弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被上告人の控訴を棄却する。
     控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人松木武の上告理由第一点について
 一 被上告人の本訴請求は、自己が取得した本件建物の価格が固定資産課税台帳
の登録価格と著しくかけ離れていることを理由に、右登録価格を不動産取得税の課
税標準である不動産の価格としてされた本件賦課処分が地方税法(以下「法」とい
う。)七三条の二一第一項ただし書に違反する違法があるとして、その取消しを求
めるものである。
 原審は、右ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」とは、固定資
産課税台帳に登録された価格が当該不動産の客観的な評価として公正妥当なものと
みることができない場合をいい、その原因となった事由が右価格の登録後に生じた
ものに限定されると解する必要はないとした上、本件建物の時価は、取得時に近接
した昭和六三年一二月一日の時点においては四二六七万円であり、固定資産課税台
帳に登録された価格である五一八五万五三一二円と比べて九〇〇万円強の差がある
ので、右ただし書の当該固定資産の価格により難いときに当たり、本件賦課処分を
違法であるとして、被上告人の請求を棄却した第一審判決を取り消し、本訴請求を
認容した。
 二 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 1 固定資産税の課税対象となる土地及び家屋(発電所及び変電所を除く。)と
不動産取得税の課税対象となる土地及び家屋とは同一であり(法三四一条二号、三
号、七三条一号ないし三号参照)、両税の課税標準である不動産の価格も等しく適
正な時価をいうものとしている(法三四一条五号、七三条五号参照)。そして、法
は、固定資産課税台帳に登録される固定資産の価格が適正な時価であるようにする
ため、市町村長等が行う固定資産の評価及び価格の決定は自治大臣により定められ
た評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(固定資産評価基準)に基づいて行
い(法三八八条以下参照)、決定された価格については固定資産税の納税者に不服
申立ての機会を与える(法四三二条以下参照)などの規定を設け、さらに、このよ
うにして固定資産課税台帳に登録された基準年度の価格についても、第二年度、第
三年度において、「地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の
事情」等が生じたため基準年度ないし第二年度の価格によることが不適当、不均衡
となる場合には、これによらずに当該不動産に類似する不動産の基準年度の価格に
比準する価格によることとする(法三四九条一項ないし三項参照)などの規定を設
けている。そこで、道府県知事が不動産取得税の課税標準である不動産の価格を定
めるに当たっては、原則として、固定資産課税台帳の登録価格によることとし(法
七三条の二一第一項本文参照)、両税間における不動産の評価の統一と徴税事務の
簡素化を図ったものである。
 そうであるとすると、法七三条の二一第一項ただし書にいう「当該固定資産の価
格により難いとき」とは、当該不動産につき、固定資産税の賦課期日後に増築、改
築、損壊、地目の変換その他特別の事情が生じ、その結果、右登録価格が当該不動
産の適正な時価を示しているものということができないため、右登録価格を不動産
取得税の課税標準としての不動産の価格とすることが適当でなくなった場合をいう
ものと解すべきである。したがって、不動産取得税の納税者は、右登録価格を課税
標準としてされた賦課処分の取消訴訟においては、当該不動産の時価と右登録価格
とに隔差があることを主張するだけでは足りず、それが、賦課期日後に生じた右に
いう特別の事情によるものであることをも主張する必要があるものというべきであ
る。
 2 これを本件についてみると、被上告人は、本件建物の取得時の価格と固定資
産課税台帳の登録価格とに隔差があることを主張するのみで、それが賦課期日後に
生じた特別の事情によるものであることを主張していないのであるから、本件賦課
処分が法七三条の二一第一項ただし書に違反する違法がある旨の主張としては失当
というべきである。
 三 以上によれば、右と異なる解釈の下に被上告人の本訴請求を認容した原判決
には、法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ず、その違法は判決に影
響を及ぼすことが明らかである。この趣旨をいう論旨は理由があり、その余の上告
理由について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、以上に述べ
たところからすれば、本件賦課処分に違法があるとはいえないので、その取消しを
求める被上告人の本訴請求は理由がなく、これを棄却した第一審判決は正当であっ
て、被上告人の控訴を棄却すべきである。
 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、
八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   白       勝
            裁判官    大   堀   誠   一
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    三   好       達

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