弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
本件控訴を棄却する。
控訴人の当審における新請求を棄却する。
当審の訴訟費用は控訴人の負担とする。
       事実及び理由
一 控訴人の申立て
 控訴人は、原判決の取消しの判決とともに、次のとおりの判決(2、3は当審に
おける新請求)及び仮執行宣言を求めた。
1 被控訴人は、別紙物件目録記載の記憶媒体を製造頒布してはならない。
2 被控訴人は控訴人に対し、一九二二万四〇〇〇円及びこれに対する平成八年七
月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人は控訴人に対し、一〇〇万円及びこれに対する平成一〇年四月二三日
から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被控訴人の答弁
 被控訴人は、控訴棄却の判決とともに、控訴人の当審における新請求に対して次
のとおりの判決を求めた。
1 控訴人の当審新請求に関する訴えを却下する。
2 (予備的に)控訴人の当審新請求を棄却する。
三 控訴人主張の請求原因
1 控訴人は、「三國志Ⅲ」と題するパーソナルコンピューター用シミュレーショ
ンゲームプログラム(本件著作物)に関する著作者人格権及び著作財産権を有す
る。
2 被控訴人は、商品名「三國志Ⅲ非公式ガイドブック」と題する書籍(被控訴人
書籍)を発売しているが、この書籍中のフロッピーディスクに含まれる別紙物件目
録記載のプログラム(被控訴人プログラム)は、控訴人の著作者人格権(同一性保
持権)及び著作財産権(翻案権)を侵害する。
3 よって、控訴人は被控訴人に対し、著作者人格権に基づき、別紙物件目録記載
の記憶媒体の製造頒布の差止め(原審からの請求)及び慰謝料の支払(前記一の
3)を求め、著作財産権に基づき、損害賠償(前記一の2)を求める。
四 前提事実(原判決摘示の争いのない事実中、当審においても争いのない事実)
(なお、控訴人は、原判決が争いのない事実として示した「被控訴人プログラムを
使用して、ユーザーが新武将等を登録し一〇〇を超える能力値を設定しても、本件
著作物のメインプログラム、データ登録用プログラム、チェックルーティンプログ
ラムが改変されるものではない。」との事実につき、当審でこれを争うと主張した
のに対し、被控訴人は自白の撤回に当たると主張する。しかしながら、控訴人のこ
の主張は、後記争点1における控訴人の主張と関連するものであり、事実関係の主
張というよりはプログラムの著作権の改変に関する法的主張を述べるものであるか
ら、自白の撤回には当たらないというべきである。)
(一) 控訴人は、平成四年二月四日本件著作物を創作し、本件著作物に関する著
作者人格権を有する。
(二) 被控訴人は、平成五年二月二五日以降被控訴人書籍を発売しているが、右
書籍には、被控訴人プログラムが入ったフロッピーディスクが添付されている。
(三)(1) 本件著作物は、出荷時において、登場人物として約五〇〇名の既成
君主、既成武将を設定しているが、これらについては、中国の古書「三國志演義」
から得た思想、感情を基に登場人物像を分析し、その能力を六つの要素に分け、一
から一〇〇までの範囲で、登場人物ごとにその能力を、能力値として数値で表現し
設定している。また、本件著作物は、既成君主、既成武将のほかに、ユーザーが、
データ登録用プログラムを用いて六八名の登場人物(新君主八名、新武将六〇名)
を作り出し、その能力値を新たに設定することができるようになっているが、ユー
ザーは、新君主、新武将を作り出さないで、既成君主、既成武将のみでも本件著作
物のゲームを展開して楽しむことができる。
(2) 本件著作物中には、ユーザーによる新君主、新武将の登録用ファイルとし
て「NBDATA」という名称のファイルが含まれ、また「NBDATA」中に能
力値を書き込むためのデータ登録用プログラム(控訴人登録プログラム)が含まれ
るが、控訴人登録プログラムには、次の①ないし④のプログラムが含まれている。
① キーボードからの情報を読み取るプログラム
② キーボードから読み取った情報を、能力値としてメモリー上に書き込むプログ
ラム
③ メモリー上に書き込まれた能力値を、フロッピーディスク上の「NBDAT
A」に能力値として書き込むプログラム
④ ユーザーがメモリー上に書き込める能力値を、一から一〇〇までとするチェツ
クルーティンプログラム
(四)(1) 被控訴人プログラムは、本件著作物に含まれる控訴人登録プログラ
ムに代わる別個のプログラムで、控訴人登録プログラムに含まれるようなチェック
ルーティンプログラムを含まないデータ登録用プログラムであり、新君主、新武将
につきユーザーが一〇〇を超える能力値を設定することができるものである。
(2) 被控訴人プログラムは、ユーザーがこれを用いることにより、ユーザー自
身において当該データがどのフロッピーディスクのいかなるファイルに記憶されて
いるかを捜す必要がなく、また作業及びデータの構造を解析する必要もなくして、
フロッピーディスク上の「NBDATA」に能力値を書き込むことを可能にしたプ
ログラムである。
五 争点
(控訴人が平成一〇年四月二三日付け準備書面で主張したところを踏まえて、本件
の争点を、次のとおり整理する。なお、1及び2の争点に関する当事者双方の主張
は、当該争点に対する当裁判所の判断の直前に記載のとおりである(後記六、
七)。)
1 被控訴人プログラムは、本件著作物におけるプログラムを改変するものか。
2 本件著作物におけるゲーム(本件ゲーム)は、映画の著作物(著作権法一〇条
一項七号)又はゲームの著作物(著作権法二条一項一号)といえるか。
3 控訴人は、映画の著作物、ゲームの著作物の著作者、著作権者といえるか。
(一) 控訴人の主張
 本件のようなビデオゲームでは、ユーザーのプレイによってゲームの画面展開は
幾通りにも変化し得るが、その展開はすべて控訴人がメインプログラムやCGデー
タによって用意したものである。本件ゲームには乱数が用いられているが、これも
すべて控訴人のプログラムによって設定されている。したがって、本件ゲーム展開
の著作者、著作権者は控訴人である。
(二) 被控訴人の主張
 控訴人登録プログラムを用いて入力した場合のゲーム展開は、ユーザーのプレイ
によって生じるものであるから、ユーザーがその著作者、著作権者であって、控訴
人がその著作者、著作権者ではない。
4 被控訴人プログラムにより、映画の著作物、ゲームの著作物の改変があったと
いえるか。
(一) 控訴人の主張
 被控訴人プログラムにより能力値が入力された新君主、新武将を登場させて本件
ゲームをプレイする場合に、控訴人登録プログラムを用いて入力した場合のゲーム
展開にはあり得ない展開を生じさせるということは、控訴人登録プログラムを用い
て入力した場合のゲーム展開にあり得ない展開を付け加える改変行為である。
(二) 被控訴人の主張
(1) 被控訴人プログラムの使用によっても、武将の顔などの映像的特質が何ら
変化を受けない以上、改変はない。
(2) 能力値の限定はルールにすぎず、ゲームのルールに著作物性がない以上、
本件著作物の改変はない。
(3) 幅広い展開が予定されているゲームでは、そこに表現されている思想、感
情は著作者人格権との結び付きも弱い。
(4) 本件ゲームは融通無碍で、作品としての統一性、完結性もない以上、著作
者人格権による保護に値しない。
(5) 被控訴人プログラムは、比較的短期間で飽きる本件ゲームにバリエーショ
ンを加えるものであり、ユーザーにも高く評価されている以上、その製造頒布をも
って著作者人格権侵害行為とするべきではない。
(6) 本件ゲームの一連の影像の展開は何ら特定されておらず、またそれがいか
に改変されているかも特定されていない。
(7) 控訴人の主張は、ゲームソフトの消費者たるユーザーは、家庭内であって
も著作者たる控訴人の指定したルールに厳格に従わねばならないとするもので、バ
ランスを欠く。
(8) 改変があったとしても、それが公にされない限り、著作者人格権の侵害が
あったと解すべきではない。
5 被控訴人プログラムにより、右映画の著作物、ゲームの著作物の翻案があった
といえるか。
(一) 控訴人の主張
 被控訴人プログラムによって一〇〇を超え二五五までの能力値を有する登場人物
を出現させると、登場人物の能力値を一から一〇〇までに限定した本件著作物のス
トーリーとは異なるゲーム展開となり、また、控訴人登録プログラムを用いて入力
した場合のゲーム展開にはあり得ない展開を含むものとなる。したがって、被控訴
人プログラムによって、新君主、新武将に一〇〇を超えた能力値を入力したゲーム
の影像及び展開は、本件著作物を原著作物とした二次的著作物である。
 被控訴人プログラムは、登場人物が一〇〇を超えた能力値を有するものであっ
て、一〇〇以内に限定した本件著作物を変形、翻案して本件著作物の二次的著作物
を作成するものであり、本件著作物の翻案権を侵害する。
(二) 被控訴人の主張
(1) 被控訴人プログラムを用いて能力値を入力してプレイした場合のゲーム展
開は、一切物に固定されておらず、したがって、映画の二次的著作物は存在しな
い。
(2) 二次的著作物というためには、それ自身で存在し固定され、原作品とは別
に譲渡可能であることが必要であるが、本件ではこの要件が満たされていない。
(3) 控訴人の主張は、控訴人登録プログラムを用いて入力した場合のゲーム展
開が有限であることを前提とするが、この前提は具体性を欠く。
(4) ゲームソフトは経済財としての性格が強いところ、被控訴人プログラムの
販売は本件ゲームの市場拡大につながるので、翻案権侵害とすべきでない。
6 控訴人の損害額はいくらか。
(一) 控訴人の主張
 被控訴人書籍の税抜き価格は二一三六円であり、その発行部数は三万部を下ら
ず、定価の三〇パーセントの利益率又は同率の複製、頒布の使用料率から得られる
一九二二万四〇〇〇円が、著作財産権侵害の損害額である。
 また、著作者人格権侵害の慰謝料額としては、一〇〇万円が相当である。
(二) 被控訴人の主張
争う。
7 被控訴人は、以上すべての著作権侵害の主体といえるか。
(一) 控訴人の主張
 被控訴人プログラムを使用するに際し、ユーザーは、被控訴人作成のマニュアル
及び画面上の操作方法に関する指示、説明に従って、一〇〇を超える能力値を入力
し、コンピューターの実行キーを押すなどの作業をするだけである。これ以外の作
業はすべて被控訴人プログラムが行って、
「NBDATA」に一〇〇を超える能力値を書き込むのであるから、侵害行為の主
体は被控訴人である。この結果、被控訴人プログラムの販売行為によって本件著作
物におけるプログラムが変更されるから、右販売行為はユーザーの行為とは全く別
の違法行為である。
 被控訴人書籍では、被控訴人プログラムの使用方法として一〇〇を超えた能力値
の入力を大きな特徴として説明している。さらに、その帯の広告によって、一〇〇
を超えた能力値の入力を積極的に勧め、本件著作物の同一性保持権の侵害あるいは
翻案権の侵害を積極的に誘引している。これらの侵害を誘引させた結果の経済的利
益は、被控訴人に帰属している。
 これらのことからすると、被控訴人プログラムをユーザーに対して販売する行為
は、被控訴人の管理下において、ユーザーに対し被控訴人プログラムを使用させた
ものと評価することができる。
(二) 被控訴人の主張
 仮に、被控訴人プログラムをコンピューター上で実行することが本件著作物の改
変に当たるものとしても、その主体はユーザーであって、被控訴人ではない
8 被控訴人の行為は、著作権法二〇条二項三号等に該当するか。
(一) 被控訴人の主張
 被控訴人プログラムは、本件著作物の控訴人登録プログラムの欠点を補い、より
効果的に利用できるようにするために必要な便宜をユーザーに提供するもので、著
作権法二〇条二項三号、四号により、また同法四七条の二の趣旨からしても、同一
性保持権の侵害とはいえない。
(二) 控訴人の主張
 便宜の提供と著作権法二〇条二項三号にいう効果的利用とは全く別の概念であ
る。そもそも被控訴人の主張する欠点ないし不便は、ゲーム性に由来し、コンピュ
ーター利用上の欠点ないし不便に当たらない。
9 被控訴人の行為は、著作権法四七条の二第一項に該当するか。
(一) 被控訴人の主張
 プログラムの複製物の所有者は、著作権法四七条の二によって、自用のための翻
案が認められており、そのように、プログラムそれ自体の翻案ですら適法とされて
いる以上、プログラム自体に手を加えない被控訴人プログラムを用いたプレイも適
法である。
(二) 控訴人の主張
 著作権法四七条の二によって認められる翻案は、コンピューターにおいて利用す
るために必要と認められる限度にとどまり、自用のための恣意的な翻案まで認めた
ものではない。
六 争点1についての主張及びこれに対する当裁判所の判断
1 被控訴人プログラムは本件著作物を改変するものか否かに関する争点1につ
き、当事者双方は、次のとおり主張した。
(一) 控訴人の主張
(1) 本件著作物においてユーザーが書き込む「NBDATA」中の能力値は、
すべて一から一〇〇までに限られ、それ以外の能力値が書き込まれた「NBDAT
A」をもって本件著作物の中に含めて理解することはできない。なお、アイテムと
称する道具等を保有することにより見かけ上の能力値が一〇〇を超える場合もある
が、登場人物の六つの能力それ自体について一〇〇を超える能力値を持つ者はいな
い。
 これに対し、ユーザーが被控訴人プログラムを使用して「NBDATA」に一〇
〇を超える能力値を与えて本件ゲームをプレイするときには、控訴人の予定した範
囲外の展開になる。データ入力範囲の一定の制限は、著作者のゲーム展開における
思想、感情を創作的に表現するために必須のものであるところ、データの入力範囲
の制限を超えて、圧倒的な強さを持つ能力を有し、敵に対し最終的なダメージを与
える数値のデータ入力を可能にさせるプログラムを作成し、これをデータ入力に使
用させることは、著作者の思想、感情の表現を侵害する行為であって、同一性保持
権を侵害する改変行為である。
 被控訴人書籍の帯には、「知力……武力200! オマエはバケモノか!」と記
されており、同書籍の被控訴人プログラムが説明されている第五章のタイトルは
「バケモノを作る」となっている。これは、控訴人登録プログラムを用いて入力し
た場合のゲーム展開にあり得ない展開を付け加える改変行為を表明する宣伝文句で
ある。 そして、被控訴人プログラムにより、次のような出力画面の変更が生じ、
あり得ない展開が生じることが確認されている。
① 陸上指揮能力又は水上指揮能力に二二八以上の数値を入れてゲームを始め、徴
兵、再編成コマンド等で残り兵士数を増減させる場合に、ゲームが先に進まなくな
ることがある。
② 武将の知力に一六一以上の数値を入力すると、「落とし穴」の計略による兵士
の被害が本来は知力の数値に反比例する結果になるべきなのに、常に九九という一
定の数値になってしまう。
③ 陸上指揮能力又は水上指揮能力に二二八以上の数値を入力した場合に、事実上
兵士の数を無制限に増やせる。
④ 陸上指揮能力又は水上指揮能力に二二八以上の数値を入力した場合に、画面が
動かなくなることがある。
(2) 原判決は、本件著作物を実行してプレイした結果展開されるストーリー
は、プログラムの著作物ということはできず、「NBDATA」もデータであって
プログラムの著作物ではない旨判示したが、これに対する控訴人の主張を敷衍する
と、以下のとおりである。
(ア) プログラムの著作物は、狭義のプログラムのみから成り立っている必要は
ない。本件著作物は、コンピューターの特性を生かすためにデータ部分(「NBD
ATA」)を狭義のプログラム部分と区別して構成しているが、コンピューターは
プログラムだけで動作するものではなく、データを伴って初めてプログラムが意味
を持つから、原判決のように、データ部分はプログラムの著作物でないとするのは
誤りである。
(イ) 本件著作物は、登場人物の能力値を一〇〇を超えては入力できないよう、
チェツクルーティンプログラムを内蔵し、これにより能力値設定範囲を限定し、能
力値の組合せも、その範囲内のすべて控訴人の予定した組合せに限定して思想、感
情の同一性を保持している。本件ゲームの著作者である控訴人は、本件ゲームのプ
レイヤーが能力値を自ら入力する方法として、控訴人登録プログラムのみを用意し
ており、他の方法は予定していない。
 コンピューターゲームの著作者は、コンピューターゲームという著作物を創作す
るに当たり、自己の思想、感情をストーリー展開及び出力画面に表現するが、この
表現のためには、プログラム及びデータの双方を設定する必要があるから、データ
を変更することは、コンピューターゲームの著作物の表現の改変行為に当たる。
被控訴人プログラムによって能力値入力時にチェックルーティンプログラムを含む
控訴人登録プログラムの使用をさせないという行為は、本件著作物の切除に当た
る。したがって、フロッピーディスク上の「NBDATA」に右限度を超えた能力
値を書き込むことは、控訴人の意に反する本件著作物の改変である。
(ウ) 本件ゲームの控訴人登録プログラムにチェツクルーティンプログラムを設
定したのには、次の配慮がある。
 第一に、プレイヤーが君主となり内政、外交、軍事全般にわたって綿密に戦略を
組み立てながら中国統一を目指すというたぐいのゲームにおけるゲームバランスヘ
の配慮がある。被控訴人プログラムによりゲームバランスが改変される具体的場合
として、前記(1)の②、③がある。
 第二に、技術上の不具合が発生することへの配慮がある。ゲーム製作者は、可能
な入力値を制限しておくことによって、その範囲内でのみデバッグ作業を行えば足
りるが、可能な入力値を無制限にしておくと、デバッグ作業には莫大な時間と労力
が必要となる。これでは製品コストに合わないし、完全にバグを取ることができな
い。被控訴人プログラムにより技術上の不具合が生じる具体的場合として、前記
(1)の①、④がある。
(エ) また、被控訴人プログラムを使用して一〇〇を超える能力値を入力するこ
とによって、本件ゲームのプログラムが停止し、暴走する場合がある。プログラム
の本質的要素は、実行時に正常に動作することであるから、被控訴人プログラム
は、本件ゲームのプログラムを破壊し、同一性保持権を侵害していることは明らか
である。
 被控訴人プログラムは、右のような結果を得ることのみを目的としたプログラム
であり、これをコンピューター上で実行することも改変行為である。
(オ) そして、被控訴人が、ユーザーがこれを利用することによって右(1)の
ように本件著作物を改変する結果を得ることのみを目的とする被控訴人プログラム
を記憶させたフロッピーディスクを製造頒布する行為も、改変行為に該当する。
(二) 被控訴人の主張
(1) 「NBDATA」はプログラム著作物ではない。また、被控訴人プログラ
ムは、本件著作物に既に設定されている能力値を書き換えるものではなく、新たな
能力値を書き込むことができるプログラムにすぎず、本件著作物に変更、切除その
他の改変を加えるものではない。
 本件著作物においては、シミュレーションゲームプログラムとしての性質上、既
成君主、既成武将、新君主及び新武将ともに、登場人物の能力値はゲーム中に様々
に変動し、また、新君主、新武将については一から一〇〇の範囲内においてもユー
ザーが能力値を自由に設定できる。そもそも、本件ゲームは、チェックルーティン
プログラム付きの控訴人登録プログラムを用いる以外には新君主、新武将を作成、
登録することができないとまでの構造にはなっておらず、種々のツールにより本件
著作物中の「NBDATA」に一〇〇を超える能力値を書き込むことが可能であ
る。これらの能力値の組合せは無限に等しいから、チェツクルーティンプログラム
を内蔵させることによって、思想、感情の同一性を保持することはできない。
(2) 被控訴人プログラムは、本件著作物の改変を目的としたものではない。被
控訴人プログラムは、控訴人登録プログラムの、
① 新君主、新武将の能力値が乱数で決まってしまい、ユーザーの意思が十分反映
されないこと、
② 設定できる能力値に限界があること、
③ 漢字入力が不便であること、
などの欠点を補うことを目的とするものである。一〇〇以下であれ、一〇〇を超え
るものであれ、いかなる能力値を入力するかは全くユーザーの意思にゆだねられて
いる。
(3) 控訴人は、被控訴人プログラムによって技術上の不具合が生じる場合のあ
ることを主張するが、被控訴人プログラムによっても、本件著作物を停止させると
か、破壊するとの事実はない。
(4) 被控訴人プログラムを記憶させたフロッピーディスクの製造頒布行為は、
本件著作物の改変行為とはいえない。
2 争点1に関する当裁判所の判断
(一) まず証拠と前記争いのない事実によれば、以下の事実関係を認めることが
できる。
(1) 本件著作物には、プログラムとして、メインプログラム、データ登録用プ
ログラム(控訴人登録プログラム)及びチェックルーティンプログラムが含まれ、
データとして、控訴人が既に作成済みのデータファイル及びユーザーが作成するデ
ータファイルが含まれているところ、ユーザーが作成する新君主、新武将及びそれ
らの能力値のデータは、「NBDATA」というファイルに書き込まれる仕組みに
なっている(乙一三)。
 出荷時の「NBDATA」は、何の能力値も設定されていないことを示すデータ
が書き込まれているファイルとして提供されており(甲八、乙一)、そこに設定さ
れる能力値の最大値は一〇〇であることが、本件著作物のスタートアップマニュア
ルに記載されている(甲六、弁論の全趣旨)。
(2) 本件著作物で、ユーザーによって設定される新君主、新武将の能力値及び
あらかじめ記憶、蓄積されている既成の君主等の能力値のデータが、本件著作物中
のメインプログラムに読み込まれ、これがプログラムの分岐要素となってゲームの
次の処理が行われる(甲六、乙二)。
(3) 本件著作物において、新君主、新武将の能力値を一から一〇〇までと制限
しているのは、新君主、新武将の能力値の入力範囲を一から一〇〇までに制限する
ための記述がある控訴人登録プログラム内蔵のチェツクルーティンプログラムにお
いてである(争いがない。)。
(4) 被控訴人プログラムは、控訴人登録プログラムに代わる別個のプログラム
で、ユーザーに提供されるデータ登録用プログラムである(争いがない。)。
(二) 以上の事実関係を前提にして検討するに、「NBDATA」のデータは、
本件著作物におけるプログラム全体の流れによれば、控訴人登録プログラムによっ
て入力され作成されるものであり、ユーザーが「NBDATA」上に作成した新君
主、新武将のデータを用いてゲームをしようとする場合には、本件著作物における
プログラムは、本件著作物中の既存のデータとともに「NBDATA」上のデータ
を解析してゲームを進行させることになる。「NBDATA」上のデータは、本件
著作物におけるプログラムが規定している一定の書式に従って記載されるものと認
められるが、この書式上のデータが本件著作物におけるメインプログラムによって
読み込まれ、同プログラムは次に移行すべき動作を解析するものということができ
る。
 したがって、「NBDATA」にデータが入力され記載されたときには、「NB
DATA」の書式は、その中の数値(パラメーター)を本件著作物におけるメイン
プログラムに渡す役割を果たし、右プログラムの一部となって動作するものと認め
るべきものである。そして、右書式中に記載された数値も右プログラムに取り込ま
れ、これに包含されて動作内容を規定するものとなるのであって、「NBDAT
A」に控訴人登録プログラムの使用以外の方法によりこの数値を入力すること、さ
らには、この入力手段を提供することが、本件著作物におけるプログラムの改変に
当たるものと評価すべき場合のあることも、直ちに否定することはできない。
(三) そこで、本件において、被控訴人プログラムに基づいて「NBDATA」
にデータを入力し、メインプログラムを作動させることが、本件著作物におけるプ
ログラムの改変に該当することになるか否かを検討する。
(1) まず、新君主、新武将の能力値の入力を一〇〇までに限定する控訴人登録
プログラムを使用しないで「NBDATA」に能力値を入力する作業についてみれ
ば、「NBDATA」自体はプログラムの著作物に当たるものではないので、本件
著作物の同一性保持権の侵害に当たるものではないことは明らかである。
(2) 次に、一〇〇を超える能力値が入力された「NBDATA」を使用してメ
インプログラムを作動させることが、本件著作物の同一性保持権の侵害に当たるか
否かについては、本件著作物がシミュレーションゲームに関するものであり、本
来、その表現態様が種々に変化することが予定されているものであって、メインプ
ログラムの動作の枠内でという客観的制約があるにしても、ユーザーが自由に作動
させることによりゲーム展開が千変万化するものであることから、本件著作物の表
現がいかなる範囲まで包含するものであるのかが明らかにされないままに、一〇〇
を超える能力値が使用されることのみをもって、直ちに同一性保持権の侵害に当た
るものと認めることはできない。
(3) そこで、本件著作物が表現する範囲についての検討が必要となるが、この
関係で、控訴人は、「NBDATA」のデータ入力範囲を限定した配慮の一つにゲ
ームバランスがあると主張し、この主張の当否によっては、本件著作物の表現の範
囲も明らかになる可能性があり得る。しかしながら、本件ゲームはそのプログラム
に従って種々様々に展開するものであるところ、控訴人が主張するゲームバランス
の具体的内容、すなわち、控訴人が主張するゲームバランスを構成する本件著作物
の具体的表現内容は、その主張によっても必ずしも明確ではなく、被控訴人プログ
ラムによって「NBDATA」ファイルにおける能力値が、控訴人登録プログラム
によるものを超えて設定され、メインプログラムに渡された場合の本件ゲーム展開
により、どのように具体的に改変されるに至るのかの事実関係は、本件全証拠によ
っても明らかではない。
 控訴人は、本件著作物において、十分なゲームバランスに基づく魅力的なゲーム
展開の実現を意図したものであって、「NBDATA」に一〇〇を超える能力値を
入力して本件ゲームをプレイすると控訴人の予定した範囲外のゲーム展開になると
主張するところ、そのような内心の意図があったとしても、本件ゲームはもともと
ユーザーの自由な選択に基づいて多様に展開することが特色となっているものであ
り、右主張のようなゲーム展開が具体的にどのような範囲のものを指すのかは、客
観的に明らかになっているとはいえない。仮に、その範囲が、控訴人プログラムに
より新君主、新武将の能力値一〇〇までを「NBDATA」に入力した場合に表現
される範囲に限られる旨の主張であると解しても、後記のとおり、「NBDAT
A」に一〇〇を超える能力値が入力された場合でも、極端な能力値が入力されたと
きを除いては、メインプログラムがこれを受け容れて動作し、ユーザーの自由な選
択に基づく作動に従ってゲームが様々に展開していくものであり、一〇〇を超える
能力値を入力した場合のゲーム展開が、能力値一〇〇以内である場合のそれと明確
な差異があるとは認め難い。したがって、控訴人の右主張をもってしても、本件著
作物の具体的表現がどのように改変されるに至るかの事実関係が明らかになるもの
ではない。
(4) 以下、右の結論に至った理由を、更に控訴人の主張との関係において説明
する。
(ア) なるほど、証拠(甲二一、二五)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人プ
ログラムにより一定限度を超えた能力値設定が行われた場合に、前記1(一)
(1)の②、③のようなゲーム展開になることは認められる。しかしながら、この
点も、次の理由により、被控訴人プログラムによって本件著作物が改変されるもの
と認めるべき根拠とならないというべきである。
 すなわち、本件著作物におけるプログラムには、一定限度を超えるデータを入力
しようとしても受け付けないというチェックルーティンプログラムが控訴人登録プ
ログラムに内蔵されて組み込まれているが、控訴人登録プログラムを用いる以外の
方法での新君主、新武将の作成、登録を不可能にするガード、あるいは、控訴人登
録プログラム以外のプログラムで作成された「NBDATA」の数値を受け付けな
いというガードは組み込まれていない(弁論の全趣旨)。本件著作物におけるプロ
グラムは、控訴人登録プログラムを使用しないで入力された「NBDATA」の数
値も排斥せずに、すなわちガードを掛けないでそのままメインプログラムのパラメ
ーターとして受け付けて処理する仕組みになっている。パーソナルコンピューター
操作に慣れたユーザーは、当時一般に頒布されていた「エコロジー」(商品名)に
代表されるようなMS-DOSのデバッグ汎用ツールを使用すれば、控訴人登録プ
ログラムを使用せずに新君主、新武将の作成、登録を行い、その能力値を入力する
ことができるものであり、本件ゲームに限らず、新たなゲームキャラクターの作成
方法を解説する雑誌記事等も、本件著作物創作の平成四年より以前から一般に出回
っていたことが認められる(甲八、二七、乙一〇ないし一二)。
 したがって、「NBDATA」における新君主、新武将の能力値を入力するの
に、本件ゲームを購入したユーザーが控訴人登録プログラムを用いるか否かは、本
件著作物におけるプログラムを作動させる際においては、ユーザーの自由になし得
る範囲のものであったというべきである。旧来の著作物とは異なり、著作権法上の
著作物として新しく加えられたコンピュータープログラムに対し、具体的にいかな
る範囲の同一性保持権を認めるかにつき一般的な共通認識が必ずしもない段階にお
いては、著作者の意思表明もその範囲画定の際の有力な事情となると解されるが、
本件著作物におけるプログラムの右のような仕様からみても、前述のように様々に
展開するゲーム展開を処理するプログラムの改変禁止範囲の限界(同一性保持権で
保護されるべき範囲)についての著作権者である控訴人の意向は、ユーザーに対し
て明確にかつ絶対的なものとしては伝わっていなかったというべきであり、このこ
とは、右プログラムの表現内容の範囲が客観的に明らかでないことを裏付けるもの
である。
(イ) また、本件著作物のサブマニュアルに「(新君主、新武将の)各能力の最
大値は100です。」と記載されていることが認められるが(甲六)、この記載自
体で、本件著作物の具体的表現の範囲が明らかにされているとはいえない。すなわ
ち、本件著作物に添付のサブマニュアル「三國志英雄譚」において、「勝利に至る
までの決まったルートは、シミュレーションにはありません。プレイするたびに新
しい方法が発見されます。……決まった道筋はありません。先の見えない物語をあ
なた自身が創っていってください。」との記載があり(乙二〇)、本件著作物のパ
ッケージの裏面にも、「新君主に加えオリジナルの武将が60人も作成でき、自分
だけの物語を楽しむことも可能です。」と記載されていることが認められるところ
であって(甲一)、これらの記載も併せてみると、能力の最大値は100である旨
の右サブマニュアルの記載が、ゲーム展開にいかなる意味を持つのかは、明らかで
ない。
(ウ) これらの事情に、ゲーム展開の内容の上においても前述のように本件著作
物のゲーム展開についての具体的な表現内容が明らかでないことをも合わせてみる
と、本件著作物の改変の対象が特定されているものということはできないといわざ
るを得ない。
(エ) なお、前記1(一)(1)の①、④におけるように被控訴人プログラムに
よって二二八以上の能力値を入力した場合、本件ゲームが停止することがあること
は、証拠(甲一〇、一三、二九)及び弁論の全趣旨により認めることができる。し
かしながら、この点は、新君主、新武将の能力値の登録内容が本件ゲームのプログ
ラムが正常に動作する範囲外のものであったことの一時的現象である。この一時的
現象により、再作動後のパーソナルコンピューターの作動あるいは本件著作物の作
動に影響を及ぼす場合には、本件プログラムを改変するものと評価することも可能
であろうが、本件においては、右①、④によっても、本件著作物におけるプログラ
ム自体が改変されるものではないし、さらには右のような影響が生じるものとも認
めることはできない(ゲーム停止という事態が生じるに至ったのが、控訴人が提供
しているものではない被控訴人プログラムを使用して能力値を入力したユーザーの
行為によったものであることは、ユーザー自身で自覚し得るものであるから、ユー
ザーの責任においてゲームを再開すれば足りるものである。)。
 したがって、この現象が生じることをもってしても、被控訴人プログラムによる
能力値の設定が、本件著作物におけるプログラムによるゲーム展開の表現に関する
本件著作物の改変に当たるものということはできない。
(四) 以上のとおりであるから、控訴人登録プログラムを使用せず被控訴人プロ
グラムを使用して「NBDATA」に能力値を入力することを可能にさせることを
もって、本件著作物の改変に当たるものする控訴人の主張は、その前提を欠くこと
になり、被控訴人プログラムが本件著作物を改変するものとは認めることができな
い。
七 争点2についての主張及びこれに対する当裁判所の判断
1 争点2、すなわち、本件ゲームは、映画の著作物(著作権法一〇条一項七号)
又はゲームの著作物(著作権法二条一項一号)といえるかに関する当事者双方の主
張は次のとおりである。
(一) 控訴人の主張
 本件ゲームは、映画の著作物というべき次の各要件を充足している。また、仮に
本件ゲームが映画の著作物に該当しないとしても、その視覚的表現からすれば、映
画の著作物に類するパーソナルコンピューター用シミュレーションゲームという著
作物である。
(1) 著作物性(内容の要件)
 本件著作物は、中国の古書「三國志演義」の登場人物、歴史、地形、状況を基
に、プレイヤー(ユーザー)が君主となり、内政、外交、軍事全般にわたる戦略を
立てて中国統一を目指すもので、パーソナルコンピューター用シミュレーションゲ
ームとして、著作者の思想、感情を創作的に表現したものであり、広くは文芸、学
術、美術又は音楽の範囲に属する。そして、以下の要件も満たすことにより、本件
著作物は、著作権法上の映画の著作物に該当する。
(2) 映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法での表現
(表現方法の要件)
 本件著作物を構成するプログラム及びデータにより、パーソナルコンピューター
のディスプレイ上に本件著作物を影像として映し出し、パーソナルコンピューター
にサウンド装置が付属している場合には、ディスプレイ上の影像に伴った効果音や
バックグラウンドミュージックを発生させる。オープニング画面には動画が映し出
され、影像が連続する。
 ユーザーが条件を入力設定し終えれば、本件著作物が稼動し、アニメーション映
画のように連続した影像がディスプレイ上に表現される。
(3) 固定化(存在形式の要件)
 本件著作物のディスプレイ上の影像は、フロッピーディスクに記憶され、固定化
されている。
(二) 被控訴人の主張
 ゲームソフトにおいて、表現方法の要件(映画類似性)が認められるためには、
映画の視覚的効果にも比すべき影像の流れが実現されていることが必要である。
 アクションゲームとは異なり、知的操作の比重が大きくて、敏捷な対応が当然に
は要求されない結果、影像が動きを持って見えることが本質的要請といえないクイ
ズゲームやシミュレーションゲームは、映画の著作物とはいえない。また、本件著
作物の画面には、全体として映画の著作物といえる影像表現はない。
2 争点2に関する当裁判所の判断
(一) まず、本件著作物は、いわゆるシミュレーションソフトの分野に属するゲ
ームソフトであり、ユーザーの思考の積重ねに主眼があるものということができ、
そのプログラムによって表されるディスプレイ上の影像の流れを楽しむことに主眼
をもっているものでないということができる。そして、本件著作物におけるプログ
ラムはフロッピーディスクに記憶されてユーザーに供給されており(被控訴人プロ
グラムが対応するNECのPC9800シリーズ又はエプソンのPC286/38
6シリーズのパーソナルコンピューター用の本件著作物は、三枚の2HDフロッピ
ーディスクに収められて出荷されている。甲一、乙一)、その中には影像及び効果
音に関するプログラムのみならず、シミュレーションに関するプログラムも含まれ
ていることからすれば、ディスプレイに現れる影像及び効果音に関するデータ容量
は極めて限られたものとなっていることが明らかである。影像も連続的なリアルな
動きを持っているものではなく、静止画像が圧倒的に多い。本件ゲームで動画画像
が用いられているのは、軍事戦争場面など一部にとどまり、軍事戦争における戦闘
シーン、一騎討ちシーンなどの個々の影像も、右のようにフロッピーディスクに収
容できる程度のデータ内容及びプログラムで動作させるため、定型データを利用す
るものとなっていて、同じ内容の定型的な画像及び効果音がたびたび現れるものに
とどまっている(以上、乙二六及び弁論の全趣旨)。そして、本件ゲームにおいて
は、ユーザーがシミュレーションにより思考を練っている間は、静止画の画面構成
の前で思考に専念できるよう配慮されているものというべきである。
 以上の事実関係からみれば、本件ゲームは、映画の効果に類似する視覚的又は視
聴覚的効果を生じさせる方法で表現されているものとは認められず、本件著作物
が、映画ないしこれに類する著作物に該当するということはできない。
 なお、本件ゲームの起動画面で文字の連続影像が現れ、効果音が聴取されるが、
これは、個々の影像とは独立のものであり、起動画面だけのものであるから、これ
らから、本件著作物について映画としての著作物性を認めることはできない。
(二) 控訴人は、本件著作物の視聴覚的表現は、著作権法二条一項一号所定のゲ
ームの著作物であると主張するが、著作権法にゲームの著作物そのものを定義づけ
る規定はないので、本件著作物につき、ゲームの著作物であるとして著作権侵害行
為の有無を判断することはできない。控訴人が主張するところは、要するに、映画
の著作物に類似する著作権法上保護すべき著作物であるというものと理解される
が、右(一)に判示したところによれば、本件著作物をもって、映画の著作物に類
似する著作物に該当するものとは認められないというべきである。
八 結論
 以上のとおりであり、その余の争点について判断するまでもなく、著作者人格権
(同一性保持権)に基づく控訴人の差止請求(原審からの請求)及び当審で追加さ
れた慰謝料請求は、控訴人主張の改変の事実が認められないので理由がない。ま
た、当審で追加された著作財産権(翻案権)に基づく損害賠償請求も、控訴人が主
張する著作物性が認められないので理由がない。
 なお、当審で追加された各請求は、原審から請求されているのと同じく本件著作
物に関する著作権法上の請求であり、請求の基礎を同一にするものである。審理
も、法律解釈に関する当事者双方の主張を追加し、書証を追加するなどのものにと
どまり、右追加による訴えの変更により訴訟手続を著しく遅滞させるものでもない
から、訴え却下を求める被控訴人の申立ては理由がない。被控訴人は、準備手続終
結による失権効の主張もしているが、同様の理由により採用することができない。
 よって、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第一八民事部
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 市川正巳
物件目録
「ORGED」と称するプログラムが電磁的に記憶されたフロッピーディスク、カ
ードその他コンピューター用記憶媒体

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