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平成18年(行ケ)第10187号審決取消請求事件
平成18年8月31日口頭弁論終結
判決
原告株式会社ファミリア
同訴訟代理人弁護士三山峻司
同井上周一
同小野昌延
被告フレデリックウォーンアンド
カンパニーリミテッド
同訴訟代理人弁護士小泉淑子
同鳥海哲郎
同菅尋史
同井上祐子
同訴訟復代理人弁護士大江修子
同訴訟代理人弁理士廣中健
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1原告
(1)特許庁が取消2004-31595号事件について平成18年3月15日
にした審決を取り消す。
(2)訴訟費用は被告の負担とする。
2被告
主文と同旨
第2当事者間に争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
原告は,別紙審決書写しの別掲Aに示すとおりの構成よりなり,昭和51年
4月30日に登録出願され,昭和55年2月29日に設定登録された後,平成
2年9月20日及び平成12年3月14日の2回にわたり,商標権の存続期間
の更新登録がされた登録第1406656号商標(以下「本件商標」とい
う。)の商標権者である。本件商標は,平成3年政令第299号による改正前
の商標法施行令別表による商品区分第25類の「紙類,文房具類」を指定商品
として設定登録されたものである。
被告は,平成16年12月13日,商標法50条1項に基づいて,本件商標
につき,商標登録の取消しを求める審判を請求し,平成17年1月6日,同審
判請求につき予告登録がされた(以下「本件予告登録」という。)。
特許庁は,上記審判請求を取消2004-31595号事件として審理した
結果,平成18年3月15日,「登録第1406656号商標の商標登録は取
り消す。」との審決をし,同月27日,その謄本が原告に送達された。
2審決の理由
審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,商標権者である
原告(被請求人)は,以下のとおり,本件予告登録前3年以内に日本国内にお
いて,指定商品につき本件商標を使用したとはいえないから,商標法50条1
項の規定により,本件商標の登録を取り消すべきであるというものである。
(1)原告の使用商標(別紙審決書写しの別掲B。以下,同別掲B記載の使用商
標1ないし4をそれぞれ単に「使用商標1」などといい,全部を合わせて
「使用商標」という。)は,仮処分決定(東京地方裁判所平成12年(ヨ)第
22063号同13年12月7日決定。以下「仮処分決定」という。)及び
確定判決(東京地方裁判所平成12年(ワ)第14226号,平成14年(ワ)
第4485号同14年12月27日判決・平成16年9月21日確定。以下
「本案判決」という。)で使用を禁止されている「PETERRABBI
T」,「ピーターラビット」等の商標と酷似しており,これを使用する行為
は仮処分決定及び本案判決に違背するものであって,上記使用商標の使用は,
商標法50条1項に規定する登録商標の使用ということはできない。
(2)平成16年5月19日付け日本繊維新聞の広告(甲第3号証,審判乙第3
号証。枝番を省略。以下,書証については枝番を省略する。)は,指定商品
である「紙類」等の具体的な商品についての広告であるとはいえないから,
本件商標の使用とは認められない。
(3)甲第4ないし第19号証(審判乙第4ないし第19号証)で示された本件
商標の使用は,商標法50条3項に規定する,いわゆる駆け込み使用と推認
し得るものであるから,同条1項にいう登録商標の使用とは認められない。
第3原告主張の取消事由の要点
原告は,平成16年5月19日付け日本繊維新聞の広告(甲第3号証)にお
いて使用商標1を使用し(以下「使用事実1」という。),また,平成16年
10月15日から同年11月3日までの間,ファミリアポケット三田店におい
て使用商標2,3を付した商品を販売するなどして使用商標2,3を使用した
(甲第4ないし第19号証。以下「使用事実2」という。)。審決は,使用事
実1及び2のいずれについても,次のとおり認定判断を誤り,その結果,本件
商標が本件予告登録前3年以内に日本国内において,商標権者によって使用さ
れたといえないと判断したものであるから,取り消されるべきである。
1取消事由1(使用事実1及び2の適法性)
審決は,不正競争防止法に基づく仮処分決定及び本案判決により,「PET
ERRABBIT」,「ピーターラビット」等の表示の使用が禁止されてお
り,原告の使用商標は,仮処分決定及び本案判決で使用を禁止されている表示
と酷似し,本件商標と社会通念上同一の商標ということができ,このような商
標の使用は禁止されているから,使用商標の使用をもって,本件商標を使用し
たということはできないと判断する。
(1)使用商標1は,本件商標上段部分の片仮名「ピーターラビット」と同一で
あり,また,使用商標2は,本件商標下段部分の欧文字「PETERRAB
BIT」と同一であって,いずれも本件商標と実質的に同一性があると評価
されるものであるところ,商標法において,登録商標である本件商標と同一
標章を使用することは何ら制限されるものではなく,上記使用商標の使用は,
商標法上正当に認められた範囲での使用であり,適法な使用である。審決の
引用する裁判例は,薬事法に違反した使用が「正当な使用」と認められなか
ったという事案であり,本件と同一に論じられない。仮処分決定及び本案判
決は,原告に対し,不正競争防止法との関係で別紙審決書写しの別掲「参考
資料1」及び「参考資料2」の表示(以下,各表示を「差止対象表示1」及
び「差止対象表示2」という。)を使用することを禁じているが,これは,
本件商標に類似する特定の「PETERRABBIT」や「ピーターラビ
ット」の使用を禁止しているだけで,本件商標の商標法上の使用権までを対
世的に否定しているものではない。
(2)審決は,使用商標が差止対象表示1及び2と酷似するというが,そもそも
特定の表示が仮処分決定及び本案判決において使用を差し止められた表示に
該当するか否かは,本案判決を行った裁判所又は執行裁判所において判断さ
れるべき事項であって,審判を行う特許庁が判断すべき事項ではない。
また,本件商標及び使用商標は,差止対象表示1及び2と同一ではない。
差止めの対象となる表示は,仮処分決定及び本案判決で特定された各表示
(差止対象表示1及び2)を基準とすべきであり,「社会通念上」同一であ
るなどとして安易にその範囲を拡張することは許されない。
(3)仮に,差止対象表示1及び2と酷似する表示についても,仮処分決定及び
本案判決による差止めの対象となるとしても,仮処分決定及び本案判決にお
いては,原告が本件商標に係る商標権を有することが認められており,それ
が使用権のない商標権であるとか,原告には本件商標の使用権がないとは判
断されていないのであるから,本件商標の使用は権利濫用であるとの明確な
理由もなく,審判において「使用とは言えない不正使用」であると直結させ
て考えることはできない。
2取消事由2(使用事実1の指定商品についての使用)
審決は,使用事実1における広告(甲第3号証)について,原告が「ピータ
ーラビット」の登録商標を所有していること及びその登録番号,被告やコピー
ライツグループの商品と混同しないための注意喚起等の表示は窺われるものの,
その指定商品である「紙類」等の具体的な商品についての広告であるとはいえ
ないから,本件商標を使用したことにならないと判断する。
しかし,原告は,仮処分決定がされた後,本件商標の使用を差し控えてきた
が,事件の解決後には,使用を再開する計画であった。使用事実1における広
告は,このような原告の計画的な善意の使用の一環として行われたものであり,
使用事実2は同じ計画に基づいて行われた商品の販売である。仮処分決定がさ
れるまで,原告が本件商標を付した指定商品を販売していた実態があり,仮処
分決定の後は,一時的に使用を差し控えていたが,使用の再開を計画し,現に
販売を再開した(使用事実2)のであるから,使用事実1は,使用事実2と一
体としてみれば,本件商標を指定商品との具体的関係において使用したものと
判断すべきである。
3取消事由3(使用事実2の駆け込み使用)
審決は,仮処分決定が送達された平成13年12月14日から3年が経過し
た時点以降には,取消審判請求がされることを原告が認識していたから,使用
事実2は商標法50条3項のいわゆる駆け込み使用であると認定している。
しかし,駆け込み使用であると認められるのは,「審判の請求がされること
を知った後であることを請求人が証明したとき」であり,抽象的に審判請求が
されるであろうと認識しているだけでは足りず,審判請求がされることの具体
的な認識がなければならないところ,原告には,その具体的な認識はなかった。
また,使用事実2について,原告には,商標法50条3項に規定する「登録
商標の使用をしたことについて正当な理由」がある。すなわち,上記「正当な
理由」には,審判請求がされることを知る前からあった具体的な使用計画に基
づいて商標が使用された場合が含まれるものと解されるところ,原告は,使用
事実2の使用以前から,本件商標を使用した原告オリジナル商品を企画して,
具体的な販売計画を立て,新聞広告等の準備を行っており(甲第3号証,第2
7ないし第33号証),使用事実2は,その計画の一環としてされたものであ
り,商標登録の取消しを免れることのみを目的としてされたものではない。
第4被告の主張の要点
審決の認定判断はいずれも正当であって,審決を取り消すべき理由はない。
1取消事由1(使用事実1及び2の適法性)について
原告の主張は,商標権の行使であるから不正競争行為(違法行為)に該当せ
ず,適法な使用であるという,いわゆる商標権に基づく適用除外の抗弁を主張
するのに等しいところ,本案判決において,かかる抗弁は権利濫用として許さ
れないとされ,控訴審においても同様の判断がされている。確かに,権利濫用
は被告との関係で認定されたものであるが,本件商標は差止対象表示1及び2
と同一であり,原告が本件商標を使用すれば,仮処分決定及び本案判決に違反
する違法状態が生じるのであって,そのような使用は,わが国の法秩序に違反
する違法行為として当然に許されない。
原告は,仮処分決定及び本案判決において使用が禁止されたのは本件商標に
類似する特定の表示であり,本件商標の商標法上の使用権までを否定している
ものではないと主張するが,それらの事件においては,原告自身,商標権に基
づく適用除外の抗弁の前提として差止対象表示1及び2が本件商標と同一であ
ると主張していたものであり,使用商標と差止対象表示1及び2とは社会通念
上同一である(仮処分決定及び本案判決による禁止の効果は,差止対象表示1
及び2と社会通念上同一の表示を付した商品についても及ぶというべきであ
る。)。
2取消事由2(使用事実1の指定商品についての使用)について
使用事実1における広告(甲第3号証)は,原告が「ピーターラビット」の
登録商標を付した商品について,被告やコピーライツグループの商品と混同し
ないでほしい旨を告知する一方的要望の表明にすぎない。上記広告においては,
特定の商品の出所を識別する標識として本件商標が使用されておらず,商標法
2条3項に定める商標の「使用」には当たらない。
3取消事由3(使用事実2の駆け込み使用)について
審決の認定するとおり,原告は,仮処分決定の正本が送達された平成13年
12月14日から3年が経過した時点以降には,取消審判請求がされ,そうな
れば本件商標の登録の取消しは免れないことを認識していたから,使用事実2
はいわゆる駆け込み使用である。なお,商標法50条3項に規定する「登録商
標の使用をしたことについて正当な理由」があるとの原告の主張は争う。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(使用事実1及び2の適法性)について
(1)原告は,商標法において,登録商標である本件商標と同一標章を使用する
ことは何ら制限されるものではなく,原告の使用商標の使用は,商標法上正
当に認められた範囲での使用であり,適法な使用であると主張する。
甲第36,37号証,乙第1ないし第4号証によれば,仮処分決定は,被
告が平成12年4月27日原告を債務者として申し立てた,不正競争防止法
2条1項1号,2号及び3条1項に基づく,差止対象表示1を付した商品の
製造販売等の差止め等を求める仮処分申立てについて,東京地方裁判所が,
平成13年12月7日,上記申立てを認容し,原告に対し,差止対象表示1
を付した商品を製造,譲渡し,その包装・広告に上記表示を使用してはなら
ない旨等を命じたものであり,その決定正本は同月14日原告に対し送達さ
れたこと,本案判決は,上記仮処分の本案訴訟として提起された不正競争行
為差止等請求事件と,原告が被告に対し提起した不正競争行為差止請求権不
存在確認等請求事件とを併合審理した上,平成14年12月27日言い渡さ
れた東京地方裁判所の判決であり,原告は差止対象表示2(その(1),(2)及
び(4)は差止対象表示1と同じである。)を付した商品を製造,譲渡し,そ
の包装・広告に上記表示を使用してはならない旨等を内容とするものである
こと,上記判決に対して原被告双方から控訴がされたが,平成16年3月1
5日,東京高等裁判所においていずれの控訴も棄却する旨の判決が言い渡さ
れ,さらに上告及び上告受理申立てがされたが,同年9月21日,上告棄却
及び上告審として受理しない旨の決定がされ,原告に対し上記差止めを命ず
る本案判決が確定したことが認められる。
そうすると,原告主張の使用事実1(使用商標1の使用)は,仮処分決定
がされた後のものであり,また,使用事実2(使用商標2,3の使用)は,
本案判決が確定した後にされたものである。
ところで,商標法上の保護は,商標の使用によって蓄積された信用に対し
て与えられるのが本来的な姿であるところ,商標法50条所定の登録商標の
不使用取消審判制度の趣旨は,一定期間登録商標の使用をしない場合には,
そのような信用が発生しないか,又は消滅してその保護すべき対象がなくな
ること及び不使用に係る登録商標に対して排他的独占的な権利を与えておく
理由はなく,かつ,その存在により商標使用を希望する第三者の商標選択の
余地を狭めることから,そのような商標登録を取り消すことにあると解され
る。このような制度趣旨に照らせば,その取消しを免れるために被請求人が
証明しなければならない審判請求登録前3年以内の日本国内における当該商
標の使用は,その使用自体が法的保護に値する正当な行為といえるものでな
ければならないというべきであって,当該使用が,その使用を禁止する仮処
分あるいは執行力ある判決に違反してされたものであるときは,そのような
違法な状態のもとに信用の蓄積を認めることは許されず,かかる違法な使用
は,商標法50条にいう登録商標の使用に当たるということはできないと解
するのが相当である。
したがって,原告の使用商標の使用が,仮処分決定及び本案判決によって
命じられた不作為義務(使用禁止)に違反する場合には,原告主張の使用事
実1及び2は,商標法50条にいう登録商標の使用として商標法上保護され
るものではないといわなければならない。
もっとも,仮処分は,判決による権利の確定とその実現を図るまでの間の
暫定的な措置であるところ,例えば,仮処分を遵守して商標を使用しないま
ま3年が経過したとしても,未だ本案の判決により権利が確定していないと
すれば,仮処分の被保全権利の存否自体が未確定の状態にあるというべきで
あるから,その間の不使用を理由に当然に不使用取消しとなると解すること
は相当でなく,このような場合には,仮処分によって使用が禁止されたため
に当該商標を使用できないことをもって,商標法50条2項ただし書にいう
「使用をしていないことについて正当な理由」がある場合に当たると解する
余地がある。しかし,本件においては,不使用取消審判の請求時,既に本案
判決が確定しており,仮処分決定の当初から,原告において差止対象表示1
(本案判決に係る差止対象表示2の(1),(2)及び(4))を使用することが許
されなかったことが確定している(すなわち,仮処分の被保全権利の存在が
確定している。)のであるから,このような場合にまで,上記の「正当な理
由」があるということはできないというべきである。
なお,原告は,仮処分決定及び本案判決は不正競争防止法との関係で差止
対象表示1及び2を使用することを禁じているだけで,本件商標の商標法上
の使用権までを対世的に否定しているものではないと主張しているが,問題
は,原告が本件予告登録前3年以内に本件商標を使用した事実として主張す
る使用事実1及び2に係る使用商標1ないし3の使用(使用商標4が付され
た包装用リボンは実際には使用されなかったことについては,原告も争って
いない。)が仮処分決定及び本案判決によってその使用を禁止された表示の
範囲に含まれるかどうかであって,仮処分決定及び本案判決が本件商標の商
標法上の使用権を否定しているかどうかではない。
(2)そこで,使用商標1ないし3が仮処分決定及び本案判決によってその使用
を禁止された表示の範囲に含まれるかどうかについて検討するに,仮処分決
定及び本案判決を債務名義とする執行手続においては,いかなる行為が禁止
されているのかということが一義的に明白である必要があるから,禁止され
た表示の範囲に含まれるかどうかは,当該表示の使用が禁止された表示と同
一性を有するといえるかどうかによって判断すべきであり,両表示が微細な
点について完全に一致するものでなくても,全体的に見て同一性を有すると
いえれば,その禁止された表示の範囲に含まれるものと解すべきである。
仮処分決定及び本案判決によってその使用を禁止された表示は,仮処分決
定については差止対象表示1,本案判決については差止対象表示2であると
ころ,まず,使用商標1は,差止対象表示1の3(差止対象表示2の(4)と
同じ)と同様に「ピーターラビット」の片仮名文字を横書きしてなるもので
あり,両者の間には,その字体において角ゴシック体と明朝体という差異は
あるものの,そのような字体の差異は両者の全体としての同一性を妨げるも
のではなく,使用商標1が,仮処分決定及び本案判決によってその使用を禁
止された差止対象表示1の3(差止対象表示2の(4)と同じ)に含まれるこ
とは明らかである。
次に,使用商標2は,差止対象表示1の1(差止対象表示2の(1)と同
じ)と同様に「PETERRABBIT」の欧文字を大文字で横書きしてな
るものであるが,後者が「PETER」と「RABBIT」との間に僅かな
空白があり,その字体も通常のものであるに対し,使用商標2は空白がなく,
字体がゴシック体であるという点(その他「E」の文字が若干異なる。)で
差異がある。しかし,それらの点は,いずれも微細な差異ということができ,
全体として見れば両者の同一性を妨げるほどのものとはいえないから,使用
商標2は,仮処分決定及び本案判決によってその使用を禁止された差止対象
表示1の1(差止対象表示2の(1)と同じ)に含まれるものと認められる。
また,使用商標3は,使用商標2と同じく「PETERRABBIT」の
欧文字を大文字で横書きしてなるものであり,差止対象表示1の1(差止対
象表示2の(1)と同じ)と,①上記の点で差異があるほか,②その字体が
「A」の文字に飾りがあるなど差止対象表示1の1(差止対象表示2の(1)
と同じ)と異なる点が見られる。しかし,①の点は使用商標2について述べ
たとおりいずれも微細な差異であり,また,②の点は詳細に観察しなければ
判別しにくいものであって,それらの差異を含めて全体的に見ても,使用商
標3は未だ差止対象表示1の1(差止対象表示2の(1)と同じ)との同一性
の域を超えているとまではいえないというべきであり,使用商標3も,仮処
分決定及び本案判決によってその使用を禁止された差止対象表示1の1(差
止対象表示2の(1)と同じ)に含まれるものと認められる。
以上のとおり,使用商標1ないし3は,いずれも仮処分決定及び本案判決
によってその使用を禁止された表示の範囲に含まれるということができる
(なお,原告の使用商標は差止対象表示1及び2の商標と酷似するとの審決
の説示は,両者の同一性を肯定するものとして,上記と同旨の判断を示した
ものと理解できる。)。
原告は,特定の表示が仮処分決定及び本案判決において使用を差し止めら
れた表示に該当するか否かは,本案判決を行った裁判所又は執行裁判所にお
いて判断されるべき事項であって,審判を行う特許庁が判断すべき事項では
ないと主張する。しかし,前記のとおり,不使用取消審判において,被請求
人が使用したと主張する商標が仮処分決定及び本案判決において使用を禁止
された表示に該当するときは,当該商標の使用は,仮処分決定及び本案判決
に違反する違法なものであって,商標法50条にいう登録商標の使用に当た
るということはできないと解すべきであるから,不使用取消審判において,
使用商標が仮処分決定及び本案判決によってその使用を禁止された表示の範
囲に含まれるかどうかを判断することに何ら問題はない。
また,原告は,「社会通念上」同一であるなどとして安易に差止めの対象
となる表示の範囲を拡張することは許されないとして,使用商標は差止対象
表示1及び2と同一ではない旨主張するが,使用商標1ないし3が差止対象
表示1の1,3(差止対象表示2の(1),(4)と同じ)と同一性を有し,仮処
分決定及び本案判決によってその使用を禁止された表示の範囲に含まれるこ
とは前記のとおりであるから,原告の主張は採用できない。
(3)原告は,使用商標が仮処分決定及び本案判決による差止めの対象となると
しても,仮処分決定及び本案判決においては,原告が本件商標に係る商標権
を有することが認められており,それが使用権のない商標権であるとか,原
告には本件商標の使用権がないとは判断されていないのであるから,本件商
標の使用が権利濫用であるとの明確な理由もなく,審判において「使用とは
言えない不正使用」であると直結させて考えることはできないと主張するが,
原告の使用商標が仮処分決定及び本案判決において使用を禁止された表示に
該当する以上,当該商標の使用は,仮処分決定及び本案判決に違反する違法
なものであって,商標法50条にいう登録商標の使用に当たるということは
できないと解すべきことは,前記のとおりであるから,原告の上記主張は採
用できない。
(4)以上からすれば,使用商標1ないし3は,仮処分決定及び本案判決で使用
を禁止されているものであるから,これらの使用をもって,本件商標を使用
していると認定することはできないとした審決の判断は是認することができ,
原告主張の取消事由1は理由がない。
したがって,原告主張の使用事実1及び2に関する取消事由2,3につい
て検討するまでもなく,本件商標は,商標法50条1項の規定によりその登
録を取り消すべきものであるが,念のため,以下,取消事由2,3について
も検討することとする。
2取消事由2(使用事実1の指定商品についての使用)について
原告は,使用事実1における広告(甲第3号証)は,使用事実2と一体とし
てみれば,本件商標を指定商品との具体的関係において使用したものと判断す
べきであると主張する。
甲第3号証によれば,平成16年5月19日付け「日本繊維新聞」に,商品
と思われる写真の下に「ピーターラビットは(株)ファミリアの登録商標でR
す。」,その下に小さく「登録商標ピーターラビットの入ったファミリアのオ
リジナル商品とフレデリック・ウオーン社やコピーライツグループの商品とは,
何ら関係ありませんので,混同しないように願います。」と各記載され,更に
その下の四角形の枠内に「当社の所有するピーターラビット商標」として6件
の登録番号,指定商品を記載した広告が掲載されたことが認められる。
上記広告の内容からすると,原告が「ピーターラビット」の登録商標を有し
ていること,被告やコピーライツグループの商品と混同しないよう注意を喚起
していることは認められるものの,「ファミリアのオリジナル商品」という以
上に,原告の商品が特定されていないし,掲載の写真からも「ファミリアのオ
リジナル商品」が何であるかは不明であり,広告全体としてみても,本件商標
が付されている具体的商品が何かは不明である。したがって,甲第3号証の広
告は,本件商標の指定商品である「紙類」等の具体的な商品についての広告で
あるとはいえないというべきであり,これをもって本件商標を使用したことに
はならない。これと同旨の審決の判断に誤りはない。
原告は,上記広告は,使用事実2と一体としてみれば,本件商標を指定商品
との具体的関係において使用したものと判断すべきであると主張するが,上記
のとおり,甲第3号証の広告は,使用事実2(ファミリアポケット三田店にお
ける商品の販売)に関する予告を含んでおらず,使用事実1と使用事実2とを
一体とみる余地はないのであって,原告の主張は採用することができない。
したがって,原告主張の取消事由2も理由がない。
3取消事由3(使用事実2の駆け込み使用)について
(1)被告が本件商標について商標登録の取消しを求める審判を請求したのが平
成16年12月13日であることは当事者間に争いがないところ,原告が使
用事実2として主張するのは,平成16年10月15日から同年11月3日
までの間における商標の使用の事実であるから,使用事実2は,商標法50
条3項における「審判の請求前三月からその審判の請求の登録の日までの
間」のものである。
(2)原告は,駆け込み使用であると認められるのは,抽象的に審判請求がされ
るであろうと認識しているだけでは足りず,審判請求がされることの具体的
な認識がなければならないところ,原告には,具体的な認識はなかったと主
張する。
乙第1ないし第4号証,第14号証によれば,仮処分決定に係る民事保全
事件において,被告は,当初から本件商標を含む登録商標の商標権が実質的
に被告に帰属すると主張していたこと,被告は,差止めの対象を,原告が当
時実際に使用していた差止対象表示1として,その差止めを求めたものであ
ること,本案判決に係る訴訟(以下「本案訴訟」という。)において,被告
は,上記の商標権について平成11年10月19日の譲渡契約に基づく移転
登録手続請求をしていたこと,本案判決において,上記移転登録手続請求が
棄却されたため,被告は,控訴するとともに,控訴審において,昭和62年
9月30日付けライセンス契約の終了による原状回復義務に基づく移転登録
手続請求を追加したが,控訴及び新たな請求は棄却され,本案判決は平成1
6年9月21日に確定したこと,他方,原告は,上記民事保全事件及び本案
訴訟において,差止対象表示1及び2は本件商標を含む登録商標と同一性を
有し,商標権に基づく使用であるから不正競争行為に該当しないと主張して
いたこと,原告は,民事保全事件で提出した準備書面において,「不使用取
消を受けない程度の実害を生じない程度の使用は,将来不使用取消期間を勘
案して行う」と主張していたことが認められる。
以上の事実によれば,上記民事保全事件及び本案訴訟を通じて,被告が,
原告による本件商標の使用を容認しない態度をとっていたことは明確であり,
仮処分決定の時点で将来商標登録の取消請求をすることは予測し得たものと
いえる上,本案判決の確定した時点では,移転登録により被告が本件商標の
商標権者となる途がなくなったのであるから,被告がその商標登録の取消請
求の方法をとることは十分予測される状態にあったものであり,原告が民事
保全事件の段階から不使用取消審判の請求を意識していたことに照らすと,
遅くとも本案判決の確定時点である平成16年9月21日には,原告におい
て「審判の請求がされることを知った」と推認するのが相当である。したが
って,使用事実2は,原告が「審判の請求がされることを知った後」のもの
ということができる。
原告は,使用事実2の使用以前から,本件商標を使用した原告オリジナル
商品を企画して,具体的な販売計画を立て,新聞広告等の準備を行っており
(甲第3号証,第27ないし第33号証),使用事実2は,審判請求がされ
ることを知る前からあった具体的な販売計画に基づいて行われた使用である
から,商標法50条3項に規定する「登録商標の使用をしたことについて正
当な理由」がある旨主張する。
しかし,前記のとおり,甲第3号証の広告は,使用事実2(ファミリアポ
ケット三田店における商品の販売)に関する予告を含んでおらず,使用事実
2の具体的計画があったことを裏付けるものではない。また,甲第27号証
(井上和廣の陳述書)には,原告が平成15年6月ころ「PETERRAB
BIT」の商標を使用した商品を企画し,生産計画を立てるなど準備したこ
とがあったとの記載があり,原告はこれを裏付けるものとして甲第28ない
し第33号証(生産計画案,カタログ等)を提出しているが,甲第27号証
によれば,「このときは,最終的には店頭で販売するには至りませんでし
た」というのであるから,仮に平成15年6月当時本件商標を使用した商品
の販売計画があったとしても,その計画に基づく販売は実現しないまま頓挫
したとみるべきであり,上記計画とその1年余後の使用事実2との関係も不
明であって,上記計画の存在をもって,使用事実2が審判請求がされること
を知る前からあった具体的な販売計画に基づいて行われたものであるという
ことはできない。その他,本件全証拠を検討しても,原告が「審判の請求が
されることを知った」と推認される平成16年9月21日以前から,使用事
実2の具体的計画を有していたと認めるに足りる証拠はない。したがって,
使用事実2について,商標法50条3項に規定する「登録商標の使用をした
ことについて正当な理由」があるとは認められない。
(3)以上からすれば,使用事実2は駆け込み使用と推認せざるを得ないとした
審決の判断は是認することができ,原告主張の取消事由3も理由がない。
4結論
以上のとおりであるから,商標法50条1項の規定により本件商標について
商標登録を取り消した審決の認定判断に誤りはなく,審決に,これを取り消す
べきその他の誤りがあるとも認められない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき行政事
件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官佐藤久夫
裁判官三村量一
裁判官古閑裕二

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