弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人加藤充上告趣意第一点について。
 しかし、原判決の挙げている証拠によれば、被告人は、判示日時場所において判
示Aの顔面を手を以て殴打した事実を肯認することができる。従つて、原判決が被
告人を刑法第二〇八条の暴行をしたものと認めたのは正当であつて、所論は結局証
拠の取捨又は事実の認定を非難するものに外ならないから法律審適法の上訴理由と
して採ることができない。
 同第二点について。
 しかし、原判決の挙げている証拠によれば、被告人は、判示約十ケ月の間、主務
大臣の許可を受けないで、判示同盟加入者その他の者の委嘱により所得税に関する
相談に応じ又は判示B外三九〇余名から岸和田税務署に提出する所得税審査請求書
等の作成について指示を与え、同人等を代理して同税務署と交渉した事実、言い換
えれば、反覆継続の意思を以て、多数人の委嘱を受け租税に関する審査の請求等の
事項につき代理を為し若しくは相談に応じた事実を肯認することができる。従つて、
原判決が被告人を税務代理士法第二一条所定の許可を受けないで税務代理業を行つ
たものと認めたのは正当である。そして税務代理士法は、税務代理士の業務と利益
とのみを保護することを目的とするものではないから、仮りに所論のように被告人
の所為が税務代理士の業務と利益とを侵害しなかつたとしても同法の違反にならな
いとはいえない。また、同法は、税制改革の政治活動の自由を制限し若しくは処罰
するものでないこと勿論であるが、しかし、仮りに判示行為が税制改革を目的とす
る政治活動の過程中になされた一手段に過ぎないとしても、目的行為が適法でも、
手段たる行為にして非合法であつて法令所定の罪名に触れるときは、犯罪を構成し
処罰を免かれないこと言うを待たないから、この点の主張も採ることができない。
また、税務代理士法にいわゆる「税務代理業ヲ行ヒタル者」たるには反覆継続の意
思を以て同法第一条所定の行為を為せば足りるものであつて、その行為に対し報酬
又は利益を得る意思あること若しくは現にこれを得た事実の存在することを必要と
するものではないから、この点についての主張も採ることができない。
 よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二四年七月二二日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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