弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人両名の弁護人定塚道雄同清野鳴雄の上告趣意について。
 按ずるに、被告人等の取引した金巾織上品、金巾染色品は原判決の確定したとこ
ろによれば何れも、繊維製品製造制限規則(以下規則という)に依る規格以外の綿
織物即ちいわゆる規格外綿織物であるが先ず綿綿織物の価格統制の経過を見ると、
織物については、昭和二〇年二月価格等統制令により、販売価額が指定されていた
ところ、(1)昭和二〇年一二月二八日、商工省繊維局長より、生産者代理A紡績
株式会社、乙号会社代理B統制株式会社、丁号会社代理C配給統制株式会社、小売
業者代理D組合に対し、二〇繊局第一一四三号を以て、価格等統制令第七条第一項
但書により前記規則による規格品(規格検査合格品及び同検査不合格品をいう以下
同じ)について、例外価額が一ケ年の期限を附して許可された。しかるに(2)昭
和二一年三月になつて、同年三月三一日大蔵省告示第二四一号により物価統制令第
四条の規定に基き前記許可価額に一定の倍率(二、〇七)を乗じた額を前記規則規
格検査合格品たる織上品の統制額とし同加工品には、別に定める統制加工賃(同年
同月同日大蔵省告示第二四五号により指定)を加算したものを統制額とする旨指定
し、且規格不合格品についても、之に準じて、統制額を指定した。即ち、前記(1)
の例外許可の価額は、ここに右告示によつて一定の増額をした上、物価統制令第四
条に基く、一般的な統制額とせられたのである、ところがその後(3)同年五月四
日大蔵省告示第三二一号により、前記(2)の同年三月三一日大蔵省告示第二四一
号に定むる織物以外の織物(即ち規格外品)の統制額は、使用原糸の種類、密度、
幅、長及組織等によつて、右告示に定むる規格品に最も近似した安いものの価格の
九割下げとし、又右告示第二四一号に依り販売する者以外の者が販売する場合には
規格品であつてもその統制額は、右告示の額の九割下げとする旨が定められた(故
に本件物品は規格外品であるから全然統制額を附せざる商品であるとの所論は誤で
ある)これはみだりに規格外品であると称して前記大蔵省告示第二四一号の統制額
によることを免れることを防ぎ又織物が一定の配給機関以外の者の手に流れ出るこ
とを防ぐため設けられた統制額であつて、所論にいわゆる罰則的価格であつたと思
われる。(従つて、罰則的価格は専ら業者価格であるとの所論も誤りである)しか
るに(4)昭和二一年六月B統制株式会社、丁号会社代理C統制株式会社、小売業
者代理D組合は、大蔵大臣に対し右昭和二一年五月四日大蔵省告示第三二一号によ
る、統制額(いわゆる罰則的価格)には依り難い事情があるとして規格外綿織物に
ついて物価統制令第三条第一頂但書により例外許可価額の申請をし、大蔵大臣から
同年六月二五日附蔵物商第八六号によつて、右申請に対し、物価統制令第三条第一
項但書により例外許可価額が有効期間を同年六月一五日より一ケ年間と限定して許
可され次いで(5)右有効期間満了前である、昭和二二年五月前同一申請者からの
申請に基き同年六月一四日物許第二〇二号により右申請者三者に対し、更に物価統
制令第三条第一項但書により例外価額が許可された。然るに昭和二一年八月織物消
費税法の一部が改正されたので、(6)同年九月一日物価庁告示第四〇号により、
従前の統制額に新税率による税額を加算することが許されたのである。
 以上の経過であつて、原判決が確定している本件被告人等の取引のあつた当時に
は、規格品については前記昭和二一年三月三一日大蔵省告示第二四一号による統制
価額が規格外品については前記昭和二一年五月四日大蔵省告示第三二号による統制
額(いわゆる罰則的価額)並に昭和二一年六月二五日蔵物商第八六号による例外許
可価額が存したのである。
 そして右昭和二一年六月二五日蔵物商第八六号、(以下昭和二一年蔵物商第八六
号と称する)による例外許可価額は、これなくば規格外品たる綿織物を販売するに
当つては、正規の配給機関が正当の事由があつて、之を販売する場合でも、規格品
の統制額の割下げ(一〇分の一)というような低価額いわゆる罰則的価額によらな
ければならなかつたので、このいわゆる罰則的価額によることなく、前記B統制株
式会社、丁号会社、小売業者が正当の事由により、規格外綿織物を販売する場合の
基準価額として、物価統制令第三条第一項但書により例外価額を許可したものとい
うべく、従つて、右昭和二一年蔵物商第八六号による例外許可価額は、当時規格外
綿織物を正当に販売するときの価額としては適正な価額であつたものといわなけれ
ばならない、何となれば右価額は業者の申請に基き申請通りの額を許可額としたも
のであつて相当の利潤も含まれていたものと認められるし、又当時綿織物は配給を
統制されていて自由販売は許されていなかつたので、右申請者等業者以外の取引を
考えることができないのであり、そして右価額が不当に低廉のものでないことは、、
右昭和二一年蔵物商第八六号の後を受け許可された前記昭和二二年六月一四日物許
第二〇二号の許可価額は右昭和二一年蔵物商第八六号の価額より僅かに高いことか
ら見ても明らかであるからである。故に原判決が被告人等が不当に高価な額で販売
したか否かを決するにあたり、右昭和二一年六月二五日附蔵物商第八六号(原判決
には蔵商物第八六号とあるが蔵物商第八六号の誤と認める)の価額を以つて適正価
額とし之を標準したことは何等違法ではない。尤も被告人等が本件取引をした当時
には、昭和二一年九月一日物価庁告示第四〇号により織物消費税の新税率による税
額を従来の統制額に加算することが許されていたのに、右昭和二一年蔵物商第八六
号による価額には之を加算してないのであるが原判決の確定するところによれば被
告人等は規格外品である金巾織上品幅二八吋のもの及同じく金巾染色品幅二四吋の
ものを、右昭和二一年蔵物商第八六号の例外許可価額によれば前者は一ヤール当り、
三円九三銭、後者は一ヤール当り四円九一銭であるのに、(右昭和二一年蔵物商第
八六号の許可価額は、夫々一ヤール(三六吋)平方の価額を示しているが、これを
夫夫右二八吋幅並二四吋幅に換算したものが右金額である)之を前者については、
六〇円乃至六七円後者については七七円三三銭乃至一〇八円九〇銭で販売したとい
うのであるから、右許可価額に前記新税率による税額を加算したものを標準として
比較しても、超過額は若しく大きく、又之を右昭和二一年蔵物商第八六号の後を受
けて許可された前記昭和二二年六月一四日附物許第二〇二号による許可価額(これ
には右新税額は加算されていると思われる)に比しても遥に大きいので新税額を加
算しない前記昭和二一年蔵物商第八六号り許可価額を標準としても、原判決に何等
影響はない、又右昭和二一年蔵物商第八六号による額は、前記昭和二一年五月四日
大蔵省告示第三二一号によるいわゆる罰則的価額に対し例外価額として許可された
ものであること、前記の通りであるから原判決は罰則的価額を標準として不当に高
価か否かを決した違法があるとの論旨は理由がない。
 又右昭和二一年蔵物商第八六号の価額は右許可の及ぶ一定業者のみに適用がある
ものであることは所論の通りであり且、原判決は、右許可価額のうち小売業者価額
を標準としていることは所論の通りであるが当時綿織物の販売をすることのできる
者は、配給機関として認められている業者(小売業者も同様である)に限られてい
たので他に之を販売する者はなかつた筈であるから、右業者に許された許可価額は
当時かゝる綿織物の取引については適正な価額を示したものといわなければならな
いこと前記の通りである。そして原判決は右許可価額のうち被告人等に一番有利な
小売業者価額を標準にしたのであるから原判決には何等違法はない、尚前記の如く、
右昭和二一年蔵物商第八六号は本来許可の及ぶ一定業者にのみ適用あるもので業者
でないものには適用ないものであるから、もし、前記昭和二一年三月三一日大蔵省
告示第二四一号及同年五月四日大蔵省告示第三二一号による統制額が被告人等の行
為を規制するものとすれば被告人等の所為は物価統制令第三条違反(統制額超過販
売)の罪となり、同令第一一条第二項(被告人行為当時の)違反(不当高価額取引)
の罪とはならないのではないかとの疑を生ずるけれども、前記昭和二一年三月三一
日大蔵省告示第二四一号及び同年五月四日大蔵省告示第三二一号は何れも、本件取
引の目的物たる金巾織上品同染色品については、生産者販売価額、B統制会社販売
価格、丁号会社販売価額のみを指定し小売業者販売価額を指定していないのでこれ
等の告示による統制額は被告人等の小売取引には適用ないものと解せられるので被
告人等の所為を物価統制令第一一条第二項違反の罪に問擬した原判決は正当である、
論旨は被告人等の如き綿織物の小売業者でないものの取引に適用すべき統制額がな
いから本件物品は統制を行はない建前で当然に自由価格となり、之を判示価格で販
売しても無罪とせらるべきであると主張するけれども、物価統制令第一一条第二項
(被告人等の行為当時の)違反の罪即ちいわゆる不当高価額取引の罪は、統制額の
定めのない物を販売する場合においても之を不当に高価な額で取引することを禁止
したものであつて、もしその価額が不当に高価な額であるときは罪となること論を
俟たないところであるから右主張は採用できない。
 次に論旨は、本件物品については、各府県において広く統制額によらざる地方長
官の例外許可が行われていると主張するが、本件物品について被告人等の本件取引
が行われた宮城県において当時所論のような地方長官の例外許可額の存したことは
認められない。してみれば原判決が前記昭和二一年蔵物商第八六号の小売業者価額
を以つて適正価額としこれによつて被告人等の取引が不当に高価な額を以つてなさ
れた否かを決める標準にしたのは正当であつて、又原判決の確定した被告人等の本
件物品の販売価額が不当に高価な額であることは、前記の如く右昭和二一年蔵物商
第八六号による価額の十倍以上となつていることに徴し明瞭である。してみれば原
判決には証拠に欠けるところはなく又原判決摘示の事実は挙示の証拠で十分認めら
れるばかりでなく、その他原判決には所論の理由齟齬の違法もない。よつて第一点
第二点の各論旨はすべて理由がない。
 よつて、旧刑訴法第四四六条に則り主文のとおり判決する。
 右は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
 検察官 安平政吉関与
  昭和二四年一一月一五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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