弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

○ 主文
原判決中表示登記の抹消登記処分の取消に関する部分を取り消す。
右取消に係る部分の訴えを却下する。
本件控訴中その余の部分を棄却する。
控訴費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。
○ 事実
第一 当事者双方の求める裁判
一 控訴人
「1 原判決を取り消す。2被控訴人が昭和六〇年九月五日付で、(1)原判決別
紙物件目録一及び二記載の各建物についてなした同四六年八月三〇日合棟を原因と
する建物表示登記の抹消登記処分、 (2)同目録三記載の建物についてなした同
四六年八月三〇日合棟及び同五八年四月三〇日種類変更増築を原因とする表示登記
処分を、いずれも取り消す。3訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とす
る。」との判決
二 被控訴人
(本案前の申立)
「1原判決中表示登記の抹消登記処分の取消に関する部分を取り消す。2右取消に
係る部分の訴えを却下する。3訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とす
る。」との判決
(控訴につき)
「1 本件控訴を棄却する。2控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決
第二 当事者双方の主張及び証拠
当事者双方の主張は、次に付加、訂正する外は原判決事実摘示のとおりであり、証
拠の関係は本件記録中の原審及び当審における証拠関係目録記載のとおりであるか
ら、いずれもこれを引用する。
一 原判決の訂正
原判決一三枚目裏三行目「1、2の各事実はいずれも」を「1、2の事実中、甲建
物と一三センチメートルの間隔をおいて乙建物が建築されたこと及び甲、乙各建物
間の空間部分に接続工事が施されたことは否認し、その余は」と改める。
二 当審における追加的主張
1 控訴人
控訴人は、原判決別紙物件目録三記載の建物(以下「本件丙建物」という。)につ
きなされた本件表示登記処分の取消について、次のとおり訴えの利益を有する。
(1) 同目録一及び二記載の各建物(以下「本件甲乙各建物」という。)につき
なされた本件抹消登記処分と本件表示登記処分とは不可分一体の関係にあり、且つ
前者が後者の先決関係をなしているから、前者のみならず後者の取消についても控
訴人は法律上の利益を有する。
(2) 控訴人は、本件甲乙各建物についての仮差押権者であるが、本件丙建物に
ついてはその所有名義が仮差押当時の債務者から第三者に変更されており、控訴人
と右所有名義人たる第三者との間には直接の契約関係がないことから、新たに右第
三者に対して処分禁止の仮処分をすることは困難であり、控訴人が権利を回復する
ためには、本件表示登記処分の取消を求める以外になく、従ってこの点からも控訴
人の訴えの利益が肯定される。
(3) 請求の理由の有無について未だ判断していない訴訟の入口の段階におい
て、本件抹消登記処分の取消請求が認容される場合のみを想定し、右取消請求が認
容されることによって本件甲乙各建物の表示登記は回復され、控訴人の仮登記も回
復されるとともに本件丙建物の表示登記は申請又は職権によって抹消され登記用紙
が閉鎖されることとなるから控訴人の権利回復はそれだけで充分であるとして、本
件表示登記処分の取消について訴えの利益を欠くとすることは許されない。
本件表示処分取消請求という訴訟物の前提問題であり先決問題でもある本件抹消登
記処分取消請求という訴訟物について、棄却する旨の判断をするのであれば、かか
る判断を前提とした上で、前者についての訴えの利益の有無を判断すべきである。
2 被控訴人
本件仮差押決定は、合棟前の本件甲乙各建物に対してなされたものであるが、右仮
差押決定当時、本件甲乙各建物は本件丙建物の一構成部分と化して権利の客体とな
り得る不動産としては存在しなかったものであり、従って、本件仮差押決定は、権
利の客体としての独立性を欠いて法律上滅失した建物になされたものとして無効で
ある。
しかも、控訴人は、本件丙建物について何らの仮差押決定も得ていないのであるか
ら、控訴人には本件各登記処分の取消を求める法的利益はなく、本件訴訟につき原
告適格を欠くものであるから、本件訴えは不適法であって却下されるべきである。
○ 理由
当裁判所は、控訴人の本件訴えはいずれも不適法であるから却下すべきものと判断
するが、その理由は次に付加、訂正する外は、原判決理由一乃至三(現判決一六枚
目裏三行目から同二〇枚目裏一一行目迄)説示と同一であるから、これを引用す
る。
1 原判決一六枚目裏一四行目「両者」の前に「法律上、」を加え、同一七枚目表
一三行目「ものではない」を「ものではなく、控訴人が侵害されると主張する利益
はすべて事実上の利益に過ぎない」と改める。
2 同一八枚目表八行目「三」を「四」と、同九行目「1、2の各事実一を「1、
2の事実中、甲建物と一三センチメートルの間隔をおいて乙建物が建築されたこと
及び甲、乙各建物間の空間部分に接続工事が施されたことを除くその余」と、それ
ぞれ改める。
3 同一八枚目表一〇行目「右事実」から、同裏一二行目末尾迄を「右争いのない
事実に、甲第一乃至第三号証、同第五号証(いずれも成立に争いがない)、同第一
二号証の一乃至三(官署作成部分の成立は争いがなく、その余の部分は弁論の全趣
旨により成立が認められる)、同第一三乃至第一六号証(いずれも成立に争いがな
い)、同第一七号証の一乃至四(本件建物の写真であることは争いがなく、撮影日
時、撮影者については弁論の全趣旨により控訴人主張のとおり認められる)同第一
八号証(弁論の全趣旨により成立が認められる)、同第二〇号証の一乃至五(本件
建物の写真であることは争いがなく、撮影日時、撮影者については弁論の全趣旨に
より控訴人主張のとおり認められる)、同第二一号証(成立に争いがない)、同第
二二号証の一乃至三、同第二三号証(いずれも弁論の全趣旨により成立が認められ
る)、乙第三号証の一乃至三、同第四号証の一、二、同第五号証の一乃至一〇、同
第六、第七号証(いずれも成立に争いがない)、同第八号証の一乃至二〇、同第九
号証の一乃至三(いずれも控訴人主張のとおりの写真であることは争いがない)、
同第一四号証(弁論の全趣旨により成立が認められる)、当審証人Aの証言、当審
における被控訴人本人尋問の結果、当審検証の結果によると、(1)本件甲建物
は、昭和三九年九月一〇日頃、訴外株式会社東京ゴム(以下「訴外会社」とい
う。)が、その所有する鹿児島市<地名略>宅地二一一・四三平方メートルの土地
の南西側道路に面した位置に建築した、間口七・六メートル、奥行一〇・九二メー
トルの軽量鉄骨造二階建の建物であって、一階部分は作業所、二階部分は従業員の
休憩所兼事務所及び作業所として使用され、同四五年頃、同一敷地内の北東側の位
置に曳行移転されたが、建物の種類、構造、床面積等には何ら変更はなかった、そ
して本件甲建物は、作業所として使用する目的上、一階部分については南東及び北
西の両側面並びに南西側面(幅員七・六メートル)の内約二・七メートルの部分
(二階部分の直下に事務所を設けた部分)に障壁が設置されたのみで、その余の部
分には障壁が設置されなかったが、二階部分については四囲に障壁が設置され、ま
た二階への階段は建物中央付近に設けられていた、(2)本件乙建物は、同四六年
一月三〇日頃、訴外会社が、前記のとおり本件甲建物の曳行移転された跡に、本件
甲建物から約一三センチメートルの間隔をおいて、間口八・一メートル、奥行一
三・五メートルの重量鉄骨造二階建の建物として建築したものであって、一階部分
は自動車タイヤの展示場兼交換作業所、二階部分は倉庫として使用されていた、そ
して本件乙建物は、一階部分については南東及び北西の両側面にのみ障壁が設置さ
れ、北東及び南西の両側面には障壁は設置されていなかったが、二階部分について
は全面に障壁が設置されていた、また本件甲建物と本件乙建物との間には約一〇セ
ンチメートルの段差があった上、雨水等を流すための幅員約一〇乃至一五センチメ
ートルの溝も設けられていた、(3)本件乙建物の出入口は南東側(本件甲建物
側)及び北西側にそれぞれあり、本件甲建物と一体となって利用しなければならな
い必要性はなく、当時の訴外会社の代表者Aも両建物は別個独立の建物と認識し、
本件乙建物を独立の建物として登記した、(4)訴外会社は、昭和五八年一月頃か
ら同年六月頃迄の間に、本件甲乙各建物の合棟工事を、本件甲建物の北東側の増築
工事とともに行ったが、その内容は、先ず合棟工事として、(1)本件甲建物の南
西隅の柱と本件乙建物の南東隅の柱との中間に鉄骨の柱を設置し、これらの柱を横
に三段にわたした厚さ約五ミリメートル、縦約五センチメートル、長さ約四〇セン
チメートルのC型鋼三本と電気溶接して連結固定し、本件甲建物の北西隅の柱と本
件乙建物の北東隅の柱も同様にして連結固定し、また壁については、軽量鉄骨の柱
を本件乙建物の道路側から本件甲建物の北東側の増築部分(以下「増築部分」とい
う。)迄連続して等間隔に立て、内壁が柱に接続するように補強した上プラスタ・
ボードを張り、外壁は本件甲乙各建物を通じて断熱材のグラス・ウールを張った上
波型スレート板で覆うという各工事を、(2)床については、本件甲乙各建物の中
間の溝を埋め、一階床面の段差を取り除いて同じ高さとした上で、コンクリート、
リノリュームを敷き話めてワンフロワーとするという工事を、(3)屋根について
は、本件甲乙各建物の接続部分に水を弾く材料を敷いた上トタン板で覆うという工
事を、それぞれ施し、次で、本件甲乙各建物を一体として利用するための工事とし
て、右両建物の二階部分の隔壁の一部を除去して、その部分の床面を接続させて扉
を設置して、本件甲建物に設置されていた階段を除去し、また右両建物及び増築部
分を一個の建物とする消防設備も施した、(5)合棟工事の結果、本件甲乙各建物
の柱、壁及び屋根は完全に接続され、本件甲乙各建物及び増築部分の一階床はワン
フロワーとなり、その結果、本件甲建物の二階には本件乙建物のみからしか行け
ず、本件甲建物には本件乙建物及び増築部分を通る以外出入口はなく、便所も本件
甲乙各建物及び増築部分を通じて一個しかないこととなって、右両建物は構造上の
一体性及び利用上の一体性を有することとなったが、これは、小売業を営も訴外会
社が本件甲乙各建物を一体の店舗として利用するためになしたものであって、現に
本件甲乙各建物及び増築部分は一体の建物として利用していたし、本件甲乙各建物
は一体として独立の経済的価値が認められる、以上の事実が認められ、前記甲第一
八号証及び同第二一号証中これに反する記載部分はたやすく措信し難く、他にこれ
を覆すに足る的確な証拠もない。」と改める。
4 同一八枚目裏一三行目「本件甲乙」の前に「右事実によれば、」を加え、同一
九枚目表一三行目から同裏四行目迄を「控訴人が昭和五九年三月六日本件甲乙各建
物につき仮差押命令を得て同月八日これに基づき仮差押登記が経由されたこと(本
件仮差押)は当事者間に争いがないところ、先に認定したところによると、本件甲
乙各建物は、右仮差押命令の当時既に合棟工事により独立の単一不動産としての存
在を失っていたものというべきである。してみると、右各仮差押命令は、不存在の
不動産に対するそれと同様に、いずれも当然に無効であって、その仮差押債権者で
ある控訴人は、本件抹消登記処分により侵害されるべき法的利益を有しないものと
いわなければならない。したがって控訴人は、本件抹消登記処分の抗告訴訟につき
原告適格を有しないから、右訴訟は不適法として却下すべきである。」と改め、同
二〇枚目裏六行目から同一一行目迄を削る。
そうすると、原判決中本件表示登記の抹消登記処分に関する部分は不当であるから
これを取消して右部分の訴えを却下し、本件表示登記処分に関する部分は相当であ
って、この部分についての本件控訴は理由がないから棄却することとし、民事訴訟
法九六条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛