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平成14年(わ)  第230号,第243号,第274号,第329号
競売入札妨害,覚せい剤取締法違反,殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
主文
被告人を懲役20年に処する。
未決勾留日数中30日をその刑に算入する。
押収してある自動装てん式けん銃1丁(平成15年押第2号の1),弾倉
1個(同押号の2),実包6個(同押号の3及び6),薬きょう3個(同
押号の4及び7),弾丸3個(同押号の5及び8)を没収する。
理由
(第1の犯罪事実)
第1被告人は,指定暴力団5代目A組3代目B組C組D組組長であるが,被告人
と親しく交際していた分離前の相被告人E,前記D組若頭である同F,前記D
組構成員G,同Hらと共謀の上,被告人が居住していたIが所有し又は共有持
分を有していた別紙物件目録記載の土地3筆及び建物1棟につき,抵当権者で
ある財団法人J保証協会の申立てにより函館地方裁判所において不動産競売開
始決定がなされ,平成13年4月17日に有限会社K商事が367万8000
円で落札した際,前記落札事実を知り,暴力団の威力を誇示し,同社をして同
落札を辞退させようと企て,同年5月10日午後4時ころ,前記建物において,
立退き交渉に訪れた同社従業員であるL(当時57歳)及び同社の関連会社従
業員であるM(当時46歳)に対し,殊更に前記G及びHの身体の入れ墨を示
すなどした上,前記Eが,「手を引け。家の壁を壊して売り物にならなくなっ
たら困るだろう。家の中でたき火をするぞ。子供もいるんだろう。住所どこだ。
会社はどこだ。街宣車回すぞ。」などと言って脅迫し,もって威力を用いて公
の競売の公正を害すべき行為をした。
(第2の犯行に至る経緯)
1被告人と共犯者N,被害者Oとの関係
被告人は,平成8年ころから前記D組組長として活動していたが,昭和57年
ころからスナック「P」を経営するN及び同人の夫であり,被告人と同系列の暴
力団に所属していたOと知り合い,Nとはその後も互いのことを「ママ親父」」「
などと呼び合い,悩み事を相談したり誕生日を祝い合うなどして,親しく交際し
ていた。
Nは,Oが暴力団構成員と親交を持ち,「P」の売上げをあてにして遊び歩く
生活を送るようになり,他の女性と肉体関係を持ったり,Nに対して暴力を振る
うなどしたため,次第にOに対して憎悪の念を抱くようになったが,成長期にあ
った子供たちへの影響等を考えて離婚せずに,同店を経営しながら子供たちを養
育し,平成5年に至ってOと離婚した。
2Nが犯行を企図するに至った経緯等
Nは,経営していた「P」の売上げが特に平成13年夏ころから極端に落ち込
んで店の経費を支払うことすら困難な状況となり,また,平成9年ころから,店
の改装資金や長男の結婚資金等を捻出するため,Q金融公庫やいわゆるサラ金等
から多額の借入れをし,その返済にも困窮して,平成13年6月ころからは知人
からも借金をする状態で,さらに,自身が居住する亡養母名義の函館市a町所在
の土地建物についての相続問題の解決に関連しても金員を必要としている状態で
あった。
そこで,Nは,平成12年10月にOが死亡保険金3000万円の生命保険契
約を締結し,いったん掛け金の未納により失効させていたものの,平成13年1
1月にNにおいて保険契約復活手続をしていたことから,そのころ,前記保険の
受取人である長男を介して,Oの死亡保険金3000万円を手に入れることがで
きれば,前記の借金の返済資金等に充てることができると考えて,保険金を入手
するために同人の殺害を思い立った。
3Nと被告人との本件犯行の共謀状況等
Nは,かねてから被告人が金銭に窮していることを聞いていたことから,報酬
の支払を約束すれば,被告人がOの殺害を請け負ってくれるだろうなどと考え,
平成13年12月上旬ころ,被告人の携帯電話に連絡を取り,Nと被告人は,同
月中旬ころの日の午前3時ころ,N方近くの函館市内のa公園前路上に停車した
被告人使用の自動車(トヨタクラウン,以下「クラウン」という。)の車内で落
ち合い,Nは,被告人に対し,を殺してほしい。親父にしか頼めない。「今「O」
までOに借金を背負わされて大変だった。Oは何一つ父親らしいことをしてくれ
なかった。Oには,私と籍を抜く前から何十年も付き合っている女がいる。Oに
生きていられるだけで迷惑だ。」「片手でどうだろう。Oは息子のために100
0万円の保険に入っている。その半分の500万円でOを殺してほしい。」など
と言って,自身がOから多大な苦労をかけられていたことを語って被告人の同情
を誘い,Oの死亡保険金から報酬として500万円を支払うことを条件にO殺害
を被告人に持ちかけた。被告人は,その場で即答することができなかったが,数
日経過した日の午前3時ころ,同様にして,被告人とNとがa公園前路上に停車
したクラウンの車内で話し合った際に,NがOの殺害を再度持ちかけたところ,
被告人は,安定した収入がなく金銭に窮していたことから,自らの遊興費等のた
めに500万円を手に入れたいと考え,併せてNへの同情心等もあって,「じゃ
あ,やるわ。」と答えてOの殺害を承諾し,被告人自身がOの殺害を実行するこ
ととなった。
4被告人による犯行の準備等
被告人は,Oを殺害する方法については,短時間でOを殺害することができる
けん銃を使用することとしたが,不安感や恐怖感を感じてなかなかOの殺害に踏
み切ることができずにいたところ,Nから,「早くOを殺して。正月前までには
頼むよ。」「いつになったらやってくれるの。」などと執拗に催促を受けるよう
になったため,事前にNから得ていた情報に従って,Oの住所を探すなどし,平
成14年4月1日には,Oが北海道亀田郡b町字cd番地e所在のRf棟g号室
に居住していることを突き止めた。そこで,被告人は近いうちにOの殺害を実行
することとし,平成13年2月ころに入手していた自動装てん式けん銃2丁のう
ちの1丁を,本件犯行に使用するためクラウンのダッシュボード内に入れて準備
した。
5被告人とSの共謀状況等
被告人は,平成14年4月4日,Oの殺害を実行に移すこととしたが,その前
に,知人を理由なく解雇したと聞いた函館市h所在の産業廃棄物中間処理会社事
務所に対し,消火器を投げ込むなどの嫌がらせをすることを考えた。被告人は,
これらの際に使用するクラウンが目撃された場合に備え,同車に偽造又は盗難ナ
ンバープレートを装着することを考え,覚せい剤の使用仲間であり,いわば弟分
的な存在であったSからこれを入手することとし,同日夜,被告人とSは,北海
道亀田郡i町にあるガソリンスタンドで落ち合い,Sがクラウンのナンバープレ
ートを付け替えた。その際,被告人は,前記嫌がらせの手伝いをSに持ちかけた
ところ,Sはこれを承諾したため,被告人とSは,翌5日午前3時ころ,前記嫌
がらせを実行したが,そのころ,被告人は,Oの殺害を実行するには運転手や見
張りをする者が必要であると考え,SにOの殺害を手伝わせようと考え,Sに対
し,前記けん銃を見せながら,「もう1人思い知らせてやりたい奴がいる。Oっ
ていう朝鮮人なんだけど,悪い野郎なんだ。人から金借りてて返さなかったりす
る。なめてるからぶっ殺してやる。」などと言って,O殺害の手伝いを暗に持ち
かけたところ,Sは,被告人の意図を理解した上で,暴力団組長である被告人の
歓心を買いたいなどと考え,「それも手伝いますよ。」などと言って,O殺害の
ための手伝いを引き受け,被告人と共にOを殺害することを承諾した。
被告人は,前記嫌がらせを終えた後,既に午前3時を回っていたことから,同
日のうちにOを殺害することを断念した。その後,被告人は,同月6日にも,O
を殺害しようと決意し,同日午前2時ころ,クラウンでSと共にO方へ向かい,
Rの正面にクラウンを停車させるなどしてO方の様子をうかがったり,北海道亀
田郡b町字jにある空き地に移動してけん銃の試射をしたり,再度O方の様子を
見に行くなどしたが,Rの周辺の路地に車両が停止しており,その傍らにいた新
聞配達員とおぼしき男性が被告人らを見ていたことなどから,この日はOの殺害
を断念した。その後,被告人は,同月8日の早朝にOを殺害することとし,クラ
ウンに代えて被告人が管理していた自動車(トヨタハイラックスサーフ,以下
「サーフ」という。)でO方に向かうこととして,クラウンのダッシュボード内
からサーフに前記けん銃を積み替えるなど,O殺害の準備をした。
6本件犯行に至る状況
被告人は,同月8日午前2時30分ころ,Sと共にサーフでO方へ向かい,同
日午前3時ころ,Rの駐車場前に到着し,車内から同人方の様子をうかがうなど
していたが,周辺住民の目に付くことを恐れ,無施錠の窓等から同人方に侵入し
て同人を殺害することとした。そこで,被告人は,持参した黒色野球帽を被った
り,タオルを顔に巻き付けて覆面をするなどの準備をし,Sがサーフから降りて
O方ベランダ窓ガラスの施錠を確認するなどしたが,同窓ガラスが施錠されてい
たため,同人方に侵入することを断念した。そこで,被告人及びSは,被告人が
O方玄関の呼び鈴を鳴らして同人をおびき出し,その間,Oが同人方ベランダ窓
から様子をうかがう可能性を考慮して,SがO方ベランダ窓付近を見張ることと
し,被告人は,前記けん銃の安全装置を外して遊底を引き,これを利き手である
左手に持って,サーフを降り,前記けん銃の引き金に指をかけてO方の呼び鈴を
数回連続で鳴らすなどした。その間,Sは同車から降りてその助手席付近でO方
の見張りをするなどしていたところ,同人方ベランダ窓のカーテンが少し開き,
同窓際にちょ立するOらしき人影を発見したため,玄関で呼び鈴を鳴らしていた
被告人に対し,「こっち,こっち。ベランダ,ベランダ。」と声をかけた後,同
車運転席に乗り込み,手で自身の顔を隠しながら同窓を指さすなどして,Oが同
窓際にいることを被告人に伝えた。これに気付いた被告人は,同窓付近にOがい
ることを察し,玄関から同窓付近に歩み寄って,同窓下にあるコンクリート台に
上がって同窓から室内をのぞき込んだところ,同窓に掛かっていたカーテンが開
いてOが姿を現した。
(第2の犯罪事実)
被告人は,N及びSと共謀の上,O(当時58歳)を殺害しようと企て,平成1
4年4月8日午前4時50分ころ,前記R敷地内において,被告人が,Rf棟g号
室O方居間のガラス窓越しに,殺意をもって,同居間内にちょ立していた同人に向
け,所携の前記けん銃を用いて銃弾2発を発射し,うち1発を同人の顔面に命中さ
せ,よって同日午前5時ころ,同所において,同人を銃創による頸部血管の破綻に
伴う血液吸引により窒息死させて殺害した。
(第3,第4の犯罪事実)
被告人は,
第3法定の除外事由がないのに,平成14年9月上旬から同月16日までの間,
函館市内又はその周辺において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパ
ン又はその塩類若干量を摂取して使用した。
第4法定の除外事由がないのに,同年10月18日,函館市k町l番m号Tビル
1階所在の全国葬儀社団体U本部の看板を掲示した居室において,自動装てん
式けん銃1丁(弾倉を含む。平成15年押第2号の1及び2)をこれに適合す
る実包9発(同押号の3ないし8,但し実包のうちの3発は鑑定のため試射さ
れ弾丸と薬きょうに分離されている。)と共に保管して所持した。
(累犯前科)
1事実
平成10年1月19日函館地方裁判所で覚せい剤取締法違反の罪により懲役2
年4か月に処せられ,平成12年4月18日その刑の執行を受け終わった。
2証拠
前科調書(乙11)
(法令の適用)
罰条
第1の行為刑法60条,96条の3第1項
第2の行為刑法60条,199条
第3の行為覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条
第4の行為銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項,第1項,
3条1項
刑種の選択
第1の罪懲役刑を選択
第2の罪有期懲役刑を選択
累犯加重
判示各罪いずれも刑法56条1項,57条(第2,第4の罪
については,更にそれぞれ同法14条)
併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条,14条(刑
及び犯情の最も重い第2の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数刑法21条(30日を算入)
没収刑法19条1項1号,2項本文(第4の罪の犯罪組
成物件)
(量刑の理由)
1本件は,被告人が,配下の暴力団員らと共謀の上,被告人が居住している本
件不動産を不動産競売手続により落札した会社に,その取得を断念させようと企
て,暴力団組織の威力等を背景に落札会社の従業員らを脅迫して公の競売の公正
を害すべき行為をした競売入札妨害の事案,被害者の元妻らと共謀の上,死亡
保険金の取得等を目論んだ同女からの依頼を受けて,報酬取得の目的で被害者を
けん銃で射殺した殺人の事案,覚せい剤を自己使用した事案,けん銃を適合
実包と共に保管所持したけん銃の加重所持の事案が併合審理されたものである。
2競売入札妨害については,被告人らは,被告人が本件不動産に引き続き居住
できるようにするため,抵当権者や落札会社の正当な利益をないがしろにして
本件犯行に及んだものであって,その動機は誠に身勝手で悪質である。本件犯
行の態様も,暴力団員ら数人が落札会社から交渉に訪れた従業員らを取り囲む
ように位置し,入れ墨を殊更に見せつけるなどして威圧的な雰囲気を作り出し
た上,共犯者Eが,判示のとおりの強烈な脅迫文言を用いて脅迫したものであ
り,手段を選ばず,威力を用いて目的を達成しようとするその方法は暴力団特
有のものであり,一般社会において到底是認できるものではない。現に,被告
人らから脅迫を受けた落札会社の従業員らは強い恐怖を感じ,その結果,落札
会社は裁判所に予め納付していた保証金約43万円を放棄して,本件不動産の
取得を断念しており,少なくとも保証金相当額の損害を被っている上,落札会
社の入札価格が367万円余であったのに対し,本件後に被告人がEらと画策
して第三者名義で本件不動産を217万円で落札したことからすれば,被告人
らは,本件競売における債権者に対してもその差額の約150万円の損害を与
えていることとなり,本件犯行は,公の競売の公正を現実に害したばかりか,
関係者にも多大な経済的損失,精神的被害を与えたのであって,発生した結果
は重大であり,関係者も被告人らの厳正な処罰を望んでいる。
殺人については,被告人は,長年の友人である共犯者Nから,元夫である被
害者に散々苦しめられてきたと同情心をあおるような話をされた後に,被害者
に生命保険が掛けられていることを教えられた上で,500万円という多額の
報酬を提示されて被害者の殺害を依頼され,いったんはちゅうちょしたものの,
金銭的に困窮していたことから報酬欲しさとNへの同情心などから本件殺人を
実行することとしたものであって,Nに言葉巧みに乗せられて同情心をあおら
れてしまった面があることも否定できないものの,主として金銭欲しさに被害
者の殺害という極めて反社会的な行為を安易に請け負ったその動機は利欲的で
極めて身勝手なものであり,かつ,暴力団特有の愚劣な発想に基づくものであ
り,酌量の余地はない。被告人は,さほど親しくはないが,面識があった被害
者に対し,Nの言葉を安易に信じて悪い男だと決めつけ,軽率にも被害者の殺
害を引き受けたものであって,被告人の行動には強い非難が向けられるべきで
ある。
その犯行態様をみると,被告人は,Nから被害者に係る情報を得た上で,自
らあるいは配下の暴力団員等に指示して被害者の住所や立ち寄り先等を確認す
るなどし,また,Nと死亡保険金を確実に取得できる殺害方法について検討す
るなどし,短時間で被害者を殺害できる方法としてけん銃の使用を計画し,従
前から入手していたけん銃を用い,試し打ちなどもした上で犯行に及んだもの
であり,また,運転手や見張り役がいれば便利であると考えて,共犯者Sに本
件殺人の手伝いを持ちかけて犯行に関与させており,さらに,Nと被告人との
間の連絡においても,それを他者に関知されないよう,公衆電話を用いるよう
にNにおいてテレホンカードを被告人に渡したり,被告人において電話番号非
通知設定で電話を掛けるなどしており,本件殺人は,その実行に際して十分な
準備を行った計画的犯行といえる。また,被告人は,元来本件と何の関わりも
なかったSを本件犯行に引きずり込んでいる点でも犯情は悪質である。そして,
被告人は,本件被害に遭うことなど予想だにしていなかった被害者を,早朝の
時間帯を狙い,被害者の不意を突き,見張り役のSの助けも得て,自ら被害者
の顔面を目掛けてガラス越しに至近距離からけん銃を発射して被害者を殺害し
ており,その方法は卑劣かつ残虐極まりないものである。本件で,被害者の殺
害を計画したのはNであるが,N単独では犯行を実行することは到底困難であ
ったと推測され,暴力団組長である被告人が実行犯として果たした役割は極め
て大きいものがある。
本件により,被害者は顔面に銃弾を受け,頸部血管の破綻に伴う血液吸引に
より,受傷後間もなく窒息死したものであって,人1人の生命が奪われた結果
は極めて重大である。被害者は,本件殺人の首謀者であるNとの間においても,
殺されるような落ち度を認めることはできず,突然,けん銃という凶器によっ
て殺害された被害者の無念さは察するに余りあり,被害者の実姉の被告人に対
する被害感情も厳しい。また,本件殺人の現場は住宅街であり,けん銃を使用
した殺人事件である本件が周辺住民に与えた恐怖感,不安感等は計り知れない
ものがある。
被告人らは,犯行後,使用したけん銃を分解して投棄したり,サーフに取り
付けていた盗難ナンバープレートも取り外して投棄するなど,罪証隠滅工作も
しており,この点でも悪質である。
他方,本件殺人の首謀者はNであり,Nは,被害者の死亡保険金額を偽って
まで言葉巧みに被告人に被害者の殺害を依頼しているのであり,既に述べたと
おり,被告人がNの言葉巧みな勧誘に乗せられてしまった面は否定できないと
いえる。
覚せい剤の自己使用については,被告人は,これまで覚せい剤取締法違反
(自己使用等)の前科3犯を有しているにもかかわらず,その供述によれば,
前刑の仮出所後,1年ほどで再び覚せい剤に手を染め,最も多いときには月に
10回くらいは使用していたというのであり,覚せい剤に対する親和性,常習
性は非常に顕著であり,犯情は悪質である。
けん銃の加重所持については,被告人は,本件けん銃及び実包を,本件殺人
に用いられたけん銃と共に平成13年2月ころ入手し,保管していたものであ
って,暴力団特有の反社会的なその行動には酌量の余地は全くない。本件けん
銃や実包は正規に製造されたものであり,十分な殺傷能力を有しており,現に
本件けん銃と同時に購入された同型のけん銃,実包が殺人において凶器として
使用されており,本件の危険性自体も顕著なものといえ,犯情は悪質である。
3被告人は,長年暴力団組織に所属し,本件当時は自ら暴力団を組織し組長とい
う地位にあったものであり,本件がいずれも暴力団組織に密接に関連した犯罪で
あること,被告人は,前科4犯を有するところ,その内訳は,対立する暴力団の
事務所にけん銃を発射するなどした暴力行為等処罰に関する法律違反や銃砲刀剣
類所持等取締法違反,暴行,監禁,覚せい剤取締法違反等といったものであるこ
とからすると,被告人には,暴力団特有の論理に基づく粗暴事犯や薬物に対する
常習性が強く認められるところであり,その規範意識は著しく鈍麻しているとい
わざるを得ず,同種事案についての再犯の恐れも高いといわざるを得ない。また,
被告人は,使用した覚せい剤の入手先を秘匿するなど,真摯な反省をしているの
か疑問がある。さらに,被告人は正業に就かず,暴力団活動による収入や知人か
らの借入れに頼って生活をしていたものであり,これが本件殺人に関与するきっ
かけともなっているなど,その生活状況は非常に芳しくなく,この点も非難に値
する。
以上からすると,被告人の刑事責任は極めて重大であるといわなければならな
い。
他方,被告人は,本件各犯行を認め,反省の弁を述べ,殺人被害者の冥福を祈
りたい旨述べていること,暴力団活動をやめる旨述べていること,心臓に疾患を
有していること,殺人事件については,保険金がいまだ支給されていないことも
あって報酬を現実に受け取っていないことなど,被告人にとってしんしゃくすべ
き有利な諸事情も存在する。
4そこで,これらの事情を総合考慮すると,本件各犯行の内容,ことに本件殺人
の悪質性,重大性,被告人が果たした役割の重要性や,被告人が暴力団組織に深
くかかわっており,犯罪性向が深化していることなどからすれば,被告人の刑責
は極めて重いといわざるを得ず,検察官が被告人に対し無期懲役刑を求刑したこ
とも一理あるものといえる。しかし他方,本件殺人の首謀者はNであり,被告人
は,Nの言葉巧みな誘いに乗せられて関与することとなった面もあること,人1
人を殺害したことに対する悔悟の念を表していることなど,前記の被告人に有利
な諸事情をしんしゃくすると,被告人に対し,無期懲役刑を選択することにはち
ゅうちょせざるを得ない。よって,主文記載のとおり量刑した。
(求刑無期懲役,けん銃等の没収)
平成15年3月25日
函館地方裁判所刑事部
裁判長裁判官成川洋司
裁判官橋康明
裁判官野村武範
別紙物件目録
所在北海道函館市n町
地番o番p
地目宅地
地積107.83平方メートル
所在北海道函館市n町
地番o番q
地目宅地
地積75.36平方メートル
所在北海道函館市n町
地番o番r
地目原野
地積927.00平方メートル
所在北海道函館市n町o番地p,o番地q
家屋番号103番109
種類居宅
構造木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建
床面積1階55.44平方メートル
2階45.36平方メートル

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