弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人岩渕正紀、同入谷正章、同山崎正夫の上告理由第一点及び第二点につ
いて
 一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 1 上告人は、D印刷株式会社(以下「本件債務者」という。)に対して有する
売掛代金債権を請求債権として、昭和六一年八月二七日、本件債務者が被上告人と
の間で被上告人所有の本件不動産について買戻特約付きで締結した売買契約に基づ
く本件債務者の被上告人に対する買戻代金債権(以下「本件債権」という。)につ
いて、差押命令及び転付命令を得、各命令は、同月二八日第三債務者である被上告
人に、同月二九日本件債務者に、それぞれ送達された。
 2 被上告人は、同年一一月六日、本件債務者に対して買戻権を行使したが、本
件債権の額は三八六五万五三三〇円であった。
 3 他方、E信用金庫は、同年三月二〇日、本件債務者との間で、本件不動産に
ついて、根抵当権設定契約を締結した上、その旨の登記を経由していたが、右根抵
当権に基づく物上代位権の行使として、昭和六二年四月一〇日、本件債権について
差押命令を得、同命令は同月一一日、被上告人に送達された。
 4 被上告人は、同年五月一九日、上告人に対し、本件債権額三八六五万五三三
〇円を支払った。
 5 被上告人は、E信用金庫が右差押命令に基づいて被上告人に対して提起した
本件債権の取立訴訟において、敗訴したことから、平成三年五月九日、同信用金庫
に対し、三八六五万五三三〇円及び遅延損害金を支払った。
 二 本件は、被上告人が、上告人が右転付命令を得た当時、被上告人は買戻権を
行使していなかったから、本件債権は存しておらず、右転付命令は無効であったと
主張し、一の4の支払額相当の金員について不当利得の返還を求めるものである。
 三 本件において、上告人の申立てによる差押命令及び転付命令が被上告人及び
本件債務者に送達された当時、被上告人は買戻権を行使しておらず、右転付命令に
係る本件債権はまだ存していなかったから、右転付命令は、無効であったといわざ
るを得ない。もっとも、転付命令が無効であっても、差押命令が有効であれば、差
押債権者は取立権を有するので(民事執行法一五五条一項)、本件においても、上
告人が取得した差押命令が有効であれば、上告人は、右取立権に基づき被上告人か
ら弁済を受けることができるものと解することができる。しかしながら、本件にお
いては、前記のとおり、上告人が被上告人から支払を受ける前に、E信用金庫が根
抵当権に基づく物上代位権の行使として本件債権について差押命令を得、右命令は
被上告人に送達されていたのであるから、被上告人は、本件債権の全額に相当する
金銭を供託する(同法一五六条)か、優先権を有するE信用金庫に対して弁済をす
べきであった。したがって、上告人が差押命令に基づく取立権を根拠に被上告人か
ら直接弁済を受けることはできなかったのであって、被上告人の上告人に対する一
の4の支払が有効な弁済であると解する余地はない。そして、被上告人は、送達を
受けた差押命令及び転付命令において債権者とされていた上告人に対して支払をし
た後に、E信用金庫から提起された取立訴訟において敗訴したため、同金庫に対し、
二重に弁済をしたのであるから、上告人に対し、不当利得として右支払金員の返還
を求めることができるものと解すべきである。
 したがって、被上告人の上告人に対する本件請求を認容した原審の判断は、結論
において是認することができる。所論引用の判例(最高裁昭和三七年(オ)第九〇
九号同四〇年七月九日第二小法廷判決・民集一九巻五号一一七八頁)は、仮差押え
と差押えとが競合する場合において、民訴法旧六〇二条に基づく取立命令を得た差
押債権者に対する第三債務者の弁済の効力に関するものであって事案を異にし、本
件に適切でない。論旨は、原判決の結論に影響のない事項についての違法をいうか、
又は独自の見解に基づいて原判決を非難するものであって、採用することができな
い。
 同第三点及び第四点について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程にも所論の違法は認められない。論旨は、原審の
専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づい
て原判決の法令違背をいうものにすぎず、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    大   野   正   男
            裁判官    千   種   秀   夫
            裁判官    尾   崎   行   信

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