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平成30年4月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成27年(ワ)第21684号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成30年2月21日
判決
原告バロークスプロプライアタリーリミテッド5
同訴訟代理人弁護士萩尾保繁
山口健司
石神恒太郎
関口尚久
伊藤隆大10
同補佐人弁理士渡邉陽一
中島勝
池田達則
被告モンデ酒造株式会社
(以下「被告モンデ酒造」という。)15
被告大和製罐株式会社
(以下「被告大和製罐」という。)
上記被告2名訴訟代理人弁護士内田公志
鮫島正洋
和田祐造20
栁下彰彦
田子真也
臼井幸治
青木晋治
同補佐人弁理士蔵田昌俊25
河野直樹
鵜飼健
被告伊藤忠食品株式会社
(以下「被告伊藤忠食品」という。)
同訴訟代理人弁護士城山康文
中川裕茂5
白波瀬悠美子
齋藤広明
同補佐人弁理士青木孝博
被告株式会社セブン-イレブン・ジャパン
(以下「被告セブンイレブン」といい,上記10
被告4名を併せて「被告ら」という。)
同訴訟代理人弁護士押切謙德
曽我真美子
押切謙一郎
今村善幸15
同訴訟代理人弁理士稲木次之
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由20
第1請求
1被告モンデ酒造は,別紙1記載の各方法(以下「被告各方法」という。)を
使用してはならない。
2被告モンデ酒造,被告伊藤忠食品及び被告セブンイレブン(以下,併せて「被
告モンデ酒造ら」という。)は,別紙2記載の各製品(以下「被告各製品」と25
いう。)を販売してはならない。
3被告モンデ酒造らは,被告各製品を廃棄せよ。
4被告大和製罐は,別紙3記載の各アルミニウム缶(以下「被告各アルミ缶」
という。)を製造し,又は販売してはならない。
5被告大和製罐は,被告各アルミ缶を廃棄せよ。
6被告らは,原告に対し,連帯して8000万円及びこれに対する平成27年5
8月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
7訴訟費用は被告らの負担とする。
8仮執行宣言
第2事案の概要
1被告らのうち,被告大和製罐は被告各アルミ缶を製造し,被告モンデ酒造は10
被告大和製罐から購入した被告各アルミ缶にワインを充填して被告各製品を
製造し,被告伊藤忠食品は被告モンデ酒造から被告各製品を購入し,被告セブ
ンイレブンは被告伊藤忠食品から被告各製品を購入して消費者に販売してい
るところ,本件は,発明の名称を「アルミニウム缶内にワインをパッケージン
グする方法」とする発明についての特許権(請求項の数15。以下「本件特許15
権」又は「本件特許」といい,特許請求の範囲請求項1の発明を「本件発明」
という。)を有する原告が,被告各方法が本件発明若しくは原告による訂正請
求後の本件特許(以下,訂正請求後の特許請求の範囲請求項1の発明を「本件
訂正発明」という。)の技術的範囲に属すると主張し(予備的に均等侵害を主
張),又は被告各アルミ缶は本件特許権の実施のみに用いるものであると主張20
して,①被告モンデ酒造に対し,被告各方法の使用の差止め,②被告モンデ酒
造らに対し,被告各製品の販売の差止め及び廃棄,③被告大和製罐に対し,被
告各アルミ缶の製造・販売の差止め及び廃棄,④被告らに対し,不法行為(共
同不法行為)に基づく損害賠償金5億7000万円のうち8000万円及びこ
れに対する不法行為の後の日である平成27年8月27日(訴状送達の日の翌25
日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を
求める事案である。
2前提事実(当事者間に争いがない事実並びに文中掲記した証拠及び弁論の全
趣旨により認定できる事実)
(1)原告の有する特許権
原告は,以下の本件特許権を有している(以下,本件特許に係る明細書及5
び図面を併せて「本件明細書」という。)。
登録番号特許第3668240号
出願日平成14年6月5日
優先日平成13年9月28日
登録日平成17年4月15日10
発明の名称アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法
(2)本件発明の特許請求の範囲
本件発明に係る特許請求の範囲の記載は,以下のとおりである。
「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって,該方法
が:15
35ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩化物と,800pp
m未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造するステッ
プと;
アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツーピ
ースアルミニウム缶の本体に,前記ワインを充填し,缶内の圧力が最小2520
psiとなるように,前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングするス
テップと
を含む,アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」
(3)本件発明の構成要件
本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。25
Aアルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって,該方法
が:
B35ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩化物と,800p
pm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造する
ステップと;
Cアルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツー5
ピースアルミニウム缶の本体に,前記ワインを充填し,缶内の圧力が最小
25psiとなるように,前記缶をアルミニウムクロージャでシーリング
するステップと
Dを含む,アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法
(4)訂正請求及び訂正後の特許請求の範囲と構成要件10
ア被告大和製罐は,本件特許について無効審判請求をし(無効2016-
800043),特許庁は,平成29年3月29日,本件特許請求の範囲
請求項1ないし15(以下,単に「請求項1」などという。)に係る発明
を全て無効とすべき旨の審決予告をした。原告は,同年7月4日,上記無
効審判事件において,訂正請求をした(以下「本件訂正」という。)。(甲15
122の1~3,乙75)
イ本件訂正発明は次のとおりである(下線部は本件訂正による訂正部分。
なお,請求項2~15についても連動して訂正がされ,また,請求項1の
訂正に整合するように本件明細書の段落【0005】も訂正された。)。
(甲122の3)20
「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって,該方
法が:
アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして,3
5ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩化物と,800pp
m未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを意図して製25
造するステップと;
アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツ
ーピースアルミニウム缶の本体に,前記ワインを充填し,缶内の圧力が
最小25psiとなるように,前記缶をアルミニウムクロージャでシー
リングするステップと
を含む,アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法」5
ウ本件訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。
Aアルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって,該方
法が:
B´アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして,3
5ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩化物と,800p10
pm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを意図し
て製造するステップと;
Cアルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツ
ーピースアルミニウム缶の本体に,前記ワインを充填し,缶内の圧力が
最小25psiとなるように,前記缶をアルミニウムクロージャでシー15
リングするステップと
Dを含む,アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法
(5)被告らの行為
ア被告大和製罐は,平成23年から現在に至るまで,被告各製品(以下,
別紙2記載の記号番号に従って,「プティモンテリアスパークリング」20
をイ号製品,「プティモンテリアブラン」をロ号製品,「プティモンテ
リアルージュ」をハ号製品という。これに併せて,別紙1記載の各方法
についても,同別紙記載の記号番号に従って「イ号方法」などという。)
のための被告各アルミ缶を製造し,被告モンデ酒造に販売している。
イ被告モンデ酒造は,平成23年から現在に至るまで,被告大和製罐から25
購入した被告各アルミ缶にワインを充填して被告各製品を製造し,被告伊
藤忠食品に対し同各製品を販売している。
ウ被告伊藤忠食品は,平成23年から現在に至るまで,被告モンデ酒造か
ら被告各製品を購入し,それらを販売している。
エ被告セブンイレブンは,平成23年から現在に至るまで,被告伊藤忠食
品から被告各製品を購入し,消費者に対し販売している。5
(6)本件各特許の優先日前の先行文献の存在
本件各特許の優先日(平成13年9月28日)の前には,以下の先行文献
が存在する。
ア1992年(平成4年)に「NIGNEVININumero5」に掲載された
R.Ferrariniらによる”Ilcondizionamentodelvinoincontenitore10
d’alluminio”(訳:アルミニウム容器へのワインパッケージング)と題する
文献(乙29。以下,同文献を「乙29文献」,乙29文献に記載された
発明を「乙29発明」という。)
イ2001年(平成13年)4月に出版された”SchweizLebensmittelbuch”
中のKapitel30,Richtlinien(訳:ガイドライン)13/14~14/14頁の表15
“Tabelle30A.1”(乙30。以下,同文献を「乙30文献」,同表を「乙
30表」という。)
ウ1974年(昭和49年)に出版されたM.A.Amerine及びC.S.Oughによ
る“WINEANDMUSTANALYSIS”(訳:ワイン及び葡萄果汁成分分析)(甲
24の1~3。以下,同文献を「甲24文献」という。)20
3争点
(1)被告各方法は本件発明の技術的範囲に属するか
ア本件発明は単純方法の特許か
イ構成要件Bの充足性
(ア)「35ppm未満の遊離SO2」を充足するか25
(イ)「塩化物」「スルフェート」を充足するか
ウ構成要件Cの充足性
(ア)「耐食コーティング」を充足するか
(イ)「ツーピースアルミニウム缶」を充足するか
(ウ)イ号方法に関し「缶内の圧力が最小25psi」を充足するか
エ構成要件Cについて均等侵害の成否5
(2)間接侵害の成否
(3)無効の抗弁の成否
ア乙29発明及び乙30文献による進歩性欠如
イ乙29発明による新規性欠如
ウ乙29発明及び甲24文献による進歩性欠如10
エ実施可能要件違反
オサポート要件違反
(4)訂正の再抗弁の成否
ア本件訂正の適法性
イ被告各方法は本件訂正発明の技術的範囲に属するか(構成要件B’の充15
足性)
ウ本件訂正により無効理由が解消するか
(5)損害の発生の有無及びその額
第3争点に関する当事者の主張
1争点(1)ア(本件発明は単純方法の特許か)について20
〔原告の主張〕
本件発明は,物(缶入りワイン)を生産する方法の発明である。
本件発明は,特許請求の範囲の記載によると「アルミニウム缶内にワインを
パッケージングする方法」に関するものであるところ,同方法を用いた結果と
して,「アルミニウム缶にパッケージングされたワイン」という物が得られる25
のであるから,本件発明は「物を生産する方法の発明」である。
したがって,被告モンデ酒造らが,被告各製品を販売する行為は本件特許権
を侵害する(特許法2条3項3号)。
〔被告らの主張〕
本件発明の特許請求の範囲に「・・・を製造する方法」等ではなく「ワイン
をパッケージングする方法」と記載されていることからすると,本件発明は,5
物の生産方法の発明ではなく,単純方法の発明である。本件明細書においても,
段落【0015】に「本発明の方法に必要となるワインは,下記のような特定
のブドウ栽培及びワイン製造技術によって製造することができる。」と記載さ
れているように,「方法」という文言と「製造」という文言とが明確に書き分
けられている。10
したがって,被告モンデ酒造らが被告各製品を販売する行為は,本件発明の
実施に該当しない。
2争点(1)イ(構成要件B充足性)について
〔原告の主張〕
(1)「35ppm未満の遊離SO2」を充足するか15
ア構成要件Bの「35ppm未満の遊離SO2」は,ワイン中の遊離SO2
の量が35ppm未満であることを要件とするものであるが,ここにいう
遊離SO2は,ワインの充填時ではなく,ワイン消費時(市場販売時)にお
ける遊離SO2の濃度を意味していると解すべきである。
亜硫酸ないし二酸化硫黄(遊離SO2)は,酸素と反応して消滅するもの20
であるから,充填直後に急激に減少し,その後ゆるやかに時間の経過とと
もに減少する。遊離SO2は,ワインの殺菌・酸化防止のために添加される
ものであることから,目標とするワイン消費時のSO2含有量を設定し,ワ
インが消費されるまでの期間中に減少する遊離SO2の量を勘案して充填
時のSO2の添加量を決めるのが当業者の技術常識である。25
イ被告モンデ酒造作成の「詰前分析ノート」(甲66の1~4)によれば,
平成25年10月22日から平成28年4月26日までの「詰前(濾過後)」
時の遊離SO2は,イ号製品について平均32.0ppm(全測定データ1
66件中の120件が,35ppm未満),ロ号製品について平均44.
4ppm,ハ号製品について平均45.9ppmである。
そして,被告各製品を市場で購入し分析した結果は,イ号製品(詰前(濾5
過後)38.4ppm。その約25~28日経過後に分析したもの)で2
9ppm,ロ号製品(詰前(濾過後)49.6ppm。その約3か月後に
分析したもの)で19ppm,ハ号製品(詰前(濾過後)48.0ppm。
その約2か月後に分析したもの)で18ppmであったというのであるか
ら(甲64),遊離SO2濃度の減少の程度を踏まえると,被告各製品は,10
通常で約1か月は経過しているワイン消費時(市場販売時)までに,全て
35ppm未満となっている蓋然性が極めて高い。
したがって,被告各方法は,構成要件Bに規定された「35ppm未満
の遊離SO2」を充足する。
ウ仮に,「35ppm未満の遊離SO2」が充填時の測定値であったとして15
も,被告モンデ酒造作成の「製品分析ノート」(甲67の1,2)によれ
ば,ハ号製品の「充填後(工場出荷前)」の遊離SO2は,平均33.4p
pmであり,上記のとおり,イ号製品の「詰前(濾過後)」時の遊離SO₂
は平均32.0ppmであり,「充填後(工場出荷前)」は更にその数値
が低くなることは技術常識である。そうすると,少なくとも,イ号方法及20
びハ号方法は「35ppm未満の遊離SO2」を充足する。
なお,被告モンデ酒造が作成した「D12」資料(甲54の2)記載の
測定データ(以下,同資料を「甲54資料」,同資料記載の測定データを
「甲54データ」という。)は,遊離SO2に関しては,サンプル数が少な
すぎるので,遊離SO2の含有量が比較的高いサンプルのみが意図的に抽25
出された疑いがある。
(2)「塩化物」「スルフェート」を充足するか
ア構成要件Bの「塩化物」及び「スルフェート」は,それぞれ,本件明細
書の原文である外国語特許出願の外国語書面(甲26)における「chloride」
及び「sulfates」の訳語であるところ,ワイン中の成分について「chloride」
(訳:「塩化物」)及び「sulfates」(訳:「スルフェート」又は「硫酸5
塩」)との用語が使用された場合,それらは「塩化物イオン(Cl-
)」及
び「硫酸イオン(SO4
2-
)」を意味するというのが,当業者の技術常識で
ある。
イワイン中の陰イオンの含有量を表す方法として,ワイン中の塩化物イオ
ンについては,Cl-
の量で直接表す方法とNaClの量に換算して表す10
方法があり,硫化物イオンについては,SO4
2-
の量で直接表す方法とK2
SO4の量に換算して表す方法があるが,NaClやK2SO4の量に換算
して表すときは,必ず「asNaCl」(訳:「NaClとして」),「as
K2SO4」(訳:「K2SO4として」)等の注記がある。
ウそして,甲54資料記載のとおり,イ号製品は,平均70.00ppm15
のCl-
と,平均210.00ppmのSO4
2-
とを有し,ロ号製品は,平
均70.00ppmのCl-
と,平均567.00ppmのSO4
2-
とを有
し,ハ号製品は,平均50.00ppmのCl-
と,平均207.00pp
mのSO4
2-
とを有するものである。
したがって,被告各方法は,構成要件Bの「300ppm未満の塩化物」20
及び「800ppm未満のスルフェート」を充足する。
〔被告らの主張〕
(1)「35ppm未満の遊離SO2」を充足するか
ア構成要件Bの「35ppm未満の遊離SO2」は,ワイン消費時ではなく,
ワインの充填時における遊離SO2の濃度を意味すると解すべきである。25
構成要件Bは「35ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩化
物と,800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワイ
ンを製造するステップ」であり,構成要件Cにワインを充填するステップ
が規定されている。これによると,構成要件Bに記載された「遊離SO2」
の濃度はワイン製造時又は充填までの間の濃度であって,パッケージング
されて市場で販売される時点での濃度ではないことは明らかである。5
イ被告各製品において,ワインの充填時の遊離SO2の量は,イ号製品で3
6.25ppm(平均値),ロ号製品で46.01ppm(平均値),ハ
号製品では47.29ppm(平均値)であり(甲54の2),いずれの
数値も,構成要件Bの「35ppm未満の遊離SO2」を充足しない。
したがって,被告モンデ酒造による被告各製品のパッケージング方法は,10
構成要件Bの「35ppm未満の遊離SO2」を充足しない。
(2)「塩化物」「スルフェート」を充足するか
ア塩化物は「塩素と塩素より陽性な元素との化合物の総称」を意味する(乙
17)から,構成要件Bの「300ppm未満の塩化物」中の「塩化物」
は「化合物」を意味する。また,スルフェートは「硫酸H2SO4の水素が15
金属に置換された組成の塩」を意味する(乙18)から,構成要件Bの「8
00ppm未満のスルフェート」中の「スルフェート」は「塩」を意味す
る。
イ請求項1には,「塩素イオン」ではなく「塩化物」と,「硫酸イオン」
ではなく「スルフェート」とそれぞれ明記されている。その上で,本件明20
細書の段落【0032】には,化合物としての塩化物と塩素イオンとが明
確に書き分けられ,化合物としてのスルフェートと硫酸イオンについても
同様である。このように,請求項1及び本件明細書の記載を参酌すると,
請求項1の「塩化物」,「スルフェート」は塩化物ではなく,化合物を意
味するものというべきである。25
ウそして,甲54データによれば,ロ号製品用のワインの硫酸イオン(S
O4
2-
)は567ppmであるが,これをK2SO4に換算すると1029
(=567×174.26/96.06)ppmとなる(なお,K2SO4
の分子量は174.26であり,SO4
2-
の式量は96.06である。)。
したがって,構成要件Bの「スルフェート」が,K2SO4に換算された
化合物であるとすると,ロ号方法は構成要件Bを充足しない。5
3争点(1)ウ(構成要件C充足性)について
〔原告の主張〕
(1)「耐食コーティング」を充足するか
ア構成要件Cの「アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティング
されている」のうち,「耐食」とは「腐食しにくいこと」,「コーティン10
グ」とは「布地・紙などを防水または耐熱加工するために,油・パラフィ
ン・ゴム・合成樹脂などで処理する工程」をそれぞれ意味するから(乙1
9),アルミニウム缶の腐食を防止する目的で施されているコーティング
であれば,その材料,材質等にかかわらず,構成要件Cの「耐食コーティ
ング」に該当する。15
イ被告らは,被告各製品の腐食防止膜はラミネートタイプであるから「耐
食コーティング」を充足しないと主張する。しかし,広辞苑第六版(乙1
9)においても,「コーティング」とは,「布地・紙などを防水または耐
熱加工するために,油・パラフィン・ゴム・合成樹脂などで処理する工程」
を意味するとされており,マグローヒル科学技術用語大辞典(甲103)20
では,「被覆剤coating【材料】1.表面上に連続した薄い膜を形成す
る材料の総称。上記1項の材料で作られた膜。」と記載されている。この
ように「コーティング」は貼り付ける場合も除外していないので,貼付け
(ラミネート)によって「膜」を形成する場合も「コーティング」に含ま
れる。25
したがって,被告各方法は構成要件Cの「耐食コーティング」を充足す
る。
(2)「ツーピースアルミニウム缶」を充足するか
構成要件Cは「ツーピースアルミニウム缶」であることを要するとしてい
るところ,被告各製品は「スリーピース缶」ではなく「ツーピース缶」であ
るので,構成要件Cを充足する。5
「ツーピース缶」か「スリーピース缶」かの違いは,製缶方法の違いを意
味するものであるところ,被告各アルミ缶は,典型的なツーピース缶と同じ
絞りしごき法(DI法)によって製缶されるもの(いわゆる「DI缶」)で
あり,そのため,「スリーピース缶」の外観上の特徴であるサイドシーム(継
ぎ目)が存在しないので「ツーピース缶」に分類される。10
スリーピース缶の缶胴にはサイドシーム(継ぎ目)があり,ツーピース缶
の缶胴にはサイドシーム(継ぎ目)がないということは,当業者の技術常識
である(甲4,5,9~12,16,18,21,28~36,53,71,
72,乙25,27,42(枝番があるものは枝番を含む。))。被告大和
製罐も,自らが出願人である特許出願公開公報(特開2005-1447215
8号。甲69)において,「ツーピース缶」は,「缶胴部に接合部がないこ
とからシームレス缶とも呼ばれ」ると記載するなど,上記技術常識を認めて
いる。
したがって,被告各アルミ缶は「ツーピースアルミニウム缶」である。
(3)イ号方法に関し「缶内の圧力が最小25psi」を充足するか20
ア構成要件Cは「缶内の圧力が最小25psiとなる」ことを要件として
いるところ,缶内圧力を付加することの技術的意義は,缶の強度を補強す
るためである(本件明細書の段落【0033】【0035】,甲32,3
4)から,構成要件Cの「缶内の圧力」の値は,缶内の圧力が安定した状
態で測定すべきである。25
イ被告各製品の缶内圧力を測定したところ,イ号製品が約47psi,ロ
号製品が約18.3psi,ハ号製品が約14.8psiであった(甲1
9の1~3)ので,イ号方法は上記要件を充足する。なお,ロ号及びハ号
方法については,後記4〔原告の主張〕のとおり均等侵害を主張する。
ウ被告大和製罐の従業員が作成した分析報告書(乙28)に記載された測
定結果は,充填直後の測定によるもので,缶内圧力が安定していない状態5
であった蓋然性が高く,また,非常に低温で測定しているため,適切な温
度(20℃程度)で測定した場合よりも缶内圧力が低くなっており,構成
要件Cの「缶内の圧力」を正しく測定したものではない。
〔被告らの主張〕
(1)「耐食コーティング」を充足するか10
ア被告各アルミ缶の内面には,内面がワインで腐食することを抑制するた
めの腐食防止膜として,ポリエステル(熱可塑性樹脂)の膜が用いられて
いる。被告各アルミ缶は,ポリエルテルの膜がラミネートされた(貼り付
けられた)平板状のアルミニウム板を加工することによって製造されてい
る(乙23,24)。15
イ原告の主張によれば,構成要件Cの「耐食コーティング」は,アルミニ
ウム缶の腐食を防止する目的で施されているコーティングを意味するとい
うのであるから,機能的クレームである。機能的クレームについては,本
件明細書の発明の詳細な説明に開示された具体的構成を参酌しながらその
技術的範囲を解釈すべきである。20
アルミニウム缶の内面に腐食防止膜を形成する方法は大きく分けて,ア
ルミニウム缶の内面に架橋剤及び熱硬化性の合成樹脂を含む液体状組成物
をコーティングしてこれを熱硬化させて膜を形成するタイプと,平板状の
アルミニウムの板に腐食防止性を有するフィルムをラミネートした(貼り
付けた)後,このフィルム付きの平板状のアルミニウムの板を缶に加工す25
るというタイプがあるが,本件明細書の段落【0009】には「耐食コー
ティングが熱硬化性コーティングであることが好ましい。」との記載はあ
るが,フィルムをラミネートする方法を示唆する記載はない。
以上によれば,本件発明の「耐食コーティング」は,「アルミニウム缶
の内面に架橋剤及び熱硬化性の合成樹脂を含む液体状組成物をコーティ
ングしてこれを熱硬化させて膜を形成するタイプ」をいうと解すべきであ5
る。
したがって,被告各方法は「耐食コーティング」を充足しない。
(2)「ツーピースアルミニウム缶」を充足するか
ア「ツーピースアルミニウム缶」は,“twopiece”(二つの部品・部材)
のアルミニウム缶との名前のとおり,二つの部品から構成されるアルミニ10
ウム缶をいうと解釈される。例えば,食品工業総合事典(甲9)やJIS
規格(乙42)でも二つの部品からなるものと定義されている
イ被告各アルミ缶はボトル缶(ボトルの形をしており,従来ビンに使用さ
れているスクリュー式のキャップで蓋をした缶)であるところ,平成12
年にはツーピースタイプ及びスリーピースタイプのボトル缶が実用化され,15
胴とキャップの二つの部品から構成されるものはツーピースボトル缶,缶
底,胴,キャップの三つの部品から構成されるものはスリーピースボトル
缶と分類されている。スリーピースタイプのボトル缶には,サイドシーム
のあるものとないものがあり,サイドシームの有無はツーピースとスリー
ピースの分類とは関係がない。20
被告各アルミ缶は三つの部品から構成されるので,スリーピースボトル
缶であり,「ツーピースアルミニウム缶」ではない。
(3)イ号方法に関し「缶内の圧力が最小25psi」を充足するか
ア本件発明に係る特許請求の範囲に「缶内の圧力が最小25psiとなる
ように,前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングするステップ」と25
記載されていることからして,本件発明においては,缶をアルミニウムク
ロージャでシーリングする際に缶内の圧力を最小25psiとなるように
するものと解釈される。本件明細書の段落【0035】にも「缶充填プロ
セスは,ほぼ0.1mlの液体窒素を,本体のクロージャのシーム形成直
前に添加することに関与する。缶の内部圧力は,ほぼ25~40psiで
ある。」と記載され,「缶充填プロセス」の段階でその缶内圧力を25~5
40psiとすることとされている。
イ被告大和製罐の従業員が作成した分析報告書(乙28)によれば,被告
各製品について,アルミニウムの蓋でシーリングする際の缶内の圧力の測
定値は,イ号製品が平均11.6psi,ロ号製品が平均15.7psi,
ハ号製品が平均15.3psiであったから(乙28),被告各方法はい10
ずれも構成要件Cの「缶内の圧力が最小25psi」を充足しない。
4争点(1)エ(構成要件Cについて均等侵害の成否)について
〔原告の主張〕
(1)相違部分について
ア「ツーピースアルミニウム缶」について15
仮に,被告各方法が構成要件Cの「ツーピースアルミニウム缶」に文言
上該当しないとしても,同構成と均等なものとして本件発明の技術的範囲
に属する。
イ「缶内の圧力が最小25psi」について
ロ号及びハ号方法については,構成要件Cの「缶内の圧力が最小25p20
si」との要件を文言上充足していないが,同構成と均等なものとして本
件発明の技術的範囲に属する。
(2)均等の5要件について
上記(1)のとおりの相違部分があるとしても,次のとおり,被告各方法につ
いて均等侵害が成立する。25
ア第1要件(非本質的部分)
本件発明は,ワイン等をパッケージングする金属缶の内面に耐食コーテ
ィングを設けることや,容器に充填する際などに酸化防止剤・抗菌剤とし
て添加される亜硫酸(遊離SO2)のワイン中の濃度レベルを低くすること
に加えて,ワイン中の生来的な成分である塩化物及びスルフェートに着目
し,これらの陰イオンの濃度レベルの低いワインのみを金属缶へのパッケ5
ージングの対象として選別することで,当該ワインをパッケージングした
金属缶の腐食を防止し,ワインの品質を著しく損なうことのない長期間の
保存安定性の達成を可能としたものである。
本件発明の係る意義に照らせば,本件発明の本質的部分は,「300p
pm未満の塩化物と,800ppm未満のスルフェートとを有することを10
特徴とするワイン」をアルミニウム缶にパッケージングする点にあるから,
「ツーピースアルミニウム缶」であることや「缶内の圧力が最小25ps
i」であることは,本件発明の本質的部分ではない。
イ第2要件(置換可能性)
「35ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩化物と,80015
ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワイン」をアルミ
ニウム缶にパッケージングしている限り,どのようなアルミニウム缶を用
いていようと,本件発明と同一の作用効果を奏する。
また,ロ号方法及びハ号方法について「缶内圧力が最小25psi」の
要件を文言上充足しないとしても,本件発明の上記構成を備えている限り,20
本件発明と同一の作用効果を奏する。
ウ第3要件(置換容易性)
従来のツーピース缶の代わりに,平成12年以降その需要が拡大してい
るボトル缶に置換することは,遅くとも平成23年当時の当業者にとって
容易であった。25
また,被告各アルミ缶は,トップドーム成形を施すことによって缶の強
度が増していることから,ロ号及びハ号方法において,被告各アルミ缶を
用いた場合に缶内の圧力を25psiより小さくすることは,当時の当業
者にとって容易であった。
エ第4要件(公知技術等除外)
被告各方法は,いずれも,本件特許出願時における公知技術と同一又は5
当業者が同技術に基づき容易に推考し得たものではない。
オ第5要件(意識的除外)
被告各アルミ缶のような形状のアルミ製ボトル缶は,本件特許権の優先
日よりもわずか1年前に日本において登場したばかりで,優先日当時の日
本でも一般的であったとはいえず,ましてや,本件特許権の優先権主張国10
であるオーストラリアにおいてその存在が知られていたとは考え難い。そ
うすると,本件特許権の優先日当時,本件特許の出願人が,本件発明の技
術的範囲から被告各アルミ缶を意識的に除外したということはできない。
また,缶内圧力についても,本件特許権の出願手続において,ロ号方法
やハ号方法程度の缶内圧力とすることにつき,本件特許の出願人が当該構15
成を明確に認識し,これを特許請求の範囲から除外したことをうかがわせ
る証拠は存在しない。
〔被告らの主張〕
(1)相違部分について
原告の主張する相違点について均等侵害は成立しない。20
(2)均等の5要件について
ア第1要件(非本質的部分)
本件発明に係る特許請求の範囲及び本件明細書の記載に加え,本件特許
の優先日当時における技術(乙29,45~50,54(枝番があるもの
は枝番を含む。))を考慮すると,本件発明の課題は,ワインの品質が保25
存中に著しく劣化しないようなアルミニウム缶内へのワインのパッケー
ジング方法を提供することにあり,その解決手段は,①ワイン中の遊離二
酸化硫黄レベルを35ppm未満等とすること,②密閉性に優れるツーピ
ース缶を用いること,③ツーピース缶の耐食コーティングを適切に選択す
ること,④缶充填の際にほぼ0.1mlの液体窒素を本体のクロージャの
シーム形成直前に添加することで缶内の圧力をほぼ25~40psiと5
して頭隙の酸素レベルを極めて低くすることにあるといえる。
したがって,原告の主張する相違部分は,本件発明の本質的部分に関す
るものであるということができる。
イ第2要件(置換可能性)
被告各アルミ缶に使用されているスリーピース型のアルミニウムのボト10
ル缶はスクリュー式のキャップと本体との密着性が弱く,酸素が缶内に侵
入しやすいことから,ツーピースアルミニウム缶を用いた場合と比較して,
ワインは初期状態から劣化することになる。
したがって,本件発明のツーピースアルミニウム缶に代えてスリーピー
ス型のアルミニウムのボトル缶に置換したとしても,本件発明と同一の作15
用効果を奏しない。
ウ第3要件(置換容易性)
被告各製品の商品化の時点において,密閉性に優れるツーピースアルミ
ニウム缶を,酸素遮断性が大きく劣り,ワインが初期状態から劣化しやす
くなるスリーピース型のアルミニウムのボトル缶に置き換えることは,保20
存時のワインの味の劣化に関するクレームの発生を極力避けたいと考え
る当業者において容易に選択できる手法でなかった。
また,パッケージング時の缶内圧力を下げると缶の強度が確保できなく
なるというのであるから,パッケージング時の缶内圧力を下げることで他
の利点が得られないのに,わざわざボトリング時の缶内圧力を下げて,缶25
の強度を低下させた状態で商品を出荷し,市場で缶が損傷する危険性のあ
るパッケージング方法を採用することはあり得ない。
したがって,被告各方法は,均等の第3要件を満たさない。
エ第4要件(公知技術等除外)
原告の第3要件に係る主張に従えば,少なくとも,ツーピース缶をスリ
ーピース型のボトル缶に変換し,さらにパッケージング時の缶内圧力を25
5psiより小さくすることは,本件特許の優先日当時,当業者にとって
容易想到であったということになる。
オ第5要件(意識的除外)
原告は,本件特許の審査過程において,平成17年1月6日付けの手続
補正書(甲20の6)で特許請求の範囲を本件特許の内容に補正した上で10
(請求項3を補正),同日付けで提出した意見書(甲20の7)において,
「本発明は,請求項1に記載のとおり,ワインのパラメーターの組合せ要
件を,パッケージングプロセス及び缶の耐食コーティングと組み合わせる
ことで,この課題を解決しています。」と記載しているのであるから,こ
の組合せ以外の構成を意識的に除外していたということができる。15
被告各製品は,「ツーピースアルミニウム缶」との構成及び「缶内の圧
力が最小25psi」との構成を有しない点で,本件発明の上記パッケー
ジングプロセスを満たさないのであるから,被告各製品のパッケージング
方法は,本件発明に係る特許請求の範囲から意識的に除外された構成であ
るというべきである。20
5争点(2)(間接侵害の成否)について
〔原告の主張〕
被告各アルミ缶は,被告各製品それぞれに固有の印刷がなされたボトル缶で
あるから,本件発明の技術的範囲に属する被告各方法の使用にのみ用いる物で
ある。25
したがって,これらの被告各アルミ缶を製造,販売等する行為は,本件特許
権の間接侵害となる(特許法101条4号)。
〔被告らの主張〕
特許法101条4号の間接侵害は,方法の発明の場合,その方法に「のみ」
用いる物か否かで判断されるのであり,その発明に使用される缶に固有のデザ
インが印刷されているかどうかは,間接侵害の成否とは関係がない。また,被5
告各製品のパッケージング方法は本件発明と相違するので,間接侵害に当たら
ない。
6争点(3)ア(乙29発明及び乙30文献に基づく進歩性欠如)について
〔被告らの主張〕
(1)乙29文献には,次の乙29発明が開示されている。10
構成1A’アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって
構成1B’4ppmの遊離SO2を有するスティルの白ワインに炭酸ガスを
封入したスパークリングベース型の白ワインを製造するステッ
プと;
構成1C’アルミニウム本体の内面にワニスがコーティングされている容15
器と蓋からなるアルミニウム容器の本体に,前記ワインを充填
し,缶内の圧力が2atm(約29psi)以上となるように,
アルミニウム容器をパッケージングするステップと
構成1D’を含む,アルミニウム容器内にワインをパッケージングする方
法20
(2)本件発明と乙29発明との対比
ア一致点
本件発明の構成要件A及びDは,乙29発明と一致する。また,乙29
発明の遊離SO2値が本件発明の数値範囲に含まれている点で一致する
(構成要件B)。さらに,「(アルミニウム缶の本体に」ワインを充填し,25
缶内の圧力が最小25psiとなるように前記缶をアルミニウムクロー
ジャでシーリング」している点で一致する(構成要件C)。
イ相違点
本件発明と乙29発明には次の相違点がある。
①本件発明ではワインが300ppm未満の塩化物を有するのに対し
(構成要件B),乙29発明では炭酸ガスを封入してスパークリング型5
にしたスティルの白ワイン中の塩化物の量が特定されていない点(相違
点1)
②本件発明ではワインが800ppm未満のスルフェートを有するの
に対し(構成要件B),乙29発明では炭酸ガスを封入してスパークリ
ング型にしたスティルの白ワイン中のスルフェートの量が特定されてい10
ない点(相違点2)
③本件発明ではアルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティン
グされているのに対し(構成要件C),乙29発明ではワニスがコーテ
ィングされている点(相違点3)
④本件発明ではツーピース缶を用いるのに対し(構成要件C),乙2915
発明ではこれが明らかではない点(相違点4)
(3)相違点について(容易想到性)
ア相違点1及び2
スイスワインのガイドラインを示す乙30表によれば,スイスワインの
組成のためのガイドライン値として,スティルの白及びロゼワインには120
0~80mg/1ppmの塩化物が含まれているとされており,この数値
範囲は「300ppm未満の塩化物」に含まれる。また,同表によれば,
スイスワインの組成のためのガイドライン値として,白及びロゼワインに
は0.2~0.8g/1ppm(200~800ppm)の硫酸塩(スル
フェート)が含まれているとされており,この数値範囲は「800ppm25
未満のスルフェート」と重複している。
スイスワインに限らず,世界中の平均的なワイン(ポルトガルワイン,
スペインワインの一部を除く。)においては,塩化物の含有量が300p
pm未満である。また,スルフェートについても,一部の国・地域(カリ
フォルニア,フランス,イスラエル,スペイン等)の一部のワインを除く
と,その含有量は800ppmとなっている。このように,本件発明の塩5
化物及びスルフェートの濃度はワインとして通常有する濃度を規定する
にすぎない。
また,乙29文献の表2,3には,塩酸と硫酸がワインの物理的・化学
的安定に対して正の作用を有している旨が記載されている一方で,アルミ
缶に負の作用を有している旨が記載されており,これらの記載は,ワイン10
中の塩化物や硝酸塩の含有量を制御することが望ましいことを示唆して
いる。
したがって,相違点1及び2は,乙29発明及び周知技術に基づき,当
業者が容易に想到し得るものである。
イ相違点315
本件発明の「耐食コーティング」を「腐食しにくくすることを目的とす
る処理膜」と解すると,「ワニス」は,腐食しにくくすることを目的とす
る処理膜であるから「耐食コーティング」に該当するので,相違点3は相
違点に当たらない。
仮に「耐食コーティング」を「ホルムアルデヒドを基剤とする架橋剤と20
組み合わされたエポキシ樹脂のような熱硬化性の合成樹脂で形成された
腐食防止膜」と解し,「ワニス」とは異なるものとした場合であっても,
「耐食コーティング」をエポキシ樹脂とすることは周知なので(乙33~
36),上記相違点は単なる周知技術を付加するものにすぎず,当業者が
容易に想到し得るものである。25
ウ相違点4
乙29発明では,「容器と蓋からなるアルミニウム容器」を用いるとさ
れ,ツーピース缶(乙32)を用いていると解釈できるので,相違点4は
実質的な相違点ではない。
仮に相違点に当たるとしても,本件特許の優先日当時,アルミニウムの
ツーピース缶を金属缶として用いることは周知であった(乙31)から,5
相違点4は当業者が適宜行う設計事項にすぎず,容易に想到できる。
エ結論
したがって,本件発明は,乙29発明及び周知技術に基づき,当業者が
容易に想到できるものであって,特許法29条2項により特許を受けるこ
とができないものであるから,本件発明に係る特許は同法123条1項210
号により無効とすべきものである。
〔原告の主張〕
(1)乙29発明の構成及び本件発明と乙29発明との間に被告らの主張する相
違点1,2があることは争わないが,下記(2)のとおり,相違点1,2は容易
に想到し得るものではない。15
また,構成要件Cの「耐食コーティング」には,乙29発明のワニスも含
まれるので,被告らの主張する相違点3は相違点ではない。なお,相違点4
については容易想到であることは争わない。
(2)相違点1及び2(容易想到性)
ア被告らは,スイスワインのガイドラインである乙30文献を根拠として,20
相違点1及び2が容易想到であると主張するが,スイスワインは,世界中
の様々な国で生産されているワインの中でも,塩化物及びスルフェートの
濃度の平均レベルが最も低いワインであり,しかも,本件特許の優先日当
時の世界シェアはわずかに0.4%程度しかない(甲50)。
イワインの主要産地のほぼ全ての地域において,スルフェートの含有量が25
800ppmを超えるものが存在することが示されているなど,本件発明
が規定する構成要件Bの「300ppm未満の塩化物」及び「800pp
m未満のスルフェート」との各陰イオンの濃度レベルは,決してワインと
して通常有する濃度を規定するものではない。
ウ本件発明は,ワイン中の生来的な成分であり,生産国,土壌,品種,気
候等によってワイン中の濃度が様々に異なり得る塩化物及びスルフェー5
トに着目し,これらの陰イオンの濃度レベルの低いワインのみを金属缶へ
のパッケージングの対象として選別することで,当該ワインをパッケージ
ングした金属缶の腐食を防止しようというものである。
他方,乙29文献には,塩化物及びスルフェートのワイン中の濃度につ
いての記載は一切存在しておらず,これらの濃度を低レベルに調整するこ10
とについての示唆もない。被告らも指摘するとおり,硫酸及び塩酸はワイ
ンの物理的・化学的安定性に対して正の作用を有しており,その含有レベ
ルを高くすることも考えられるのであるから,乙29の表2,3にその含
有量を低くする旨の示唆があるということはできない。
エさらに,29文献記載の実験結果は,保存期間が2~3か月を超えた時15
点でワインの品質(味,色,匂い)が商品として許容できない程度に劣化
しており,商業的に利用できるレベルのものではなかったのであるから,
当業者が乙29発明を参酌するとは考え難い。
したがって,相違点1及び2は,本件特許の優先日当時の当業者にとっ
て容易に想到し得るものではなかった。20
7争点(3)イ(乙29発明による新規性欠如)について
〔被告らの主張〕
乙29文献はイタリアの論文であり,アルミニウム缶にパッケージングされ
たワインのテストはボローニャ大学で行われていること,イタリアワインが世
界有数のワインの一つであることは技術常識であること(甲24),乙29文25
献には外国産である旨の記載がないことからすれば,乙29文献におけるテス
トで使用された白ワインはイタリアワインと推認される。
甲24文献の表32によれば,平均的なイタリアワインに含有される塩化物
(Clで表現)は70ppmであり,スルフェート(K2SO4で表現)は75
0ppmである。本件発明の「塩化物」や「スルフェート」が陰イオン又はN
aCl又はK2SO4の化合物を示すとの原告の主張を前提とした場合,平均的5
なイタリアワインの塩化物の含有量は300ppm未満であり,スルフェート
の含有量は800ppm未満である。そうすると,乙29文献には本件発明に
係るワインが記載されているに等しい。
したがって,本件発明は新規性違反の無効理由がある。
〔原告の主張〕10
被告らは,乙29文献のテストに使用されている白ワインがイタリアワイン
であると主張するが,乙29文献にはワインの産地の記載はなく,何ら証拠に
基づかない主張である。仮にイタリアワインであったとしても,イタリアワイ
ンは多種多様であって,上記テストに用いられたワインが,「300ppm未
満の塩化物(Cl-
)」及び「800ppm未満のスルフェート(SO4
2-
)」15
を有するワインであったとはいえない。
したがって,被告らの新規性欠如の主張は失当である。
8争点(3)ウ(乙29発明及び甲24文献による進歩性欠如)について
〔被告らの主張〕
上記7に関し,仮に,乙29文献のテストで使用されたワインがイタリアワ20
インでないとしても,乙29発明について平均的なイタリアワイン(甲24)
を適用することに何らの困難性もない。
したがって,本件発明には進歩性違反の無効理由がある。
〔原告の主張〕
イタリアワインは多種多様であり(甲111),「平均的なイタリアワイン」25
というものが存在しない。また,仮に,乙29発明にイタリアワインを適用す
ることを想到し得たとしても,甲24文献の表32から明らかであるように,
イタリアワインは,塩化物(Cl-
)を300ppm以上又はスルフェート(S
O4
2-
)を800ppm以上含む可能性を否定できないので,本件発明の構成
は容易に想到し得るものではない。
9争点(3)エ(実施可能要件違反)について5
〔被告らの主張〕
(1)本件発明は「35ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩化物と,
800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造
するステップ(構成要件B)」を有する。
しかし,本件明細書の発明の詳細な説明には,上記所定の組成を満たすワ10
インの製造条件等が一切記載されていない。本件明細書の段落【0038】
~【0042】に記載された試験に関しても,使用したワインの組成につい
ての記載はなく,製造条件を変更した上での比較試験の記載もない。そして,
本件明細書全体並びに本件特許の優先日及び出願日当時の技術常識に基づい
ても,当業者は上記所定の組成を有するワインの製造条件を想定することは15
できない。
原告は,本件明細書の段落【0015】から,ワインとミネラルウォータ
ーなどをブレンドすることで上記所定の組成のワインを得ることが容易に想
到し得ると主張するが,同段落の記載は「規定レベルよりも高いレベルの構
成成分でワインを処理し,これらの構成成分を除去するか又はこれらの構成20
成分の含有率を本発明に必要となる含有率まで低下させる」というもので,
数値範囲外のワインを排除することや,遊離SO2,塩化物又はスルフェート
の濃度が低いものを混ぜて成分を薄めることは記載されていない。
したがって,当業者をしても,本件発明の所定の組成のワインのパッケー
ジングする方法を使用することができず,本件発明を実施することができな25
い。
(2)請求項1には「アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングさ
れているツーピースアルミニウム缶」と記載されているところ,この「耐食
コーティング」の具体的な材料については,本件明細書の発明の詳細な説明
には,熱硬化性コーティングとすることが好ましい旨が記載されるとともに
(段落【0009】),エポキシ樹脂とする旨が記載されているのみである(段5
落【0034】)。ところが,耐食コーティングに用いる樹脂成分の違いによ
り,缶内の飲料に与える影響に大きな差があることは周知である(乙34~
36)。
したがって,当業者をしても,本件発明の「所定の組成のワインのパッケ
ージングする方法」を使用することができず,本件発明を実施し得ない。10
(3)以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,経済産業省令で
定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有
する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていな
いので,特許法36条4項1号の規定に違反し,特許を受けることができな
いものであり,本件特許は同法123条1項4号に該当し,無効とすべきで15
ある。
〔原告の主張〕
(1)本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明に係るワインの製造方法が
詳細に記載されており(段落【0015】~【0032】),同明細書に記
載された特定のブドウ栽培及びワイン製造技術により製造することができる。20
そもそも,当業者(ワインの製造業者)であれば,特段の記載がなくても
ワインを製造できることは明らかであるし,自らワインを製造しなくても,
ワイン製造業者の製造したワインを入手することが可能である。そして,塩
化物及びスルフェートの濃度の分析・測定技術も確立していたのであるから,
アルミニウム缶に充填する際に本件発明の数値の範囲外のワインを除外すれ25
ば足りる。
本件明細書の段落【0015】には「本発明において,『ワイン』という
用語は,極めて広範囲に使用され,この用語には非発泡ワイン,発泡ワイン
ならびに強化ワイン,及びミネラルウォーター及びフルーツジュースとブレ
ンドされたワインが含まれる。」との記載があり,これによれば,塩化物や
スルフェートの含有率の低いミネラルウォーター,フルーツジュース又はワ5
インとブレンドすることによって,塩化物やスルフェートの含有率を本件発
明に必要となる含有率まで低下させることも可能である。
さらに,遊離SO2の含有量が経時的に減少することは当業者にとって周
知であり,澱引きや過酸化水素水の使用によって二酸化硫黄を減少させる手
法も当業者によく知られている(甲150)。10
(2)アルミニウム缶の腐食を防止するために,缶内面に被覆するコーティング
の材料として,エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂),フェノール樹脂(熱硬化性
樹脂),ポリ塩化ビニル樹脂(熱可塑性樹脂),ポリエステル樹脂(熱可塑
性樹脂)など様々な樹脂を用いることが可能であること,及び,その中から
目的に応じて最適なものを選んで用いればよいことは当業者にとって周知で15
あった。また,本件発明は耐食コーティングの組成に係る発明ではなく,ど
のような種類の耐食コーティングであっても本件発明の実施において利用可
能である。
(3)したがって,本件発明は実施可能要件に違反するものではない。
10争点(3)オ(サポート要件違反)について20
〔被告らの主張〕
(1)本件発明の課題は,アルミニウム缶内にワインをパッケージングしても,
これによりワインの品質が保存中に著しく劣化しないようにすることである
(本件明細書の段落【0004】)。
この課題を解決するため,本件発明は「35ppm未満の遊離SO2と,325
00ppm未満の塩化物と,800ppm未満のスルフェートとを有するこ
とを特徴とするワインを製造するステップ」を有するが,その技術上の意義
については本件明細書の発明の詳細な説明に一切説明がなく,当業者はその
記載により本件発明の課題を解決できると認識することはできない。
また,本件明細書には,パッケージングされたワインについて試験が行わ
れた旨の記載はあるが,コーティングの条件について記載はなく,測定が行5
われたとされる「頭隙酸素」や「目視検査」が行われたことをうかがわせる
記載もないので,実際に実験が行われたかどうかも疑わしい。
さらに,遊離SO2,塩化物,スルフェートが上記所定の組成を満たさない
場合との比較試験の結果は示されていない。本件発明は化学成分の組成や缶
内圧力など実験しないとその作用効果が確認できない構成要件を含む発明で10
あるから,作用効果を確認するための十分な比較試験が必要である。
加えて,本件特許の優先日又は出願日当時の技術常識に照らしても,当業
者は,上記特定の組成を有するワインを用いることで本件発明の課題が解決
できると認識することができない。
(2)請求項1には「アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングさ15
れているツーピースアルミニウム缶」と記載されているところ,この「耐食
コーティング」の具体的な材料については,本件明細書の発明の詳細な説明
には,熱硬化性コーティングとすることが好ましい旨が記載されるとともに
(段落【0009】),エポキシ樹脂とする旨が記載されているのみである(段
落【0034】)。20
本件明細書の同段落には,「良好に架橋された不透過性膜によって,保存中
に過度のレベルのアルミニウムがワイン中に溶解しないことを保証すること
が重要である。」との記載があり,これによれば,耐食コーティングの不透過
性が不十分である場合にはワインの保存安定性が確保できないこととなるが,
「良好に架橋された不透過性膜」とはどの程度架橋された膜をいうのか,エ25
ポキシ樹脂以外の樹脂で本件発明の効果を奏するにはどうしたら良いのかに
ついては本件明細書に記載はないことから,当業者は本件明細書の記載から
本件発明の課題が解決できると認識することはできない。
(3)したがって,本件発明についての特許は,特許法36条6項1号の規定に
違反し,同法123条1項4号に該当し,無効とすべきである。
〔原告の主張〕5
(1)本件発明の課題を解決できると認識できるかどうかという点に関し,遊離
SO2が金属腐食性の強い物質であり,その含有量が低いほど金属缶入りワ
インの耐食性が向上することは当業者に周知の事項である(甲39,40,
乙29)。また,塩化物イオン(Cl-
)及びスルフェート(SO4
2-
)につい
ても,アルミニウム容器に対して負の影響を及ぼす因子であることは,一般10
的な技術常識である(甲88~90)。「0~300ppm未満」の塩化物
及び「0~800ppm未満」のスルフェートがそれぞれ相対的に低い濃度
レベルであることは技術常識であるから,当業者には,本件発明に係るワイ
ンをアルミニウム缶にパッケージングした場合の方が,アルミニウム缶が腐
食しにくいと容易に理解することができる。15
本件発明の特徴的な部分は,ワイン中の生来的な成分である塩化物及びス
ルフェートに着目し,その濃度が低レベルのワインのみを選別して金属缶に
パッケージングするという点にあり,これは従来存在しなかった技術思想で
あるから,構成要件Bに規定された各上限値を定めるに当たっての裏付けと
なる実験結果の記載まで本件明細書の記載として求められるものではない。20
また,構成要件Bの各数値範囲は,それぞれが相対的に低い濃度であること
を示すという意義を有するものであり,臨界的な意義があるわけではない。
臨界的な意義のない数値範囲については,その裏付けとなる実験結果等の記
載がないとしてもサポート要件には違反しない。
(2)本件発明は,耐食コーティングとして用いる樹脂の組成に関するものでは25
ない。「耐食コーティング」については,従来公知のものであれば,どのよ
うな種類のものでも本件発明の実施において利用可能であるから,エポキシ
樹脂以外の樹脂を使用する場合についても,本件発明の課題を解決すること
ができると当業者が認識できることは明らかである。
なお,耐食コーティングの組成が異なれば,ガスバリヤー性及びフレーバ
ー成分の吸着性の性能差に応じて,内容物に溶出する金属イオンの量,発生5
する硫化水素の量,吸着されるフレーバー成分の量がそれぞれ異なり得るこ
とは確かであるが,これはワイン中の成分の塩化物及びスルフェートの量に
影響を及ぼすものではなく,本件発明の課題は,ワイン中の遊離SO2,塩化
物及びスルフェートの含有量を所定値以下にすることにより達成される。
(3)したがって,本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載したもの10
であるから,特許法36条6項1号の規定に違反しない。
11争点(4)ア(本件訂正の適法性)について
〔原告の主張〕
本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に規定する特許請求の
範囲の減縮を目的とするものであって,適法である。15
本件訂正は,「35ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩化物と,
800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを製造
するステップ」という発明特定事項を,より下位の「アルミニウム缶内にパッ
ケージングする対象とするワインとして,35ppm未満の遊離SO2と,30
0ppm未満の塩化物と,800ppm未満のスルフェートとを有することを20
特徴とするワインを意図して製造するステップ」(下線部が訂正部分)とする
ものであり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特
許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法134条の2
第9項で準用する同法126条6項に適合する。
〔被告らの主張〕25
本件発明の構成要件Aの「アルミニウム缶内にワインをパッケージングする
方法であって…」及び構成要件Dの「を含む,アルミニウム缶内にワインをパ
ッケージングする方法。」の各文言に鑑みれば,訂正前の構成要件Bのステッ
プで製造されるワインは,当然に,アルミニウム缶内にパッケージング対象と
なるワインであるから,構成要件Bに「アルミニウム缶内にパッケージングす
る対象とするワインとして」との文言を加えても,これにより構成要件Bが限5
定されることにはならない。
また,構成要件Bの「製造する」という文言自体に「原料を加工して製品と
する」との意味がある(乙92)から,構成要件Bに「…ワインを意図して製
造する」との文言を加えても,これにより構成要件Bが限定されることにはな
らない。さらに,「意図して製造する」か「意図せずに製造する」かは,製造10
を行う者の主観であって外形的・客観的な判断はできないから,「意図して製
造する」との訂正が技術的に明確であるとはいえない。
したがって,本件訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる
事項を目的とするものではない。
12争点(4)イ(構成要件B’の充足性)について15
〔原告の主張〕
(1)被告モンデ酒造による,アルミニウム缶にパッケージングされるワインの
「製造」行為が,「アルミニウム缶にパッケージングする対象となるワイン
として」当該パッケージングされるワインを製造するものであることは明ら
かである。20
(2)被告モンデ酒造の作成に係る甲54資料の左下の「充填仕様」の箇所には,
イ号方法に係るワインについて,「遊離亜硫酸(F-SO2)」の「目標値」
が「20(ppm)以上」,「管理範囲」が「20~30ppm」であるこ
とが,ロ号及びハ号方法に係るワインについて,「目標値」が「40(pp
m)以上」,「管理範囲」が「40~50ppm」であることが明記されて25
いる。そうすると,被告モンデ酒造は,充填時に上記「管理範囲」の遊離S
O2を含有するワインを「意図して」製造しており,ワイン消費時(市場販売
時)に,イ号方法については「20~30ppm」よりも低い濃度の,ロ号
及びハ号方法については約19~27ppmの遊離SO2を含有するワイン
を「意図して」製造しているといえる(甲56)。
(3)被告大和製罐及び被告モンデ酒造は,平成20年3月に弁理士作成の調査5
報告書(甲133)を,平成21年2月に弁理士作成の鑑定書(甲134)
をそれぞれ取得し,被告大和製罐が検討していた実施案が本件特許を侵害し
ないとの意見を得たことから,被告各方法の使用を開始したものであり,遅
くとも平成20年3月には本件発明に係るワインの三つの成分の含有量に着
目していた。10
また,被告モンデ酒造は,チリから原料となる輸入ワインを輸入している
が,チリの分析機関から成分分析証明書を入手していたので,当該輸入ワイ
ンが「300ppm未満の塩化物」及び「800ppm未満のスルフェート」
を含有することを認識しつつ,被告アルミ缶にパッケージングするワインの
原料として使用していたと考えられる。15
仮にそのような事実が認められないとしても,被告モンデ酒造は,遅くと
も,甲54資料のための分析(平成27年12月4日よりも前に実施)の後
には,被告各製品が構成要件Bの規定する成分について所定の含有量を有す
ることを認識していたから,上記意図を有していた。
(4)被告各方法が訂正前の構成要件Bを充足することは前記のとおりであり,20
訂正により付加された構成も満たすことは上記(1)ないし(3)に記載のとおり
であるから,被告各方法は,構成要件B’を充足する。
〔被告らの主張〕
前記のとおり,被告各方法は構成要件Bの各成分の濃度を満たさないから,
構成要件B’も充足しないことは明らかである。25
また,被告各製品の製造時又はパッケージング時の各成分の含有量の測定
データが証拠上存在しないことからも,被告各製品のパッケージング方法に
おいて「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の含有量を意図して
調整していないことは明らかである。
13争点(4)ウ(本件訂正により無効理由が解消するか)について
〔原告の主張〕5
(1)本件訂正により,本件訂正発明は「アルミニウム缶内にパッケージングす
る対象とするワインとして」所定の各成分を含有するワインを「意図して」
製造し,パッケージする方法に限定されることとなったところ,乙29文献
及び乙30文献には,「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とする
ワインとして,35ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩化物と,10
800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワインを意図
して製造するステップ」という構成は,開示も示唆もされていない。
したがって,乙29発明に乙30文献を組み合わせても,本件訂正発明の
構成にはなり得ないのであって,乙29発明による進歩性欠如の無効理由が
ないことはより明確となった。15
(2)本件訂正発明は,「35ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩
化物と,800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワイ
ン」を,「アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして」,
「意図して」製造するものであることが明らかであり,当該「意図」を有さ
ず偶然に上記数値範囲内のワインを製造する場合等が含まれないことは明ら20
かである。
したがって,本件訂正発明には,明確性要件違反の無効理由はない。
(3)本件訂正発明には,その余の無効理由もない。
本件明細書の発明の詳細な説明には,所定のワインを「意図して製造」す
る方法が記載されているし,当業者であれば,本件明細書の記載及び技術常25
識に基づいて,本件発明の所定のワインを意図して製造することは容易に実
現可能である。
〔被告らの主張〕
(1)本件訂正により,いずれの無効理由も解消していない。
(2)本件訂正後の本件明細書の発明の詳細な説明からは,「意図して」とはど
ういう場合をいうのか不明であって,サポート要件違反の無効理由があるし,5
また,意図して所定の濃度の各成分を有するワインを製造する具体的な方法
を知り得ないから,実施可能要件違反の無効理由がある。
(3)本件訂正により,新たに明確性要件違反の無効理由が生じた。
「意図して製造する」か「意図せずに製造する」かは,製造を行う者の主
観であって,どのような場合が「意図して製造する」場合で,どのような場10
合が「意図せずに製造する」場合なのかは,外形的・客観的には判断できな
い。そうすると,特許権の権利範囲を確定する際の前提となる請求項に記
載された発明を明確に把握できず,権利の及ぶ範囲が第三者に不明確とな
り不測の不利益を及ぼす状態にある。
したがって,本件訂正発明は明確ではなく,特許法36条6項2号違反15
の無効理由を有する。
14争点(5)(損害の発生の有無及びその額)について
〔原告の主張〕
(1)本件における被告らの行為は,一連かつ極めて密接な関係にあるから,被
告らの行為が客観的に関連し共同して原告に損害を加えたことは明らかであ20
り,被告らには,共同不法行為が成立する。
(2)被告らの得た利益額
被告セブンイレブンは,平成23年から被告各製品を1個285円(税抜)
で販売しているところ(甲6参照),年間売上個数は250万個を下らない
から,現在までの約4年間の売上合計額は,28億5000万円(285×25
250万×4)を下らない。
また,被告らが上記共同不法行為によって得られる各々の利益を合算した
総利益の利益率は,20%を下らない。
したがって,被告らが上記期間に被告各製品の販売によって得た利益は,
5億7000万円を下らない。上記利益額は,上記の共同不法行為によって
原告が受けた損害額と推定される(特許法102条2項)。5
(3)原告の請求額(一部請求)
原告は,被告ら各自に対し,不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,
5億7000万円及びこれに対する遅延損害金を請求する権利を有するが,
原告は,その一部請求として,被告らに対し,連帯して8000万円及びこ
れに対する遅延損害金の支払を求める。10
〔被告らの主張〕
否認又は争う。
第4当裁判所の判断
1本件発明の内容
(1)本件明細書等には次の各記載がある。15
ア技術分野
・「本発明は,アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法に関
する。本発明はまた,本発明の方法に従ってワインが充填されたアルミ
ニウム缶に関する。」(段落【0001】)
イ発明の背景20
・「ワインは,古代ギリシャの時代から製造されている。ワインは多くの
タイプの容器に保存されてきた。これらの容器には例えば,木材,陶器,
皮革が含まれる。特に1リットル未満の量で保存される場合には,ワイ
ンの好ましい保存手段として,ガラス瓶の使用が発展した。ほとんど例
外なしに瓶が使用されてはいるものの,瓶は比較的重く,かつ比較的壊25
れやすいという欠点を有する。」(段落【0002】)
・「ワイン以外の飲料,例えばビールやソフトドリンクの場合,金属缶や
ポリエチレンテレフタレート(PET)のような,代わりとなる包装容
器が幅広く採用されている。これらの包装容器は,より軽量で,かつ耐
破損性がより大きいという利点をもたらす。このような代わりの容器に
ワインを保存することが提案されている。しかし,ワインに対してこの5
ようなタイプのパッケージングを利用しようという試みは概ね不成功に
終わっている。いくつかの極めて低品質のワインは,ポリ塩化ビニル容
器内に保存される。このような不成功の理由は,ワイン中の物質の比較
的攻撃的な性質,及び,ワインと容器との反応生成物の,ワイン品質,
特に味質に及ぼす悪影響にあると考えられる。ワインは典型的には3~10
4の範囲のpHを有する複雑な製品である。」(段落【0003】)
・「アルミニウム缶内にワインをパッケージングし,これによりワインの
品質が保存中に著しく劣化しないようにすることが望ましい。」(段落
【0004】)
ウ発明の詳細な説明15
・「本発明の方法に必要となるワインは,下記のような特定のブドウ栽培
及びワイン製造技術によって製造することができる。あるいは,規定レ
ベルよりも高いレベルの構成成分でワインを処理し,これらの構成成分
を除去するか又はこれらの構成成分の含有率を本発明に必要となる含有
率まで低下させることにより,ワインを製造してもよい。本発明におい20
て,「ワイン」という用語は,極めて広範囲に使用され,この用語には
非発泡ワイン,発泡ワインならびに強化ワイン,及びミネラルウォータ
ー及びフルーツジュースとブレンドされたワインが含まれる。」(段落
【0015】)
・「白ワインに付随する全ての手順において,何があっても空気に対する25
暴露は回避しなければならず,低温環境が実現される。上述のようにし
て製造されたワインは,35ppm未満の遊離二酸化硫黄レベルと,2
50ppm未満の総二酸化硫黄レベルとを有する。酸,塩化物,ニトレ
ート及びスルフェートを形成することができる陰イオンレベルは,規定
の最大値未満である。」(段落【0032】)
・「本発明は,頭隙に窒素を必要としない発泡ワインに適用することもで5
きる。それというのも,所要の缶強度を提供するのには二酸化炭素で充
分だからである。」(段落【0033】)
・「本発明に適したツーピース缶は,ソフトドリンク及びビール飲料に現
在用いられている缶である。この缶のライニングも同様であり,典型的
には,ホルムアルデヒドを基剤とする架橋剤と組み合わされたエポキシ10
樹脂である。使用される膜厚は,典型的にはビール又はソフトドリンク
に用いられているものよりは厚い。典型的には,175mg/375m
l缶が,適切な膜厚をもたらすことが判った。内部をコーティングされ
た缶は,典型的には165~185℃の範囲の温度で20分間ベーキン
グすることができる。良好に架橋された不透過性膜によって,保存中に15
過度のレベルのアルミニウムがワイン中に溶解しないことを保証するこ
とが重要である。」(段落【0034】)
・「缶充填プロセスは,ほぼ0.1mlの液体窒素を,本体のクロージャ
のシーム形成直前に添加することに関与する。缶の内部圧力は,ほぼ2
5~40psiである。」(段落【0035】)20
・「上述のように,アルミニウム缶内でのワインの保存安定性は極めて重
大である。頭隙が酸素を含むボトリングされたワインとは異なり,本発
明の缶の頭隙が有する酸素レベルは極めて低い。すなわち,このワイン
は保存中「老化」しない。」(段落【0037】)
・「試験を目的として,パッケージングされたワインを,周囲条件下で625
ヶ月間,30℃で6ヶ月間保存する。50%の缶を直立状態で,50%
の缶を倒立状態で保存する。」(段落【0038】)
・「製品を2ヶ月の間隔を置いて,Al,pH,°ブリックス(Brix),頭
隙酸素及び缶の目視検査に関してチェックする。1つの変数当たり,6
つの缶を倒立させ,6つの缶を直立させる。目視検査は,ラッカー状態,
ラッカーの汚染,シーム状態を含む。試料は12ヶ月保存しなければな5
らない。官能試験は,味覚パネルによる認識客観システムを用いる。」
(段落【0039】)
・「白ワインの保存評価の結果を表1に示す。白ワインは赤ワインよりも
平均で,より低いpHを有し,白ワイン試験は保存安定性に関してより
厳しい試験となる。」(段落【0040】)10
・「表1
保存°ブリックス
(20℃)
配向Almg/LpH初期に対するAl
含有量上昇率(%)
初期6.7-0.53.40-
3ヶ月6.9直立0.653.4730
3ヶ月6.5倒立0.683.4736
6ヶ月7.0直立0.723.4944
6ヶ月7.0倒立0.683.5036
」(段落【0041】)
・「このデータは30℃で6ヵ月後の充分な保存状態を示す。許容可能な
ワイン品質が味覚パネルによって確認された。」(段落【0042】)
(2)本件発明の意義
前記(1)によれば,本件発明は,①アルミニウム缶内にワインをパッケー
ジングする方法に関するものであって,②アルミニウム缶にワインをパッケ
ージングしようとすると,ワイン中の物質の比較的攻撃的な性質やワインと
容器との反応生成物がワインの品質に及ぼす悪影響により,ワインの保存中5
にその品質が劣化するという課題を解決するため,③「35ppm未満の遊
離SO2と,300ppm未満の塩化物と,800ppm未満のスルフェー
トとを有することを特徴とするワインを製造するステップ」(構成要件B)
と「アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティングされているツー
ピースアルミニウム缶の本体に,前記ワインを充填し,缶内の圧力が最小210
5psiとなるように,前記缶をアルミニウムクロージャでシーリングする
ステップ」(構成要件C)を含む方法を採用することにより,④ワインの品
質が保存中に著しく劣化しないという効果を奏するものであると認められ
る。
2争点(3)オ(サポート要件違反)について15
事案に鑑み,まず,争点(3)オについて判断する。
(1)特許法36条6項1号は,特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとす
る発明が発明の詳細な説明に記載したものでなければならないとしており,
いわゆるサポート要件を規定している。
特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特20
許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲
に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な
説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲の
ものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術
常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか25
否かを検討して判断すべきである(知的財産高裁平成17年11月11日判
決・判例タイムズ1192号164頁参照)。
(2)これを本件発明についてみると,本件特許の特許請求の範囲の記載は前記
第2の2(2)記載のとおりである。本件発明の意義は,前記1(2)のとおり,
アルミニウム缶にワインをパッケージングしようとすると保存中にその品質
が劣化するという課題を解決するため,①「35ppm未満の遊離SO2と,5
300ppm未満の塩化物と,800ppm未満のスルフェートとを有する」
ワインを製造し,②「アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティン
グされているツーピースアルミニウム缶の本体」を使用し,③「缶内の圧力
が最小25psiとなるように,前記缶をアルミニウムクロージャでシーリ
ングする」などの方法により,上記課題を解決し,ワインの品質が保存中に10
著しく劣化しないという効果を実現しようとするものであると認められる。
なお,本件特許の請求項3は「前記ワインがさらに,250ppm未満の
総二酸化硫黄レベルを有する」こと,請求項4は「前記ワインがさらに,1
00ppm未満の総二酸化硫黄レベルを有する」こと,請求項5は「前記ワ
インがさらに,30ppm未満の総ニトレートと,900ppm未満の総ホ15
スフェートと,6g/リットル~9g/リットルの範囲の酒石酸として算出
された酸性度とを有する」こと,請求項8は「クロージャーによるシーリン
グ後の頭隙が,80~97%v/vの窒素と,2~20%v/vの二酸化炭
素との組成を有する」こと,請求項9は「シーリング後の前記頭隙は大部分
が二酸化炭素になる」ことを発明特定事項としているが,請求項1にはその20
ような特定はされていないので,そのような特定をすることなく本件発明に
係る効果を奏することが前提とされていると考えられる。
(3)本件発明に係る特許請求の範囲の記載のうち,特にワインの品質の劣化に
関連すると考えられる上記(2)①,②について,対応する発明の詳細な説明の
記載を検討する。25
ア上記(2)①(遊離SO2,塩化物及びスルフェートの濃度)について
上記(2)①(構成要件B)は,「35ppm未満の遊離SO2と,300
ppm未満の塩化物と,800ppm未満のスルフェート」を有するワイ
ンを製造するというものであるところ,本件明細書の発明の詳細な説明に
は,上記の構成に関し,「上述のようにして製造されたワインは,35p
pm未満の遊離二酸化硫黄レベルと,250ppm未満の総二酸化硫黄レ5
ベルとを有する。酸,塩化物,ニトレート及びスルフェートを形成するこ
とができる陰イオンレベルは,規定の最大値未満である。」(段落【00
32】)との記載が存在するにすぎない。このように,本件明細書の発明
の詳細な説明には,ワインの品質に影響を与える成分の中から「遊離S
O₂」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度範囲を特定することの技術10
的な意義,本件発明の効果との関係,濃度の数値範囲の意義についての記
載は見当たらない。
次に,上記構成により本件発明の効果を実現できることが技術常識であ
ったかどうかについて検討するに,まず,「遊離SO2」,「塩化物」及び
「スルフェート」のうち,「遊離SO2」については,金属腐食性の強い物15
質であり,その含有量が低いほど金属缶入りワインの耐食性が向上するこ
とは当業者に周知の事項であるということができる(甲39,40,乙2
9)。
しかし,「塩化物」及び「スルフェート」については,アルミニウム容
器に対して負の影響を及ぼす因子であることは技術常識であったとして20
も,一方では,乙29文献の表2に,硫酸及び塩酸が「化学的/物理的安
定性」については正の影響を与えることが示されているのであるから,ワ
インの品質の保持のためには,その濃度を高くすることも考え得るのであ
って,本件特許の出願日当時,本件発明の効果を実現するためにその濃度
を低くすることが当然であるとの技術常識が存在したということはでき25
ない。
また,乙29文献の表2及び3によれば,ワインをパッケージングした
アルミニウム容器に対して負の影響を及ぼす成分等は他に複数あるもの
と認められるところ(例えば,リンゴ酸,クエン酸,炭酸ガス,酸素,銅
イオン,亜鉛イオンなど),その中で「遊離SO2」,「塩化物」及び「ス
ルフェート」の各成分の濃度を特定すれば,他の成分の濃度等を特定する5
ことなく本件発明の効果を実現できることが技術常識であったと認める
に足りる証拠はない。むしろ,当業者であれば,「遊離SO2」,「塩化物」
及び「スルフェート」以外の様々な成分等もアルミニウム缶にパッケージ
ングされたワインの品質に影響を及ぼすと考えるのが通常であるという
ことができる。10
そうすると,「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度の
うち,特に「塩化物」及び「スルフェート」の濃度に係る構成については,
その濃度範囲を特定することの技術的な意義,本件発明の効果との関係,
濃度の数値範囲の意義についての記載がないと,当業者は,特許請求の範
囲に記載された構成により本件発明の課題を解決し得ると認識すること15
ができないというべきところ,本件明細書にはそのような記載がないこと
は前記判示のとおりである。
イ上記(2)②(耐食コーティング)について
上記(2)②の「アルミニウムの内面に耐食コーティングがコーティング
されている」ことに関し,本件明細書の発明の詳細な説明には,「この缶20
のライニングも同様であり,典型的には,ホルムアルデヒドを基剤とする
架橋剤と組み合わされたエポキシ樹脂である。…。典型的には,175m
g/375ml缶が,適切な膜厚をもたらすことが判った。…良好に架橋
された不透過性膜によって,保存中に過度のレベルのアルミニウムがワイ
ン中に溶解しないことを保証することが重要である。」(段落【0034】)25
と記載されている。同記載によれば,本件発明の「耐食コーティング」は,
アルミニウム缶の内面に架橋剤及び熱硬化性の合成樹脂を含む液体状組
成物をコーティングしてこれを熱硬化させて膜を形成するタイプに限ら
れず,平板状のアルミニウムの板に腐食防止性を有するフィルムをラミネ
ートした後,このフィルム付きの平板状のアルミニウムの板を缶に加工す
るというタイプも含むと解するのが相当である。5
ところで,耐食コーティングに用いる材料の種類や成分の違いにより,
缶内の飲料に与える影響に大きな差があることは,本件特許の出願日当時,
当業者に周知であるということができる(乙34~36)。例えば,特開平
7-232737号公開特許公報(乙36)には,「エポキシ系樹脂組成物
を被覆した場合,ワイン系飲料に含まれる亜硫酸ガス(SO2)をはじめと10
するガスに対するガスバリヤー性が劣っており,かつフレーバー成分の収
着性が高い。例えば,ワイン系飲料等を充填した場合,含有する亜硫酸ガ
ス(SO2)が塗膜を通過して下地の金属面を腐食する虞があり,場合によ
っては内容物が漏洩することもある。この亜硫酸ガスは下地の金属と反応
して硫化水素(H2S)を発生させるが,この硫化水素(H2S)は悪臭の15
主要因となるばかりでなく,飲料の品質保持のため必要な亜硫酸ガス(S
O2)を消費するため飲料の品質を劣化させフレーバーを損なうこととな
る。また,この樹脂組成物は飲料中のフレーバーを特徴付ける成分を収着
しやすく,飲料用金属容器の内面に被覆するには官能的に充分満足のでき
るものではない。」(段落【0004】),「一方,ビニル系樹脂組成物を被覆20
した場合,…エポキシ系樹脂組成物と同様に亜硫酸ガス(SO2)等に対す
るガスバリヤー性に乏しく,やはり腐食や漏洩の危険性及び官能的な問題
がある。」(段落【0005】)との記載がある。これによれば,耐食コーテ
ィングに用いる材料や成分が,ワイン中の成分と反応してワインの味質等
に大きな影響を及ぼすことは,本件特許の出願日当時の技術常識であった25
ということができる。
上記のとおり,耐食コーティングに用いる材料の成分が,ワイン中の成
分と反応してワインの味質等に大きな影響を及ぼし得ることに照らすと,
本件明細書に記載された「エポキシ樹脂」以外の組成の耐食コーティング
についても本件発明の効果を実現できることを具体例等に基づいて当業
者が認識し得るように記載することを要するというべきである。5
この点,原告は,本件発明の課題は,ワイン中の遊離SO2,塩化物及び
スルフェートの含有量を所定値以下にすることにより達成されるのであ
り,耐食コーティングの種類によりその効果は左右されない旨主張する。
しかし,塗膜組成物の組成を変えることにより塗膜の物性が大きく変動し,
缶内の飲料に大きな影響を及ぼすことは周知であり(乙34の第1表,乙10
35の第2,3表等),ワイン中の遊離SO2,塩化物及びスルフェートの
含有量を所定値以下にすれば,コーティングの種類にかかわらず同様の効
果を奏すると認めるに足りる証拠はない。
(4)以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,具体例の開示がなく
とも当業者が本件発明の課題が解決できると認識するに十分な記載があると15
いうことはできない。そこで,本件明細書に記載された具体例(試験)によ
り当業者が本件発明の課題を解決できると認識し得たかについて,以下検討
する。
ア本件明細書には,「パッケージングされたワインを,周囲条件下で6ヶ
月間,30℃で6ヶ月間保存する。50%の缶を直立状態で,50%の缶20
を倒立状態で保存する。」(段落【0038】)との方法で試験が行われ
た旨の記載がある。しかし,本件明細書には,当該「パッケージングされ
たワイン」の「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度,そ
の他の成分の濃度,耐食コーティングに用いる材料や成分等については何
ら記載がなく,その記載からは,当該「パッケージングされたワイン」が25
本件発明に係るワインであることも確認できない。
イまた,本件明細書には,試験方法について,「製品を2ヶ月の間隔を置
いて,Al,pH,°ブリックス(Brix),頭隙酸素及び缶の目視検査に関
してチェックする。…目視検査は,ラッカー状態,ラッカーの汚染,シー
ム状態を含む。…官能試験は,味覚パネルによる認識客観システムを用い
る。」(段落【0039】)との記載がある。「頭隙酸素」については,5
乙29文献(4頁下から2行~末行)に「ヘッドスペースの酸素は,アル
ミニウムの放出に関して非常に重大である」との記載があるとおり,ワイ
ンの品質に大きな影響を与え得る因子であり,「官能試験」はワインの味
質の検査であるから,いずれもその方法や結果は効果の有無を認識する上
で重要である。しかし,本件明細書には,「頭隙酸素」のチェック結果や10
「目視検査」の結果についての記載はなく,「官能試験」についても「味
覚パネルによる認識客観システム」についての説明や試験結果についての
記載は存在しない。
ウさらに,本件発明に係る特許請求の範囲はワイン中の三つの成分を特定
した上でその濃度の範囲を規定するものであるから,比較試験を行わない15
と本件発明に係る方法により所望の効果が生じることが確認できないが,
本件明細書の発明の詳細な説明には比較試験についての記載は存在しな
い。このため,当業者は,本件発明で特定されている「遊離SO2」,「塩
化物」及び「スルフェート」以外の成分や条件を同程度としつつ,「遊離
SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度を特許請求の範囲に記載20
された数値の範囲外とした場合には所望の効果を得ることができないか
どうかを認識することができない。
加えて,耐食コーティングについては,試験で用いられたものが本件明
細書に記載されている「エポキシ樹脂」かどうかも明らかではなく,まし
て,エポキシ樹脂以外の材料や成分においても同様の効果を奏することを25
具体的に示す試験結果は開示されていない。
エ以上のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された「試験」は,
ワインの組成や耐食コーティングの種類や成分など,基本的な数値,条件
等が開示されていないなど不十分のものであり,比較試験に関する記載も
一切存在しない。また,当該試験の結果,所定の効果が得られるとしても,
それが本件発明に係る「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の5
濃度によるのか,それ以外の成分の影響によるのか,耐食コーティングの
成分の影響によるのかなどの点について,当業者が認識することはできな
い。
そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明に実施例として記載された
「試験」に関する記載は,本件発明の課題を解決できると認識するに足り10
る具体性,客観性を有するものではなく,その記載を参酌したとしても,
当業者は本件発明の課題を解決できるとは認識し得ないというべきであ
る。
オこの点,原告は,本件発明の特徴的な部分は,従来存在しなかった技術
思想であり,「塩化物」等の濃度には臨界的な意義もないので,その裏付15
けとなる実験結果等の記載がないとしてもサポート要件には違反しない
と主張する。
しかし,前記判示のとおり,特許請求の範囲に記載された構成の技術的
な意義に関する本件明細書の記載は不十分であり,具体例の開示がなくて
も技術常識から所望の効果が生じることが当業者に明らかであるという20
ことはできない。また,「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」
に係る濃度については,その範囲が数値により限定されている以上,その
範囲内において所望の効果が生じ,その範囲外の場合には同様の効果が得
られないことを比較試験等に基づいて具体的に示す必要があるというべ
きである。25
したがって,原告の上記主張は理由がない。
(5)以上のとおり,本件発明に係る特許請求の範囲の記載は,特許を受けよう
とする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるということはできな
いから,特許法36条6項1号に違反する。そして,この無効理由は,本件
訂正によっても解消しない。
よって,本件発明に係る特許は,特許法123条1項4号により特許無効5
審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,特許法104
条の3第1項により,本件発明に係る特許権を行使することができない。
3争点(3)エ(実施可能要件違反)について
続いて,争点(3)エについて判断する。
(1)明細書の発明の詳細な説明の記載は,経済産業省令で定めるところにより,10
その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をす
ることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならないから
(特許法36条4項1号),方法の発明については,当業者が,明細書の発
明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき,過度の試行錯誤を要するこ
となく,その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。15
(2)そこで,検討するに,被告は,「35ppm未満の遊離SO2と,300p
pm未満の塩化物と,800ppm未満のスルフェートとを有することを特
徴とするワイン」の製造条件を当業者が想定することはできないと主張する。
確かに,本件明細書の段落【0016】~【0031】に記載されたブド
ウの栽培方法等に従った栽培を行うことにより「35ppm未満の遊離SO₂20
と,300ppm未満の塩化物と,800ppm未満のスルフェートとを有
することを特徴とするワイン」が製造されるかどうかは明らかではない。ま
た,本件明細書の段落【0015】に記載された「規定レベルよりも高いレ
ベルの構成成分でワインを処理し,これらの構成成分を除去するか又はこれ
らの構成成分の含有率を本発明に必要となる含有率まで低下させる」方法も25
開示されていない。
しかし,同段落には,「本発明において,「ワイン」という用語は,極め
て広範囲に使用され,この用語には…ミネラルウォーター及びフルーツジュ
ースとブレンドされたワインが含まれる。」との記載があり,ワインとミネ
ラルウォーター等をブレンドすることが示唆されているので,当業者であれ
ば,こうした記載を参酌し,塩化物やスルフェートの含有率の低いミネラル5
ウォーター,フルーツジュース又はワインとブレンドすることによって,塩
化物やスルフェートの含有率を本件発明に必要となる含有率まで低下させる
ことは可能であるというべきである。
したがって,「35ppm未満の遊離SO2と,300ppm未満の塩化物
と,800ppm未満のスルフェートとを有することを特徴とするワイン」10
の製造条件を当業者が想定することが困難であるということはできない。
(3)他方,前記のとおり,乙29文献の表2及び3によれば,ワインをパッケ
ージングしたアルミニウム容器に対して負の影響を及ぼす成分は他に複数あ
るものと認められ,「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェート」の濃度
を特定すれば,他の成分の濃度いかんにかかわらず本件発明の効果を実現で15
きるという技術常識が存在したと認めるに足りる証拠はない。そうすると,
本件発明に係る方法を使用するためには,本件明細書に「遊離SO2」,「塩
化物」及び「スルフェート」の濃度に加えて,本件発明に係る「ワイン」に
含まれ,効果に影響を及ぼし得るその他の成分の濃度等についても具体的に
記載されていないと,当業者はどのような組成のワインが本件発明に係る効20
果を奏するかを確認することが困難であるが,本件明細書に記載された「試
験」で使用されたワインの組成は「遊離SO2」,「塩化物」及び「スルフェ
ート」の濃度すら明らかではなく,他の成分の種類や濃度も何ら開示されて
いないことは前記判示のとおりである。
(4)また,耐食コーティングに用いる樹脂等の成分の違いにより,缶内の飲料25
に与える影響に大きな差があることは前記のとおりであるところ,本件明細
書には耐食コーティングの具体例として「エポキシ樹脂」が挙げられている
のみで,他の種類のコーティングにおいても同様の効果を奏すると当業者が
理解し得る記載は存在しない。また,そのような技術常識が本件特許の出願
時に存在したと認めるに足りる証拠はない。
また,本件明細書に記載された「試験」で用いられた耐食コーティングの5
種類は明らかではなく,どのようなコーティングがワインの組成成分とあい
まって本件発明に係る効果を奏するかを具体的に示す試験結果は存在しない。
そうすると,当業者は,本件発明を実施するに当たって用いるべき耐食コー
ティングについても過度の試行錯誤することを要するというべきである。
(5)以上のとおり,本件発明に係るワインを製造することは困難ではないが,10
本件発明の効果に影響を及ぼし得る耐食コーティングの種類やワインの組成
成分について,本件明細書の発明の詳細な説明には十分な開示がされている
とはいい難いことに照らすと,本件明細書の発明の詳細の記載は,当業者が
実施できる程度に明確かつ十分に記載されているということはできず,特許
法36条4項1号に違反するというべきである。そして,この無効理由は,15
本件訂正によっても解消しない。
よって,本件発明に係る特許は,特許法123条1項4号により特許無効
審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,特許法104
条の3第1項により,本件発明に係る特許権を行使することができない。
4結論20
以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求はいずれ
も理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官25
佐藤達文
裁判官
遠山敦士5
裁判官勝又来未子は,転補のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官
佐藤達文
別紙1
被告方法目録
1.イ号方法
イ号方法は,以下の構成a1~d1を有するアルミニウム缶内に白ワインに炭5
酸ガスを封入する型のスパークリング白ワインをパッケージングする方法であ
る。
a1アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって,該方法
が:
b1アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして,10
(1)詰前(濾過後)の時点での濃度が平均32.0ppm(全体の約7
2.3%が35ppm未満)であり,当該ワインを消費する時点での残
存濃度が35ppm未満である遊離SO2と,
(2)詰前(濾過後)の時点での濃度及び当該ワインを消費する時点での
残存濃度がいずれも平均70.00ppm程度であるCl-
と15
(3)詰前(濾過後)の時点での濃度及び当該ワインを消費する時点での
残存濃度がいずれも平均210.00ppm程度であるSO4
2-

を有することを特徴とする白ワインに炭酸ガスを封入する型のスパーク
リング白ワインを意図して製造するステップと;
c1アルミニウムの内面に腐食の防止を目的とするポリエステルの膜がラミ20
ネートされている,口頸部と肩部を有しかつ接合部のない胴部1と,底部
2から成る,アルミニウムのボトル缶の本体に,前記ワインを充填し,缶
内の圧力が平均46.90psiとなるように,前記缶をアルミニウム製
のネジキャップ3でシーリングするステップと
d1を含む,アルミニウム缶内に白ワインに炭酸ガスを封入する型のスパー25
クリング白ワインをパッケージングする方法。
2.ロ号方法
ロ号方法は,以下の構成a2~d2を有するアルミニウム缶内に白ワインをパ
ッケージングする方法である。
a2アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって,該方法5
が:
b2アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして,
(1)詰前(濾過後)の時点での濃度が平均44.4ppmであり,当該
ワインを消費する時点での残存濃度が35ppm未満である遊離SO2
と,10
(2)詰前(濾過後)の時点での濃度及び当該ワインを消費する時点での
残存濃度がいずれも平均70.00ppm程度であるCl-

(3)詰前(濾過後)の時点での濃度及び当該ワインを消費する時点での
残存濃度がいずれも平均567.00ppm程度であるSO4
2-

を有することを特徴とする白ワインを意図して製造するステップと;15
c2アルミニウムの内面に腐食の防止を目的とするポリエステルの膜がラミ
ネートされている,口頸部と肩部を有しかつ接合部のない胴部1と,底部
2から成る,アルミニウムのボトル缶の本体に,前記ワインを充填し,缶
内の圧力が平均19.80psiとなるように,前記缶をアルミニウム製
のネジキャップ3でシーリングするステップと20
d2を含む,アルミニウム缶内に白ワインをパッケージングする方法。
3.ハ号方法
ハ号方法は,以下の構成a3~d3を有するアルミニウム缶内に赤ワインをパ
ッケージングする方法である。
a3アルミニウム缶内にワインをパッケージングする方法であって,該方法5
が:
b3アルミニウム缶内にパッケージングする対象とするワインとして,
(1)詰前(濾過後)の時点での濃度が平均45.9ppmであり,当
該ワインを消費する時点での残存濃度が35ppm未満である遊離S
O2と,10
(2)詰前(濾過後)の時点での濃度及び当該ワインを消費する時点での
残存濃度がいずれも平均50.00ppm程度であるCl-

(3)詰前(濾過後)の時点での濃度及び当該ワインを消費する時点での
残存濃度がいずれも平均207.00ppm程度であるSO4
2-

を有することを特徴とする赤ワインを意図して製造するステップと;15
c3アルミニウムの内面に腐食の防止を目的とするポリエステルの膜がラミ
ネートされている,口頸部と肩部を有しかつ接合部のない胴部1と,底
部2から成る,アルミニウムのボトル缶の本体に,前記ワインを充填
し,缶内の圧力が平均17.20psiとなるように,前記缶をアルミ
ニウム製のネジキャップ3でシーリングするステップと20
d3を含む,アルミニウム缶内に赤ワインをパッケージングする方法。
4.イ号方法,ロ号方法及びハ号方法に用いられるアルミニウム缶の構成の説明
参考図
(1)ネジキャップ3の開封前5
(2)ネジキャップ3の開封後
以上
別紙2
被告各製品目録
以下の商品名で特定されるアルミニウム缶に充填されたワイン
イ号商品名:プティモンテリアスパークリング
ロ号商品名:プティモンテリアブラン
ハ号商品名:プティモンテリアルージュ10
以上
別紙3
被告各製品製造用アルミニウム缶目録
1別紙1被告方法目録記載1の方法(イ号方法)を使用して別紙2被告各製品目
録記載1の製品(「プティモンテリアスパークリング」)を製造するために使5
用される,ワインをパッケージングする前のアルミニウムのボトル缶
2別紙1被告方法目録記載2の方法(ロ号方法)を使用して別紙2被告各製品目
録記載2の製品(「プティモンテリアブラン」)を製造するために使用される,
ワインをパッケージングする前のアルミニウムのボトル缶10
3別紙1被告方法目録記載3の方法(ハ号方法)を使用して別紙2被告各製品目
録記載3の製品(「プティモンテリアルージュ」)を製造するために使用され
る,ワインをパッケージングする前のアルミニウムのボトル缶
<参考写真:「プティモンテリアスパークリング」>
<参考写真:「プティモンテリアブラン」>
<参考写真:「プティモンテリアルージュ」>
以上

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