弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人浜辺信義の上告趣意について。
 第一点は憲法一三条違反をいうけれども、実質は量刑不当の主張に帰し、第二点
は単なる法今違反の主張、第三点は量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴四〇五
条の上告理由に当らない。
 弁護人島田武夫の上告趣意について。
 第一点は要するに、公職選挙法二五二条の規定する選挙権及び被選挙権の停止は、
憲法三一条にいわゆる刑罰であるから公開法廷においてこれを宣告すべきであるの
に、その宣告の手続を採らなかつた一審判決を是認した原判決は、憲法三一条、八
二条に違反する違法があるというのである。
 しかし、選挙権及び被選挙権の停止は、公職選挙法二五二条一項または二項所定
の処刑の事実に伴つて当然に生ずる法律上の効果であつて刑法の規定する刑罰では
なく、右二五二条三項の宣告をなす場合の外特に宣告の手続を要するものでないこ
とは、同条の規定の趣旨に照して明瞭である(昭和三〇年(あ)第一六九九号同年
一一月二二日第三小法廷判決、昭和二八年(あ)第五三二二号同二九年六月二日第
二小法廷決定、なお、昭和三〇年(あ)第一九一三号同年一〇月五日第二小法廷決
定参照)。そして本件において、被告人が公職選挙法違反の罪につき正当な法律の
手続による公判審理の結果禁錮刑に処せられたものであることは論旨もこれを争わ
ないところであり、所論選挙権及び被選挙権の停止は右処刑に伴う法律上当然の効
果であることは前記のとおりであるから、右権利の停止も、ひつきよう法律の定め
る手続によつてなされたものに帰することはいうまでもないところであり、所論違
憲の主張は、その前提を欠くというの外なく採用の限りでない。
 第二点は単なる法令違反の主張、〔いやしくも他の選挙人の氏名を詐称しこれに
よつて投票した以上、投票管理者側の者がその情を知つていたと否とにかかわらず
公職選挙法二三七条二項の氏名を詐称して投票した罪が成立することは、当裁判所
の判例である。(昭和二九年(あ)第一六七三号、同年一一月一一日第一小法廷決
定、昭和二九年(あ)第一二九四号同三〇年二月三日第一小法廷決定)]第三点及
び第六点は本件と事案を異にし本件に適切でない判例の引用による主張、第四点及
び第五点は原審の判断が所論の如く判例と相反する判断をしたものとは認められな
い判例の引用による主張、第七点は量刑不当の主張であつて、いずれも刑訴四〇五
条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三五年一二月二日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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