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平成13年(行ケ)第41号 審決取消請求事件 (平成14年7月11日口頭弁
論終結)
判    決
   原      告     田辺製薬株式会社
   原      告     テルモ株式会社
   原告ら訴訟代理人弁理士  辻   邦 夫
   同            辻   良 子
   被      告     株式会社大塚製薬工場
   訴訟代理人弁理士     三 枝 英 二
   同            斎 藤 健 治
   同            中 野 睦 子
         主    文 
    原告らの請求を棄却する。
    訴訟費用は原告らの負担とする。
         事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告ら
   特許庁が平成9年審判第21438号について平成12年12月14日にし
た審決を取り消す。
   訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
 主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
 原告らは、発明の名称を「亜硫酸イオンフリーの二重包装型アミノ酸製剤」とす
る特許第2088101号(平成2年11月30日出願、平成8年9月2日設定登
録。その請求項1に係る発明についての特許を「本件特許」といい、その発明を
「本件特許発明」という。)の特許権者である。被告は、平成9年12月19日、
原告らを被請求人として、本件特許を無効とすることについて審判を請求し、平成
9年審判第21438号事件として審理された結果、平成12年12月14日、
「本件特許の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。」との審決がさ
れ、その謄本が平成13年1月9日原告らに送達された。
 2 本件特許発明の要旨(特許請求の範囲請求項1の記載)
【請求項1】システイン、シスチン及びこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一
種を含有した亜硫酸イオンフリーのアミノ酸輸液が硫化水素透過性容器に充填され
ており、かつ該輸液充填容器が脱酸素剤と共に気密性容器に封入されていることを
特徴とする亜硫酸イオンフリーの二重包装型アミノ酸輸液製剤。
 3 審決の理由の要旨
 審決は、別紙審決の理由写し(「審決書」という。)のとおり、本件特許発明
は、特開平2-200266号公報(「引用刊行物」:甲第3号証(審判甲第11
号証)平成1年1月30日出願、平成2年8月8日公開)に記載された発明である
から、本件特許は特許法29条1項3号の規定に違反してなされたものであり、特
許法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである、とした。
 (なお、本判決中に審決書を引用する場合、審決書中の「甲第11号証」は「引
用刊行物」と読み替えて引用する。)
第3 原告ら主張の審決取消事由
 審決は、以下の1ないし3の点で引用刊行物に記載された発明の認定を誤り(取
消事由1ないし3)、その結果、本件特許発明が引用刊行物に記載された発明であ
ると誤って結論したものであって、違法なものとして取り消されるべきである。
 1 取消事由1(システイン等の含有について)
 審決は、本件特許発明は、アミノ酸輸液がシステイン、シスチン及びこれらの誘
導体から選ばれる少なくとも1種(以下「システイン等」という。)を含有したも
のであるのに対して、引用刊行物にシステイン等の含有について記載がないことを
指摘(審決書5頁11行~15行)した上で、「引用刊行物の手段がシステインを
含有するアミノ酸輸液にも適用できることは当業者に自明であって、特にシステイ
ンについて言及がなくとも、酸素により変質し易いアミノ酸輸液として、システイ
ンを含有するアミノ酸輸液を使用することは記載されているに等しいものである。
したがって、当業者であれば、引用刊行物において使用する輸液として、システイ
ン含有輸液をも包含するものと理解するのが普通であり、この点では実質的に区別
できない。」(審決書6頁5行~11行)と判断するが、誤りである。
 (1) 引用刊行物に記載された発明の対象とされた輸液は、「酸素により変質
し易いアミノ酸輸液」であるが、それはアミノ酸輸液が酸化変色し易いトリプトフ
ァンを含む組成となっているからである。すなわち、アミノ酸輸液は、必須アミノ
酸成分である酸化変色し易いトリプトファンを含む組成となっており、システイン
を含有すると否とにかかわらず基本的に「酸素により変質し易い輸液」である。シ
ステインを含むアミノ酸輸液は、「酸素による変質を防止することが望ましいアミ
ノ酸輸液」であることは確かであるが(システインは酸素の存在下で容易に酸化さ
れ変質する)、その逆、すなわち、「酸素により変質し易いアミノ酸」が必ずシス
テインを含むということにはならない。
 したがって、引用刊行物に、「変質し易いアミノ酸輸液」を使用することが記載
されているからといって、「システインを含有するアミノ酸輸液」を使用すること
が記載されているに等しいということはできない。
 本件特許発明は、アミノ酸輸液がシステイン等を含有したものである点で、引用
刊行物記載の発明と明確に区別することができるものである。
 (2) 被告は、1980年末にはTEO基準と呼ばれるアミノ酸輸液の基本処
方が作成され、この処方に沿ったアミノ酸輸液にはシステインが含まれていたか
ら、当業者であれば、引用刊行物記載のアミノ酸輸液には、当然、システイン含有
輸液も含まれると理解すると主張するが、失当である。
 TEO基準は、アミノ酸輸液に対しその組成を満足することを求めた絶対的・強
制的な基準ではなく、TEO基準公表後のアミノ酸輸液が必ずシステインを含有す
るという訳ではない。現に、システイン等を含有しないアミノ酸輸液も製造販売さ
れている。したがって、当業者にとって、引用刊行物記載のアミノ酸輸液はシステ
イン等を含有する輸液を包含するものであると理解することが普通であるとはいえ
ない。また、システインを含有するアミノ酸輸液が製造販売されている事実がある
からといって、そのことを理由に、システインを含有するアミノ酸輸液を「酸素に
より変質し易いアミノ酸輸液」として使用することが引用刊行物に記載されている
に等しいということができないことも明らかである。
 2 取消事由2(亜硫酸塩の含有について)
 審決は、「本件特許発明は、・・・、アミノ輸液が亜硫酸イオンを含まないもの
である点・・・に対して、引用刊行物においては、・・・記載がなく、」(審決書
5頁11行~15行)と指摘した上で、「引用刊行物の出願時点における当業者の
認識、引用刊行物における「容器にポリエチレンを用いた場合には、測定の結果輸
液の亜硫酸イオン、硫酸イオンの容器内部の透過は検出されなかった。」との記載
及び甲第25証における実験報告書の実験結果等からみれば、引用刊行物の発明に
おいてはアミノ酸輸液に亜硫酸塩は配合されていないものと解すべきである。」
(審決書10頁4行~9行)と判断するが、誤りである。
 (1) 引用刊行物に係る特許出願がなされた時点において、アミノ酸輸液には
アミノ酸の変質を防止するために亜硫酸塩を配合しておくことが当業者の共通した
認識であり、技術常識であった。このことは、アミノ酸輸液メーカー各社が、19
89年当時、製造販売していた全てのアミノ酸輸液から亜硫酸塩が検出されたとの
報告(甲第12号証:医薬ジャーナル Vol25 NO.9、1989)からも明らか
である。よって、当業者は、引用刊行物記載のアミノ酸輸液は亜硫酸塩が配合され
たものとして理解するから、引用刊行物には亜硫酸塩の配合されたアミノ酸輸液が
記載されているに等しいといえる。
 被告の挙げる乙第17ないし第19号証には、アミノ酸輸液に亜硫酸塩を配合す
る、配合しないのいずれについても明示的な記載がないから、これらの証拠から亜
硫酸塩を含まないアミノ酸輸液が周知であるとはいえない。
 また、乙第5、6号証記載の製品は、引用刊行物に係る特許出願前に既に市販さ
れていたのかどうか定かでなく、少なくとも、プラスチックバッグにアミノ酸輸液
が充填されているものではなくて、ガス透過性のないガラス瓶に充填されているも
のである。これに対し、引用刊行物記載の発明は、プラスチック製容器に充填した
酸素によって変質し易い輸液の滅菌保存時における変質を防ぐための技術に関する
ものであるところ、プラスチック製容器は、ガス透過性が高く、酸素の透過によっ
てアミノ酸輸液の変質の恐れが多いという問題があることは常識である(甲第4号
証2頁右上欄7行~左下欄10行及び甲第5号証3頁左上欄17行~左下欄9
行)。そして、プラスチック製容器を用いたアミノ酸輸液製剤には、ガス不透過性
のガラス製容器を用いる場合には必ずしも必要とされない、亜硫酸塩等の安定化剤
を添加することが常識的に行われてきていたのである(甲第12号証)。したがっ
て、ガラス瓶に充填するという技術において亜硫酸塩を配合しないアミノ酸輸液を
用いることが公知であるとしても、引用刊行物記載の発明におけるアミノ酸輸液に
亜硫酸塩が配合されていないということはできない。
 (2) 審決は、「引用刊行物においては、アミノ酸輸液の酸素による変質を防
止するための方法として、輸液中に亜硫酸塩を配合する従来方法とは異なる、滅菌
水中に亜硫酸塩を配合する方法を開示しているのであり、アミノ酸輸液に亜硫酸塩
を配合する方法が技術常識であるからといって、これのみで、引用刊行物において
も、輸液中に亜硫酸塩を配合しているとすることはできない。」(審決書6頁27
行~32行)と判断する。
 しかし、引用刊行物には従来方法においてアミノ酸輸液に配合されている亜硫酸
塩が技術上の何らかの難点になっていることなどの記載はなく、引用刊行物記載の
発明では、従来方法で採用されている、酸化分解抑制のためにアミノ酸輸液に亜硫
酸塩を配合するという手段を排除することはもともと意図されていない。また、引
用刊行物記載の発明における滅菌水への亜硫酸塩配合という手段は、滅菌水中の溶
存酸素を脱除するのに十分な手段ではないから、アミノ酸輸液への亜硫酸塩の配合
という手段を排除することは、引用刊行物記載の発明の本来の目的にそぐわない。
したがって、引用刊行物はアミノ酸輸液に亜硫酸塩を配合することを排除していな
い。
 (3) 審決は、「引用刊行物には上記したように「容器にポリエチレンを用い
た場合には、測定の結果輸液の亜硫酸イオン、硫酸イオンの容器内部の透過は検出
されなかった。」との記載がある。」(審決書7頁8行~10行)として、引用刊
行物中の「容器にポリエチレンを用いた場合には、測定の結果輸液の亜硫酸イオ
ン、硫酸イオンの容器内部への透過は検出されなかった」という記載(以下、「記
載A」という。)を引用し、「引用刊行物の該記載を文字通り読めば、引用刊行物
の記載は被請求人(原告ら)のいうとおり輸液容器外部から内部に亜硫酸イオンが
透過しなかったことを示し、」(同7頁13行~15行)と認定した上で、
「引用刊行物においては、上記「容器にポリエチレンを用いた場合には、測定の結
果輸液の亜硫酸イオン、硫酸イオンの容器内部の透過は検出されなかった。」との
記載の前段には「この亜硫酸水素ナトリウムは、食品添加物としても用いられてい
る安全性の高い化合物である。」と記載され、この記載と上記記載とが「さらに」
で結ばれている。そして上記当業者の亜硫酸塩の安全性についての認識をふまえ
て、これら記載をみると、滅菌水に配合される亜硫酸塩は食品に使用される添加物
でありその安全性は高いが、その上さらに、滅菌水中の亜硫酸イオン、硫酸イオン
も容器内部に透過しなかった点でより安全であることを示すものと解することがで
き、このような亜硫酸イオン及び硫酸イオンの容器内部への透過を問題にする研究
者が、輸液に亜硫酸塩を配合するということも考えにくい。しかも、ポリエチレン
は、液体の水の透過自体がほとんどないから、滅菌水に含まれる亜硫酸イオン及び
硫酸イオンの容器内部への透過があったとしても極めて微量であるはずであり、引
用刊行物において、このような微量の亜硫酸イオン及び硫酸イオンの容器内への透
過の問題について特に記載したということは、上記亜硫酸塩の安全性に対する危惧
により容器内の輸液に亜硫酸塩を配合しなかったことに基づくものと解しても特段
不合理ではない。」(同7頁20行~36行)
と判断した。しかし、審決の上記判断は誤りである。
 まず、上記判断の根拠とされている記載Aは、日本文として文意が明らかでない
不明瞭な記載であるから、引用刊行物記載の発明におけるアミノ酸輸液に亜硫酸塩
が配合されていないという判断の根拠には、そもそもなり得ない。
 また、審決は、「引用刊行物において、このような微量の亜硫酸イオン及び硫酸
イオンの容器内への透過の問題について特に記載したということは、上記亜硫酸塩
の安全性に対する危惧により容器内の輸液に亜硫酸塩を配合しなかったことに基づ
くものと解しても特段不合理ではない。」というが、安全性が高いと解される亜硫
酸塩について、その安全性について危惧するということは両立し得ないことであっ
て、記載Aが、亜硫酸塩の安全性に対する危惧により容器内の輸液に亜硫酸塩を配
合しなかったことに基づくものと解することは不合理である。また、引用刊行物記
載の発明は、滅菌水に配合せしめた亜硫酸塩が滅菌水中の溶存酸素を滅菌機内で捕
捉排除する作用を発現することを前提にした技術であるから、事実として上記作用
を示し、その効果が有意のものであること明らかにすることが求められるが、仮
に、亜硫酸イオンの透過がない素材を用いた実験がなされていなければ、上記作用
が現に生じその効果が有意のものであるかどうかに疑義が生じるから、記載Aは、
容器の素材としてポリエチレンを選択した場合には亜硫酸イオン等の透過がないこ
とを単に確認的に述べ、滅菌水中で溶存酸素を捕捉排除するという上記効果が有意
のものであることを示そうとしたものであり、安全性に対する危惧から容器内部へ
の透過の問題について記載した訳ではない。
 したがって、審決が挙げる点は、いずれも、刊行物1記載の輸液には亜硫酸塩が
配合されていないとする理由とはなり得ない。
 (4) 審決は、「甲第25号証(本訴甲第13号証)の上記実験における
(1)の場合と(2)の場合における結果を比較すると、輸液中に亜硫酸水素ナト
リウムを配合しない場合においては、滅菌水(注、審決中に「輸液」とあるのは誤
記)中にも亜硫酸水素ナトリウムを配合しない場合の吸光度上昇(0.0828、
0.1121)と、滅菌水中に亜硫酸水素ナトリウムを配合した場合の吸光度上昇
(0.0170、0.0367)の差は極めて大きいのに対して、(3)の場合と
(4)の場合と比較すると、輸液中に亜硫酸水素ナトリウム塩を配合した場合にお
いては、滅菌水中に亜硫酸水素ナトリウムを配合する場合の吸光度上昇(0.01
54、0.0209)と滅菌水中に亜硫酸ナトリウムを配合しない場合(0.02
85(審決中に「0.285」とあるのは誤記、0.0349)との差は小さいこ
とがわかる。一方、引用刊行物の表1の実験結果によれば、滅菌水中の亜硫酸水素
ナトリウム濃度が0の場合の吸光度上昇は0.0970であるのに対して、滅菌水
中の亜硫酸水素ナトリウム濃度が0.01%の場合は0.0180であり、その差
は極めて大きいから、引用刊行物の表1の結果は、甲第25証の実験結果中、輸液
に亜硫酸水素ナトリウムを配合する場合よりも、輸液中に亜硫酸水素ナトリウムを
配合しない場合の結果に近いものということができる。」(審決書8頁28行~9
頁4行)とした上で、先に「2.」の冒頭で述べたように、「甲第25証における
実験報告書の実験結果等からみれば、引用刊行物の発明においてはアミノ酸輸液に
亜硫酸塩は配合されていないものと解すべきである。」(審決書10頁7行~9
行)と判断するが、以下の理由により、誤りである。
   ア 引用刊行物及び甲第13号証(審判甲第25号証)には、「アミノ酸輸
液の波長350nmの吸光度」(以下、「A350」という。)データが記載されて
おり(以下、「引用刊行物の該データ」を「引用刊行物データ」、「甲第13号証
の該データ」を「報告書データ」という。)、引用刊行物データにおける滅菌前の
A350(0.051)と報告書データにおける滅菌前のA350(実験1では0.0
049、また、実験3では0.0056)との間には極めて大きな差異がある。こ
のことは、引用刊行物記載のアミノ酸輸液には、甲第13号証におけるアミノ酸輸
液とは異なった、トリプトファンの分解を促進する何らかの因子が含まれているこ
とを窺わせるものであり、このような因子が滅菌時におけるトリプトファンの分解
を促進し引用刊行物データに影響を及ぼしていると解することは極めて自然であ
る。
 よって、引用刊行物データを根拠に、アミノ酸輸液における亜硫酸塩の有無を判
断することはできない。
 これに対する被告の反論は失当である。すなわち、被告の反論は、滅菌水に亜硫
酸塩を添加しない場合における、輸液中にトリプトファン分解促進因子を含んだこ
とによる、滅菌前後における吸光度の上昇寄与分と、滅菌水中に亜硫酸塩を0.0
1%で添加した場合における同寄与分が同じになることを前提とするものである
が、常識的にいっても、滅菌水からの流入酸素量が大きい前者の方が後者より大き
な値となるはずであって、上記因子は滅菌水中の亜硫酸水素ナトリウム濃度が0%
と1%との場合の両者において、同じように滅菌によりトリプトファンの分解を促
進し、着色成分を増大させることはない。
   イ 甲第13号証の内容自体、極めて疑わしい。すなわち、甲第13号証に
よれば、トリプトファン含有アミノ酸輸液に亜硫酸塩を配合することにより、滅菌
前後における吸光度の上昇分が小さくなっている。しかし、甲第15号証によれ
ば、トリプトファンは亜硫酸塩が存在すると窒素気流中においても分解が促進さ
れ、特に酸素の存在下では急速に分解すること、亜硫酸塩の作用によってインジゴ
チンの中間体となるデヒドロインジゴ亜硫酸が形成されること、そして、デヒドロ
インジゴ亜硫酸が波長350㎜の吸収を示すことが報告されており、上記の上昇分
が小さくなることはない。このように、甲第13号証の内容は疑わしい。
 被告は、これに対し、甲第15号証の報告を、低濃度の亜硫酸塩を使用するアミ
ノ酸輸液に当てはめることはできないと反論するが、失当である。
 すなわち、アミノ酸輸液の着色はトリプトファンの酸化分解により黄色のキヌレ
ニンが生成するために起こるものとされ、A350はキヌレニン生成の指標とされて
いるのである(甲第14号証の第314頁右欄最下行~第315頁左欄3行)が、
甲第15号証は、亜硫酸塩の存在により、キヌレニンの生成とは異なったA350に
影響を及ぼすトリプトファンの分解反応が生じることを報告しているものである。
したがって、甲第12号証、乙第16、22号証に、亜硫酸塩がアミノ酸輸液など
の着色防止効果があることが記載されているからといって、亜硫酸塩の存在により
A350に影響を及ぼすトリプトファンの分解反応が生じることを報告する甲第15
号証の記載事項は否定されないし、矛盾するものでもない。また、低濃度(0.0
1~0.05%)の亜硫酸塩を使用するアミノ酸輸液の場合にも、亜硫酸塩の存在
による吸光度上昇が生じることは甲第20号証が明瞭に示しているし、乙第21号
証の実験結果でも、滅菌前の吸光度は、亜硫酸水素ナトリウムの濃度が0%の場合
より、0.01%の場合の方が高い値を示しているから、甲第15号証の報告を、
低濃度の亜硫酸塩を使用するアミノ酸輸液に当てはめることは
できないとする理由はない。
 3 取消事由3(硫化水素透過性容器について)
 審決は、「本件特許発明は、・・・輸液充填容器が硫化水素透過性であるのに対
して、引用刊行物においては、・・・記載がなく、」(審決書5頁11行~15
行)とし、「甲第5号証(本訴甲第16号証)の表VIIによれば、ポリテン(エチレ
ンポリマー)は、酸素ガス透過性を有するが、硫化水素の透過性の方がさらに高い
ことが示されている。また、甲第6号証(本訴甲第17号証)の実験報告書におい
ては、ポリエチレン(UZ2010BM)の各厚さ(0.172mm、0.350mm、0.597mm)のフィル
ムの硫化水素透過性を試験しているが、その結果は、いずれも硫化水素透過性であ
ることを示している。しかも、甲第7号証(本訴甲第18号証)の酸素透過性試験
においては、硫化水素透過性試験で使用したものよりさらに薄いポリエチレンフィ
ルム(UZ2010BM、厚さ0.162mm)を使用した結果が示されているが、この両者を比較
すれば、ポリエチレンフィルムの硫化水素透過性は、酸素透過性よりもさらに高い
ことが明らかである。」(審決書10頁24行~33行)と指摘した上で、「引用
刊行物においては、輸液充填容器として使用されていたポリエチレン等の酸素透過
性を問題にしているものの、このポリエチレンは硫化水素透過性でもあるから、引
用刊行物と本件特許発明とにおける輸液充填容器は、同一のものである。」(審決
書10頁下から6行~同3行)と認定するが、誤った認定である。
 (1) 引用刊行物記載の発明における内袋は、そもそも硫化水素透過性である
ことが求められるものではないから、引用刊行物にポリエチレン製の内袋とするこ
とが記載されているからといって、引用刊行物が上記内袋として硫化水素透過性容
器を選択採用する技術的思想を開示しているとはいえない。
 (2) また、引用刊行物記載の発明は、その特許請求の範囲請求項1の記載に
あるように、溶存酸素と反応し得る量以上の亜硫酸塩を溶解させた100℃~12
1℃の加圧過熱状態の滅菌水中で滅菌処理を施して冷却したという、特定の熱履歴
を受けた輸液充填容器であるところ、甲第16乃至18号証は、単にポリエチレン
から形成されたフィルムの硫化水素透過性に関することが示されているに過ぎず、
熱履歴を受けたポリエチレンが硫化水素透過性であることは示されていないから、
上記輸液充填容器が本件特許発明に係る硫化水素透過性容器と同一とする根拠には
ならない。
 4 まとめ
 以上のとおり、引用刊行物は、(1)システイン等を含むアミノ酸輸液を対象と
し、(2)亜硫酸イオンフリーとし、かつ(3)内袋として硫化水素透過性容器を
用いるという3要素を不可欠とした発明についてのものではないし、また、かかる
発明を開示するものでもないから、本件特許発明が引用刊行物に記載された発明で
あるとした審決理由は誤りである。
第4 被告の反論
 1 取消事由1(システイン等の含有)に対して
 原告らの主張は失当である。
 (1) 乙第3号証には、1980年末にはTEO基準と呼ばれる静脈栄養用の
L型アミノ酸結晶混合液の基本処方を完成し、この基準を受け、“TEO”処方と
して新たに開発された純粋のL型アミノ酸結晶の混合液製剤がアミゼット10
(田辺)やアミパレン(大塚)として1988年5月に市販され、その後、続い
て同様の考え方のアミニック(ルセル森下)が登場したこと(19頁19~25
行)及びTEO基準はシステインを含む至適なアミノ酸パターンを有し、TEO基
準に基づく新組成アミノ酸液が開発されていること(140頁末行~141頁4
行)が記載され、TEO基準で配合されるシステインは、本件特許出願当時におい
て輸液に通常使用される成分として当業者に認識され、その使用が奨励されていた
ことは明らかである。このことは、乙第9号証(特開昭59-27817号公報)
からも明らかである。
 したがって、当業者であれば、引用刊行物記載のアミノ酸輸液として、システイ
ン含有輸液をも包含するものと理解するのが普通である。
 (2) 例えば、甲第12号証に記載された14種類のアミノ酸輸液製品(A~
N)について、システイン又はシスチンの配合の有無をみると、14製品のうち1
1製品がシステイン又はシスチンがアミノ酸成分(有効成分)として配合され、残
りの3製品については、TEO基準公表以前に発売されていた製品であるから(乙
第13、14号証)、TEO基準公表(1984年)以後においては、該基準に従
ってシステインやシスチンがアミノ酸輸液に通常配合されていたことは明らかであ
る。
 2 取消事由2(亜硫酸塩の含有)に対して
 (1) 原告らの主張は失当である。
 すなわち、ガラス瓶に収容されたもの(乙第5、6号証)、プラスチックバッグ
に収容されたもの(乙第17~19号証)として、亜硫酸塩を含まないアミノ酸輸
液は引用刊行物に係る特許出願前に周知であり、当業者にアミノ酸輸液に亜硫酸塩
を配合しておくという共通認識は存在しない。したがって、当業者は引用刊行物に
記載されたアミノ酸輸液を亜硫酸塩が配合されたものとして理解するとはいえな
い。
 (2) 亜硫酸塩は、滅菌水中の溶存酸素と反応し得る量以上溶解させるのであ
るから、全ての溶存酸素は除去されるはずである。アミノ酸輸液への亜硫酸塩の配
合という手段を排除することは、引用刊行物記載の発明の目的にそぐわない矛盾し
たものということはできない。
 (3) 審決が、引用刊行物の輸液に亜硫酸塩が配合されていないと認定した根
拠は、正当である。
 まず、引用刊行物中の記載Aは、審決の認定どおり、容器にポリエチレンを用い
た場合に、滅菌水中の亜硫酸イオン等が輸液容器内部に透過しなかったことを示し
たものであって、文意が明らかでない不明瞭な記載ではない。そして、引用刊行物
の「この亜硫酸水素ナトリウムは、食品添加物としても用いられている安全性の高
い化合物である。」との記載は、亜硫酸塩の安全性に危惧のあることが周知である
こと(甲第12号証、乙第15、16号証)を踏まえると、万が一にも滅菌水から
輸液内に亜硫酸イオンが透過混入しても安全であり、亜硫酸塩を滅菌水に溶解して
使用するのに問題のないことを示そうとしたものであり、次に記載Aでは輸液内に
透過混入していないことを確認し、上記の使用の安全性を再確認しているものであ
る。
 また、原告らは、記載Aは亜硫酸塩が滅菌水中の溶存酸素を捕捉排除することを
明らかにするために確認的に述べたものだというが、滅菌水中の溶存酸素を除去し
ようとする場合、亜硫酸塩は溶存酸素を分解する量よりも過剰量、通常は大過剰使
用するはずであるから、溶存酸素を滅菌機内で捕捉排除する作用が発現することに
疑義が生じるはずはなく、原告らの主張するような趣旨で記載Aを記載する必要な
どない。 
 (4) 刊行物1の表1の結果は、甲第13号証の実験結果中、アミノ酸輸液に
亜硫酸塩を配合しない場合の結果に近い。
   ア 原告らは、引用刊行物の輸液には甲第13号証の輸液とは異なる何らか
のトリプトファン分解促進因子が含まれていると推測されるから、甲第13号証の
実験結果によって引用刊行物の輸液に亜硫酸塩が含まれているか否かを判断するこ
とはできないというが、引用刊行物には、トリプトファンを分解促進する因子につ
いて何ら記載されていないから、該因子が配合されていると仮定した場合について
議論する意味はない。また、引用刊行物記載のアミノ酸輸液にトリプトファンを分
解促進する因子が含まれていたのであれば、その因子は滅菌水中の亜硫酸水素ナト
リウム濃度が0%と1%との場合の両者において、同じように滅菌によりトリプト
ファンの分解を促進し、着色成分を増大させるはずであって、前記場合において、
滅菌前後における吸光度差の乖離が大きいとの結論に変わりはない。したがって、
引用刊行物データは、甲第13号証のアミノ酸輸液に亜硫酸水素ナトリウムを配合
する場合よりも、輸液中に配合しない場合の結果に近いものという結論に誤りはな
い。
   イ 亜硫酸塩の存在によりトリプトファンの着色が抑制されることは、公知
の事実である(甲第12号証、乙第16、22号証)。原告らの指摘する甲第15
号証は、酸素の存在下でのトリプトファンの亜硫酸塩による分解反応の促進につい
て記載しているものであるが、ここで用いられた亜硫酸ナトリウムは、0.05M
(0.63重量%)もの極めて高濃度であるから、そこに記載された事項をはるか
に低濃度の亜硫酸塩を使用するアミノ酸輸液に当てはめることはできない。
 3 原告らの主張第3点(硫化水素透過性容器)に対して
 輸液用バッグに通常使用されるポリエチレンバッグは、熱履歴の前後のいずれで
も硫化水素透過性である(乙第23号証)。
第5 当裁判所の判断
 1 争点等
 本件は、引用刊行物(甲第3号証)に、本件特許発明の構成に相当する、1)シス
テイン等を含有する亜硫酸イオンフリーのアミノ酸輸液を硫化水素透過性容器(内
袋)に充填し、2)これを脱酸素剤とともに気密性容器(外袋)に封入した二重包装
型アミノ酸製剤が記載されているか否かを争点とする事案であり、具体的には、引
用刊行物に記載された輸液入り合成樹脂容器の製造方法において使用される輸液
が、①システイン等を含有するアミノ酸輸液であるか(原告ら主張の取消事由
1)、②亜硫酸イオンを含有しないアミノ酸輸液であるか(原告ら主張の取消事由
2)、③容器(内袋)が硫化水素透過性のものであるか(原告ら主張の取消事由
3)が争点である。
 争点以外の点について、本件特許発明と引用刊行物記載の発明とが一致すること
について、当事者間に争いはない。
 2 引用刊行物の記載
 まず、引用刊行物(甲第3号証)の記載について見る。
 (1) 甲第3号証によれば、引用刊行物に以下の記載が認められる。
   ① 「(産業上の利用分野)  本発明は、酸素によって変質し易い輸液を
収容するのに好適な輸液入り合成樹脂容器の製造方法に関するものである。(従来の
技術)   従来、例えばアミノ酸輸液のような酸素によって変質し易い輸液を収容
するようにした輸液入り合成樹脂容器の製造方法として、・・・合成樹脂容器を脱
酸素剤とともにガスバリアの高い外袋に封入した後、滅菌する方法を採用した製造
方法も公知である(・・・)。
    (発明が解決しようとする課題)  上記のように輸液を収容する合成樹脂
容器では、その材質として、・・・一般にポリエチレン、ポリプロピレン等が最適
なものとして現在多く使用されている。しかし、これらの材質は特に高温下で酸素
ガスの透過性が高く、容器内の内容物がアミノ酸等の酸素で変質するようなもので
ある場合、これを滅菌処理するために、上述のように、不活性ガスを滅菌機内に充
満させた後に、蒸気を吹き込む方法が採用されているが、酸素を実質上無くすため
に、大量のガスが必要である。・・・。
    一方、滅菌に加圧過熱水を用いた場合にも、高温でも加圧下では水中に
多量の溶存酸素が存在するため、内容液の変質は防げなかった。」(1頁右下欄2
行~2頁左上欄下から2行)
    ② 「(課題を解決するための手段) 上記課題を解決するために、第1発
明は、密封した耐熱性の合成樹脂のフィルム材からなる内袋内に収容された輸液に
溶存酸素と反応し得る量以上の亜硫酸塩を溶解させた100℃~121℃の加圧過
熱状態の滅菌水中で滅菌処理を施して冷却した後、この内袋を脱酸素剤とともに、
酸素ガスバリヤの高い合成樹脂のフィルム材からなる外袋内に密封するようにし
た。」(2頁右上欄13行~左下欄1行)③ 「(実施例) ・・・第1図は、第
1発明または第2発明に係る方法により製造した輸液入り合成樹脂容器を示
し、・・・密封された内袋3と、この内袋3を脱酸素剤4とともに収容して、シー
ル部分5にて密封した外袋6とからなっている。このうち、内袋3は耐熱性があ
り、高温下で酸素ガスの透過性がある材質のもの、例えばポリエチレンフィルム材
からなり、外袋6は酸素ガスバリヤの高い材質のもの・・・からなっている。」
(2頁左下欄9行~右上欄3行) 
    ④ 「輸液1は、例えばトリプトファンを含む各種アミノ酸を12%の濃
度で蒸留水で溶解したもので、・・・内袋3内に注入した後、口部2を密閉して収
容されている。」(2頁右下欄17行~末行)
 (2) 以上の各記載によると、引用刊行物には、耐熱性の内袋に輸液を充填、
密封し、これを亜硫酸塩を溶解させた加圧過熱状態の滅菌水中で滅菌処理して冷却
した後、この内袋を脱酸素剤とともに酸素ガスバリヤ性の高い外袋内に密封するよ
うにした輸液入り合成樹脂容器の製造方法が記載され、1)輸液としては、「酸素に
よって変質し易いアミノ酸輸液」、より具体的にはトリプトファンを含む各種アミ
ノ酸を溶解したアミノ酸輸液(前記記載①、④)、2)輸液充填容器(内袋)として
は、酸素ガスの透過性があるポリエチレンフィルム材からなる(前記記載③)容器
が記載されていることが認められる。
 3 原告ら主張の取消事由1(システイン等の含有)について
 原告らは、本件特許発明はアミノ酸輸液がシステイン等を含有するものであるの
に対し、引用刊行物に記載された発明において使用される「酸素によって変質し易
いアミノ酸輸液」はシステイン等を含有したアミノ酸輸液であるとはいえないか
ら、引用刊行物に「システイン等を含有するアミノ酸輸液」を使用することが記載
されているに等しいとした審決の認定は誤りであると主張する。
 (1) そこでまず、引用刊行物発行当時のアミノ酸輸液に関する当業者の認識
について検討すると、文献(乙第3号証、甲第6号証)に次の記載が認められる。
  【乙第3号証】(最新アミノ酸輸液、1996年12月10日株式会社医薬ジ
ャーナル社発行、16~23、62~63、140~141頁)
   ①「1957年、FAO(・・・;国連食糧農業機関)の「蛋白必要量に関
する委員会」がアミノ酸配合比についての暫定基準(・・・)を発表した。・・・
    その後、非必須アミノ酸の役割の重要性が経口栄養で指摘され、1963
年にはFAO/WHOの「蛋白必要量に関する共同委員会」が、蛋白のアミノ酸組
成として鶏卵あるいはヒト母乳のアミノ酸パターンに近い比較基準(・・・)を発
表した。これを受けたわが国の必須アミノ酸委員会は、1966年厚生医療研究の
1つとして、ヒト母乳組成に準拠した必須アミノ酸と非必須アミノ酸との比率が大
略1:1のL型アミノ酸結晶混合液(“MAP”)を試作した。
    この“MAP”処方に準じて開発された市販製剤・・・などは、その後の
高カロリー輸液による完全静脈栄養の普及と相俟って広く臨床使用された。ところ
が、・・・などの考えが強く主張されるようになった4,5)

    このような経緯から、高カロリー輸液により適したアミノ酸組成のL型ア
ミノ酸結晶混合液製剤を開発することを目的に、1976年全国の7つの施設(札
幌医科大学第一外科、東北大学第二外科、東京大学第三外科、慶應義塾大学外科、
順天堂大学小児外科、新潟大学第一外科、岡山大学第二外科)の研究者が集まり、
「アミノ酸輸液検討会」が組織された。
    この組織では、製薬会社3社の研究所の協力を得て動物実験による急性毒
性試験、発熱試験をはじめとする様々の薬剤学的試験から臨床試験まで含めて12
種類のアミノ酸組成が検討され、1980年末には“TEO”基準(表1)と呼ば
れる静脈栄養用のL型アミノ酸結晶混合液の基本処方を完成した。この処方は19
82年、同検討会によって特許申請されるに至った6)

    この“TEO”基準を受け“TEO”処方として新たに開発された純粋の
L型アミノ酸結晶の混合液製剤がアミゼット10(田辺)とアミパレン(大
塚)で、1988年5月に市販された。その後続いて同様の考え方の製剤アミニッ
ク(ルセル森下)が登場した。・・・
    しかし、そのアミノ酸配合比については、“静脈栄養”用と前述したよう
に広い範囲の対象への適応を考えた汎用タイプであることも事実である。したがっ
て、高カロリー輸液の適応範囲が広がり、肝障害症例、悪性腫瘍症例、新生児症例
などでの使用経験が積み重ねられ、詳細な検討が進むにつれて、より特殊な病態を
対象とした、栄養学的により効果的なアミノ酸組成が求められるようになってい
る。」(18頁10行~20頁下から7行)
   ② 「表1 アミノ酸輸液研究会による”TEO”基準」と題する表中に、
L-システイン、配合比1.26~1.54(g/全アミノ酸100g)を含む1
8種のアミノ酸配合が記載されている。(20頁)
  【甲第6号証】(JJPEN輸液・栄養ジャーナル、1989年4月10日メ
  ディカル・コア株式会社 日本医学中央会発行、396~398頁)
   「TEO処方」は各種病態時の栄養補給に汎用性のあるアミノ酸輸液として
開発されたものであり、」(396頁左欄末行~右欄2行)
   「「TEO処方」の製剤化の検討を進めるうち、主成分であるL-システイ
ンの安定性に問題が生じたため、その配合量を減じ、その分同じ含硫アミノ酸であ
るL-メチオニンで補正したアミパレン(表1)について再度検討を開始した。」
(397頁左欄下から5行~末行)
 (2) 上記文献の記載によると、全国7つの施設の研究者によって1976年
に組織されたアミノ酸輸液委員会によって1980年ころ“TEO”基準と呼ばれ
る静脈栄養用のアミノ酸輸液の基本処方が作られたこと、この“TEO”基準は、
引用刊行物が頒布された1990年より前の時期において、当業者がアミノ酸輸液
を設計するに際して事実上の基準となっており、“TEO”処方のアミノ酸輸液製
剤が各種製品化されていたこと、“TEO”基準によるアミノ酸組成においては、
システインが配合比1.26~1.54g(g/全アミノ酸100g)で輸液中に
配合されること、また、“TEO”処方によるアミノ酸輸液は、用途を特に限定し
ない汎用のアミノ酸輸液であることが認められる。
 (3) そこで、上記認定のアミノ酸輸液に関する一般的な事情を前提として、
引用刊行物の記載が当業者にどのように理解されるかを検討する。
 引用刊行物には、内袋に充填されるアミノ酸輸液につき、トリプトファンを含む
各種アミノ酸を含有した酸素によって変質し易い性質のものであることが記載され
ているだけで、その使用目的や機能についての記載は見当たらないから、引用刊行
物に接した当業者は、該アミノ酸輸液が特定の使用目的や機能に特化していない、
ごく一般的、汎用のものであって、酸素によって変質し易いアミノ酸を含む各種ア
ミノ酸を配合したものであると理解すると考えられる。
 そして、“TEO”基準が、前記(2)で認定したように、引用刊行物が頒布さ
れたころには、汎用のアミノ酸輸液を設計する事実上の基準となっており、この基
準に沿った“TEO”処方のアミノ酸輸液(システイン含有)が各種製品化されて
いたことやシステインが酸素により容易に酸化されることは技術常識であることに
照らすと、引用刊行物に接した当業者が引用刊行物記載の発明において使用するア
ミノ酸輸液として最も自然に想起するのは、当時、ごく普通のものとなっていたシ
ステインを含有するアミノ酸輸液であるということができる。少なくとも、当業者
にとって、引用刊行物の発明において、容器に充填する輸液としてシステインを含
有するアミノ酸輸液を使用し得るのは自明のことであったことが明らかである。
 してみると、引用刊行物には、特にシステインの含有についての記載がなくて
も、容器に充填するアミノ酸輸液としてシステインを含有するものを使用すること
が記載されているに等しいというべきである。
 したがって、「当業者であれば、引用刊行物において使用する輸液として、シス
テイン含有輸液をも包含するものと理解するのが普通であり、この点では両者は区
別できない。」(審決書6頁9行~11行)という審決の認定、判断は、相当であ
り、誤りは認められない。
 なお、原告らは、単に引用刊行物における包括的概念ないし上位概念で表される
技術的事項に内包されるというだけの理由で、発明の目的や作用効果をも踏まえた
技術思想としての同一性を検討することなく、本件特許発明の構成が引用刊行物に
記載されている(ないし記載されているに等しい)とした審決の判断は誤りである
と主張するが、審決は、単に引用刊行物に記載された「酸素によって変質し易いア
ミノ酸輸液」が「システインを含有するアミノ酸輸液」を下位概念として包含する
という理由によって引用刊行物に「システインを含有するアミノ酸輸液」を使用す
ることが記載されているに等しいと認定、判断した訳ではなく、「システインは、
トリプトファンとともに、酸素により変質され易いアミノ酸の代表的なもの」であ
り「また、アミノ酸輸液の配合成分としても極くありふれたもの」であって(審決
書5頁末行~6頁2行)、「引用刊行物記載の手段がシステイン含有アミノ酸輸液
にも適用し得ることは当業者に自明である」(同6頁5~6行)ことを認定した上
で、「システインを含有するアミノ酸輸液」を使用することは引用刊行物に記載さ
れているに等しいと認定し、システイン含有の有無という点では両発明は構成上区
別することができない旨説示しているのであるから、原告らの主張は当を得ないと
いうべきである。
 以上のとおり、原告ら主張の取消事由1は、理由がない。
 4 原告ら主張の取消事由2(亜硫酸塩の含有)について
 原告らは、審決の「引用刊行物においても、輸液に亜硫酸塩を配合しているとす
ることはできない。」という認定、判断は誤りであると主張する。
 (1) 引用刊行物に、酸素により変質し易いアミノ酸輸液をポリエチレン製充
填容器(内袋)に入れたものを、脱酸素剤とともに外袋内に密封した二重包装型ア
ミノ酸輸液製剤が開示されていることは先に認定したとおりであるが、このアミノ
酸輸液が亜硫酸塩を添加したものであるか否かという点につき、引用刊行物には、
亜硫酸塩が添加されていることを積極的に示唆する記載は存在しない。
 (2) 原告らは、アミノ酸輸液に亜硫酸塩を配合することは普通のことである
から、当業者は、特に記載がなくても、引用刊行物記載の発明におけるアミノ酸輸
液にも亜硫酸塩が配合されていると理解すると主張するのに対し、被告は、アミノ
酸輸液には亜硫酸塩が配合されているという共通認識は当業者の間で存在せず、現
に、引用刊行物の公刊当時、亜硫酸塩を含まないアミノ酸輸液も周知であったこ
と、亜硫酸塩をアミノ酸輸液に配合することは安全性の面から問題視されており、
引用刊行物の記載からも亜硫酸塩の添加に対する危惧が読み取れることなどを挙げ
て、当業者は引用刊行物のアミノ酸輸液は亜硫酸塩が配合されない組成のものであ
ると理解するのが自然である旨主張する。
 (3) そこで、まず、アミノ酸輸液に添加剤として亜硫酸塩に配合することに
ついて、当業者がどのような認識を有していたかという観点から検討する。
   ア 甲第12号証、乙第15号、第16号証によれば、医薬品の添加剤(酸
化防止剤・着色防止剤)としての亜硫酸塩の使用に関連して、文献に以下の記載が
認められる。
 【甲第12号証】(医薬ジャーナル Vol.25 No.9、平成元年9月1
日株式会社医薬ジャーナル社発行)
  「1.はじめに
   医薬品添加物は、・・・・しかし、タートラジン・HCO-60をはじめと
して、近年医薬品添加物の安全面などの問題が注目され、学会等において添加物に
関する報告が数多く行われている。そこで今回我々は、問題になっている添加物の
一つである亜硫酸塩の輸液中における含量について検討したので報告する。」(9
8頁左欄)
  「2.亜硫酸塩の配合性と安全性
   3)安全性
    亜硫酸塩は、漂白作用・保存効果も有することから、食品にも頻繁に使用
されている。・・・
    しかし、最近亜硫酸塩による過敏反応が報告されている2)
。欧米では既
に、1μg/ml以下の微量亜硫酸塩による喘息誘発や、喘息のない人における過
敏症の例も報告されており、現在難治性の気管支喘息、じんま疹、アナフィラキシ
ーの原因として注目を集めている8)

    またわが国でも、亜硫酸塩の経口摂取による気管支喘息が報告されており
9)
、今後問題視されると思われる。」(99頁左欄)
   「4.結果と考察
各輸液中の亜硫酸塩濃度(亜硫酸水素ナトリウムとして)を図2,3に示
す。・・・アミノ酸輸液では全ての製品で亜硫酸塩が検出され、その濃度は製品間
で大きな差があることが確認された。」(判決注、亜硫酸塩含有量の測定対象とさ
れた製品は全14種である。)(100頁右欄)
  【乙第15号証】(製薬工場 1984年10月号別刷)
  「2.医薬品の酸化防止方法とその問題点
    酸化しやすい医薬品に対しては、各種の酸化防止策がほどこされている。
その主なものは、①添加物を入れる-酒石酸水素ノルエビネフリン、亜硫酸ナトリ
ウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤やEDTA
などのキレート剤を入れる・・・などである。・・・①の酸化防止剤の添加では、
効能に無関係な成分を入れることによるマイナス効果、即ち副作用の問題を考えな
ければならない。亜硫酸水素ナトリウムが喘息の原因ではないかといわれているの
はこの例であろう。」(695頁中欄下から8行~右欄下から14行)
  【乙第16号証】(特開平2-4715号公報)
   「これらの亜硫酸水素塩や亜硫酸塩は、アミノ酸輸液の着色防止の点で非常
に高い効果があり、なかでも亜硫酸水素塩が勝れている。しかしながら、この亜硫
酸水素塩ないし亜硫酸塩は、アミノ酸と反応することが知られている。・・・、見
かけ上の着色防止は得られても、生体にとって有害な反応生成物を与える。
    一方、亜硫酸水素塩あるいは亜硫酸塩は、生体に入ると蛋白質と反応し、
ジスルフィド結合を切断したり蛋白質そのものへ結合したりする。さらに核酸塩基
やその他の生体化合物とも反応し、強い突然変異原性を有していることが知られて
いる。
    したがって亜硫酸水素塩又は亜硫酸塩をアミノ酸輸液の安定剤として使用
することは、好ましくない。・・・。
   〔発明が解説しようとする課題〕
    本発明の課題は、従来から使用されている亜硫酸水素塩、亜硫酸塩等の安
定剤を含まないでTrp成分を必要に応じ含有し、旦つ安定な、アミノ酸含有の栄
養輸液組成物を提供することである。」
   (乙第1頁左下欄下から6行~2頁右上欄7行)
   イ 以上の文献の記載によれば、引用刊行物発行当時(1990年)、アミ
ノ酸輸液に安定化剤として亜硫酸塩を配合することは、広く行われていたが、その
一方で、亜硫酸塩を医薬品添加物として用いた場合の人体へのリスクについても認
識が広がり、輸液中の亜硫酸塩の残留量が測定され、安全性に対する危惧から、実
際に、亜硫酸塩を配合することなく安定化を図ったアミノ酸輸液も開発されていた
ことが認められる。
 してみると、アミノ酸輸液には必ず亜硫酸塩を配合するということが当業者の技
術常識であったとまでいうことはできず、前記のようなリスクについての認識も踏
まえると、引用刊行物の発明において使用するアミノ酸輸液について、これを当然
に亜硫酸塩の配合されたものと理解することが当業者の通常の理解であるというこ
とはできない。
 (4) 次に、引用刊行物の記載に基づいて検討する。
   ア 甲第3号証によれば、引用刊行物には、実施例について以下の説明記載
が認められる。
  「第1発明では密封した内袋3内に収容された輸液1に滅菌機を用いて滅菌処
理を施す。具体的には、溶存酸素と反応し得る量以上の亜硫酸塩、例えば亜硫酸ナ
トリウム或いは亜硫酸水素ナトリウムを溶解させた100℃~121℃、好ましく
は約110℃の加圧過熱状態の滅菌水中で約20分間滅菌処理を行う。・・・滅菌
後、この輸液1を・・・冷却し、続いてこの輸液1を・・・脱酸素剤とともに外袋
6内に収容して密封すると輸液入り合成樹脂容器ができ上がる。
    このように形成することにより、下記の表に示すように、輸液1は容器外
部から透過する酸素との接触が少なくなり、変質がなく、長時間安定したものにな
った。
    この表は亜硫酸塩として亜硫酸水素ナトリウムを用いた場合の波長350
nmでの輸液1について測定した吸光度を示し、濃度0%の場合と他の場合(判決
注、滅菌水中の亜硫酸水素ナトリウムの濃度)とで大きな差があることを示してい
る。
    この亜硫酸水素ナトリウムは食品添加物としても用いられている安全性の
高い化合物である。
    さらに、容器にポリエチレンを用いた場合には、測定の結果輸液1の亜硫
酸イオン、硫酸イオンの容器内部への透過は検出されなかった。」(2頁右下欄6
行~3頁左上欄末行)
   イ 上記説明のうち、「容器にポリエチレンを用いた場合には、測定の結果
輸液1の亜硫酸イオン、硫酸イオンの容器内部への透過は検出されなかった。」と
の記載は、内袋(ポリエチレン容器)入りのアミノ酸輸液を滅菌したときに、滅菌
水中に存在している亜硫酸イオンが内袋(ポリエチレン容器)を透過してアミノ酸
輸液の中に入らなかったことを述べたものであることが明らかである(この記載が
文意不明であるという原告らの主張は採用しない。)。そして、その直前に、「こ
の亜硫酸水素ナトリウムは食品添加物としても用いられている安全性の高い化合物
である。」(甲第2号証第3頁左上欄16行~17行)として、亜硫酸水素ナトリ
ウムの人体に対する安全性について触れた記載があることからすれば、亜硫酸イオ
ンの内袋(ポリエチレン製容器)内への透過が検出されなかった旨の記載も、アミ
ノ酸輸液が血液中に入ったときの人体に対する安全性という観点から、もともと亜
硫酸塩が配合されていない安全なアミノ酸輸液に亜硫酸塩を溶解させた滅菌液によ
る滅菌処理を施しても、そのアミノ酸輸液の中に亜硫酸イオンが透過混入すること
はなく、安全性が保たれることを確認した趣旨であると理解することに十分な合理
性がある。特に、上記記載において問題とされているのがごく微量の亜硫酸イオン
の混入であることは明らかであり(ポリエチレンは液体透過性がほとんどなく、溶
液中の亜硫酸イオンの透過を考えるとしてもその量は極微少にとどまる)、そのよ
うな微量の亜硫酸イオンが透過しないことをわざわざ実験によって確認していると
いう点からみても、引用刊行物の記載は、実施例に用いられたアミノ酸輸液がもと
もと亜硫酸塩を含まないものであるという印象を当業者に強く抱かせるものである
ということができる。
 原告らは、上記記載が亜硫酸塩の安全性に対する危惧により容器内の輸液に亜硫
酸塩を配合しなかったことに基づくものと解することは、その直前に「食品添加物
としても使用されている安全性の高い添加物である」として亜硫酸塩の安全性が説
明されていることとも矛盾し、不合理であると主張するが、輸液の添加剤として使
用される場合と食品添加物として使用される場合とでは要求される安全性の程度が
同じという訳ではないから、食品添加物として安全性のあることが記載されていて
も、そのことと、安全性に対する配慮から輸液に亜硫酸塩を配合しないこととが矛
盾するということはできない。
 (5) 以上認定したとおり、引用刊行物には、アミノ酸輸液に亜硫酸塩を配合
した旨の記載が存在しない。そして、このことと、引用刊行物中に、輸液に亜硫酸
塩は配合されていないと当業者が理解することに十分合理性があるといい得る程度
の記述があることを併せて理解するなら、引用刊行物は、引用刊行物記載の発明に
使用するアミノ酸輸液として、亜硫酸イオンを含有しないアミノ酸輸液を開示して
いるというべきである。
 なお、原告らは、審決が、引用刊行物1の表1の実験結果は輸液に亜硫酸水素ナ
トリウムを配合する場合よりも配合しない場合の実験結果(甲第13号証:審判甲
第25号証)に近いから、実施例で用いられた輸液に亜硫酸塩(具体的には亜硫酸
ナトリウム)は配合されていないと解するのが妥当である旨認定(審決書8頁4行
~10頁3行)したことに関して、甲第13号証の実験の妥当性及びその評価につ
き種々主張するが、この実験結果自体は一応合理的に説明ができるものであると認
められるうえ、引用刊行物の記載からアミノ酸輸液として亜硫酸塩を含有しないも
のを使用した、あるいは使用し得るとの理解が得られることは前記認定のとおりで
あり、引用刊行物において使用されるアミノ酸輸液に亜硫酸塩を含まないものが包
含されることは否定し得ないというべきである。
 (6) 以上のとおりであるから、審決が、本件特許発明の「アミノ酸イオンフ
リー」という構成を含めて、「これら各構成は、引用刊行物に記載されているに等
しいか、あるいは実質的に引用刊行物の発明において採用する構成と区別できない
ものである。」と判断したことに誤りはない。
 原告ら主張の取消事由2は、理由がない。
 5 取消事由3(硫化水素透過性容器)について
 原告らは、引用刊行物には、輸液充填容器(内袋)として使用されているポリエ
チレンが硫化水素透過性であることは示されていないと主張する。
 しかしながら、甲16号証(「ModernPlastics」July・1950発行P.95~102に
掲載された論文「PermeabilityofPolymericFilmstoGases」、審判甲第5号
証)の表Ⅶには、各種フィルムのガス透過性を測定した結果が記載されており、同
表によれば「ポリテン(エチレンポリマー)」は、高い硫化水素(HS)透過性を
有することが示されている。また、甲第17号証(「分析結果報告書 硫化水素透
過性試験」1997年8月6日(株)サン分析センター作成、審判甲第6号証)及
び甲第18号証(「分析結果報告書 酸素透過性試験」1997年10月22日
(株)サン分析センター作成、審判甲第7号証)によれば、ポリエチレンは、硫化
水素に対して透過性を有すること、しかもポリエチレンの硫化水素透過性は、酸素
透過性よりもさらに高い透過性を有することが認められ、また、乙第23号証
(「輸液バッグの加熱滅菌履歴の有無と硫化水素透過性」と題する2001年8月
24日加賀順二作成の報告書)によれば、ポリエチレン製輸液バッグの硫化水素透
過性は、熱履歴(通常、輸液製造で加熱滅菌に用いられる加熱条件)の有無により
ほとんど影響されないことが認められる。
 以上認定の事実によれば、引用刊行物において使用されるポリエチレン製輸液容
器は、硫化水素透過性容器であると認められる。したがって、本件特許発明と引用
刊行物に記載された発明とは、輸液充填容器がともに硫化水素透過性である点にお
いて差異がなく、これと同旨の審決の認定に誤りはない。
 原告ら主張の取消事由3は理由がない。
 6 結論
 以上のとおり、原告ら主張の取消事由1ないし3はいずれも理由がない。よっ
て、原告らの請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第18民事部
    裁判長裁判官  永  井  紀  昭
 裁判官  塩  月  秀  平
       裁判官  古  城  春  実

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弁護士 求人 採用
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激動の時代に
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