弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は,原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告が平成17年3月7日付けで原告に対してした遺族年金及び葬祭料の不
支給決定処分(薬機発○○号)を取り消す。
第2事案の概要
本件は,脳出血による入院中に独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(平
成14年法律第192号。以下「機構法」という)所定の許可医薬品である。
抗精神病薬ハロペリドール(商品名「▲▲注射液。以下「▲▲注」という)」。
の投与後に死亡した亡P1の妻である原告が,機構法に基づく副作用救済給付
としての遺族年金及び葬祭料の支給請求をしたところ,被告が,▲▲注の使用
が適正であったとは認められないので副作用救済給付の対象とすることができ
ないとの理由で,いずれも不支給とする旨の決定(以下「本件不支給処分」と
。),,,いうをしたことから原告が亡P1に対する▲▲注の使用は適正であり
同人は▲▲注の投与の副作用により死亡したものであって,本件不支給処分は
違法であるとして,その取消しを求めている事案である。
1関係法令
(。()医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法昭和54年法律第55号1
平成14年法律第192号による廃止前のもの。以下「旧機構法」という。)
ア医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(以下「旧機構」という。)は,
医薬品の副作用による疾病,障害又は死亡に関して,医療費,障害年金,
遺族年金等の給付を行うこと等により,医薬品の副作用により医薬品の副
作用による健康被害の迅速な救済を図ることを目的として(旧機構法1条
1項,同法に基づき設立された法人である(同法3条,4条。))
イ旧機構は,上記アの目的を達成するため,医薬品の副作用による疾病,
障害又は死亡につき,医療費,医療手当,障害年金,障害児童養育年金,
遺族年金,遺族一時金及び葬祭料の給付を行うこととされ(旧機構法27
条1項1号,具体的な遺族年金又は葬祭料の支給は,医薬品の副作用に)
より死亡した者の遺族(配偶者,子,父亡,孫,祖父母又は兄弟姉妹であ
,)って当該死亡した者の死亡の当時その者によって生計を維持していた者
又は葬祭を行う者の請求に対し,旧機構が支給決定をすることによって行
う(同法28条1項4号,5号,同法施行令8条1項。)
()機構法2
ア被告は,医薬品の副作用等による健康被害の迅速な救済を図ること等の
業務を行い,もって国民保健の向上に資することを目的として(機構法3
条,同法に基づき設立された独立行政法人である(同法2条。))
イ被告は,上記アの目的を達成するため,医薬品の副作用による疾病,障
害又は死亡につき,医療費,医療手当,障害年金,障害児養育年金,遺族
年金,遺族一時金及び葬祭料の給付(以下「副作用救済給付」という。)を行
うこととされ(機構法15条11項1号イ,具体的な遺族年金又は葬祭)
,(,,,料の支給は医薬品の副作用により死亡した者の遺族配偶者子父亡
孫,祖父母又は兄弟姉妹であって,当該死亡した者の死亡の当時その者に
)(,「」よって生計を維持していた者又は葬祭を行う者以下併せて遺族等
という)の請求に対し,機構が支給決定をすることによって行う(機構。
法16条1項4号,5号,同法施行令10条1項。)
ウ被告の成立の時(平成16年4月1日)において,旧機構は解散し,旧
機構の一切の権利義務は被告に承継され(機構法附則13条1項,機構)
法の施行日前に旧機構法又は同法施行令の規定によりした処分,手続その
他の行為は,機構法若しくは同法施行令又は独立行政法人通則法中の相当
する規定によりした処分,手続その他の行為とみなされている(機構法附
則22条,機構法施行令附則15条。)
エ機構法において「医薬品の副作用」とは,許可医薬品が適正な使用目的
に従い適正に使用された場合においてもその許可医薬品により人に発現す
る有害な反応をいう(機構法4条6項。以下,同項に規定する「適正に使
用された」ことを「適正使用」ともいう。。)
オ医薬品の副作用による疾病,障害又は死亡がその者の「救命のためにや
むを得ず通常の使用量を超えて当該医薬品を使用したことによるものであ
り,かつ,当該健康被害の発生があらかじめ認識されていた場合その他こ
れに準ずると認められる場合(機構法施行規則3条)には,副作用救済」
給付を行わない(機構法16条2項3号。以下,同法施行規則3条に規定
する上記の事由を「不支給事由」ともいう。。)
2前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に
認められる事実)
()当事者1
ア原告は,平成▲年(以下,特に注記しない限り,平成▲年中の事情であ
る。)▲月▲日に死亡した亡P1の妻である。
イ被告は,機構法及び独立行政法人通則法の規定により設立された独立行
政法人である。
()亡P1の診療等の経緯及び症状2
ア診療等の経緯
亡P1は,1月31日午後10時ころ,高血圧性脳出血を発症し,医療
法人社団P2の経営するP3病院(以下「本件病院」という)に救急搬。
送され,本件病院において,別紙1「診療経過一覧」記載のとおり,治療
を受け,その治療において,本件病院のP4医師により,別紙2「亡P1
に対する▲▲注の投与量」記載のとおり,せん妄(後記イ)に対する処置
として▲▲注の投与を受けたところ遅くとも2月9日には悪性症候群後,(
),。記ウを発症し▲月▲日午後2時に死亡した(以下「本件被害」という。)
(甲3,4)
イせん妄
せん妄は,認知障害や興奮,幻覚などの精神症状を伴った意識障害の特
殊型である。せん妄の特徴的な症候は,意識障害であり,認知機能の全般
的な障害に際して見られ,気分,認知,行動の異常といった精神症状,振
戦,羽ばたき振戦,運動失調,尿失禁といった神経学的症状がよく見られ
るが,意識混濁は軽度で,(別紙3「診断基準」記載1JapanComaScale
の意識レベルの診断基準。以下,この診断基準を「JCS」といい,同基
準による意識レベルを「Ⅰ10」「Ⅱ100」等と表記する。)ではⅠの,
レベルにあることが多い。また,せん妄の症状は,突然に発症し,短期に
変動する経過を経て,原因となる要素が除去されると急速に改善するとい
う経過をたどることが典型である(甲17,18,乙30)。
せん妄は,症候群であり,疾患ではなく,その原因は様々であり,その
根本的原因を確認して治療する必要があるが,併せて,せん妄に関連する
合併症の発生を避けるための治療を行う必要がある。集中治療室や一般の
病棟で特に問題となるせん妄に関連する合併症には,意識障害又は協調作
用の障害による正規の治療の中断や,不必要な拘束具の使用等による傷害
がありせん妄の症状に対しては薬物療法による治療が必要とされる甲,。(
18,29)
薬物療法がされた場合の鎮静深度を評価する基準としては,別紙3「診
断基準」記載2の鎮静スケール(以下「鎮静スケール」という。)が,Ramsay
せん妄による不穏状態を評価する基準としては,別紙3「診断基準」記載
Sedation-AgitationScaleRichmond3及び4の(以下「SAS」という。)及び
,。Agitation-SeddationScale(以下「RASS」という。)がそれぞれ有用である
(甲25)
ウ悪性症候群
悪性症候群は,抗精神病薬の投与中に出現する最も重篤な副作用の一つ
,,,,であり高熱や意識障害に加え振戦筋強剛などの錐体外路症状や発汗
頻脈などの自律神経症状を呈しながら,時には致死性の転帰をとる一連の
症候群である(乙14)。
悪性症候群の発症については,抗精神病薬の大量投与若しくは投与量の
増量又は筋肉注射による頻回の投与により悪性症候群が発症することが多
いとする研究報告があり,特に▲▲注の関与が非常に強く,典型的な発症
様式と考えられるとする研究報告もある(甲21(海外の報告例の引用。
部分,乙13ないし15,22,23,27,33))
()原告の損害賠償請求訴訟の経緯3
原告は,亡P1の子らとともに,平成13年12月26日,医療法人社団
P2に対し,亡P1はP4医師が医薬品添付文書記載の用量を大幅に超過す
る大量の▲▲注を投与して悪性症候群を発症させた過失により死亡したとし
て,診療契約の債務不履行及び不法行為に基づき,損害賠償(合計2億12
52万5872円)及び遅延損害金の支払を求めて訴えを提起した(当庁平
成▲年(ワ)第▲号損害賠償請求事件。以下「別件訴訟」という。。)
原告は,亡P1の子らとともに,平成15年8月28日,医療法人社団P
2との間で,次の内容の訴訟上の和解をした(以下「別件和解」という。。)
(乙4,5)
ア医療法人社団P2は,原告及び亡P1の子らに対し,和解金として,合
計5000万円の支払義務(原告及び亡P1の子らの連帯債権)のあるこ
とを認め,これを平成15年9月30日限り支払う。
イ原告及び亡P1の子らは,当該事件に関し,医療法人社団P2の医療従
事者に対する損害賠償請求権を放棄し,同医療法人及びその医療従事者に
対し,名目のいかんにかかわらず,民事上,刑事上,行政上等の一切の責
任追及を行わない。
ウ医療法人社団P2は,原告及び亡P1の子らが亡P1の死亡に関して行
う医療品副作用被害救済基金の申請手続について可能な協力を行う。
エ原告及び亡P1の子らは,その余の請求を放棄する。
オ原告及び亡P1の子らと医療法人社団P2は,当該事件に関し,上記ア
ないしエの和解条項に定めるもののほか,何らの債権債務のないことを相
互に確認する。
カ別件訴訟の訴訟費用は,各自の負担とする。
()本件訴訟に至る経緯4
ア原告は,旧機構に対し,亡P1が▲▲注の副作用として悪性症候群を発
症し,これに続発する急性腎不全により死亡したとして,平成15年10
月31日付けで遺族年金を,同年11月18日付けで葬祭料を,それぞれ
請求した(以下「本件請求」という(乙6,7)。)。
イ平成16年4月1日に旧機構の一切の権利義務を承継した被告は,同年
7月1日,機構法17条1項に基づき,厚生労働大臣に対し,本件請求に
係る亡P1の死亡の原因が医薬品の副作用によるものであるかどうかその
他医学的薬学的判定を要する事項に関し,判定の申出を行い,厚生労働大
臣は,平成17年1月20日に薬事・食品衛生審議会から答申を得て,同
年2月17日,被告に判定の結果を通知した。
ウ被告は,平成17年3月7日付けで,原告の本件請求に係る遺族年金及
び葬祭料をいずれも不支給とする旨の決定をし(本件不支給処分,同月)
8日,原告にこれを通知した。その通知書には,決定の理由として,亡P
1は悪性症候群に続発した急性腎不全により死亡し,その原因と考えられ
又は推定される医薬品には▲▲注が含まれるが,亡P1に対しては,3日
間にわたり大量の▲▲注が投与されているところ,▲▲注の使用について
は,悪性症候群等の発症に留意し,投与量を可能な限り抑制するための試
み(例えば,睡眠薬の併用,身体拘束等)がされるべきであるのに,本件
ではこのような対応が十分にされたとは考え難く,▲▲注の使用について
適正であったとは認められないとの理由が記載されていた(甲5)。
エ原告は,同年4月28日,厚生労働大臣に対し,本件不支給処分を不服
として,機構法35条1項に基づく審査の申立てをしたが,厚生労働大臣
は,平成18年8月28日付けで,その審査の申立てを棄却する裁決をし
た。その裁決書には,裁決の理由として,本事例については,短期間に大
量の▲▲注が投与されており,当該医薬品の使用について適正であったと
認めることは困難であるとの理由が記載されていた(甲6)。
オ原告は,平成19年2月15日,被告に対し本件不支給処分の取消しを
求めるとともに,国を被告として上記エの裁決の取消しを求めて,本件訴
訟を提起したが,平成20年2月13日,国を被告とする訴えの全部を取
り下げ,同月28日,被告は同取下げに同意した(顕著な事実)。
3争点
本件の争点は,以下のとおりであり,これに対する当事者の主張の要旨は,
後記4の「争点に関する当事者の主張の要旨」記載のとおりである。
()本件被害が▲▲注の副作用によるものであるか否か。1
ア適正使用の要件等の判断方法
イ本件の▲▲注の投与が適正使用に当たるか否か。
ウ本件被害が適正使用に係る投与に起因して発生したものか否か。
()本件被害が副作用救済給付の不支給事由(機構法施行規則3条)に当た2
るか否か。
4争点に関する当事者の主張の要旨
()争点()(本件被害が▲▲注の副作用によるものであるか否か)について11
(原告の主張の要旨)
ア適正使用の要件等の判断方法
(ア)▲▲注の投与が適正使用に該当するか否かについては,▲▲注の医
薬品添付文書に記載された用法・用量の記述のみにとらわれるのではな
く,投薬時点における患者の病状や医学文献によって示される当時の医
学的知見を考慮に入れて,検討を行わなければならない。
損害賠償請求訴訟では,医薬品の不適正な使用に係る過失・因果関係
の立証には相当の困難を伴うことからすれば,適正使用の要件が厳格に
解されると,医学知識に乏しい被害者は,当該被害が医療過誤によるも
のなのか,医薬品の適正使用によるものなのかを事前に判断することは
事実上不可能であることもあり,損害賠償請求訴訟ないし医薬品副作用
被害救済制度のいずれによっても被害の救済を受けられない場合が生じ
得ることとなるが,これは医薬品副作用被害救済制度の趣旨に反する。
このような事態を回避するためには,適正使用の要件を満たさないも
のとして副作用被害救済の対象外とされるのは,①医薬品の投与が一見
明白に不適切であり,かつ,②不適切な投与により被害が発生したこと
が明らかであって,③被害者が民事訴訟において投薬を行った医療機関
の責任を容易に立証できる場合に限られるというべきである。
したがって,被害の原因となった医薬品の使用法が添付文書の記載に
,,,合致しない場合であっても医療の実態との関連で個別の事例に応じ
医学,薬理学,薬学の診療当時の学問水準に照らし,総合的な見地から
判断して,上記①ないし③の要件に該当する場合を除いては,適正使用
の要件に該当すると認められ,副作用救済給付の対象となるというべき
である。
(イ)医薬品の不適切な使用による医療過誤と適正使用による副作用被害
は必ずしも明確に区別されるわけではなく,前者は,臨床医学の実践に
おける医療水準が判断基準となり,後者は,被告の主張によれば,医療
の実態,平均的な医療水準,学問水準が判断基準となる。そして,医師
が医療慣行(医療の実態)に従った医療行為を行ったからといって医療
水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできないとされて
()いる最高裁平成8年1月23日第三小法廷判決・民集50巻1号1頁
ので「平均的な医師の水準(医療慣行)を満たすものとして副作用,」
救済給付との関係で適正使用と評価される投薬行為の中にも,臨床医学
の実践における医療水準には達しておらず,医療過誤と評価されるべき
ものが存在することになる。
イ本件の▲▲注の投与が適正使用に当たること
P4医師が亡P1に対し医薬品添付文書に記載された用量を超えて▲▲
,,。注を投与したことについては以下のとおり十分な医学的根拠が存する
したがって,本件の▲▲注の投与量及び投与法は,被告の主張に係る医療
の実態,平均的な医療水準,学問水準に照らしても,適正使用の要件を満
たすといえる。
(ア)適正な用量であったこと
a医薬品添付文書の記載は,一定の規範性を有するものであるが,医
療の実態という観点で見るならば,一般に,添付文書の用量を超える
投与がされる自体は珍しいことではない。せん妄の治療においては,
鎮静のために「必要な量」を使わざるを得ないというのが臨床現場に
おける感覚であり,医学文献(甲29)でも,臨床現場では必要に応
じて▲▲注の高用量投与が行われていることが指摘されている。
b臨床現場で広く参照されている医学文献(甲15)では,精神運動
興奮状態に対する急速神経遮断療法として,▲▲注(15mgないし
60mg)の大量・定期的な静注又は筋注が,患者の沈静化や幻覚・
妄想を消失させるために極めて有効性が高いことが指摘されている。
平成12年に刊行された他の医学文献(甲33)でも,1回投与量
50mg,1日の総投与量500mgまでの▲▲注の静注投与がされ
た例の報告や,▲▲注を10mg静注し,引き続いて毎時5ないし1
0mgの持続点滴をする方法の提案など,▲▲注の大量投与を支持す
る指摘がされている。
このように,平成12年当時,せん妄患者に対する▲▲注の高用量
投与(60mg程度まで)が,臨床現場では広く一般的に行われてい
た。
(イ)適正な用法であったこと
a亡P1は,2月2日午前10時ころから体動が激しくなり,酸素マ
スクを外したり,起き上がってベッドから降りようとしたり,点滴チ
ューブを抜針しようとしたりした。同日午後4時には,点滴チューブ
を実際に抜針し,午後4時20分には意味不明の言動があり,午後4
時30分になっても興奮状態が続いていた。このように,亡P1は,
午後4時30分の時点で「急激な精神運動興奮などで緊急を要する場
合」にあったことが明らかであり,▲▲注の投与が決定されたことに
は何の問題もない。
bまた,同日午後4時55分の時点で鎮静剤の効果により亡P1が傾
眠傾向にあるとの評価がされても,鎮静状態が一定時間継続しなけれ
ば緊急状態を脱したとの評価を下すことはできない。亡P1は,同日
午後5時30分に再び暴れ出し,抑制帯を使用していたにもかかわら
ず起き上がろうとしたのである。せん妄の患者については,鎮静剤に
より一定の鎮静が得られた後でも,持続的な鎮静効果を得るために▲
▲注の持続点滴静注を継続することが必要であり,臨床現場でもその
ような投与法が広く実践され,医学文献(甲11,26)でも推奨さ
れている。
cなお,せん妄の治療に関する医学文献でも,抑制帯の使用等を鎮静
剤の持続投与に優先させて行うべきとするものは見当たらず,いずれ
を選択するかは,患者の病状等に基づき,担当医が裁量で判断すべき
事項である。
ウ本件の▲▲注の投与量と本件被害との因果関係の実証の欠如
患者に生じた医薬品の有害作用が,当該医薬品が適正に使用された場合
であっても同様に発現するものであれば,たとえ実際の投与が不適正と評
価される場合であっても,医薬品の副作用といえる。換言すれば,医薬品
が不適正に使用されたことを理由として副作用救済給付を拒絶するために
は,医薬品の不適正な使用と患者に生じた有害作用との間に因果関係が存
在することが必要である。
医学文献でも,悪性症候群が用量依存性の副作用ではないことが指摘さ
れており,現時点においても,▲▲注の投与量と悪性症候群の発症との間
。,,の関連性の存在は医学的に実証されていないそうすると本件において
仮に▲▲注の投与量が添付文書に記載された用量の範囲内であったとして
も,悪性症候群が発症した可能性が十分に存在することになるから,亡P
1の悪性症候群の発症は,機構法4条6項にいう「医薬品の副作用」にほ
かならないことになる。
(被告の主張の要旨)
ア適正使用の要件等の判断方法
機構法4条6項における適正使用とは,原則的には,医薬品が厚生労働
大臣の承認を受けた用法・用量の範囲内で使用され,かつ,その医薬品の
容器や添付文書に記載されている使用上の注意が守られていることをい
い,厚生労働大臣の承認を受けた用法・用量の範囲を超える場合であって
も例外的に適正使用とされるのは,医療の実態,平均的な医療水準・学問
水準との関係で,当該使用の時点における我が国の医療の平均的な水準に
おいて「適正」と評価され得る場合に限られるというべきである。
そして,機構法16条1項の規定振りからすれば,適正使用の要件を含
め,当該被害が医薬品の副作用により生じたことの立証責任については,
副作用救済給付の請求をする者がその立証責任を負うというべきである。
イ本件の▲▲注の投与は適正使用に当たらないこと
(ア)用法違反
aP4医師による亡P1に対する▲▲注の投与が適正使用であると認
められるためには,亡P1が「急激な精神運動興奮などで緊急を要す
る」状態にあったことが必要である。また,せん妄に対する処置のた
めに▲▲注を用いる場合,添付文書に記載された用法・用量の範囲内
で投与し,それでも症状の改善が認められないときは,無理な治療を
行うことなく,患者を抑制し,十分な観察を行いながら,症状がおさ
まるのを待つことが求められるというべきである。
P4医師による2月2日午後4時43分,4時45分に行われた▲
▲注の各5mgの投与は,静脈注射によるものであるが,当時の亡P
1の状態が急激な精神運動興奮などで緊急を要する状態であったなら
ば,かかる暴れる患者に対しては筋肉注射が選択されたはずであり,
それにもかかわらず,静脈注射が実施されたことからすれば,その時
点の亡P1の状態が急激な精神運動興奮などで緊急を要するほどのも
。,,のであったか疑問があるそうすると▲▲注の投与を行うにしても
投与後一定の間症状を観察し,抑制帯をかけるなど,物理的な対処を
することで十分な対応が行えたものというべきであるから,この意味
においても,短時間(2分間)に2度にわたって1アンプルずつ▲▲
注の静脈注射を行い,亡P1の状態が落ち着いたにもかかわらず,さ
らに,同日午後4時55分ころ,1日当たりの投与量が約57.1m
gにもなる点滴速度で持続点滴投与を開始し,同日午後5時30分か
らはその倍の点滴速度でこれを継続したことは,▲▲注の添付文書記
載の用法に従っていないものというべきである。
bさらに,P4医師は,同日午後10時に▲▲注の点滴速度を毎時1
0ccに変更した後,同月4日午前9時に投与を終了するまでの間,
▲▲注の点滴投与をいったん中止して亡P1の状態・様子を観察した
り,点滴速度を更に遅くして観察をするなどといった措置を全く試み
ず,1日当たり約57.1mgの速度による持続点滴投与を継続した
のであり,▲▲注の用法に従った使用をしていない。
c原告は,せん妄症状の発症初期に▲▲注を大量に投与する方法によ
る治療を提唱する医学文献(甲11)を根拠として,P4医師による
▲▲注の投与にも医学的根拠があると主張する。しかしながら,上記
医学文献が提唱する投与方法は,大量の▲▲注を許容する一方で,投
与には30分以上の間隔をあけるなど,一定の時間をかけて経過観察
をしながら慎重に投与することを求めているのであって,本件のよう
に5mgの静脈注射のわずか2分後に再度5mgを投与し,その後も
1日当たり約77.2mgもの投与を行った症例まで許容する趣旨と
は解されない。なお,同医学文献の著者は,その後に発表した医学文
献(乙29)においては,投与量の上限を1日当たり30mg程度と
相当低く記述している。
(イ)用量違反
(),「()a▲▲注の添付文書甲10には通常成人1回5mg1mL
を1日に1∼2回筋肉内または静脈内注射する。なお,年齢,症状に
より適宜増減する「高齢者では,少量から投与を開始するなど患。」,
者の状態を観察しながら慎重に投与すること〔錐体外路症状等の副。
作用があらわれやすい」と記載されている。。〕
P4医師による亡P1に対する▲▲注投与が適正な使用であると認
められるためには,亡P1の年齢,症状等に照らして同剤の用法・用
量が適正であると認められることが必要である。
b亡P1が▲▲注の投与を受け,悪性症候群を発症した当時,多くの
医学文献(乙13,14ないし19,33)においては,▲▲注の投
与につき,①▲▲注の大量投与,投与量の急激な増加,頻回の投与及
び非経口投与が,悪性症候群の発症の危険性を増大させること,②脳
の器質的障害や身体的疲へい,脱水,栄養障害が,悪性症候群の発症
に影響を与えること,③せん妄に対して▲▲注を投与する際は,悪性
症候群を念頭に置いて臨床症状を慎重に観察すること,④高齢者への
投与については特に注意することが指摘されていた。
亡P1は,高齢者であり,高血圧性脳出血を原因として脳室ドレナ
ージ術を受けたばかりで身体的に疲労し,脳が脆弱性を有していた状
態であり,悪性症候群を発症する危険性が高い状態であったといえる
から,経過観察を含め,一定の時間をかけた慎重な投与を行う必要が
。,,,あったというべきであるしかしながらP4医師は亡P1に対し
添付文書に記載された用量を大きく超える1日当たり最大約77.2
mgもの▲▲注を投与した上,その投与間隔も午後4時43分及び4
5分に各5mgの静脈注射をし,午後4時55分からは1日当たり5
7.1mgの速度で,午後5時30分からはその倍の速度で点滴静注
による投与を継続したのであるから,本件におけるP4医師による亡
P1に対する▲▲注の投与は,同剤の用法・用量を著しく逸した不適
正なものといわざるを得ない。
ウ不適正な使用と被害との間の因果関係は要求されないこと
機構法は「医薬品の副作用」による死亡等について救済給付を行うと,
し(15条1項1号「医薬品の副作用」につき,許可医薬品が適正な),
使用目的に従い適正に使用された場合においてもその許可医薬品により人
に発現する有害な反応をいう(4条6項)と定めているのであるから,不
適正な使用のためにそもそも「医薬品の副作用」に該当しないものについ
ては,因果関係の存否にかかわらず,当然,救済給付を予定しないものと
いうべきである。
()争点()(本件被害が副作用救済給付の不支給事由に当たるか否か)につ22
いて
(被告の主張の要旨)
ア副作用救済給付は対象医薬品の適正な使用による場合であっても,すべ
ての健康被害を対象として行われるものではなく,機構法施行規則3条に
定める不支給事由に該当する場合には給付が行われない。
個別の事例が副作用救済給付の不支給事由に該当する否かの判断は,同
法施行規則3条所定の典型的な例に照らし,受忍を求めることについて,
社会通念上これと同程度の妥当性を有するか否かを基準として行われる。
この場合,必ずしも同条所定の典型例の構成要素である5つの要件(①医
,,薬品が救急救命の状況で使用されること②代替する治療方法がないこと
③医薬品が通常の使用量を超えて使用されること,④医薬品の副作用によ
る健康被害の発生の可能性があらかじめ認識されていたこと,⑤あらかじ
め認識されていた医薬品の副作用による健康被害が発生したこと)のすべ
てを満たしていなくても,他の状況,要因等を踏まえて,総合的な見地か
らその典型例に準ずると認められるか否かを判断することになる。
そうすると,本件において,本件におけるP4医師の▲▲注投与が適正
使用と認められない点を措くとしても,当該投与は機構法施行規則3条の
要件を満たし,副作用救済給付が行われない事例に該当するというべきで
ある。
イそして,医学文献によれば,▲▲注の大量投与及び投与量の急激な増加
によって,悪性症候群の発症の危険性を増大させることは明らかである。
また,仮に原告が主張するように▲▲注の投与による副作用の発現に用量
依存性が認められないとしても,本件において亡P1が▲▲注の大量投与
により悪性症候群を発症したことは否定し難いから,機構法施行規則3条
の要件である「通常の使用量を超えて当該医薬品を使用したことによるも
の」に該当するというべきである。
(原告の主張の要旨)
本件の▲▲注の投与量は,臨床現場における一般的な投与量の範囲内とい
えるから「通常の使用量を超えて当該医薬品を使用した」場合には該当し,
ない。
また,機構法施行規則3条は,医薬品の使用量を健康被害との間の因果関
係が必要であることを明文をもって要求しているところ,▲▲注の投与量と
悪性症候群発症の危険性との間にはいわゆる用量依存性が存在するとの医学
上の根拠はなく,悪性症候群の発生には体質など個人の要因が影響している
ことが指摘されている。したがって「通常の使用量を超えて当該医薬品を,
使用したことにより健康被害が発生した場合」に該当しない。
第3争点に対する判断
1争点()(本件被害が▲▲注の副作用によるものであるか否か)について1
()適正使用の要件等の判断方法について1
ア機構法の医薬品副作用被害救済制度は,医薬品の副作用による健康被害
については,医薬品の特殊性のため,民事法の手続による医薬品の製造販
売業者等の損害賠償責任の追及によって救済を受けることが困難であり,
他方,医薬品の製造販売業者等は,有効かつ安全な医薬品を適切に社会に
供給すべき社会的責任を負うとともに,危険を内在する医薬品を社会に供
給することにより企業活動を営んでいる以上,医薬品の副作用による健康
被害の救済を第一次的に行う社会的責任をも負担すべきものといえること
から,医薬品の製造販売業者等の拠出金によって,医薬品の副作用による
健康被害に対する救済給付を行うことにより,その迅速な救済を図ること
を目的として設けられた制度であると解される(乙2参照。)
したがって,機構法の医薬品副作用被害救済制度は,医療従事者による
医薬品の不適正な使用に起因する健康被害についてまで,医療過誤訴訟に
よる損害賠償責任の追及の難度等を考慮して救済の対象としたものではな
く,そのような医薬品の不適正な使用に起因する健康被害は,同制度によ
る救済の対象に含まれていないものと解するのが相当である。
イ機構法4条6項は,医薬品副作用被害救済制度の対象となる「医薬品の
副作用」について,当該「医薬品により人に発現する有害な反応」である
と定め,医薬品自体が有する反応の有害性に重点を置く一方「適正な使,
用目的に従い適正に使用された場合」という要件を規定しているところ,
不適正な用法・用量の投与に起因して生じた健康被害は,当該医薬品自体
が有する反応の有害性に基づいて発生したものとはいえないことから,上
記適正使用の要件は,上記アの制度の趣旨を踏まえ,かかる不適正な用法
・用量の投与に起因して生じた健康被害を,医薬品副作用被害救済制度の
対象となる「医薬品の副作用」から除外する趣旨で規定されたものと解す
るのが相当である。
そして,機構法16条1項各号は,副作用救済給付の支給につき「医,
薬品の副作用による」健康被害により疾病,障害又は死亡の被害を受けた
者又はその遺族等がその請求権を有し,これらの者の請求に基づき支給決
定をするものと規定しており,副作用救済給付の支給決定の授益的処分と
しての性質及びその根拠法規の上記文言・構造等に照らすと,当該被害が
機構法4条6項に規定する「医薬品の副作用」によるものであること(当
該健康被害が許可医薬品が適正に使用された場合においてもその許可医薬
品により人に発現する有害な反応により生じたものであること)について
,,の立証責任は副作用救済給付の請求権の権利発生事由に係るものとして
副作用救済給付を請求する者がこれを負うものと解するのが相当である。
ウ他方,機構法16条2項及び同法施行規則3条は,同法4条6項の要件
に該当する場合であっても,医薬品の副作用による健康被害が,その者の
救命のためにやむを得ず通常の使用量を超えて当該医薬品を使用したこと
によるものであり,かつ,当該健康被害の発生があらかじめ認識されてい
た場合その他これに準ずると認められる場合,すなわち,不支給事由の存
在が認められる場合には,副作用救済給付を行わないと定めている。
そして,これらの機構法の規定の構造等に照らすと,上記の不支給事由
は「医薬品の副作用」による健康被害に係る副作用救済給付の請求権の,
権利障害事由に該当するものといえるので,この不支給事由の存在につい
ては,被告が立証責任を負うものと解される。
エこのような医薬品副作用被害救済制度及び適正使用の要件の趣旨,機構
法の規定の文言・構造等によれば,(ア)医薬品の投与がされた場合に生じ
た健康被害が,機構法4条6項の「医薬品の副作用」によるものと認めら
れるためには,①当該医薬品の投与が適正使用に該当すると認められ,か
つ,当該健康被害がその適正使用によって生じたと認められる場合,ある
いは,②当該医薬品の投与が適正使用に該当するとは認められないが,当
該健康被害が,その投与のうち,不適正な使用に係る部分によるのではな
く,適正使用に係る部分によって生じたものと認められる場合のいずれか
に該当することを要するものであり,(イ)上記イの立証責任の帰属を併せ
考えると,上記①(医薬品の投与が適正使用に該当する場合)又は上記②
(),医薬品の投与が適正使用に該当しない場合のいずれの要件についても
副作用救済給付を請求する者がその立証責任を負うものと解するのが相当
である。
そして,医薬品の投与が適正使用といえるか否かの判断に当たっては,
厚生労働大臣の承認を受けた添付文書記載の用量・用法の遵守の有無のみ
ならず,投薬当時の我が国の医学(薬理学・薬学を含む。以下同じ)の。
水準及び医療の実情,当該患者の年齢・身体状況及び疾病の性質・状態等
の諸般の事情を考慮した上での総合的な見地から,個々の事案ごとに個別
具体的に判断する必要があるというべきである。なお,投薬の用量につい
て,適正使用の要件に該当するのは,厚生労働大臣の承認を受けた添付文
書記載の使用量の範囲内で投薬がされている場合が原則であるが,これを
超過した用量の投薬がされた場合でも,上記の諸般の事情を総合考慮した
上で「医薬品の副作用」による被害と認められる場合があり得ると解さ,
れ,このことは,上記ウの機構法及び同法施行規則の規定上も前提とされ
ているといえる。
,,,,オこれに対し原告は①医薬品の投与が一見明白に不適切でありかつ
②不適切な投与により被害が発生したことが明らかであって,③被害者が
民事訴訟において投薬を行った医療機関の責任を容易に立証できる場合で
ない限り,適正使用の要件を充足する旨主張する。
しかしながら,原告の所論は,医薬品の不適正な使用に起因する健康被
害についても,その立証の困難のために医療過誤訴訟による損害賠償責任
の追及が困難な場合には,副作用救済給付制度において補完的に救済の対
象とすべきことを前提として,適正使用の要件に関する立証責任を被告に
転換しようとするものというべきところ,上記ア及びイに述べた副作用救
済給付制度の趣旨,適正使用の要件の趣旨・立証責任等に照らし,所論は
その前提を欠くものであり,機構法の規定の文言・構造等とも整合せず,
採用することができない。
()本件の▲▲注の投与等に係る事実経過及び医学的知見等2
そこで,上記()の判断の枠組みを前提として,まず,本件における亡P1
1に対する▲▲注の投与が適正使用に当たるか否かについて検討するに,そ
の基礎となる事実として,前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨
によれば,次の事実が認められる。
ア亡P1に対する▲▲注の投与及びその前後の状況
(ア)亡P1に対する▲▲注の投与の開始前の状況
亡P1(身長172cm,体重90kg)は,1月31日午後8時こ
ろ帰宅した後に頭痛があり,同日午後10時20分ころ,嘔吐及び意識
障害が見られたことから,救急車を呼び,同日午後11時10分ころ,
本件病院の救急外来に搬送された。亡P1には,本件病院への搬入時,
右片麻痺が見られたほか,半昏睡から昏睡状態(Ⅲ200ないしⅢ30
0)の意識状態になっており,本件病院におけるCT検査の結果,左脳
室穿破を伴う左視床出血が発見されたことから,脳外科に転科され,P
4医師がその治療を担当することとなった。P4医師は,左脳室穿破を
伴う左視床出血が発見され,亡P1が急性水頭症を呈しており,胸部X
線検査により心肥大が見られたことから,亡P1が高血圧性の脳出血を
発症したと診断し,また,右片麻痺が見られたことから,上記脳室穿を
伴う脳内出血によって脳室内に髄液が充満し,内包後脚の部位が圧迫・
損傷されている可能性があると考え,同月1日午前2時ころ,脳室ドレ
ナージ術(脳室内に誘導管(ドレーン)を置き,脳室内の滲出液,血液
を外方に向かって持続的に誘導する治療)を施行し,髄液の廃液を持続
的に実施するとともに,除圧剤を投与して血圧の制御をする治療をする
こととし,亡P1に対し,上記各治療を継続するため,頭部左側から脳
室内に約6cmの深さにドレーンを挿入した上で留置し,さらに,輸液
・投薬のための点滴静脈注射(DIV)用の点滴チューブ,排尿管理の
ための排尿カテーテルを留置したほか,酸素マスク及び血圧・脈拍等を
測定する24時間モニターを装着した(甲1ないし3,乙32)。
(イ)亡P1に対する▲▲注の投与の開始時の状況
P4医師は,亡P1に対し,脳室ドレナージ術の排液量の増減,一時
中止を経て,上記(ア)の治療を継続し,その結果,亡P1は,意識レベ
ルが上昇するなど改善傾向が見られ,2月1日午後5時ころには,麻痺
もなくなり,血圧も120台に低下・安定し,意識レベルも更に改善し
て氏名・年齢を正確に返答できる状態に回復したが,同日午後7時ころ
になると,血圧が160台にまで上昇し,体動が激しくなり,点滴チュ
ーブを抜去したり,頭部のガーゼをはがすなどの行動が発現するなど不
穏状態に陥った。その後,亡P1は,同日午後8時ころ及び午後10時
ころ,体動が激しくなり,同月2日午前10時ころ,再度体動が激しく
なり,酸素マスクを外し,同日午後0時ころ及び午後1時ころ,体動が
激しくなり,ベッドから起き上がろうとしたり,点滴チューブを抜去し
ようとしたりし,同日午後4時ころには「治療に疑問がある。殺され,
る」と言って暴れ,点滴チューブを抜去するなどの行動に及ぶといっ。
,,,た不穏状態に陥りその結果亡P1により24時間モニターが外され
血圧等を継続して測定することができなくなった。P4医師は,同日午
後4時20分ころ,せん妄に関連する合併症により脳内出血に対する治
療の継続ができなくなったり,脳室内に留置されたドレーンの移動・抜
去による事故を回避するため,亡P1の鎮静を図るべく,○○(向精神
薬。ベンゾジアゼピン系安定薬で,主成分はジアゼパム)1アンプルを
静脈注射した上で説得を試みたが,亡P1の興奮はおさまらず,同日午
後4時30分には,▲▲注5アンプル(1アンプル内に▲▲注5mgが
入っている)を100mlの生理食塩水に混ぜた点滴液の毎時10c。
cの点滴速度での持続点滴投与を開始するよう指示をしたが,同日午後
4時43分ころ,亡P1が再度留置された点滴チューブを自己抜去した
ため,点滴による投与を断念し,▲▲注1アンプルを静脈注射により投
与した。P4医師は,同日午後4時45分ころ,亡P1がやや落ち着い
ていたものの意味不明の言動があったことから,▲▲注1アンプルを静
脈注射により投与し,さらに,同日午後4時50分,亡P1の身体は落
ち着いてたものの多弁であったことから,更に強い鎮静作用が必要であ
ると考え,○○1アンプルを静脈注射した。P4医師は,同日午後4時
55分ころ,亡P1がやや傾眠傾向になっていたことを確認の上,再び
不穏状態に陥らないようにするため,▲▲注1アンプルを100mlの
生理食塩水に溶かした点滴液の持続点滴投与を開始した。同日午後5時
,,2分ころ血圧等を測定するため24時間モニターが亡P1に装着され
以後,亡P1に対してはSpO2(動脈血酸素飽和度,意識レベル,)
血圧,体温,瞳孔,麻痺等の身体症状及び排尿量が連続的(又は1時間
ごとのバイタルサインのチェック時)に測定・記録された(甲3,乙。
32)
(ウ)亡P1に対する2月2日午後5時30分以降の▲▲注の投与
P4医師は,2月2日午後5時30分ころには,亡P1が再び暴れ出
したため,▲▲注の点滴液の点滴速度を毎時20ccに増やしたが,同
日午後5時45分ころには,亡P1が体幹及び四肢に抑制がされた状態
で起き上がろうとしたことから,○○1アンプルを静脈注射し,さらに
○○5アンプルを100mlの生理食塩水に溶かした点滴液の毎時10
ccの速度による持続点滴投与を始めた。亡P1は,同日午後6時ころ
は「ちきしょう,ちきしょう」と怒り,同日午後8時ころには体動が。
活発となるという不穏行動が見られたが,同日午後9時ころには,意味
不明なことを言うものの,不穏行動は見られなくなった(甲3,乙3。
2)
(エ)亡P1に対する2月2日午後10時以降の▲▲注の投与
P4医師は,2月2日午後10時ころ,亡P1の脳室ドレナージによ
る髄液の排液量が多くなったことから,看護師に呼ばれ,亡P1を診察
し,その際,▲▲注の点滴液の点滴速度を毎時10ccに減らした。亡
P1は,同日午後11時ころ,意識レベルはⅠ1ないしⅠ2であったも
のの「かなりぼーっとしている」状態になり,2月3日午前1時ころ,
には,上下肢運動が見られ,また,同日午前6時ころには体動が激しく
,,,なったものの同日午前7時ころ入眠しているのか不明な状態になり
同日午前9時には意識レベルがⅡ10ないしⅡ20に,同日午前10時
には意識レベルがⅡ20ないしⅡ30になったほか,瞳孔縮瞳が見られ
た。P4医師は,亡P1が半昏睡状態にあり瞳孔縮瞳が見られたことか
ら,亡P1の鎮静につき,▲▲注の投与をそのままの点滴速度で持続し
て○○の投与を中止する方向に治療方針を変更し,○○の点滴液の点滴
速度を毎時5ccに減らした。亡P1の意識レベルは,同日午前11時
ころから午後4時ころまでは,Ⅱ10ないしⅡ20の状態であった。P
4医師は,同日午後3時ころ,更に○○の点滴液の点滴速度を毎時3c
cに減らしたが,亡P1の意識レベルは,同日午後6時ころにⅡ20な
いしⅡ30の状態(傾眠傾向)に低下し,同日午後8時ころにはⅢ10
0の状態にまで低下した。P4医師は,そのころ,○○の持続点滴投与
を中止した。亡P1の意識レベルは,同日午後9時ころ,Ⅱ10の状態
にまで回復したが,同日午後11時ころ,再びⅢ100ないしⅢ200
の状態(鎮静の効果が強く見られ開眼しない状態)に低下し,2月4日
午前0時ころも,Ⅲ100の状態(刺激をしても,払いのける動作はす
るが,覚醒しない状態)のまま変化なく,同日午前1時ころも,Ⅲ10
0の状態のままであった。亡P1の意識レベルは,同日午前2時ころ,
,「」,Ⅱ20に回復し看護師の呼びかけに大丈夫と返答する状態になり
身体症状も著名な発汗がある程度であった。P4医師は,そのころ,脳
室ドレナージの排液量が増加したことからコールされたが,亡P1につ
いて何らの指示・処置をしていない。
亡P1は,同日午前5時ころ,意識レベルがⅡ30ないしⅢ100の
状態に低下し,呼びかけに対し「あー」という反応を,吸引処置に対し
顔をしかめる反応を示すにとどまるようになり,同日午前6時ころ及び
午前7時ころの吸引処置に対しても同様の反応しか示さず,意識レベル
もⅢ100の状態が続き,同日午前8時ころには意識レベルがⅢ100
ないしⅢ200の状態に低下した(甲3,乙32)。
(オ)亡P1に対する▲▲注の投与の中止
P4医師は,2月4日午前9時ころ,亡P1に対する▲▲注の持続点
滴投与を中止した。当時の亡P1の意識レベルは,Ⅱ20ないしⅡ30
の状態で,瞳孔縮瞳やいびき様呼吸が見られたものの,離握手反応が確
認され,看護師の呼びかけにも「ハイ大丈夫」と返答していた。亡P1
の意識レベルは,同日午前10時ころ,Ⅲ100に低下し,いびき様呼
吸が見られ,同日午前11時ころから午後0時ころまでの間に,Ⅱ20
ないし30になり,同日午後1時ころにはⅠ3ないしⅡ10,同日午後
2時ころ及び午後3時ころにはⅡ10ないし20であったが,同日午後
4時ころにはⅢ100ないしⅢ200に低下し,同日午後5時以降はⅡ
10ないしⅡ30の範囲内で推移していた。
P4医師は,同月4日午前9時ころ,▲▲の持続点滴投与を中止した
後の経過及びその後の亡P1のCT検査の結果から,翌5日には脳室内
のドレーンを抜去できると考え,同月4日午後9時ころドレーンに髄液
を排液しない処置を施した上で,経過観察を行い,同月5日午後0時,
留置されたドレーンを抜去した(甲3,乙32)。
(カ)亡P1に対する▲▲注の投与の中止後の経過
亡P1の意識レベルは,▲▲注の投与が中止された後,同月9日に悪
性症候群の発症が確認されるまでの間,同月5日午前8時ころ,同日午
前9時ころ,同日午後3時ころ,同日午後4時ころ及び同月8日午後2
時ころには,Ⅰ2ないしⅠ3まで回復していたが,それ以外は,おおむ
ねⅠ3ないしⅡ30まで低下した状態が継続しており,同月6日午後7
時ころ及び午後8時ころにはⅢ100にまで低下していた(甲3,乙。
32)
イ▲▲注の添付文書の用法・用量及び副作用に係る記載
▲▲注の添付文書(甲10)には,①急激な精神運動興奮などで緊急の
,,場合に用いる際の用量・用法について1回5mgを1日に1ないし2回
,,筋肉注射又は静脈内注射することと記載され②その重大な副作用として
,,,,,悪性症候群がありその症状として無動緘然強度の筋強剛嚥下困難
頻脈,血圧の変動,発汗等が発現し,それに引き続き発熱がみられる場合
には,投与を中止し,体冷却,水分補給等の全身管理とともに適切な処置
が必要であると記載されている。
ウ▲▲注の投与及びせん妄の治療に係る医学的知見(なお,一部の医学文
献につき,別紙4「医学文献(抄」()ないし()の各要旨参照))118
せん妄の治療に係る▲▲注の投与について,掲記の証拠によれば,我が
国の医学文献においては,次の医学的知見がそれぞれ記載されている。
(ア)せん妄による興奮状態の鎮静等のための抗精神薬として▲▲注の有
効性を指摘するものが多い一方で,多数の医学文献において,①▲▲注
の大量投与及び投与量の急激な増加が,悪性症候群の発症の危険性を増
大させること(乙13ないし15,23,26,27,33,②脳に)
器質性障害を有する患者や身体が極度に疲労するなど全身状態の悪い患
,(,,,),者は悪性症候群の発症頻度が高いこと乙19232427
③せん妄に対して▲▲注を投与する際は,悪性症候群の発症の危険に注
意して,臨床症状を慎重に観察すべきこと(乙20(別紙4(),15))
,,④▲▲注の投与は一般に少量から投与するなどの慎重な使用が必要で
高齢者への投与は悪性症候群の発症の危険が高く,特に慎重に行う必要
があること(乙18,21(別紙4()),23)等の指摘がされている16
(,,,原告は用量依存性を否定する根拠として甲25の文献を挙げるが
人工呼吸患者への▲▲注の持続静注の毎時の投与量等に関する同文献の
記述中に,せん妄患者への同薬剤の投与に係る用量依存性を否定する根
拠となり得るものは含まれていない。。)
(イ)欧米の報告例等に依拠して▲▲注の大量投与を推奨する文献(甲1
1(別紙4())もある一方で,その著者自らが,別の文献では,我1)
が国では欧米のような大量投与の報告はほとんどみられず,自らの勤務
する病院では点滴静注で1日30mg位までは安全に使用でき効果を挙
げてきたとし(乙28,29(別紙4(),(),他の著者の文献で1718))
も,欧米ではかなり大量の投与を提案する意見があるが,国内では1日
50mg程度までは使用してみてもよいとする(甲17(別紙4())4)
など,欧米の報告に比べて国内では日本人患者への投与量について慎重
な意見が支配的である(なお,アジア人に対しては欧米人より抗精神薬
の用量が少ない方がよいとの医学的知見が存在することは,P4医師も
別件訴訟の証言の中で認めているところである(乙32。)。)
(ウ)我が国の臨床における日本人の術後せん妄患者の薬物治療(本件と
は異質の精神病患者及び人工呼吸患者の薬物治療を含まない)におけ。
る適切な投与量については,①1日当たりの投与量の上限に言及するも
のとして,点滴静注30mg位までは安全に使用でき効果を挙げてきた
とするもの(前述の乙28,29(別紙4(),(),35mgまで1718))
の静脈注射では重度の不整脈と関連することが稀との報告を指摘するも
の(甲24(別紙4(),上限を40mg(5∼40mg)とするも7))
の(甲15(別紙4(),上限を50mg(20∼50mg,50m2))
g程度まで,5∼50mg)とするもの(甲11,17,18(別紙4
(),(),())等があり,②特に鎮静を維持するための用法及び用145)
量について言及するものとして,5ないし10mgを持続点滴から投与
し,又は50mlの生理食塩水に希釈して側管から投与するとするもの
(甲26(別紙4(),甲31(別紙4(),なお数日のせん妄が912)))
見込まれる場合の鎮静として5ないし20mgとするもの乙20別,((
紙4(),1時間当たり0.63ないし1.25mgを点滴投与し,15))
必要に応じて更に高用量を使うこともまれではないとするもの(甲29
(別紙4(),5ないし10mgを6時間かけて,又は6時間ごと11))
に投与するとするもの(甲16(別紙4()。なお,同文献における投3
与量の上限に係る記載の趣旨については,後記()エ(ウ)参照)等が3)
ある。
(エ)せん妄患者の薬物治療における投与方法についても一定の間隔例,(
えば30分∼1時間等)をおいて鎮静効果や身体状態等を見ながら必要
に応じて一定の量(例えば5mg等)の投与又は追加投与を行うべきと
するものが多く(甲11,16,18,26,28,31,乙21(別
紙4(),(),(),(),(),(),(),また,上記の医学文献1359101216))
においては,せん妄の患者に対する鎮静のための▲▲注の投与は,患者
の鎮静効果や身体状態等に応じて必要最小限度にとどめるべきものとさ
れ,そのことを旨として用量・用法や経過観察等についての記述がされ
ている(なお,原告の指摘に係る個別の文献につき,後記()エ参照。3)
()本件の▲▲注の投与が適正使用に当たるか否かの検討3
以上の諸事情を前提として,本件における添付文書記載の用量を超えた亡
,,P1に対する▲▲注の投与が当該医薬品の適正使用に当たるか否かに関し
以下検討する。
ア亡P1は,2月2日ないし4日の投薬当時,高齢(61歳)で,心血管
に由来すると考えられる高血圧性脳出血を原因として脳室ドレナージ術を
受けた直後で,身体的にかなり疲へいしており,脳出血の部位・程度も,
脳室内穿破を伴う左視床からの出血であって,脳の器質自体に傷害を与え
るためその脆弱性が配慮されるべき状態であったといえ,上記()ウの医2
学的知見に照らし,▲▲注を含む抗ドーパミン力価が高い薬剤の投与に当
たっては悪性症候群の発症の危険に注意を要する状態にあったといえるの
,,,で悪性症候群の発症・対応に備え頻繁な経過観察を実施するとともに
これらの薬剤の投与量を必要最小限に抑えるべく慎重な投与を行う必要が
あったものというべきである。
イまず,2月4日午前9時にP4医師による▲▲注の投与が中止される前
の約1日間の投与,特に同月3日午前10時以降の▲▲注の投与について
みるに,前記()ア(エ)のとおり,亡P1は,同日午前6時ころに体動が2
あったものの,同日午前7時ころには,鎮静スケールにおける鎮静状態が
維持されていたといえ,同日午前9時ころ,意識レベルが低下し,同日午
前10時ころ,更に意識レベルが低下し,P4医師も,十分な鎮静が図ら
れていると判断し,同月2日午後5時45分以降続けられていた○○の持
続点滴を徐々に減量して中止すべくその点滴速度を減らした経緯があるこ
とからすれば,亡P1は,同月3日午前10時ころには既に十分な鎮静が
図られ,その維持がされていたと評価できる状態であったと認められ,ま
た,P4医師も,同様の認識に至っていたものと認められる。ところで,
前記()ウ(エ)のとおり,せん妄の患者に対する鎮静のための▲▲注の投2
与は必要最小限度にとどめるべきであり,上記アのとおり亡P1について
はその年齢・身体状態に照らして慎重な投与が必要とされる状態にあった
ことからすれば,P4医師は,亡P1に対する▲▲注の投与の目的が鎮静
状態を維持するための投与とされるべき状況になった同月3日午前10時
以降の時点においては,それまでの投与のように緊急事態において許容さ
れる高用量による使用を継続するのではなく,鎮静の維持を図るために必
要最小限度の投与量を改めて検討し,適度の減量等を行うなど,必要最小
限度の範囲に限定して投与を行う必要があったというべきである。
しかるに,P4医師は,同月2日午後10時以降に12時間にわたり継
続していた毎時2.38mg(1日当たりの投与量57.1mg)の持続
点滴投与を,既に十分な鎮静が図られていた同月3日午前10時以降も,
同月4日午前9時までの23時間にわたり,投与量の減量や一時中断を試
みることなく,合計54.7mg(××h=)に25mg/105ml10cc2354.7mg
達するまで継続したものであり,その投与量は,前記()イの▲▲注の添2
付文書(甲10)に記載された用量(緊急の場合に1回5mgを1日に1
ないし2回)及び前記()ウ(ウ)の医学文献において,我が国の臨床にお2
ける日本人の術後せん妄患者の薬物治療における適切な投与量とされる1
日当たりの上限量(30ないし50mg)を超えるものであり,また,特
に鎮静を維持するための薬物療法として投与される▲▲注の用量(5ない
し10mg(甲26(別紙4(),甲31(別紙4(),5ないし2912)))
0mg(乙20(別紙4(),原則として1時間当たり0.63ない15))
し1.25mgの点滴投与(甲29(別紙4(),5ないし10mg11))
を6時間かけて又は6時間ごとに投与(甲16(別紙4()。前記()ウ32)
(ウ)参照)のいずれをも超えるものであった。そして,亡P1は,同月3
,,(),日午前6時以降には不穏行動に及んでおらずSASの3鎮静状態
RASSの−2(浅い鎮静状態)ないし−3(中等度鎮静状態)の鎮静状
態が維持されていたといえることに加え,同日午前10時以降には,鎮静
スケールの4(眠っているが刺激に対して強く反応する)ないし5(眠っ
ており刺激に対して反応が鈍い)鎮静状態にあったといえ,同日午後8時
ころには,鎮静効果の過剰のため意識レベルの低下が見られ,同日午後1
1時以降は,鎮静スケールの5(眠っており刺激に対して反応が鈍い)な
いし6(無反応)の状態に陥っていたといえ,医学文献(甲29)におけ
る鎮静の目安(不穏状態のため5で管理せざるを得ない場合もあるが,「
一般には3ないし4を目標とする」もの)を超える過剰な鎮静がされた状
態が相当の時間継続していたといえることからすれば,上記のような高用
量の▲▲注の投与を継続して行う必要があったということはできない。
このように,P4医師による▲▲注の投与量・経過,亡P1の年齢,身
体状態,せん妄の症状及び鎮静状態の推移,せん妄の患者に対する▲▲注
の投与に係る医学的知見等を総合的に考慮すれば,P4医師が,亡P1に
同月3日午前10時以降,十分な鎮静が図られていたにもかかわらず,▲
▲注を毎時2.48mgの点滴速度のまま,これを減量することなく,同
月4日午前9時までの23時間にわたり持続点滴によって合計54.7m
gに達するまで継続して行った投与については,その症状に応じて適切な
用量・用法を遵守してされたものということはできず(原告の主張に係る
医師の裁量を考慮しても,合理的な裁量の範囲内の措置と認めることはで
きない,上記▲▲注の投与が適正な使用であったということはできな。)
い。
ウさらに,2月2日午後4時43分にP4医師による▲▲注の投与が開始
された後の投与についてみるに,前記()ア(イ)によれば,P4医師は,2
点滴チューブを抜去するなどせん妄による興奮状態にあった亡P1の鎮静
を図るため,午後4時43分及び45分の2回にわたり▲▲注を静脈注射
により5mgずつ投与し,その鎮静効果によってやや傾眠傾向にあった亡
P1に対し,さらに,同日午後4時55分以降,▲▲注の持続点滴投与を
毎時2.38mg(1日当たり57.1mg)の投与量で継続し,同日午
後10時までに亡P1の状態に応じて点滴速度の増減の調節を行ったもの
の,翌3日午前10時以降に十分な鎮静が図られた後も従前の点滴速度の
まま持続点滴投与を継続し,結局,投与開始から同月3日午前10時まで
の約17時間強で,合計約61.1mgの▲▲注の投与を行ったものであ
37.4mg25mg/105mlる投与開始後の24時間では合計約772mg+(,.((
××(+)=)=。10cc16h43/60min39.8mg77.2mg))
既に十分な鎮静が図られた同月3日午前10時から投与中止までの23
時間にわたる▲▲注の投与が適正使用と認められないことは,上記ア及び
イのとおりであるところ,①投与開始から同月3日午前10時までの約1
,(.),7時間強にわたる▲▲注の投与もその投与の総量約611mgが
上記のとおり,前記()イの▲▲注の添付文書(甲10)に記載された用2
量(緊急の場合に1回5mgを1日に1ないし2回)及び同()ウ(ウ)①2
の医学文献においてせん妄患者に投与される1日量の上限とされる用量
(文献により15mg,30mg,35mg,40mg等と分かれ,最大
でも50mg)のいずれをも超えるものであり,しかも,②上記アのとお
り,亡P1の年齢,身体状態及び病状等に照らし,悪性症候群が発症する
危険因子を備え,その発症に相当程度の注意を要する状況の下での投与で
ある以上,頻繁な経過観察と並行して投与量を必要最小限に抑える慎重な
投与を行う必要があったにもかかわらず,同月3日午前10時の時点にお
いて,既に約17時間強で合計約61.1mgという▲▲注の高用量の投
与を行っていたのに加え,当該時点以降も,▲▲注の投与量を減量するこ
となく,高用量のままその投与を継続し,その後の23時間で合計54.
7mgの投与に至っており,これが適正な使用とはいえないことは前記イ
のとおりであり,これらの諸般の事情を総合的に考慮すれば,P4医師に
よる亡P1に対する▲▲注の投与は,その開始から中止までの一連の経過
の全体においてみても,その症状に応じて適切な用量・用法を遵守してさ
(,れたものということはできず原告の主張に係る医師の裁量を考慮しても
合理的な裁量の範囲内の措置と認めることはできない,適正使用に当。)
たるものとは認められないといわざるを得ない。
エこの点に関し,原告が▲▲注の大量投与を正当化する根拠として指摘す
る医学文献等について,以下検討する。
(ア)まず,甲11(別紙4())の文献は,別紙4()のとおり,①同文11
献は,(a)せん妄症状の発症当初に,ある程度症状が治まるまで,▲▲
注5mgを30分ないし1時間の間隔で投与することとし,その後に1
日当たりの投与量の上限を50mgとした持続点滴投与をする方法を紹
介するものであり,(b)前記()ウ(イ)のとおり,その著者自らが,別2
の文献の中で,我が国では欧米のような大量投与の報告はほとんどみら
れず,安全かつ有効な点滴静注の上限を1日30mg位としていること
からすれば,②本件のように,(a)5mgの静脈注射の5分後に再度5
mgを投与し,その後に持続点滴投与を行い,投与の開始から約17時
間で合計約61.1mgの投与を行い,(b)さらに十分な鎮静が図られ
た同月3日午前10時から23時間で合計約54.7mgを投与するこ
とまで許容する根拠となり得るものとは解されない(なお,甲12及び
13の文献は,甲11を引用するものにとどまる。。)
(イ)甲14及び甲19の各文献は,精神分裂病の治療について▲▲注の
大量投与を推奨する記述を含むが,精神分裂病等の精神疾患の急性期の
対応の問題と,せん妄状態の治療等の救急医療における精神医学的問題
とは一般に区別して論じられ(甲15(別紙4())参照,相対的に2)
後者に対する治療に用いる場合の用量を低く設定していること,甲19
は精神分裂病患者に対する経口又は筋肉注射による投与について述べた
文献であって,いずれも,本件のような術後せん妄の治療における持続
点滴投与による▲▲注の大量投与を正当化し得るものとは解されない。
甲15(別紙4())の文献も,精神科救急の幻覚妄想の治療について2
は▲▲注の大量投与を推奨する記述を含むが,本件のような術後せん妄
の治療については,1日当たりの投与量を5ないし40mgとするにと
。,,どまるなお精神科医の文献では大量投与を推奨する傾向がある一方
外科医の文献では比較的低用量の投与を推奨する傾向があることは,前
述のアジア人と欧米人との用量の差異と同様,P4医師も別件訴訟の証
言の中で認めているところである(乙32。)
(ウ)甲16(別紙4())の文献には「鎮静の維持には,5∼10(最3,
大20)mgを6時間かけて,または6時間おきに投与する」との記。
載があるが,同記載は,その前後の文脈を考慮すれば,6時間ごとに投
与できる最大量が20mgであることを示すとともに,5ないし10m
gの投与を6時間おきとすることを示しており,1日当たりの投与量の
上限を40mg程度として,効果が不良の場合の投与量の上限(最大で
も50mg程度)と比較して低用量の投与を相当とする趣旨で記載され
ているものと解するのが相当である。また,効果が不良の場合の投与に
ついても,30分の投与間隔をおくとしており,本件の上記投与例を許
容する根拠となり得るものとは解されない。
また,甲17(別紙4())の文献は,我が国の臨床での1日当たり4
の最大投与量は50mgとしており(これを超える投与量の許容は海外
の意見として紹介するにとどまる,甲18(別紙4())の文献も,。)5
同様に1日当たりの最大投与量は50mgとしており,本件の上記投与
例まで許容する根拠となり得るものとは解されない。
(エ)甲20,33(別紙4(),())の各文献は,米国の医学論文及613
び米国のガイドラインの翻訳であり,我が国の臨床における日本人患者
に対する投与について論じたものではなく,他の文献でも海外ではかな
り大量の投与を提案する意見もあるが国内では1日50mg程度までは
(()),使用してみてもよいとされている甲17別紙4()参照ように4
我が国の医療水準において日本人患者への同様の量の投与が許容される
ことの根拠となり得るものではない(なお,前者の論文でも,用量は年
齢,身長,体重等のいくつかの要因に依存し,筋肉注射又は静脈注射の
方法が用いられる場合には,血中濃度が急激に上昇するので,経口投与
の場合より用量を少なくする必要があるとの指摘がされている。。)
(オ)甲24(別紙4())の文献は,35mgまでの静脈注射では重度7
の不整脈と関連することが稀との報告等を指摘するにとどまり,本件の
上記投与例まで許容する根拠となり得るものとは解されない。
(カ)甲25(別紙4())の文献は,人工呼吸患者に対する▲▲注の持8
続静注の毎時の投与量及び間歇的静注の投与の量・間隔等に言及したも
のにとどまり,その記述をもって,本件のような術後せん妄患者の治療
における鎮静効果の有無・程度に応じた1日当たりの投与量の上限を導
き得るものとは解されない。
(キ)甲26,28及び31(別紙4(),()及び())の各文献は,91012
▲▲注の投与について,一定の間隔をおいて鎮静効果等を見ながら必要
に応じて一定の量の投与又は追加投与を行うべきである等とし,甲29
(別紙4())の文献は,著者の勤務する病院では,攻撃性が持続する11
と予測される▲▲注の追加投与として毎時0.63ないし1.25mg
程度の点滴投与の例が多いとし,甲34(別紙())の文献は,▲▲注14
の静脈注射又は点滴投与は1日量が35mgを超える場合には心電図の
確認が必要とするが,いずれも,その記載内容に照らし,本件の上記投
与例が許容されることの根拠となるものとは解されない。
(ク)その余の甲号各証の医学文献(甲21ないし23)も,その記載内
容に照らし,本件の上記投与例が許容されることの根拠となるものとは
解されない。
(ケ)なお,P3病院脳神経外科医師P5の意見書(甲8)には,▲▲の
添付文書に記載された投与量を超える用量の投与がされることは臨床上
珍しいことではなく,①P4医師の▲▲注の投与量は,最大で1日約5
6mgであるところ,②海外の論文である甲19(別紙4())の医学9
文献には,精神分裂病の患者の臨床的管理において1日当たり100m
gの▲▲注を投与することがある旨の記載があり,③国内にも,甲11
(別紙4())の医学文献のように,術後の不穏状態となった患者に対1
する▲▲注の点滴投与を推奨する文献があることから,上記①の投与量
,(),は上記②の医学文献の示す限界量100mgの範囲内にあるので
P4医師の▲▲注の投与法・投与量は医療水準に適った適正なものであ
るとの意見が記載されている。
,「」しかしながら(a)別紙2亡P1に対する▲▲注の投与量について
のとおり,投与が開始された2月2日午後4時43分以降の24時間に
P4医師が亡P1に対し投与した▲▲注の総量は77.2mg(前記ウ
参照であるところ(b)上記意見書が根拠とする上記①の医学文献甲),(
19)は,精神分裂病の治療における▲▲注の投与量について述べた欧
米の文献であり,本件のような国内の術後せん妄の治療について同様の
大量投与を正当化し得るものではないことは,上記(イ)に説示したとお
りであり,(b)上記意見書が根拠とする上記②の医学文献(甲11(別
紙4())も,その著者自らが,他の文献の中で,我が国では欧米の1)
ような大量投与の報告は見当たらず,安全かつ有効な点滴静注の上限を
30mgとするなど,当該文献中の投与の間隔及び投与量の上限に関す
る記述に照らしても,本件の上記投与例まで許容する根拠となり得るも
のとは解されないことは、上記(ア)に説示したとおりである。
オ小括
以上によれば,前記ウのとおり,P4医師の亡P1に対する▲▲注の投
与は,その開始から中止までの一連の経過の全体において,適正使用に当
たるということはできない。
()本件被害が適正使用に係る投与に起因して発生したものか否かの検討4
ア上記()エのとおり,通常の使用量を超えた医薬品の投与が適正使用に1
該当すると認められない場合に,なお,当該健康被害が当該医薬品の副作
用によるものと認められるためには,当該健康被害が,当該投与のうち,
不適正な使用に係る部分によるのではなく,適正使用に係る部分によって
発生したものと認められることを要するものと解される。
そこで,本件被害が,本件の▲▲注の投与の一部である適正使用の範囲
内の投与(投与開始後の一定時間内の投与)に起因して発生したものと認
められるか否かについて,以下,検討する。
イ訴訟上の因果関係の立証は,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特
定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証
明することであり,一点の疑義も許されない自然科学的証明であることを
要するものではないが,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に
真実性の確信を持ち得るものであることを要するものと解される(最高裁
昭和48年(オ)第517号同50年10月24日第二小法廷判決・民集
29巻9号1417頁参照。)
ウ上記()イの認定によれば,少なくとも2月3日午前10時の時点以降3
の▲▲注の投与について適正使用に係る部分が含まれる余地はないという
べきところ,上記時点では,従前の投与の効果によって既に十分な鎮静が
図られた状態にあったにもかかわらず,投与量が減量されることなく毎時
248mgの点滴速度のまま翌日午前9時までの23時間に前記().,,2
イの▲▲注の添付文書に記載された用量(1日5ないし10mg)及び同
()ウ(ウ)②の医学文献においてせん妄患者の鎮静を維持するための投与2
量とされる用量(上記()イ参照)のいずれをも超える大量(54.7m3
gの持続点滴投与が継続されたこと上記時点以降の投与の投与時間2),(
3時間)及び投与量(54.7mg)は,上記時点の前後を通じた総投与
時間(40時間強)及び総投与量(115.9mg)と比較して,時間的
・数量的にも枢要な部分を占めていること,悪性症候群の発症は投与の中
止の約5日後であること等を併せ考えると,本件において,▲▲注の投与
による効果を上記時点の先後で截然と区別し,そのいずれの薬効の反応に
よって本件被害が発生したのかを判断することは証拠上不可能であるとい
わざるを得ない。
また,悪性症候群の危険因子について述べた医学文献の中には,▲▲注
の投与における悪性症候群の発症要因として急激な増量を挙げるもの乙,(
22,23,27,33)のほか,抗精神病薬の大量投与自体を悪性症候
群の発症要因とするものも多く(乙13ないし15,27,海外におけ)
る研究報告においても,大量投与自体と悪性症候群の発症との間の有意性
を肯定するものが複数あるとされており(甲21の996頁「3」の1な
いし3行目,これらの医学的知見を総合的に考慮しても,2月3日午前)
10時以降の投与の悪性症候群の発症への影響の有意性を否定することは
できない。
エこのように,亡P1に生じた本件被害については,同日午前10時の時
点以前の▲▲注の投与によって発生した蓋然性と,同時点以降の▲▲注の
投与によって発生した蓋然性との比較において,後者の可能性が相当程度
の蓋然性をもって認められる以上,前者につき通常人が疑いを差し挟まな
い程度に真実性の確信を持ち得るほど高度の蓋然性を認めることはでき
ず,したがって,本件被害が,同日午前10時以前の▲▲注の投与の一部
である適正使用の範囲内の投与(投与開始後の一定時間内の投与)に起因
して発生したものと認めることはできないといわざるを得ない。
オなお,原告は,亡P1に生じた本件被害が,亡P1に投与された胃腸薬
○○(薬品名メトクロプラミド)に起因して発症した可能性も否定できな
いと主張し,同胃腸薬の副作用の中には悪性症候群が含まれていることが
認められる(甲32)が,上記エのとおり,本件被害が▲▲注の不適正な
使用によって発生した可能性が相当程度の蓋然性をもって認められる以
上,上記主張を基礎付けるに足りる証拠はないものといわざるを得ない。
()小括5
以上によれば,本件の▲▲注の投与については,①適正使用に該当すると
認めることができず,また,②本件被害が,当該投与のうち適正使用に係る
部分によって発生したものと認めることもできない以上,本件被害は,機構
法4条6項の「医薬品の副作用」に該当すると認めることができないものと
いうべきである。
2争点()(亡P1の死亡が副作用救済給付の不支給事由に当たるか否か)に2
ついて
()上記1のとおり,本件において,本件被害は▲▲注の副作用によって発1
生したものと認めることができないのであるが,なお念のため,仮に,本件
被害が,2月2日午前10時以前の▲▲注の投与の一部である適正使用の範
囲内の投与(投与開始後の一定時間内の投与)により発生したものであると
仮定した場合に,本件の▲▲注の投与が副作用救済給付の不支給事由に該当
するか否かについて,以下,検討することとする。
()機構法16条2項3号及び同法施行規則3条は,副作用救済給付の不支2
給事由につき,(A)①通常の使用量を超えて当該医薬品を使用したことによ
り健康被害が発生した場合において,②その使用が救命のためにやむを得ず
行われたものであり,かつ,③当該健康被害の発生があらかじめ認識されて
いた場合であること,(B)その他上記(A)に準ずると認められる場合である
ことを要件としている。
ア本件の▲▲注の投与は,前記1()ア(ア)ないし(エ)のとおり,2月22
日午後4時43分の投与開始から同月3日午前10時までの17時間強の
間に合計約61.1mgが投与されたものであり,同イの▲▲注の添付文
書に記載された用量及び同ウ(ウ)①の医学文献においてせん妄患者の鎮静
を図るための投与量とされる用量に照らし,その投与量が通常の投与量を
超えるものであって,上記(A)①の要件を満たすことは明らかである。
イそして,前記1()ア(ア)ないし(エ)のとおり,P4医師は,高度な不2
穏状態に陥った亡P1がせん妄に関連する合併症状により現に試みてい
た,脳室ドレナージ術のために留置したドレーンの自己抜去という死亡の
結果に直結する危険行動を防止するため,高用量の▲▲注を投与して亡P
1の鎮静を図り,更に鎮静の維持を図る目的でその持続投与を継続したの
であって,結果的には投与の継続の過程で患者の状態に応じた投与量が過
大となり,一定の時点以降は適正使用の範囲内の用量を超える過大な投与
に至ったものであるが,少なくとも投与開始の当初は,亡P1の生命の危
険の除去のためにやむを得ず▲▲注を使用し,その後の使用の継続も,担
当医の意図としては同様の目的で行われたものである以上,本件の▲▲注
の使用は,2月2日午前10時に十分な鎮静が得られるまでの間,救命の
ためにやむを得ず行われたものであるか,少なくとも当初は救命のために
やむを得ず,その後もこれに準ずる事情の下で行われたものと認めるのが
相当であり,上記(A)②の要件を満たすか,少なくともこれに準ずるもの
として上記(B)の要件を満たすものということができる。
ウまた,高用量の▲▲注の投与に起因して悪性症候群が発症する蓋然性に
ついては,本件の投薬の当時,添付文書の記載及び多数の医学文献を通じ
て既に一般的な医学的知見となっていたと推認されること,P4医師も,
▲▲注の投与に際して悪性症候群を発症する蓋然性を認識していた旨の証
言をしていること(乙32)からすれば,本件のような大量の▲▲注の投
与に起因して悪性症候群が発生する蓋然性については,担当医においてあ
らかじめ認識されていたか,少なくともあらかじめ認識し得る状況にあっ
たものと認めるのが相当であり,上記(A)③の要件を満たすか,少なくと
もこれに準ずるものとして上記(B)の要件を満たすものということができ
る。
()以上によれば,仮に,本件被害が,2月3日午前10時以前の投与の一3
部である適正使用に係る投与(投与開始後の一定時間内の投与)によって発
生したものと認められ,機構法4条6項の「医薬品の副作用」に該当すると
認められる余地があるとしても,本件は,機構法16条2項3号及び同法施
行規則3条所定の不支給事由に該当するものということができるので,いず
,。れにしても副作用救済給付の対象となるものではないといわざるを得ない
3なお,適正使用の要件,因果関係及び不支給事由に関する前示の判断は,い
ずれも,上記1()イないしエの立証責任の帰属及び考慮すべき事情を前提と1
して,本件の個別の事実関係に即して,多数の医学文献等の証拠から推認され
る医学的知見等を勘案した上で,機構法及び同法施行規則の規定に則した法的
な評価として行われるものであり,これについて更に鑑定を要するものとは解
されない。
4したがって,本件被害は,機構法4条6項の「医薬品の副作用」により生じ
たものに該当すると認めることはできず,仮にこれに該当すると認められる余
地があるとしても,機構法16条2項3号及び同法施行規則3条所定の不支給
事由に該当すると認められるので,本件請求に係る副作用救済給付について,
これを不支給とした本件不支給処分は,適法である。
第4結論
よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用
の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文の
とおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官岩井伸晃
裁判官三輪方大
裁判官小島清二
(別紙3)
診断基準
1(JCS(乙30)JapanComaScale)
スケール状態
Ⅰ覚醒している状態
Ⅰ1だいたい意識清明だが,今ひとつはっきりしない。
Ⅰ2見当識(時・場所・人の認識)の障害がある。
Ⅰ3自分の名前や生年月日が言えない。
Ⅱ刺激すると覚醒する状態
Ⅱ10普通の呼びかけで,容易に眼を開ける。
,,。Ⅱ20大きな声で呼び又は体を揺さぶることにより眼を開ける
Ⅱ30痛み刺激で,かろうじて眼を開ける。
Ⅲ刺激をしても覚醒しない状態
Ⅲ100痛み刺激に対し,払いのける動作をする。
Ⅲ200痛み刺激に対し,手足を少し動かしたり,顔をしかめたりす
る。
Ⅲ300痛み刺激に対し,全く動かない。
2鎮静スケール(鎮静スケール)(甲25)Ramsay
スケール状態
1不安・不穏状態
2落ち着いており,協力的
3命令にのみ反応
4眠っているが刺激に対して強く反応する。
5眠っており刺激に対して反応が鈍い。
6無反応
3(SAS(甲25)Sedation-AgitationScale)
スコア状態具体例
7緊急不穏状態気管チューブやカテーテルを引っ張る。ベッド柵
を越える。医療スタッフに暴力をふるう。ベッドの
端から端へ移動する。
6高度不穏状態度重なる注意にもかかわらず不穏がある。身体の
抑制が必要。気管チューブを噛む。
5不穏状態不安あるいは軽度不穏。座ろうとするが注意すれ
ば鎮静化する。
4平静で協力的平静。容易に覚醒し,命令に従う。
。,3鎮静状態覚醒困難声をかけるか軽くゆすると覚醒するが
再び眠る。簡単な命令に従う。
2鎮静過剰身体刺激で覚醒。意思は通じない。命令に従わな
い。自発運動はある。
1覚醒不能強い刺激によってわずかに反応する。あるいは反
応しない。意思は通じない。命令に従わない。
4(RASS(甲25)RichmondAgitation-SeddationScale)
スコア状態具体例
+4危険な興奮状態好戦的,暴力的で,スタッフが危険にさら
される。
。。+3高度不穏状態チューブ類を引っ張るあるいは引き抜く
スタッフに対して攻撃的にふるまう。
+2不穏状態頻回に目的のない動きをする。人工呼吸器
と不同調。
+1落ち着きのない状態不安・恐怖はあるが,動きは攻撃的ではな
い。
0覚醒しており平静
−1うとうと状態十分には覚醒していない。呼びかけに10
秒以上反応。
−2浅い鎮静状態呼びかけに対して開眼し,こちらを見るが
10秒未満の持続。
−3中等度鎮静状態呼びかけに対して何らかの動きをする。
−4深い鎮静状態呼びかけには反応しないが,身体刺激で体
動あり。
−5覚醒不能身体刺激に反応しない。
(別紙4)
医学文献(抄)
()守屋裕文ほか「CCUで発症したせん妄状態とその治療(昭和59年刊行。1」
甲11)
標記の医学文献は,せん妄状態を中心とする意識障害の治療として,せん妄状
態発症初期から,精神症状及び身体症状の重症度を考慮しつつ,▲▲注を大量投
与する方法を提言し,具体的な方法としては,▲▲注を,精神症状発症と同時に
まず5mg静脈注射し,ある程度症状がおさまるまで30分ないし1時間ごとに
5mg,総量で15ないし20mgまで投与し,以後は持続点滴投与で1日当た
り20ないし50mgを投与し,その上でなお興奮が強い場合に,一時的にジア
ゼパム10ないし20mgを静脈注射する方法を紹介し,精神症状が激しく,身
体的治療に重大な支障があると思われるときは,クロルプロマジン20ないし5
0mgを1ないし6時間かけて一時的に持続点滴投与することも仕方がないとす
る。なお,上記▲▲注の大量投与による治療は,清水彰「手術後精神病・ICU
精神病(昭和60年刊行。甲12)にも,せん妄に幻覚妄想状態や興奮を伴っ」
ている場合に試みる方法(守屋らの方法)として,紹介されている。「」
()堤邦彦「精神科救急(今日の診療(平成13年刊行。甲15)2vol.11)」
標記の医学文献は,せん妄状態の運動過剰型(患者自ら点滴を抜去したり,挿
管チューブやドレーンを抜管したり,安静を保てず落ち着かない行動異常や,怒
鳴り声や奇声を発するなどの言動異常,身体感覚違和感,錯覚や幻覚,妄想など
の病的体験がみられる場合)に対する治療として,①基礎疾患の状況に応じて行
うが,精神運動興奮の強い場合には,ベンゾジアゼピン系薬物のフルニトラゼパ
ム(4ないし6時間ごとに1ないし2mg)又はミダゾラム(毎時0.1ないし
0.4mg/kgの持続静脈注射)で鎮静を図るが,呼吸抑制の可能性が強い場
合には,▲▲注(1日当たり5ないし40mg)やチミペロン(1日当たり2な
いし20mg)の筋肉注射や静脈注射が中心となり,②睡眠を十分とらせ,夜間
の症状増悪を予防することが大切であるとしている。
()金子高太郎「まずハロペリドール,それで不十分なら,ミダゾラムやプロポ3
フォールを考慮(平成14年刊行。甲16)」
標記の医学文献は,せん妄の鎮静を図る方法について,(ア)ベンゾジアゼピン
系薬物はせん妄に伴う焦燥感,幻覚妄想には無効であり,特に高齢の患者では,
過剰鎮静になったり,逆に混乱,興奮を来すことがあるとして,ブチロフェノン
系薬物(▲▲注が含まれる)を第一選択とし,(イ)特に▲▲注は,幻覚妄想,。
精神運動興奮,焦燥に効果的であり,心循環系に著名な影響を与えることも少な
いとし,通常は,5ないし10mgを血管内に投与し,効果が不良なら30分ご
とに鎮静するまで投与を繰り返し(最大50mg程度,鎮静の維持には「5),
∼10(最大20)mgを6時間かけて,または6時間おきに投与する」とす。
る。
()和田健「せん妄(平成15年刊行。甲17)4」
標記の医学文献は,せん妄に対する薬物療法として,夜間の不穏行動が強い事
例には,▲▲注の点滴静脈注射が第一選択であるとし,①生理食塩水ないし5%
ブドウ糖液に▲▲注1アンプルを入れ,点滴速度を全開から毎分3ml程度で滴
下し,入眠したらいったん投与を止めておき,再度覚醒が見られる場合には鎮静
が得られる用量で持続点滴を翌朝まで行うこともあるとし,②▲▲注1アンプル
で無効の場合は増量して追加投与するか,フルニトラゼパム又はミダゾラムの併
用投与を行い,▲▲注は,静脈投与の場合には海外では1日当たり1600mg
までという意見もあるが,1日当たり50mg程度までは使用してみてもよいと
する。
()ハロルド・・カプラン「臨床精神医学テキスト(DSM−Ⅳ診断基準の臨床5I
への展開(平成8年刊行。甲18))」
標記の医学文献は,せん妄の精神病症状の治療のための薬物の選択としては,
▲▲注の投与があり,患者の年齢,体重と身体状態により,2ないし10mgの
筋肉注射を行い,患者の興奮がおさまらない場合には,1時間後に投与を繰り返
し,患者が落ち着けば1日2回の経口投与を行うこととし(経口の薬用量は,非
経口の薬用量の1.5倍ほど高めにする,せん妄患者の大多数に対する効果。)
的な毎日の薬用量の合計は5ないし50mgの範囲であろうとする。
()C・トンプソンほか(松浦雅人ほか訳「高用量の抗精神病薬投与について」6)
(平成8年の報告の翻訳論文。甲20)
標記の医学文献は,必要な抗精神病薬の用量は,年齢,身長,体重等のいくつ
かの要因に依存し,ある患者では通常推奨される用量を超えて抗精神薬を投与す
る必要があるが(▲▲注の1日の最大投与量は100mg(ときに200mg)
とする,これは専門家の指導のもとに注意して行われるべきであり,筋肉注。)
射又は静脈注射の方法が用いられる場合には,血中濃度が急激に上昇することか
ら,経口投与の場合よりも用量を低くする必要があるとする。
()薬物療法検討小委員会(委員長・八田耕太郎「せん妄の治療方針−日本総7)
合病院精神医学会治療指針1(平成17年刊行。甲24)」
標記の医学文献は,急性精神病状態の精神科救急患者を対象にした最近の研究
において,①▲▲注の静脈注射は,用量に依存して重篤な不整脈を生じさせるも
のではなく,1日量35mgまでの静脈内投与では,多形性心室頻拍(重傷の不
整脈)が生じることは稀であるという報告があるとし,②症例報告から,心疾患
を合併する患者には,心電図を含む全モニター下では▲▲注の静脈注射の安全性
は高く,初めて連日投与する場合,低用量であっても持続的又は定期的な心電図
の観察をすることが好ましいとする。
()行岡秀和・ICUにおけるよりよい鎮静・鎮痛を求めて―ICUでの鎮静8「
・鎮痛のオーバービュ:鎮静・鎮痛の評価法(平成18年刊行。甲25)」
標記の医学文献は,人工呼吸中の患者に使用する鎮静薬として,せん妄に対し
ては▲▲注が使用されるとし,その投与法・投与量に関し,持続的な静脈注射に
ついては,毎時0.04ないし0.15mg/kgと,間歇的な静脈注射につい
,..。ては30分ないし6時間ごとに003ないし015mg/kgとしている
()中村満ほか「せん妄の薬物療法のバリエーション(平成17年刊行。甲29」
6)
標記の医学文献は,せん妄の患者は,病態把握をする前に薬物による鎮静を行
う必要に迫られることが多いため,鎮静が得られて初めて,詳細な診察と検査を
行い治療を開始することができるとし,(ア)著しい興奮が見られる場合には,①
ベンゾジアゼピン系薬物の静脈注射又は点滴投与,②▲▲注(2.5ないし10
mg)の静脈注射をし,(イ)必要な鎮静が得られないときは,上記①,②をもう
一度繰り返し,(ウ)それでも鎮静の効果が得られないときは,入眠までチオペン
タールの必要量を静脈注射するとしている。
「」(。)()山本弘之ほか不穏・せん妄に対する薬物治療平成17年刊行甲2810
標記の医学文献は,(ア)▲▲注は,せん妄治療の基本となる薬剤であり,①初
回の5ないし10mgの投与量を30秒ないし1分以上かけて静脈注射し,鎮静
効果が不十分であれば,30分程度の間隔を空けて20mgまで追加投与し,②
せん妄症状がコントロールできるようになれば,必要に応じて4ないし6時間の
間隔で5ないし10mgの投与を繰り返し,数日間維持した後,漸減を図るよう
にするとし,③一定の血中濃度を維持するため,持続静注(毎時3ないし25m
g)が行われることもあるとする。また,(イ)興奮が激しく,早急に鎮静を要す
,,,,る場合には自発呼吸下の患者ではまず▲▲注の静脈注射で反応をみた上で
興奮を抑えきれなければ,呼吸状態に注意しながら,ミダゾラムなどのベンゾジ
アゼピン系薬剤を使用して鎮静を図るとしている。
()八田耕太郎ほか「攻撃的行動に対する鎮静と身体管理(平成10年刊行。11」
甲29)
標記の医学文献は,精神科救急医療において,攻撃性が持続すると予測される
患者に対する▲▲注の追加投与として,墨東病院では,毎時0.63ないし1.
25mg程度の点滴投与を行うことが多いが,必要に応じて更に高用量を用いる
こともまれではないとしている。
()中村満ほか「せん妄(平成17年刊行。甲31)12」
標記の医学文献は,せん妄における薬物による鎮静として,①著しい興奮が見
,,られる初期的な治療にはベンゾジアゼピン系薬物の静脈注射又は点滴投与をし
必要な鎮静が得られない場合には,▲▲注2.5ないし10mgを静脈注射し,
それでも必要な鎮静が得られなければ,更に1度上記投与を繰り返すとし,②中
期的なせん妄治療には,▲▲注5ないし10mgを50mlの生理食塩水に希釈
して持続点滴で投与するとし,③脳血管障害など脳損傷がある疾病の患者に対す
る注意事項として,脳血管障害では,重度の意識障害やせん妄を呈するが,これ
らに対してまず抗精神病薬を用いるとする。
()日本精神神経学会監訳「米国精神医学会治療ガイドライン−せん妄(本訳13」
書が平成12年刊行。甲33)
標記の医学文献は,抗精神病薬は,せん妄の治療においてよく用いられる薬物
であり,緊急的状況や経口投与が困難な場合,静脈注射による投与が最も効果的
であるとし,せん妄の治療における抗精神病薬の最適投与量を決定するための研
究は少ないが,(ア)投与開始時に▲▲注1ないし2mgを必要に応じて2ないし
4時間ごとに投与する方法が提案され,高齢患者に対しては,▲▲注0.25な
いし0.5mgを必要に応じて4時間ごとに投与する低用量投与が提案されてお
り,(イ)他方で,重度の焦燥性興奮患者に対しては,より高用量の投薬調整が必
要とされるとし,1回投与量が50mg以上,1日の総投与量が500mgまで
の▲▲注の静脈注射投与は,心拍数,呼吸数,血圧,肺動脈圧への作用及び錐体
外路性の副作用の危険が最小限であったとの報告もあるとする。また,(ウ)抗精
神病薬の頻回の静脈注射投与が必要とされる焦燥性興奮を伴う身体疾患の患者に
対して,▲▲注の持続点滴静注が,静脈注射の反復に随伴する合併症を回避する
ことに役立つ可能性があるとする研究があり,24時間以内に10mgの静脈注
射を8回以上又は毎時10mgの静脈注射を連続5時間以上必要とする患者につ
いては,持続点滴静注を推奨する研究者もいるとし,その場合には▲▲注10m
gを静脈注射し,その後に5ないし10mgの持続点滴静注をすることを提案し
ているとする。
()八田耕太郎「精神科疾患患者への救急診療(平成16年刊行。甲34)14」
標記の医学文献は,(ア)救急外来におけるせん妄等の興奮等の精神症状に対す
る鎮静法として,鎮静の維持を図るため,①▲▲注の静脈注射又は点滴投与(1
日量が35mgを超える場合には心電図の確認が必要)及び②ベンゾジアゼピン
系薬物の静脈注射又は点滴投与をするとし,(イ)▲▲注を使用する際は錐体外路
症状が出現し得るため,その際にはビペリデンの筋肉注射を行う必要があるとし
ている。
()堤邦彦ほか「精神科ケースライブラリーⅦ高齢者の精神障害(平成1015」
年刊行。乙20)
標記の医学文献は,せん妄の抗精神病薬による薬物療法につき,(ア)①興奮が
著しく鎮静の速効性を期待する場合は,▲▲注2.5ないし5mgの静脈注射を
行い,なお数日のせん妄が見込まれる場合の鎮静には,▲▲注5ないし20mg
の投与又はクロルプロマジン25ないし50mgの投与を行うとするが,(イ)副
作用の問題として,抗精神病薬を使用する場合には悪性症候群に注意し,臨床症
状,観察及び血清CPKの検査を適時行い,連用する場合には潜在的な肝腎機能
低下による蓄積効果にも留意するとする。
()松下正明編精神科薬物療法臨床精神医学講座第14巻佐藤啓二平16「()」〔〕(
成11年刊行。乙21)
標記の医学文献は,(ア)精神分裂病治療の抗精神病薬の投与について,我が国
では,①緊急時では,▲▲注で十分な鎮静が得られなかったときには,鎮静作用
の強い低力価の薬剤に変更され又は追加投薬されることが多く,②急性期の治療
では,▲▲注2.25ないし12mgが第一選択薬剤として用いられ,精神病症
状が改善するまで細かく用量及び用法を調整し,副作用の出現に注意しながら徐
々に増量し,血圧の管理や,高齢者では体重の管理が必要となる(高齢者につい
てはその薬物動態を考慮して使用量を慎重に吟味する必要がある)とし,③急激
な増量法を支持する臨床報告については,そのような用法の有効性が確立してお
,。,らず重篤な副作用を招く危険性が高くなるため避けるべきであるとするまた
(イ)せん妄については,その原因となる疾患の精査・治療が優先されるとした上
で,速効的な処置が必要な場合には,▲▲注2.5ないし5mgの筋肉注射又は
0.75ないし2.25mgの1ないし3回に分けた内服投与が用いられるとし
ている。
()溝木睦男ほか「急性せん妄の薬物療法(平成6年刊行。乙28)17」
,,,標記の医学文献は(ア)▲▲注は覚醒レベルをあまり落とさずに鎮静が図れ
筋肉注射,静脈注射又は内服のいずれの方法による投与も可能であることから,
他の主要な抗精神病薬に比べて有用であるとし,①欧米において,▲▲注を1日
当たり600mg静脈注射した例の報告,2000名以上の癌患者に▲▲注を毎
時最高10mg静脈注射した例の報告,▲▲を1日当たり最高130mgまで使
用して目立った副作用がなく有用だった例の報告が存在するとした上で,②我が
国では大量投与の報告がほとんど見られないとし,P6病院神経科における治療
例として,せん妄患者に対する▲▲注が,1日当たり30mg位の点滴静脈注射
までは安全に使用でき効果が上げられたとし,静脈内投与について,鎮静効果に
優れ,効果の発現が早く,心循環器系への影響が少ない上,意識レベルの低下及
,,び呼吸抑制も起こりにくく他の投与方法に比べて錐体外路症状が出現しにくく
心筋梗塞の重要な指標であるCK値に影響を与えず,代謝経路が単純であり,排
泄も比較的速やかにされる利点があるが,▲▲注だけでは鎮静が得られない症例
も少なくないとする。
()長谷川恒夫編・救急医学(平成6年刊行。乙29)18「」
標記の医学文献は,急性非特異性せん妄の治療として,鎮静系薬剤による治療
が重要になるとし,安易な鎮静は厳に慎むべきとしながらも,適切な方法で用い
れば効果は高いとし,ハロペリドール(▲▲注)の点滴静脈注射について,覚醒
レベルを落とさずに鎮静が図れること,効果発現が早いこと,心循環系への影響
が少ないことなどの理由から頻用されるとするが,用量を1日当たり30mg程
度までとする。

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