弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人高田六司同鈴木喜三郎の上告趣意(後記)第一点について。
 原判決は、判示説明のように各証拠を取り調べた上、それに基いて本件当事者に
判示のような賃貸借契約が成立し、上告人は本件土地につき一時使用を目的とする
権利を有するに過ぎない旨を認定したのであつて、その認定に誤りは認めなれない。
そして罹災都市借地借家臨時処理法(以下単に臨時処理法という)の施行前に、戦
時罹災土地物件令により土地につき一時使用を目的とする権利を有する者といえど
も、臨時処理法施行の後は、同法二条によつて賃借の申出をしないかぎり、同法所
定の借地権を取得することができないと解すべきものであるから、原判決が、単に
同法施行前に一時使用を目的とする権利を有するからといつて右にいう暗黙の賃借
の申出があつたと解することはできないとし、上告人の主張を排斥したのは相当で
あつて、その解釈に誤りはない。所論違憲の主張は、これに名を藉りて、原審の正
当な法の解釈に反する独自の見解を主張するものであつて採用することはできない。
 同第二点について。
 所論は、要するに一時使用を目的とする権利の行使を継続することは、臨時処理
法による借地の要望と解すべきものであるという趣旨に帰するが、第一点において
説明したとおり、原審は所論のような解釈をとることを得ないと判断したのであつ
て、所論のような事情があつたとしても、原審の判断を誤りであるとはいえない。
従つてまた所論違憲の主張は原審と異なる見解に立つてこれを前提とするものであ
り、第一点と同じく採用することはできない。(憲法二五条の法意は、同条の示し
たことを国の責務とする趣旨を宣言したものであつて、個々の国民が国に対し具体
的現実的にかかる権利を有するものと認めたものでないとするのは、当裁判所のし
ばしば判示するところである〔昭和二三年(れ)第二〇五号同年九月二九日大法廷
判決参照〕)。
 同第三点について。
 所論は、別な観点から、一時使用の目的を有する権利の行使をもつて臨時処理法
の賃借の申出と解すべしと主張するのであつて、所論の理由をもつてしても原審の
判断を違法ということはできない。所論は違憲をいうけれども名を藉るに過ぎない
のであつて、採用のかぎりでない。
 よつて、民訴三九六条、三八四条一項、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一
致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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