弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、第一審判決を取消す。
     被上告人の請求を棄却する。
     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人高橋一次の上告理由について。
 原判決およびその是認した第一審判決の確定した事実によると、(一)被上告人
は、昭和二九年八月頃その義弟に当る訴外Dから本件不動産を担保として金融の便
をはかつてもらいたいとの申出を受けてこれを承諾し、当時本件不動産は未登記で
あつたのでまず保存登記をなすことおよび訴外E相互銀行との間に右不動産に根抵
当権を設定すること等についての一切の代理権を右Dに授与したので、Dは右委任
に基づき、右保存登記、根抵当権設定契約の締結ならびにその登記手続をし、同銀
行から金員を借受けた。(二)その後、昭和三〇年一一月頃同銀行から右Dの借金
の不払を理由として抵当権の実行を迫つて来たので、被上告人は、右債務を弁済し
てその根抵当権設定登記の抹消をなすべきこととし、前同様右Dをしてこれを抹消
手続に当らせ、必要に応じて被上告人の印鑑を被上告人の妻女を通じて使用させる
外、印鑑証明書をも交付して右抹消登記手続の一切を委任したところ、Dは不法に
も、右抵当権を抹消するとともにさらに上告人から本件不動産を担保として金員を
借受けようと企て、前記のように被上告人から交付を受けていた被上告人の印鑑証
明書に基いて被上告人名義の印顆を偽造しこれを使用して本件不動産についての被
上告人名義の根抵当権設定登記手続申請委任状を作成し、これを右印鑑証明書、被
上告人から交付を受けていた本件不動産の権利証等とともに上告人に提出し、被上
告人の代理人と称して金借を申入れた。(三)そこで上告人は、右Dに本件不動産
につき根抵当権設定契約の締結ならびに右登記手続申請について代理権があるもの
と信じてこれに金員を貸与し、その結果被上告人不知の間に、被上告人名義をもつ
て、上告人との間に本件不動産に対し、昭和三〇年一二月五日本件根抵当権の設定
契約が締結され、翌六日前記銀行の根抵当権設定登記の抹消手続がされるとともに、
同日本件根抵当権設定登記を経由するに至つた。(四)そして、右はDがその代理
権限を踰越してなしたものであるが、本件根抵当権設定契約の成立した当時、Dが
前記銀行のために根抵当権設定登記の抹消登記手続をなすにつき被上告人から与え
られていた代理権は消滅していなかつたものであるから、上告人において、右Dに
代理権があるものと信ずるについては正当な理由があつたというのである。
 ところで、不動産登記法が登記申請についての形式的要件(特に、同法三五条一
項五号)を定めている主要な目的は、登記義務者の意思に基づかない虚偽の登記申
請による登記がなされることにより、実体上の権利関係と登記上の権利関係との不
合致を生ずることを防止し、公示制度としての登記の目的を達成せしめようとする
にあることはいうまでもない。しかるに、本件においては、前記のように、本件根
抵当権設定契約は表見代理の規定により実体上の効力を生じているから、本件根抵
当権設定登記は、実体上の権利関係に符合するものであるからその登記手続の申請
行為の登記所に対する関係はしばらくおき、登記権利者が登記義務者に登記申請行
為をなすべく請求(登記請求権の行使)する場合は、被上告人はこれに応じて登記
に協力すべき義務あるを免れないものと解すべく、この関係は私法関係であること
は論なきところである。それ故、原判決が確定した前記事実関係の下においては、
訴外Dがなした本件根抵当権設定登記申請行為については、それが前記のごとく私
法関係と解せられる以上、これに民法一一〇条による表見代理の成立を認めて妨げ
ないものであり、従つて、たとえ被上告人に登記意思がなかつたとしても、表見代
理人たるDに登記意思が存した以上、右登記に伴う私法上の法律効果は被上告人に
帰属するものというべきであり、従つて、一般偽造文書による登記の場合とは異り、
被上告人は、すでになされた本件根抵当権設定登記の無効を主張してその抹消を請
求することは許されないものと解するを相当とする。
 しかるに原判決は、登記申請行為は国家機関たる登記所を相手方としてなす一種
の公法上の行為であつて、単純な私法上の法律行為ではないから、これに対し民法
の表見代理に関する規定は適用または準用せられない旨を判示し、これを前提とし
て右登記を無効とし、被上告人の請求を認容したものであつて、この点において原
判決は法令の解釈適用を誤つたものというべく、論旨は理由あるに帰し、原判決は、
他の上告論旨に対する判断をまつまでもなく、破棄を免れない。そして、原判決お
よびその是認した第一審判決の確定した事実によれば、被上告人の請求はこれを棄
却するのが相当であり、当審において裁判をなすに適していると認められるから、
民訴四〇八条、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁判官全員の一致で
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七

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