弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
 被告が原告らに対し、昭和四七年一月一三日付でなした各戒告処分をいずれも取
り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
 主文と同旨。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告らはいずれも高知郵便局集配課に勤務し、集配業務に従事する郵政事務官
である。
2 高知郵便局長は、昭和四七年一月一三日、原告らに対し、それぞれ無届欠勤を
理由として戒告処分をなした。
3 しかしながら、右戒告処分はいずれも違法であるから取り消されるべきであ
る。
 よつて、本訴請求に及んだ。
二 請求原因に対する認否
 請求原因1、2の事実はいずれも認める。
三 抗弁
1 はじめに
 本件各戒告処分は、原告らが計画休暇付与予定日が業務運行上の理由から変更さ
れ、上司から右予定日に正規の勤務につくよう命ぜられたのにこれに従わず、欠勤
したことを理由になされたものである。
 そこで、まず計画休暇制度について詳述する。
(一) 郵政省における年次有給休暇制度の概要
 労働基準法三九条は、使用者に対し、一年間継続勤務し全労働日の八割以上出勤
した労働者に対して、継続し、または分割した六労働日の有給の年次休暇(以下年
次休暇という)を、また、二年以上継続勤務した労働者には右の要件を満した場合
に、一年をこえる継続勤務年数一年について一労働日を加算した日数(最高二〇
日)の年次休暇を与えなければならないことを義務づけている。
 右の日数は、使用者が労働者に与えなければならない年次休暇の日数の最低基準
として法定されているものであるが、郵政事業に勤務する職員に対する年次休暇の
付与については、郵政省と関係労働組合との間に締結された年次休暇に関する労働
協約に基づき、労働基準法の定める右基準より有利な取扱いが図られている。
 すなわち、休暇の発給日数は出勤日数を全く考慮せずに、毎年四月一日を基準と
してその日現在、在職する職員に対しては年間二〇日とし、そのうち当該職員がそ
の年度中に満年に達する勤続年数の数に相当する日数(但し一五日まで)に五日を
加えた日数に相当する日数を法内休暇(労働基準法上の休暇)とし、その年度の発
給日数から法内休暇の日数を差し引いた残余の日数を協定休暇として取り扱うこと
とされている。なお、年次休暇の有効期間は発給年度を含め三年間であり、その付
与方法は自由付与と計画付与の二つに区分して取扱われている。
(二) 年次休暇の付与方法
(1) 自由付与について
 自由付与による年次休暇の付与方法は、職員が年次休暇の付与を希望するとき
に、その都度請求し、所属長が職員の請求する時季に休暇を与えることが、業務の
正常な運営に支障を生ずると認めた時に、他の時季に振替える場合を除き、職員の
請求する時季に与えられるものであつて、労働基準法三九条三項が予想している一
般的方法であり、計画付与制度を取り入れる以前から行なわれていた方法である。
なお、一年度の自由付与の対象となる年次休暇の日数は、その年度において有効期
間内にある休暇の日数のうち、計画付与の対象となる日数を除いた日数である。
(2) 計画付与について
 計画付与の方法は、昭和三三年四月一日から実施されたものであるが、それ以前
の休暇付与方法は、すべて前記(1)の自由付与の方法によつていた。ところで、
自由付与の方法は職員の自発的意思による請求をまつて行なうものであるから、休
暇の付与日数の多寡が勤務成績に影響するかの如く危惧する向きも絶無ではなく、
また休暇の利用実績をみると職員としては、余暇利用による労働力の保全培養とい
う年次休暇本来の趣旨によるものよりも、むしろ、病気、家事の処理、または突発
的事態の発生に備えるということに重点を置いていた傾向が強く、また、昭和二三
年以降休暇の残日数の繰越を認めていたこととも相まつて、いつしか年次休暇の保
有日数が逐年積滞増加していく状態に陥つていた。そのため、何らかの方法によつ
てこれを整理する必要があると同時に、将来発給する年次休暇についても、残日数
が生じないよう完全消化をはかる必要があること等が考慮された結果、昭和三二年
一二月二七日、関係労働組合との間に計画付与の方法によつて付与される休暇(以
下計画休暇という)を含めて前記(一)で述べた年次休暇に関する労働協約が締結
され、計画休暇制度が実施されたものである。計画休暇の具体的な運用方法は次の
とおりである。
(イ) 計画休暇の対象となる日数
 計画付与の対象となる日数は、前年度中に未使用となつた日数のうち一〇日に達
するまでの日数および前々年度の発給日数であつて前年度までに未使用となつた日
数(最高一一日)である。
(ロ) 計画休暇の付与方法
a 前年度の発給日数であつて、前年度中に未使用となつた日数のうち一〇日に達
するまでの日数については、所属長が年度当初において職員の請求により業務の繁
閑をしん酌して、各人別に当該年度中の休暇付与予定計画をたて、これによりその
休暇を与える。但し、所属長において、年度の途中にその計画の変更を必要と認め
たときは、当該年度中にその休暇を付与する場合に限り、右の趣旨に準じてこれを
変更することができる。
b 前々年度の発給日数であつて、前年度までの未使用日数については、所属長が
その年度の五月から順次各月について一日づつわりふり、かつ、前記aに準じてそ
の休暇を与える。
(ハ) 計画休暇の付与手続
 休暇の計画付与をうける職員は年次有給休暇請求書に、その希望する時季(特定
の月日以下同じ)を記入した年次有給休暇付与希望調書を添付して所属長にその定
める期日までに提出し、所属長はできるだけ当該職員の希望する時季にわりふるよ
う考慮して決定し、これを当該職員に通知する。
 しかし、所属長において当該職員の希望する時季に休暇をわりふることが困難と
認めたときは、当該職員に対し他に希望する時季を申し出させるとともに、これに
よるもなおその者の希望する時季に休暇をわりふることが困難であると認めたとき
は、当該年度中の他の適当と認める時季にこれをわりふつてその計画を決定し、こ
れを当該職員に通知する。
(ニ) 計画休暇の変更
 計画休暇は、前記(ロ)で述べたとおり、所属長が年度当初付与計画を策定し決
定したのち、臨時的繁忙、欠務の発生等により当該計画付与を実施した場合事業の
正常な運営を妨げると認められるときは、当該付与計画にかかわらず、事業の運営
に支障のない他の時季に付与することとして、計画の変更ができることとされてい
る。これは計画休暇の付与計画の決定は、ただちに職員の希望する時季についての
休暇付与日の確定を意味するものではなく、付与予定の決定および通知を意味する
ものであるから、労働基準法三九条三項但書に基づく時季変更権の行使とみられる
ものである。しかしこの場合においても、当該休暇は必ず当該年度中に付与しなけ
ればならず、翌年度への変更または繰り越しは、認められないこととされている。
2 本件各戒告処分の経緯
(一) 原告A(以下Aという)について
(1) Aについては、昭和四六年六月二五日および同月二六日が計画休暇付与予
定日として、同年度当初所属長によつて決定されていた。
(2)(イ) ところが、高知郵便局では六月二七日の参議院議員選挙の投票日を
控え、選挙郵便物が大量に差出されている状況にあつた。すなわち一般に、公職選
挙が実施される時期には、大量の選挙関係郵便物が差出される。昭和四六年六月二
七日(日曜日)は、参議院議員選挙の投票日に当たり、当時、高知郵便局において
も処理すべき大量の選挙関係郵便物が到着または引受けられていたが、これらの選
挙関係郵便物は、その性格上投票日の前日すなわち昭和四六年六月二六日までには
完全に配達し終えなければならない事情にあつた。
(ロ) Aは、高知郵便局の郵便集配受持区域のうち、当時、主として市内三区
(高知市下知地域の一部)の配達を担当していたが、同区は平常の場合、常勤職員
一名が担当し、一日の配達可能通数は、配達個所数によつて若干の差違はあるが約
八〇〇通程度のところ、昭和四六年六月二六日の同区の要配達通数は、当時の状況
判断から約一、五〇〇通程度が見込まれこれを完全に配達するためには、常勤職員
二名の配置が必要であると認められた。
 市内三区の配達業務は、主としてAが担当するほか同局集配課職員B(以下Bと
いう)および同C(以下Cという)の二名も担当する場合があつたが、Cは市内三
区については不馴れであり、当時同区の通区訓練を実施中の者であつて、道順組立
済みの郵便物を配達することはできても、道順組立はできなかつたものである。な
お、Cは、同月二六日の担務は同人が最も通区している市内一区に指定されてい
た。
 従つて、同月二六日の市内三区に常勤職員二名を配置するためには前記Bのほか
Aを配置しなければならない事情にあつた。
(ハ) 以上の理由から、D集配課長(以下D課長という)は、同月二六日につい
てAに対し計画休暇を付与することは要員配置上困難であり、高知郵便局集配課の
業務運行上支障を生じることになると判断したため、Aの同日の計画休暇付与予定
日を変更して他日に振り替えることとした。
(3) そこで、D課長は同年六月二四日午前一〇時頃、同課E課長代理(以下E
代理という)を通じてAに対し「六月二五日は付与できるが、二六日は業務に支障
があり付与できないので変更する」旨通知し、更に念のため、同月二五日午後六時
一五分頃E代理をAの自宅に訪問させ、Aに対し二六日の計画休暇は業務上支障が
あるので変更したから明日は出勤するよう命令させた。
(4) なお、振替日については、前記二四日午前一〇時頃E代理が計画休暇付与
予定日の変更を通知した際、「振替日はいつがよいか」と質したが、Aはこれに対
し答えなかつた(なお、振替えした計画休暇は同年八月二八日にAに対し付与ずみ
である)。
(5) 以上のとおり、Aは六月二四日および同月二五日の二回にわたつて、六月
二六日の計画休暇が変更された旨の通知を受け、同日出勤するよう命ぜられていた
にもかかわらず、これに従わず六月二六日の勤務を欠いた。
(6) その結果業務上次のような支障が生じた。
(イ) 市内三区は平常の場合、常勤職員一名が担当していたが、当日の要配達通
数は約一、一〇〇通であり、D課長の判断したとおり常勤職員二名の配置が必要で
あつたが、Aが欠勤したため担当者はBのみとなつた。
 このため、D課長は、重要郵便物である選挙関係郵便物を絶対に残してはいけな
いと判断し、やむをえず下知地区の速達配達のために配置していた非常勤職員Fを
午後から市内三区にまわし、午後から市内三区を二名配置とし、でき得る限り業務
運行の確保を図ろうとした。
(ロ) 市内三区についてこのような要員配置を講じたが、Bは病後のため(昭和
四六年六月二四日および同月二五日は病気休暇で休んでいた)無理ができないので
時間外労働を命じることができず、また、非常勤職員Fは市内三区に不馴れであ
り、当日の市内三区の要配達物数約一、一〇〇通のうち、二人で約九〇〇通を配達
できたのにとどまり、残りの約二〇〇通は配達できずに滞留し、翌々日すなわち昭
和四六年六月二八日の配達となり、これらの郵便物は二日の遅れとなつた。
 また、当日の速達配達は全体的に配達物数が多かつたため、下知地区には常勤職
員一名と非常勤職員Fをあてていたものであるが、非常勤職員Fが午後から市内三
区にまわつたため、午後からの同地区の速達配達は常勤職員一名のみとなり速達配
達業務は著しく困難となつた。以上のように、Aが欠勤したため、当日の高知郵便
局集配課の業務に支障が生じた。
(二) 原告G(以下Gという)について
(1) Gについては、昭和四六年六月二四日が計画休暇付与予定日として、同年
度当初所属長によつて決定されていた。
(2)(イ) ところが高知郵便局においては前記Aの場合((一)の(2)の
(イ))と同様の事情があつた。
 このため、同局の上局である松山郵政局(現、四国郵政局)からも選挙関係郵便
物の重点配達方が指示されており、同局においても同年六月二三日午前八時頃、D
課長の指示を受けたH集配課副課長(以下H副課長という)が集配課事務室でマイ
クによりこの旨を同課職員全体に周知し、選挙関係郵便物の配達に万全を期するよ
う取り組んでいた。
(ロ) Gは、高知郵便局の郵便集配受持区域のうち、当時、主として市内五〇区
(高知市潮江地区の一部)の配達を担当していたが、同区は平常の場合、常勤職員
一名が担当し、一日の配達可能通数は、配達個所数によつて若干の差違はあるが約
七〇〇通程度のところ、同月二四日の同区の要配達通数は、当時の状況判断から約
一、三〇〇通程度が見込まれ、これを完全に配達するためには、常勤職員二名の配
置が必要であると認められた。
 当時、市内五〇区の配達業務を担当していたのはGのほか同局集配課職員I(以
下Iという)のみであつた。また同区は集団住宅地域であつて地番が混乱している
うえ、県営住宅等の集団住宅が多いため、あて名が不完全な郵便物が多数にのぼる
など、配達作業がきわめて困難な区であり、臨時雇による配達は不可能に近い状況
にあつた。従つて、同月二四日の市内五〇区に常勤職員を二名配置するためには、
IのほかGを配置しなければならない事情にあつた。
(ハ) 以上の理由から、D課長は、同月二四日にGに対して計画休暇を付与する
ことは要員配置上困難であり、高知郵便局集配課の業務運行上支障があると判断し
たので、Gの同日の計画休暇付与予定日を変更することとした。
(3) そこで、D課長は、同月二三日午後一時四五分頃その旨をGに通知するよ
うE代理に命じた。
 右の命令を受けたE代理は、右の変更をGに通知すべく配達中のGの帰局を待つ
ていたところ、同日午後三時一五分頃配達を終えて帰局したGが担務板(職員が日
々担当する事務の指定は、本件当時、毎日午後二時頃担務板に示されていたもので
あり、職員は担務板を見て翌日担当すべき事務の種類を了知していた)を見て知つ
たのか、E代理に対し「明日の休暇がとれていない」と申し出たので、E代理はG
に対し「明日の計画休暇は業務上支障があるので変更する。明日は出勤してくれ」
と通告し、さらに「振替日は七月六日にしたいがどうか」と質したところ、Gは
「どうしてか」と問い返えしてきた。その際、E代理の机の北側に座つていた同課
職員がE代理を呼んだので、E代理はGに対し「Gちよつと待てや」と言つて右職
員と五、六分話した後、Gがいた方をふり返えるとGはその場から立ち去つていな
くなつていた。そこでE代理は、同課事務室内をGの名前を二、三回呼びながら探
したが、Gはすでに同課事務室から退出しており、見当らなかつた。
 通常の場合、同課職員が本件の場合のように計画休暇の付与予定日が変更され、
出勤するよう命ぜられた場合には、出勤していたので、E代理らは、再度Gに対し
右命令を伝える措置をとらなかつたものである。
 なお振替した計画休暇は同年七月七日Gに対し付与済である。
(4) 以上のとおりGは六月二三日に翌二四日の計画休暇の付与予定日が変更さ
れた旨の通知を受け、同日出勤するように命ぜられていたにもかかわらず、これに
従わず六月二四日の勤務を欠いた。
(5) その結果、業務上次のような支障が生じた。
(イ) 市内五〇区は平常の場合常勤職員一名が担当していたが、当日の要配達通
数は約一、三〇〇通であり、D課長の判断したとおり常勤職員二名の配置が必要で
あつたが、Gが欠勤したため、担当者はIのみとなつた。同区は前記のとおり集団
住宅地域であつて、地番が混乱しているうえあて名が不完全な郵便物が多数にのぼ
る等配達作業がきわめて困難な区であり、臨時雇による配達は不可能に近い状況に
あつたので、D課長は止むを得ず、当日の市内五〇区の配達業務はI一名のみによ
つて運行せざるを得なかつた。
(ロ) このため、当日の市内五〇区については、約一、三〇〇通の要配達通数の
うち約一、〇〇〇通をIが配達したが、残りの約三〇〇通は配達できずに滞留し、
翌日すなわち昭和四六年六月二五日の配達となり、これらの郵便物は一日遅れとな
つた。当時の状況から判断すると、当日もしGが出勤していたとすれば、Iと二人
で滞留となつた約三〇〇通の郵便物は完全に配達でき得たものと推定される。以上
のように、Gが欠勤したため当日の高知郵便局集配課の業務に支障が生じた。
3 原告らの非違行為に対する法律の適用
 以上のとおり、Aは昭和四六年六月二六日の、Gは同月二四日の計画休暇の付与
予定日がそれぞれ業務に支障があるため変更する旨上司から告知され、かつ、それ
らの日に出勤して勤務に就くよう上司から命ぜられていたのにあえてこれを無視
し、右の日に無断で勤務を欠き職務を怠つたものであるから、原告らの右行為は、
国家公務員法九八条一項および一〇一条一項前段に違反し、同法八二条各号に該当
する。
 よつて、被告高知郵便局長は、原告らの右行為に対する懲戒処分として昭和四七
年一月一三日付をもつて、原告らに対し各戒告処分を行なつたものであり、右処分
は何ら違法、無効にわたる点はない。
四 抗弁に対する認否及び反論
1 抗弁1については争う。
 計画休暇の制度は、全逓信労働組合と郵政省間で昭和三二年一二月二七日締結さ
れた「年次有給休暇に関する協約」の六条二項および同三項に定められたものであ
るが、この制度は労働基準法三九条における年次有給休暇とその本質を異にするも
のではない。
 本来年次有給休暇の制度は、労働者がその年度内に適宜な時期を選んで休暇をと
ることを権利として定めたものであり、これは労働者にとつては休暇を利用して休
養をとると同時に自己の文化的向上を図るところに意味があり、使用者にとつては
それによつて労働力の保全、培養を図るという点に意義がある。
 ところが、この制度に対する郵政当局ないし各郵便局管理者の認識不足、あるい
は全体的な定員不足、ないし臨時雇員のための予算措置の不充分等の理由から、郵
政労働者の年次有給休暇は付与されることが容易でなく、従つて年度内に完全に消
化することが困難な実情があり、更に労働基準法所定の有効期限がきても未消化の
ため年次有給休暇請求権が消滅するという事態すら発生しがちであつた。
 前記協約は右事態をふまえて労働基準法の精神にそつて締結されたもので、そこ
で定められた計画休暇は、前年度および前々年度に消化しえなかつた有給休暇のい
わば繰越分を計画的に年間を通して適宜割りふるというもので、本質的には、年次
有給休暇と異るものではない。従つて取扱い上も出来るだけ年次有給休暇と同じく
取扱われるべきであろう。
 本件との関連でいえば、年度当初に定められた計画休暇の変更は、労働基準法三
九条三項但書の時季変更権と同じく「正常な業務の運営を妨げる場合」にのみ許さ
れると解釈されなければならない。
 右の点に関し更にいえば、計画休暇は、所属長が年度当初に休暇を使用する者の
希望調書をもとに業務の繁閑等をしん酌して各人別に休暇付与予定計画をたて、こ
れにより付与されるものである。
 そこで所属長は、右各人別休暇付与予定計画を策定するに当つて、業務の繁閑等
の時季的配慮および、同一時期、同一日に、同時に多人数が休暇を使用しないため
の人数的配慮を充分になし得るのであり、そこにこそ計画休暇制度の意味があるの
である。
 一方休暇の付与を受ける労働者からすれば、計画休暇は、年度当初より計画され
た休暇であるが故に、それを利用して計画的に文化的行事あるいは旅行等に参加す
ることを考えるものであり、それがたびたび変更されてはならないし、変更には十
分な理由が必要である。この意味で、所属長の行なう各人別休暇付与予定計画は、
前記の時季的配慮および人数的配慮を十二分に行つた上で策定しなければならな
い。また、計画休暇の変更の可否は、前述の「業務の正常な運営を妨げる場合」と
いう理由の外に、所属長の計画内容が適正であつたか否かの観点をも吟味する必要
があろう。
2 抗弁2の(一)、(二)について
(一) (一)の(1)、(二)の(1)については認める。
(二) (一)の(2)ないし(6)、(二)の(2)ないし(5)について
 E代理が昭和四六年六月二五日夕刻A方を訪問したこと、Aが同月二六日出勤し
なかつたこと、同年八月二八日に計画休暇をとつたこと、また、Gが同年六月二三
日午後三時一五分頃E代理より、「翌二四日の休暇はおとしてくれ」と頼まれたこ
と、二四日Gが出勤しなかつたこと、同年七月七日に計画休暇をとつたことは認め
るが、その余の事実は争う。
3 抗弁3は争う。
4 抗弁に対する原告の反論
(一) 被告は、昭和四六年六月二四日ないし同月二六日頃は、同月二七日の参議
院議員選挙の投票日を控え大量の選挙関係郵便物が差出されていたというが、当
時、すでに選挙関係郵便は配達済みの時期であり、それらの残留はなかつたもので
ある。一般に選挙の場合、告示直後に関係郵便物が大量に差出され、それによつて
郵便の滞留が発生することはあるが、それ以外の投票日前等には滞留は生じない。
 従つて、六月二四日ないし二六日の間、郵便業務が非常に繁忙であつたという被
告の主張は、それ自体根拠を欠く。
(二)(1) また、要員配置上の困難という被告の主張についていえば、まず第
一に、絶対的に定員が不足しているもとで、原告らの休暇予定日に大量に病気、休
暇等により欠員が発生する場合ならともかく、一ないし二名程度の欠員が発生した
からといつて、直ちにそれを理由に原告らの休暇を変更することは相当でない。も
しそれが許されるとすれば、定員不足が常にある場合には、極端にいえば労働者
は、年休、計画年休を永久に使用しえないこととなるからである。
 また、所属長(集配課長)は、勤務指定表作成時に四週間分の各人の勤務を策定
すると同時に計画休暇を含めて要員配置を計画的に策定しなければならない。そし
て、それが十分慎重に行われていれば、直前になつてから要員配置が困難であるか
ら計画休暇を変更すること等は、めつたにないはずである。この点からみても、所
属長が限られた定員によつて四週間前に勤務指定表において要員配置をなしている
場合、原告らの休暇予定日に、二、三の要員配置上の困難が生じたからといつて、
それを計画休暇変更の理由とはなしえないというべきである。
(2) Aの計画休暇の場合、六月二六日のAの担当区には、Bと非常勤者である
Fが担務者とされていたのであり、通常はA一人が担当し、例外的な場合しか二人
で担当することがないことに照らすと、要員配置上の困難が生じていたとの主張は
理解出来ない。
 同様、六月二四日のGの場合も、通常一人で担当する区にGを含めて二名の配置
がなされていたもので、前と同じく要員配置上の困難が生じていたものではない。
以上のことからすると、被告の主張する要員配置上の困難は理由となしえないもの
であるばかりか、現実に要員配置上の困難は生じていなかつたというべきである。
(3) 以上、原告らの休暇によつて、業務の正常な運営を妨げたという主張は理
由がない。
五 再抗弁
(1)(一) A
 Aに対しては、年度当初所属長によつて昭和四六年六月二五日および二六日の両
日連続して計画休暇の許可が与えられているのであり、後日右許可の一部を撤回す
るためには、Aの承諾を必要とするというべきである。
 本件においては、Aの承諾を得ていないのであるから、同月二六日の計画休暇の
撤回は効力を生ぜず、従つて無断欠勤を理由とする本件戒告処分は違法であり、取
消されるべきである。
(二) G
 E代理が、Gに対して、年度当初与えられていた昭和四六年六月二四日の計画休
暇の変更を求めたことはあるが、Gは本件以前三回も計画休暇を変更されていたの
で、今回だけは、当初の計画通り与えられるよう強く要求したところ、E代理はこ
れを承認した。従つて、同月二四日に出勤しなかつたことを理由としてなされた本
件戒告処分は無効である。
2 処分権の濫用
(一)(1) 本件各処分の背景には、高知郵便局、特に集配課における次のよう
な計画休暇取扱上の不手際がある。
(イ) 昭和四六年度をみると、所属長である集配課長は、前述の各人別計画休暇
付与予定計画を策定していない。
 原告らを含む各集配課所属の者はいずれも年度当初に希望調書を提出している
が、集配課長は、それらを調整しかつ業務の繁閑等をしん酌して策定すべき計画休
暇の基本ともいうべき各人別計画休暇付与予定計画表を作成しなかつたのである。
ここに、原告らを含む集配課所属の者の計画休暇が、三度も四度も途中で変更され
るという異常な混乱の源がある。
(ロ) 各郵便局では、四週間分の勤務の内容について、勤務指定表を作成し、勤
務者に対し、一週間前に掲出する定めがあり、取扱規則によると各人の計画休暇も
右指定表に表示されるべきものであるが、集配課の場合計画休暇は右表に表示され
ることがなかつた。このため、集配課においては、勤務指定表作成時における変更
の措置は全くなく、変更はいずれも突然に計画日直前に行われるというものであつ
た。計画日を変更するほどの臨時的業務の繁忙というものがあるとすれば、本件で
被告が主張するような選挙等の政治的事象、経済的社会的事象(具体例はかかげ難
い)によるものであろう。しかし、その場合、これらの事象は突然に発生する事象
ではないから、通常四週間前には予想しうるであろうし、そうであれば、集配課長
は、勤務指定表作成時における計画休暇の変更ないし各人間における調整の措置を
なし得るし、なすべきであるが、このような措置がなされたことは全くなかつた。
(ハ) これらの計画休暇を全く無意味にしてしまつた高知郵便局集配課の不手際
については、郵政当局から当時の各管理者に対し、昭和四六年九月八日、行政処分
がなされている。処分理由は、郵便紛失事故と代替休暇および計画休暇不付与につ
いての不手際であり、郵便局長と次長に訓告、集配課長に戒告、集配副課長と課長
代理に記録訓告がなされた。
(2) 更に、本件の背景には、高知郵便局の管轄する高知市及びその周辺におけ
る都市化現象に伴なう人口増加、郵便量の増加に対応する定員増、臨時雇員のため
の賃金措置等の適切な対策がおろそかにされていたことがある。特に集配課におい
ては、増加する郵便量に対し集配勤務者の定員不足は覆い難く、そのため、時間外
労働の増加、年休、計画休暇の不付与ないし変更という異常な措置でこれに対処し
ていたものである。集配課勤務の者の多数が三度も四度も計画休暇の変更をされて
いる事実及び昭和四六年度において翌年に繰越不能となつた計画休暇が七〇日であ
る事実、年末年始の繁忙期に出勤した者にその年の六月末までの間に付与すべき代
替休暇七二日(五二名分)が期限切れで消滅してしまつた事実等々をみると、定員
不足を労働者の犠牲において解消しようとした郵便当局の姿勢がよく理解出来るの
である。ちなみに昭和四七年九月には、集配課は第一集配課と第二集配課の二つに
増設され、一〇名の定員増をなしている。
(3) 以上のように、高知郵便局集配課における計画休暇取扱の実態は、管理者
の認識不足からする重大なる不手際及び絶対的な定員不足という二つの面から全く
協約の精神を尊重しない混乱した取扱がなされ、突然の計画変更又は休暇の不付与
という形で原告ら労働者に犠牲を強いる結果となつていたのである。
 すなわち本件各処分は、このように郵政当局ないし高知郵便局および集配課が、
自らの義務として行なうべき協約尊重、定員増加対策をおろそかにしたことに最大
の原因があるもので、各処分の不当性は、明らかである。
(二) 更に、前記抗弁に対する反論で述べたように、原告らの欠勤は、高知郵便
局の業務の運営に何ら支障をきたすものではなかつた。
(三) 以上の事実を総合すると、第一に本件業務命令自体が不当であり、これに
形式的に従わなかつたからといつて処分をすることは処分権の濫用であり、第二
に、処分を科する程度のものではないのに処分をしたことは処分権の濫用である。
従つて取消されるべきである。
六 再抗弁に対する認否及び反論
1 再抗弁1、(一)、(二)は争う。
2 同2は争う。
(一) 同2、(一)、(1)について
(1) (イ)については、昭和四六年当時、原告らが所属する集配課において
は、計画休暇付与予定の計画にあたり、年度当初において各職員から提出された
「年次有給休暇付与希望調書」に記載された希望日をそのまま付与予定日として決
定するという取扱いをしていたものであり、この措置は、計画休暇付与日に対する
職員の希望をでき得る限り尊重するとの配慮からとられたものである。
(2) (ロ)については、原告らがいう取扱規則とは、昭和三三年五月二四日公
達四九号「郵政事業職員勤務時間、休憩、休日および休暇規程」を指すものと考え
られるが、同規程には計画休暇を勤務指定表に表示するとの定めはなく、同規程の
運用通達である郵給二四四号(昭和三三年八月一一日)通達「服務表および勤務の
指定等の取扱について」二の3のへに「勤務の指定を行う場合において、当該勤務
指定期間中に祝日(当日勤務を命じない場合に限る)、年次有給休暇、祝日代休日
および代替休暇等を付与する日があらかじめ明らかであるときは、当該勤務指定に
あわせてその旨を便宜、適宜の略号を用いて表示してもさしつかえないこと」と規
定し指導している。すなわち、計画休暇の付与予定日を勤務指定表に正規の勤務指
定とあわせて表示するのに、計画休暇の付与予定日を当該職員に再周知するために
便宜勤務指定表に表示してさしつかえないというものであり、これは便宜的な取扱
いであつて義務的なものではないのである。従つて、勤務指定表作成時に正規の勤
務指定とあわせて計画休暇の付与予定日を表示しておく必要はなく、また、勤務指
定表作成時において計画休暇付与予定日を変更する措置をとらなかつたとしても、
なんら誤りをおかしたものとはいえない。
 また、計画休暇付与予定日の変更については、所属長が臨時的繁忙、欠務の発生
等により、当該計画休暇付与を実施した場合において、業務の正常な運営を妨げる
と認められるときは、時季の指定の変更を行い得るものである。なお時季の指定の
変更は、社会通念上当該付与予定日の前日までに当該職員に対して行なえばよいと
解されるところから、当時の同局集配課においては、同課事務室内に設置されてい
る担務板によつて、当該計画休暇付与予定日を変更する旨の通知をする方法をとつ
ていたものである。また、郵政省の場合、所属長が当該計画休暇付与を実施した場
合において、業務の正常な運営を妨げると認められる具体的な判断のよりどころと
しては、「郵政事業職員勤務時間、休憩、休日および休暇規程」の運用通達郵給一
七〇号(昭和三三年五月二四日)通達七〇条の関係五項に『整理票の「1」欄の
「請求に係る日に休暇を与えることが業務の正常な運営を妨げると認める事由の要
旨」欄には、たとえば「欠務者が何名あるため」「平常日よりも事務繁忙のため」
または「服務の差くり困難なため」等具体的にかつ簡単に記入すること』と規定し
て指導しているところからも明らかなように、原告らが主張する政治的、経済的社
会的事象による臨時的業務の繁忙に限定されるものではなく正常な業務運営確保の
ための要員配置上必要な場合、所属長の判断により計画休暇付与予定日の変更をな
し得るのであり、これらの事象はあらかじめ想定し得るものもあるが、予想困難な
突発的な理由により発生することもあることは多言を要しないところである。
 本件の場合、参議院議員選挙関係郵便物完配等のための要員確保上、時季変更権
を行使したものであつて、正当な理由があつたものである。
(3) (ハ)については、原告らが主張するように昭和四六年九月三日(原告ら
が主張する九月八日は九月三日が正当)に郵便局長、次長、集配課長、同課副課長
および同課課長代理に対して、訓告処分等が行なわれたのは事実であるが、処分理
由は現金書留郵便物紛失と代替休暇付与上の遺漏であつて、原告らが主張する「計
画休暇不付与」は処分理由とはなつていない。
(二) 同2(一)、(2)について
(1) 高知郵便局集配課に対し、松山郵政局(現在は四国郵政局)が措置した定
員増は、昭和四五年度中に三名、昭和四六年度中に九名となつており、これらはい
ずれも同課における郵便物取扱増加に見合う要員として増員されたものであるか
ら、当時同局集配課の集配勤務者の定員が不足していた事実はない。従つて、定員
不足をカバーするために時間外労働を増加したり、あるいは年休、計画休暇の不付
与ないし変更という異常な措置をした事実もない。仮りに、当時の時間外労働が例
年に比較して増加していたとすれば、それは参議院議員選挙が実施された等の特殊
な事情によるものと考えられる。
(2) 高知郵便局集配課における昭和四六年度末(昭和四七年三月三一日)にお
ける計画年休の残日数は皆無となつており、昭和四六年度中に発給した計画休暇は
すべて付与されており、繰越し不能となつた計画休暇が七〇日であつた事実はな
い。代替休暇については、昭和四六年六月三〇日現在で四一名について延六八日が
未付与になつていたため、前記(一)(3)で述べたように関係責任者は高知郵便
局長から訓告処分等がなされ、未付与となつていた代替休暇については相当な措置
をし実質上与えて処理を了している。
(三) 同2(一)(3)について
 当時の集配課における計画休暇取扱いの実態は、年度当初における各人別希望日
の調整を行なわなかつた点はあるとしても、希望日そのものを付与予定決定日と
し、振替日の指定についても、でき得る限り職員の希望をしん酌して決定するとい
う措置をとつており、定員についても事務量に応じた増員措置が講じられているの
であるから、全く協約の精神を尊重しない混乱した取扱がなされていたとの主張は
認められない。また、管理者に前記調整に対する配意不足があつたとしても、休暇
不付与の事実はなく、付与予定日前日の変更通知は慣行化しているのであるから、
重大な不手際があつたとは認められず、ましてや原告ら労働者に犠牲を強いたもの
ではない。
第三 証拠(省略)
       理   由
一 請求原因12項の事実については当事者間に争いがない。
二 本件処分理由の存否について
1 Aについては昭和四六年六月二五日及び二六日が、また、Gについては同月二
四日が、それぞれ計画休暇付与予定日として同年度当初所属長によつて決定されて
いたこと、前記計画休暇付与予定日のうち、Aについては同月二六日が、Gについ
ては同月二四日が、それぞれ変更されたこと、それにもかかわらずA及びGが右当
日いずれも出勤しなかつたことについては、当事者間に争いがない。
2 被告は、原告らの計画休暇付与予定日の変更をしない場合には、高知郵便局集
配課の業務運行上支障をきたすことになるので、原告らの計画休暇を前記のとおり
変更した旨主張するので、その点につき判断する。
(一) まず本件の計画休暇制度について考察する。
 成立に争いのない乙一ないし三号証、証人Jの証言及び弁論の全趣旨によれば、
次の事実が認められる。
(1)(イ) 郵政省と原告らの所属する組合との間には年次休暇に関する労働協
約が締結されており、それによれば年次有給休暇には自由休暇と計画休暇の二種類
がある。前者は労働基準法三九条三項が予想している一般的方法であり、後者は前
者の方法で休暇を付与した際生じてきた欠陥すなわち労働者の年次休暇が完全に消
化されず、保有日数が逐年増加していくことに対する対策として作られた制度であ
る。
(ロ) この計画休暇の対象となる日数は、前年度に未使用になつた日数のうち一
〇日に達するまでの日数及び前々年度の発給日数であつて前年度までに未使用とな
つた日数である。
(ハ) 付与方法は、職員が年次有給休暇請求書にその希望する時季(特定の月日
である。以下同じ)を記入した年次有給休暇付与希望調書を添付して所属長に提出
し、所属長は年度当初においてできるだけ当該職員の希望する時季にわりふるよう
配慮して決定するのであるが、当該職員の希望する時季にわりふることが困難と認
めたときは、当該職員に対し、他に希望する時季を申し出させるとともにこれによ
つてもなおその者の希望する時季にわりふることが困難であると認めたときは、当
該年度中の他の適当と認める時季にこれをわりふつてその計画を決定し、これを当
該職員に通知する(但し、前々年度の発給日数であつて、前年度までの未使用日数
については、所属長がその年度の五月から順次各月について一日づつわりふり、か
つ前記方法に準じてその休暇を与える)。
(ニ) 次に年度当初所属長が決定した計画休暇について、当該計画休暇を実施し
た場合事業の正常な運営を妨げると認められるときは、当該付与計画にかかわら
ず、事業の運営に支障のない他の時季に付与することとして、計画の変更ができる
こととされている。
(2) 以上の事実からすると、計画休暇は前年度及び前々年度に消化しえなかつ
た有給休暇の繰越し分を計画的に年間を通じて適宜わりふり、消化しようとするも
ので、本質的には年次有給休暇と異なるものではないから、年度当初に定められた
計画休暇の変更は、労働基準法三九条三項但書に基づく時季変更権と同様の要件す
なわち「事業の正常な運営を妨げる場合」にのみ許されると解すべきである。そし
てこの場合、単に事業の繁忙、人員の不足というだけでは事業の正常な運営を妨げ
る事由となすに足らないのであつて(そうでなければ労働者は容易に休暇をとるこ
とができないこととなる)、事業の正常な運営を妨げないだけの人員配置をするこ
とは当然の前提であり、その上に事前に予測の困難な突発的事由の発生等の特別の
事情により、請求の時季に休暇を与えることができない場合に、時季変更権の行使
が認められるものと解するのが相当である。
(二) そこで進んで本件のA、Gに対する計画休暇の変更が、右の要件に該当し
適法に変更されたか否かにつき判断する。
 成立に争いのない甲第六号証の一ないし一二〇、同乙八、一七号証、証人Kの証
言及び右証言により真正に成立したと認められる乙一二、一三号証、証人H、同
E、同L、同C、同B、同I、同M、同Jの各証言、原告A、Gの各本人尋問の結
果(いずれも後記認定に反する部分を除く)を総合すると次の事実が認められる。
(1) Aについて
(イ) Aは、当時高知郵便局の郵便集配受持区域のうち、主として市内三区(高
知市下知地域の一部)の配達を担当していたが、同区は平常の場合常勤職員が一名
で担当し、通常八〇〇通位が配達可能通数であつた。
 Aの所属長であるD課長は、昭和四六年六月二六日が同月二七日の参議院議員選
挙の投票日の前日に当たるところから、同日中に選挙関係郵便物を完全に配達し終
えようとし、二六日の同区の要配達通数が、一、五〇〇通位あるものと予想し、右
一、五〇〇通を完全に配達するためには、常勤職員二名の配備が必要であると判断
した。
 郵便配達の特殊性、すなわち通区していない者は、通区している者に比較して格
段に配達能力が劣るという事情があるが、当時、市内三区において通区していたの
はBとAだけであつたので(Cも市内三区を配達することはあつたが、同人は通区
訓練中であつた)、D課長は、Aの同日の計画休暇を変更し、勤務につけることに
した。
 なお、右のBが同月二四日病欠し、同月二五日、二六日の出勤がはつきりしてい
なかつたことも、Aの計画休暇を変更する理由になつた。
 結局、同月二六日、市内三区には一、一〇〇通位の要配達物があり、Aが出勤し
なかつたため担当者は、Bだけとなつた(Bは二六日出勤した)。そこで下知地区
の速達便配達のため配置していた非常勤職員であるFを午後から市内三区にまわし
た。
 しかし、Bは病気上がりのため、残業を依頼することができず、また、Fは市内
三区に不馴れであるため、結局九〇〇通位を配達したに止まり、二〇〇通位が未配
達で残り、翌々日の配達となつた。また、Fを午後から市内三区にまわしたため、
速達便の配達に支障をきたした。
(ロ) 右事実からすると、Aに対する六月二六日の計画休暇の変更は、選挙関係
郵便物完配を理由とするものであるが、六月二七日に参議院議員選挙の行われるこ
とは相当以前より判明していたことであり、その投票日までに選挙関係郵便物を完
配しなければならないことは当時より当然予想しえたところであるから、所属長と
しては、そのための必要人員の確保、従つてまた計画休暇の変更も選挙に備えて早
期になすべきであつて、予定休暇日の前日に至つて突如選挙関係郵便物の完配を理
由として変更することは、予測困難な突発事由によるものとは認められないから、
これをもつて時季変更の正当事由と認めることはできない。また二六日のBの出勤
がはつきりしていなかつたことも計画休暇変更の一つの理由とされているが、これ
とても所属長としては、事前に同人に対し出欠を確かめ、同人が当日欠勤すること
を確認したうえで、Aの計画休暇を変更すべきであつて、その確認をすることな
く、単にBが欠勤するかもしれないことを予想して、Aの計画休暇を変更し、しか
も現実にはBが当日出勤したのであるから、結局本件変更は正当事由を欠くものと
いわざるをえない。
(2) Gについて
(イ) Gは、当時、高知郵便局の郵便集配受持区域のうち、主として市内五〇区
(汐江地区の一部)の配達を担当していたが、同区は平常の場合、常勤職員一名が
担当し、一日の配達可能通数は、七〇〇から八〇〇通位であるところ、昭和四六年
六月二四日の同区の要配達通数は一、三〇〇通が見込まれた。
 当時市内五〇区を通区しているのはGとIの二名であつた。
 Gの所属長であるD課長は、同月二七日の参議院議員選挙を控え選挙関係郵便物
の配達に万全を期するため、同月二四日の同区の郵便物を完配することとし、その
ためにはIのほかGも配置しなければ完配できないものと判断し、Gの二四日の計
画休暇を変更した。
 同月二四日、Gは出勤せず、Iが市内五〇区を一人で配達したため、同日の一、
三〇〇通位の要配達通数のうち約一、〇〇〇通を配達したのみで約三〇〇通が未配
達に終つた。
(ロ) 右事実からすると、Gに対する計画休暇の変更は、選挙関係郵便物の完配
を理由とするものであるが、前記Aについて述べた((1)の(ロ))のと同様の
理由により、これをもつて時季変更の正当事由と認めることはできない。
(3) 結局A、Gに対する計画休暇の変更はその要件を欠くものといわざるを得
ない。
3 以上において述べた理由により、原告らの行為が国家公務員法九八条一項、一
〇一条一項前段に違反し、同法八二条各号に該当するとの被告の主張はこれを認め
ることができない。
 よつて原告らに対する本件戒告処分はその余の主張を判断するまでもなく取消さ
れるべきである。
三 結論
 以上の次第で原告らの本訴請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担
につき、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 下村幸雄 高橋水枝 豊永多門)

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