弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を原判示第四の一銃砲刀剣類等所持取締法違反の事実につき罰金
一、〇〇〇円に処する。
     右罰金を完納できないときは金二〇〇円を一日に換算した期間被告人を
労役場に留置する。
         理    由
 仙台高等検察庁検事長代理次席検事八木新治の上告趣意、弁護人松本英夫の上告
趣意一、二および被告人本人の上告趣意第二について。
 福島地方検察庁検事伊東勝の控訴申立書(記録五二五丁)および同検察庁検事森
永勝次作成にかかる「控訴申立の範囲について」と題する書面(同五二八丁)によ
れば、同検察庁検察官は福島地方裁判所が昭和三六年五月一六日被告人に対し言渡
した判決中無罪部分(同年三月二九日公判請求の事実中訴因第三の(一)の銃砲刀
剣類等所持取締法違反の点)のみについて控訴の申立をしたことが明らかである。
また、被告人の控訴申立書(記録五二四丁)および控訴取下書(同五二七丁)によ
れば、被告人は同年五月三〇日第一審判決全部につき控訴を申立てたが、同年六月
一日右控訴を取下げたことが明らかである。しからば、右判決の有罪部分(同年二
月二七日公判請求の各恐喝並びに同年三月二九日公判請求の事実中訴因第一の暴力
行為等処罰ニ関スル法律違反、同第二の傷害および同第三(二)、(三)の各銃砲
刀剣類等所持取締法違反の点)は同年六月一日確定し、控訴審には検察官控訴にか
かる前記無罪部分のみが係属したものというべきである。
 しかるに、原判決は第一審判決が無罪とした部分のみならず、有罪とした部分に
ついても審判している。したがつて、原判決には、なんら控訴がなく、原審に係属
していない事件について審判をした違法があることは正に各所論のとおりである。
そして、この違法は判決に影響があり、原判決はこれを破棄しなければ著しく正義
に反するものといわねばならない。したがつて、原判決は進んで検察官の判例違反、
弁護人、被告人の違憲の各論旨につき判断を加えるまでもなく刑訴四一一条一号に
より破棄を免れない。
 同弁護人の上告趣意三、被告人本人の上告趣意第一について。
 各所論は憲法三八条三項、刑訴三一九条二項違反を論ずるけれども、原判決は所
論の事実につき、所論自白のほかこれを補強すべき証拠を掲げているから、論旨は
いずれも前提を欠き、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 よつて、主文第一項のとおり原判決を破棄し、同四一三条但書に則り、原判示事
実中前記確定した部分を除き、その余の事実について、さらに、つぎのとおり判決
する。
 原判決の認定した被告人の判示第四の一の所為に対し法令を適用すると、被告人
の同所為は銃砲刀剣類等所持取締法三条一項、三一条一号、罰金等臨時措置法二条
に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内で被告人を罰金一、
〇〇〇円に処し、刑法一八条により右罰金を完納できないときは金二〇〇円を一日
に換算した期間被告人を労役場に留置すべく、原審及び当審における訴訟費用につ
いては刑訴一八一条一項但書により被告人にこれを負担させないこととし、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官 米田之雄公判出席
  昭和三七年六月二六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    横   田   正   俊

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