弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被上告人の控訴を棄却する。
     当審ならびに原審における訴訟費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人伊藤公の上告理由第一点について。
 (い) 本件宅地および家屋は、いずれも、もと訴外Dの所有に属したこと。
 (ろ) 上告人は、昭和二〇年一一月当時、Dからその所有に属する本件家屋を
期間の定めなく、賃料一ヵ月二〇円の約定で賃借りし、その引渡を受けて現在まで
これに居住していること。
 (は) Dは本件宅地および家屋を訴外E商事株式会社(以下、訴外会社という。)
に譲り渡したこと。
 (に) 訴外会社は、同二六年一〇月一五日、本件宅地の持分権(八四分の三一)
を被上告人の先代Fに売り渡すとともに本件家屋を訴外Gに売り渡したこと。
 (ほ) 訴外Gは、本件家屋を、他へ移築する特約付で、訴外会社から買い受け
たものであるので、その敷地である本件土地を利用する権利を有しないこと。
 (へ) Fは同三四年二月一一日死亡し、被上告人は相続により、本件宅地の前
記持分権を承継取得したこと。
 原審は、以上のような事実を確定したうえ、上告人は、被上告人の先代あるいは
被上告人と直接の契約関係がないから、本件敷地の使用については、Gの有する権
原を援用するほかはないわけであるが、Gは右敷地について使用権を有しないので
あるから、上告人は被上告人に対し本件家屋から退去してその敷地を明渡す義務が
あるとし、被上告人の請求を認容している。
 ところで、建物所有を目的とする土地賃貸借において、当該家屋を賃借した者は、
建物の使用に必要な範囲において、その敷地の使用をなす権利を有し、これをもつ
て土地賃貸人に対抗し得るものであるが、この権利はもともと家屋所有者の土地賃
借権に依存するに過ぎないから、もし土地賃借権が消滅したときは、家屋賃借人は、
原則として、敷地を使用する権利を失わざるを得ないわけである。しかしながら、
家屋の所有者が家屋賃借人の意向を無視して土地賃借権を抛棄し、または、特段の
事情がないのにかかわらず、土地賃貸人と土地賃借人とが土地の賃貸借契約を合意
で解除したような場合には、民法三九八条、五三八条の法理から推論しても、また
信義誠実の原則に照しても、これを家屋の賃借人に対抗できないと解するを相当と
する(最高裁判所昭和三五年(オ)第八九三号、同三八年二月二一日第一小法廷判
決、民集一七巻一号二一九頁参照)。しかして、このことは、第三者に賃貸中の家
屋を売買するにあたり、当該第三者が現に敷地を使用しているにかかわらず、特段
の事情がないのに、土地所有者と建物買受人との間において、ことさらに右買受人
に土地賃借権を生ぜしめない合意をしたときも同様であつて、かかる場合、土地所
有者が敷地の賃借権消滅を理由に当該第三者に対し、家屋より退去して敷地を明渡
すことを求めることは前示の理由から許されないところといわなければならない。
ところで、被上告人はなんら特段の事情を主張していないのであるから、原審の確
定した事実関係のもとにおいては、上告人は、敷地使用の権利をもつて、依然土地
の所有者である訴外会社に対抗し得るわけであつて、土地共有者の一人たる被上告
人が上告人に対し、本件家屋から退去してその敷地を明渡すことを求める本訴請求
は失当である。
 しからば、原判決は家屋賃借人の敷地使用権に関する法理を誤つたものというべ
きで、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れないし、被上告人の本訴請求はすで
にこの点において排斥を免れない。
 よつて、民訴法四〇八条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官全員の一致
で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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