月4日午前5
時38分頃,千葉県柏市内の浅間自転車道橋(以下「本件橋」という。)中央付
近において,被害者に対し,約5.8メートル下方の手賀川(川幅約130.
8メートル,水深約2.7メートル)に飛び込むようこもごも求めるなどして
いたところ,被害者が,衣服を脱いで欄干を乗り越えるなどしたものの,一向
に自ら飛び込まないことに業を煮やし,同日午前5時50分過ぎ頃から同日午
前6時9分頃までの間,同所において,被害者がその意思によらずに手賀川に
落下するかもしれないことを認識しながら,それならそれでも構わないと考え,
暗黙のうちにその旨の意思を相通じ,被告人Bが,欄干外側のコンクリート製
土台部分にしゃがみ込んで両手で欄干の格子部分をつかんでいた被害者に対し,
「お前,CとE,友達だよな。」「そしたら手つなげるよな。」などと言い,
被害者に,順次,その手を離させて,その右手とCの右手を,その左手と被害
者の友人であるEの左手をそれぞれ互いに握らせた後,被告人Aが,Eの左腕
を強く1回押し,その衝撃等により,E及びCにそれぞれ握った手を離させて,
被害者を手賀川に落下させ,これら一連の暴行により,その頃,同所において,
被害者を溺死させた。
(証拠の標目)

(事実認定の補足説明)
1争点
被告人Bに関する主な争点は,①判示第2の1の監禁について,被告人Bに故
意があったかどうか,②判示第3の傷害致死について,被告人Bが,本件橋の中
央付近の欄干外側のコンクリート部分にしゃがみ込んで両手で欄干をつかんだ被
害者に,順次,その手を離して,その右手とCの右手を,その左手とEの左手を
それぞれ互いに握らせたことが,暴行に当たるかどうか,また,被告人Bに,検
察官が主張するような「暴行を含む何らかの方法で被害者を川に落とすこと」に
ついての認識・認容や被告人Aとの共謀があったかどうか,である。
2争点①について
関係証拠によれば,以下の事実が認められ,これらについては,被告人Bの弁
護人も特に争っていない。
ア被告人両名は,平成28年1月4日(以下,特記なき限り同日。)午前3時過ぎ
頃,Cらとともに,被告人A運転の本件車両で被害者方先路上へ赴き,被害者が
うそをついて遊びの誘いを断ったとして,車内から,運転席付近にいた被害者に
対し,「お前,口で言っても分かんねえから体で示すしかねえよな。」「とりあえず
乗れよ。」などと繰り返し言ったが,被害者は,本件車両に乗ることを断り続けた。
イそのため,被告人Bが,午前3時30分頃,Cに対し,被害者を本件車両に乗
せるよう言うと,Cは,降車して被害者に近付き,その胸倉をつかむなどして,
被害者を本件車両の2列目座席に乗り込ませた。そして,被害者の両脇にC及び
被告人Bの妻が,助手席に被告人Bがそれぞれ乗った状態で,被告人Aが本件車
両を発進させて,午前3時35分頃,判示第2の1の手賀川河川敷付近まで走行
させた。
ウ被告人両名は,同所に到着後,Cと共同して,午前3時55分頃までの間,被
害者に対して暴行を加えた。
エその後,被告人両名は,川に落とされるなどして濡れた状態の被害者に対し,
「次は橋から飛べ。」などと言い,その前に入浴させるため,被害者を本件車両の
荷台部分に乗り込ませ,C,被告人Bらが2列目座席及び助手席に乗った状態で,
被告人Aが本件車両を発進させて,午前4時16分頃,同被告人方アパートの敷
地内まで走行させた。
以上の事実関係に加え,その約半月前に被害者が被告人両名らから判示第1の
各被害を受けていたことにも照らせば,被告人両名らの前記⑴イ,エの行為が,
被害者が走行中の本件車両内から出ることを物理的・心理的に著しく困難にする
ものであったことは明らかである。そして,被告人B自身,Cに対して被害者を
本件車両に乗せるよう言う直前まで,本件車両に乗ることを断り続けた被害者の
言動を十分認識していたのであるし,前記河川敷付近では,被告人Aらと共同し
て,約20分間にわたり,被害者に暴行を加えたのであるから,これらの事情も
考え合わせると,被告人Bには,前記⑴イ,エの行為当時,被害者が本件車両内
から出ることを著しく困難にしてその行動の自由を奪うことについての認識・認
容があったものと強く推認できる。
これに対し,被告人Bは,「Cに頼めば,被害者が抵抗することなく,自らの意
思で乗車すると思っていた。」旨供述するが,一方で,被害者が乗車を渋るのは手
を出されるのを恐れたためと思った旨も述べているところ,そのような被害者が
Cから言われただけで自発的,任意的に乗車すると思った理由については説得的
な説明をしておらず,その供述は不自然,不合理といわざるを得ない。その他,
被告人BのCへの指示が前記の程度にとどまることなど,同被告人の弁護人が
種々指摘する点も,前記推認に影響を及ぼすものとはいえない。
そうすると,前記推認に合理的な疑いを差し挟む余地はなく,
事実関係によれば,被告人両名及びCとの間で被害者に対する監禁の共謀が存し
たこともまた優に認められるから,監禁罪の成立を免れない(なお,検察官は,
被告人Bの妻との間でも監禁の共謀が存した旨主張するが,前記⑴イ,エの際,
同人が被告人両名と意思を相通じていたことや,自分の罪を犯したといえる程度
に重要な役割を果たしたことを認めるに足りる証拠は見当たらないから,判示第
2の1の限度で認定した。)。
3争点②について
関係証拠によれば,判示第3のとおりの経緯や場所等の状況のほか,以下の事
実が認められ,これらについては,被告人Bの弁護人も特に争っていない。
ア被告人両名は,午前5時38分頃から,本件橋中央付近で,被害者に対し,川
に飛び込むよう繰り返し言い続けたが,被害者は,被告人Bから言われてハーフ
パンツ以外の衣服を脱ぎ,自ら欄干を乗り越えてその外側コンクリート部分に立
つなどしたものの,川に飛び込むことができないまま,時間が経過した。
イ被告人Bは,午前5時50分過ぎ頃,欄干外側のコンクリート製土台部分(幅
約41センチメートル)にしゃがみ込んで両手で欄干の格子部分(幅約6センチ
メートル,厚さ約1.5センチメートル)をつかんでいた被害者に対し,「お前,
CとE,友達だよな。」「そしたら手つなげるよな。」などと言い,被害者に,
順次,その手を離させて,その右手とCの右手を,その左手とEの左手をそれぞ
れ互いに握らせた。その握り方は,いずれの手についても,欄干の隙間越しに,
手の平同士を握り合うという形であった。
ウそのような状態が少なくとも1分間程度続いた後,被告人Aが,Eの左腕を強
く1回押したところ,直後にEの手が,次いでCの手が順次離れて,被害者は川
に落下した(なお,被告人Aは,その暴行態様や被害者が落下するまでの間隔等
について,これと異なる供述をしている。しかし,前記認定に沿うEの供述は,
具体的で不自然な点はなく,Cや被告人Bの各供述とも整合的であるから,信用
できるのに対し,被告人Aの前記供述は,それ自体相当に不自然である上,Cら
の供述にも反し,信用性が乏しいから,Eの供述の信用性を揺るがすものとはい
えない。)。
エ被告人Bは,被害者が川に落下したのを見ても,被告人Aに対して前記ウの暴
行に及んだことを非難することはなく,同被告人とともに,いったんは浮かび上
がった被害者に対し,岸まで泳ぐよう声をかけるなどした。
以上の事実関係を前提に各争点について検討する。
アまず,被告人B
しても,非常に不安定なものといえ,常識的に考えれば,被害者,C,Eのいず
れかが体力的限界に達するなどした場合,被害者が川に落下しかねない現実的危
険性のあるものであったと評価できる。加えて,被告人両名と被害者との関係や
判示第1及び第2の各犯行を含む従前の経緯にも照らせば,被害者は被告人両名
の指示に従わざるを得ない状況にあったといえるから,被告人Bの前記行為は,
被害者の行為を利用した暴行に当たると解するのが相当である。
イ次に,前記アの事情に照らすと,被告人Bは,被害者がその意思によらずに川
に落下するかもしれないことを認識しながら,それならそれでも構わないと考え,
かかる
のような態度も,この推認を裏付けるものといえる。
これに対し,被告人Bは,「『お前,飛ぶのとぶっ飛ばされるのどっちがいい
んだよ。』と聞くと,被害者が『ぶっ飛ばされる方がいいです。』と答えたため,
被害者が自ら川に飛び込むことはないだろうと思い,今日はこれで終わりにしよ
うと思った。凍っている欄干を握らせているより人の手を握らせた方が安全だと
考え,被害者を引き上げるつもりでCとEの手を握らせた。」旨供述している。
しかし,その供述は,被害者に本件橋の内側に自ら戻るよう言うなど,より自然
で容易な方法によらずに,あえて前記のような指示をしたとする点,それにもか
かわらず被害者やCらにその趣旨を伝えることなく,かえって「お前,CとE,
友達だよな。」「そしたら手つなげるよな。」という,そのような趣旨には解し
難い発言をしている点,被害者とC
見ても,より引き上げやすい握り方をさせることなく,そのままの状態で放置し
た点などにおいてあまりに不自然,不合理というほかなく,他の関係者の供述と
も整合的でないから,信用できない。
また,被告人Bの弁護人は,被害者をその意思によらずに川に落下させること
について,同被告人にその認識がなかったことを示す事情として,それに向けら
れた同被告人の言動がないことを指摘するが,この事情は,被害者がその意思に
よらずに川に落下するかもしれないことの認識・認容とは両立し得るから,前記
推認に影響を及ぼすものとはいえない。
以上によれば,前記推認に合理的な疑いを差し挟む余地はない。
ウさらに,被告人Aについても,被告人Bの前記暴行を認識しながら,これに異
を唱えることなく,むしろ,被害者が川に落下する危険性をより高める
の暴行に及んでいるのであるから,被告人Bが前記暴行を加えた時点で,同被告
人と同様の
実関係も総合考慮すれば,その時点で,被告人両名の間に,自分たちの何らかの
暴行により,被害者がその意思によらずに川に落下する事態が発生するかもしれ
ないが,それならそれでも構わないとの考えについて,黙示の意思の連絡があっ
たこともまた強く推認できる。なお,被告人Bの弁護人は,被告人Aの暴行は,
被告人Bを含め,誰もが予想し得なったものであると主張するが,被告人両名
は,こもごも被害者に対して川に飛び込むよう繰り返し言い続けていたところ,
そのような状況で,被告人Bがまず被害者に対して川に落下しかねない現実的危
険性のある行為に及んだ以上,被告人Aがこれに触発されて同種の暴行に及ぶ事
後,被告人Bが被告人Aの暴行を非難することがなかったことも,それを裏付け
る事情といえるし,現に被告人Aの行った暴行は,被告人Bの行った暴行と比較
して異質なものでもないから,採用できない。
以上によれば,被告人B
暴行に当たり,その時点で,同被告人には,被害者がその意思によらずに川に落
下するかもしれないことの認識・認容があった上,被告人Aとの間に,その旨の
黙示の意思連絡もあったと認められるから,自らが実行した前記暴行はもとよ
り,被告人A
れるものとなり,結局,傷害致死罪の成立を免れない。
4なお,被告人Bの弁護人は,同被告人の供述に基づき,判示第2の2の共同暴
行について,同被告人は,被害者に対し,差し出した手を引っ込めるなどして川
に落とすなどの暴行は加えたが,川に投げ落とす暴行は加えていない旨主張す
る。
しかし,その現場にいたCは,被告人Bが被害者をつかんで川に投げ入れるの
を目撃したことを明確に供述しているところ,その内容に不自然な点はない上,
被告人Aの供述によれば,同現場は,月明かりや電灯があり,真っ暗というわけ
ではなかったというのであるから,被告人Bによる前記のような暴行という単純
かつ特徴的な動作を見誤ったとも考えにくい。また,Cは,明瞭に認識,記憶し
ている事柄とそうでない事柄とを明確に区別して供述するなど,その供述態度は
真摯なものであると認められるし,既に自己の刑事処分が確定しているのである
から,責任軽減の目的で殊更に虚偽供述をすることも考え難い。のみならず,同
じくその現場にいたEの供述内容・経過をみても,そこにCの供述の信用性を疑
わせる事情は存しない。以上によれば,Cの前記供述は信用できるというべきで
ある。
これに対し,被告人Bの供述は,既に検討したところも含め,全体的に,自己
の責任軽減につながり得る事項に関して不自然,不合理な点が散見されるから,
他の関係者の供述等に反する部分の信用性は低いといわざるを得ない。
そこで,信用できるCの供述等により判示第2の2の事実を認定した。
(法令の適用)
被告人両名について
罰条
判示第1の1の行為刑法60条,220条
判示第1の2,第2の2の各行為いずれも暴力行為等処罰に関する法
律1条(刑法208条)
判示第2の1の行為包括して刑法60条,220条
判示第3の行為刑法60条,205条
刑種の選択
判示第1の2,第2の2の各罪いずれも懲役刑
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10
条(最も重い判示第3の罪の刑に法
定の加重)
未決勾留日数の算入刑法21条
訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書
(量刑の理由)
判示第3の傷害致死は,真冬の明け方に,被害者を約5.8メートルの高さから
幅130メートル余の川の中央付近に落下させるというもので,溺死等を生じさせ
る危険性の高い無謀なものというほかない。具体的に加えた暴行が判示の程度にと
どまることや,被告人両名が,被害者が川に落下するかもしれないことの認識・認
容は有していたものの,確実に落下させようとしたわけではないこと,犯行後,被
害者が溺れている様子を見るや,救助しようとしている点からみても,死亡はもと
より,傷害の結果が生じる事態も現実的には想定していなかった節がうかがわれる
ことなどの事情に照らすと,後記の類型(その中には,凶器を用いて繰り返し暴行
を振るうなど,より生命や身体への危険性の高い態様の犯罪が少なからず含まれて
いると考えられる。)の中で,特に残酷で悪質な犯行とまでいうことはできない
が,他方,被害者に苛烈な暴行を加えるなどして抵抗できない状態にした上,橋か
ら川に飛び込めとの理不尽な要求をし,恐怖で飛び込むことのできない被害者に対
して暴行に及んだという,判示第1及び第2の各犯行を含む一連の経緯にも鑑みる
と,同類型の中で軽い部類に属する犯行ともいえない。
被告人両名は,いずれの犯行においても,対等な立場で,それぞれ同様の危険
性,悪質性を有する実行行為を積極的に行っており,果たした役割の大きさに大き
な違いはない(被告人Aの弁護人は,判示第3の犯行につき,同被告人の果たした
役割は補助的なものにすぎなかった旨主張するが,それが前提とする同被告人の供
述が信用し難いことは,前記認定のとおりであり,採用できない。)。
一連の犯行は,被害者が仕事に遅刻したり,うそをついたりしたことが契機とな
っており,被告人両名が憤慨したことには理解し得る面があるが,制裁のために暴
行等に及ぶというのはあまりにも短絡的である上,その態様等に照らしても,自ら
の怒りを晴らし,あるいは暴行等自体を楽しむ気持ちが大きかったことが明らかで
あるから,この点を有利にしん酌するにも限度がある。そうすると,被告人両名の
責任非難の程度が軽いとはいえない。
以上を総合すると,被告人両名の犯情の重さは,いずれも,知人・友人・勤務先
関係者に対する傷害致死の実行共同正犯1件という類型の中で,おおむね中程度に
位置するものと評価できる。
その上で,被告人両名が反省の態度を示していることなどの事情も考慮して,主
文のとおり量刑した。
(求刑被告人両名につき,いずれも懲役12年)
(裁判長裁判官松本圭史裁判官辛島靖崇裁判官津田葉月)

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