弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人中根宏の上告趣意第一点の一について。記録に依れば、A、B及びCはい
ずれも本件公訴提起前に都城簡易裁判所において、被疑者D外二名に対する恐喝、
傷害等被疑事件につき、同裁判所裁判官から証人として尋問を受け、右証人尋問の
際右被疑者ら三名及び弁護人がこれに立ち会つていなかつた事実は認められるが、
本件第一審第一回公判期日において被告人D外二名及び弁護人は右A外二名に対す
る裁判官の証人尋問調書を証拠とすることに同意したものであることは記録上明白
であるから、第一審の採証手続には何らの違憲、違法をも認めることはできず(昭
和二七年六月一八日大法廷判決、集六巻六号八〇〇頁参照)、また記録に依れば、
第一審はその第三回公判期日に証人B及び同Cを尋問するに際し、冒頭に検察官か
らの「証人の供述中全被告人を退廷せしめられたい」旨の申出により、弁護人の「
右について意見はない」旨の意見を聴き、右各証人の供述中全被告人を退廷させる
旨決定して全被告人を退廷させた事実は認められるが、弁護人は終始右各証人の尋
問に立ち会つて主尋問をしており、裁判所は供述終了後全被告人を入廷させ、これ
に各証人の証言の要旨を告知し、証人を尋問する機会を与え、現に本件被告人Dは
右各証人に対し尋問を行つているものであることは記録上明白である。第一審の右
措置は刑訴三〇四条の二の規定に従つたものと認むべく、右規定はその証人が当該
事件の被害者本人たるとその他の第三者たるとにかかわらず適用があり、且つ、こ
の場合裁判所は立証趣旨その他によりその証人が被告人の面前においては圧迫を受
け充分な供述をすることができないと認めればそれで足り殊更右の点につき当該証
人に発問してこれを確める方法に依ることを必要としないものと解すべく、本件第
一審の右措置が憲法三七条二項前段の規定に違反しないことは、昭和二五年三月一
五日大法廷判決、集四巻三号三五五頁の判示するところであつて、論旨は理由がな
い。同二は違憲をいうけれども、本件の如き場合に控訴審が事実の取調をするかど
うかは裁判所の裁量に属するのであるから、所論は結局訴訟法違反(審理不尽)の
主張に帰し、同第二点の一及び二は訴訟法違反、第三点は事実誤認、第四点は量刑
不当の主張をいでず、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお第二点
一に主張する如く、第一審がその第三回公判期日に証人B及び同C両名の共に在廷
するところで、この両名に対する被告人の尋問を行わしめたという事実は記録上こ
れを認めることができない)
 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条、一八一条一項但書により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り判決する。
  昭和三五年六月一〇日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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