弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決及び第一審判決を破棄する。
     被告人を懲役六月に処する。
     押収にかゝる機帆船A丸壱隻、黒糖石油罐入壱個、粉乳弐樽、ガンリシ
参罐を没収する。
     被告人から金七万参千四拾円拾参銭を追徴する。
     第一審における訴訟費用中国選弁護人に支給した費用を除きその余は全
部被告人の負担とする。
     昭和二一年勅令第三一一号違反の事実について被告人を免訴する。
         理    由
 本件公訴事実中昭和二一年勅令第三一一号違反については、昭和二七年政令第一
一七号により大赦があつたので、刑訴四一一条五号、四一三条但書、三三七条三号
により原判決及び第一審判決を破棄し、右事実につき被告人を免訴すべきものであ
る。従つて右事実に関する、弁護人長崎祐三の上告趣意及び弁護人鈴木義男、同河
野太郎の上告趣意第三点に対しては判断を与える要がない。
 右以外の事実に関する、弁護人鈴木義男、同河野太郎の上告趣意第一点及び第二
点はいずれも原審において主張せず従つてまた原審の判断を経ていない事項に関す
るもので上告理由として不適法であり、記録を調べても刑訴四一一条を適用すべき
ものとは認められない。同第四点は量刑不当の主張で刑訴四〇五条の上告理由に当
らないし、当裁判所において改めて量刑すべき場合であるから判断の限りではない。
 よつて第一審判決が適法に証拠により確定した、大赦にかゝらない外国為替及び
外国貿易管理法違反並びに関税法違反の事実を法律に照すと、不承認輸出の点は、
外国為替及び外国貿易管理法四八条、輸出貿易管理令一条一項三号、輸出貿易決済
規則二条に違反し、外国為替及び外国貿易管理法七〇条前段二二号、刑法六〇条に、
無免許輸出の点は、関税法(昭和二五年四月三〇日法律第一一七号)七六条一項、
刑法六〇条に、不承認輸入の点は、外国為替及び外国貿易管理法五二条、輸入貿易
及び対外支払管理令四条に違反し、外国為替及び外国貿易管理法七〇条前段二二号、
刑法六〇条に、無免許輸入の点は前記関税法七六条一項、刑法六〇条に、同未遂の
点は、右関税法七六条二項、刑法六〇条に該当するところ、不承認輸出と無免許輸
出、不承認輸入と無免許輸入(同未遂を除く)は、それぞれ一個の行為で数個の罪
名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により両者とも重い関税
法違反の刑に従い、所定刑中懲役刑を選択し、また関税法違反の未遂についても懲
役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条、一〇条に
より法定の加重をなし、その刑期範囲内において被告人を懲役六月に処し、没収に
つき前記関税法八三条一項、追徴につき関税法(昭和二三年七月七日法律第一〇七
号による一部改正)八三条三項(輸出貨物の原価合計三八、一二八円及び輸入した
黒糖中二、六二三斤「原価一斤一三円三一銭」合計三四、九一二円一三銭はこれを
没収し得ないので右原価相当額を追徴する)、訴訟費用の負担につき刑訴一八一条
を適用して主文のとおり判決する。
 検察官 浜田龍信関与。
  昭和二七年一一月四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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