弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人に関する部分(但し無罪部分を除く)を破棄する。
     被告人を懲役一年六月に処する。
     第一審における未決勾留日数中五十日を右本刑に算入する。
     押収にかゝるランニングシヤツ三枚(昭和二七年押第七二六号の一)は
これを被害者に還付する。
     訴訟費用中第一審証人A、同Bに支給した分の四分の一は被告人の負担
とする。
         理    由
 被告人の弁護人築山重雄の上告趣意は単なる法令違反、事実誤認及び量刑不当の
主張を出でないものであつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 しかし、原判決は訴訟費用中第一審証人Cに支給した分(昭和二五年七月三日支
給)を被告人の負担としているが。右費用は本件公訴事実中原審において無罪の言
渡のあつた点に関する証人尋問について生じたものであつて、しかも被告人の責に
帰すべき事由によつて生じた費用とも認められないから、右訴訟費用を被告人に負
担せしめたことは違法であるといわねばならない。そして右の違法は判決に影響を
及ぼすべきこと勿論であり、著しく正義に反するものと認められるから刑訴四一一
条一号により原判決を破棄すべきものとし同四一三条但書に従い更に判決すべきも
のとする。
 よつて原判決の認定した事実に対し法令を適用すると、判示詐欺の点は刑法二四
六条一項六〇条に、業務上横領の点は同法二五三条六五条一項六〇条に、窃盗の点
は同法二三五条六〇条に各該当するところ、右業務上横領の点は身分により刑の軽
重がある場合であつて、被告人は身分のない者であるから同法六五条二項により通
常の刑である同法二五二条一項の刑を以て処断すべく、以上の各所為は同法四五条
前段の併合罪であるから同法四七条本文一〇条により犯情最も重いと認める第一審
判決判示第三(四)の窃盗の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役
一年六月に処し、同法二一条に従い第一審における未決勾留日数中五〇日を右本刑
に算入すべく押収に係るランニグシヤツ三枚(昭和二七年押第七二六号の一)は押
収した賍物で被害者に還付すべき理由明白であるから刑訴三四七条一項によりこれ
を被害者に還付することとし、主文表示の訴訟費用は同法一八一条一項により被告
人の負担たるべきものとする。
 よつて主文の通り判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 佐藤欽一出席。
  昭和三〇年一月一四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   垂
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    池   田       克

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