弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を禁錮六月に処する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人小林健治、同妹尾修一朗が連名で提出した控訴趣意書
に記載されたとおりであるから、これを引用し、これに対し、記録を精査し、か
つ、当審における事実の取調の結果をも参酌して、次のとおり判断する。
 控訴趣意第二点について。
 所論は、原判決は一所為数法の関係にある本件業務上過失傷害、無免許運転、酒
酔い運転の行為につき、これらをいずれも併合罪の関係にあるとして加重処断した
のは、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがあるというのである。
 <要旨>そこで、まず、無免許ないし酒酔い運転と業務上過失傷害との罪数関係に
ついて考えてみるのに、本件の業務上過失傷害が被告人の無免許かつ酒酔い
運転中にその運転行為に伴つて発生したものであることは原判示のとおりであるけ
れども、そのことから直ちに過失行為と無免許運転行為および酒酔い運転行為とが
刑法五四条一項前段にいう「一個ノ行為」であるということはできない。けだし、
右にいう「一個ノ行為ニシテ数個ノ罪名ニ触レ」るとは、当該具体的状況のもとに
おいてある罪にあたる行為をすれば必然的にその行為が他の罪をも成立させる場合
を指すと解すべきところ、自動車の無免許運転または酒酔い運転の罪は、無免許ま
たは酒酔いという状態にある者が自動車を運転すればその運転の方法・態様のいか
んを問わずそれだけで成立するのであるが、このような運転をしたからといつて当
然に人身事故を発生させるというものではなく、通常の場合はさらにこれになんら
かの過失の要素が加わつてはじめて過失行為が成立するのであつて、そのような場
合は運転行為と過失行為とは同一の行為すなわち一個の行為であるとはいえないか
らである。いま本件についてこれをみるのに、被告人は無免許かつ酒に酔つた状態
で普通乗用自動車を運転中、ハンドルの的確な操作および減速徐行等の注意義務を
怠つて原判示事故を発生させたものであり、右のような注意義務違背の行為は自動
車の運転行為それ自体とは別個のもので、自動車を運転しても右のような過失を犯
さないことは十分可能なわけであるから、被告人の原判示業務上過失行為は無免
許・酒酔い運転の行為とは別個の行為だといわざるをえず、これを観念的競合にあ
たるとする所論は採用することができない。しかしながら、次に、無免許運転と酒
酔い運転との罪数関係について考えてみると、自動車の無免許運転は公安委員会の
運転免許を受けていない者が自動車を運転することをいい、酒酔い運転は酒気を帯
びかつアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態にある者が
自動車を運転することをいうのであつて、要するにその行為は自動車を運転すると
いうこと以外にはない(無免許であること、酒酔いの状態にあることはそれだけで
はなんら違法ではなく、運転行為と結びつくことによつてはじめて違法となるので
ある。)。したがつて、本件の被告人のように無免許でありかつ同時に酒に酔つて
いる者にとつては、自動車を運転すれば必然的に無免許運転の罪と酒酔い運転の罪
とが成立するわけで、そのことはこの場合行為としては運転という一個の行為しか
ないことを示すものである。それゆえ、この二つの罪は刑法五四条一項前段にいわ
ゆる観念的競合の関係にあると解するのが相当であつて、これを併合罪であるとし
た原判決の法令の適用はその点に誤りがあるといわなければならない。そして、右
のように解する以上、被告人に対して原判決のようにそれぞれ禁錮・懲役を選択し
た場合の処断刑は七年以下の禁錮となり、この三者を併合罪とした原判決の処断刑
七年六月以下の禁錮はこれより重いから、原判決の右の法令の適用の誤りは判決に
影響を及ぼすことが明らかであるというのほかなく、論旨はこの点において理由が
ある。
 それゆえ、他の論旨に対する判断を省略し、刑訴法三九七条、三八〇条によつて
原判決を破棄し、同法四〇〇条但書によつて当裁判所においてさらに次のとおり判
決する。
 原判決の確定した事実に法令を適用すると、原判示第一の各業務上過失傷害の所
為は被害者ごとに刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同第二の
無免許運転の所為は道路交通法六四条、一一八条一項一号に、同第三の酒酔い運転
の所為は同法六五条一項、一一七条の二、一号、道路交通法施行令四四条の三に各
該当するところ、右第一の各所為並びに右第二と第三の各所為はそれぞれ観念的競
合の関係にあるから刑法五四条一項前段、一〇条によりそれぞれ一罪として前者に
ついては最も重いAに対する業務上過失傷害の罪の刑に、後者については重い酒酔
い運転の罪の刑に従い、所定刑中前者については禁錮刑を、後者については懲役刑
を各選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条に
より重い業務上過失傷害罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内において処断すべき
ところ、犯情をみるに、被告人は運転免許を有しないのに飲酒酩酊のうえ原判示の
ような高速度で自動車を運転中原判示のようにハンドルの的確な操作および減速徐
行する等の義務を怠つた結果原判示の被害者三名に原判示の傷害を負わせたもので
あつて、過失行為の態様・程度並びに被害の結果ともに重大であること等にかんが
みれば、被告人に同種の前科前歴なく、各被害者に治療費や物損等を賠償し円満に
示談が整つていることなどを考慮しても、本件につき刑の執行を猶予すべきものと
は考えられないところであるから、前記諸般の情状を考量して被告人を禁錮六月に
処することとし、主文のとおり判決する。
 (その余の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 中野次雄 判事 寺尾正二 判事 粕谷俊治)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛