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平成14年(わ)  第256号
法人税法違反被告事件
主文
被告人株式会社Aを罰金6500万円に,被告人Bを懲役2年に,被告人
Cを懲役1年6か月に,被告人Dを懲役1年4か月に処する。
この裁判が確定した日から,被告人Bに対し4年間,被告人C,被告人D
に対し各3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人株式会社A(以下「被告会社」という。)は,函館市a町b番c号に本店
を置き,土木工事業を目的とする株式会社であり,被告人Bは,被告会社の代表取
締役として被告会社の業務全般を統括していたもの,同Cは,被告会社の監査役を
務めるとともに被告人Bを補佐し,被告会社の経理事務を統括していたもの,被告
人Dは,同市de丁目f番g号に本店を置き,会計帳簿等の記帳事務等を目的とす
るE株式会社の代表取締役であり,被告会社の税務書類の作成等に従事していたも
のであるが,被告人B,同C及び同Dの3名は,共謀の上,被告会社の業務に関し,
法人税を免れようと企て,売上げの一部を除外し,架空外注加工費を計上するなど
の方法により所得を秘匿した上,
第1平成10年2月1日から平成11年1月31日までの事業年度における被告
会社の実際所得金額が4億4261万1611円(別紙1の修正損益計算書参
照)であったにもかかわらず,同年3月31日,同市h町i番g号所轄函館税
務署において,同税務署長に対し,その所得金額が1億2348万412円で,
これに対する法人税額が4554万5000円である旨の虚偽の法人税確定申
告書(平成15年押第3号の1)を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,
もって不正の行為により,被告会社の同事業年度における正規の法人税額1億
6521万9100円と上記申告税額との差額1億1967万4100円(別
紙4のほ脱税額計算書参照)を免れた。
第2平成11年2月1日から平成12年1月31日までの事業年度における被告
会社の実際所得金額が4億8798万9円(別紙2の修正損益計算書参照)で
あったにもかかわらず,同年3月31日,上記函館税務署において,同税務署
長に対し,その所得金額が2億426万8962円で,これに対する法人税額
が6971万2400円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成15年押第
3号の2)を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の行為によ
り,被告会社の同事業年度における正規の法人税額1億6759万3100円
と上記申告税額との差額9788万700円(別紙4のほ脱税額計算書参照)
を免れた。
第3平成12年2月1日から平成13年1月31日までの事業年度における被告
会社の実際所得金額が3億8030万9987円(別紙3の修正損益計算書参
照)であったにもかかわらず,同年3月30日,上記函館税務署において,同
税務署長に対し,その所得金額が2億3799万2586円で,これに対する
法人税額が7075万7600円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成1
5年押第3号の3)を提出し,そのまま法定納期限を徒過させ,もって不正の
行為により,被告会社の同事業年度における正規の法人税額1億1345万2
700円と上記申告税額との差額4269万5100円(別紙4のほ脱税額計
算書参照)を免れた。
(法令の適用)
被告会社について
罰条
第1,第2の行為いずれも法人税法164条1項,平成12年法律第
14号による改正前の法人税法(以下「12年改正
前法人税法」という。)159条1項,平成13年
法律第6号による改正前の法人税法(以下「13年
改正前法人税法」という。)159条2項(情状に
よる)
第3の行為法人税法164条1項,13年改正前法人税法15
9条1項,2項(情状による)
併合罪加重刑法45条前段,48条2項
被告人B,同Cについて
罰条
第1,第2の行為いずれも刑法60条,12年改正前法人税法159
条1項
第3の行為刑法60条,13年改正前法人税法159条1項
刑種の選択
判示各罪いずれも懲役刑を選択
併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も
重い判示第1の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予刑法25条1項
被告人Dについて
罰条
第1,第2の行為いずれも刑法65条1項,60条,12年改正前法
人税法159条1項
第3の行為刑法65条1項,60条,13年改正前法人税法1
59条1項
刑種の選択
判示各罪いずれも懲役刑を選択
併合罪加重刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も
重い判示第1の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予刑法25条1項
(量刑の理由)
1本件は,被告人らが共謀の上,土木工事業を営む被告会社の確定申告に際し,
売上除外や架空外注加工費の計上などの方法により,3事業年度にわたり,所得
を過少に申告して法人税をほ脱した法人税法違反の事案である。
被告会社の代表者であった被告人Bは,平成5年の北海道南西沖地震により災
害復旧工事の受注を大量に受け,被告会社の所得が増加したことから,将来に備
えての蓄財を考えたり,増加した所得が外部に公表され,取引先との関係が悪化
することを懸念するなどして脱税を決意し,被告会社の経理担当者であった被告
人Cや被告会社の経理関係書類の記帳を代行していた被告人Dに指示して虚偽過
少申告を行わせ,同人らとともに本件各犯行に及んだものであり,その動機は誠
に身勝手なものである。その態様は,売上げの除外や実体のない関連会社等を利
用しての架空外注加工費の計上などにより所得を過少に申告した巧妙なものであ
り,遅くとも平成6年ころから同様の手口で虚偽過少申告を行っているものと認
められ,本件は常習的犯行の一環と考えられるのであり,悪質である。本件ほ脱
税額は3期合計で2億6024万9900円であり,当時の経済状況や被告会社
所在地の地域性を考えた場合,巨額と言っても過言ではなく,ほ脱率も約58.
3パーセントに達しており,誠実な納税者を愚弄するかのごとき所業であるとい
え,その脱税行為の存在が,国民の納税意欲を喪失させ,申告納税制度を揺るが
し,国家の財政基盤を危うくすることになりかねないことからしても,発生した
結果は重大である。
他方,被告会社は,本件以前の事業年度も含めて修正申告を行い,本税,重加
算税,延滞税等を完納したこと,本件により公共工事について指名停止処分を受
けたこと,本件後,公認会計士に会計処理を依頼し,経理態勢を改善しているこ
となど,被告会社,被告人らにとって有利に斟酌すべき事情も認められる。
2被告人Bは,前記のとおり,本件犯行を計画し,これを被告人C,同Dに指
示して,具体的な経理操作等をさせたものであり,本件の首謀者といえる。被
告人Bは,本件によって被告人Cとともに不正に蓄財した多額の資産を,遊興
費等に費消したものであり,また,本件について公訴事実自体は認めているも
のの,犯行の動機や共犯者への指示内容等について,公判において,他の関係
証拠に照らして信用し難い弁解をしており,反省の情に乏しいことなどからす
ると,その犯情は悪く,同人の刑事責任は重いといわざるを得ず,被告人Bを
矯正施設に収容して強力な矯正教育を施すことも十分考慮に値するというべき
である。
他方,被告人Bは,本件に対する反省の弁は一応述べており,被告会社の役
員を退任していること,胃癌にり患し健康状態が不良であること,公判請求を
受けるのは今回が初めてであることなど,被告人Bにとって有利な事情も存在
する。
被告人Cは,被告人Bから指示を受け,被告会社の経理担当者として本件に
かかわり,架空外注加工費計上のための協力を取引先業者に依頼するなどして
おり,同人が本件において果たした役割は重要である。また,被告人Cは,本
件によって不正に蓄財した資産を,合計約2億8000万円の現金や額面額合
計1億円余の割引債券等として留保していたものであり,その犯情は悪く,同
人の刑事責任は軽くない。
他方,被告人Cは,同Bの指示を受けて本件に加担したものであり,犯行へ
の関与の程度は従属的であること,反省の態度を示し,被告会社の役員を退任
していること,前科前歴がないことなど被告人Cにとって有利な事情も存在す
る。
被告人Dは,会計帳簿への記帳等を業とする会社の代表者の立場で,従前か
ら被告会社の経理担当者である被告人Cの協力の下で同社の税務書類の作成を
担当していたものであるが,被告人Bの指示に従い,その職務上の知識を悪用
して虚偽過少申告を行っていたものであり,租税実務に通じた被告人Dの関与
がなければ,本件を敢行することはできなかったと考えられ,その果たした役
割は重要であり,また,税理業務に携わる立場の人間が脱税に関与したという
ことでも犯情は悪質であり,以上からすると,その刑事責任は軽くない。
他方,被告人Dは,同Bからの不正な指示を断ることができずに本件に関与
することになったものであり,本件により同被告人が得た利益は,正規の報酬
以外には300万円にすぎず,その金額はほ脱税額に比較して非常に少なく,
さらに,この利得についても修正申告をして本税,重加算税,延滞税等を納付
していること,反省の態度を示していること,前科前歴がないことなど被告人
Dにとって有利な事情も存在する。
3そこで,以上の諸事情を総合考慮し,被告人B,同C及び同Dに対しては,い
ずれも刑の執行を猶予することとし,主文のとおり量刑した。
(求刑被告会社に対し罰金8000万円,被告人Bに対し懲役2年,被告人
C,同Dに対し懲役1年6か月)
平成15年3月25日
函館地方裁判所刑事部
裁判長裁判官成川洋司
裁判官橋康明
裁判官野村武範

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