弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
一本件控訴を棄却する。
二控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一当事者が求めた裁判
一控訴人
1原判決を取り消す。
2被控訴人が控訴人に対してした原判決別紙処分目録一記載一ないし五及び同目録
二記載一ないし四の各公文書非公開決定(同目録一記載一及び同目録二記載四につ
いては、非公開決定部分)を取り消す。
3訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二被控訴人
主文同旨
第二事案の概要
一本件事案の概要及び当事者双方の主張は、次項のとおり訂正、付加するほかは、原
判決の「事実及び理由」欄の「第二事案の内容」に記載されているとおりであるか
ら、これを引用する。
二1原判決一二頁末行の「甲三二の一ないし一一」を「甲三一、三二の一ないし(、(
一一」に改める。、
2原判決一六頁一一行目から一二行目にかけての「については」の次に「第二次、
公開請求がされたことによって第一次公開請求は撤回されたというに等しい上」、
を、同一七頁三行目の「不適法である」の次に「なお、右各文書に係る第一次非。
公開決定は、その後平成一一年七月八日付けで撤回され、同日付けで右第一次公開
請求に対しても公文書公開決定がされた」を、同五行目の「受けている以上」。、
の次に「実質的にみて右非公開決定は任意に取り消されたものというべきであるか
ら」を、同六行目の「第二次非公開決定」の次に「は、いずれも取り消されたも、
のといえるのである。したがって、右各非公開決定」を、同行の「利益はない」。
の次に「なお、右文書の第一次非公開決定(平成四年四月一八日付け及び同年五月
二二日付け)及び第二次非公開決定は、いずれも平成一一年七月八日付けで撤回さ
、。」、れ同日付けで各次の公開請求に対してもいずれも公文書公開決定がされたを
同一八頁六行目の次に行を改めて
なお都市計画審議会資料及び地元土地利用計画対応関係資料並びに基「、「」「」「
本計画書」について、被控訴人の主張するとおり、いずれも平成一一年七月八日付
けで公文書公開決定がされたことは認める」をそれぞれ加える。。
第三当裁判所の判断
当裁判所も、控訴人の「都市計画審議会資料」及び「地元土地利用計画対応関係資
料」に係る第一次非公開決定の取消を求める訴え並びに「基本計画書」に係る本件各
非公開決定部分の取消を求める訴えはいずれも不適法であり、右以外の本件各文書に
ついて、これらが条例九条一項五号又は六号の非公開情報が記録された文書に当たる
とした本件各非公開決定はいずれも適法であり、右各決定の取消しを求める控訴人の
本訴請求はいずれも理由がなく、これを棄却すべきものと判断するが、その理由は、
次項以下のとおり訂正、補足するほかは、原判決が「事実及び理由」欄の「第三争
点に対する判断」で説示するとおりであるから、これを引用する。
一本案前の争点(訴えの利益)について(原判決の説示の訂正等)
1原判決二七頁五行目から同三〇頁九行目までを次のとおり改める。
「1「都市計画審議会資料」及び「地元土地利用計画対応関係資料」について、
第二次公開請求に対し平成八年四月二六日付けで公開決定がされたことは、前
記のとおりである。ところで、条例には、市民が公文書の公開を求める権利を
行使するについて、請求者が既に条例による公文書の公開請求の手続によって
当該文書の公開を受けるなどしている場合に再度の公開請求を求めることを禁
ずる趣旨の規定は設けられておらず、実施機関から請求者に対して別の機会に
既に開示されている情報についても、請求者は重ねてその情報の開示を求めて
公文書の公開を請求する権利を与えられているものと解さざるを得ないから、
被控訴人が控訴人の第二次公開請求に対して公開決定をしたことにより控訴人
に対して右文書に含まれる情報が既に開示されるに至ったからといって、控訴
人の第一次公開請求に対する非公開決定がこれに対する取消訴訟が適法に提起
されることにより未確定の状態で残存している限り、控訴人において右の非公
開決定の取消しを求めることにより第一次公開請求に対しても公開決定を求め
る利益が消滅したものと解することはできず、また、控訴人が第二次公開請求
をしたことによって第一次公開請求が撤回されたに等しいものであると評価す
ることもできないものというべきである。しかしながら、右各文書に対する第
一次公開請求に対応して、その後平成一一年七月八日付けで改めて公文書公開
決定がされたことは当事者間に争いがないのであり、そうすると、これによっ
て、右各文書に対する第一次非公開決定の取消しを求める訴えの利益はもはや
消滅したものといわなければならず、控訴人の右各文書に係る第一次非公開決
定の取消しを求める訴えは訴えの利益を欠く不適法なものとなるに至ったもの
というべきである。
2「基本計画書」が被控訴人が本訴の原審口頭弁論期日においてその写しを書
証として提出するという形で控訴人に事実上公開されたことは、前記認定のと
おりであるが、控訴人の第一次公開請求(平成四年四月一日及び同月二八日)
及び第二次公開請求に対する各非公開決定がこれに対する取消訴訟が適法に提
起されることにより未確定の状態で残存している限り、前記条例の定めに照ら
し、右のような形で各文書が事実上控訴人に開示されたとしても、これによっ
て控訴人の本件各非公開決定部分の取消を求める訴えの利益が失われたものと
解することができないことは前述のとおりである。しかしながら、右文書に対
する第一次公開請求及び第二次公開請求に対応して、その後平成一一年七月八
日付けでそれぞれ公文書公開決定がされたことは当事者間に争いがない。そう
すると、これによって、右の文書に対する第一次及び第二次各非公開決定の取
消しを求める訴えの利益はもはや消滅したものといわなければならず、控訴人
の右文書に係る各非公開決定の取消しを求める訴えはいずれも訴えの利益を欠
く不適法なものとなるに至ったものというべきである」。
二本件各非公開決定のうち一に掲げた以外の決定(又は決定部分)の適否について
1原判決の説示の訂正
原判決三八頁一行目の「昭和三九年ころから」から同二行目の「準備を進め」、
、「、」までを削除し同一一行目から一二行目にかけての見直し案を提示したところ
を「見直しを行うこととし」に、同四八頁九行目の「三〇頁づつ」を「三〇頁ず、
つ」に、同五八頁三行目の「対象」を「対照」にそれぞれ改め、同七六頁四行目の
「関連事業費も含む」の」の次に「1)土地区画整理事業費」の」を、同五()「(
行目の「宅地対策」の次に「費」をそれぞれ加え、同七八頁末行の「信頼関係を」
を「信頼関係が」に、同九四頁七行目の「都市計画決定」を「都市計画案」にそれ
ぞれ改め、同一〇〇頁四行目の「意向を」の次に「条例に基づく文書公開の手続に
よって」を加える。
2当裁判所の判断の補足
(一)条例上の非公開条項の文言解釈について
条例九条一項五号あるいは六号にいう公開しないことができる情報に該当す
るか否かを判断する基準となる市の事務事業等への支障の有無の点は、この点
に関する判断が、事柄の性質上必然的に将来の予測に関する判断を伴うことか
らして、当該情報が公開された場合にそのような支障が生じる蓋然性が認めら
れる場合をいうものと解する以外になく非公開事由を定める条例の規定が支、「
障を生ずると認められるもの」との文言を用いている場合と「支障が生ずるお
それがあるもの」との文言を用いている場合とで、実質的な差異が生ずるもの
とまで解することは困難である。したがって、このような条例上の文言の違い
によって、非公開事由の範囲が大きく変わってくるものではないというべきで
ある。
(二)いわゆる意思形成過程等情報について
行政機関の内部における意思形成過程で作成されるいわゆる意思形成過程文
書にあっては、公文書としての決裁、供覧等の手続こそ終了していても、その
文書に含まれる情報が、行政機関としての最終的な意思決定までの中途の意思
形成段階における情報であるため、行政機関内部でも十分な検討や協議が行わ
れていないものが含まれており、これらの情報が一般に公開されると、市民に
無用の誤解や混乱を与え、また、行政内部における自由で率直な意見の交換等
が妨げられ、さらに、場合によっては一部の者のみに不当な利益あるいは不利
益を与えることとなり、これによって、市の機関内部若しくは機関相互又は市
の機関と国等の機関との間における審議、検討、調査研究等を適正かつ効率的
に行う上で支障が生ずることとなるようなものが存在すると考えられる。した
がって、公開することによってこのような弊害を生ずるおそれがあると考えら
れる情報については、非公開とすることが許されるものというべきである。
控訴人は、右の審議、検討等を効率的に行う上での支障というものは、情報
の公開を拒否する理由とはなり得ないと主張するが、市の事務処理が効率的に
行われるという利益を、情報の公開の許否を決するに当たって考慮すべき利益
の中から除外すべき根拠はない。
(三)いわゆる行政運営情報について
行政機関が行う交渉、調整等の事務は、その性質上、最終的な合意の成立や
紛争の解決に向けて、関係者の間で継続的な折衝や調整が必要とされるもので
あるから、控訴人の折衝や調整の過程で文書化される各種の意見や提案等に関
する情報が逐一公開されることになると、以後の折衝や調整の過程における自
由な発言や意見の交換が妨げられることとなり、また、これらの折衝や調整に
、、関する対応策に関する情報についてはそれが事前に明らかにされてしまうと
当該交渉等の事務の適切、有効な処理に支障が生じ、ひいては最終的に望まし
い形の合意等が成立すること自体も困難となるおそれがあり、さらに、これら
の情報が公開されることにより、交渉等の相手方との間での現在又は将来にわ
たる協力関係や信頼関係を損なうこととなるおそれがある場合があることが考
えられる。なお、反復、継続して行われるような種類の交渉に関しては、当該
交渉が終了した後においても、右のような情報を公開することが、同種の事務
の処理に支障をもたらすことも考えられる。したがって、公開することによっ
て、市の事務事業を公正かつ円滑に執行する上で、このような弊害を生じるお
それがあると考えられる情報については、非公開とすることが許されるものと
いうべきである。
(四)本件の各情報について
都市計画事業特に区画整理事業は、地権者を含む多くの関係者の利害が複雑
かつ深刻に対立し、事業の在り方に関しても様々な考え方の対立、衝突が予想
されるため、これら多くの関係者の利害や立場に公平に配慮しながら事業を進
めていく必要があり、さらに、その過程で、国及び県を含む関係機関との種々
の協議調整を経ることが必要とされるという特殊な性格を持つ事業である。そ
のため、都市計画法、土地区画整理事業法等の関係法規上も、関係者の利益を
保護するとともに事業の円滑な進行を図るための様々な手続が定められてお
り、事業計画の公衆への縦覧に関しても具体的な手続が定められているところ
である。
ところが、本件で中心的な問題となっているのは、都市計画の一環として行
われる区画整理事業の計画策定段階における行政機関内部での検討調査資料
を、未だ都市計画決定はもちろんのこと区画整理事業の事業計画決定もされて
いない段階で公開することの可否という問題であり、いわば、区画整理事業法
等の関係法規が未だ公衆への縦覧等を予定していないような段階で、計画案に
密接に関連するような情報を公開することが、当該区画整理事業の円滑、公正
な進行に支障を生ずることとならないかが問題とされているのである。
前記のような区画整理事業の特質や関係法規の定め等からして、これらの情
報を含む各文書を公開することは、原判決の説示するとおり、本件区画整理事
業の公正、円滑な執行を図る上で著しい支障を生ずることとなるのは、明らか
なものというべきである。
三結論
以上の次第で、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却する
こととし、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第一五民事部
裁判長裁判官涌井紀夫
裁判官増山宏
裁判官合田かつ子

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