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平成29年9月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成27年(行ウ)第331号観察処分期間更新決定取消請求事件
平成28年(行ウ)第526号訴えの追加的変更申立て事件
口頭弁論終結の日平成29年6月1日
判決
主文
1原告の主位的請求を棄却する。
2処分行政庁が,平成27年1月23日付けで,麻原彰晃こと松本智津夫を教
祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,
これを実現することを目的とし,
同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体に対してした,
別紙2決定目録記載の決定のうち,原告を対象とした部分を取り消す。
3訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1章事案の概要等
第1請求
1主位的請求(平成28年(行ウ)第526号)
処分行政庁が,平成27年1月23日付けでした別紙2決定目録記載の決定
が,原告に対しては存在しないことを確認する。
2予備的請求(平成27年(行ウ)第331号)
主文と同旨
第2事案の概要
本件は,処分行政庁が,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法
律(以下「団体規制法」という。
)5条4項及び5項に基づき,
「麻原彰晃こと
松本智津夫(以下「松本」という。
)を教祖・創始者とするオウム真理教の教
義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に
従う者によって構成される団体」
(以下「本団体」という。
)に対してした,公
安調査庁長官の観察に付する処分の期間更新等に係る決定について,原告が,
主位的に同決定が原告に対して存在しないことの確認を求め,予備的に同決定
のうち原告を対象とした部分の取消しを求める事案である。
1団体規制法の定め
本件に関係する団体規制法の定めは,別紙3「団体規制法の定め」に記載の
とおりである(なお,同別紙において定義した略語は,本文においても用いる
こととする。


2前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。

当事者等
ア昭和59年2月頃,松本を教祖・創始者として,
「オウム神仙の会」が活
動を開始し,昭和62年7月頃,
「オウム真理教」にその名称を変更し,松
本の説くオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的として活
動が続けられ,平成元年8月25日,東京都知事から宗教法人法に基づく
規則の認証を受けて,
同月29日,
宗教法人
「オウム真理教」
(代表役員
「松
本智津夫」
)の設立の登記がされた(乙E1,2,5,6)

イオウム真理教の構成員は,平成6年6月27日,長野県松本市内で,サ
リンを散布し,8名を殺害するとともに,143名にサリン中毒症の傷害
を負わせる事件(以下「松本サリン事件」という。
)を敢行した(乙E1)

オウム真理教の構成員は,平成7年3月20日,東京都内を走行中の地
下鉄電車5本内でサリンを散布し,12名を殺害するとともに,3000
名を超える者にサリン中毒症の傷害を負わせる事件(以下「地下鉄サリン
事件」といい,松本サリン事件と併せて「両サリン事件」という。
)を敢行
した(乙E1)

ウオウム真理教は,平成7年12月19日,宗教法人法に基づく解散命令
が確定し,その清算手続中の平成8年3月28日,破産宣告がされた(乙
E1,5)

公安調査庁長官は,同年7月11日,処分行政庁に対し,オウム真理教
について破防法7条の解散指定処分の請求
(以下
「解散指定請求」
という。

をしたが,処分行政庁は,平成9年1月31日,同請求を棄却する旨の決
定をした(乙E9)

エ平成12年2月4日,
「宗教団体・アレフ」が正式に発足された旨及びP
1がその代表者に就任した旨公表された(乙E8)

「宗教団体・アレフ」は,平成15年2月6日には,その名称を「宗教
団体アーレフ」に変更し,さらに,平成20年5月20日には,その名称
を「Aleph」に変更した(乙B3の86。以下,同団体を,その名称
変更の前後を問わず,
「Aleph」という。


P2は,
平成19年5月7日,
原告の設立を発表した
(乙B3の110,
E24)

観察処分及びその期間更新決定の経緯
ア公安調査庁長官は,平成11年12月27日,処分行政庁に対し,別紙
2決定目録記載被請求団体につき,団体規制法5条の観察処分の請
求をし,処分行政庁は,平成12年1月28日,本団体を,3年間,公安
調査庁長官の観察に付するとともに,団体規制法5条2項5号及び3項6
(以下,この決定を「本件観察処分」という。
)をし,同月31日,本団体
の代理人にその旨通知し,同年2月1日,官報に公示した(乙A9)

被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信
徒の位階
被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,
契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名
イ処分行政庁は,平成15年1月23日,本団体に対する観察処分の期間
を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を「第1回更新決定」とい
う。
)し,Alephの代理人にその旨通知し,同月29日,官報に公示し
た。なお,同決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条
3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,
ならないものと
された(乙A11)

ウ処分行政庁は,平成18年1月23日,本団体に対する観察処分の期間
を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を「第2回更新決定」とい
う。
)し,Alephの代理人にその旨通知し,同月30日,官報に公示し
た。同決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6
号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,上記ア
のとされた(乙A13)

被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項に
おいて同じ。
)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実
質的に被請求団体が経営しているものをいう。
)の種類及び概要,
事業所の
名称及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに
各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記
録で作成されている場合には,当該電磁的記録媒体の保管場所)
エ処分行政庁は,平成21年1月23日,本団体に対する観察処分の期間
を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を「第3回更新決定」とい
う。
)し,原告の代理人及びAlephの代理人にその旨それぞれ通知し,
同月30日,官報に公示した。なお,同決定においては,団体規制法5条
5項において準用する同条3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必
要と認める事項」として,第2回更新決定と同様の事項を公安調査庁長官
に報告しなければならないものとされた(乙A15)

同決定の決定書において,被請求団体の表示欄には「主たる事務所の所
在地」として,①埼玉県越谷市ad丁目e番f号「▲▲▲マンション」g
号室,
②東京都世田谷区bh丁目i番j号
「▲▲ハイム」
k階が表示され,
「主幹者」としてP3,P4及びP2の3名が表示されている(なお,本
件観察処分,第1回更新決定及び第2回更新決定の各決定書においては,
「主たる事務所の所在地」として1つの所在地のみが表示され,
「主幹者」
として1名の氏名のみが表示されている。乙A9,11,13,15)

オ処分行政庁は,平成24年1月23日,本団体に対する観察処分の期間
を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を「第4回更新決定」とい
う。
)し,原告の代理人及びAlephの代理人にその旨それぞれ通知し,
同月30日,官報に公示した。なお,同決定においては,団体規制法5条
5項において準用する同条3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必
要と認める事項」として,第2回更新決定と同様の事項を公安調査庁長官
に報告しなければならないものとされた(乙A17)

同決定の決定書において,被請求団体の表示欄には「主たる事務所の所
在地」として,①埼玉県越谷市ad丁目e番f号「▲▲▲マンション」g
号室,②東京都世田谷区bh丁目i番j号「▲▲ハイム」l号室が表示さ
れ,
「主幹者」
としてP5,
P6びP2の3名が表示されている
(乙A17)

カ処分行政庁は,平成27年1月23日,本団体に対する観察処分の期間
を,3年間,更新する旨決定(別紙2決定目録記載の決定。以下,この決
定を「本件更新決定」という。
)し,原告の代理人及びAlephの代理人
にその旨それぞれ通知し,同月30日,官報に公示した。なお,本件更新
決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規
定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,第2回更新決
定と同様の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないものとされた
(乙A5)

同決定の決定書において,被請求団体の表示欄には「主たる事務所の所
在地」として第4回更新決定と同様の表示がされ,
「主幹者」としてP7,
P8及びP2の3名が表示されている(乙A5)

キ原告は,平成27年6月1日,本件訴えを提起した(顕著な事実)

第3争点
1原告が,本件更新決定の対象団体に含まれるか。原告とAlephが一つの
団体であるか。
【争点1】
2松本が,両サリン事件の首謀者であり,本件更新決定時も本団体の活動に影
響力を有しているか(団体規制法5条1項1号該当性)

【争点2】
3P9が本団体の構成員であるか(団体規制法5条1項2号該当性)
。P2が,
両サリン事件当時,オウム真理教の役員であったか,また,本件更新決定時,
本団体の役員であるか(団体規制法5条1項3号該当性)

【争点3】
4本団体が殺人を暗示的に勧める綱領を保持しているか(団体規制法5条1項
4号該当性)

【争点4】
5本団体に,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実が
あるか(団体規制法5条1項5号該当性)

【争点5】
6本団体に,引き続き活動状況を継続して明らかにする必要があるか(団体規
制法5条4項該当性。

【争点6】
第2章当事者の主張
第1争点1(原告とAlephの関係等)について
【被告の主張】
1本団体の「団体」該当性等
団体規制法が,団体の活動として行われた無差別大量殺人行為に着目し
て規制対象としたのは,①無差別大量殺人行為の結果,両サリン事件の
ように不特定かつ多数人の生命・身体に対し,極めて甚大な被害をもたら
すこと,②かかる無差別大量殺人行為を団体の活動として行う場合には,
秘密裏に計画が準備され実行に移されることから,犯行の事前把握が極め
て困難であること,③団体の活動として行われる無差別大量殺人行為が,
しばしば反復累行されると考えられたことによるものと解される。
そして,団体が達成しようとする「特定の共同目的」
(団体規制法4条2
項)
が,
当該団体の構成員が本来的に有していた個人的意思や良心を変質・
変容させたり,上記個人的意思や良心を超えて団体として行動する際の指
針として機能し行動を正当化させ,構成員において,かかる「特定の共同
目的」に従って行動するがゆえに,①構成員が不特定かつ多数人の生命・
身体を無差別に標的とする無慈悲な行為に及ぶことを可能ならしめ,構成
員において,
「特定の共同目的」を達成するという信念を有しているがゆえ
に,②多種多様な方法で,秘密裏に計画・準備をすることによって,実現
可能性を高めることとなり,
かつ,
③目的を実現するまでは反復累行する
可能性が高くなるということができる。
このように,団体規制法が規制対象とした団体による無差別大量殺人行
為が行われるのは,
「特定の共同目的」
が存在するからであることからする
と,同法にいう「団体」概念を画する際には,
「特定の共同目的」の存在の
要件に重きが置かれており,
「結合体」
(団体規制法4条2項)の要件も,
この「特定の共同目的」との関連において解釈されなければならないとい
うべきである。
イ以上のとおり,団体規制法は,多数人の間に特定の共同目的が存在し,
当該共同目的を達成するために当該個々の多数人の意思を離れて独自の意
思決定が行われ,当該意思決定を当該多数人が実現する行為を行うことに
なる関係が当該多数人の間に継続的に存在している場合に,そこに規制の
対象とする必要のある「団体」性を見いだしたものと解される。
また,
団体としての無差別大量殺人行為が行われるのは,
「特定の共同目
的」が,構成員の個人的意思・良心を変容させたり,上記個人的意思や良
心を超えて団体として行動する際の指針として機能し行動を正当化させる
からであると認められるところ,かかる観点からは,
「特定の共同目的」を
中心に据えて「団体」概念を解釈すべきである。
そうすると,団体規制法4条2項にいう「特定の共同目的」は,多数人
の集団に,個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され,又は存在
する目的であって,構成員各人が当該集団としての行動をする際の指針と
なり得ると評価できるような目的をいうものと解される。
ウ他方,団体規制法4条2項は,
「団体」の要件として,
「多数人の継続的
結合体」であることも要求しているが,この要件は,
「特定の共同目的」と
の関連において把握されるべきものであり,その結びつきの強さの程度と
しては,各構成員がこの共同の目的を達成するためにこれに沿った行動を
とり得る相互関係にあることが認められれば,同項にいう「結合体」に該
当するものと解される。
すなわち,団体規制法の目的は,団体の活動として行われる無差別大量
殺人行為の特性を踏まえ,過去に無差別大量殺人行為を行った団体につい
て,現在も危険な要素を保持していると認められる場合に,迅速かつ適切
に対処し,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全に寄与するところに
ある
(同法1条)

また,
団体の活動として行われる無差別大量殺人行為は,
「特定の共同目的」
が存在するから行われるものであることや,
同一の
「特
定の共同目的」の達成を目指しながら,その達成のための方法論等の違い
によって離合集散が行われつつも,無差別大量殺人行為が累行されている
という実情も存在する。かかる実情を踏まえるならば,無差別大量殺人行
為に及ぶ前の段階において各構成員に具体的な意思連絡がなくても,各構
成員において「特定の共同目的」に沿った行動をとり得る関係にある場合
には,団体の活動としての無差別大量殺人行為を計画・準備・実行する段
階においては,
「特定の共同目的」を達成するために各構成員が結集して,
団体の活動として無差別大量殺人行為の実行に至る危険性が常に存在する
ということができる。したがって,
「結合体」について上記のように解する
のが団体規制法の目的や趣旨に沿うものと解される。
エ本団体は,松本を教祖・創始者として結成され,松本の説く教義を広め,
これを実現することを共同の目的とし,その目的を達成するための多数人
の継続的結合体であるから,団体規制法の「団体」に該当する。
次に,両サリン事件は,団体規制法4条1項にいう「無差別大量殺人行為」
に該当する上,松本の説く教義を根本とし,松本に対する絶対的帰依を要求
する本団体にあって,その政治上の主義を推進するため,絶対者である松本
がこれを実行することを団体意思として決定し,団体の施設を用い,団体の
資金でサリンを製造し,かつ,松本の指示を受けた役員,構成員らにおいて,
その団体意思を実現するために実行したものであり,本団体が両サリン事件
を「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として」行ったものであ
る。
したがって,本団体は,団体規制法5条1項所定の「その団体の役職員又
は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体」に該当
する。
松本は,宗教団体である本団体において,その教祖であり,平成元年8月
の宗教法人オウム真理教の設立時から解散時まで,代表役員の地位にあった
上,実際にも,本団体においては,本件更新決定時においても,松本を尊師,
グルと尊称し,主神であるシヴァ神の化身と位置づけるなど,これに対する
絶対的な帰依を維持しており,松本が,本件更新決定時も,本団体の代表者
であると認められる。
2原告を含む本件更新決定の対象団体と本件観察処分を受けた団体との同一

団体規制法5条4項は,
更新決定の対象として,
「第1項の処分を受けた団
体」
,すなわち,同条1項の観察処分を受けた「団体」と規定しているのであ
るから,更新決定を受ける対象団体と当初の観察処分を受けた対象団体との
間には,同一性が保持されている必要があることはいうまでもない。他方,
更新決定は,観察処分から相当期間が経過した後に行われることもあらかじ
め予定されているものであり,観察処分時から相当期間が経過すれば,対象
団体の名称や構成員又は組織構成等に変動が生じ得ることもまた経験則上容
易に想定されるところである。そして,団体規制法は,団体概念を「特定の
共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」と定めた上で,同法5条
4項において「第1項の処分を受けた団体」に更新決定を行うことを認めて
いる。すなわち,団体規制法は,当初の観察処分からの期間の経過により,
対象団体の名称や構成員又は組織構成等に変動が生じた場合にも,
「特定の共
同目的を達成するための多数人の継続的結合体」としての同一性が認められ
るときには,対象団体の同一性を認めることを予定している。
そして,上記1で述べたとおり,団体規制法の規制対象である団体による
無差別大量殺人行為が行われるのは,
「特定の共同目的」が存在するからであ
って,
「団体」概念については,
「特定の共同目的」を中心に据えて解釈され
なければならない。そのため,団体の同一性を判断するに当たっても,構成
員個人の意思とは離れて当該団体としての行動をする際の指針となり得る特
定の共同目的に同一性があるかどうかという点が最も重要であり,各構成員
が当該共同目的を達成するために決定された団体の意思を各構成員が実現す
る行為を行うなどの共同の目的に沿った行動をするという点において,基本
的な結合関係がなお保持されているか否かという点も検討される必要がある。
そうすると,団体規制法の規制対象である団体が分派又は分裂したかのよ
うに装っている場合はもちろん,分派又は分裂し外形的に別個に活動してい
るように見える状態に至った場合であっても,依然として,構成員の間に特
定の共同目的が存在し,当該共同目的を達成するために個々の構成員を離れ
て決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うことになるという
結合関係が存在するのであれば,分派又は分裂前の団体を対象とした規制の
効力は,分派又は分裂して細分化した各集団のいずれにも及ぶと解され,そ
れら各集団は,団体規制法上は,依然として一つの「団体」とみるべきであ
る。
本団体における特定の共同目的は,オウム真理教の教義を広め,これを実
現することであり,オウム真理教とは,その教義に従う者が自らの意思を捨
てて松本の意思に従い,これを自らの意思として行動することを,全行動を
支配する唯一絶対のものとするところに,その教義の核心がある。
そのため,本団体においては,構成員がオウム真理教の教義を広め,これ
を実現するという特定の共同目的を有しており,かかる共同目的を達成する
ために行動する場面においては,松本は教義を説き,明示的又は黙示的に意
思や指示を示し,構成員は,松本が明示的な意思や指示を示した場合はこれ
に従い,これがない場合であっても,松本の過去の説法等や本団体の教義に
顕現された松本の意思を推し量って行動していることが認められる。これは
正に特定の共同目的(オウム真理教の教義を広め,これを実現すること)を
達成するために個々の構成員の意思を離れて決定された団体の意思を各構成
員が実現する行為を行うことになる関係にほかならず,団体の活動としての
行為を行うものにほかならない。
そうすると,本団体が本件観察処分を受けた団体と共同目的を達成するた
めの多数人の継続的結合体として同一性を有するかどうかを判断するに当た
っては,団体の名称や構成員,組織構成の変更等の表面的・形式的事情にと
らわれるのではなく,本団体の結合関係において同一性が保持されているか
どうか,すなわち,構成員が松本を絶対的な帰依の対象とし,松本が明示的
な意思や指示を示した場合はこれに従い,これがない場合であっても,松本
の過去の説法等や本団体の教義に顕現された松本の意思を推し量って行動す
ることにより,オウム真理教の教義を広め,これを実現するという特定の共
同目的を達成するために活動しているか否かを実質的に検討すべきものであ
る。
以下の事情に照らせば,原告は,オウム真理教の教義を広め,これを実
現するために,「麻原隠し」の一環として設立され,活動している団体で
あり,本件更新決定時においても,この評価に変わりはないというべきで
ある。
松本の意思は,破防法の適用を回避するため,本団体を組織として存
続させることにあり,そのためであれば,松本は,本団体の危険性の除
去の仮装や組織分割をいとわなかった。
P2は,平成11年頃から平成14年頃までの間,対外的な説明と本
団体構成員に対する説明を使い分けており,観察処分等を免れて組織存
続を図るために「麻原隠し」を全面的に推し進め,本団体の危険性除去
の仮装を行っていた。P2らは,平成17年頃から原告設立に至るまで
の間においても,組織存続のために本団体の危険性の除去の仮装及び組
織分割が必要であるとする松本の意思に基づいて活動していた。
原告設立後における大黒天及び三仏の取扱いの変更並びに思想・哲学
の教室への改変は,過去の過ちに対する真摯な反省に基づき,原告を含
む本団体の在り方自体を変化させていくものとして実施されたものとい
うことはできない。むしろ,実際には,松本と同一視される大黒天や三
仏を崇拝対象としながら,形式的な取扱いのみ変更し,松本の絶対者性
の否定及び危険な教義の棄教をそれぞれ装うことにより,観察処分等の
適用を免れ,組織存続を図るという松本の意思の実現を目的としたもの
であると評価し得る。その余の内観や外部監査等の施策についても同様
である。
イAlephにおいては,構成員が松本を絶対的な帰依の対象とし,松本
が明示的な意思や指示を示した場合はこれに従い,これがない場合であっ
ても,松本の過去の説法等や本団体の教義に顕現された松本の意思を推し
量って行動することにより,オウム真理教の教義を広め,これを実現する
という特定の共同目的を達成するために活動している。いわば,Alep
hは,
オウム真理教の教義を忠実に承継することによって,同教義を広め,
実現するという特定の共同目的を達成しようとしているものと認められ
る。
他方,原告についていうと,形式的・表面的には,松本の絶対者性を否
定したり,
オウム真理教の教義を放棄したりという方策を打ち出している。
しかしながら,松本が,なり振り構わぬ組織存続のために本団体の危険性
の除去の仮装を意図し,その具体的方法として,松本の絶対者性の否定と
危険な教義の棄教を挙げていたことからすれば,
結局のところ,P2らは,
松本の明示的な意思や指示,あるいは松本の過去の説法等の本団体の教義
に顕現された松本の意思を推し量って行動することにより,Alephと
は異なる方法論の下,オウム真理教の教義を広め,これを実現するという
特定の共同目的を達成するために活動しているといえる。
以上を踏まえれば,原告及びAlephについては,オウム真理教の教
義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動し
ているといえるから,
従前の基本的な結合関係が維持されており,
「特定の
共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」に含まれる重要な一部
をなす集団であると認められる。
【原告の主張】
1原告が本件更新決定を受けた本団体ではないこと
原告においては,
①オウム時代を時系列に詳細に分析し,松本やその教
義への信仰に関する具体的かつ詳細な反省をした総括,心理学的な知見や
松本の幼少期からの人格を調査した広汎な資料に基づき松本が人格障害者
であったと結論づけた総括,役員を始めとする専従会員・非専従会員個人
によるオウム時代の総括などを行い,徹底したオウム時代の反省・総括の
取組みがされ,
②専従会員の居住状況は,大規模施設や集団居住が完全に
解消され,オウム型の出家制度は廃止され,専従会員には個人資産の保有
が相当に認められ,親族や外部との交流がある開放的なものとされ,③平
成21年2月以降,甲大学●学部のP10教授の指導を受け,組織的に自
己反省法「内観」を実践し,オウム時代の反省・総括を一層深め,④外部
監査委員会を設置し,外部識者の監査や指導を受け,⑤様々な機会に一般
人や社会との交流がされている。
原告は,設立当時から,従来の宗教の最も悪い点を凝縮していたともい
えるオウム真理教と松本に対する反省・統括に基づく方針として,従来の
宗教とは違った21世紀の新しい宗教,新しい思想を目指すことを掲げ,
平成24年頃からは,宗教という言葉から離れ始め,新しい智恵の学びの
場と自己規定するようになり,平成25年には自らを哲学教室と規定する
に至った。原告は,同年12月に基本理念を改正し,特定の存在に対する
絶対視や盲信を否定するとともに,人間から分離された超越的絶対者を崇
拝することなく,理性を十分に維持して,私たち自身の内側や周辺の現実
世界の中に神聖なる存在を見いだして尊重していく実践を行うべく,団体
を思想哲学の学習教室,哲学教室と正式に位置付け,以降,祭壇の廃止,
供養の儀礼の廃止,
大黒天関係の法具の破棄,
三仏の廃止,
聖音水の廃止,
密教修行の廃止,哲学教室に相応しい教材への改革等を行った。
以上のとおり,原告は「脱麻原」の諸改革を実行したのである。
イ代表のP2を始めとして原告の指導員は,自らのオウム・アレフ時代の
反省・総括を公表し,松本・オウム・アレフを徹底的に批判する活動を広
汎に行っている。原告は,Aleph信者がAlephから脱会できるよ
う支援したり,新たにAlephに入会する者が生じないよう未然に防止
したりする活動に取り組んでいる。オウム真理教犯罪被害者支援機構は,
同支援機構が有するオウム真理教の著作物の著作権に基づき,同著作権を
侵害しないよう求めて,Alephを相手に東京地方裁判所での調停手続
を進めているところ,原告は,オウム真理教の著作物全体を網羅的に調査
し,同支援機構に著作権があることを立証する証拠資料を提供するなど,
同支援機構への協力を行っている。以上のとおり,原告は,
「反麻原」

「反
オウム」

「反Aleph」の諸活動を行い,全力でオウム真理教の教義の
流布を防いできた。
団体規制法にいう「団体」とは,特定の共同目的を達成するための多数人
の継続的結合体又は連合体をいうとされるところ,観察処分の更新のために
は,原告の一部が特定の共同目的を有しているかどうかではなく,原告の全
員若しくは大多数が特定の共同目的を有していることが立証されなければな
らない。
また,本件観察処分の被処分団体は,松本を教祖・創始者とするオウム真
理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及
び同教義に従う者によって構成される団体とされており,観察処分の更新の
ためには,原告がオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的と
し,松本が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体である
と立証されなければならない。
処分行政庁によれば,本団体の教義の要旨は,
「主神をシヴァ神として崇拝
し,創始者である松本の説く教えを根本とし,全ての生き物を輪廻の苦しみ
から救済して,絶対自由・絶対幸福・絶対歓喜の世界(マハー・ニルヴァー
ナ,涅槃の境地)に導くことを最終の目的として,シヴァ神の化身である松
本に対する絶対的な浄信と帰依を培った上,自己の解脱・悟りに到達する道
である小乗(ヒナヤーナ)を修めるとともに,衆生の救済を主眼とする道で
ある大乗(マハーヤーナ)及び衆生救済の最速の道である秘密金剛乗(タン
トラ・ヴァジラヤーナ)の各修行を実践する。
」というものとされ,その行動
規範は,松本の説く教義に従い,最終目的である衆生救済の実践のため,教
団の拡大と多数の解脱者の輩出という活動方針に従い,結果のためには手段
を選ばず,殺人をも勧める内容を含むタントラ・ヴァジラヤーナ及びその具
体的規範である五仏の法則に則って行動することであるとされている。
しかし,①原告には,いかなる崇拝対象もなく,松本の説く教義を根本と
せず,その教義を徹底的に批判しているのであって,主神をシヴァ神として
崇拝し,
創始者である松本の説く教えを根本としておらず,②輪廻転生思想
を信仰しておらず,マハー・ニルヴァーナの教義もなく,それに導くことを
最終目的にしてもいないし,
③松本に対する絶対的な浄信と帰依を培ってお
らず,逆に絶対的な浄信と帰依の教えを完全に破っており,④小乗,大乗,
秘密金剛乗という教義はなく,
既に仏教の密教を含めた三乗の思想を破棄し,
⑤仏教を信仰しておらず,仏教が説く衆生救済を最終目標にしておらず,宗
教ではなく哲学教室であるから,そもそも教団ではなく,松本の説いた多数
の解脱者の輩出という活動方針もなく,タントラ・ヴァジラヤーナ及び五仏
の法則に則って行動することもなく,逆に五仏の法則を破っている。以上の
とおり,原告は,本団体における特定の共同目的を有していない。
以上のとおり,原告は,本団体の一部をなす集団ではなく,本件更新決定
の効力が及ばない。
2Alephとの関係
原告とAlephは,この約10年間にわたって激しい対立関係にあり,
両者の各構成員が互いに共同の目的に沿った行動をとる相互関係にないこと
は現実的にも明らかである。被告が主張する継続的結合体の定義では,観察
処分の対象も期間も際限なく拡大されてしまい,条文の拡張解釈を戒め,謙
抑的運用を規定する団体規制法の趣旨に反することになる。
P2は,平成18年前半以前は,松本から自立することを欲する一方で,
完全には松本から脱却しきれない未熟さや弱さがあったため,別団体や松本
からの自立を肯定する内容の松本の言葉や説法を利用して,段階的に松本か
ら脱却しようと葛藤していたのであり,特に平成17年頃は,松本家を中心
とした松本を絶対視するグループからの批判・攻撃を和らげ,これに従わず
にP2派の活動をしやすくしようとする意図もあった。
その後,P2においては,平成18年前半から平成19年のアーレフ脱会
までにかけて,大きな変化が生じ,完全といってよいほどに松本からの脱却
が図られ,松本の意思に反し,本当の意味で松本を否定し,松本の教義を越
えた全くの新団体を創設する意思を固めていった。
原告においては,平成18年10月から11月に開かれた出家信者の総会
での話合いの結果,全ての松本の教材を破棄することが決まり,これ以降現
在に至るまで,団体として,個人として,松本からの真の脱却のための様々
な努力が積み重ねられた。
松本が存続を意図していた組織は,飽くまでも,形を変えながらも実質的
には松本を信仰する宗教組織にほかならず,松本が示していたという絶対者
性の否定は,単に松本が教団の代表者及び教祖の地位を降りるということに
すぎず,絶対者性の否定という性格を持つものですらない。また,P2が平
成11年12月までの服役中に作成したノートの記載も,飽くまで松本の尊
重を基盤とするものであった。松本が示していたという危険な教義の棄教に
ついても,タントラ・ヴァジラヤーナやその教本を封印するというにとどま
り,飽くまでも松本への絶対的帰依は教義の根幹として存置するものであっ
た。
これに対し,原告は,松本への信仰はおろか,全く正反対に松本を人格障
害者と位置付けて根本的に否定し,松本や松本のような人物への帰依を行わ
せないための活動を徹底して展開しており,松本が存続を意図していた組織
に当たるものではなく,原告の行動は,松本の意思に反するものである。
以上のとおり,原告は,Alephとは別の団体である。
第2争点2(団体規制法5条1項1号該当性)について
【被告の主張】
1具体的危険性の要否
団体規制法は,無差別大量殺人行為が,不特定かつ多数の人の生命・身体に
極めて甚大な被害をもたらすものである上,事前にその発生を防止することが
困難で,反復して行われる危険性が高いという特質を有していることから,過
去に無差別大量殺人行為を行った団体が,
現在も団体の属性として危険な要
素を保持している場合には,
当該団体の活動状況を継続して明らかにし又は
当該行為の再発を防止するために必要な規制措置をなし得る場合を定めた
ものである。
このような観点から,団体規制法5条1項柱書は,過去に団体の役職員又
は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体が,
同項
各号に掲げる事項のいずれかに該当し,
その活動状況を継続して明らかにす
る必要があると認められる場合には,
当該団体に対して観察処分をすること
ができると規定しているのであるから,同項1号ないし4号について,名文
で規定された要件とは別に,
当該団体に再び無差別大量殺人行為の準備行為
を開始するとの点についての具体的危険性を要するものと解すべき必然性
はない。むしろ,同項5号は,
「前各号に掲げるもののほか」
,当該団体に無
差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があることと
規定しているのであるから,団体規制法は,同項1号ないし4号に掲げられ
た事項のいずれかが認められれば,類型的に,当該団体について,団体の属
性として無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実が
あるとみなしていると解される。
2松本が無差別大量殺人行為の首謀者であること
首謀者とは,無差別大量殺人行為そのものの計画,遂行について,組織集団
での最高の主導的役割を担う者を意味するところ,両サリン事件は,いずれも
松本が独裁者として統治する祭政一致の専制国家を樹立するという政治上の主
義を実現するために,松本が,各犯行を実行することを決定し,本団体の構成
員らに指示するなどしたものであり,松本は両サリン事件の首謀者である。
3首謀者である松本が本件更新決定時も本団体の活動に影響力を有しているこ

「影響力を有している」とは,特定の者の言動が,団体の活動の方向性を
左右する力あるいは内容に変化を生じさせる力を有していることをいい,こ
こにいう特定の者の言動には,現時点の直接的な言動のみならず,現時点で
本人によって否定されていない過去の言動も含まれる。
そもそも,原告は,松本に対して帰依し,松本の説くオウム真理教の教義
に従う者によって,観察処分等を免れ,松本の意思を実現することを目的と
して組織されたものである。また,現在においても,実質的には松本やオウ
ム真理教の教義に絶対的に帰依することを説いている。さらに,松本自身が
オウム真理教の特色であると説く修行体系とほぼ同様の修行体系を維持し
ている。これらに加えて,原告の幹部構成員らが両サリン事件を正当化する
発言をしているなど,構成員の言動にも松本に対する深い帰依や同人の説く
オウム真理教の教義に従う意思が随所に認められる。
そして,原告がその一部を構成する本団体においては,第4回更新決定後
も,①Alephの幹部構成員らが,各地における説法や機関誌を通して,
構成員に対し,松本を,主神であるシヴァ神の化身であり,かつ,教祖であ
ると位置付け,尊師,グルと尊称し,松本及び同人の説くオウム真理教の教
義への絶対的帰依や松本の説く衆生救済の実現の重要性を強調した指導をし
ていること,
②松本が行ったタントラ・ヴァジラヤーナの実践や日本シャン
バラ化計画等の危険な説法を細部まで忠実に再現した教材等を使用してAl
ephの構成員に教学させ,また,松本の説法の音声を再生する中,松本へ
の帰依をうたった詞章を大声で唱和させたり,繰り返し立位礼拝をさせたり
するほか,松本が直接指導していた頃と同様のPSI(パーフェクト・サー
ヴェーション・イニシエーション。松本の脳波が注入されるとする器具。)
の装着を奨励するなどといったマインドコントロールの手法を用いた儀式・
修行を行うなどして,自己の意思や思考を捨て,松本及び同人の説くオウム
真理教の教義に絶対的に従う意識を扶植する指導を行っていること,
③Al
ephにおいて,殺人を暗示する危険な教義等を説いた松本の説法を収録し
たDVCAMやDVDを依然として保管し続けていること,
④Alephの
幹部構成員らが,松本が拘置されている特定の刑事施設を聖地と称し,その
周辺に赴く行為を巡礼と称して構成員に奨励しているほか,松本の誕生を祝
う催しを開いたり,構成員に対し,説法を通して死刑判決が確定した松本の
死刑執行の回避や延命を祈願するよう指導したりしていること,
⑤Alep
hにおいては,松本の指示に従い,松本の子を「王権」(ここでいう「王権」
とは,松本の系譜のことであり,長男,二男へ継承される権威を指す。)の
後継者として扱っていること,
⑥Alephの構成員が両サリン事件を正当
化する発言等をしているなど,構成員の言動にも松本に対する深い帰依や同
人の説くオウム真理教の教義に従う意思が随所に認められること,といった
各事情が認められる。
これらの事実からすれば,現在においてもなお,松本及び同人の説くオウ
ム真理教の教義が本団体の存立,運営の基盤をなしていることが認められ,
松本が,その活動に絶対的ともいえる影響力を有している。
4小括
したがって,本団体は団体規制法5条1項1号に該当する。
【原告の主張】
1具体的危険性の要否
かつて無差別大量殺人行為を行った団体及びその構成員といえども,そのよ
うな行為に再び及ぶおそれがない限り,通常の宗教団体又は一般市民として信
教の自由等が保障されるべきであるから,その信教の自由等の制限が許される
ためには,当該団体が再び無差別大量殺人行為の準備行為を開始するという一
般的,抽象的な危険があるというだけでは足りず,その具体的な危険があるこ
とが必要であり,団体規制法5条1項各号の要件を満たすためには,当該団体
に再び無差別大量殺人行為の準備行為を開始するとの点についての具体的危険
性が必要であると解すべきである。
2団体規制法5条1項1号該当性
上記第1【原告の主張】のとおり,原告は,松本の意思を実現することを目
的として組織されたものではなく,現在も松本の教義に絶対的に帰依すること
を説いているなどということもなく,松本やオウム真理教の修行体系と同様の
体系を維持していることもない。
被告が,本団体が松本の影響力を受けていると主張する根拠は,いずれもA
lephに関する事項であって,原告は無関係である。
3小括
したがって,原告は団体規制法5条1項1号に該当しない。
第3争点3(団体規制法5条1項2号及び3号該当性)について
【被告の主張】
1団体規制法5条1項2号該当性
P9は,松本サリン事件に幇助犯として関与した者であり,無差別大量殺人
行為に関与した者と認められるところ,平成15年4月5日付けで本団体への
再度の入会手続を行い,本団体において,同年5月15日付けの公安調査庁長
官宛て第14回報告書以降,P9をAlephに入会した在家信徒として報告
し,それ以来,一貫して本団体の構成員として扱っているものと認められ,こ
れらのことから,P9は,本件更新決定時において本団体の構成員である。
以上のとおり,無差別大量殺人行為に関与した者のうち,P9については,
本件更新決定時においても本団体の構成員であると認められ,本団体は団体規
制法5条1項2号に掲げる事項に該当する。
2団体規制法5条1項3号該当性
団体規制法5条1項3号に規定する「役員」とは,
「団体の意思決定に関与し
得るものであって,当該団体の事務に従事するものをいう」とされている。
両サリン事件当時,P2は,本団体において松本に次ぐ地位である正大師の
地位にあり,正大師はP2を含め4名しかいなかった。また,本団体は,平成
5年6月から7月にかけて,2回にわたり,東京都江東区内の本団体の新東京
本部周辺の反対住民を殺害するため,付近に炭疽菌を散布したが,菌が死滅す
るなどしたことからその目的を遂げなかったという事件を発生させているが,
P2も同事件に関与していた。
かかる本団体におけるP2の地位に照らし,P2は両サリン事件当時に「役
員」であった。
また,P2は,第4回更新決定当時から現在に至るまで,本団体の重要な一
部を構成する原告の代表役員として活動して,本団体の意思決定に関与し,か
つ,事務に従事しているから,現在も本団体の役員であると認められる。
よって,本団体は団体規制法5条1項3号に掲げる事項に該当する。
【原告の主張】
1団体規制法5条1項2号該当性
原告は,本団体の一部を構成しておらず,P9がAlephの構成員である
ことをもって,原告が団体規制法5条1項2号に該当するということはない。
2団体規制法5条1項3号該当性
団体規制法5条1項3号にいう「役員」は,
「団体の意思決定に関与し得
る者であって,当該団体の事務に従事するもの」と明確に定義されており,
団体の重要事項に関する最終意思決定者を構成する集団の一員であり,議決
権のある者を指す。また,当該無差別大量殺人行為が行われた時にその実行
行為とは直接の関係を有しなかった役員が,当該団体において役員としての
地位を有しているだけでは,当該団体が再び無差別大量殺人行為の準備行為
に着手するおそれが常に存在するということはできない。
また,当該役員が現在も役員であるといえるためには,その者が再び松本
の指示により,又はその指示とは無関係に,無差別大量殺人行為に着手し得
る権限ないし影響力を伴った地位にあることを要する。
両サリン事件当時,オウム真理教においては,松本が単独で団体の意思決
定をしており,実質的に役員は松本のみであったのであり,P2は,モスク
ワに赴任しており,物理的にも両サリン事件に係る意思決定に関与し得る立
場になかった。
P2は,団体の改革を牽引し,原告を安全な団体として形作り,個人崇拝
の過ちを説いてきたのであり,現時点において,P2は,松本の指示を受け
て,又は,その指示とは無関係に,無差別大量殺人行為に着手し得る権限や
影響力を有していない。
以上のとおり,P2は,
団体規制法5条1項3号の
「役員」
に該当しない。
第4争点4(団体規制法5条1項4号該当性)について
【被告の主張】
1団体規制法5条1項4号の意義
団体規制法5条1項4号は,
「当該団体が殺人を明示的に又は暗示的に勧める
綱領を保持していること」を掲げているところ,
「綱領」とは,通常の語義どお
り,団体の立場・目的・計画・方針又は運動の順序・規範などを要約して列挙
したものをいうと解される。
同4号が「殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領」を掲げた趣旨は,かか
る綱領が,当該団体の構成員が団体の活動として無差別大量殺人行為に及ぶ危
険性の要素の中核をなすものであるため,過去に無差別大量殺人行為を行った
団体が,かかる「綱領」を保持している場合には,当該団体が団体の属性とし
て無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険性を具有していると認めら
れることにある。
したがって,同号にいう
「綱領」
に該当するというためには,
文書化されているか否か,また,
「綱領」という名称を付されているか否かにか
かわらないが,団体の方針等となるべき事項が構成員に明確に示され,かつ,
構成員も当該事項を是認し,それに従う意思を有しているものであることが必
要である。
2本団体について
オウム真理教の教義は,衆生救済に至る最速の道であるタントラ・ヴァジ
ラヤーナの実践をすることを最重視するものであったところ,その教義には
殺人を暗示的に勧める内容を含んでいる。また,オウム真理教は,その教義
に沿った理想郷の建設を目的とする日本シャンバラ化計画を推進していたが,
最終的には松本を独裁者とする祭政一致の専制国家体制を樹立するという政
治上の主義を有するに至り,その政治上の主義が本団体の教義の枢要な一部
として内包されるに至った。そして,この政治上の主義を推進する目的で,
団体の活動として両サリン事件が敢行された。
本団体においては,その教義が,両サリン事件以降,第4回更新決定時に
至るまでに,破棄ないし変更されたとは認められず,一貫して維持されてい
たものと認められる。そして,その後,第4回更新決定から現在に至るまで
も,その教義が破棄ないし変更されたと認められる事実はないから,政治上
の主義を含み,かつ,殺人を暗示的に勧める教義が,現在に至るまで一貫し
て維持されているものと認められる。
そして,原告は,松本に対して帰依し,松本の説くオウム真理教の教義に
従う者によって,観察処分等を免れ,松本の意思を実現することを目的とし
て組織されたものであるとともに,依然として本団体の重要な一部を構成し
ているものであるのであって,そうであれば,原告においても,政治上の主
義を含み,かつ,殺人を暗示的に勧める教義が依然として維持されているも
のと認められる。
本団体では,Alephの幹部構成員らが,構成員に対し,説法や機関誌
等を通して,松本及び同人の説くオウム真理教の教義への絶対的な帰依を強
く指導していることや,松本が行ったタントラ・ヴァジラヤーナの実践や日
本シャンバラ化計画等に関する説法を再現した教材等を使用して構成員に
教学させていること,従前と同様のマインドコントロールの手法を用いた儀
式・修行を行い,松本及び同人の説くオウム真理教の教義に絶対的に従う意
識を扶植する指導を行っていること,原告において中心的に活動するP2ら
が,その設立目的等について,タントラ・ヴァジラヤーナに関する松本の言
動等を引用するなどしていたところ,現在においても,原告の幹部構成員ら
の中には松本及び同人の説くオウム真理教の教義を維持している旨述べる
者があること,構成員の言動に,両サリン事件を正当化し,あるいは,松本
に対する深い帰依や松本の説くオウム真理教の教義に従う意思を示すもの
が随所に認められることなど,一般の構成員にも幹部構成員による指導方針
が深く浸透していることなどに鑑みれば,現在も本団体においては,危険な
内容を含む教義が幹部構成員による説法,教材等を通して構成員に周知徹底
されており,構成員においても,危険な内容を含む教義全体を正しいものと
して受け入れ,その教義に従う意思を有しているものと認められる。
したがって,殺人を暗示的に勧める本団体の危険な教義は,現在も本団体
の「綱領」に当たると認められる。
【原告の主張】
原告は,本団体に含まれるものではなく,原告は,両サリン事件を反省し,賠
償を行い,その反省総括を内外で表明するなどしており,殺人を勧める綱領など
全く有していないし,オウム真理教のタントラ・ヴァジラヤーナ,五仏の法則,
マハー・ムドラーの教えを破った上で破棄し,それを内外で批判しており,これ
らは原告の綱領ではない。原告において綱領と呼べるものは,松本及びオウム真
理教の教義の危険性や過ちを明記した「基本理念」のみである。
原告は,団体規制法5条1項4号に該当しない。
第5争点5(団体規制法5条1項5号該当性)について
【被告の主張】
本団体には,団体規制法5条1項1号ないし4号に該当する事由があるほか,
下記のとおり,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実が
あり,団体規制法5条1項5号に掲げる事項に該当する。
すなわち,本団体については,①両サリン事件の首謀者である松本が本団体
の活動に絶対的ともいえる影響力を有し,構成員が松本を絶対的帰依の対象とし
ていること,
②両サリン事件当時,
松本を頂点とした上命下服の独自の閉鎖社会
を構築していたことを基礎として組織的かつ秘密裏に両サリン事件が計画,敢行
されたところ,
現在においても従前と同質の組織構造を継続して有しているほか,
出家構成員を本団体管理下の施設に集団居住させて,一般社会と隔絶した独自の
閉鎖社会を維持していること,③幹部構成員らは,現在においても,両サリン事
件を正当化する発言をしていること,
④武装化の過程で炭疽菌の散布等で重要な
役割を果たしたP2が,
現在も本団体の役員として活動していること,⑤政治上
の主義を推進するための武装化の過程でいわゆるサリン量産プラント建設事件や
武器等製造法違反事件を敢行して服役した構成員を含め,両サリン事件が行われ
た当時に構成員であった者を現在においても多数構成員として擁していること,
⑥松本の妻であるP11は,
両サリン事件当時,
松本に次ぐ正大師の位階に就き,
オウム真理教の幹部構成員としてその運営の意思決定等に主体的に関与し,平成
7年5月の松本の逮捕以降は,オウム真理教の代表代行として活動するなどして
いたほか,オウム真理教への敵対行為を働いたことへの制裁として,その元構成
員を殺害した事件の共犯者であるところ,現在においても,依然として本団体と
の関係が切れているとは認められないこと,⑦第4回更新決定後,本団体が,巧
妙な手段による様々な勧誘活動を組織的に展開することにより構成員の総数を増
加させるとともに,
現金等の資産を大幅に増加させていることが認められること,
⑧小中学生などの若年者に対し,
松本の説法に関する子供向けの教材を使用して
教学させたり,立位礼拝などの修行を行わせたりして,松本及び同人の説くオウ
ム真理教の教義に絶対的に従う意識を扶植する指導を行っていることが認められ
ることなど,本団体については,現在も,団体規制法5条1項1号ないし4号に
掲げる事項以外にも,
「無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる
事実」があると認められる。
【原告の主張】
原告は,本団体に含まれず,被告の主張する①から⑧にも当然に該当しない。
原告に松本の影響力は及んでおらず,原告が,松本が認定した高位であるP2の
霊的ステージの高さを認めているとか,閉鎖社会を構築しているなどということ
もない。原告は,両サリン事件を正当化していることもなく,P2が松本を肯定
する発言をしたこともない。
原告は,団体規制法5条1項5号に該当しない。
第6争点6(団体規制法5条4項所定の必要性の有無)について
【被告の主張】
本団体は,第4回更新決定後も,一般社会と融和しない独自の閉鎖社会を構築
しているほか,本件観察処分に基づく公安調査官の検査(以下,団体規制法7条
2項又は14条2項所定の検査を「立入検査」という。
)の際にも,公安調査官が
来訪を告げてから十数分以上経ってようやく出入口の開扉に応じたり,公安調査
官の質問に対して「答える義務はありません。
」などと述べたり,あるいは無視し
たりするなどといった円滑な検査の遂行を妨げかねない非協力的な姿勢を組織ぐ
るみでとり,さらには,検査対象となるパソコンの電源を切ったり,団体施設に
おいて作成した検査対象となる会計帳簿のデータを,当該施設外に移動して意図
的に消去し,立入検査時における検査を不可能にするなど,公安調査官の検査に
対し極めて不誠実な対応をとったことなどが認められるのであるから,本団体に
ついては,その活動実態を積極的に明らかにしようとせず,その体質は依然とし
て閉鎖的で透明性に欠ける。
また,本団体については,団体規制法5条3項に基づく公安調査庁長官宛ての
報告書において,構成員や団体の管理下にある施設あるいは資産の一部を殊更報
告書に記載していないなど不正確な報告を繰り返したり,
「当該団体の活動に関す
る意思決定の内容」
(同項5号,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する
法律施行令3条1号)として報告すべき団体の活動に関する不動産の購入や海外
への構成員の派遣に関する事項等について報告をしていないなど,報告義務の懈
怠も繰り返しているほか,対外的には,閉鎖的体質を改め,社会との融和を目指
す旨主張したり,両サリン事件を反省する旨主張したりしているものの,実際に
は,幹部構成員らが,両サリン事件を正当化する発言をしたり,新たな構成員の
勧誘活動において,両サリン事件は本団体によるものではなく,えん罪であると
して勧誘したりしていること,実際には本団体の活動拠点として用いる意図を有
していながら,その意図を秘して活動拠点として用いるための不動産を取得して
いることなどからすると,本団体は,依然として欺まん的な組織体質を有すると
認められる。
本団体には,上記のとおり,閉鎖的・欺まん的な組織体質が認められ,その活
動状況を把握することが困難な実情にある上,その閉鎖的・欺まん的な組織体質
に起因して,依然として全国各地で地域住民が本団体に対する恐怖感,不安感を
抱き,その結果,国に対して本件観察処分の期間の更新を要請するなどしている
こと,また,これら地域住民の恐怖感,不安感を受け,地方公共団体において,
団体規制法5条1項の観察処分を受けた団体に対する調査,命令等を行う権限等
を定める条例を制定するなど独自の取組が行われている。
これらの事情等に鑑みれば,引き続き本団体の活動状況を継続して明らかにす
る必要があると認められる。
【原告の主張】
被告が主張する事項は,そのほとんどがAlephに関する事項であって,原
告には無関係である。原告は,会計帳簿を秘匿したことはなく,公安調査庁に任
意提出しており,不動産や銀行預金口座の報告にも虚偽はないし,海外渡航や渡
航後の予定を隠す意図も事実もない。地域住民の不安は,漠然としたイメージか
ら生じているものにすぎず,原告は,住民との関係の改善のために様々な努力を
続け,組織的な抗議活動が解消されるなど,状況が相当改善した地域もある。
引き続き原告の活動状況を継続して明らかにする必要があるとは認められない。
第3章当裁判所の判断
第1認定事実
前提事実に加え後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認め
ることができる。
1オウム真理教の沿革・組織・活動実態等
オウム真理教の沿革及び組織規模等
アオウム真理教は,松本を教祖・創始者として活動を開始して,徐々に組
織を拡大させ,昭和62年頃には,出家制度を導入した。出家信徒(サマ
ナ)とは,自己の全財産を「布施」と称してオウム真理教に寄進し,現世
との関わりを一切断った上で,松本に絶対的に帰依して修行するとともに
「ワーク」と称してオウム真理教のための無償労働に従事し,同施設内で
起居する者である。他方,在家信徒とは,各自の居宅からオウム真理教の
支部・道場などに通い,出家信徒の指導の下に,その教義を学び修行する
者である。
オウム真理教は,平成元年8月29日,宗教法人「オウム真理教」の設
立の登記をし,平成6年6月頃までに,国内に合計24か所の支部・道場
及び附属医院を設け,構成員数を出家信徒約1000人,在家信徒約1万
人に増大させるなどして,その勢力を拡大した。
イオウム真理教は,構成員に対し,修行の進度,精神の発達度に応じて心
の成熟・霊性の高さの度合いを示すとする「ステージ」という独特の位階
(最終解脱者で松本の位階である尊師を頂点とし,正大師(大乗のヨーガ
を成就したと認定された者),正悟師(マハームドラーを成就したと認定
された者),師(クンダリニー・ヨーガを成就したと認定された者)など
の称号があり,平成6年7月以降改正されている。)を与え,この位階制
度により,松本を頂点として位階の高い者が位階の低い者を支配・管理す
る上命下服の組織構造を有していた。オウム真理教は,このような組織構
造の下,出家信徒を教団管理下の施設に集団居住させ,「お供物」と称す
る食事をとらせたりするなどして(出家制度),構成員を支配・管理し,
一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を構築していった。
なお,地下鉄サリン事件当時,尊師に次ぐ正大師の位階にあった者は,
P2,松本の妻であるP12(改名し,本件更新決定時にはP11。以下
「P12」という。乙B7の27),松本の三女であるP13,P14及
びP15の5名のみであった。(乙B3の77・78,B5の5,B7の
1・2,E13)
オウム真理教の教義(乙B2の1,B6の1,E1,2)
オウム真理教の教義要旨は,創始者である松本の説く教えを根本として,
シヴァ神の化身である松本に対する絶対的な帰依を培った上,自己の解脱・
悟りに到達する道である小乗(ヒナヤーナ)を修めるとともに,衆生の救済
を主眼とする道である大乗(マハーヤーナ)及び衆生救済の最速の道である
秘密金剛乗(タントラ・ヴァジラヤーナ)の各修行を実践するというもので
ある。
松本は,上記の教えの中でも,タントラ・ヴァジラヤーナを最上位に位置
付け,これを実践する上での重要な具体的規範として五仏の法則があり(こ
の中には,悪業を積んでいる魂は早く命を絶つべきであるとするアクショー
ブヤの法則や真理の実践を行う者にとっては結果が第一であり,結果のため
には手段を選ばないとするアモーガシッディの法則がある。),「例えばグ
ルがそれを殺せという時は,
例えば相手はもう死ぬ時期にきている。
そして,
弟子に殺させることによって,その相手をポアさせる。一番いい時期に殺さ
せるわけだね。」
(昭和62年1月4日の説法。乙B6の12,E3),「わ
たしたちは,(中略)すべての魂を救済したいと考える。(中略)しかし,
時がない場合,それをセレクトし,必要のない魂を殺してしまうこともやむ
なしと考える智慧ある者,あるいは徳のある魂がいたとしてもそれはおかし
くはない。」(平成5年4月18日の説法。乙E4)などと,真理のため,
また,教祖である松本の指示ならば殺人も許されることを説き,死者の魂は
「ポア」ないし「ポワ」されて高次の精神世界へ転生するなどと説いた。
(乙
B6の24)
この松本が説くタントラ・ヴァジラヤーナの特色は,たとえ自己は悪業を
積むことになっても他に対して善業となるならば,それを最高の実践課題と
して実践する点にあり,
グルである松本への絶対的な帰依が必要であるとし,
その実践として,苦しみの限界に自己を置き,そこにおいて一切乱れない心
を形成する修行であるマハームドラーの修行を行い,心をグルと合一させる
ことが重要であるとされている。(甲23,乙B6の21・22・25ない
し31・49・53)
そして,両サリン事件に関与したオウム真理教の構成員らが,マハームド
ラーの修行の名の下に犯行を指示され,松本の説く衆生救済のため,タント
ラ・ヴァジラヤーナ及びその具体的規範である五仏の法則に則って犯行を実
践したとおおむね供述していること
(乙B6の13・23・32ないし35,
E36)からも,これらのオウム真理教の教義は,両サリン事件の実行に際
して構成員らの行動規範となっていた。
オウム真理教の政治上の主義とその発現(乙B2の1,B6の1,B7の
3,E1,E2)
アオウム真理教は,その最終目的である衆生救済を実現するためには,世
界をオウム真理教の教義に基づいた社会であるシャンバラ(理想郷)と化
す必要があり,その第一段階として日本のシャンバラ化を実現するという
日本シャンバラ化計画を打ち出し,布施集めや勢力拡大を図った。同計画
は,①東京,大阪,名古屋,福岡,札幌,仙台,金沢の7つの主要都市に
オウム真理教の支部を開設し,
②これら7つの主要都市に総本部道場を建
設し,オウム真理教の教義の布教・実践の拠点とし,③真理に基づいた生
活をすることができるオウムの村「ロータス・ヴィレッジ(蓮華の村)」
を建設するというものであった。(乙B6の6)
しかし,
松本は,
平成元年頃には,
「わたしが政治に立とうとしたのも,
宗教だけでは済度するスピードが遅いと。だから政治的な力を使って,何
とか早くシャンバラ化計画を進めたい」(平成元年9月12日の松本の説
法。乙B6の10),「純粋な宗教活動のみでは,様々な社会問題は解決
されないということ。
それゆえ,根本的に政治と宗教は切り離せない。
(中
略)徳によって政を行い,地上に真理を広める転輪聖王(注:インド神話
において世界を統一支配する帝王の理想像,
世界の政治的支配者を指す。

としての役割を果たしていきたい。」(平成元年12月25日,オウム出
版発行「マハーヤーナ」№27・147頁)などと説き,政治の力を使っ
て上記の松本の説くところの衆生救済を実現し,松本を独裁者とする祭政
一致の専制国家を樹立するという政治上の主義
(以下
「本件政治上の主義」
という。)を有するに至った。
イ松本は,平成元年8月頃,「真理党」という名称の政治団体を結成し,
松本を始めとするオウム真理教構成員合計25名が,平成2年2月18日
施行の衆議院議員総選挙に立候補したが,いずれも落選したことや全国各
地でオウム真理教の進出に反対する住民運動が起こったこともあり,社会
に対する反発を強めるようになり,同年頃には,現行民主主義制度内で政
治的支配力を強め日本シャンバラ化計画を実現することは不可能であり,
本件政治上の主義の実現のためには,武力によって我が国の現行国家体制
を破壊し,オウム真理教の活動に反対する勢力は真理の実践を妨げる悪業
を積む者であるからこれを抹殺するしかないとの認識を有するに至り,
「オ
ウム真理教は,やはり,最終的には軍事力を有することになるんだろう。
(中略)オウム真理教の教団は,つまり単なる宗教団体ではなく,世界統
治の機構に変化する時期がくると予言されている。」(平成5年1月31
日の松本の説法。乙E3),「1997年に日本の王になる,2003年
までには世界の大部分はオウムの勢力になると。また真理に仇なす者はで
きるだけ早く殺さなければならない。」(平成6年2月下旬頃の松本の言
動。P16の公判廷での供述。乙E37)などと説き,本件政治上の主義
を実現するための手段として,ボツリヌス菌や炭疽菌などの生物兵器の開
発(平成2年3月頃から),サリンの生成(平成6年2月中旬),サリン
量産用プラントの建設(平成6年12月頃),ロシア製自動小銃の模倣品
の製造(平成6年6月下旬頃から)などの武装化を進めた。
なお,オウム真理教は,本件政治上の主義の実現に向けて,松本の指示
で,内部組織の呼称を国家組織を模倣したものに変更したり(省庁制度の
導入),松本を主権者とし祭政一致の国家の憲法草案「太陽寂静国基本律
第一次草案」などをP17に命じて立案させるなどしていった。
(乙B5の6,E26,E40)
ウオウム真理教の構成員は,本件政治上の主義を推進する上での障害を除
去すること等を目的として,
松本を首謀者として,
両サリン事件を敢行し,
不特定多数の者を死傷させたほか,別表「刑事事件一覧表」のとおり,数
多くの事件を起こした。(乙B3の2,B6の1,B7の23)
2本件観察処分から第4回更新決定までの概況
本件観察処分までの概況(平成11年頃まで)
アオウム真理教は,平成7年12月19日,宗教法人法に基づく解散命令
が確定し,その清算手続中の平成8年3月28日,破産宣告がされた。
また,公安調査庁長官は,同年7月11日,処分行政庁に対し,オウム
真理教について破防法7条の解散指定請求をしたが,処分行政庁は,平成
イ上記アの間,オウム真理教は,破防法7条に基づく解散指定処分による
団体の存亡に危機感を持ち,正悟師以上のステージの者による合議制の意
思決定機関である長老部を設けるなどの組織改編をする一方,正悟師ら幹
部構成員は,地下鉄サリン事件と修行は別であるとか,松本への帰依を深
めるよう説法するなどし,解散指定請求が棄却されると,パソコンショッ
プ等による事業収益を拡大させ,破産手続により処分した支部・道場の再
建・新設や組織機構の改革,脱会した構成員の復帰や新規の構成員獲得活
動を推進していった。
このこともあり,オウム真理教は,平成8年11月時点で約1000名
(出家信徒約500名,在家信徒約500名)まで減少していた構成員数
が,平成11年12月の団体規制法制定時頃には,約1500名(出家信
徒約500名,在家信徒約1000名)に増加していた。
これらの出家信徒は,ほぼ全員,在家信徒は半数以上が,両サリン事件
以前から信徒であった者である。
(乙B2の1・13,B5の67,E1,E2)
ウオウム真理教は,地下鉄サリン事件以前に,松本の説法を登載した教学
用教本である「特別教学システム教本」を発刊していたほか,破防法7条
に基づく解散指定処分に備えて,団体の結束を維持し,松本の説く教えを
集大成することを意図して,平成7年11月頃から平成8年1月頃にかけ
て,松本の説法集等を取りまとめた「尊師ファイナルスピーチ」と題する
書籍全4巻を刊行し,
平成9年4月以降,
構成員に閲読を義務付けていた。
ウム真理教の政治上の主義に関する松本の説法が登載されている。
(乙B3の1,B28)
の言動
ア松本の言動
松本は,平成7年11月頃,自己の刑事事件の弁護人のP18を介し
て,
破防法7条に基づく解散指定処分を受けた後の新団体の名称として,
「アレフ」(ユダヤ文字でアルファを意味する。)とすることを指示し
た(乙B3の86)。
松本は,
平成8年5月15日に行われた第3回弁明期日において,
「オ
ウム真理教には,先ほど述べましたとおり,タントラ・ヴァジラヤーナ
として6ヨーガ,あるいはカーラ・チャクラタントラを含めて瞑想法が
ございます。今,私どもは起訴勾留の身でございますけれども,私の説
いた内容が一般の信徒に対して誤解を招くとするならば,それはやはり
封印しなければならないと考えております。」,「実はヴァジラヤーナ
コースの教学テキストそのものを私は知らなかったわけですけれども,
それが今一番問題になっているみたいですので,まずそれについては完
全な封印をしたいと思います。」と述べた(甲22,乙E66)。
松本は,
同月28日に行われた破防法の第4回弁明期日において,
「破
防法適用についての動きがあるということを聞いておりまして,その破
防法に対しまして,
私自身の生命,
つまりこの肉体というものを滅ぼす,
つまり死してでも破防法の適用をやめていただきたいということ」

「も
ともとまず破防法の適用要件が私の指示,命令でいろいろな破壊活動が
起きたという前提のもとになされておりますので,まず教団の代表及び
教祖としての,非常に後ろ髪を引かれますが,立場をのきたいと考えて
おります。」,「私がオウム真理教の代表,あるいはオウム真理教とし
ての教祖としての立場をのくことにより,本来は私が死ぬのが一番いい
のでしょう。(中略)2回ほど,この破防法の適用が取りざたされてか
ら自殺を試みました。その自殺は何かというと,服を使って10分ぐら
い首を締め上げたわけですが,2回ともやはり私の腕の力が弱くて死ぬ
ことができませんでした。したがって,ぜひとも破防法の適用はやめて
いただきたいと思います。」と述べた(乙E67)。
その一方で,乙拘置所に留置中の松本は,接見した弁護士に対して,
「P2の考え方や対処の仕方は政治的すぎるし,現世的すぎる」,「自
主解散はP2が提案してきたから,
P2の判断が正しいと思い了承した。
(中略)しかしP2も中に入っており今は自主解散については良いとは
言えない。」(平成7年10月14日。乙F1「kami001」1頁),「P
2の方針はいかん。もっと強い態度で教団の運営管理にあたるべきであ
る。上九から引き上げるようなことは絶対にいけないソフト路線など
は一切してはいけない(中略)教団からP2の色を消すように出来る
だけ3人で登場(P19,P20,P21)」
(平成7年10月16日。
乙F1「kami001」2頁,「ヴァジラヤーナ教学システムは,わたしの数
百ある説法から作っている。元々,五百いくつの説法がある。今は,日
本人の常識から見て危険なものは,すべて外した方がいい。公安調査官
のようなシビアな目で厳重に見た方がいい。本質的な部分であっても外
していい。根本の道から枝が出ているので,何本かの枝が切り落とされ
ても,全く問題ない。公調や審査委員会がそこまで理解して判断すると
は思えないので,先生方も教義を深く学ばない状態で判断された方がい
い。」と述べた(平成8年2月8日。乙F1「kami003」3頁)。
また,松本は,同様に,「わたしの指示で動くか動かないかが決まる
ということだろうが,そのためにわたしは2歳と3歳の子供を教祖にし
た。教祖が2歳と3歳の子供だから純粋な信仰団体でしかないというこ
とになる。」(平成8年7月12日。乙F1「kami003」12頁,
「KAMI42」
1頁),
「破防法が適用されたら,教団からもう一度麻原を教祖にかつぐ
動きを起こすように動いてほしい※降りたが適用されたら自分が出な
ければ教団が壊滅させられる」(平成8年6月5日。乙F1「KAMI33」1
頁)などと述べた。
さらに,松本は,同様に,「破防法に対しては,二つのグループに分
かれ,第1のグループは6人が一組になって,(中略)この6人が一つ
のファミリーとなり,教団の拡大活動は一切しない。(中略)第2のグ
ループは,法的に徹底的に破防法と戦い抜く。ただし,第1のグループ
は第2のグループの敗北が予想されるので,敗北した場合に吸収ができ
るように準備しておく。」(平成8年1月9日。乙F1「JINRIKI」2頁,
「KAMI03」1頁,「KAMI04」1頁),「私が物理的に教団を離れることは
本意です。(中略)また,ノストラダムスに99年真理の弟子達が集ま
るとありますから,
破防法の適用はこの年までなのではないでしょうか。
したがって,3年しのげるような体制作りをしっかりと行うべきです。
教団をアレフとオウム真理教のアーと二つに分けるかどうかについては,
正大師や妻達と十分に話し合ってください。」(平成8年6月14日。乙
F1「KAMI37」1頁),「例えば,弟子が何をしたら破防法違反になるの
か仏教→他の宗派にもある教団の分解→名称や教えを別にしても脱
法行為となるか?」(同月19日。乙F1「KAMI39」1頁),「小さな寺
を作るよう言っていたのに,どうして作らなかったのか。」(同年7月4
日。乙F1「KAMI39」2頁)と述べた。
イP2の言動
P2は,平成7年10月7日,国土利用計画法違反に係る偽証の被疑
事実により逮捕され,平成9年3月24日,東京地方裁判所から偽証及
び有印私文書偽造・同行使の罪で懲役3年の有罪判決を受け,平成11
年12月29日まで服役した(乙B1の13,2の16,3の93,5
の15,E41)。
P2が上記勾留中又は服役中に作成したノートには,「麻原尊師を尊
重しつつ,しかし,(中略)絶対化,唯一化しないで,真理の総合的研
究を目指すことも時と共に必要になってくるだろう。」,「解散指定が
入るか否か,もし入るなら入るこそ今は,調査して,ええかげんな理由
で解散請求をする可能性がある。破防法を改正しても,一時不再審にひ
っかかるから,別の法律を作ったようだ。とするならば,第一に,Vヤ
ーナ(注:タントラ・ヴァジラヤーナのこと)的教義に関する全情報をシ
ャットアウトすべし(文書及びサマナの口)組織を守るためには,Vヤ
ーナ関係の書籍は廃すしかない。」との記載がある(乙B3の94,E
42)。
また,同ノートには,「教団の分裂は受け入れなくてはならない。2
つのカルマ,2つの流れのあることはそこには争いがある。私は憎しみ
を持たず自分の足下を固めるべし」,「双方で教材作成しておく。万一
の際,独立・展開するための土台となる」,「意志,信仰の強い人達を
選んでグループにする4人一組くらいがOKかもしれないその人た
ちは独自の教団をたてる」との記載がある(乙B3の94,E42)。
P2は,平成11年12月29日に己刑務所を出所して,オウム真理
教代表代行のP1に対し,自らの罪を深く反省し,責任をとって教団内
での正大師の称号及びその地位を象徴する緑のクルタ(修行着)を返上
したいと申し出,受理された(乙B1の16,B2の15,E43)。
本件観察処分から第1回更新決定までの概況(平成12年頃から平成14
年頃まで)
ア処分行政庁は,平成12年1月28日,本団体に対する本件観察処分を
phの本件観察処分の取消請求を棄却する旨の判決を言い渡し,同判決は
確定した。)。
平成12年2月4日,Aleph(宗教団体・アレフ)が正式に発足さ
れた旨及びP1がその代表者に就任した旨公
P2は,平成11年12月29日に己刑務所を出所し,オウム真理教の
運営に携わっていたところ,平成14年1月30日,P1に代わって,A
lephの代表者に就任した(乙B2の16,B3の93・97,B5の
17,E7,45)。
イAlephは,本件観察処分やその取消訴訟の敗訴判決を受けて,以下
の教団改革を発表した。
Alephは,
平成12年1月18日,
①松本の両サリン事件等の刑
事責任については,係争中であるため断定し得ないものの,教団執行部
の見解として,関与したのではないかと思われるという認識を有してお
り,②新団体では教祖を置かず,松本は開祖であり,観想の対象・霊的
存在であって,
信者に指示する存在ではないと位置付け,③危険とされ
る教義を破棄し,
松本が作ったオウム真理教のインドヨーガ,
原始仏教,
大乗仏教の教えに限定した教典を作成し,
信者に周知徹底させ,
④従来
の信者から改めて入会申込書と無差別大量殺人行為を行わないこと等の
誓約書の提出を求め,また,反省の意を示さない重大事件の関与者との
連絡を禁止し,
⑤長老部を廃止し,
上層部への権力集中を緩和すること
等からなる「事件に関する総合的見解表明及び抜本的教団改革の概要」
と称する教団改革案(以下「平成12年改革案」という。)を発表した
(乙B1の16,B2の15,B3の95,E43)。
Alephは,
平成13年8月24日,
①一般出家信者による松本の
公判傍聴を平成14年度以降自粛すること(最後に傍聴を希望する者に
ついては,平成13年9月6日以降の公判につき,原則1回に限って認
める。),②全出家信者に配布されていた「尊師ファイナルスピーチ」
全4巻を全て回収し,Alephで編纂した教義集を信者に配布するこ
と,
③各自治体・地域住民に対する主要施設の公開を今後も定期的に行
い,公安調査庁に提出している活動報告書を基に自治体・地域住民に情
報提供をし,市民と共存できる環境作りをしていくこと等の内容を盛り
込んだ「宗教団体・アレフ2001年度教団改革の指針」を発表した
(乙B3の96,E44)。
Alephは,平成14年2月17日,オウム真理教が関係した一連
の事件・犯罪を正当化するいかなる教義も信仰せず,松本を絶対者等と
せず,構成員を指揮する教祖・代表・構成員としないとした上で,①
松本の写真等を施設や構成員個人所有の祭壇等に備え付けず,松本にま
つわる文書・説法・写真・ビデオ映像・マントラ・歌・楽曲等の教材は,
これによって事件が引き起こされたものとは思われないものの,事件に
関連した可能性がある内容を含むものは一切使用しないこととし,松本
の公式呼称を「旧団体代表」とし,「尊師」,「グル」等の呼称を禁止
すること,
②構成員の犯罪行為を禁止し,
過去に犯罪を犯し有罪判決を
受けた者は,十分反省し,二度とそのような事態を招かない誓約をしな
ければならないこと,
③被害者

遺族への謝罪と賠償を行っていくこと,
④説法会や教材等において,松本を絶対者等としたり,事件・犯罪を肯
定するかのような誤解を受けるおそれのある表現をしないこと,
⑤タン
トラ・ヴァジラヤーナやポワ等については,これ自体によって事件が起
こされたとは思われないものの,これらの用語等の公式解釈を示すこと
とし,公式解釈を無視して過去の教材を使用することを禁止すること,
⑥「尊師ファイナルスピーチ」については,必要な改訂を加え,改訂前
のものについて使用を禁止すること,⑦PSI(パーフェクト・サーヴ
ェーション・イニシエーション。オウム真理教の修行用の機具であり,
松本の脳波データを発生させるとする基盤部分と頭部に装着する電極付
きのヘッドギア部分で構成される。これを装着すると松本の脳波が注入
されて松本と同じ瞑想状態に至るとされている。以下同じ。)について
は,松本の脳波によるマインドコントロール装置であるとの誤解を受け
ており,
そのような誤解を受けにくいものに改善していくこと,
⑧地域
住民に対する情報提供,対話の促進を図り,社会融和に務めること等を
内容とした「宗教団体・アレフ活動規定」(以下「アレフ活動規定」と
いう。)を制定し,同日から施行した(乙B1の17,B5の31,E
46)。
P2の言動及びP22事件等
アP2の言動
P2は,平成12年改革案やアレフ活動規定を制定するなどして,外形
上,松本の影響力を払拭したかのように装いながら,以下のとおり,松本
及びオウム真理教の教義に対する絶対的な帰依を要求する指導をAlep
h構成員に対して行い,真実は松本に対する絶対的帰依を維持しつつ,松
本の説く教義を広め,松本の意思を実現することを目的とする活動(以下
「麻原隠し」という。)を展開していった(乙E7)。
P2は,平成14年1月26日の説法において,「今日は私が正式に
正大師に復帰し,代表就任することになった宗教的な意味合いを話す。
今後なすべきことは,グルの救済計画の手伝いである。具体的には,長
期的なものと短期的なものがある。一つ目は,長期的なものである。こ
れは未来際においても皆さんがグルと一緒に転生し,救済活動の手伝い
をしつづけるためのものである。二つ目は,短期的なもので,皆さんの
徳をできるだけ増大させ,グルの手伝いをするということである。(中
略)来世では,皆さんを再びグルの救済活動に導くのが自分の役割であ
る。麻原尊師の予言では,私は来世麻原尊師の弟子としてまた生まれ変
わる。(中略)今生まれ変わっている者の中では,私と麻原尊師の縁が
もっとも濃い。(中略)今後の教団を誰が主導するかも麻原尊師は話し
ていた。それに基づいて,今教団は動いている。(中略)グルが物理的
にコンタクトできない状態で,将来どうなるか分からないが,皆さんが
しっかりと宗教団体・アレフにいる,グルと極めて縁の濃い者,来世が
確定している者に帰依し,称賛し,教えを学び,奉仕し,供養するなら
ば,再び皆さんはグルと真理勝者方の教えに巡り合うことができるだろ
う。」と述べ,引き続く質疑応答において,礼拝の対象を問われた際,
「礼拝の対象及び観想の対象は,麻原尊師でいいと思いますね。」と説
明したほか,松本との関係について,「皆さんと真理勝者の縁である麻
原尊師,これを排除して教団が進むことはないだろう」と説明した(乙
B1の18・19,B3の98・99,5の18,乙E47)。
P2は,平成14年1月27日の説法において,「私は,1月21日
に代表,そして正大師に復帰することが決まり,代表職に関しては,1
月30日から任期が始まる。その理由は,グルの救済活動のお手伝いを
しっかりとやるための体制を作ること,皆さんを来世も再びグルの元に
導く準備を行うということである。(中略)私は来世また,麻原尊師の
弟子に生まれ変わることになっている。(中略)皆さんが今生だけでは
なく,来世も再び真理勝者に巡り会い,救済のお手伝いをしながら真理
の実践をしていくとするならば,私の話をよく聞いて実現するようにし
てほしい。(中略)教団活動のすべてはグルの救済のお手伝いというこ
とである。(中略)尊師の予言解釈と守護によって,私は99年末に教
団に戻ってくることになった。
それはグルとシヴァ大神の守護によって,
21世紀に教団をリードするために用意されていると考えている。95
年の時点では,今後,私が教団を主導する時代が来るということも言っ
ていた。

と述べた
(乙B1の18,
B3の98,
B5の18,
E47)

P2は,平成15年1月26日の説法において,「外からね,入って
くる人達のために,また,自分たちがね,グルの名色にこだわらずに修
行していく,というもののために,道場の施設において麻原彰晃尊師と
いう名色,
これを無くしてしまうということだね。
そしてその代わりに,
その代わりに,
君たちはその心というものを,
自分の心に宿してほしい。
そしてその教えをね,麻原彰晃尊師という名色,これをなしで多くの人
に広め,そして多くの人がその教え,エッセンスを理解して,した段階
でね,その教えの源になったものは何か,ということを明かす,という
形,これをどう考えるかということになる。」と述べた(乙F2)。
イAleph構成員の言動
公安調査官が,平成14年9月10日に東京都世田谷区bに所在するA
lephのb施設の立入検査をしたところ,Alephの構成員2名が
「尊師ファイナルスピーチ」を使用していた。また,「事件についてよく
考えると,その裏にグルの大いなるマハームドラーと大いなる慈愛が隠さ
れていることに気づきます。」,「そしてグルに感謝しなければなりませ
ん。なぜなら,一人世間の矢面に立ち罪の償いをさせられ,ほふられた子
羊の運命を引き受けられているのだから。」などと暗に地下鉄サリン事件
を正当化し,松本への帰依を示す内容の記述がある日記のデータがAle
phの構成員の私物パソコンから発見された。(乙E51)
ウP22事件
ロシア人のオウム真理教信者であるP22は,ロシアを含む多くの国で
オウム真理教の活動が禁止されたことに不満を抱き,日本国内でテロ行為
を行うことで松本を強制的に解放させる必要があると考え,平成11年3
月頃から平成12年6月頃にかけて,自動小銃や手榴弾等の武器・弾薬,
自家製爆発装置を調達・製造するなどし,2度にわたって,日本に入国し
て,これらの武器・弾薬,自家製爆発装置を隠匿・設置予定場所の下見を
し,テロ行為を行うとの脅迫を日本政府にすることで,松本の開放等を要
求することを計画していたが,平成13年7月1日,ロシア連邦保安庁に
逮捕されたため,計画は実行されなかった(P22事件)。
ロシア沿海地方裁判所は,平成14年1月23日,ロシア連邦刑法22
2条(武器,弾薬,爆発物及び爆発装置の違法な入手,譲渡,売却,保管,
輸送又は所持),同法223条(武器の違法製作)等の罪により,①P2
2を最低労働賃金の100倍の罰金刑,
財産の没収を伴う8年の自由剥奪,
②P23を財産の没収を伴う6年6か月の自由剥奪,③P24を財産の
没収を伴う4年6か月の自由剥奪,④P25を3年の自由剥奪,
2年6か
月の観察期間を伴う執行猶予,⑤P26の刑事責任を免除し,
精神病院で
の一般的強制治療を命ずる判決を言い渡した。
なお,P22は,オウム真理教の出家構成員のP27に対し,平成11
年8月中旬頃にロシアでのオウム真理教を発展させるとの名目で,同年1
1月にオウム真理教の宗教文献の出版活動を発展させるとの名目で,金銭
的支援を要請し,それぞれ,上記P27から,前者については,同年10
月4日に3万米ドル,後者については,同年11月24日に900万円を
借り受けた。(乙B2の7,B7の28・29)
第1回更新決定から第2回更新決定までの概況(平成15年頃から平成1
7年頃まで)
ア処分行政庁は,平成15年1月23日,第1回更新決定をした(前提事
回更新決定の取消請求を棄却する旨の判決を言い渡し,同判決は確定し
た。)。
なお,Alephは,平成15年2月7日,同月6日付けで,ヘブライ
語の「Aleph」の本来の正確な発音は「アーレフ」であることを理由
として,その名称を「宗教団体アーレフ」に変更した(乙B3の86,B
5の20)。
東京地方裁判所は,平成16年2月27日,松本に対する殺人等被告事
件(両サリン事件を含む。)について,死刑に処する旨の判決を言い渡し
た(乙B3の2)。
イ松本の妻であり正大師の位階にあるP12が,平成14年10月に刑務
所を出所すると,従来の活動形態を維持し,松本を前面に出して活動する
ことが松本に対する真の帰依であるとして「麻原隠し」に反対する姿勢を
示して,松本の三女P13と共に,Alephの組織運営に介入するよう
になり,P2の「麻原隠し」による組織運営も新規構成員の獲得や財務運
営面で功を奏しなかったことから,P2の活動方針に反対する者が増加し
ていった。
このため,P2は形式的にはAlephの代表者の地位にとどまったも
のの,平成15年6月頃から,修行入りと称してAlephの運営に実質
的に関与しなくなり,同年7月頃にP13と話した際には,P13は,P
2は修行が足りないので教団運営は任せられない,自分がやると述べた。
その後,P12やP13は,P2に対して「麻原隠し」が誤りであったと
謝罪することを求め,P2は,同月28日頃,Aleph幹部70名程度
の前で,謝罪の意を表明し,以降,P13を中心とした松本家の組織運営
に対する関与が強まっていった。
Alephは,平成15年10月頃に,正悟師の位階にあるP1,P2
8,P29,P30及びP31の5名による集団指導体制(正悟師・正大
師会合ないし正悟師・正大師会議)に移行し,松本への絶対的帰依を明示
的に強調する指導を復活させ,松本の説法などを集約した「尊師ファイナ
ルスピーチ」の改訂版を発行するなどして,松本への絶対的帰依を強調し
始めた。
しかし,上記集団指導体制によっても,Alephの財務内容改善等が
みられなかったことや,第1回更新決定により観察処分が継続されたこと
等から,一部構成員の間でP2の組織運営復帰の希望も出ていた。
P2は,平成16年11月頃から再びAlephの運営に関与するよう
になり,Aleph内にも,P2の考えに賛同する者を中心とした一派で
ある「P2派」(あるいはP2の団体内での名称(マイトレーヤ)の頭文
字から「M派」とも呼ばれる。)とP2の方針に反対する「反P2派」
(あ
るいは松本の三女の団体内での名称(アーチャリー)の頭文字から「A派」
とも呼ばれる。以下「A派」という。)が存在し,他方,P2派として活
動するまでには至らないものの,これに理解を示す「中間派」と呼ばれる
構成員も存在していた。
(甲29,乙B2の17・18,3の100・104,5の21・22・
32ないし34・43・48・50・79,E7,E11,E12,E1
4ないしE19)
ウAlephは,平成16年1月17日から同年12月4日までの間に,
松本の説法全186話を掲載した「ファイナルスピーチ(改訂版)3」分
冊1ないし11を順次発行し,これらを出家構成員に閲読させているが,
「ファイナルスピーチ(改訂版)3」は「尊師ファイナルスピーチ」Ⅱ巻
に掲載された昭和61年から平成元年までの間の松本の説法合計167話
中151話が収録されており,より松本の当時の発言内容を忠実に再現す
る一方で,「ポワ」を「ポワ(意識の移し替え)」などと加筆を加えてい
るものの,「次はグルがマハームドラーをかけるとき,最も厳しいマハー
ムドラーをかけるからであると。そうすると,最も厳しいマハームドラー
をかけられると,当然,そのかけられた方は早く成就すると。」(「ファ
イナルスピーチ(改訂版)3」分冊2・7頁),「いろんな持戒があると
して,その持戒を無視して,グルがこれをやりなさいと言った場合,それ
をなすことが最も功徳となる。」(「ファイナルスピーチ(改訂版)3」
分冊3・30頁),
「オウムのためではないぞ,麻原の意思は何か考えろ。
それから,
シヴァ神の意思は何かを考えろ。
オウムの意思と言ったときに,
自分のエゴが入ってることがあるからね。そうなったならば,最もスピー
ディーに解脱するだろう。」(「ファイナルスピーチ(改訂版)3」分冊
5・2頁)などと,松本への絶対的帰依を求めたり,マハームドラーの修
行の実践を強調する説法が記載されている。(乙B3の101,E52)
また,Alephは,平成17年5月及び6月に,その機関誌において
も,「この教団にグルという存在を抜きにしてそれらの教えがもたらされ
ることは,教団の歴史においてただの一度もなかったのである。(中略)
わたしたちは,グルが説かれた煩悩破壊という最高の世界に至るための教
えを,歪めてしまうことなく,時代を超えて継承していかねばならない。
それがグルの願いなのである。」(平成17年5月発行の機関誌「進化V
ol.52」),「真理をこの世に残すに当たってまず大切になってくる
のは,
グルが説かれた教えの厳密性

純粋性を保持するということである。
つまり,真理の教えにしろ経典(仏典)の翻訳にしろ,グルを介して提供
されたもののみを拠り所とする-わかりやすく言えば,グルの言葉から外
れないようにする-ということなのだ。」(同年6月発行の機関誌「進化
Vol.53」。なお,この記述は,平成20年1月発行のAlephの
機関誌「ボーディサットヴァ」Vol.13でも参照するよう指導されて
いる。乙B3の74・75)などと,松本への絶対的帰依の重要性と教義
の変更が不可能であることを説いている。
の言動
アP2は,P2らが立ち上げたブログ「真理の地球」において,平成17
年2月22日,「グルを前面に出したらこれ以上の衆生の済度は難しいと
いう現実が否定できない(中略)私の根本的な考え方を確認しておきたい
のですが,それは,『今のグルの意思』を重視するということです。今の
グルの意思とは,当然,今の衆生の現実に合わせて,もっとも多くの衆生
を済度できるように,教団を運営すべきだ,ということに他なりません。」
という記事を掲載した(乙B3の107)。
イP2は,Alephの内部向けインターネット掲示板において,平成1
7年5月26日,「95年に事件が発生し,オウム真理教が救済団体とし
ては,将来がなくなった時点で,尊師は,オウム真理教に加えて,尊師と
シヴァ大神ではなく,形を変えて大黒天等を崇拝する第2の団体を弟子を
リーダーにして作ることについて,逮捕前から私に話され,その点につい
ては,逮捕後も,私とその点でやりとりがなされていました。(中略)私
のアーレフ代表としての今後のスタンスは,既存の尊師信仰のパートは堅
持し,一方で,グルがお考えになったように,別のパート,別のフォーム
を作るべきである,というものです。(中略)大黒天・マハーカーラ,観
音菩薩といった宗教的な概念,すなわち,尊師と縁があるが,麻原尊師と
いう名前と姿自体ではない崇拝対象を検討することは,グルの意思に反し
ないと考えています。

との記事を投稿した
(乙B1の8,
B3の108)

ウP2は,P2らが立ち上げたブログ「真実を見る」において,平成17
年6月22日,「私たちが今なすべきことは,今の時点でなすべき,グル
への帰依とは何かを考え,それを実践することである。(中略)教団がつ
ぶれても良いという考え方は,グルの意思に明確に反している。グルは,
96年の破防法の時に,教団を潰さないように,教祖・代表を降りること
を含め,大変な努力をされた。」という記事を掲載した(乙B1の7)。
エP2は,ブログ「真実を見る」において,平成17年6月28日,「多
様なグルの教え・指示を知ってほしい」との表題の下,「事件発生後の状
況に応じて,新たな事業,宗教組織を立ち上げることを肯定,指示された
メッセージ」との見出しの中で,「別の宗教的組織を作るようにという示
言って
いたのに,どうして作らなかったのか。』※上記と類似するものかどうか
わからないが,『教団をアレフとオウム真理教のアーと二つに分けるかど
うかについては,正大師や妻達と十分に話し合ってください。』というメ
項目において,「逮捕される前からの指示として,①(事件の結果,破
綻するだろう)オウム真理教とは別の宗教団体を作る。②例えば,シヴ
ァ大神を大黒天と呼び変えるような,衣替えした団体にする。(中略)と
いうのがあった。
なお,
この件は主に私
(マイトレーヤ)
が任されていた。


「ヴァジラヤーナの教義を排除することを認められた,指示されたメッセ
ージ」との見出しの中で,「本質的な部分であっても外していい。根本の
道から枝が出ているので,何本かの枝が切り落とされても,全く問題な
い。」などと,松本の獄中メッセージ等を引用した(乙E57)。
第2回更新決定から原告の分派に至るまでの概況(平成18年頃から平成
19年前半頃まで)
ア第2回更新決定及び松本に対する刑事事件等(乙B4の2)
処分行政庁は,平成18年1月23日,第2回更新決定をした(前提事
ephは第2回更新決定に対しては取消訴訟を提起しなかっ
た。)。
また,松本に対する殺人等被告事件について,同年3月27日,東京高
等裁判所において,同裁判所が定めた期間内に控訴趣意書が提出されなか
ったことを理由として,控訴棄却決定がされ,同年5月29日,これに対
する異議申立棄却決定がされた(乙D7,E61)。
上記控訴棄却決定及び異議申立棄却決定において,松本は,訴訟能力に
欠けるところはないと判断された。
なお,松本は,平成11年9月22日の東京地方裁判所で開かれたP3
2及びP33に係る殺人等被告事件(地下鉄サリン事件)の公判期日に弁
護人申請の証人として出廷した際,「地下鉄サリン事件は誰が指示したと
いうふうに考えているのですか。」との弁護人の尋問に対して,「P34
君が持ち込んだ,P34自身の話ですよ」
などと証言をし(乙B7の4),
その後もP35の殺人等被告事件の公判期日(平成13年2月2日の両サ
リン事件の公判期日)
やP36の殺人等被告事件の公判期日
(乙B7の7。
平成14年2月25日の両サリン事件及びP37弁護士一家殺害事件の公
判期日)に弁護人申請の証人として出廷したが,裁判所の人定質問にすら
答えず,自らの殺人等被告事件における公判等においても,両サリン事件
について,控訴審も含めて自己の責任を認めず,反省の弁を述べたことは
ない(乙B3の2)。
イ原告設立に至る経緯
P2らの言動
P2は,第2回更新決定がされたこと等を受けて,平成18年4月頃
以降,Alephに対する観察処分等が新規構成員の獲得や現役構成員
の減少,収益事業への圧迫,全般的活動の不活発化につながっていると
して,教団の存続のためには,確実に観察処分等を免れることが必要で
あり,「もう一つの考え方は,この教団の中で二つのグループを作ると
いうことに拘らずに,この社会の中において二つのグループがあればい
いじゃないかということです。すなわち,これは役割分担をし,組織分
割を行い,ある人たちは,要するに特定の限られた人たちの信仰のため
にそれを維持し,もう一つのグループは要するに幅広く救済のためにダ
イナミックにフォームを変えて行うんだと。こういう役割分担をすれば
いいのではないかという考え方です。(中略)この考え方というのは,
実は教団には古くからあるもので,そのファウンデーション理論という
ものとして存在しています。
このファウンデーション理論というものは,
要するに何かを存続させるためにどうしたら良いか,その場合,単一の
システムではなくて,多様なシステムを用意という考え方です。」(平
成18年4月15日のP2の説法)などと説いて,Alephとは別団
体の設立が必要であると考えるようになった(乙E22,E58)。
後に原告の役員に就任するP38も,平成18年4月22日,「正大
師の考えでは,もう別団体になれば,観察処分,もう掛けようがないで
すよ。」と述べ(乙B3の134,E21),平成19年1月18日,
「だからその『アーとアーレフを作りなさい,分かれなさい』とおっし
ゃってたんです。アーとアーレフに。で,アーレフというのは新教団,
新教団って,今の理念を全く隠した新しい団体,一掃した新しい。その
名前は,大黒教だろうが,マハーカーラ教だろうが,大黒天教だろうが
何でもいいっていう,そういうものを作りなさいって。で,アーの部分
は,オウム真理教のものをそのまま継続する。その代わり,これは密教
でやるしかないんです。だからみーんな在家に戻って,在家に戻った形
でひっそりと誰にも迷惑をかけずにやる方法なんですよ。それだったら
法則に反しないですよ。で,正大師は,単にこっちの道を採ってるわけ
なんですよ。
大黒教とか大黒天とかいう,
こっちのアーレフの道を。
で,
その話をずっと聞いて,ああ,まさに尊師の教えの実践を確実に,きち
んとくみ取られて,ずれなくきちんと受け取られてなさってるんだなあ
って。」と述べた(乙B1の9,B3の112,E62)。
原告の設立(乙E7)
こうしたP2の活動に対し,Alephの集団指導体制を構成する5
名の正悟師のうち,P1,P29,P30及びP31の4名は,P2の
考えに理解を示すなどし,P1は,平成18年9月16日,P2に別団
体を組織してほしくないが,組織した場合は,Alephとは持ち株会
社のような連合体として役割分担をしながら活動していきたいという考
えを表明するなどしていた(乙E63,E64)。
しかし,
P2派とA派の対立は決定的なものとなり,
平成18年には,
東京都世田谷区b所在の複数の施設は,それぞれが別の建物を管理使用
するようになった(乙B5の32)。
また,P1ら正悟師による集団指導体制も,師の位階にある中堅幹部
構成員らが,P1らがP2派に歩み寄ったこと等に反発するなどして,
機能しなくなったことから,Alephは,平成18年7月,師クラス
の中堅の構成員約30名からなる「合同会議」を設置し,Alephの
意思決定を行うようになった(乙B5の41,E35)。
P2は,平成19年3月8日,P2を中心とする出家信徒62名,在
家信徒3名が同月7日付けで,Aleph代表に就任していたP29に
対し,Alephから脱退する旨を通知し,同年5月7日には,原告を
設立した旨発表した(乙B3の110・111,B5の23,E24)。
Alephの動向(乙B3の1,5の32,E7)
他方,Alephは,平成19年3月25日,「新春メッセージ未
来へ」と題する行事を開催し,「今後の指針として私たちというのは原
則に帰るということを掲げたいと考えています。(中略)出家の動機は
主に三つに分かれていますけどね。一つ目としては,尊師に強くひかれ
て出家したと。二つ目としては,成就がしたくて出家したと。三つ目と
しては,救済活動のお手伝いがしたくて出家したと。(中略)それに基
づいて宗教理念としては三つ掲げました。一つ目として,グルの存在を
感じることのできる教団にしようじゃないかと。(中略)グルの御意思
を考えた場合,やはり私たち一人一人が解脱,悟りを得ること,これが
根本にきます。」などという幹部構成員の説法を各施設にインターネッ
ト配信した(乙B3の83,B6の36)。
Alephでは,中堅幹部構成員らが,P2派に歩み寄ったとして,
P28を除く4人の正悟師を排除する動きを強めたことから,平成19
年7月にP31とP30が脱会し(なお,P30は,教本の編集等を巡
ってP12と対立していた。乙B5の35・36),P29及びP1が
役員を辞任し(乙B5の42・43),これら中堅幹部構成員らを中心
に,大音量で松本の説法の映像を長時間連続視聴させる「特別ビデオ教
学セミナー」などを実施するなど,松本への帰依を徹底していった。
ウAlephの活動状況
Alephは,平成17年7月30日から平成19年4月11日までの
間に,「ファイナルスピーチ(改訂版)4」の分冊1ないし7を順次発行
し,これらを構成員に閲読させているが,
「ファイナルスピーチ(改訂版)
4」は「尊師ファイナルスピーチ」Ⅱ巻に掲載された平成2年から平成3
年までの間の松本の説法合計118話中100話が収録されている。
また,Alephは,平成12年10月から発行してきた「進化」と称
する機関誌の名称を,平成19年1月から,「ボーディサットヴァ」に変
更して,機関誌として,インターネット配信したり,松本の説法の映像を
収録したDVD「ボーディサットヴァ」をAlephの施設に配布して在
家構成員に視聴させたりしており,「今回,この教学システムを行うこと
によって,もう一度信徒の皆さんが,グルの熱い思いというか,グルの神
聖なデータを深い意識で吸収していただけたらいいな,
と思いますね。
(中
略)そしてもう一つは,この教学システムを進めていくことが,やがては
救済につながるんだという,そういう意識を持っておいていただきたいと
いうことです。つまり,真理のデータを内側に根付かせ,グルからのエン
パワーメントを受けるのは,自分のためでもあるし,また,自分を通して
救済されていく人のためでもある,ということですね。」(平成20年1
月発行の機関誌「ボーディサットヴァVol.13」掲載)などと松本へ
の絶対的帰依の重要性を構成員に説いている。(乙E31)
原告分派から本件更新決定までの概況(平成19年後半頃以降)
アAlephの名称変更等
Alephは,原告の設立表明や,P1ら正悟師の脱会や役員辞任を受
けて,平成19年12月14日,合同会議内に6人の運営準備委員で構成
される運営準備委員会を発足させて組織再編作業を開始し,平成12年の
Aleph発足当初の基本方針に基づき,
①松本については,
純粋に霊的
な意味で瞑想修行等における「観想の対象」ないし「霊的存在」,あるい
は,組織沿革上の歴史的な意味で教団創始者としての「開祖(宗祖・教祖
【founder】)」とも認識されている一方,現実の教団運営を統括する者と
しての教祖【leader】・代表者,あるいは団体の意思決定に関与する役職
員には位置付けていないこと,②事件と無関係な教義ないし修行法・イニ
シエーション等については,オウム真理教から引き継いだものをAlep
hでも採用する一方,裁判等で事件との関係が指摘されている一部の教義
(タントラ

ヴァジラヤーナの中の五仏の法則)
については削除しており,
一般に誤解を受けやすい用語等については,事件や犯罪の肯定に結び付け
られる余地のないよう公式注釈書(乙D12。Alephは,平成14年
五仏の
タントラ・ヴァジラヤーナについて,日本の刑法に反す
ポワについて,殺生ではなく,意識
を低い世界から高い世界へ移し変えることと解説している。)を作成・配
布するなどして構成員に周知していること,
③一人ないし少数の指導者の
能力・判断に従属する上意下達式の組織形態を見直し,多面的な判断や相
互のチェック機能が働くよう,集団指導体制である合同会議を採用してい
ること等を内容とする「『合同会議』による運営とその基本方針」を発表
した(乙B5の41,E35)。
その後,Alephは,平成20年5月12日,合同会議において,原
告の「集団脱会に伴う内部的混乱の正常化や社会的環境の変化への対応」
と「自己の解脱と悟りと,すべての魂を絶対自由・絶対幸福・絶対歓喜の
境地に導くといった,本来の宗教団体としての役割を果たせるような教団
にすること」を目的として,従来の綱領・規約・活動規定を以下のとおり
改正するなどして,団体の名称を「宗教団体アーレフ」から「Aleph」
(日本語の発音は「アレフ」)に改め,共同幹事としてP3,P4が就任
したと発表した(乙B6の67,E33)。
「宗教理念」の制定
Alephは,新しい綱領として,①私たちの団体の第一の目的は,
解脱・悟りを追究し,仏教・ヨーガの教典で説かれている霊的・精神的
な境地を体験し,それを体現することである,②私たちの団体では,第
「こ
「病苦からの解放」を提供する活動を行う
という内容の「宗教理念」を定めた。
「運営規則」の制定
Alephは,
新しい規約として,①本団体の目的は,
「Aleph」
宗教理念に掲げるものとすること,
②本団体の構成員は,出家構成員と
在家構成員からなり,「Aleph」宗教理念に掲げられた趣旨に賛同
し,その実践を行い,「Aleph」コンプライアンス規程を遵守し,
所定の会費を所定の期日までに納付しなければならないこと,
③本団体
の運営機関を合同会議とすること,④合同会議内に運営委員会を設け,
合同会議の進行・調整に当たり,原則として,共同幹事2名,副幹事2
名,委員2名で構成すること等を内容とする「運営規則」を定めた。
「コンプライアンス規程」の制定
Alephは,
新しい活動規定として,
①国の法令や教団内の規程を
遵守し,健全な宗教活動を行う(法令の遵守義務),②オウム真理教関
連事件の一部の裁判で判決が確定したという事実を踏まえて,その道義
上の責任に基づき,オウム真理教破産管財人による管財業務終結後も,
関係機関と協議の上,
事件被害者の方々に対して誠意ある対応を行う
(事
件被害者の方々に対する誠意),
③未解決のオウム真理教関連事件の解
決に向けて,オウム真理教関係特別手配被疑者に対する出頭呼びかけを
はじめとする必要な捜査協力を行う(事件解決への協力),④事件・犯
罪を否定する姿勢を明確に示し,地域社会で平穏に生活していくための
ルールを遵守し,地域との協調に努める(地域社会との協調),⑤団体
規制法に対して適法に対応し,将来にわたって教団に危険性が存在しな
いことを明らかにして観察処分の取り消しに努める(団体規制法への対
応)こと等を内容とする「コンプライアンス規程」を定めた。
なお,上記コンプライアンス規程には,アレフ活動規定における松本
の写真等を施設や構成員個人所有の祭壇等に備え付けないという項目
イ「改訂版特別教学システム教本」等
Alephは,平成14年10月に危険と誤解されるなどとして,回
収を発表していた松本の説法を収録した教学用教本である「特別教学シ
ステム教本」と松本の説法を録音したカセットテープについて,平成1
9年11月から平成20年2月にかけて,以下の内容の「改訂版特別
教学システム教本」に改訂し,松本の説法を録音したCDとともに復刊
して,セミナーにおいて参加した在家構成員に教学させるようになった
(乙B3の28,B28)。
①オウムの救済活動とは何かといったら,まずは真解脱者,アラハッ
トを三万人出すことだ。(中略)そして,三万人が世界に散ったなら
ば,そのサットヴァのエネルギーによって,ね,例えば核兵器を持つ
ことが無意味であるとか,例えば他の,ね,宗教理論の中に矛盾があ
るだとかいうことがどんどんどんどん暴露されてこよう。そしてつぶ
されよう。そして真理は一つになるはずだ。(「第1課3級A」(昭
和62年7月26日の松本の説法))
②実際に理想郷,理想的な社会をつくってみようじゃないか。
(中略)
オウムの自力によってね,雛型をつくろうじゃないかと。(中略)こ
の日本に,その社会の雛型をつくろうじゃないかと考えて,着実に進
んできているのが,今のオウムのシャンバラ化計画なんだね。(「第
3課5級C」(平成元年3月25日の松本の説法))
③タントラで成就する場合,金剛乗で成就する場合のポイントという
ものは何かというと,絶対的なグルに対する帰依であるということは
挙げられる。(「第7課5級B」(昭和63年9月27日の松本の説
法))
Alephは,平成20年12月から平成23年12月にかけて,上
特別教学システム教本」に未登載の松本の説法からな
る「新・特別教学システム教本」及びCD(第1課から第7課)を発行
した。
「新・特別教学システム教本」
に収載されている松本の説法には,
松本への絶対的帰依及び松本の説く衆生救済の重要性についてのものや,
タントラ・ヴァジラヤーナ,マハームドラーについてのものが含まれて
いる。(乙B3の29)
ウこの頃のP2の言動
P2は,「この考え方というのは,昔オウム真理教でいうヴァジラヤー
ナの考え方なんじゃないかという考え方が出てくるわけですね。
要するに,
良い目的のためには他を殺しても良いと。その考え方と今の考え方がどう
いうところで違うかというと,まず第一に,仏教においてはヴァジラヤー
ナの考え方(中略)は実際あるわけですね。実際あるけれども,それはど
こか誰か一人の成就者のための法律,法則じゃなくて,そういった警察を
やる人,裁判官をやる人,又は個々人が正当防衛を迫られたとき。そうい
った形で,全ての人にとって,このヴァジラヤーナの考え方はどうしても
必要なわけです。(中略)一方,オウム真理教の問題は何かというと,そ
の,要するに,自分は特別な権限,自分は成就者であって,ヴァジラヤー
ナができるという考え方ですね。これが非常に大きな問題になる。」など
と説いた(平成21年8月13日の説法。乙B1の34,B6の68)。
P2は,「善と悪というのは完全には区別されていない。悪の中に善が
あって,善の中に悪があるんだっていうこと。これをもう少し広げて考え
ると,どんな悪いことをしている人もそれを純粋に100%悪い動機では
やっていないんですよね。どんな悪いことをする人でも,何か良い動機を
持ってやっています。これは余り思い出したくはないことですが,サリン
事件において,サリンをまいたその弟子たちも心の中に『これで他人を苦
しめてやるぞ』という悪い動機でやっていたかというと,そういうことは
全然ないんですね。何か自分の精神的な成長ね,何か自分なりの間違った
世界観かもしれないけど,救済の世界観でやるわけ。」と説いた(平成2
1年10月23日の説法。乙B1の35,B6の69)。
エ第3回更新決定
処分行政庁は,平成21年1月23日,第3回更新決定をした(前提事

東京地方裁判所は,平成23年12月8日,第3回更新決定のうち,
「被
請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項におい
て同じ。
)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実質的
に被請求団体が経営しているものをいう。
)の種類及び概要,事業所の名称
及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事
業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記録で
作成されている場合には,当該電磁的記録の保存媒体の保管場所)
」の報告
義務を課する部分を取り消し,その余のAlephの第3回更新決定の取
消請求を棄却する旨の判決を言い渡した(乙B3の114,F31)。
東京高等裁判所は,平成25年1月16日,上記判決中被告敗訴部分を
取り消し,Alephの請求を棄却する旨の判決を言い渡した。
オ第4回更新決定
処分行政庁は,平成24年1月23日,第4回更新決定をした(前提事
起しなかった。)。
カ本件更新決定
処分行政庁は,平成27年1月23日,本件更新決定をした(前提事実
3本件更新決定の際のAlephの組織等
Alephの組織規模等
アAlephは,
平成26年11月13日付けで,
公安調査庁長官に対し,
同年10月末時点におけるAlephの国内構成員について1236名
(出家構成員213名,在家構成員1021名)と報告し,「入会してい
ないが,その活動に参加することがある者」として2名を報告した。この
うち,出家構成員のほぼ全員,在家構成員の約3割が地下鉄サリン事件以
前からオウム真理教に加入していた者である。また,地下鉄サリン事件以
降に検挙され,その後刑務所を出所したり,釈放されたりした者で,平成
26年7月31日時点で,89名がAleph,13名が原告の構成員と
して報告されており,Alephの上記構成員89名のうち5名は,サリ
ン量産プラント建設事件や自動小銃の密造に関する武器等製造法違反事件
等に関与して有罪判決を受け,服役を終えた者である(乙B7の31・3
2,F33)。
なお,Alephは,平成24年7月,Aleph会員は,原告の活動
に参加してはならない旨の活動要綱を定めた(乙D52)。
イP9は,松本サリン事件に関与し,殺人幇助,殺人未遂幇助等の罪で懲
役4年6月の有罪判決を受け,平成13年2月17日に刑務所を出所した
(乙B4の1・2,B7の32)。
P9は,平成15年4月5日付けで,Alephへの入会手続を行い,
Alephも,上記アの報告において,P9を在家構成員として報告した
(乙B4の5・7,E32)。P9は,平成25年1月から平成26年8
月までの間,Alephが管理する大阪市生野区内の施設に継続的に出入
りした(乙B4の6)。
ウ松本の三女P13は,平成24年1月23日から平成26年7月31日
までの間に,70回以上,松本との面会を申し込み,二女P39,長男P
19及び二男P20も複数回にわたって松本との面会を申し込んだが,松
本は,平成20年6月10日に,二女及び二男と面会したのを最後に,面
会をしていない(乙B4の1・4,D142)

エAlephは,平成26年9月末時点で,埼玉県越谷市ad丁目e番f
号所在の▲▲▲マンションg号室に主たる事務所を置き,
北海道,
茨城県,
埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,愛知県,滋賀県,石川県,京都府,
大阪府,徳島県,福岡県に合計24の施設を保有し,ロシアにも数施設を
保有している(乙B2の9ないし11・31,B8の92)。
Alephの運営態勢
アAlephは,遅くとも平成23年10月以降,月に1回,合同会議を
開催し,組織運営に関する意思決定を行っている。合同会議には,懸案事
項ごとに方策を検討するために複数のプロジェクトチームが設置されてい
る。また,Alephは,総務部,経理部,広報部,法務部及び救済メデ
ィア本部等の中央部署を9施設に配置している
(乙B2の1・14・19・
32)。
合同会議内に設けられた運営委員会の共同幹事(平成26年8月時点)
は,P8及びP7であった(乙B2の11)。
イAlephは,松本が創設・発展させた位階制度の根本部分を維持して
おり,尊師,正大師,正悟師,師長,師長補,師,上流士,準師,師補,
サマナ長,サマナ,サマナ見習いなどの位階制度を有している(乙B3の
1・77・80・82,E13)。
この位階制度については,平成17年4月に発行されたAlephの機
関誌において,「グルに帰依しなくなった段階で一気にステージが落ちて
しまうということが現実問題として起こるわけなのである。もし,神通が
自分だけの力で身に付いているのだとしたら,そんなことはあり得ないだ
ろう。つまり,ステージも神通力もグルから与えられているものなのだ。」
(平成17年4月発行「進化Vol.51」)などと説明されている(な
お,平成14年3月頃に,3名につき師の成就認定がされたが,第1回更
新決定後に師以上に昇格した構成員はいない。
乙B3の1,
B5の80)

また,
平成23年1月に発行されたAlephの機関誌には,
「成就
(解
脱・悟り)の判定はグルにしかできない」という記載がある(「ボーディ
サットヴァ49号」。乙B3の81)。
Alephの200名余りの出家構成員は,全国各地のAleph管
外にも,出家構成員の居住用として約10か所のアパート等を確保して
いる(乙B8の1・5)。
Alephは,
新たな出家の認定を停止していたが,
平成24年3月,
平成25年5月及び平成26年7月,合同会議においてそれぞれ1名ず
つ在家構成員の出家を承認した(乙B3の1・85,B6の61,B8
の6)。
Alephは,その機関誌に「素晴らしき『出家』-人生のすべてを
グルに委ねて」と題する特集記事を掲載したり(平成22年11月及び
12月発行。乙B8の10・11),「情報を遮断し,いらぬデータを
取り入れない,戒律の遵守によって不必要な経験-つまり,未来におい
て自分自身を苦しめるようなカルマの形成-をできるだけしない,とい
ったことが大切になってくる。

という記載のある記事を掲載したり
(平
成24年9月発行。乙B8の17)して,外部からの情報遮断や家族・
親族との縁を断つことの重要性を指導し(乙B6の47,8の12・1
4・15・18・19),また,Alephが独自に製造した食品・水
(松本が唱えるマントラのデータが流れている電気コードを巻いた枠内
に一定時間保管するなどの「修法」と称する儀式を施している。)を出
家した構成員に配給するなど
(乙B3の61・62,8の7ないし9)

オウム真理教が導入していた出家制度を維持している。(乙B3の1,
B8の1)
エそして,Alephは,合同会議で決定された内容等を会議に参加した
構成員を通じて,各部署または各支部に所属する構成員に伝達しているほ
か,中央部署や各施設をインターネット回線を通じて,これらの事項や幹
部構成員の説法,集中セミナー等の開催状況を構成員に周知させ,また,
月刊の機関誌「ボーディサットヴァ」等を在家構成員に配布したり,「ア
レフデイリーメール」と題する電子メールを配信したりして,松本の説法
や集中セミナーの開催状況等を周知している(乙B2の1・22・23・
25ないし27・30,E1,E28,E29,E31)。
4本件更新決定の際のAlephの活動状況
松本の説法を収録した教材の使用等
ア公安調査官は,第3回更新決定後である平成23年8月1日,Alep
hの教本やDVD教材等の作成を担う部署であるメディア班が入る大宮施
設に対する立入検査を実施したところ,これらの教材に係るDVCAM約
550本,DVDRAM約180本を発見した。その際,立会人である構
成員は,「ここに置かれているDVCAM及びDVDには尊師の説法が収
録されています。これらは,教材が災害などで使用できなくなった場合に
備えて,保存用として保管しているものと聞いています。」と説明した。
また,公安調査官は,第4回更新決定後である平成26年7月2日,同
施設に対する立入検査を実施したところ,上記立入検査時と同様の形態で
保管されているDVCAM約550本及びDVDRAM約180本を発見
した。(乙B3の76)
平成26年1月5日,Alephの八潮施設に対する立入検査が実施さ
れた際には,「改訂版特別教学システム」の第1ないし10課,「新・
特別教学システム」の第1ないし7課のCDがそれぞれ数十枚ずつ保管さ
れていた(乙B3の31)。平成25年8月29日,Alephの札幌施
設に対する立入検査が実施された際には,「改訂版特別教学システム教
本」の構成員ごとの進度報告表が壁に貼られていた(乙B28)。
イAlephの「グルヨーガ・マイトレーヤ・イニシエーション」と題す
るDVDは,「タントラ・ヴァジラヤーナの7つのプロセス」の修行法等
で構成され,マントラ及び詞章として,シヴァ大神への帰依を唱えさせる
とともに,
「グルに帰依します。」などと唱えさせ,
「あなた方の前には,
シヴァ大神と何ら変わることのない,
全く同じである,
グルの報身,
法身,
変化身が,上から縦に並んで座っています。」などと説明し,松本をシヴ
ァ大神の化身と捉え,同人への絶対的な帰依を扶植する内容が含まれ,A
lephの構成員が視聴している(乙B3の1・59)。
ウ第4回更新決定後である平成26年3月19日,Alephの生野施設
に対する公安調査官による立入検査時に発見された幹部構成員P7が使用
するパソコン内に,「新人勉強会」と題するパワーポイントデータが保存
されていた。同データには,「教学記憶修習」として,「三宝が説く真理
の法則を思考に反映されるまで記憶修習すること。」,「具体的には“特
別教学システム”,“書籍”,教学用DVDといったものを何度も何度も
観,聴き,読むこと。」,「この段階は,自分の考え方を入れずに,ひた
すら繰り返し法則を学ぶ段階です。」,「データの入れ替えという意味に
おいて,教えを何度も何度も聞く必要がある。」,「帰依を培うためには
-教学記憶修習をしっかり行う。
日頃から礼拝し,
帰依マントラを唱える。
自分を投げ出して真理の実践を行う。常にグルの意思を考え,実践する。
苦しい時こそグルを意識・思念・観想する。」,「日ごろから立位礼拝や
帰依マントラを行うことによって,潜在意識に帰依の種子が植え付けられ
る。→いずれはハードな実践にも耐え得るだけの帰依の心を培うことがで
きるようになる。」等の記載がある(乙B3の6)。
また,平成26年1月ないし7月に実施されたAleph管理に係る名
古屋施設,福岡施設及び札幌施設に対する公安調査官による立入検査の結
果,立位礼拝と称する修行をする際,「グルとシヴァ大神とすべての真理
勝者方に帰依し奉ります」と述べる旨記載された掲示物が壁面に貼付され
ていた(乙B3の25)。
エAleph発行の機関誌である「ボーディサットヴァ」65号(平成2
4年5月発行)には,Alephの幹部構成員であるP40の成就を目指
しているサマナ
(出家信徒の意)
や信徒へのアドバイスが掲載されており,
「サマナの場合はグルのみですね。グルのご意思の実践が,ワークだった
らワーク,
修行だったら修行で,
本当にできているかどうかですよね。
」,
「グルのご意思とは何かと絶えず考えて,例えば自主的に導きに行くなど
して,救済活動を本当にしゃかりきになってやっていく形にしないと,な
かなか徳を積めないと思うんですよね。」と述べた旨の記載がある(乙B
3の11)。
また,同機関誌71号(平成24年11月発行)においては,同年9月
にAlephが開催したセミナー参加者の発言が掲載されており,同人が
「クンバカ(注:修行法の1つで,息を止めるというもの)中,グルを思
念して内側に意識を入れたときお尻が軽くなり,その後,歓喜状態でしば
らくボーッとなり,口の中も急に甘くなりました。」と述べた旨の記載が
ある(乙B3の67)。
松本に対する個人崇拝をうかがわせる事情(乙B3の1)
ア平成24年2月21日から平成26年9月25日までの間に実施された
Aleph管理に係る施設に対する公安調査官による立入検査の結果,延
べ87施設中,67施設の祭壇に松本の肖像写真が掲示されていた(乙B
3の17・18)。
イ平成26年1月,Alephの勉強会において,幹部構成員が,「尊師
は,今,拘置所の中でご自身で修行されておられますが,私たち信徒は常
に尊師を思念・観想することで絆を強めなければなりません。聖地巡礼
(注:松本が拘置されている乙拘置所を訪問することを意味する。)は,
そこ,そのものがエネルギーに満たされている場所であり,聖地に行くこ
とで信徒の皆さん自身も浄化されます。尊師が存命し修行を積んで居られ
る場所であり,尊師からの高いエネルギーが受けられる場所です。信徒の
皆さんは機会を作り,出来る限り多く聖地巡礼をしてください」などと発
言した(乙B3の39)。
平成24年4月から平成26年1月までの間,6回にわたり,Alep
hの集中セミナーの際,Alephの複数の構成員が,松本が拘置されて
いる乙拘置所に赴き,同施設の外周を周回したり,同施設に向かって合掌
して礼拝したりするなどした(乙B3の40)。
ウ平成24年から平成26年の毎年,松本の誕生日である3月2日に合わ
せ,Alephの各施設において,生誕祭などと称する催しが開かれ,オ
ウム三唱,立位礼拝,松本の説法の映像の視聴,松本の延命を祈願する瞑
想,松本の好物とされる食物の喫食,松本を称揚する歌の合唱等が行われ
た(乙B3の35)。
エAlephは,平成24年11月,「ある情報によると,実は今年の1
月に死刑執行の準備に入ったと。(中略)だけど,それが逮捕者が出て,
裁判が長引くことによってね,それが,その話が消えたという話を聞いた
わけなんですけどね。(中略)それはやはり,去年の暮れくらいから私た
ち皆が,やはり,グルが涅槃されないためにね,しっかり思念していたか
ら,
そういう現象が起こったのかと思うんですけれども。
(中略)
じゃあ,
グルが涅槃されないためにね,私たちは,実際,何を実践できるのかとい
うことをね,実際,説法にちゃんと載っていますから,それを見ていきた
いと思います。(中略)まず,グルに対して涅槃されないように祈願する
ということですね。」という内容の説法を,各施設に対しインターネット
中継により発信した(乙B3の38)。
Alephにおける修行及び儀式等(乙B3の1)
アPSI(パーフェクト・サーヴェーション・イニシエーション)は,A
lephが製作・使用する修行用の器具であり,松本の脳波データを発生
させるとする基盤部分と頭部に装着する電極付きヘッドギア部分で構成さ
れるものである。PSIを装着すれば,松本の脳波が注入され,着用者は
松本と同じ瞑想状態に至るとして,平成5年12月以降,構成員にその着
用が奨励され,平成13年8月には,より小型化・高性能化したなどとす
る新型PSIが製作された(乙B3の43)。
Alephにおいては,第4回更新決定後も,PSIがその施設に保管
され,
構成員に使用されており,
Alephは,
定期的に,構成員に対し,
PSIの装着時間について報告を求めている
(乙B3の17
・45,
B9)

なお,平成24年9月にAlephが実施した「2012年秋の集中セミ
ナー」において,PSIを装着して立位礼拝を繰り返したりマントラを唱
える修行する構成員がいた(乙B3の32,B29)。
イAlephは,平成24年4月27日から平成26年8月17日までの
間に合計15回(8回は出家構成員を,7回は在家構成員を対象としたも
の)にわたって集中セミナーを実施した(乙B3の20・32,B29)。
上記集中セミナーにおいては,
構成員は,
①「修行するぞ,
修行するぞ,
修行するぞ」,「徹底的に帰依するぞ」などと繰り返し唱和する欲如意足
(乙B3の22),②楽しく修行するために,「わたしは,煩悩から離貪
するぞ」,「それはまず,グルを」,「うれしいなあ,楽しいなあ」など
と唱和する喜覚支・軽安覚支(乙B3の21),③「オームグルとシヴ
ァ大神とすべての真理勝者方に帰依し奉ります」などの詞章を大声で唱え
ながら,長時間起立と地面への伏せの姿勢を繰り返し行う立位礼拝(乙B
3の24・25),④松本の説法等が収録された教本又はCD等を使用し
て,
当該説法を繰り返し修習・暗記することなどを行う教学(乙B3の6・
28・29・31),⑤写実的に描いたアニメーション画像の松本を「シ
ヴァ神となんら変わることのない,グルの報身・法身・変化身」などとし
て,松本に対する絶対的な帰依等を説くDVDを視聴しながら修行を行う
グルヨーガ・マイトレーヤ・イニシエーション(乙B3の59)などの各
プログラムを行った(乙B3の32・69,B29)。
ウAlephは,施設内で松本が唱えるマントラの声を常時流し,構成員
に聞かせている(乙B3の17・18,B9)。
また,松本が唱えるマントラを電気信号に変換したデータが流れている
とされる電気コードを巻いた枠内に食品等を一定時間保管する儀式を修法
と称し,この方法によるパンや麺類,ジュースなどをお供物と称して全国
のAleph管理下の施設に配給して摂取させるほか,
修法を施した上で,
松本が奇跡的な聖水と位置づけた甘露水と称する飲料水も摂取させている
(乙B3の61ないし64,B8の7・8)。そして,これら甘露水を製
造するための修法の設備については,Alephの管理下にある延べ87
施設のうち83施設に存在する(乙B3の17)。
殺人を行うことも正当化される教義に関連する事実
アAlephの幹部構成員は,第4回更新決定後においても,「皆さんは
ね,この世にシャンバラを現象化させるために一生懸命,救済を頑張らな
いといけません。」
(平成24年10月のP28の説法。乙B6の40),
「尊師は,救済活動について次のように説法しています。『オウム真理教
の救済活動とは何かと言うと,まずは真の解脱者,アラハットを3万人作
りだすことだ。そして,その3万人が世界に散ったならば,そのサットヴ
ァのエネルギーによって,例えば,核兵器を持つことが無意味であるとい
うことや,他の宗教理論の中には矛盾があるということがどんどん暴露さ
れてくるだろう。そして,他の宗教理論が徐々に潰されてゆき,やがて真
理は一つになるはずだ。(中略)それが,私の壮大なる計画だね』皆さん
が修行して霊的進化を遂げること,そして,心の成熟を遂げることは,尊
師の壮大なる計画であるシャンバラ化を早めることになります。」(平成
26年1月の説法。乙B6の42)などと説法した。
イAlephの幹部構成員は,第4回更新決定後も,Alephの構成員
に対し,「尊師との一対一の関係に気付いてほしいね。(中略)一対一っ
ていうのはね,その間に誰も入らないってことなんだよね。」,「この一
対一というのは,密教の関係です。(中略)クンダリニー・ヨーガでは,
百対零。帰依の成就です。(中略)グルとの合一,尊師の変化身になって
救済活動をするには,
やはり一対一の関係を強めていかなきゃなりせんし,
成就していってもらわないとならないわけですね。」(平成24年5月の
説法。乙B3の7),「私たち弟子がやるべき実践は,グルが求めておら
れる帰依の実践なんだと思うんですね。それを尊師は,『つまり自分を投
げ出すことだよ』
というふうに説いています。
だから,
もしできる人はね,
『自分をグルに投げ出すぞ』とね,『自分を全て投げ出して帰依するぞ』
と思ってね,成就していただきたいと思う」(平成25年2月の説法。乙
B3の10)などと説法した。
ウAlephの幹部構成員は,「マハームドラーっていうのは,言うまで
もなく,
グルが私たちの心の内側に根付いている汚れをこの世界に投影し,
そこで苦しみを経験させ,それを乗り越えさせるという高度な技法のこと
であると。(中略)要は,これは,最大のポイントは,誰でもかれでも挑
戦するわけではないと。その人が,グルに対する帰依がしっかりとできて
いる人に限ります。」(平成24年6月の説法。乙B6の55),「P4
1さん(注:目黒区公証役場事務長拉致事件等に関与し,平成23年12
月に出頭したP41)の裁判を含めて,現在,教団に降りかかっている状
況は,尊師が弟子達を成長させるためにマハームドラーを課している最中
です。尊師は我々弟子達を最終解脱させようと考えています。」(平成2
6年2月の説法。乙B6の56)などと説法した。(乙B6の1)
Aleph発行の機関誌である「ボーディサットヴァ」には,「マハー
ムドラーの修行とは,『わたしは○○である』とか,『わたしはこうした
い』だとか,『わたしはこのように考える』だとか,『わたしはこれは嫌
だ』とかいう心の働きを完全にストップさせた上で,最終地点に到達して
いるグルに自分の身・口・意を完全に調御してもらうことなのである。」
(平成24年3月発行。B6の57),「マハームドラーの修行は,しば
しば,
グルによってわたしたちに突き付けられることになる。
その場合は,
グルが,わたしたちの内奥に存在している煩悩のデータをこの現象界に投
影し,それが苦しみであることをわたしたちに証智させ,それを帰依の力
によって乗り越えさせようとするのである。」(平成24年9月発行。乙
B6の59)などという記載のある記事が掲載された。
エ第4回更新決定以降,Alephの一般構成員においても,両サリン事
件を始めとする一連の重大事件は,衆生救済を実現するためのタントラ・
ヴァジラヤーナの実践として正しいものであったという認識を有している
者がある(乙B6の1)。
Alephの構成員は,平成24年9月,公安調査官に対し,「オウ
ムが起こしたサリン事件は,
一般の人間界や一般の方から見たら
(中略)
ただの殺人行為にしか見えないと思うので,
尊師を始め,
実行した者は,
人間界で責任を負うべきだと私は思う。ただ,真理勝者に近い尊師があ
のような事件を起こしたら,どのような結果になるかわからないはずが
ない。」,「私は(中略)相手を『救う』ために,相手のカルマを背負
ってまで,自分を犠牲にして,相手のことを考えている『ポア』は,自
己と他人を区別する『殺人』ではないこと(中略)などの理由から,私
は,尊師が(中略)皆を『救う』ために,あのような事件を起こされた
のではないかと思っている。」と述べた(乙B6の62)。
Alephの構成員は,同年11月,公安調査官に対し,「このヴァ
ジラヤーナこそが最も深遠な教えであり,これを実践してこそ修行者冥
利に尽きるというものです。」,「ヴァジラヤーナには修行としての殺
人も含まれますが,それには,グルの命令が大前提になってきます。一
連の事件を振り返れば,グルもステージの高い弟子にしか殺人の命令を
していませんので,そういう意味では,選ばれた弟子にしかできない非
常に高度な修行ともいえます。」と述べた(乙B6の64)。
Alephの構成員は,平成25年8月,公安調査官に対し,「単な
る殺人を行えば犯罪者になりますが,尊師の場合は,弟子の解脱のため
に殺人を指示していますので,これは立派なヴァジラヤーナの実践で
す。」と述べた(乙B6の65)。
Alephの構成員は,平成26年9月,公安調査官に対し,「同じ
殺人という行為であっても,徳が無くて悪業の塊のような人が悪人を殺
すケースと,徳があって人々を救済しているような,尊敬に値する人が
悪人を殺すケースとではその結果が違います。」,「悪人は,将来積む
はずであった悪業を積むことなく次の転生を迎えられるわけです。」と
述べた(乙B6の66)。
Alephの出家構成員は,
平成24年6月,公安調査官に対し,
「私
は,このような神秘体験をいくつか経験しているため,尊師の力と救済
の意思は本物だと確信している。尊師の指示に逆らうなど考えたことも
ないため,事件当時でも現在でも,仮に,尊師から高弟方と同じように
『サリンを撒け』と指示されたら,サリンを撒くだろう。」と述べた(乙
B7の39)。
Alephの構成員は,平成25年8月,公安調査官に対し,「仮に
今,私がP42正悟師(注:P28のこと)に『サリンを撒け』と指示
されても即座に断るが,
尊師から直接
『サリンを撒け』
と指示されたら,
従うかもしれない。(中略)サマナにとって尊師からの指示は絶対であ
り,それに従わないということは,サマナの本質である,尊師に絶対の
帰依を否定することになり,自分自身を否定するようなものだからであ
る。」と述べた(乙B7の40)。
オ「ヴァジラ・ダラへの道」等
P43は,P37弁護士一家殺人事件や両サリン事件等に関与し,殺
人,
殺人未遂等の罪で死刑判決を受け
(平成22年1月19日上告棄却)

死刑確定者として乙拘置所に収容されている。P43は,上記刑事事件
の公判中も,一貫して松本に対する帰依を述べ,各犯行を宗教的な確信
によるものであるとして正当化する供述をした。(乙B4の15ないし
18)
Alephには,第4回更新決定後も,P43と頻繁に面会する構成
員がおり(乙B4の32),P43と面会したAleph構成員は,多
数のAleph構成員に対して,
P43のメッセージとして
「ヴァジラ・
ダラへの道」
と題するメールマガジンを配信した
(乙B4の1・20)

平成24年11月28日付け「ヴァジラ・ダラへの道VOL.32」
には,P43のメッセージとして,「或る親愛なる法友から『今年の年
末年始,都合により帰省もセミナーに参加することもできず,一人で過
ごすことになりました。それは生まれて初めての体験で,とても寂しく
なってしまい,グルに(尊師,寂しいよ)と心の中でつぶやいたら,し
ばらくして尊師から(私がいるじゃないか)という返事が心の中に入っ
てくると同時に至福感に包まれました。』とありました。ありがとうご
ざいます。良かったですね。寂しさを紛らわそうとして不善を為すので
はなく,何かあればグルに意識を向けようとするのは素晴らしいです。
グルはいつも私達を見守って下さっていますからね。(中略)或る親愛
なる法友から『カルマの清算で切羽詰まって,昨夜グルにすがり,一身
上のことをお伺いして,
「私にも分かるように,
示唆ご返事をください!」
とお願いした直後に,このメールが届きました。グルと正大師(注:P
43のこと)
の癒しと励ましのヴァイブレーションに涙がでました。
(中
略)』とありました。ありがとうございます。」との記載(乙B4の3
3)がある。
平成25年1月27日付け「ヴァジラ・ダラへの道VOL.34」に
は,P43のメッセージとして,「偉大なるグルであられる尊師は逆縁
を喜びとすると言われています。救い難いものを救うことの醍醐味を現
わしてますね。」との記載(乙B4の21)がある。
同年3月27日付け「ヴァジラ・ダラへの道VOL.36」には,P
43のメッセージとして,「グルの58歳の誕生日を祝福します。グル
が健康で長生きされますように私の功徳を供養します。どうぞ衆生の為
に苦悩の世界にとどまられますよう祈願します。」との記載(乙B4の
22)がある。
同年4月26日付け「ヴァジラ・ダラへの道VOL.37」には,P
43のメッセージとして,「私たちはグルの弟子として,『グルの弟子
であったらどのように振る舞うか?』と絶えず考えることで,来世もグ
ルの弟子として転生することができるでしょう。(中略)或る親愛なる
法友から『正大師(注:P43のこと)が心を強くする勉強をなさって
いることは,私たちも,これからのカルマの解放をのりこえるための心
の強さを養う励みになります。cにおられても,いつも私たちの先頭に
立って励ましてくださって,本当にありがとうございます。正大師のバ
ックにグルを感じられてなりません。』とありました。(中略)修行者
であり,
グルの弟子であることは本当に素晴らしいです。
」との記載
(乙
B4の23)がある。
5原告の組織等
設立
ア平成19年5月7日,原告の設立が発表され,P2が代表に就任し,P
2を始めとする出家した構成員13名が役員に就任した(なお,P2は,
現在に至るまで代表役員である。)。設立時,「専従会員」(原告が指定
する施設に居住し,
原告の指示に従い原告の活動に従事する者)
が57名,
「非専従会員」(一般の社会生活を営みながら,原告の施設に通うなどし
て原告のサービスを受ける者)が106名であった。このうち,非専従会
員の1名を除く者はかつてAlephにおいて活動していた者であった。
(乙B2の20,B3の215,B5の25,E65)
イ原告は,平成19年3月8日,ホームページに以下の記載のある記事を
掲載した(乙B3の110)。
「4.麻原氏の位置づけ
オウム

アーレフ元代表の麻原氏には,
何らの位置づけも与えません。
新団体は,一連のオウム事件に関して,麻原氏の真摯な反省を最後まで
求めていきます。」
「8.祭壇
アーレフでのシヴァ大神・ヴィシュヌ大神像等は廃止して,『釈迦三
尊像』を採用します(現在・過去・未来の三世の仏陀を現す)。
これは,釈迦を(絶対の)崇拝対象にするためではなく,弟子に対し
て『私を拝まず,自分自身と法(仏法)を帰依の拠り所とせよ』と説き,
自らを含めた特定の人間を神とすることを否定した釈迦牟尼の思想を重
視するためであって,すなわち,オウム・アーレフにおける麻原氏への
個人崇拝の過ちを深く反省して脱却を決意するための象徴です。」
「13.公安調査庁・観察処分への協力
(中略)麻原氏の影響力を払拭する新団体は,理論上・法律上は,観察処
分の対象になるとは考えられませんが,
①新団体の理念であるオウム事
件の贖罪のためには,住民不安の除去を最優先すべきであること,②
新団体として完全に変わりきるためには,客観的な第三者の視点・評価
を尊重すべきであると考え,当面は,観察処分に(任意に)協力するこ
とを公安調査庁幹部に約束しました。」
ウ「基本理念」の制定
原告は,平成19年5月,①人の心身の浄化を通じて,人々と社会へ
の奉仕に努める,②自己を絶対視せず,未完の求道者の心構えを持つ,
③特定の人物を盲信せず,全ての人々に神性を認める,④善悪二元論の
妄想を超えた,叡智・思想に基づく実践を行なう,⑤他の宗教・思想を
強制せず,特定の宗教・思想を強制しない,⑥全ての存在から学ぶ,⑦
全ての調和のための奉仕をするという内容の「基本理念」(同月8日改正
後のもの)を定めた。その付帯文には「私たちは,地下鉄サリン事件・松
本サリン事件・P37弁護士事件をはじめとする,80年代末から95年
にかけて発生した一連のオウム事件が,当時のオウム真理教教祖・麻原彰
晃こと松本智津夫の指示のもと行われた組織的犯罪であったことを,裁判
所の判決や私たち自身の経験に基づいて,明確に認めるものである。」,
「私たちは,本来の志に立ち返り,事件を引き起こした過去の私たちの宗
教的な過ちを次のように反省し,二度とそのような問題を起こさないこと
を決意し,
新しい道を歩んでいくことに努める。

などという記載があり,
上記の宗教的な過ち一つとして「一人の人間である当時の教祖を『神=キ
リスト』と見て,絶対化し,絶対善として,弟子たる自分は,それに絶対
的に服従すべきものと考えた。

ことが挙げられている。
(乙B5の24,
E34)
エ「会則」の制定
原告は,平成19年5月,①「基本理念」に基づき,過去のオウム真
理教事件の反省に立ち,その教訓を生かしつつ,宗教・思想・哲学・科学
及び芸術等を幅広く研究・実践及び公開することによって,人々の心身の
浄化,癒し,人間と自然との調和に尽くし,もって宗教による悲劇が発生
しない精神的に豊かな社会づくりに奉仕することを目的とし(3条),②
原告の基本理念の趣旨に賛同する者であって,本会則を承認し,所定の
手続を経て加入した専従会員及び非専従会員で構成され(6条),③専
従会員から成る総会を年1回以上開催し,基本理念及び本会則の変更,役
員の選任及び解任等を決議し(18条,19条,23条),④総会にお
いて会員の中から選出される役員(代表役員1名,副代表役員1名以上,
役員5名以上)から成る役員会が必要に応じて招集され,運営事項を決議
する(25ないし27条,29条,32条)こと等を内容とする「会則」
を定めた(乙B2の20,B5の24,D79,E34)。
組織規模等
ア原告は,平成26年11月15日付けで,公安調査庁長官に対し,同年
10月末時点における原告の国内構成員について143名(専従会員17
名,同居する非専従会員6名,非専従会員91名,団体に入会していない
が,団体の活動に参加することがあり,かつ,公安調査庁への任意報告に
同意した者29名)と報告した。このうち,専従会員の全員,他の会員の
6割以上が地下鉄サリン事件以前からオウム真理教に加入していた者であ
り,構成員の8割以上が,以前,Alephにおいて活動していた者であ
った(乙B1の44,B2の6,F33)。
また,原告設立後,Alephから原告に移籍した者は少なくとも26
名あった(乙B25)。
イ原告は,平成26年9月末時点で,東京都世田谷区bh丁目i番j号所
在の▲▲ハイムlに主たる事務所を置き,宮城県,千葉県,神奈川県,東
京都,長野県,愛知県,大阪市,福岡県に合計8の施設を保有している(乙
B2の12・31,B6の83,B8の92)。
運営態勢
ア原告は,年1回程度,総会を開催するほか,不定期に役員会を開催し組
織運営に関する意思決定を行っている(乙B2の21,E34)。また,
原告は,代表秘書室,経理部,法務部,広報部,財施部,全国会員教化部
及びウェブ編集部等の中央部署を5施設に配置している
(乙B2の33)

イ原告の専従会員は,全国7か所の原告管理下の施設に居住している(乙
B8の1・5)。
ウ原告は,役員会で決定された内容等を会議に参加した構成員を通じて,
各部署又は各施設に所属する構成員に伝達しているほか,中央部署や各施
設をインターネット回線を通じて接続し,これらの事項や幹部構成員の説
法,集中セミナー等の開催状況を構成員に周知させ,また,平成19年7
月以降,聖地巡礼修行(Alephにおける聖地巡礼とは異なり日本国内
の一般に聖地とされる場所を訪問するもの),集中セミナーの状況等を収
録した「ひかりNEWS」と題するDVDを,同年10月からはこれとP
2の説法を収録したDVDも併せた2枚組の「月刊ひかりDVD」を製作
し(ただし,「ひかりNEWS」については平成22年3月の25号を最
後にして,以降製作されておらず,平成23年5月以降は,聖地巡礼の内
容を収録したDVDが製作されることがある。),毎月1回,在家の構成
員である非専従会員に配布している。(乙B2の1・24・28・29,
E30)
原告の活動状況等
ア「オウムの教訓」サイト
原告は,平成19年8月頃から,オウム真理教時代及びアーレフ時代を
振り返る総括会合を複数回行い,平成20年7月までに,「オウム真理教
(1983~1999年)の活動経緯の総括」と題する文書及び「アーレフ時代(2
000年~2007年)の総括」と題する文書を作成し公表した。
原告は,「オウムの教訓-オウム時代の反省・総括の概要」と題するウ
ェブサイトを開設し,上記各文書を含む内容を掲載しているところ,これ
には,①「麻原の変遷の経緯の総括」として「麻原は,自己中心的で誇大
妄想的な性格であったところ,時を経るにつれて被害妄想的になり,社会
と教団に著しい害悪を及ぼし,教団を破滅に導いていった」とし,②「事
件の要因に関する総括と今後の方針」として,「弟子である信者らが,麻
原と教団を誤って神格化し,個人崇拝した原因について探り,信者や信者
を取り巻く状況にあった問題や,麻原独自の,犯罪を正当化する密教的な
教義の解釈の過ちについても総括」し,「それらの総括・反省に基づき,
今後,元オウム信者で構成されるひかりの輪が,二度と同じ過ちを繰り返
さないために,どうすべきかについて,また今後果たしていくべき社会へ
の償いについて」記し,③「心理学の『影の投影の理論』に基づくオウム
真理教と日本社会」として,「深層心理学者であるユングの『影と投影の
理論』をもとに,オウム真理教および麻原そしてオウム事件を考察」し,
④「心理学的な視点に基づく,
麻原・弟子・現代社会の人格分析」
として,
「麻原については,『空想虚言症』『誇大自己症候群』という人格障害者
であったと総括し,
それに追随した信者らにも同様の傾向があったと総括」
し,⑤「麻原・アレフを盲信する原因・落とし穴-盲信から脱却するため
に」として,「私達の20年間に及ぶ経験を活かして,なぜ,麻原・アレ
フを盲信するかの原因や,その落とし穴と,その盲信からいかに脱却して
いけるかを解説」するなどという記事がある。(乙D72,D73)
イ教本の差し替え等
して,釈迦三尊像を採用するとしており,三仏(弥勒菩薩,観音菩薩及
び釈迦牟尼)の仏画を施設内に掲示していた(乙F11)。
原告は,平成20年4月,構成員に配布していた「マハーカーラのマ
ントラ」及び「マハーカーラの瞑想」と題する教本の差し替えとして,
教材「カーラチャクラ・タントラの真言」を発行・配布する一方,同年
5月,構成員に対し,上記「マハーカーラのマントラ」及び「マハーカ
ーラの瞑想」の廃棄を指示した(乙B1の21,3の118・123・
164,F5)。
P2は,上記のとおり教本を差し替えた点について,「あれ自体はマ
ハーカーラのマントラとして伝授したのは,仏教研究上,明らかにカー
ラチャクラの真言なので,それ自体はそれで良いのですね。それが正し
いというか。ただ,付随した動機として,これは本質的に本当にカーラ
チャクラのマントラでマハーカーラのマントラではないのに,マハーカ
ーラのマントラを残しておけば,それが仏教教義の過ちであるだけでは
なくて,マハーカーラ,イコール,シヴァとして,社会にも批判されな
ければいけないので,二重の問題があるから差し替える動機が強かっ
た。」などと述べた(平成21年7月18日の説法。乙F6)。
P2は,原告が運営する会員サイトに,平成21年7月14日,「代
表緊急メッセージ-来る上高地・乗鞍巡礼の重要性」と題して,「今年
2009年の7月において,仏教の歴史・教義の研究が進み,仏教が説
く大黒天・マハーカーラとは,シヴァ神の化身ではなく,シヴァ神に由
来しつつも,シヴァを降伏(ごうぶく)した仏教の護法神であり,さら
には,大日如来の化身であると解釈できる(解釈するのが主流・正統で
ある)ことがわかりました。シヴァ神に由来しつつ,シヴァを乗り越え
た仏教の神といえば,
これは,
まさに,
オウム真理教を出自としつつも,
それを乗り越えて,仏教の一元論を中心に展開する,現在のひかりの輪
と見事にイメージがだぶります。」と記載した(乙F7)。
平成23年8月に実施された公安調査官による調査において,原告の
8施設に大黒天(マハーカーラ)の写真等が祭壇に掲げられていること
が確認された(乙B3の119)。
公安調査官は,平成24年2月3日,平成26年2月13日及び同年
8月1日,千葉県鎌ケ谷市所在の原告の施設に対する立入検査を実施し
たところ,車庫に設置されたキャビネット等に松本の説法を収録した書
籍等を発見した(乙B3の161)。
ウ哲学教室への変革
P2は,平成24年10月,原告のホームページに,「ひかりの輪と
は何か-宗教ではなく,新しい智恵の学びの場」と題して,「ひかりの
輪は,宗教的な学習は行っていますが,特定の超越者・絶対者を信じる
団体ではありません。すなわち,『宗教』ではなく,これまでの宗教と
いうもののさまざまな問題を越えた,21世紀のための『新しい精神的
な智恵の学びの場』です。」などとする記事を掲載した(乙D128,
F12)。
原告は,平成25年12月,「基本理念」を改正したところ,その内
容は,①思想・哲学の学習・実践を通じて,社会への奉仕に努める,②
宗教ではなく,「宗教哲学」を探求していく,③自己を絶対視せず,
「未完の求道者」の心構えを持つ,④感謝・尊重・愛の実践で,全ての
存在に神性を見いだす,
⑤過去の反省に基づき,
特定の存在を絶対視し
ない,
⑥善悪二元論の妄想を超えた,
叡智・
思想に基づく実践を行なう,
⑦諸宗教の神仏は,人に内在する神性を引き出す存在として尊重する,
⑧「輪の思想」
で,
全ての調和のための奉仕をするというものである
(乙
B2の21,B6の88,D78)。
原告は,
上記基本理念の改正により,自らを
「思想哲学の学習教室」,
「哲学教室」と正式に位置付けたと説明している(乙F12)。
原告は,平成26年3月,「思想哲学の学習教室への改革にともなう
団体活動の場に関する規定」及び「教室内装に関する申し合わせ事項」
を定めたところ,その内容は,①「道場」の呼称を廃止し,「教室」と
呼ぶこと,②恒常的な祭壇を廃止(仮設祭壇のみ),③三仏を廃止(正
面の壁は釈迦のみとする)

④室内のインテリアに非宗教的なものを多
用すること,
⑤上記にともない大黒天仏像も事実上廃止するなどという
ものである(乙B3の139,D131,D132,F12)。なお,
同年5月31日から同年6月1日に行われた聖地巡りの際のP2の宿泊
部屋には三仏の画が掲げられていた(乙B3の140)。
P2は,平成26年3月の公安調査官による調査において,「大黒天
を信仰していると思われるのは,一般の人とか,貴庁だけじゃなくて,
何かを信仰していると思われるのは本意ではない。いずれにしても大黒
天に限らず崇拝の対象にしていると思われるのは嫌。宗教ではなくて教
室だから。」,「今回の内装の変更において,(注:大黒天像を)残さ
ない方が望ましいと思っています。

などと述べた
(乙B3の121)

原告は,平成26年9月,「思想哲学の学習教室への改革を推進する
ための活動規定」及び「教室活動の改革に関する申し合わせ事項」を定
めたところ,その内容は,①祭壇の完全な廃止(仮設祭壇も廃止),②
供養等の儀礼の廃止,
③大黒天関係の法具の破棄,④三仏の完全な廃
止などというものである(乙B1の24,3の141,F12)。
原告は,同年8月までに,各施設の大黒天像を回収し,焼却処分した
(乙B3の121,122,B22,D134,D135,D192)。
エ外部監査委員会
原告は,平成23年12月,「ひかりの輪外部監査規約」を定めたと
ころ,これによればひかりの輪外部監査委員会は,地下鉄サリン事件を
始めとするオウム真理教による一連の事件の再発防止の観点から原告が
適正な団体運営を行っているかを監査し,必要に応じて,勧告・公表・
告発等を行い,原告が社会と融和することによって,オウム問題の解決
に資することを目的とし,人格・識見に優れた原告外部の者(ただし,
原告会員であった経歴を持つ者を除く。)から,原告が選任する3名以
上の委員によって構成され,原告が所有し又は管理する土地又は建物に
立ち入り,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査すること,原告会員
に必要な質問をすること,原告から定期的に報告書を徴収し,検査する
こと,原告から教義資料及び定期刊行物を,刊行後速やかに徴収し,検
査することができ,監査の結果,必要な場合は勧告・公表・告発等を行
うものとされている(乙B8の58・72)。
同委員会委員長には,P44(松本サリン事件の被害者),同委員に
は,P10(甲大学●学部教授・内観学者),P45(宗教法人丙神社
責任役員理事),P46(地下鉄サリン事件被害者親族)及びP47が
就任した(なお,同委員会の委員は,その後,P44,P10及びP4
5の3名になった。甲11,21,乙B8の72・74・88,D10
7,D117,D165ないし167,F15)。
P10教授は,平成21年から,原告の構成員らに対して内観の指導
を行っているところ,同教授によれば,内観とは,母親など身近な人に
関して,これまでにしてもらったこと,してあげたこと,迷惑を掛けた
ことの3点を想起してもらうことにより,先入観を排した事実を思い起
こす手法である。原告は,原告管理下の各施設において,同教授指導の
もと内観セミナーを開催している。
(甲21,
乙B8の74ないし77,
D109,D112,D115,D116,F14)
P10教授は,平成26年12月,公安調査官に対し,内観の実施を
経て,原告の人たちが,松本やオウム信仰から脱却していることは間違
いないと思う旨述べた(乙B36)。
ひかりの輪外部監査委員会は,平成26年11月,原告には団体規制
法5条の観察処分の適用要件に該当する事実は何ら認められなかったと
する外部監査結果報告書を作成した(乙D71)。
オAlephとの関係
原告は,平成22年9月,Alephからの退会に関する相談窓口を
設置し(乙D158),平成24年2月,「アレフ(Aleph)問題
対策室」を設置するとともに,「Aleph問題の告発と対策」と題す
るブログを開設した(乙D159)。原告の構成員は,Alephから
の退会を検討している者の相談を受けるなどしている(乙D160,D
161)。
オウム真理教犯罪被害者支援機構は,平成23年7月,Alephに
対して,同機構に著作権が帰属する松本の著作物を使用しないように通
告した。原告は,平成24年頃から,同機構に対し,その証拠収集につ
本の説法を収録した書籍等を提供したり,Alephの元構成員から提
出してもらったAlephからの教材の購入に関するアンケートを提供
したりしている(乙D71,D92,D99,D100,D159,D
164,D224)。
P2の言動
P2は,平成24年5月の説法において,「オウム真理教,麻原彰晃とい
う人物,これは一連の教義及び事件に関しては,私は今完全にそれを否定し
てですね,それを乗り越えようとして,『ひかりの輪』というのをやってい
ます。あれは納得がいかないと。そして,私はそれを2003年ぐらいから
反旗を翻して,教団が分裂。で,2007年には麻原の教材は一切捨てて,
私の自立っていうもの,これが生じたわけです。(中略)『ひかりの輪』と
して自立,
独立してから,
賠償も含めて毎日いろんな苦労をする中で,
ああ,
そうだなと,麻原にも食べさせてもらったことに関しては,事件その他の教
義に関しては徹底して超越しなければならないが,少なくとも食べさせても
らったことに関しては感謝せねばならんのかな,そういうふうに思うように
なりました。」などと説いた(乙B1の27,B3の142)。
P2は,平成25年3月の説法において,「単純に物の豊かさによって幸
福になると感じられない人が一部にいるということは,御理解いただけると
は思います。(中略)そういう人たちは,オウム真理教とか(中略)にはい
っていったんじゃないか,そういうふうに思います。(中略)物の豊かさが
絶対ではなくて,心の豊かさ,精神性を高めることがこれからの幸福にとっ
て重要なんじゃないか。特に,自分はそうだっていうこと,それ自体はです
ね,私は,オウム真理教に限りませんが,間違いだとは思っていません。た
だ,その心の幸福をオウム真理教は,まあ,解脱・悟りといったような形で
追求して,で,その過程の中で自分たちで得た結果,これに教祖をはじめと
して,
弟子たちが,
ある意味じゃあ過信を持って,
自分たちがこの世を正す,
そして真の幸福を広める神の化身,
集団だと,
そういうふうに慢心に陥って,
で,それと対抗する既存社会というものは悪であると断じてですね,そうい
ったものに対する対処は武力をもっても,暴力をもってもやるべきではある
という感じになってしまった点,それは間違いであったのかなと,そういう
ふうに思います。そういった意味では,まあ,オウム真理教というものであ
ってもですね,その暴力主義的な,その武力革命の思想はさておき,その中
に何か良いことがあったんだろうというのは,御理解いただける方もいらっ
しゃるとは思う」などと説いた(乙B1の28,B3の144)。
P2は,平成25年4月の講演において,「瞑想しただけでは,なかなか
悟れない,体得できないということで出てきたのが,麻原彰晃による試練な
んですね。これを『マハームドラー』と言います。麻原は弟子をいじめるわ
けですね。(中略)グルと弟子のプライベートな関係で,グルが弟子をいじ
めて,それに対して弟子は自己愛にとらわれない瞑想をして,その平常心を
保つという訓練は意義があったかなというふうには思っています。」などと
述べた(乙B1の41,B3の162,B6の73)。
P2は,平成25年4月の講話において,「単純にそのマハームドラーっ
ていうのは効果があったということで肯定すると,ものすごく大変な問題に
なるだろうし,ものすごく強い恐怖心をですね,一般社会に振りまいてしま
う,それが1995年以来あったということですね。で,そのマハームドラ
ーの考え方を,この現在の社会の中で合理的に活かすことができるか,これ
は非常に難しい問題だということになります。」,「神仏が与える我々の修
行と考えるということになるんじゃないかなと思うんです。つまり,まあ,
全ての人がマハームドラーのグルだと考えるわけです。で,それは当然です
ね,その人たちがやっていることが違法行為であったならば,皆さんはそれ
を甘んじて受けて,マハームドラーのグルとするということは,してはなり
ません。」などと述べた(乙B3の163,B6の74)。
P2は,平成25年5月の講話において,「オウム自体が,近代日本の中
から生まれたもので,オウム的なものが近代日本には,その前にもたくさん
あった。
だから,
オウム真理教の後にもまた,
オウム的なものが現れてくる。
(中略)オウム的なものっていうのは,昔から繰り返しあって。それを生み
出す日本の体質があって,オウム後20年くらい経った今,第2,第3,第
4くらいですかね,オウム的なもの,これが現れつつあって。」などと述べ
た(乙B1の37,B6の71,B7の11)。
P2は,平成25年6月の講話において,「オウム真理教という,日本が
生んだ,その団体が,過去の日本の戦争の性質を含んだ,すなわち,日本社
会が生んだものではないかという,日本とオウムのつながり。そして,アラ
ブの自爆テロですね,イスラムの自爆テロが,自決,自爆,特攻隊の文化を
持った,日本が感染させたものではないか。そして,日本の隣国の北朝鮮が
やっていることが,正に大日本帝国と似ているのではないかという,いろん
なものにつながり,これを認める思想,これが輪の思想ないし輪の智慧だと
私は思っています。」などと述べた(乙B1の38,B6の72)。
P2は,平成26年6月の講演において,「私たちの考えとしては,現代
社会の中において,心の豊かさや幸福・解放,悟りというのは,やはり非常
に重要なことではないかと。オウム真理教の間違いというのは,それを求め
たことではなく,それを実現させるための手段が間違い,途中から道を外し
たことではないかと考えておりまして,まあ,ああいった問題の再発の防止
のためには,適切な形でオウムが当初求めていた,そのオウム信者が当初求
めていた心の豊かさや解放を得る道を作り出すことではないかというような
視点から,
こういう形になっております。

などと述べた
(乙B3の154)

第2争点1(原告とAlephの関係等)について
1団体規制法4条2項にいう「団体」の意義
団体規制法にいう「団体」とは,同法4条2項において「特定の共同目的を
達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体」と規定されているとこ
ろ,同法が観察処分等の対象としているのは,その役職員又は構成員が団体の
活動として過去に無差別大量殺人行為を行った団体であり,現在も無差別大量
殺人行為の実行に関連する危険な要素を有している団体であること(同法1条,
5条1項,4項)も考慮すれば,
「特定の共同目的」としては,多数人の集団
に,個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され,又は存在する目的で
あって,構成員各人が当該集団としての行動をする際の指針となり得ると評価
できる程度の特定の共同の目的があれば足りると解される。
また,
「結合体」としての多数人の集団の結び付きの強さの程度としては,
各構成員がこの共同の目的を達成するためにこれに沿った行動をとり得る関
係にあることを要するところ,特定の共同目的が,個々の構成員個人の意思と
は離れて独自に形成され,又は存在し,各構成員がこのような共同の目的に沿
った行動を行うには,当該集団において,構成単位である個人を離れて組織体
としての独自の意思を決定し得ることがその前提となるものであるから,
「結
合体」というには,そのような組織体としての独自の意思を決定し得るもので
あることを要するものと解される。
したがって,
「継続的結合体」とは,多数人の組織体であって,その構成単
位である個人を離れて,組織体としての独自の意思を決定し得るもので,相当
の期間にわたって存続すべきものをいうと解される。
2本団体が「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量
殺人行為を行った団体」
(団体規制法5条1項柱書)に該当するか否かについ

オウム真理教の教義は,衆生救済を最終目的としそれを最速で達成するた
めには,たとえ自己は悪業を積むことになっても他者に対して善業となるな
らば,それを最高の実践課題として実践するという点に特色があるタント
ラ・ヴァジラヤーナ(具体的規範として,悪業を積んでいる魂は早く命を絶
つべきであるとか,結果のためには手段を選ばないとする五仏の法則があ
る。
)を最上位の教えとして位置付け,その実践として,苦しみの限界に自
己を置き,そこにおいて一切乱れない心を形成する修行であるマハームドラ
ーの修行を行い,シヴァ神の化身である松本に対する絶対的帰依を培い,松
また,オウム真理教の教義は,両サリン事件の犯行動機が本件政治上の主
義を実現することにあると
した者の多くがマハームドラーの修行の一環としてこれらの犯行を実行し
る衆生救済の実現のため,日本・世界をオウム真理教のシャンバラ(理想郷)
とする必要があり,そのための具体的かつ世俗的側面を有する手段として,
松本を王ないし独裁者とする祭政一致の専制国家体制を構築するという本
件政治上の主義と密接不可分に結び付いていたと認められる。
そして,本件政治上の主義を実現するためという両サリン事件の犯行動機
やその犯行態様,これらの犯行に至る過程の中で,オウム真理教が拠点拡大
や構成員の獲得を進め,武装化を推進し,国家行政組織を模倣した省庁制度
からすれば,オウム真理教は,本件政治上の主義とも密接不可分なオウム真
理教の教義を広め,これを実現することを共同の目的としていたということ
ができ,その構成員も,この共同の目的を達成するために,オウム真理教と
いう組織体としての独自の意思決定に従う構成員として,互いに結合してい
たということができる。
そうすると,団体規制法4条1項にいう「無差別大量殺人行為」に該当す
る両サリン事件は,オウム真理教の役職員又は構成員が,オウム真理教の活
動として実行したものであり,オウム真理教は,団体規制法5条1項所定の
「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為
を行った団体」に該当する。
本件観察処分を受けた団体
(本団体)
は,
「麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・
創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,
同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」とされて
いるところ
時において,「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別
大量殺人行為を行った団体」に該当することも明らかであり,また,Ale
phが正式に発足された旨公表されたのは,本件観察処分がされた直後であ
よれば,Alephは,その発足当時において,本団体の少なくとも一部で
あったと認めるのが相当である。
3本件更新決定時のAleph
次に,本件更新決定時におけるAlephと本団体の同一性についてみると,
Alephは,外形上は,①松本については,現実の教団運営を統括する教
祖・代表者ではなく,純粋に霊的な意味での瞑想修行等における「観想の対象」
ないし「霊的存在」と位置付け,②両サリン事件等との関係が指摘されてい
る五仏の法則については,削除して廃棄し,誤解を招く用語等については事件
や犯罪の肯定に結び付けられる余地のないように公式解釈書を作成・配布し,
事件と無関係な教義・修行法を採用すること等を方針として発表している(認
しかし,本件更新決定時においても,Alephでは,松本の説法を収録し
というのであって,Alephは,本件観察処分後の期間の経過やその名称変
更を経ても,オウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,松
本及びオウム真理教の教義に従う者によって構成される団体であると認める
のが相当である。
したがって,Alephは,本件更新決定時においても,本団体の少なくと
も一部を構成するものというべきである。
4原告について
観察処分を受けた団体が複数の集団に分派又は分裂した場合における団体
の同一性の判断基準
ア証拠(乙F28)及び弁論の全趣旨によれば,無差別大量殺人行為を行
う組織が,組織の離合集散を行うことがあることが認められ,無差別大量
殺人行為を行い観察処分を受けた団体が,複数の集団に分派又は分裂する
ことも想定される。しかしながら,団体規制法には,観察処分後に対象団
体が複数の集団に分派又は分裂し,新たに形成された集団が別の「団体」
を構成した場合に,いずれの団体に対しても期間更新をすることができる
旨を明示した規定はなく,団体規制法5条4項にいう「第1項の処分を受
けた団体」と同法5条1項にいう観察処分の対象となった「当該団体」の
同一性の判断基準についても明確な定めはないのであって,このような場
合に,双方の集団に対し別個に又は「連合体」若しくは「支部,分会その
他の下部組織」として当初の観察処分の更新決定を行い得るかは,解釈上
の問題である。
もっとも,被告は,原告とAlephが団体規制法4条2項にいう「継
続的結合体」に当たると主張し,原告とAlephが「連合体」に当たる
又は原告がAlephの「支部,分会その他の下部組織」に当たると主張
するものではなく,原告とAlephとが別個の団体に当たるとしてもそ
れぞれに期間更新をすることができると主張するものでもない。
そこで,以下では,観察処分を受けた団体が後に複数の集団に分派又は
分裂した場合において,当該各集団が団体規制法における同一の団体に該
当するか否かという観点から原告とAlephの関係を検討する。
イ上記の被告の主張を前提とすると,上記の団体の同一性は,結局のとこ
ろ,上記1のとおりの団体規制法4条2項の「団体」の意義に照らして判
断するほかなく,同「団体」は,特定の共同目的を有することが必要であ
るから,団体の同一性の判断基準としても,まず,各集団において,①
構成員個人の意思とは離れて当該団体としての行動をする際の指針となり
得る特定の共同の目的に同一性があるかどうかが検討されることになる。
次に,人的関係・組織構成については,同項が「継続的結合体」と規定
する以上,観察処分を受けた団体が複数の集団に分派又は分裂した場合に
ついていえば,各集団が,その構成単位である個人を離れて,あるいは,
それぞれの集団を離れて,一つの組織体としての独自の意思を決定し得る
もので,相当の期間にわたって存続すべきものであることを要し,分派又
は分裂した各集団について,②各集団が,それぞれの集団を離れて,一つ
の組織体としての独自の意思を決定し得るものであり,
各集団の構成員が,
その意思決定に従い共同の目的に沿った行動をする関係があるかどうかが
検討される必要がある。
ウこの点について被告は,団体の同一性を判断するに当たっては,構成員
個人の意思とは離れて当該団体としての行動をする際の指針となり得る特
定の共同目的に同一性があるかどうかという点が最も重要であり,各構成
員が当該共同目的を達成するために決定された団体の意思を各構成員が実
現する行為を行うなどの共同の目的に沿った行動をするという点において,
基本的な結合関係がなお保持されているか否かという点も検討される必要
があると主張する。
①特定の共同目的に同一性があるかどうか,②各構成員が当該共同目
的を達成するために決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行
うなどの共同の目的に沿った行動をするという関係があるかどうかが検討
されるべきことは上記イで説示したとおりであるが,構成員が共同の目的
に沿った行動をするには,一つの団体としての意思決定がされることが前
提となるはずであり,被告の主張も,この点を否定する趣旨であるとは解
されない。本件についていえば,オウム真理教の教義を広め,これを実現
するという共同の目的が存在しても,これが共同の行動として具現される
には,組織体としての独自の意思決定が必要であるというべきであって,
かかる要素を無視することはできない。
なお,無差別大量殺人行為を行う団体が,閉鎖的・密行的な性格を有す
る場合には,外部からは団体内部の意思決定過程を知ることが困難である
ということが考えられるが,これをうかがわせる間接事実から推認するこ
とが可能である上,この場合の団体の同一性の判断は,既に観察処分を受
けている団体について問題になるものであり,公安調査庁長官は,観察処
分により,当該団体の意思決定過程をうかがわせる資料を入手することが
可能である。加えて,そもそも,立証の難易により団体の同一性の判断基
準が左右されるべきものではない。
エそして,無差別大量殺人行為を行った団体の活動状況を明らかにし又は
当該行為の再発を防止するために必要な規制を行うという団体規制法の目
的に照らして検討すると,観察処分を受けた団体の共同目的が,構成員個
人が行う当該団体としての行動を一義的に特定する程度に具体的で明確で
あり,当該団体が無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が高いといい得るよう
な場合には,組織体としての独自の意思を決定し得るかどうかという点に
おいても,当該共同目的の存在を相当程度重視することが相当とも考えら
れる。他方,観察処分を受けた団体の共同目的が,構成員個人が行う当該
団体としての行動の原理や指針として具体性や明確性に乏しいような場合
には,構成員個人が行う当該団体としての共同の行動として具現されるに
は,組織体としての独自の意思を決定し得る仕組みが存在し相応に機能す
ることが前提となるというべきであり,当該共同目的の存否のみを主たる
考慮要素として団体の同一性を肯定することはできないというべきである。
したがって,団体の同一性を判断するに当たっては,観察処分を受けた
団体の共同目的の内容,明確性の程度,構成員への受容のされ方等を勘案
して,各集団が,それぞれの集団を離れて,一つの組織体としての独自の
意思を決定し得るものであり,各集団の構成員が,その意思決定に従い共
同の目的に沿った行動をする関係があるかどうかが検討される必要がある。
以下,以上の判断の枠組みに従って,原告とAlephの関係について
検討する。
原告の設立経緯
ア原告の設立に至る経緯は,認定事実
るところ,原告の代表者であるP2は,平成14年から平成15年頃には
Alephの代表者として活動し,外形上,松本の影響力を払拭したかの
ように装いながら,真実は松本に対する絶対的帰依を維持しつつ,松本の
説く教義を広め,松本の意思を実現することを目的とする活動(
「麻原隠
察処分を免れるためにファウンデーション理論に基づいてAlephと
イしかし,原告が設立されるに至った背景には,P12(松本の妻)が平
成14年10月に刑務所を出所し,P13(松本の三女)と共にAlep
hの組織運営に介入するようになり,一方P2が平成15年6月頃からA
lephの運営に実質的に関与しなくなって,P2派(M派)と反P2派
(A派)が対立するに至る
告の設立に際して,原告に参画する者とそれ以外の者との間で,観察処分
を免れるためにAlephを意図的に分派又は分裂させることを合意し
たなどと認めるに足りる証拠はなく,むしろ,当時,Alephの集団指
導体制を構成していたP1,P29,P30及びP31は,P2の考えに
理解を示したものの,中堅幹部構成員らに反発され,その後,脱会や役員
の辞任を余儀なく
が説いた,二つのグループが役割分担をし,一つのグルー
プは特定の限られた人たちの信仰のためにあり,もう一つのグループは幅
広く救済のためにダイナミックにフォームを変えていくという考えが,A
lephに残る者の間で広く共有されていたというわけではない。
ウ原告の設立に先立つP2の言動についてみると,P2は,平成17年頃
には,Alephとは別の団体を設立する考えを表明し,それが松本の意
き合いに出された松本の発言は,松本の逮捕前のものや,破防法に基づく
解散指定請求(平成8年7月)に際してのものであり(認定事実2
松本がAlephと原告の分派を念頭に置いて発言したものではないこ
とは明らかである。
エ以上のとおりであって,原告の設立は,別団体を組織して,別団体との
間で役割分担しながら活動することを求めていた松本の意思に従ってされ
たものであるとまでは認めることはできない。
本件更新決定時の原告とAlephの関係
ア上記2のとおり,オウム真理教ないし本件観察処分を受けた本団体は,
オウム真理教の教義を広め,これを実現することを共同の目的としていた
と認められるところ,オウム真理教の教義自体が,団体において無差別大
量殺人行為に及ぶ危険性を内包するものとしても,個々の構成員が行う団
体としての行動を一義的に特定する程度に具体的で明確であるとは認め難
い。むしろ,原告が設立される前のAleph内においても,どのような
団体運営が松本に対する真の帰依であるのかについてP2派とA派の対立
があったのであり,松本に対する絶対的帰依というオウム真理教の教義の
本質的部分さえ,多義的であり,個々の構成員によって異なる解釈が存在
するものであるから,これが構成員の団体としての行動として具現される
には,組織体として独自の意思を決定し得ることが前提とならざるを得な
い。
本件政治上の主義についても,両サリン事件当時には,これがオウム真
理教の教義と密接不可分に結び付いていたとしても,松本が死刑確定者と
して長期にわたり収容されている本件更新決定時において,なおオウム真
理教の教義と密接不可分に結び付いているとはいい難いし,仮に同時点に
おいて本件政治上の主義が存続しているとしても,松本を王ないし独裁者
とする祭政一致の専制国家体制を構築するために構成員がどのような行動
をとるのかは不明確といわざるを得ない。
そうすると,仮に,原告が,オウム真理教の教義を広め,これを実現す
る目的を有するものと認められたとしても,そのことから直ちに本件更新
決定時における原告とAlephが一つの組織体ないし団体と認められる
ということはできず,原告とAlephの間において,一つの組織体とし
ての独自の意思を決定し得る仕組みが存在するのかどうか,また,その仕
組みが現実に機能しているのかどうかを吟味することを要するというべき
である。
イ上記のような見地から,原告とAlephの関係について検討すると,
原告の設立に当たって制定された「基本理念」では,松本に対する絶対的
帰依が否定されてお
ヴァ神の化身であるとされたことを踏まえ,シヴァ神を崇拝しないものと
これに対して,Alephは,原告の分派後,むしろ,松本への帰依を
表面的には,原告とAlephの性格は相当に異なるものとなっている。
この点について,原告とAlephが相互に連絡をとって役割を分担し
合っているというべき事情はないし,原告の設立経緯に加えて,認定事実
,Alephからの退会を検討する者の相談を受
けるなどしたり,Alephに関する著作権問題についてオウム真理教犯
罪被害者支援機構に協力したりしていることからすると,むしろ,原告と
Alephは対立関係にあると評価することができる。
そして,原告の設立が表明された平成19年5月から本件更新決定がさ
れるまでの間に7年以上経過しているところ,その間にAlephから原
間で,幹部構成員の人事交流があったとか,同一の施設を共同利用したこ
とがあるとか,同一の事業や行事を共同開催したことがあるなどというこ
とを認める証拠はないし,原告の幹部構成員とAlephの幹部構成員の
間で何らかの連絡や指示があったと認めるに足りる証拠もない。
以上によれば,本件更新決定時の原告とAlephにおいて,不定式な
ものも含めて一つの組織体としての独自の意思を決定し得る仕組みが存在
していたとは認められず,原告の設立後,一つの組織体としての独自の意
思を決定した事実も認めることもできない。
ウところで,松本が,原告とAlephの双方を統括し,原告及びAle
phがその意思決定に従う関係にあるとすれば,両者の団体の同一性を肯
定する余地がある。しかし,上記3で説示したところによれば,Alep
hは,本件更新決定時においても,松本の意思を尊重し,松本の意思を慮
って団体運営をしているということもできようが,そのことから直ちに,
原告及びAlephの双方又は一方の団体としての意思決定を松本がして
いるとはいえない。
また,松本は,長期にわたり乙
アのとおり,平成8年頃には,接見した弁護士を介して,本団体の構成員
に対するメッセージを発するなどしたこともあったが,以来,本件更新決
定時に至るまで,同様のメッセージを発したと認めるに足りる証拠はない
P13は,平成24年1月23
日から平成26年7月31日までの間に,70回以上,松本との面会を申
し込み,二女P39,長男P19及び二男P20も複数回にわたって松本
との面会を申し込んだことが認められるが,松本は,平成20年6月10
日に二女及び二男と面会したのを最後に,面会をしていない。以上によれ
ば,近年,松本が原告に関する何らかの指示をしたと認めるに足りる証拠
はなく,本件更新決定時において,松本が原告の代表者及び主宰者である
とはいえないともいい得るところであって,少なくとも近年,松本が,原
告及びAlephの意思決定に関与したとは認められない。そうすると,
原告及びAlephが,松本がした意思決定に従うという意味において一
つの組織体であるということも困難である。
この点について,被告は,松本が明示的な意思や指示を示さない場合で
も,構成員は,過去の松本の説法等や本団体の教義に顕現された松本の意
思を推し量って行動していることを指摘するが,このような事情をもって
松本が団体としての意思決定をしているということは困難である。また,
上記の松本の意思も上記アで検討したオウム真理教の教義と同様,多義的
であって解釈の余地があるものであるから,上記イのとおり,原告とAl
ephが一つの組織体として独自の意思を決定し得る仕組みが存在すると
は認められない以上,被告が主張するように評価するためには,原告及び
Alephにおいて松本の意思に沿わない意思決定がされた場合には,松
本がこれに対して異議を述べたり指示をしたりすることが前提とならざる
を得ない。そうでなければ,原告及びAlephとしては,自らした意思
決定やそれに基づく行動が松本の意思に沿うものか否かすら確認すること
ができないというべきである。
しかるところ,
上記のとおり,
少なくとも,
近年,松本が乙拘置所外の者と意思疎通を図ったと認めるに足りる証拠が
ない以上,
原告及びAlephが松本の意思を確認する術はなく,
やはり,
松本が団体としての意思決定をしているということはできない。
原告とAlephが組織体としての独自の意思決定に従い共同の行動をと
り得るかどうかについて
の設立経緯や本件更新決定時におけ
る原告とAlephの関係に照らせば,原告とAlephが一つの組織体と
して意思決定をすることができるというべき事情は見当たらず,原告とAl
ephが一方の意思決定に他方が従うという関係にあるとも認められない。
が原告及びAlephの団体としての意思決定をしているということはでき
ない。
以上のとおりであって,原告とAlephが一つの組織体としての独自の
意思決定に従い共同の行動をとり得る関係にあると認めることはできない。
なお,被告は,原告が,オウム真理教の教義を広め,これを実現するため
に,
「麻原隠し」の一環として設立され,活動している団体であると主張する
が,原告とAlephが一つの団体と認められるかどうかの判断に当たって
は,上記で説示した観点から,両者が一つの組織体としての独自の意思を決
定し得るものであると評価できるかどうかが考慮されるべきであり,原告の
活動内容にオウム真理教のそれと類似する点があったり,構成員が松本に帰
依したりしているなどの事情があったとしても,原告とAlephが一つの
団体であると評価することはできないというべきである。
第3結論
上記に説示したとおりであり,本団体は,本件観察処分当時においても本件
更新決定時においても「団体」に該当し,Alephは,本件更新決定時にお
いても,本団体の少なくとも一部を構成するが,原告とAlephが一つの団
体であると認めることはできない。
ところで,本件更新決定の決定書においては,被請求団体の表示欄には,対
象団体が本団体,
「主たる事務所の所在地」が①埼玉県越谷市ad丁目e番f
号「▲▲▲マンション」g号室,②東京都世田谷区bh丁目i番j号「▲▲
ハイム」l号室,
「主幹者」がP7,P8及びP2と記載されており(前提事
P2は原告の代表者で
あるから,本件更新決定は,原告も名宛人としていたとみるべきものというの
が相当である。したがって,原告の主位的請求は理由がない。
もっとも,上記のとおり,原告とAlephが一つの団体であると認めるこ
とができない以上,本件更新決定のうち原告を対象団体とした部分は,違法で
あるといわざるを得ないから,その余の争点について判断するまでもなく,原
告の予備的請求は理由がある。
よって,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法64条ただし書を適用し
て,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官林俊之
裁判官梶浦義嗣
裁判官高橋心平
別紙2
決定目録
1被請求団体等の表示
被請求団体
麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,
これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者に
よって構成される団体
主たる事務所の所在地
ア埼玉県越谷市ad丁目e番f号「▲▲▲マンション」g号室
イ東京都世田谷区bh丁目i番j号「▲▲ハイム」l号室
代表者
氏名麻原彰晃こと松本智津夫
昭和○○年○月○日生(当○○年)
職業団体主宰者
居所東京都葛飾区cm丁目n番o号乙拘置所
主幹者
ア氏名P7
昭和○○年○月○日生(当○○年)
職業団体役員
住所大阪市生野区丁p丁目q番r号
イ氏名P8
昭和○○年○月○日生(当○○年)
職業団体役員
住所札幌市豊平区戊s条t丁目u番v号
ウ氏名P2
昭和○○年○月○日生(当○○年)
職業団体役員
住所東京都世田谷区bh丁目i番j号
「▲▲ハイム」l号室
2主文
平成15年1月23日付け,平成18年1月23日付け,平成21年1月
23日付け及び平成24年1月23日付けで期間更新決定を受けた,平成1
2年1月28日付け当委員会決定に係る被請求団体を,3年間,公安調査庁
長官の観察に付する処分の期間を更新する。
被請求団体は,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定
する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,次の事項を公安調
査庁長官に報告しなければならない。
ア被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒
の位階
イ被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,
契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名
ウ被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項に
おいて同じ。
)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実
質的に被請求団体が経営しているものをいう。
)の種類及び概要,
事業所の
名称及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに
各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記
録で作成されている場合には,当該電磁的記録の保存媒体の保管場所)
以上
別紙3
団体規制法の定め
11条(目的)
この法律は,団体の活動として役職員(代表者,主幹者その他いかなる名称
であるかを問わず当該団体の事務に従事する者をいう。以下同じ。
)又は構成
員が,例えばサリンを使用するなどして,無差別大量殺人行為を行った団体に
つき,その活動状況を明らかにし又は当該行為の再発を防止するために必要な
規制措置を定め,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与する
ことを目的とする。
22条(この法律の解釈適用)
この法律は,国民の基本的人権に重大な関係を有するものであるから,公共
の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであって,いや
しくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。
33条(規制の基準)
1項
この法律による規制及び規制のための調査は,1条に規定する目的を達成
するために必要な最小限度においてのみ行うべきであって,いやしくも権限
を逸脱して,思想,信教,集会,結社,表現及び学問の自由並びに勤労者の
団結し,及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と
権利を,不当に制限するようなことがあってはならない。
2項
この法律による規制及び規制のための調査については,いやしくもこれを
濫用し,労働組合その他の団体の正当な活動を制限し,又はこれに介入する
ようなことがあってはならない。
44条(定義)
1項
この法律において「無差別大量殺人行為」とは,破壊活動防止法(以下「破
防法」という。
)4条1項2号ヘに掲げる暴力主義的破壊活動(注・政治上
の主義若しくは施策を推進し,支持し,又はこれに反対する目的をもって,
刑法199条(殺人)に規定する行為をすることが,これに当たる。
)であ
って,不特定かつ多数の者を殺害し,又はその実行に着手してこれを遂げな
いもの(この法律の施行の日から起算して10年以前にその行為が終わった
ものを除く。
)をいう。
2項
この法律において「団体」とは,特定の共同目的を達成するための多数人
の継続的結合体又はその連合体をいう。ただし,ある団体の支部,分会その
他の下部組織も,この要件に該当する場合には,これに対して,この法律に
よる規制を行うことができるものとする。
55条(観察処分)
1項
公安審査委員会は,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として
無差別大量殺人行為を行った団体が,次の各号の掲げる事項のいずれかに該
当し,その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められる場合に
は,当該団体に対し,3年を超えない期間を定めて,公安調査庁長官の観察
に付する処分を行うことができる。
1号当該無差別大量殺人行為の首謀者が当該団体の活動に影響力を有して
いること。
2号当該無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役
職員又は構成員であること。
3号当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員(団体の意思
決定に関与し得る者であって,当該団体の事務に従事するものをいう。
以下同じ。
)であった者の全部又は一部が当該団体の役員であること。
4号当該団体が殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領を保持しているこ
と。
5号前各号に掲げるもののほか,当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危
険性があると認めるに足りる事実があること。
2項
前項の処分を受けた団体は,政令で定めるところにより,当該処分が効力
を生じた日から起算して30日以内に,以下に掲げる各号の事項を公安調査
庁長官に報告しなければならない。
1号当該処分が効力を生じた日における当該団体の役職員の氏名,住所及
び役職名並びに構成員の氏名及び住所
2号当該処分が効力を生じた日における当該団体の活動の用に供されてい
る土地の所在,地積及び用途
3号当該処分が効力を生じた日における当該団体の活動の用に供されてい
る建物の所在,規模及び用途
4号当該処分が効力を生じた日における当該団体の資産及び負債のうち政
令で定めるもの
5号その他前項の処分に際し公安審査委員会が特に必要と認める事項
3項
1項の処分を受けた団体は,政令で定めるところにより,当該処分が効力
を生じた日からその効力を失う日の前日までの期間を3月ごとに区分した各
期間(最後に3月未満の区分した期間が生じた場合には,その期間とする。
以下この項において同じ。
)ごとに,当該各期間の経過後15日以内に,次に
掲げる事項を,公安調査庁長官に報告しなければならない。
1号当該各期間の末日における当該団体の役職員の氏名,住所及び役職名
並びに構成員の氏名及び住所
2号当該各期間の末日における当該団体の活動の用に供されている土地の
所在,地積及び用途
3号当該各期間の末日における当該団体の活動の用に供されている建物の
所在,規模及び用途
4号当該各期間の末日における当該団体の資産及び負債のうち政令で定め
るもの
5号当該各期間中における当該団体の活動に関する事項のうち政令で定め
るもの
6号その他1項の処分に際し公安審査委員会が特に必要と認める事項
4項
公安審査委員会は,1項の処分を受けた団体が同項各号に掲げる事項のい
ずれかに該当する場合であって,引き続き当該団体の活動状況を継続して明
らかにする必要があると認められるときは,その期間を更新することができ
る。
5項
3項の規定は,
前項の規定により期間が更新された場合について準用する。
この場合において,
3項中
「当該処分が効力を生じた日から」
とあるのは
「期
間が更新された日から」と読み替えるものとする。
6項〔略〕
67条(観察処分の実施)
1項
公安調査庁長官は,
5条1項又は4項の処分
(以下
「観察処分等」
という。

を受けている団体の活動状況を明らかにするため,公安調査官に必要な調査
をさせることができる。
2項
公安調査庁長官は,観察処分等を受けている団体の活動状況を明らかにす
るために特に必要があると認められるときは,公安調査官に,観察処分等を
受けている団体が所有し又は管理する土地又は建物に立ち入らせ,設備,帳
簿書類その他必要な物件を検査させることができる。
3項〔略〕
4項
2項の規定による立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと
解釈してはならない。
78条(再発防止処分)
1項
公安審査委員会は,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として
無差別大量殺人行為を行った団体が,5条1項各号のいずれかに該当する場
合であって,次の各号のいずれかに該当するときは,当該団体に対し,6月
を超えない期間を定めて,次項各号に掲げる処分の全部又は一部(以下「再
発防止処分」という。
)を行うことができる。観察処分等を受けている団体に
ついて,同条2項若しくは3項の規定による報告がされず,若しくは虚偽の
報告がされた場合,
又は前条2項の規定による立入検査が拒まれ,
妨げられ,
若しくは忌避された場合であって,当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危
険性の程度を把握することが困難であると認められるときも,同様とする。
1号当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を殺害し若し
くは殺害しようとしているとき,人の身体を傷害し若しくは傷害しよう
としているとき又は人に暴行を加え若しくは加えようとしているとき。
2号当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を略取し若し
くは略取しようとしているとき又は人を誘拐し若しくは誘拐しようとし
ているとき。
3号当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を監禁し又は
監禁しようとしているとき。
4号当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,爆発物,毒性物
質若しくはこれらの原材料若しくは銃砲若しくはその部品を保有し若し
くは保有しようとしているとき又はこれらの製造に用いられる設備を保
有し若しくは保有しようとしているとき。
5号当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,当該団体に加入
することを強要し若しくは強要しようとしているとき又は当該団体から
の脱退を妨害し若しくは妨害しようとしているとき。
6号当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,殺人を明示的に
又は暗示的に勧める綱領に従って役職員又は構成員に対する指導を行い
又は行おうとしているとき。
7号当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,構成員の総数又
は土地,建物,設備その他資産を急激に増加させ又は増加させようとし
ているとき。
8号前各号に掲げるもののほか,当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危
険性の増大を防止する必要があるとき。
2項
前項の規定により行うことができる処分は,次に掲げるものとする。
1号いかなる名義をもってするかを問わず,土地又は建物を新たに取得し
又は借り受けることを,
地域を特定して,
又は特定しないで禁止すること。
2号当該団体が所有し又は管理する特定の土地又は建物(専ら居住の用に
供しているものを除く。
)の全部又は一部の使用を禁止すること。
3号当該無差別大量殺人行為に関与した者又は当該無差別大量殺人行為が
行われた時に当該団体の役員であった者(
〔括弧内略〕
)に,当該団体の活
動の用に供されている土地又は建物において,当該団体の活動の全部又は
一部に参加させ又は従事させることを禁止すること。
4号当該団体に加入することを強要し,若しくは勧誘し,又は当該団体か
らの脱退を妨害することを禁止すること。
5号金品その他の財産上の利益の贈与を受けることを禁止し,又は制限す
ること。
以上

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