弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人井本台吉、同草野治彦の上告趣意第一点について。
 指定生産資材在庫調整規則並びに過剰物資等在庫活用規則は、臨時物資需給調整
法一条一項の規定に依り、主務大臣が、産業の回復及び振興に関し経済安定本部総
裁の定める基本的な政策及び計画の実施を確保するために、同総裁が定める方策に
基く供給の特に不足する物資又は遊休設備の譲渡、引渡又は貸与に関して、なした
必要な命令として制定された省令であつて、これらの規則そのものが刑罰を定めた
罰則規定でないことは多言を要しないところである。そして、これらの省令を全面
的に廃止するか一部を存置するか等は主務大臣の裁量に任かされているところであ
り、且つ、右活用規則の附則二項本文には「指定生産資材在庫調整規則は、これを
廃止する。」と規定し、同第三項には、「この命令施行前にした行為に対する罰則
の適用に関しては、指定生産資材在庫調整規則の規定は、この命令施行後も、なお
その效力を有する。」と規定しているから、右附則の趣旨は、同調整規則の規定を
ば右活用規則施行前にした行為に対する罰則の適用に関する限りこれを存置し、そ
の他は原則として将来に向つて廃止する旨を規定したものであつて、所論のごとく
同規則廃止前にした行為に対する罰則そのものの適用を従前の例によるものとした
趣旨でないことが明白である。しかも、本件は臨時物資需給調整法違反事件であつ
て、原判決は同法四条の処罰規定適用の前提条件である同法一条一項の規定による
命令として所論調整規則を引用しているだけで、同調整規則そのものを限時法的刑
罰規定として適用しているのでないことも判文上明白である。同調整法の罰則その
ものがいわゆる限時法的性格を有し、予め定められた同法失效の時期以後もその効
力を有することは、別に、同調整法の附則二項において法律の明文を以て規定して
いるのである。されば、所論違憲論は、主務大臣の命令廃止に関する裁量を非難す
るに帰するか又はその前提に誤解の存するものというべく、到底採用できない。
 同第二点について。
 所論は、事実誤認の主張であるから、刑訴四〇五条に該当しないし、また、記録
を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見で主
文のとおり判決する。
  昭和二六年一一月二九日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎

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