岡山地裁平成20・12・25
316条の20第1項棄却
主文
本件申立てをいずれも棄却する。
理由
1本件請求の趣旨及び理由は,要するに,被告人らに対する本件各強盗致傷被告事
件について被告人Aの逮捕以前に作成された①緊急配備,②聞込み,③初動捜査,
④張込み及び⑤地取・足取捜査に関する捜査状況・経緯を示す捜査報告書,事情聴
取結果報告書,捜査関係事項照会書・回答書及びこれに準ずる書面(ただし,既に開
示されているものを除く。以下「開示請求に係る捜査報告書等」という。)は,いず
れも刑事訴訟法316条の20第1項に該当する主張関連証拠であって,弁護人からの
開示請求により検察官が開示をすべき証拠であるにもかかわらず,検察官が開示
をしないので,裁判所の裁定を求めるというものである。
2弁護人は,捜査機関が被告人らに対する上記緊急配備等の初動措置・捜査及び総
合捜査による被疑者の割出しのための捜査をしていないか,あるいはしていたと
しても不十分なものしかしていなかったため,被告人らの少年審判を受ける機会
を失わせたものであって,捜査手続に重大な違法があり,公訴棄却されるべきであ
ると主張し,開示請求に係る捜査報告書等は,その主張に関連し,被告人の防御の
準備のために開示が必要なものであるとしている。
そこで検討するに,検察官は,平成20年8月29日付け及び同年11月7日付け回答
書において,別紙記載の捜査報告書等(以下「別紙証拠」という。)を任意開示した上,
本件請求に対する意見書等において,①既に開示している証拠以外の証拠であっ
て,検察官が現に保管している証拠は,捜査状況・経緯をまとめた報告書を除いて
存在しない旨を明確にし,さらに,②警察において作成した捜査書類は全て検察官
に送致されており,検察官において入手が容易な他の証拠(具体的には,警察官が
現に保管している証拠)も存在しないとしている。
そうすると,開示請求に係る捜査報告書等のうち,捜査状況・経緯をまとめた報
告書については,既に開示済みの証拠に基づいて作成されたものにすぎないから,
開示する必要性は認められないのであって,開示が相当とはいえず,また,それ以
外の捜査書類は,存在しないことが明らかであり,開示が相当であるかどうかを判
断するまでもなく,同条の要件は満たさない(なお,弁護人が開示を求める「捜査報
告書等に準ずる書面」が何であるかは必ずしも明らかではないが,既に開示済みの
証拠に加えて,さらに,一件記録として検察官に送致された捜査書類以外の「捜査
報告書等に準ずる書面」まで開示する必要性は認められず,開示が相当であるとは
認められない。)。
3よって,本件申立てはいずれも理由がないから,刑事訴訟法316条の26第1項,2
項により,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・高山光明,裁判官・馬渡香津子,裁判官・石原和孝)
(別紙)
1.平成20年8月29日付け回答書
(1)司法警察員B作成の平成20年4月24目付け捜査報告書1通
(2)Cの司法警察員に対する平成20年3月18日付け供述調書1通
2.平成20年11月7日付け回答書
(1)司法警察員D作成の平成14年2月8日付け捜査報告書1通
(2)司法巡査E作成の平成14年2月8日付け捜査報告書1通
(3)司法警察員F作成の平成14年2月9日付け鑑定嘱託書(謄本)1通
(4)玉島警察署長作成の平成14年2月9日付け現場資料等送付書(謄本)1通
(5)司法警察員G作成の平成14年2月10日付け捜査報告書1通
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