弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件抗告を棄却する。
     抗告費用は抗告人の負担とする。
         理    由
 本件抗告理由は、抗告代理人作成の抗告理由書ならびに抗告理由追加申立と題す
る書面記載のとおりである。
 右抗告理由第一点について。
 (一) 抵当権設定の合意はその意思表示によつて抵当権なる物権を創設し、そ
の物権の効力として当然登記請求権が発生することは所論のとおりであるけれど
も、右の権利を抵当権設定者以外の第三者に対抗するためには抵当権の登記を経由
することを必要とすることは民法第一七七条の明定するところであつて、この理は
本件の<要旨>ように抵当権の設定が和解調書によつてなされた場合においても異る
ところがない。されば、右和解調書によつて抵当権を取得しその後にその仮
登記をしただけで未だ本登記を経由していない抗告人の被承継人食糧配給公団は、
右抵当権の目的物たる不動産を右抵当権の設定前に買受け右抵当権設定後抵当権の
仮登記前に所有権移転請求権保全の仮登記をし次いでその本登記を経由した相手方
Aに対し、右抵当権を以て対抗することができない筋合であつて、この場合相手方
Aを以て民事訴訟法第二〇一条にいわゆる承継人に該当するものということはでき
ない。けだし同条が既判力の承継を認めた理由は当事者間の一定の民事紛争を国家
が当該当事者関与のうえ一定の手続のもとに審理裁判し法定の手続を尽した以上原
則として同一の当事者間においてふたたび同一の紛争を許さないとともに、その実
体関係を承継したものの間において紛争は同一であるからふたたび之を争うことを
許さない趣旨に出ずるものであり、右は法秩序の安定をよめる民事訴訟の目的に照
し当然である。したがつて紛争後の新たなる実体関係に対してはその既判力なきこ
ともまた明白であり、判決の場合においてはその既判力の基準時点は事実審の最終
口頭弁論の時であり、本件は裁判上の和解であるから右和解成立の時たる昭和二六
年六月五日当時の法律状態即ち、食糧配給公団と、株式会社木下商店及び亡B間に
於て、右公団のためB所有の第一物件目録記載の不動産につき本件申立抵当権を設
定し、右権利の存することが確定せられたにとどまるのであつて大阪法務局よりの
通知ならびに送付の登記簿謄本によれば、右抵当権は未登記のままなるところ、そ
の後Aが、昭和二六年三月二〇日の売買予約を原因として同年七月一〇日移転請求
権保全の仮登記手続をなしついで昭和二七年二月一八日に昭和二六年三月二五日の
売買を原因として所有権移転の本登記ありたること明かとなつたのであり、本件競
売申立の登記は昭和二七年一月七日になされ、競売開始決定の右会社及Bに対する
送達は、同月十八日であるから右の場合、Aは、右物件の取得により抵当権者たる
食糧配給公団に対し登記の欠缺を主張しうべき正当なる利益を有する第三者にあた
り、登記を信頼して取引をなしたるものとして、公団の抵当権設定を否認しうべき
実体法上の地位を取得したものである。そしてかかる民法第一七七条による、対抗
の関係は、右抵当権が未登記であるにかかわらず所有権取得を原因として前記和解
成立後の所有権移転の登記のなされた事実による新なる効果であつて、当事者間に
於ける抵当権設定にかかわらず第三者保護のために事実抵当権の設定があつてもと
くにこれを主張しえざるものとしたのであり抵当権を主張するためには民法第一七
七条の規定上とくに、登記を具備することを要することとなるのである。民事訴訟
法第二〇一条は、権利関係確定以後の新なる実体法上の効力関係に及ぶものではな
く、このことは既判力の本質からいつて当然である。そして抵当権の真実の存在と
対抗関係とは別であるから本件の場合においては承継さるべき抵当権の存在がAに
対抗しえない結果真実抵当権が存在していてもこれが承継をAに主張することがで
きないこととなるのである。
 (二) また、所論は競売裁判所がAを承継人として競売期日を指定したと主張
するけれども、同人を単に所有者として手続を続行したにすぎないことは記録上明
白であり、右Aが原判示第一物件目録記載の不動産の所有権を以てなにびとにも対
抗し得るものであり申立人は右Aに対し本件抵当権を対抗できないことが登記官吏
の通知によつて判明し、右は競売開始決定以前たる昭和二六年七月一〇日の仮登記
の順位をもつて所有権取得を対抗しうることとなるのであるから競売開始を妨ぐべ
き事由にあたるというべく、右のような手続続行上の障碍が消滅したとの証明が補
正命令期間内になされない以上、裁判所は職権を以て手続を取消すべきものである
ことは任意競売について準用すべき民事訴訟法第六五三条の規定するところである
から、右の取消は必ずしも所論のように補正命令期間満了の日にすることを要する
ものでもなく右決定が職権でなしうるものである以上必ずしも右Aからその旨の申
立あることを要するものでもなく、また口頭弁論を経ることを要するいわれもな
い。
 同抗告理由第二点及び抗告理由追加申立書記載の抗告理由について。
 (一) 原決定が第二物件目録記載の不動産に対する競売手続を中止したのは、
所論のように非訟事件手続法第一九条によつたものではなく、民事訴訟法第二二一
条を準用したものと解せられる。そもそも、競売法による競売に関しては性質の許
す限り民事訴訟法の規定を準用すべきものであつて、民事訴訟法第二二一条を本件
において準用したのは相当である。そうして同法条による中止の決定は裁判所がそ
の具体的裁量により当事者に不定期間の故障に因り訴訟手続を続行することができ
ない事情ありと認めるかぎり職権を以てなし得るものであつて、必ずしも申立ある
ことを必要とするものではない。
 (二) 所論に競売法においては債務者の知ることを要する執行行為に該当する
ものがなく同法第二七条第二項による競売期日の通知は民事訴訟法第五四二条の準
用によつてその必要がないとしうけれども、競売法に因る不動産の競売に付ては強
制競売の場合と異り特に競売法第二七条第二項に競売の期日は利害関係人に之を通
知するを要する旨規定しておつて民事訴訟法第五四二条の如きはもとより右通知に
準用さるべきものではない(昭和七年(ク)第八八八号同年七月二二日大審院決定
参照)。
 しかして、民訴訟法第五五二条第二項及び第五六条等の規定が競売法による競売
についても準用さるべきことは右(一)において説明したとおりであり、もつとも
民事訴訟法第五七条によれば法定代理権の消滅は相手方に之を通知したければその
効がないと規定しており本件においては株式会木下商店代表者としてのBの死亡は
同会社から申立人もしくは食糧配給公団に通知せられたとは本件記録により之を認
められないけれども、同条は死亡による法定代理権消滅の場合には適用ないものと
解すべきであるから会社代表権の場合も同様である。しかしまた、競売法による競
売においてほ当事者が死亡しても手続は中町しないこと所論のとおりであるけれど
も、中断しないからこそ手続上当然要すべき決定の送達通知受領等相手方のため訴
訟上の権利を行使すべきものを定めしめるため特別代理人選任あるまで手続を中止
するを相当とする。
 これを要するに、原決定は結局相当であつて、本件抗告はその理由がないから、
民事訴訟法第四一四条第三八四条第八九条第九五条を適用して主文のように決定す
る。
 (裁判長判事 沢栄三 判事 井関照夫 判事 坂口公夫)

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