弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
処分行政庁が平成19年1月22日付け第×××号により通知した公文書公
開請求却下決定(適用除外通知処分)を取り消す。
第2事案の概要
本件は,原告が,処分行政庁に対し,東京都板橋区情報公開条例に基づき,
平成18年12月1日から同月15日までの間に建築確認がされた建築計画概
要書の第2面及び第3面の写しの交付を請求したところ,処分行政庁が上記請
求には同条例が適用されないとして,上記請求を却下したことから,これを不
服とする原告が,同却下決定の取消しを求めている事案である。
1関係法令の定め
(1)東京都板橋区情報公開条例(平成12年東京都板橋区条例第1号。以下
「本件条例」という。)
(定義)
第2条この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定
めるところによる。
(1)実施機関区長,教育委員会,選挙管理委員会,監査委員,農業委員
会及び議会をいう。
(2)公文書実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画,
写真,フィルム及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知
覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下
同じ。)であって,実施機関の職員が組織的に用いるものとして,実施
機関が保有しているものをいう。ただし,次に掲げるものを除く。
ア官報,公報,白書,新聞,雑誌,書籍その他不特定多数の者に販売
することを目的として発行されるもの
イ板橋区立の公文書館,美術館,郷土資料館その他これらに類する施
設において,歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料とし
て特別の管理がされているもの
第5条何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対して公文書
の公開を請求することができる。
(公開義務)
第6条実施機関は,公開請求があったときは,次の各号のいずれかに該当
する情報が記録されている場合を除き,公開請求者に対し,当該公文書を
公開しなければならない。
(1)から(6)まで(略)
第2項・第3項(略)
(他の制度との調整等)
第17条この条例は,他の法令の規定により,公文書の閲覧若しくは縦覧
又は公文書の謄本,抄本その他の写しの交付の手続きが定められている場
合においては,適用しない。
第2項(略)
(2)建築基準法
(書類の閲覧)
第93条の2特定行政庁は,確認その他の建築基準法令の規定による処分
並びに第十二条第一項及び第三項の規定による報告に関する書類のうち,
当該処分若しくは報告に係る建築物若しくは建築物の敷地の所有者,管理
者若しくは占有者又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないも
のとして国土交通省令で定めるものについては,国土交通省令で定めると
ころにより,閲覧の請求があつた場合には,これを閲覧させなければなら
ない。
(3)建築基準法施行規則
(書類の閲覧等)
第11条の4法第九十三条の二(法第八十八条第二項において準用する場
合を含む。)の国土交通省令で定める書類は,別記第三号様式による建築
計画概要書,別記第十二号様式による築造計画概要書,別記第三十六号の
二の五様式による定期調査報告概要書,別記第三十六号の三の二様式及び
別記第三十六号の四の二様式による定期検査報告概要書,別記第三十七号
様式による建築基準法令による処分等の概要書並びに全体計画概要書とす
る。ただし,それぞれの書類に記載すべき事項が特定行政庁の使用に係る
電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等に記録され,必要に
応じ特定行政庁において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表
示されるときは,当該記録をもつてこれらの図書とみなす。
2特定行政庁は,前項の書類を当該建築物が滅失し,又は除却されるまで,
閲覧に供さなければならない。
3特定行政庁は,第一項の書類を閲覧に供するため,閲覧の場所及び閲覧
に関する規程を定めてこれを告示しなければならない。
2前提事実(争いのない事実,顕著な事実及び掲記の証拠により容易に認めら
れる事実)
(1)原告は,平成19年1月15日,処分行政庁に対し,本件条例9条1項に
基づき,「平成18年12月1日から平成18年12月15日までに確認の
おりた「建築計画概要書」の第2面及び第3面」(以下「本件文書」とい
う。)の写しの交付を請求した(以下「本件請求」という。)(甲1,乙
1)。
(2)処分行政庁は,平成19年1月22日付けで,原告に対し,「建築計画概
要書」に関しては建築基準法93条の2及び建築基準法施行規則11条の4
で閲覧について規定されていることから,本件条例17条1項の規定により,
本件文書には本件条例の適用がない旨を通知し,本件文書につき公開(写し
の交付)をしなかった(以下「本件処分」という。)(甲2,乙1)。
(3)原告は,平成19年1月31日,本件処分の取消しを求める本件訴訟を提
起した。
3争点(争点に対する摘示すべき当事者の主張は,後記第3「争点に対する判
断」記載のとおりである。)
本件文書には,本件条例17条1項の規定により,本件条例の適用がないと
いうことになるか否か。換言すれば,本件文書は,本件条例に基づく公開請求
の対象にならないものであるか否か。
第3争点に対する判断
1本件文書(建築計画概要書)については,建築基準法93条の2及び同法施
行規則11条の4の各規定により,閲覧の手続が定められている。したがって,
本件条例17条1項にいう,他の法令の規定により,公文書の閲覧の手続が定
められている場合に該当するということができる。
本件条例17条1項の規定は,前記第2の1(1)のとおりであるところ,その
文言においては,他の法令の規定により,ある公文書について,①閲覧又は縦
覧の手続が定められている場合には,「当該閲覧又は縦覧に限り,」本件条例
の適用がない旨の限定,②謄本,抄本その他の写しの交付の手続が定められて
いる場合には,「当該写しの交付に限り,」本件条例の適用がない旨の限定が,
いずれも付されていない。このことからすれば,本件条例の17条1項におい
ては,他の法令の規定により,ある公文書について,①閲覧若しくは縦覧及び
②謄本,抄本その他の写しの交付に関して,①又は②のいずれかについて,手
続が定められている場合には,本件条例の適用がない旨を規定しているものと
解するのが相当である。
2(1)アこの点に関して,原告は,上記1のような解釈によった場合,他の法令
の規定により,閲覧又は写しの交付(以下「閲覧等」という。)の一方に
ついてしか手続が定められていない場合には,手続の定めのない方法によ
る公開が不可能となり,また,閲覧等についての期間の制限が定められて
いる場合には,期間経過後の公開が不可能となるなど,重要な公文書が実
質的な理由なく公開請求の対象から除外される結果となり,情報公開条例
を制定した意義が失われることになると主張する。
しかし,他の法令の規定により,一定の要件,手続及び方法により特定
の種類の公文書について公開することが定められている場合において,公
文書一般を対象とする情報公開条例を制定するとした場合,行政機関の保
有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)の趣旨に
のっとった施策の策定・実施に努めるべきことが要請される(同法41条
参照)ものの,両者間の調整をどのように図るか,具体的には,他の法令
の規定する方法以外の方法による公開,あるいは,所定の期間が経過した
後の公開を当該特定の種類の公文書についても,これを認めるものとする
かどうかは,地方公共団体の立法政策にゆだねられている問題であって,
当該公文書以外の公文書と同様の公開の方法が認められない場合が生じる
からといって,情報公開条例を制定する意義が失われるものとはいえない。
本件で原告が開示を求めている建築計画概要書の公開に関する手続を具
体的にみても,その閲覧の手続の細目については,特定行政庁が定める規
定によるものとされている(前記第2の1(3)・建築基準法施行規則11条
の4第3項参照)ところ,被告においても,「東京都板橋区建築基準法施
行細則」(昭和40年東京都板橋区規則第21号)において,その閲覧日,
閲覧時間,閲覧の手続(申込票の提出とその書式),閲覧の場所,閲覧の
停止又は禁止について定めている(乙5,6。ちなみに,同細則44条
(4)は,建築物及び工作物を特定しない者に対する建築計画概要書等の閲覧
を停止又は禁止することができる旨規定しているところ,原告は,前記第
2の(1)のとおり請求対象文書を特定しているものの,その建築物及び工作
物を特定しないで本件請求を行っている。)。こうした規定が置かれてい
る公文書について,そこでは認められていない要件,方法及び手続による
公開を,情報公開条例において,いわば上書き的に実施する趣旨であれば,
その旨を明示すべきものである。後記(2)のとおり,情報公開法やこれに倣
った情報公開条例の各規定がまさにこれに当たるものといえる。そうであ
るにもかかわらず,上記1のとおり,本件条例17条1項の文言から,そ
うした趣旨を読み取るのは困難といわざるを得ない。
イ原告は,情報公開条例に本件条例17条1項と同様の調整規定が置かれ
ている場合には,①他の法令が請求権者を限定している場合において,当
該請求権者以外の者から請求がされたとき,②他の法令が閲覧等の期間を
限定している場合において,当該期間外に請求がされたとき,③他の法令
が閲覧等の対象となる公文書の範囲を限定している場合において,その範
囲外の公文書の部分について請求がされたとき,④他の法令が閲覧につい
てのみ定めている場合において,写しの交付の請求がされたとき等につい
て,いずれも当該情報公開条例の適用を認めた上で,不開示事由該当性を
判断し,公開の可否を決するとするのが支配的解釈であり,全国の多くの
地方公共団体で採られている運用であると主張する。
確かに,証拠(甲6の1・9・11∼13・15・17・21・23・
25・27・28・31・33・40・51・60・65・66・72・
74・76・82・85・86・90・92∼94)によれば,本件条例
17条1項の文言と類似した調整規定の存する情報公開条例について,相
当数の地方公共団体において,上記①から④までにそった運用基準を採用
している事実が認められる。しかしながら,被告のほかにも,これに相反
する運用基準を採用している地方公共団体もある(甲6の8)ほか,相当
程度具体的な運用基準を定めながら,そこで上記④の点について明示的に
言及していない地方公共団体もある(甲6の35・38・53)ように,
運用基準が統一されているとまではいえない上,たとえ大多数の地方公共
団体の運用基準において上記①から④までのような解釈を採用していたと
しても,そのこと自体によって,前記1の判断が左右されるものでもない。
(2)ところで,情報公開法15条1項本文は「行政機関の長は,他の法令の規
定により,何人にも開示請求に係る行政文書が前条第一項本文に規定する方
法と同一の方法で開示することとされている場合(開示の期間が定められて
いる場合にあっては,当該期間内に限る。)には,同項本文の規定にかかわ
らず,当該行政文書については,当該同一の方法による開示を行わない。」
と規定している。
すなわち,他の法令の規定により,情報公開法14条1項の規定する方法
と同一の方法による公文書の開示が認められている場合には,当該公文書の
開示については,専ら他の法令の規定する手続にゆだね,情報公開法による
開示は行わない旨定める一方,当該同一の方法による公文書の開示が認めら
れていない場合には,その認められていない方法によるものである限り,情
報公開法による開示を行う旨を明らかにしている。
このような規定に従えば,建築計画概要書のように,建築基準法等の規定
により,閲覧の手続のみが定められており,写しの交付の手続が定められて
いないような場合にあっては,情報公開法による開示として写しの交付を実
施することになるものである。そして,甲4及び弁論の全趣旨によれば,被
告以外の地方公共団体の制定した情報公開条例には,情報公開法15条1項
と同旨の調整規定を置いたものが多数存在しており,これらの地方公共団体
に対して,情報公開条例に基づいて請求をすれば,建築計画概要書の写しの
交付を受けられるところ,情報公開法15条1項本文と同様の文言を持たな
い地方公共団体(被告を含む。)にあっては,写しの交付を得られないこと
となって,統一的な扱いが受けられないことになる。
しかしながら,情報公開条例は,情報公開法の趣旨にのっとり,各地方公
共団体がその立法政策に基づいて独自に手続や要件等の内容を定めることが
できるものである(前記(1)ア参照)ことからすると,このような不均衡が生
ずるのはやむを得ないものである。
3以上によれば,本件文書については,本件条例17条1項の規定により,本
件条例の適用はないものというべきであり,そのことを理由に本件文書の公開
をしなかった本件処分は適法である。
よって,原告の請求は理由がないので,これを棄却することとし,訴訟費用
の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条の各規定を適用して,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
大門匡裁判長裁判官
吉田徹裁判官
倉澤守春裁判官

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