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裁判例


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平成23年10月24日判決言渡
平成23年(行ケ)第10093号審決取消請求事件
平成23年9月7日口頭弁論終結
判決
原告株式会社ファランクス
訴訟代理人弁護士江森史麻子
同呰真希
被告特許庁長官
指定代理人大森友子
同末武久佳
同芦葉松美
主文
1特許庁が不服2010-6516号事件について平成23年1月25日にし
た審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文同旨
第2当事者間に争いのない事実等
1特許庁における手続の経緯等
原告は,平成21年5月27日,別紙商標目録記載(1)に示すとおりの構成からな
る商標(以下「本願商標」という。)について,指定商品及び指定役務を同目録記載
(2)のとおりとして,商標登録出願(商願2009―42622号)したが,平成2
1年12月8日付けで拒絶査定を受け,平成22年3月10日,同査定に対する不
服の審判(不服2010-6516号事件)を請求した。
特許庁は,平成23年1月25日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審
決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同年2月16日に原告に送達され
た。
2本件審決の理由等
本件審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本願商標と別紙
引用商標目録記載の商標(以下「引用商標」という。)とは,「パグ」又は「ピーエ
ージー」の称呼を共通にする類似の商標であり,本願商標の指定商品中,携帯電話
用ゲームソフトウェア及びコンピュータゲームソフトウェアは,引用商標の指定商
品中,電子応用機械器具及びその部品に含まれるものであり,取引の実情等におい
て,出所の混同を生ずるおそれがないとみるべき特別の事情が存在するものとも認
められないから,本願商標は,商標法4条1項11号により商標登録を受けること
ができない,というものである。
第3本件審決の取消事由に関する原告の主張
本件審決には,以下のとおり誤りがある。
1分離観察の可否について
本件審決は,本願商標について,図形部分と文字部分,上下段の各文字部分をそ
れぞれ分離して,引用商標との類否判断を行った誤りがある。
すなわち,本件審決は,本願商標について,図形部分と文字部分とは視覚的に分
離して看取され,また,文字部分の上段「PAG!」と下段「PointADG
ame」は不可分一体のものとして認識,把握させなければならない特段の事情は
なく,それぞれ分離して類否判断をすべきであるとした上で,「PAG!」の文字部
分は,商品及び役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えると認定し,主
に「PAG!」の称呼のみの類似性によって引用商標と類似すると判断している。
しかし,本願商標において,図形部分は「G」と「!」の間に不可分のものとし
て結合されている。また,「PAG!」という文字は青い縁取りに白抜きで袋文字風
にデザイン化されており,そのすぐ下に同じく青字でデザインされている「Poi
ntADGame」がバランスよく配置され,外観上まとまりよく一体的に構
成されている。さらに,上段「PAG!」の「P」の真下に「Point」の「P」,
「A」の真下に「AD」の「A」,「G」の真下に「Game」が配置され,上段の
「PAG!」は下段の「PointADGame」の頭文字を取り出す構成と
なっている。そして,「G」の上部には,青い縁取りでオレンジ色に彩色され,ゲー
ムのコントローラをイメージした犬の足跡が配置され,「PAG!」の文字部分と相
まって,取引者・需要者の注意を惹くものとなっている。以上のとおり,本願商標
は,文字部分の上段下段,符号部分及び図形部分のすべてが不可分一体に認識,把
握されるものであり,これらを分離して類否判断をすべきでない。
2本願商標と引用商標との類否について
以下のとおり,本願商標と引用商標は,外観,観念において相違しており,具体
的な取引状況に基づいて判断すれば,商品の出所に誤認混同を来すおそれはなく,
非類似である。
(1)外観
本願商標の外観は,上下二段の文字部分と図形とからなる。文字部分は,上段に
青地に白抜きの欧文字で「PAG!」と,下段に青色の欧文字で「PointA
DGame」と,それぞれコミカルな書体で書されており,上記「PAG!」の
「G」と「!」との間の上部には,オレンジ色で犬の足跡をデザインし,その足跡
の中にゲームのコントローラをイメージした十字キーと4つのボタンがデザインさ
れた図形が配置されている。他方,引用商標の外観は,「PAG」の欧文字を太めの
ゴシック体で書してなすものである。上記のとおり,本願商標と引用商標は,外観
において相違する。
本願商標は,主に携帯電話やパソコンの画面上で使用され,それらの媒体を通し
た取引が行われるから,称呼や観念と比較して外観が果たす役割が大きく,外観に
おいて相違することは,類否の判断において重視されるべきである。
(2)称呼
本願商標からは,「パグ」,「ピーエージー」のほか,「ポイントアドゲーム」,「パ
グ\ポイントアドゲーム」,「ポイントエイデイゲーム」,「ポイントエイデイ」,「ポ
イント」などの称呼が生じ,引用商標と誤認混同が生ずるおそれはない。
(3)観念
本願商標の「PointADGame」のうち,「Point」(ポイント)
からは得点,点数が,「AD」(アド)からは広告,アドベンチャー,加算(add)
が,「Game」(ゲーム)からは遊び,試合,気晴らし,遊技などの観念が生じる。
また,「PAG!」の右上に配置された犬の足跡の図形部分は,ゲームのコントロー
ラをイメージした十字キーと4つのボタンがデザインされており,ゲームからは,
前記のとおり,遊び,試合,気晴らし,遊技などの観念が生じる。そして,本願商
標の需要者,取引者は,ポイント制度を採用している事業者及びインターネット広
告の閲覧者(ユーザー)であり,「PointADGame」及びその頭文字を
取り出した「PAG!」を見れば,「得点,点数,広告,遊び,試合,気晴らし,遊
技」との観念のほか,「ポイントが加算されるゲーム」,「アドベンチャーポイントゲ
ーム」との観念を生ずる。他方,引用商標からは特定の観念を生じない。
したがって,本願商標と引用商標とは,観念において相違する。
(4)取引の実情等
原告は,平成20年3月ころから,本願商標を使用している。本願商標が付され
た商品ないしサービスは,ホームページを運用している事業者に対して,そのホー
ムページ上で当該ホームページの閲覧者(ユーザー)が楽しめるゲームを提供する
サービス又はゲームそのものである。ユーザーがゲームを進める途中で広告ページ
へのクリック(アクション)をする要素があり,ユーザーはゲームの結果によりポ
イントを蓄積し,蓄積したポイントで広告主から景品を取得するというシステムで
ある。ユーザーには,景品に変換できるポイントを取得するというメリットがあり,
事業者には,ホームページの閲覧数や広告収入が増えるメリットがある。本願商標
が付された商品及びサービスについての広告は,専らインターネットを通じて行っ
ており,新聞,雑誌,テレビ,ラジオの広告は行っていない。これまで本願商標が
付された商品及びサービスを利用した顧客は約40社である。
他方,引用商標の需要者は,新キャタピラー三菱株式会社(現キャタピラージャ
パン株式会社。以下「キャタピラー社」という。)の顧客である,土木作業に従事す
る会社,その従業員である。キャタピラー社の商品である建設機械,油圧ショベル,
ブルドーザーなどの価格は,数百万円以上である。引用商標は,現在,キャタピラ
ー社のウェブサイト上に記載がないが,昭和57年に同社が開発した「生産分析サ
ービス」を表すものと考えられる。上記のとおり,引用商標の需要者は,土木等の
専門家であり,商品自体が高価で耐久性のあるものであるから,その注意力が自ず
と高くなる。
したがって,本願商標と引用商標は,取引の実情等に照らしても,誤認混同が生
ずるおそれはない。
(5)以上のとおり,本願商標と引用商標は,外観,観念が異なり,その需要者の
範囲が一致せず,具体的な取引の実情等に照らしても,誤認混同が生ずるおそれは
なく類似しない。
なお,特許庁は,平成23年6月28日,引用商標につき,指定商品中,第9類
「電子応用機械器具及びその部品」について,商標法50条1項に基づき,登録を
取り消すとの審決をした。
第4被告の反論
1分離観察の可否について
本願商標は,青い縁取りで袋文字風にデザインされた「PAG」の文字及び「!」
の符号,「足状」の図形を配し,「PAG!」の文字及び符号の下段に,青色で「P
oint」,「AD」及び「Game」の各文字を小さく配した構成からなる結合商
標である。
結合商標は,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然で
あると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合は,その構成部
分の一部を抽出して類否判断を行うことは許されないが,他方,商標の構成部分の
一部が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印
象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称
呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを比較
して類否判断を行うことができる。
本願商標において,①「P」の文字が「足状」の図形より大きいこと,②「足状」
の図形は,色が異なっていること,③「足状」の図形は,文字及び符号部分の背景
とされたり,融合された描かれ方がされていないこと等に照らすならば,「足状」の
図形,「PAG!」の文字及び符号,「PointADGame」の各文字は,
分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合してい
るものではない。そして,「PAG!」の文字及び符号は,中央に配置されており,
「PointADGame」の文字及び「足状」の図形に比して顕著に表され
ていることから,本願商標は,「PAG!」の文字及び符号が,需要者等に対し,強
く支配的な印象を与える。
また,本願商標において,「PAG」も「PointADGame」も特定の
観念を生じず,「!」の符号は,「PAG」の文字を強調しているものと理解できる
から,「PAG」の文字部分と,その余の構成部分とが,観念上一体のものとはいえ
ない。
本願商標は,「ピーエージーポイントエーデーゲーム」,「パグポイントエーデーゲ
ーム」,「ピーエージーポイントアドゲーム」,「パグポイントアドゲーム」の称呼を
生じるが,その音数は,11音から17音であり,全体として冗長といえる。した
がって,本願商標からは,構成全体から生ずる上記一連の称呼のほか,「PAG!」
の文字及び符号部分から,「ピーエージー」及び「パグ」の称呼を生じる。
なお,原告のウェブサイトでは,「PAG!」の文字及び符号と動物の「足状」の
図形のみで構成され,「PointADGame」の文字が使用されていない標
章が使用されており,原告においても本願商標を分離して使用しており,取引の実
情等に照らしても,本願商標の構成全体が一体としてのみ使用されているとはいえ
ない。
以上によれば,本願商標は,その外観,観念及び称呼上の分離性,取引の実情を
総合考慮すると,「PAG」の文字部分が独立して自他商品の識別標識としての機能
を果たす要部としてとらえられるものであり,分離して類否判断を行うことができ
る。
2本願商標と引用商標の類否について
(1)外観
本願商標は,全体観察によれば外観において相違するが,「PAG!」の部分を要
部観察した場合,「PAG」の文字よりなる引用商標とは,「!」の有無の相違はあ
るものの,「P」,「A」,「G」の綴りの配列は同じであるから,必ずしも外観上類似
しないとはいえない。
(2)観念
本願商標と引用商標は,共に特定の観念を生じないものであり,観念において比
較できない。
(3)称呼
上記のとおり,本願商標のうち,「PAG」の文字部分は,独立して自他商品の識
別標識としての機能を果たし得るものであって,簡易迅速を尊ぶ商取引の場におい
ては,「PAG」の文字部分より生ずる「ピーエージー」及び「パグ」の称呼をもっ
て,取引に当たる場合があり得るものであって,引用商標と称呼を共通にする。
(4)取引の実情等
現在の取引社会において,視覚に訴える情報媒体が少なくないとしても,コンピ
ュータに関連する商品においては,電話による取引も一般的に行われている実情が
あり,外観を離れて記憶された称呼によっても出所表示機能を発揮している。この
ような商取引の実情に照らすと,図形等と文字との結合商標にあっては,図形部分
等を除く,文字から生ずる称呼も商品の出所の識別に重要な役割を果たしている。
また,商標の類否の判断に当たり考慮することのできる取引の実情とは,その指
定商品全般についての一般的,恒常的な取引の実情であって,単に該商標が現在使
用されている特殊的,限定的な実情を指すものではない。本件においても,原告の
業務と引用商標に係る商標権者の業務を比較するのではなく,本願商標と引用商標
のそれぞれの指定商品について,同一又は類似の商標を使用した場合に,出所の混
同を生ずるおそれがあるかという個別の指定商品についての取引の事情を判断すれ
ば足りる。そうすると,本願商標の指定商品中,「携帯電話用ゲームソフトウェア,
コンピュータゲームソフトウェア」の需要者と,引用商標の権利者が提供している
建設機械の需要者が異なるものであったとしても,引用商標の指定商品中に「電子
応用機械器具及びその部品」があり,引用商標の権利者が「電子応用機械器具及び
その部品」に含まれる「携帯電話用ゲームソフトウェア,コンピュータゲームソフ
トウェア」に引用商標を使用した場合は,本願商標と引用商標について商品の出所
の混同を生じるおそれがある。
(5)以上によれば,本願商標と引用商標は類似する。
なお,引用商標は,本件審決時には有効に存在していた以上,本件審決後に引用
商標の指定商品の一部取消しの審決がされたからといって,本件審決が違法になる
ことはない。
第5当裁判所の判断
当裁判所は,本願商標と引用商標が類似するとした本件審決の認定判断には誤り
があると判断する。その理由は,以下のとおりである。
1商標の類否判断の基準について
商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用
された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記
憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に
考察すべきものであり(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁参
照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成
部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を
判断することは,その部分が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識
として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出
所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されな
いというべきである(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,
最二小判平成5年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月
8日裁判集民事228頁561頁参照)。
そこで,上記の観点から本件について検討する。
2本願商標と引用商標との類否について
(1)本願商標の特徴(出所識別標識として印象を与える部分)
ア本願商標の外観
本願商標の構成は,別紙商標目録記載(1)のとおりである。すなわち,本願商標は,
上下二段の文字,符号及び図形からなる。上段の「PAG」の欧文字及び「!」の
符号は,外側が淡く細く,内側が濃く太く,濃淡二重の青い縁取りによって袋文字
風にデザインされて横書きされ,「G」と「!」との間の上部に動物の足跡を模した
オレンジ色の図形が描かれている。このうち,左側に配置された「P」の文字は,
直線のみから構成され,欧文字「A」を左斜めに倒したような,デザインの施され
た独特の字体が用いられている。「PAG!」の文字と足跡状の図形は,濃淡二重の
青い縁取りが,一体的に施され,全体がまとまった印象を与えている。また,「P」
の文字及び「!」の符号は,「A」,「G」の文字に比して大きく描かれており,上段
の「P」の文字,足跡状の図形,「!」の符号は高さが揃い,中央の「A」,「G」の
文字と比較して2倍の高さで描かれている。「P」の文字及び「!」の符号の外側の
輪郭線は,上方から下方に向けて,内側に狭まるよう表記されている。さらに,上
記図形は,爪状部と掌状部に区別されるが,掌状部には,左側には青色の点が1つ,
同右側に菱形状に青色の点が4つ描かれており,テレビゲーム等のコントローラを
模しているようなデザインが施されている。そして,下段には,「PointAD
Game」の欧文字が青色で横書きされている。「PointADGame」の
文字は,上段の「PAG」の文字及び「!」の符号に比べて,小さく表記されてい
る。
以上によれば,本願商標の外観は,上段の「P」「A」「G」の文字,「!」の符号,
足跡状の図形及び下段の「PointADGame」のすべてが,青色の輪郭
線又は塗りつぶされた文字で表記され,全体として,まとまりのある一体的な図形
として描かれていること,上段の「PAG」の文字は,下段の「PointAD
Game」の頭文字であることが想起されること,足跡状の図形がオレンジ色に塗
りつぶされ,文字及び記号に囲まれた中で,生き生きとした印象を与えていること
等に照らすならば,これに接した取引者,需要者は,それぞれの構成が相互に深く
関連する,一体的な図形であると認識,理解するものと解される。したがって,本
願商標において,「PAG」の文字部分のみが,商品又は役務の出所識別標識として
強く支配的な印象を与える部分と認めることはできず,「PAG」の文字部分のみを
本件商標の特徴部分とすることできない。
イ本願商標の称呼・観念
本願商標のうち,文字部分からは,「ピーエージー,ポイントエーデーゲーム」,
「ピーエージー,ポイントアドゲーム」,「パグ,ポイントエーデーゲーム」,「パグ,
ポイントアドゲーム」,「ピーエージー」,「パグ」などの称呼が生じる余地があり得
る。
本願商標のうち「PAG」の文字部分は,下段の「PointADGame」
の頭文字であると連想させるが,必ずしも格別の観念は生じることはない。本願商
標のうち,「PointADGame」の文字部分からは,同文字は,必ずしも
成熟した語とまではいえないことから,確定的な観念が生じるか否かはさておき,
何らかの点数や広告等に関連するゲームないしゲーム機を連想させる余地がある。
本願商標のうち,図形部分からは,動物の足跡と連想させる余地がある。
(2)引用商標の特徴及び本願商標との類否判断
ア引用商標について
引用商標は,別紙引用商標目録記載のとおり,「PAG」の欧文字を横書きした外
観を有し,「ピーエージー」,「パグ」などの称呼が生じる余地があるものの,格別の
観念は生じない。
イ本願商標と引用商標との対比
本願商標は,上記のとおり,その外観は,「P」「A」「G」の文字,「!」の符号,
足跡状の図形及び下段の「PointADGame」のすべてが,青色の輪郭
線又は塗りつぶされた文字で表記され,全体として,まとまりのある一体的な図形
として描かれていること,上段の「PAG」の欧文字及び「!」の符号は,袋文字
風にデザインされて横書きされ,このうち「P」の文字は,直線のみから構成され,
欧文字「A」を左斜めに倒したような独特の字体が用いられていること,上段の「P
AG」の文字は,下段の「PointADGame」の頭文字であることが想
起されること,足跡状の図形がオレンジ色に塗りつぶされ,アクセントをつけてい
ること等の特徴があるのに対し,引用商標は,「PAG」の欧文字を横書きしたもの
であり,両商標は,外観において,相違する。
本願商標は,「ピーエージー,ポイントエーデーゲーム」,「ピーエージー,ポイン
トアドゲーム」,「パグ,ポイントエーデーゲーム」,「パグ,ポイントアドゲーム」,
「ピーエージー」などの称呼が生じ得るのに対して,引用商標は,「ピーエージ」,
「パグ」の称呼を生じる余地がある。本願商標は,さまざまな称呼が生じる余地が
あること,引用商標は,何らの観念も生じず,確定的な称呼が生じるとはいいがた
いことに照らすと,両商標は,称呼において,類似するとはいえない。
本願商標は,「PointADGame」の文字部分からは,何らかの点数や
広告等に関連するゲームないしゲーム機を連想させる余地があり,図形部分からは,
動物の足跡と連想させる余地があるのに対し,引用商標は,何らの観念を生じない
から,両商標は,観念において,類似するとはいえない。
ウ取引の実情等
証拠(甲4,5,8の1及び2,同9)及び弁論の全趣旨によれば,①原告は,
そのウェブサイト上で本願商標を使用しており,本願商標が付された商品ないしサ
ービスについて,「広告とポイントバックを連動させたアドバゲーム(ポイントアド
ゲーム)」などと説明していること,②引用商標の商標権者であるキャタピラー社は,
主にブルドーザや油圧ショベルなどの建設機械を製造,販売する会社であること,
③キャタピラー社の前身であるキャタピラー三菱株式会社は,昭和57年ころ,生
産分析サービスに「PAG」との名称を付していたこと,④原告は,平成23年3
月9日付けで,引用商標につき,指定商品中,第9類「電子応用機械器具及びその
部品」について,キャタピラー社を被請求人として,商標法50条1項に基づく不
使用取消審判を請求し,これに対し,特許庁は,同年6月28日,引用商標につき,
上記指定商品について,登録を取り消すとの審決をしたこと,が認められる。
以上によれば,引用商標の上記不使用取消審決が直ちに本件審決を違法にするも
のではないとしても,引用商標権者であるキャタピラー社は,少なくとも上記不使
用取消審決に係る審判請求の予告登録の3年前から,上記指定商品に関しては,引
用商標を使用していなかったことが推認され,その他の取引の実情等に照らしても,
本願商標がその指定商品ないし指定役務に使用された場合に,引用商標との間で商
品ないし役務の出所に誤認混同を生じさせるような事情は認められない。
エ小括
以上によれば,本願商標と引用商標とは外観において相違し,観念及び称呼が類
似するとまではいえず,取引の実情等を考慮しても,本願商標がその指定商品ない
し指定役務に使用された場合に,引用商標との間で商品ないし役務の出所に誤認混
同を生じさせるおそれはないから,両商標は,類似しない。
3被告の主張について
これに対し,被告は,本願商標について,「PAG」の文字部分が独立して自他商
品の識別標識としての機能を果たす特徴的部分であることを前提に,引用商標と外
観及び称呼が類似し,取引の実情等を考慮しても,本願商標は引用商標と類似する,
と主張する。
しかし,被告の上記主張は,以下のとおり,採用できない。すなわち,本願商標
は,「P」,「A」,「G」の文字,「!」の符号,足跡状の図形及び下段の「Point
ADGame」のすべてが,青色の輪郭線又は塗りつぶされた文字で表記され,
全体として,まとまりのある一体的な図形として描かれていること,上段の「PA
G」の文字は,下段の「PointADGame」の頭文字であることが想起
されること,足跡状の図形がオレンジ色に塗りつぶされ,アクセントをつけている
こと等の特徴があることに照らすならば,「PAG」の文字部分のみが,商品又は役
務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分と認めることはできない。
なお,乙24の1,2によれば,原告のウェブサイトにおいて,商品ないしサービ
スを説明する図の中で本願商標から「PointADGame」の文字部分を
除いた標章が使用されているが(乙24の1,2),これをもって,「PAG」の文
字部分のみが,本願商標の特徴的部分であると認めることはできない。
したがって,本願商標について,「PAG」の文字部分が独立して自他商品の識別
標識としての機能を果たす特徴的部分であることを前提に,本願商標と引用商標の
対比を行い,これらが類似するとした被告の主張は採用することができない。
4結論
以上によれば,原告の請求は理由がある。被告はその他縷々主張するが,いずれ
も理由がない。よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官
飯村敏明
裁判官
八木貴美子
裁判官
知野明
(別紙)
商標目録
(1)構成
(2)指定商品及び指定役務
第9類「携帯電話用ゲームソフトウェア,コンピュータゲームソフトウェア,家
庭用ビデオゲーム機用ゲームソフトウェア,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプ
ログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,業務用ビデオゲーム機用ゲーム
ソフトウェア,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用双方向型ゲームソフトフェア」及
び第42類「電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」
(別紙)
引用商標目録
商標登録番号:第2713981号
商標の構成:
出願日:昭和59年8月25日
設定登録日:平成8年5月31日
更新登録日:平成18年6月6日
指定商品の書換登録日:平成18年9月27日
指定商品の書換登録後の指定商品:
第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び
直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,電機ブラシ,
家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電
気掃除機,電機ミキサー」,第8類「電気かみそりおよび電気バリカン」,第9類
「配電用又は制御用の機械器具,回転交流機,調相機,電池,電気磁気測定器,
電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信
機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」,第10類「家
庭用電気マッサージ器」,第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」,
第12類「陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。)」,第1
6類「電気式鉛筆削り」,第17類「電気絶縁材料」及び第21類「電気式歯ブラ
シ」(ただし,指定商品中,第9類「電子応用機械器具及びその部品」は平成23
年6月28日に商標登録を取り消す旨の審決がされた。)

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71期修習生 72期修習生 求人
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職種 事務職
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