弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
山形税務署長が平成20年11月25日付けで原告に対してした平成18年
4月1日から平成19年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」と
いう。)の法人税の更正のうち所得金額零円,納付すべき税額につきマイナス
(還付金の額に相当する税額)471万5204円を超える部分及び過少申告
加算税の賦課決定を取り消す。
第2事案の概要
本件は,国等からの収用事業に係る資産の買取りの申出に応じて事業用資産
を譲渡しこれにより取得した補償金をもって別紙1-1記載の資産(以下「本
件取得資産」という。)を取得した原告が,租税特別措置法(以下「措置法」
という。)64条1項(平成19年法律第6号による改正前のもの。以下同
じ。)の規定に基づく課税の特例(圧縮記帳)を適用して本件事業年度の法人
税の確定申告をしたところ,山形税務署長(処分行政庁)から平成20年11
月25日付けで上記課税の特例の圧縮限度額の計算に誤りがあることを理由と
して法人税の更正(以下「本件更正」という。)及び過少申告加算税の賦課決
定(以下「本件賦課決定」といい,本件更正と併せて「本件更正等」とい
う。)を受けたため,本件更正は措置法64条1項が定める圧縮限度額の計算
を誤った違法なものであると主張して,処分行政庁の所属する国を被告として,
本件更正等の一部取消し等を求める事案である。
1法令の定め等
本件に関係する法令の定め等は別紙2のとおりである。なお,別紙2での定
義は以下の本文及び別紙3以下でも使用する。
2前提事実(顕著な事実,争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨
により容易に認められる事実。なお,号証番号の枝番は,特に必要がない限り
省略する。以下同じ。)
(1)原告は,山形市に本店を有し,放送法による一般放送事業等を目的とする
株式会社である。
(2)原告の事業用資産の譲渡と代替資産の取得
ア原告は,国土交通省東北地方整備局山形河川国道事務所長の代行買収者
である山形県土地開発公社及び山形県知事からの「A改良事業」並びに
「B改築事業」及び「C整備事業」に係る資産の買取りの申出に応じて,
平成19年3月20日,所有していた山形市α×所在の土地,建物,建物
付属設備,造作,構築物,工具器具備品,機械装置等の一般放送事業等の
事業の用に供していた資産を譲渡し,平成15年4月から平成19年3月
までの間に,合計38億7087万7073円の対価補償金を取得した。
イ原告は,一般放送事業等の事業の用に供するため,平成15年4月から
平成19年3月までの間に,75億4653万2134円をもって本件取
得資産を取得した。
(3)本件事業年度の法人税の確定申告
原告は,平成19年6月28日,山形税務署長に対し,租税特別措置法施
行令(以下「措置令」という。)39条4項(平成19年政令第92号によ
る改正前のもの。以下同じ。)の規定の適用により,本件取得資産をもって
前記(2)アの譲渡に係る事業用資産の代替資産とするものとして,①本件
取得資産のうち別紙1-2記載のもの(以下「本件代替資産」といい,それ
ぞれの資産を別紙1-2の順号欄に記載された順号に従い「本件代替資産
1」などという。)につき,その帳簿価額を損金経理により減額した金額に
相当する31億9479万5093円を固定資産圧縮損として計上し,②
本件取得資産の全ての取得価額の合計(ただし,取得価額の合計が差引補償
金の額を超える金額を控除した金額)が39億1019万1163円である
とし,これに差益割合を乗じて計算した35億3294万3871円を圧縮
限度額として,本件代替資産の圧縮損計上額の合計である上記31億947
9万5093円がこれを超えていないことから,圧縮限度超過額を零円とし,
本件事業年度の所得の金額の計算上,上記固定資産圧縮損計上額31億94
79万5093円を全て損金の額に算入して,本件事業年度の法人税の確定
申告をした。(甲1,乙1ないし3)
(4)本件更正等
山形税務署長は,平成20年11月25日,原告に対し,所得金額3億8
041万5831円,納付すべき税額1億0940万9200円,過少申告
加算税の額1709万3000円とする本件更正等をした。本件における課
税処分の経緯は別紙3に記載のとおりである。
本件更正は,①圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額は帳
簿価額を損金経理により減額する方法により圧縮した資産の取得価額である
から,本件取得資産の全ての取得価額ではなく,本件代替資産の取得価額を
基礎として圧縮限度額を計算すべきであるし,また,②圧縮限度超過額は,
個々の代替資産の取得価額の合計に差益割合を乗じて計算した圧縮限度額を
個々の代替資産の圧縮損計上額の合計が超えた金額ではなく,個々の代替資
産の取得価額にそれぞれ差益割合を乗じて計算した個々の代替資産の圧縮限
度額を当該代替資産の圧縮損計上額が超えた金額の合計であると解すること
を前提として,③原告は,本件代替資産1587の土地につき,その帳簿
価額を損金経理により減額した金額に相当する1億5999万6000円を
固定資産圧縮損として計上しているが,本件代替資産1587の土地の圧縮
限度額は,その取得価額1億5999万6000円に差益割合を乗じて計算
した1億4377万0485円であるから,圧縮限度超過額1622万55
15円は損金の額に算入されないとし,さらに,④原告は,本件代替資産
1ないし1586の減価償却資産につき,その帳簿価額を損金経理により減
額した金額に相当する30億3479万9093円を固定資産圧縮損として
計上しているが,本件代替資産1ないし1586の減価償却資産の圧縮限度
額は,差引補償金37億1994万8846円から既に本件代替資産158
7の取得に充てられた額である1億5999万6000円を控除した35億
5995万2846円に達するまでの範囲内で取得された代替資産である本
件代替資産1ないし1378及び1506ないし1586(本件代替資産1
379ないし1505の機械装置については,その取得価額が上記差引補償
金の残余額を超えるため,措置法64条1項の課税の特例の適用対象となら
ない。)のうち,(ア)原告が本件事業年度前の各事業年度において取得し
た本件代替資産1,24ないし38,55ないし1075,1535ないし
1577の減価償却資産については,既往の事業年度に減価償却をしている
ものには租税特別措置法関係通達(法人税編)64(3)-6の算式に基づく帳
簿価額の調整をし,各代替資産の取得価額にそれぞれ差益割合を乗じて計算
した個々の代替資産の圧縮限度額の合計16億0719万8386円となり,
(イ)原告が本件事業年度において取得した本件代替資産2ないし23,3
9ないし54,1076ないし1378,1506ないし1534,157
8ないし1586の減価償却資産については,各代替資産の取得価額にそれ
ぞれ差益割合を乗じて計算した個々の代替資産の圧縮限度額の合計8億88
15万3211円となるのであって,これらの金額の合計は24億9535
万1597円であるから,上記圧縮損計上額の圧縮限度超過額は5億394
4万7496円となり,そのうちの当該代替資産の償却限度額を超える部分
の金額である3億8753万8908円は減価償却超過額として損金の額に
算入されないとするものである。(甲2)
3課税処分の根拠
被告が主張する課税処分の根拠は別紙4に記載のとおりである。
4争点
本件の争点は,次の3点である。
(1)措置法64条1項所定の圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価
額(争点1)
措置令39条4項の規定の適用により複数の取得資産をもって代替資産と
した場合において,帳簿価額を損金経理により減額していない資産の取得価
額は,圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額となるかどうか。
(2)措置法64条1項所定の圧縮限度額の計算方法(争点2)
措置令39条4項の規定の適用により複数の取得資産をもって代替資産と
した場合の圧縮限度額は個々の資産の取得価額を合計して計算する方法によ
り求められるべきものであり,圧縮限度超過額は個々の代替資産の取得価額
の合計に差益割合を乗じて計算した圧縮限度額を個々の代替資産の圧縮損計
上額の合計が超えた金額となるのか,それとも,上記場合の圧縮限度額は
個々の資産ごとに計算する方法により求められるべきものであり,圧縮限度
超過額は個々の代替資産の取得価額にそれぞれ差益割合を乗じて計算した
個々の代替資産の圧縮限度額を当該代替資産の圧縮損計上額が超えた金額の
合計となるのか。
(3)先行取得資産の圧縮限度額の調整(争点3)
当期取得資産のみでもその取得価額が差引補償金の額を上回る本件におい
て租税特別措置法関係通達(法人税編)64(3)-6による圧縮限度額の調整
をする必要はないかどうか。
5当事者の主張の要旨
(1)圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額(争点1)について
(原告)
措置令39条4項の規定の適用により複数の取得資産をもって代替資産と
した場合には,帳簿価額を損金経理により減額した資産の取得価額だけでは
なく,帳簿価額を損金経理により減額していない資産の取得価額も,圧縮限
度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額となる。
ア措置法64条1項は,圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価
額について,帳簿価額を損金経理により減額した資産の取得価額に限定し
ていない。同項が定める課税の特例の制度趣旨及び課税の公平の観点から
すれば,圧縮限度額は一義的に計算されるべきものであるところ,圧縮限
度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額について上記のとおり限定す
ると,個々の資産につき損金経理をしたかどうかにより圧縮限度額が変動
するという不都合を生ずる。
イ措置令39条4項の規定の適用により複数の取得資産をもって代替資産
とした場合には,複数の取得資産は全体として一つの「代替資産」となる
ものと解するのが相当である。すなわち,租税特別措置法関係通達(法人
税編)64(3)-1「種類を同じくする2以上の資産について収用等をされ
た場合等の差益割合」は,代替資産につき同項の規定の適用を受けるとき
の差益割合は対価補償金の額の合計額と譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額の
合計額とにより計算することとしているところ,これは,上記場合におけ
る措置法64条1項の各文言の解釈として,「譲渡した資産」の意義を当
該複数の譲渡資産の資産群全体をいうものとし,「補償金,対価若しくは
清算金の額」の意義を譲渡資産群全体に対する対価補償金の合計額をいう
ものとするものであり,差益割合の計算について,このように解する以上,
圧縮限度額の計算についても,上記場合における「代替資産」の意義を当
該複数の代替資産の資産群全体をいうものとするのが自然である。
そうすると,上記場合には,譲渡資産群及び代替資産群をそれぞれ一体
と捉えて,譲渡資産群全体について差益割合を計算した上,代替資産群全
体の圧縮限度額を計算することになるから,法人は,代替資産群全体に対
する圧縮限度額の範囲内で任意の方法により圧縮記帳をすることができる
のであって,上記場合には,帳簿価額を損金経理により減額した資産の取
得価額だけではなく,帳簿価額を損金経理により減額していない資産の取
得価額も,圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額となる。
ウ本件代替資産533ないし640及び1448ないし1458は,テレ
ビ番組等のデジタルデータを保存した上,放送時間帯に合わせて再生,送
出し,テレビ番組等の一括管理を行う「統合バンク」という一組の装置で
ある。原告は,固定資産台帳において,この装置を各部分に細分化し管理
しているが,これは,各部分の将来の更新時期の相違等に対応するためで
しかない。ところが,被告は,法人が差引補償金の額に達するまでの範囲
内で代替資産として選択した資産の取得価額のみが圧縮限度額の計算の基
礎となるという観点から,上記装置のうち,本件代替資産533ないし6
40の取得価額は圧縮限度額の計算の基礎となるとし,本件代替資産14
48ないし1458の取得価額は差引補償金の額を超えた資産の取得価額
として圧縮限度額の計算の基礎とはならないとしているのであって,一組
の装置の部分ごとに取扱いを異にするものであり,極めて不合理というべ
きである。
(被告)
帳簿価額を損金経理により減額していない資産は代替資産として選択さ
れているものではなく,その取得価額は圧縮限度額の計算の基礎となる代
替資産の取得価額とならない。
ア措置法64条1項は,法人の有する資産が収用されるなどし,当該法人
が差引補償金の額(補償金,対価又は清算金の額で,当該資産の譲渡に要
した経費がある場合には,当該補償金等の額のうちから支出したものとし
て政令で定める金額を控除した金額。別紙2参照)の全部又は一部に相当
する金額をもって当該収用等により譲渡した資産と同種の資産その他これ
に代わるべき複数の資産の取得をした場合について,法人が差引補償金の
額に達するまでの範囲内で代替資産として選択した資産の取得価額に差益
割合を乗じて計算した金額をもって圧縮限度額とするものである。
イそして,法人がどの資産を代替資産として選択したかは,どの資産の帳
簿価額を損金経理により減額したかによって明らかになるのであって,帳
簿価額を損金経理により減額していない資産は代替資産として選択されて
いるものではなく,その取得価額は圧縮限度額の計算の基礎となる代替資
産の取得価額とならない。
(2)圧縮限度額の計算方法(争点2)について
(原告)
ア措置法64条1項は,圧縮限度額について,個々の資産ごとに計算する
方法により求められるべきものとはしていない。そして,前記(1)の原告
の主張イのとおり,措置令39条4項の規定の適用により複数の取得資産
をもって代替資産とした場合には,複数の取得資産は全体として一つの
「代替資産」となるものと解するのが相当であることからすると,上記場
合の圧縮限度額は個々の資産の取得価額を合計して計算する方法により求
められるべきものであり,圧縮限度超過額は個々の代替資産の取得価額の
合計に差益割合を乗じて計算した圧縮限度額を個々の代替資産の圧縮損計
上額の合計が超えた金額となる。
イ被告は,措置法64条1項柱書きに「既に代替資産の取得に充てられた
額があるときは,その額を控除した額」という括弧書きがあることを根拠
に,措置令39条4項の規定の適用により複数の取得資産をもって代替資
産とした場合の圧縮限度額は個々の資産ごとに計算する方法により求めら
れるべきものであると主張するが,この括弧書きは,全体として一つの
「代替資産」が複数ある場合には,差引補償金の額から既に他の「代替資
産」の取得に充てられた額を控除するものとするものにすぎず,前記アの
とおり解することを否定する根拠にはならない。
(被告)
措置令39条4項の規定の適用により複数の取得資産をもって代替資産と
した場合の圧縮限度額は個々の資産ごとに計算する方法により求められるべ
きものであり,圧縮限度超過額は,個々の代替資産の取得価額にそれぞれ差
益割合を乗じて計算した個々の代替資産の圧縮限度額を当該代替資産の圧縮
損計上額が超えた金額の合計となる。すなわち,措置法64条1項柱書きが,
圧縮限度額の意義について,代替資産の取得価額に差益割合を乗じて計算し
た金額と定めた上,代替資産の取得価額について,「その額が当該補償金,
対価又は清算金の額(既に代替資産の取得に充てられた額があるときは,そ
の額を控除した額)を超える場合には,その超える金額を控除した金額」と
定めて,既に圧縮限度額の計算の基礎とされた代替資産が存在し得ることを
前提とする規定を置いていること,圧縮限度額は個々の代替資産についての
損金経理の限度額になるものであり,取得価額及び帳簿価額はいずれも個々
の資産ごとに付されるものであって,これを減額するためには個々の資産に
ついて個別に処理する必要があることからすれば,措置令39条4項の規定
の適用により複数の取得資産をもって代替資産とした場合の圧縮限度額は
個々の資産ごとに計算する方法により求められるべきものであると解するの
が相当である。
(3)先行取得資産の圧縮限度額の調整(争点3)について
(原告)
租税特別措置法関係通達(法人税編)64(3)-6「代替資産の先行取得期
間」は,収用等のあった日を含む事業年度の開始の日前に取得をした資産
(以下「先行取得資産」という。)につき既往の事業年度において減価償却
をしている場合について,当該代替資産の帳簿価額として付けることができ
る金額に下限を設け,圧縮限度額の調整をすることとしているところ,本件
取得資産の一部には先行取得資産が含まれるが,本件取得資産のうちの当期
取得資産のみでもその取得価額は差引補償金の額である37億1994万8
846円を上回るから,本件においては,上記通達による圧縮限度額の調整
をする必要はない。
また,通達は,行政機関の内部において上級行政庁がする下級行政機関の
権限の行使についての指揮にすぎず,国民に対して効力を有する法規範では
ないから,上記通達に基づいて先行取得資産につき圧縮限度額の調整をする
のは租税法律主義に違反する。
(被告)
措置法64条1項の規定に基づく課税の特例は,本来,収用等があった日
以後に代替資産を取得した場合に適用されるものであるが,事業所等の移転
を円滑に行うためには収用等に先立って土地,建物等を取得するなどしてお
く必要があることから,租税特別措置法関係通達(法人税編)64(3)-6は,
収用等があることをあらかじめ了知することができるような場合には,先行
取得資産であっても,一定の要件に該当するものについては代替資産として
圧縮記帳をすることができるとするとともに,既往の事業年度において圧縮
前の取得価額を基礎として減価償却が行われている資産については調整のた
めの算式を用意しているところ,原告は,本件取得資産の一部には先行取得
資産が含まれるが,本件取得資産のうちの当期取得資産のみでもその取得価
額は差引補償金の額を上回るから,本件においては,上記通達による圧縮限
度額の調整をする必要はないと主張する。しかし,前記(1)の被告の主張イ
のとおり,帳簿価額を損金経理により減額していない資産の取得価額は圧縮
限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額とならないから,損金経理を
した資産のうち既往の事業年度において減価償却をした先行取得資産につい
ては圧縮限度額の調整をすべきである。
(4)本件更正等の適否について
(原告)
前記(1)ないし(3)の原告の主張を前提として,原告の本件事業年度の法
人税の税額の計算をすると,本件事業年度の法人税の確定申告のとおり,所
得金額零円,納付すべき税額につきマイナス(還付金の額に相当する税額)
471万5204円となるから,本件更正のうちこれらの金額を超える部分
及び本件賦課決定は違法である。
(被告)
ア本件更正の適法性について
原告は,本件取得資産のうち本件代替資産以外のものに係る帳簿価額に
ついては損金経理により減額しておらず,前記(1)ないし(3)の被告の主
張を前提として,原告の本件事業年度の法人税の税額の計算をすると,別
紙4のとおり,所得金額3億8041万5719円,納付すべき税額1億
0940万9200円となる。そして,本件更正における所得金額は,3
億8041万5831円であり,上記所得金額を112円上回っているが,
本件更正における納付すべき税額は上記納付すべき税額と同額であるから,
本件更正は適法である。
イ本件賦課決定の適法性について
前記アのとおり本件更正は適法であるところ,原告が本件更正により新
たに納付すべき税額については,原告がその計算の基礎となった事実を確
定申告における税額の計算の基礎としなかったことについて国税通則法6
5条4項(平成19年法律第6号による改正前のもの。以下同じ。)の正
当な理由があるとは認められないから,原告は,別紙4のとおり,170
9万3000円の過少申告加算税を納付すべき義務を負う。そして,この
金額は本件賦課決定における過少申告加算税の額と同額であるから,本件
賦課決定は適法である。
第3当裁判所の判断
1収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例について
(1)措置法64条1項は,法人の有する資産が土地収用法等の規定に基づいて
収用されるなどし,当該法人が補償金等を取得した場合において,当該法人
が差引補償金の額に相当する金額をもって代替資産の取得をし,当該代替資
産につき,その取得価額(その額が差引補償金の額を超える場合には,その
超える金額を控除した金額)に差益割合(差引補償金の額から当該譲渡した
資産の譲渡直前の帳簿価額を控除した残額の当該差引補償金の額に対する割
合)を乗じて計算した金額(圧縮限度額)の範囲内でその帳簿価額を損金経
理により減額し,又はその帳簿価額を減額することに代えてその圧縮限度額
以下の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる
方法により経理したときは,その減額し,又は経理した金額に相当する金額
は,当該事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入する旨を規定して
いる。
法人が収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(圧縮記帳)に
ついての上記規定は,法人の有する資産が土地収用法等の規定に基づいて収
用されるなどし,当該法人が補償金等を取得した場合には,本来,差引補償
金の額と収用等により譲渡した資産の譲渡直前の帳簿価額との差額は,資産
の譲渡益として益金の額に算入され,法人税の課税対象となるが,収用等に
よる資産の譲渡は土地収用法等の規定に基づき公共の用に供するなどの目的
のため当該法人の意思のいかんにかかわらず行われるものであるから,その
譲渡益に対して直ちに法人税を課税することは相当ではないし,また,直ち
に法人税を課税するとすれば,当該法人は納税した分だけ資金不足を来して
収用された資産と同様の新たな資産の取得をすることができなくなり,その
事業の継続を困難にするおそれがあることに鑑みて,当該法人が差引補償金
の額に相当する金額をもって代替資産の取得をしたときは,当該代替資産に
つきその帳簿価額を損金経理により減額し又はその帳簿価額を減額すること
に代えて積立金として積み立てる方法により経理することを要件として,そ
の減額し又は経理した金額に相当する金額を損金の額に算入するものとし,
収用等による資産の譲渡益について圧縮記帳による課税の繰延べを認めたも
のである。圧縮記帳をすることにより,収用等のあった日を含む事業年度に
おいては収用等による資産の譲渡益に対する法人税の課税が行われないこと
となるが,圧縮記帳の規定の適用を受けた代替資産について法人税に関する
法令の規定を適用する場合には,圧縮記帳の規定により各事業年度の所得の
金額の計算上損金の額に算入された金額は当該代替資産の取得価額に算入さ
れない(措置法64条7項)ため,代替資産が減価償却資産(法人税法2条
23号)である場合には,翌期以降の所得の金額の計算上,減価償却費が減
額され,法人税の税額が増額されることとなり,また,代替資産が土地又は
土地の上に存する権利(同条22号)である場合には,当該代替資産が翌期
以降に譲渡されたときに課税の繰延べを受けていた収用等による資産の譲渡
益が実現することとなる。
(2)措置令39条4項の規定の適用により複数の取得資産をもって代替資産と
した場合における圧縮限度額の計算について
法人の有する資産が土地収用法等の規定に基づいて収用されるなどし,当
該法人が補償金等を取得した場合において,当該法人が差引補償金の額に相
当する金額をもって複数の資産の取得をし,措置令39条4項の規定の適用
により当該複数の資産をもって代替資産としたときは,措置法64条1項所
定の圧縮限度額は,その帳簿価額を損金経理により減額し又はその帳簿価額
を減額することに代えて積立金として積み立てる方法により経理した代替資
産につき(取得した資産のいずれを代替資産とするかは,その取得価額が差
引補償金の額に達するまで,法人が任意に選択することができる。),各資
産の取得価額にそれぞれ差益割合を乗じて個別的に計算されるべきものであ
ると解するのが相当である。
なぜならば,前記(1)のとおり,措置法64条1項が,「当該代替資産」
につきその帳簿価額を損金経理により減額し又はその帳簿価額を減額するこ
とに代えて積立金として積み立てる方法により経理することを,その減額し
又は経理した金額に相当する金額を損金の額に算入する要件として定めてい
ることによれば,圧縮限度額は,その帳簿価額を損金経理により減額し又は
その帳簿価額を減額することに代えて積立金として積み立てる方法により経
理した代替資産の取得価額を基礎として計算されるべきものであると解され
るからである。
また,措置法64条1項は,圧縮限度額の意義について,「その取得価
額」すなわち「当該代替資産の取得価額」に差益割合を乗じて計算した金額
と定めた上,圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額について,
「その額が当該補償金,対価又は清算金の額(既に代替資産の取得に充てら
れた額があるときは,その額を控除した額)を超える場合には,その超える
金額を控除した金額」と定め,圧縮限度額の計算においては既に代替資産の
取得に充てられた補償金等の額がある場合があり,その場合には補償金等の
額からその額を控除した額が当該圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の
取得価額の限度額となるとしているのであって,この定めは,圧縮限度額の
計算が代替資産の取得ないし当該取得に係る代替資産ごとに行われるもので
あることを前提とするものであるということができる。そして,圧縮限度額
は,代替資産につきその帳簿価額を損金経理により減額する上での限度とな
るものであり,帳簿価額は,代替資産の取得ごとに付せられるべきものでは
なく,代替資産ごとに付せられるべきものであることからすると,上記定め
は,結局,圧縮限度額の計算が代替資産ごとに行われるものであることを前
提とするものであるということができるのであって,圧縮限度額は,その計
算の基礎となる各代替資産の取得価額にそれぞれ差益割合を乗じて個別的に
計算されるべきものであると解される。
2圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額(争点1)について
(1)前記1(2)のとおり,法人の有する資産が土地収用法等の規定に基づいて
収用されるなどし,当該法人が補償金等を取得した場合において,当該法人
が差引補償金の額に相当する金額をもって複数の資産の取得をし,措置令3
9条4項の規定の適用により当該複数の資産をもって代替資産としたときは,
措置法64条1項所定の圧縮限度額は,その帳簿価額を損金経理により減額
し又はその帳簿価額を減額することに代えて積立金として積み立てる方法に
より経理した代替資産の取得価額を基礎として計算されるべきものであると
解されるのであって,そのような減額又は経理をしていない資産の取得価額
は圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取得価額とはならない。
(2)原告の主張について
原告は,措置法64条1項は圧縮限度額の計算の基礎となる代替資産の取
得価額について帳簿価額を損金経理により減額した資産の取得価額に限定し
ておらず,同項が定める課税の特例の制度趣旨及び課税の公平の観点からす
れば圧縮限度額は一義的に計算されるべきものであるところ,圧縮限度額の
計算の基礎となる代替資産の取得価額について上記のとおり限定すると,
個々の資産につき損金経理をしたかどうかにより圧縮限度額が変動するとい
う不都合を生ずると主張する。しかし,圧縮限度額は,その帳簿価額を損金
経理により減額するなどした代替資産の取得価額を基礎として計算されるべ
きものであると解されることは,前記1(2)のとおりであり,そのように解
することは措置法64条1項が定める課税の特例の制度趣旨や課税の公平に
反するものではなく,法人は,代替資産につきその帳簿価額を損金経理によ
り減額するなどするかどうかを自由に選択することができるのであるから,
個々の資産につき損金経理をしたかどうかにより圧縮限度額が変動しても何
ら不都合は生じないというべきである。
また,原告は,租税特別措置法関係通達(法人税編)64(3)-1が代替資
産につき措置令39条4項の規定の適用を受けるときの差益割合は対価補償
金の額の合計額と譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額の合計額とにより計算する
こととしていることを根拠として,同項の規定の適用により複数の取得資産
をもって代替資産とした場合には,複数の取得資産は全体として一つの「代
替資産」となるものと解するのが相当であると主張する。しかし,上記通達
は,複数の資産についてそれぞれ差益割合を個別的に計算することによる煩
瑣を避けるための取扱いを定めたものにすぎないのであって,上記通達の取
扱いや措置令39条4項の規定が上記場合に複数の取得資産が全体として一
つの「代替資産」となると解する根拠となるものではなく,措置法及び措置
令その他の関係法令の規定を精査しても,そのような解釈の根拠となり得る
ものは見当たらない。上記場合に複数の取得資産が全体として一つの「代替
資産」となると解することはできないというべきである。
さらに,原告は,本件代替資産533ないし640及び1448ないし1
458は「統合バンク」という一組の装置であるのに,被告が,その一部の
取得価額は圧縮限度額の計算の基礎となるとし,残部の取得価額は差引補償
金の額を超えた資産の取得価額として圧縮限度額の計算の基礎とはならない
としているのであって,一組の装置の部分ごとに取扱いを異にするものであ
り,極めて不合理というべきであると主張する。しかし,一個の資産であっ
ても,その取得価額が差引補償金の額を超える場合には,その取得価額の一
部が圧縮限度額の計算の基礎となり,残部は圧縮限度額の計算の基礎とはな
らないのであるし,前記のとおり,取得した資産のうちどの資産につき帳簿
価額を損金経理により減額するなどして代替資産とするかは,法人が任意に
選択することができるのであるから,原告の上記主張に係る事態は格別不合
理ではないというべきである。
3圧縮限度額の計算方法(争点2)について
(1)前記1(2)のとおり,法人の有する資産が土地収用法等の規定に基づいて
収用されるなどし,当該法人が補償金等を取得した場合において,当該法人
が差引補償金の額に相当する金額をもって複数の資産の取得をし,措置令3
9条4項の規定の適用により当該複数の資産をもって代替資産としたときは,
措置法64条1項所定の圧縮限度額は,その計算の基礎となる各代替資産の
取得価額にそれぞれ差益割合を乗じて個別的に計算されるべきものであると
解されるのであって,このときの圧縮限度超過額は,個々の代替資産の取得
価額にそれぞれ差益割合を乗じて計算した個々の代替資産の圧縮限度額を当
該代替資産の圧縮損計上額が超えた金額の合計となる。
(2)原告の主張について
原告は,措置令39条4項の規定の適用により複数の取得資産をもって代
替資産とした場合には,複数の取得資産は全体として一つの「代替資産」と
なるものと解するのが相当であることからすると,上記場合の圧縮限度額は
個々の資産の取得価額を合計して計算する方法により求められるべきもので
あると主張するが,上記場合に複数の取得資産が全体として一つの「代替資
産」となると解することはできないことは,前記2(2)のとおりであり,原
告の上記主張はその前提を欠くものである。
4先行取得資産の圧縮限度額の調整(争点3)について
原告は,本件取得資産の一部には先行取得資産が含まれるが,本件取得資産
のうちの当期取得資産のみでもその取得価額は差引補償金の額を上回るから,
本件においては,租税特別措置法関係通達(法人税編)64(3)-6による圧縮
限度額の調整をする必要はないと主張する。しかし,圧縮限度額は,その帳簿
価額を損金経理により減額するなどした代替資産の取得価額を基礎として計算
されるべきものであると解されることは,前記1(2)及び2(1)のとおりであ
り,本件取得資産のうちの当期取得資産の中でその取得価額が圧縮限度額の計
算の基礎となるのは本件代替資産として挙示したものに限られるところ,弁論
の全趣旨によれば,その取得価額の合計は9億8838万7757円であると
認めることができるのであって,差引補償金の額を上回るものではなく,差引
補償金の額に達するまで措置法64条1項の規定の適用を受けるためには,本
件代替資産のうちの先行取得資産についても措置法64条1項の規定の適用を
受けるものとするほかないから,本件において上記通達による圧縮限度額の調
整をする必要はないということはできない。
また,原告は,上記通達に基づいて先行取得資産につき圧縮限度額の調整を
するのは租税法律主義に違反すると主張するが,そもそも上記通達に基づいて
先行取得資産につき措置法64条1項の規定に基づく課税の特例(圧縮記帳)
を認めていることそのものが同特例の適用対象を拡張する取扱いにほかならず,
上記圧縮限度の調整は同取扱いによる課税の繰延べの範囲を合理的なものとす
るためのものであること(措置法64条1項の文言によれば,同規定に基づく
課税の特例(圧縮記帳)を認められる代替資産は,本来,収用等があった日以
後に取得されたものに限られるが,代替資産への切替えを円滑に行うためには,
代替資産となるべき資産をあらかじめ取得しておく必要があることが少なくな
いことから,上記通達は,土地収用法の規定による事業認定又は起業者からの
買取りの申出があったこと等により法人の有する資産について収用等をされる
ことが明らかであるため,当該法人が当該事業認定又は買取りの申出等があっ
た日以後にその代替資産となるべき資産をあらかじめ取得した場合において,
当該取得した資産(先行取得資産)が収用等のあった日を含む事業年度開始前
の一定の期間内に取得されたものであるときは,上記事業年度において,先行
取得資産を代替資産として,圧縮記帳をすることができることに取り扱うもの
としている。しかし,先行取得資産について既往の事業年度において圧縮前の
取得価額を基礎として減価償却をしている場合に,当該先行取得資産について
措置法が定めるとおりの圧縮記帳を認めると,当該先行取得資産を取得した事
業年度において圧縮記帳をした場合に比べて記帳後の帳簿価額が過少となり,
不適切な早期償却を認める結果となる。そこで,上記通達は,先行取得資産に
ついて既に減価償却をしているときは,当該先行取得資産の帳簿価額として付
けることができる金額は,当該先行取得資産を取得した事業年度において圧縮
記帳をしたものと仮定した場合の帳簿価額を,当該先行取得資産の取得価額で
除し,当該先行取得資産について圧縮記帳をする時の直前の帳簿価額を乗じた
金額を下らない金額とするものとして,先行取得資産の圧縮限度額の計算にお
いては,既往の事業年度において減価償却費として損金の額に算入された金額
に対応する部分の金額が除かれるようにし,上記取扱いによる課税の繰延べの
範囲を合理的なものとしている。)によれば,上記圧縮限度額の調整は租税法
律主義に違反するものではないというべきである。
5本件更正等の適法性について
(1)前記1ないし4により,原告の本件事業年度の法人税の税額の計算をする
と,別紙4のとおり,所得金額3億8041万5719円,納付すべき税額
1億0940万9200円となる(なお,弁論の全趣旨によれば,原告は,
本件取得資産のうち本件代替資産以外のものについては,その帳簿価額を損
金経理により減額していないし,また,その帳簿価額を減額することに代え
て積立金として積み立てる方法により経理してもいないと認めることができ
る。)ところ,本件更正における所得金額は,3億8041万5831円で
あり,上記所得金額を112円上回っているが,本件更正における納付すべ
き税額は上記納付すべき税額と同額であるから,本件更正にこれを取り消す
べき違法はない。
(2)前記(1)によれば,原告は,本件事業年度の法人税について納付すべき税
額を過少に申告したものであることになるところ,本件更正に基づき新たに
納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちに本件更正前の税額の計算
の基礎とされていなかったことについて国税通則法65条4項に規定する正
当な理由があると認められるものはない(原告も,この点に関して特段の主
張はしていない。)。そうすると,原告が納付すべき過少申告加算税の額は
1709万3000円となり,この金額は本件賦課決定における納付すべき
税額と同額であるから,本件賦課決定は適法である。
第4結論
よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,
訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主
文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官川神裕
裁判官内野俊夫
裁判官林史高は異動のため署名押印をすることができない。
裁判長裁判官川神裕
(別紙2)
法令の定め等
1法人税法22条1項の定め
内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の額から当該事業
年度の損金の額を控除した金額とする。
2措置法64条(収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例)の定め
(1)法人の有する資産で次の各号に規定するものが当該各号に掲げる場合に該当
することとなった場合において,当該法人が当該各号に規定する補償金,対価
又は清算金の額(当該資産の譲渡に要した経費がある場合には,当該補償金,
対価又は清算金の額のうちから支出したものとして政令で定める金額を控除し
た金額。以下,この金額を「差引補償金の額」という。)の全部又は一部に相
当する金額をもって当該各号に規定する収用,買取り,換地処分,権利変換,
買収又は消滅(以下「収用等」という。)のあった日を含む事業年度において
当該収用等により譲渡した資産と同種の資産その他のこれに代わるべき資産と
して政令で定めるもの(以下「代替資産」という。)の取得をし,当該代替資
産につき,その取得価額(その額が差引補償金の額(既に代替資産の取得に充
てられた額があるときは,その額を控除した額)を超える場合には,その超え
る金額を控除した金額)に,差引補償金の額から当該譲渡した資産の譲渡直前
の帳簿価額を控除した残額の当該差引補償金の額に対する割合(以下「差益割
合」という。)を乗じて計算した金額(以下「圧縮限度額」という。)の範囲
内でその帳簿価額を損金経理により減額し,又はその帳簿価額を減額すること
に代えてその圧縮限度額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において積
立金として積み立てる方法により経理したときは,その減額し,又は経理した
金額に相当する金額は,当該事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入
する。(1項)
ア資産が土地収用法等の規定に基づいて収用され,補償金を取得する場合
(1号)
イ資産について買取りの申出を拒むときは土地収用法等の規定に基づいて収
用されることとなる場合において,当該資産が買い取られ,対価を取得する
とき(2号)
ウ(3号ないし8号は省略)
(2)4項から7項までのほか,1項の規定の適用に関し必要な事項は,政令で定
める。(12項)
3租税特別措置法施行令39条(収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の
特例)の定め
(1)法64条1項の規定により補償金,対価又は清算金の額から控除する同項に
規定する政令で定める金額は,収用等により譲渡をした資産(譲渡資産)の譲
渡に要した経費の金額の合計額が,当該収用等に際し譲渡に要する経費に充て
るべきものとして交付を受けた金額の合計額をこえる場合におけるそのこえる
金額のうち,当該譲渡資産に係るものとして財務省令で定めるところにより計
算した金額とする。(1項)
(2)法64条1項に規定する代替資産は,同項各号の場合の区分に応じ,次に掲
げる資産とする。(2項)
ア法64条1項1号,2号,3号の2又は3号の3の場合にあっては,譲渡
資産が土地又は土地の上に存する権利,建物(その附属設備を含む。)又は
建物に附属する財務省令で定める構築物,当該構築物以外の構築物,その他
の資産の区分のいずれに属するかに応じ,それぞれこれらの区分に属する資
産(譲渡資産がその他の資産の区分に属するものである場合には,当該資産
と種類及び用途を同じくする資産)(1号)
イ(2号ないし4号は省略)
(3)譲渡資産が前項1号に規定する区分(その他の資産の区分を除く。)の異な
る2以上の資産で一の効用を有する一組の資産となっているものである場合に
は,同号の規定にかかわらず,財務省令で定めるところにより,その効用と同
じ効用を有する他の資産をもって当該譲渡資産のすべてに係る代替資産とする
ことができる。(3項)
(4)譲渡資産の譲渡をした法人が,その事業の用に供するため,当該譲渡資産に
係る前2項の代替資産に該当する資産以外の資産(当該事業の用に供する減価
償却資産,土地及び土地の上に存する権利に限る。)の取得(製作及び建設を
含む。)をする場合には,前2項の規定にかかわらず,当該資産をもって当該
譲渡資産の代替資産とすることができる。(4項)
4租税特別措置法関係通達(法人税編)64(3)(圧縮記帳等の計算)
(1)種類を同じくする2以上の資産について収用等をされた場合等の差益割合
64(3)-1種類を同じくする2以上の資産について同時に収用等をされた
場合又は代替資産につき措置法令39条3項若しくは4項の規定の適用を受け
る場合の措置法64条1項に規定する差益割合は,その収用等に係る対価補償
金の額(その額から控除することとなる譲渡経費の額がある場合には,当該金
額を控除した金額。以下同じ。)の合計額に対する当該合計額から収用等によ
り譲渡した資産の譲渡直前の帳簿価額の合計額を控除した金額の割合による。
(2)2以上の代替資産の取得をした場合の対価補償金から成る金額の計算
64(3)-4収用等をされた資産の対価補償金をもってその代替資産とし
て2以上の資産の取得をした場合(対価補償金以外の資金とを併せて取得した
場合を含む。)において,当該対価補償金がそのいずれの代替資産の取得に充
てられたものとするかは法人の計算によるものとする。
(3)代替資産の先行取得期間
64(3)-6土地収用法16条の規定による事業認定又は起業者からの買
取りの申出があったこと等により法人の有する資産について収用等をされるこ
とが明らかであるため,当該法人が当該事業認定又は買取りの申出等があった
日以後にその代替資産となるべき資産をあらかじめ取得した場合において,当
該取得した資産が収用等のあった日を含む事業年度の開始の日前1年(収用等
をされることに伴い,工場,事務所,その他の建物,構築物又は機械及び装置
の建設又は移転を要することとなる場合において,当該工場等の敷地の用に供
するための宅地の造成並びに当該工場等の建設及び移転に要する期間が通常1
年を超えると認められる事情その他これに準ずる事情がある場合には,収用等
があった日を含む事業年度の開始の日前3年)以内に取得したものであるとき
は,その収用等があった日を含む事業年度において,当該取得した資産を代替
資産として,措置法64条1項の規定の適用を受けることができることに取り
扱う。この場合において,当該代替資産について既に減価償却をしているとき
は,当該代替資産の帳簿価額として付けることができる金額は,次の算式によ
り計算した金額を下らない金額とする。
当該代替資産を取得
した事業年度におい当該代替資産について圧縮記帳をする時
て圧縮記帳をしたも×の直前の帳簿価額/当該代替資産の取
のと仮定した場合の得価額
帳簿価額
(別紙4)
課税処分の根拠
第1本件更正の根拠
1所得金額3億8041万5719円
上記金額は,次の(1)の金額に(2)及び(3)の金額を加算し,(4)及び(5)
の金額を減算した金額である。
(1)確定申告における所得金額0円
上記金額は,原告が平成19年6月28日付けで山形税務署長に提出した
原告の本件事業年度の法人税の確定申告書に記載された所得金額である。
(2)土地に係る圧縮限度超過額1622万5515円
上記金額は,原告が本件代替資産1587の土地に係る固定資産圧縮損と
して損金の額に算入した金額1億5999万6000円のうち措置法64条
1項の規定に基づいて計算した圧縮限度額を超える部分の金額1622万5
515円であり,本件事業年度の所得金額に加算すべき金額である。
(3)減価償却超過額3億8753万8794円
上記金額は,次のアの金額からイの金額を減算した金額である。
ア圧縮限度超過額5億3944万7496円
上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)の金額を減算した金額であり,減
価償却資産の償却費の計算に当たり,償却費として損金経理をした金額と
みなされるものである。
(ア)減価償却資産に係る固定資産圧縮損の金額
30億3479万9093円
上記金額は,原告が本件代替資産1ないし1586の減価償却資産に
係る固定資産圧縮損として損金の額に算入した金額である。
(イ)減価償却資産に係る圧縮限度額24億9535万1597円
上記金額は,次のaの金額とbの金額との合計額である。
a先行取得資産に係る圧縮限度額16億0719万8386円
上記金額は,原告が本件事業年度前の各事業年度において取得した
本件代替資産1,24ないし38,55ないし1075,1535な
いし1577の減価償却資産に係る圧縮限度額の合計額であり,これ
らの資産のうち既往の事業年度において減価償却しているものに係る
圧縮限度額は,租税特別措置法関係通達(法人税編)64(3)-6に規
定される算式に基づいて計算したものである。
b本件事業年度に取得した減価償却資産に係る圧縮限度額
8億8815万3211円
上記金額は,原告が本件事業年度において取得した本件代替資産2
ないし23,39ないし54,1076ないし1378,1506な
いし1534,1578ないし1586の減価償却資産に係る圧縮限
度額の合計額である。
イ減価償却限度額1億5190万8702円
上記金額は,本件代替資産1ないし1586の減価償却資産の本件事業
年度における減価償却限度額の合計額である。
(4)寄付金の損金不算入額の過大額1013万3108円
上記金額は,原告が本件事業年度の所得金額に加算した寄付金の損金不算
入額2700万8150円のうち前記(2)及び(3)により所得金額が増加し
たことに伴って減少した後の損金不算入額1687万5042円との差額で
あり,本件事業年度の所得金額から減算される金額である。
(5)繰越欠損金の損金算入額の増加額1321万5482円
上記金額は,前記(2)ないし(4)により本件事業年度の所得金額が増加し
たことに伴って損金の額に算入されることとなった繰越欠損金の額である。
2課税所得金額に対する法人税額1億1412万4500円
上記金額は,前記1の所得金額(国税通則法118条1項の規定により10
00円未満の端数を切り捨てた後のもの)に法人税法66条(平成18年法律
第10号による改正前のもの)に規定する税率(ただし,経済社会の変化等に
対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律16条
1項(平成18年法律第10号による廃止前のもの)による置換え後のもの)
を乗じて計算した金額である。
3法人税額から控除される所得税額等471万5204円
上記金額は,法人税法68条(平成20年法律第23号による改正前のも
の)に規定する法人税額から控除される所得税の額であり,原告の本件事業年
度の法人税の確定申告書に記載された法人税額から控除される所得税等の金額
である。
4納付すべき法人税額1億0940万9200円
上記金額は,前記2の金額から前記3の金額を差し引いた金額(ただし,国
税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のも
の)である。
5既に納付の確定した法人税額△471万5204円
上記金額は,原告の本件事業年度の法人税の確定申告書に記載された納付す
べき法人税額である。
6差引納付すべき法人税額1億1412万4400円
上記金額は,前記4の金額から前記5の金額を差し引いた後の金額(ただし,
国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のも
の)である。
第2本件賦課決定の根拠
過少申告加算税の額1709万3000円
上記金額は,本件更正により新たに納付すべきこととなった法人税の税額1
億1412万円(ただし,国税通則法118条3項の規定により1万円未満の
端数を切り捨てた後のもの)に100分の10の割合を乗じて計算した金額に
相当する1141万2000円に,同法65条2項の規定により本件更正によ
り新たに納付すべきこととなった法人税の税額1億1412万4400円のう
ち50万円を超える部分の金額1億1362万円(ただし,国税通則法118
条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の5
の割合を乗じて計算した金額に相当する568万1000円を加算した金額で
ある。

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