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平成25年4月16日判決言渡
平成24年(行コ)第38号固定資産評価審査決定取消請求控訴事件
主文
1原判決を次のとおり変更する。
(1)東京都固定資産評価審査委員会が控訴人に対して平成20年1月
23日付けでした固定資産課税台帳に登録された原判決別紙物件目
録記載の家屋に係る平成18年度の価格に対する審査申出を棄却し
た決定のうち価格248億2490万5100円を超える部分を取
り消す。
(2)控訴人のその余の請求を棄却する。
2訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを20分し,その1を被控訴人
の負担とし,その余を控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2東京都固定資産評価審査委員会が控訴人に対して平成20年1月23日付け
でした固定資産課税台帳に登録された原判決別紙物件目録記載の家屋に係る平
成18年度の価格に対する審査申出を棄却した決定のうち価格178億977
0万9700円を超える部分を取り消す。
第2事案の概要
1本件は,原判決別紙物件目録記載の家屋(以下「本件家屋」という。)の所
有者である控訴人が,本件家屋についての平成18年度固定資産税の課税標準
として東京都知事が決定して固定資産課税台帳に登録した価格を不服として,
東京都固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ,同委員会が
これを棄却する旨の決定をしたため,同決定のうち控訴人が相当と考える価格
を超える部分の取消しを求める事案である。
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控訴人は,上記取消しを求める理由として,本件家屋の建築当初の評価に誤
りがあったこと(具体的には,平成5年度において本件家屋の価格を評価する
に当たり,単位当たり再建築費評点数を算出する際の部分別評価において適用
された補正係数に誤りがあったこと)を主張したところ,原判決は,建築当初
の評価により固定資産課税台帳に登録された価格についての審査申出期間や
出訴期間が経過した後にあっては,建築当初の評価において適切に評価できな
かった事情がその後に判明したような場合や,建築当初の評価の誤りが重大
で,それを基礎にその後の家屋の評価をすることが適正な時価の算定方法とし
て不合理であると認められるような場合に限って,建築当初の評価が不合理で
あることを理由として,その後の基準年度の価格を争うことも認められるが,
本件家屋の建築当初の評価により固定資産課税台帳に登録された価格に関し
てそのような事情を認めることはできないとして,控訴人の請求を棄却した。
そこで,控訴人がこれを不服として控訴をした。
なお,控訴人は,本件家屋についての平成18年度の固定資産税の課税標準
価格につき,原審では178億9770万9700円を上回らないと主張して
いたが,当審の審理の過程で,その計算過程に誤りがあったとして,179億
2460万7400円を上回らないと主張を訂正した。
2法令の定め等及び争いのない事実等は,次のとおり補正するほか,原判決の
「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1及び2(2頁16行目から1
2頁1行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1)3頁7行目の「固定審査」を「固定資産」に改める。
(2)9頁13行目から14行目にかけての「当該補正項目について定められて
いる工事の施工量等と相違する場合においては,」を削る。
(3)11頁19行目の「乙30」を「乙31」に改める。
3争点及び争点に関する当事者の主張の概要は,次のとおり原判決を補正し,
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後記4のとおり当事者の主張(補充)を付加するほか,原判決の「事実及び理
由」欄の「第2事案の概要」の3及び4(12頁2行目から56頁10行目
まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1)19頁4行目の「別紙2」を「本判決別紙1「計算書(控訴人・被控訴
人比較)」の「A補正係数」及び「A単位当たり評点数」欄」に改める。
(2)21頁12行目の「コンクリート造である」の次に「し,鉄筋及びコン
クリートの標準評点数に含まれる労務費分と二重計上することになる」を加
える。
(3)26頁6行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「しかも,本件家屋の外部仕上げが普通であることは,本件家屋と立地条件,
規模及び外観のイメージ・グレード感において共通するBにおける外部仕上
げの施工の程度が普通として増点補正されていないことからしても明らか
である。」
(4)28頁14行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「しかも,本件家屋の内部仕上げが普通であることは,1階ロビー及び高層
階ロビーの壁面において統一された模様の花崗岩による仕上げがされて本
件家屋に劣らないグレード感を感じさせるBにおける内部仕上げの施工の
程度が普通として増点補正されていないことからしても明らかである。」
(5)30頁18行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「しかも,本件家屋の床仕上げが普通であることは,統一された模様の花崗
岩のほか大理石の模様貼などの使用により本件家屋に劣らないグレード感
を感じさせるBにおける床仕上げの施工の程度が普通として増点補正され
ていないことからしても明らかである。」
(6)33頁2行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「しかも,本件家屋の天井仕上げが普通であることは,システム天井が採用
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され,また,ロビーの天井などには吹き抜けがあるほか,曲線を描いた飾り
天井が採用され,本件家屋に劣らないグレード感を感じさせるBにおける天
井仕上げの施工の程度が普通として増点補正されていないことからしても
明らかである。」
4当事者の主張(補充)
(控訴人の主張)
(1)最高裁平成15年7月18日第二小法廷判決(裁判集民事210号28
3頁)は,固定資産評価基準の一般的な合理性を認めた上で,同基準に従っ
て評価,決定をした登録価格であっても,「評価基準が定める評価の方法に
よっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情又は評価基
準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情」が認められる場合に
は適正な時価とは認められず,これらの「特別の事情の存しない限り,その
適正な時価であると推認するのが相当である。」と判示した(以下,上記最
高裁判決のいう「特別の事情」のことを「最判のいう特別の事情」という。)。
そうすると,そもそも固定資産評価基準に従った固定資産の評価がされて
いるとはいえない場合,すなわち,同基準の適用に誤りがある場合には,そ
の評価価格を適正な時価と推認することはできないのであり,そのことは,
同基準の適用の誤りが,当該基準年度において生じたか,それ以前の基準年
度において存在したかにかかわらないというべきである。
本件においては,本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出
に誤りがあるのであるから,最判のいう特別の事情の存否を考慮するまでも
なく,平成18年度価格が適正な時価であるということはできない。
(2)在来の非木造家屋の評価額は,「前年度における再建築費評点数」に再
建築費評点補正率を乗じて求める評点数に損耗の状況による減点補正率な
どを乗じて算定されるところ,第二年度及び第三年度の価格は基準年度の価
格が据え置かれるため,平成18年度の評価額は,前基準年度である平成1
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5年度及びそれ以前の各基準年度におけるそれぞれの再建築費評点数が正
しくなければ適切に算定することができない。そのため,いくら平成18年
度固定資産評価基準が定める評価方法によって算定しようとしても,平成3
年度固定資産評価基準が適切に適用されて本件家屋の建築当初の再建築費
評点数が算出されていなければ「前年度における再建築費評点数」自体が誤
っているのであるから,平成18年度の評価額を適切に算定することはでき
ない。
本件においては,本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出
に誤りがあるのであるから,このような事情は最判のいう特別の事情に当た
るというべきである。
(3)非木造家屋の評点項目,補正係数及びその考え方は,平成3年度から平
成18年度まで変更されていないにもかかわらず,被控訴人は,本件家屋と
同種,同等,同規模の建物で平成12年度以降の比較的近時に建設された建
物(B,C,D,E,F。以下,これらを総称して「比較的近時に建設され
た建物」という。)については,本件家屋には一律1.30とした補正係数を
ほぼ1.00として増点補正をしていない。被控訴人は,本件家屋について補
正係数1.30を適用した理由として,「本件家屋が竣工した平成5年当時は
20階建以上の高層ビルは目新しかったこと」を挙げているが,このような
主観的判断の前提となった事情がその後変遷した結果,比較的近時に建設さ
れた建物については増点補正がされなかったものである。このような被控訴
人の増点補正に関する主観的判断の存在は,最判のいう特別の事情(評価基
準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情)に当たるというべき
である。
(被控訴人の主張)
(1)平成18年度価格は,固定資産評価基準に定められた「基準年度の前年
度における再建築費評点数に再建築費評点補正率を乗じて求める方法」に従
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って決定されており,最判のいう特別の事情の存しない限り,その適正な時
価であると推認されるというべきである。
(2)最判のいう特別の事情があるというためには,建築当初の評価において
適切に評価できなかった事情がその後に判明した場合や,建築当初の評価の
誤りが重大で,それを基礎にその後の家屋の評価をすることが適正な時価の
算定方法として不合理であると認められるような場合でなければならない
というべきである。
(3)控訴人の主張(3)については争う。
第3当裁判所の判断
1争点(1)について
(1)固定資産評価基準が定める家屋の評価方法は,前記引用に係る原判決の
「事実及び理由」欄の第2の1の(2),(3)のとおりであって,家屋の評価方
法として一般的な合理性を有するということができ,これに従って決定され
た家屋の価格は,固定資産評価基準が定める評価の方法によっては再建築費
を適切に算定することができない特別の事情又は固定資産評価基準が定め
る減点補正を超える減価を要する特別の事情の存しない限り,その適正な時
価(地方税法341条1号)であると推認するのが相当である(この点につ
いては控訴人も肯認するところである。なお,最高裁平成15年7月18日
第二小法廷判決・裁判集民事210号283頁参照)。
(2)しかして,前記引用に係る原判決の「事実及び理由」欄の第2の1及び
2の各事実(以下「前提事実」という。)によれば,本件家屋の平成18年
度価格は平成18年度評価基準(固定資産評価基準)に従って決定されたこ
とが明らかである。すなわち,在来分の非木造家屋(当該年度において新た
に課税の対象となる非木造家屋以外の非木造家屋)であることから,前年度
(平成17年度)の再建築費評点数に平成18年度評価基準が定める再建築
費評点補正率を乗じて再建築費評点数を算出し,これに基づいて決定されて
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いる。
そして,上記の前年度(平成17年度)の再建築費評点数についてみると,
基準年度の翌年度(第二年度)及び第二年度の翌年度(第三年度)の家屋の
固定資産税の課税標準については原則として当該家屋の基準年度の価格と
するものとされている(地方税法349条2項,3項)ところ,前提事実に
よれば,平成5年に新築された本件家屋の各基準年度(平成6年度,平成9
年度,平成12年度,平成15年度)の再建築費評点数は,それぞれ,その
前年度の再建築費評点数に所定の再建築費評点補正率を乗じることによっ
て算出されてきたのであり,例えば平成6年度の再建築費評点数は,平成5
年に新築された当初の再建築費評点数に平成6年度において適用される固
定資産評価基準が定める再建築費評点補正率を乗じて算出されたといえる。
(3)ところで,地方税法432条1項本文は,固定資産税の納税者は,その
納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台
帳に登録された価格について不服がある場合においては,固定資産課税台帳
に登録した価格等の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後60日ま
で若しくは都道府県知事の勧告を受けて固定資産課税台帳に登録された価
格を修正した場合の公示の日から同日後60日(固定資産の価格の修正によ
る更正に基づく納税通知書の交付を受けた者にあっては,当該納税通知書の
交付を受けた後60日)までの間において,又は登録価格等の公示の日以後
における価格の決定・修正の通知を受けた日から60日以内において,文書
をもって,固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる旨定
め,同法434条は,同委員会の決定に不服があるときは,その取消しの訴
えを提起することができ,登録価格についての不服は,上記審査の申出又は
上記取消しの訴えによることによってのみ争うことができることとしてい
る。また,第二年度及び第三年度の固定資産税の課税標準については原則と
して当該家屋の基準年度の価格とするものとされていることは上記(2)のと
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おりであるところ,同法432条1項ただし書は,第二年度及び第三年度に
おける家屋の価格に不服がある場合には,基準年度の価格によることが不適
当となる特段の事情を主張する場合に限り,所定の期間内に,審査の申出が
できるものとしている。
このように,地方税法が,固定資産税の課税標準である固定資産税課税台
帳の登録価格について不服があるときは,原則として基準年度の価格につい
て所定の審査申出期間内に固定資産評価審査委員会に対して審査の申出を
すべきものとし,第二年度及び第三年度における価格については審査の申出
をすることができる場合を限定し,これらの方法及び固定資産評価委員会の
決定に対する取消訴訟によらなければ価格を争うことができないこととし
ているのは,固定資産税の賦課処分の前提問題である課税標準となる固定資
産課税台帳の登録価格を早期に確定させることにより,固定資産税に関連す
る事項についての法的安定性を確保する趣旨であると解される。
(4)上記(3)の点に鑑みると,上記(2)の後段のように基準年度の再建築費評
点数がその前年度における再建築費評点数を基礎として算出される場合,そ
の前年度に至るまでの再建築費評点数の算出は各年度における固定資産評
価基準に従ったもの(適合するもの)と推認するのが相当である(以下,こ
の推認のことを「本件推認」という。)。
そうである以上,本件家屋の平成18年度価格は,固定資産評価基準に従
って決定されたものということができ,上記(1)のような特別の事情の存し
ない限り,その適正な時価であると推認されるというべきである。
(5)もっとも,納税者が本件推認を覆すに足りる事情が存在することを主張
立証したときは,上記(4)の後段のようにいうことはできない。なぜなら,
本件家屋の平成18年度価格は,前年度(平成17年度)の再建築費評点数
に平成18年度評価基準が定める再建築費評点補正率を乗じて再建築費評
点数を算出し,これに基づいて決定されたものであるところ,本件推認をす
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ることができないとすると,前年度(平成17年度)の再建築費評点数が固
定資産評価基準に従って算出されたとは直ちにいうことができず,したがっ
てまた,平成18年度価格が全体として固定資産評価基準に従って決定され
たものとは直ちにいうことができないからである。
控訴人は,本件家屋の建築当初の再建築費評点数の算出が固定資産評価基
準に従っておらず,その算出に誤りがある旨主張するところ,この主張は,
本件推認を覆すに足りる事情が存在する旨の主張であると解される。
本件家屋の建築当初の再建築費評点数の算出が固定資産評価基準に従っ
ておらず,その算出に誤りがあることの主張立証がされたときは,同算出を
正しくやり直し,これに基づいて前年度(平成17年度)の再建築費評点数
を算出した上で,これに平成18年度評価基準が定める再建築費評点補正率
を乗じて再建築費評点数を算出し,これに基づいて平成18年度の価格が決
定されるべきであり,本件決定のうちその価格を超える部分は違法なものと
して取り消すべきことになる。
(6)上記(5)の点について,被控訴人は,平成18年度価格についての不服と
して,本件家屋の建築当初の評価を争うことは原則としてできず,その評価
を争うことができるのは,建築当初の評価において適切に評価できなかった
事情がその後に判明した場合や,建築当初の評価の誤りが重大で,それを基
礎に評価をすることが適正な時価の算定方法として不合理であると認めら
れるような場合に限られるとし,このように解さないと,①建築当初の評価
額についての争いをいつでも蒸し返すことができることになり,固定資産税
の賦課決定処分の前提問題である固定資産税評価額を早期に確定させるこ
とによって法的安定性を招来しようとする地方税法の趣旨に反する結果と
なる,②当初の評価から時間が経過するほど,評価の対象となった建物には
経年変化が生じ,また,補修や増改築等による変更が生じることが当然に予
想され,そうなれば,当初の評価に誤りがあったかどうかを的確に判断する
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ことは困難になっていくことが当然に予想される,などと主張する。
しかし,固定資産税の課税標準である「価格」は固定資産評価基準(地方
税法388条1項)によって決定しなければならないが(同法403条1
項),その「価格」は,あくまでも「適正な時価」でなければならないので
あり(同法341条5号),固定資産評価基準に従って(すなわち,固定資
産評価基準を正しく適用して)決定された価格は「適正な時価」であると推
認されるというにすぎない。固定資産評価基準の適用に誤りがあると上記推
認はされず,このことは,その適用の誤りが,前記のような「建築当初の再
建築費評点数の算出の誤り」である場合であっても,当該基準年度における
価格の決定に影響を及ぼすものである限り,同様である。本件において,「建
築当初の再建築費評点数の算出の誤り」は,「前年度(平成17年度)の再
建築費評点数」に影響を及ぼし,ひいては平成18年度の価格に影響を及ぼ
すことが明らかである。地方税法432条1項も,基準年度の登録価格に関
して審査の申出をすることができる場合について何らの制限を設けていな
いのであり,被控訴人主張のような制限をすることはできない。
確かに,地方税法が,固定資産税の賦課処分の前提問題である課税標準と
なる固定資産課税台帳の登録価格を早期に確定させることにより,固定資産
税に関連する事項についての法的安定性を確保しようとしていると解され
ることは,前記(3)のとおりである。しかし,上記のように建築当初の再建
築費評点数の算出の誤りを主張することができると解したとしても,従前の
登録価格及びこれに基づく課税処分は確定していてこれを争うことができ
ないことに変わりはなく,その意味での法的安定性を害することはない。な
お,上記のように解すると,納税者は建築当初の評価の誤りをいつまでも主
張し得ることにはなるが,ひとたび審査手続や裁判手続を通じて争いが決着
すれば,重ねて同様の紛争が繰り返されることは稀であろうし,同様の紛争
の蒸し返しと見られる場合には,信義則上の主張制限という対処も考えられ
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るのであり,いずれにせよ,「適正な時価」の決定を優先すべきである。
また,建築当初の評価から時間が経過すればするほど,評価の対象となっ
た家屋には経年変化が生じ,修復や増改築等による変更が生じることが当然
に予想され,さらには,建築当初の建築関係書類が廃棄又は紛失されること
があることも想像に難くなく,そうすると,時の経過と共に建築当初の評価
に誤りがあったかどうかを的確に判断することは困難になることも当然に
予想されるということはできる。しかし,上記のように建築当初の再建築費
評点数の算出に誤りがあることについて主張立証責任を負担するのは,その
旨を主張して固定資産課税台帳に登録された価格の相当性を争う納税者で
あるところ,納税者が建築当初の再建築費評点数の算出に誤りがあることを
主張立証することができた以上,上記のような事情は建築当初の再建築費評
点数の算出の誤りに基づく上記登録価格の誤りを是正することを否定する
理由にはならないというべきである。
以上の次第で,被控訴人の主張は採用することができない。
2争点(2)について
上記1のとおりであるから,控訴人主張のように本件家屋の建築当初の再建
築費評点数の算出に誤りがあったか否か(具体的には,その算出に当たり各評
点項目の補正項目に対して適用された補正係数に誤りがあったか否か)を検討
すべきことになるが,当裁判所は,根切り工事の補正項目「地盤」の補正係数
に誤りがあった(増点補正をすべきではなかった。)と認められるが,その余
については誤りがあったとは認められないと判断した。その理由は,次のとお
り補正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」の
2(60頁5行目から107頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これ
を引用する(原判決は,上記補正係数に重大な誤りがあったかどうかを検討し,
いずれにも重大な誤りがあったとは認められないと判断したものである。)。
(原判決の補正)
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(1)60頁6行目の「本件家屋」から12行目の「まず」までを「控訴人主張
のように」に改め,同13行目の「重大な」を削り,61頁11行目の「評
価の誤りが重大である」を「評価に誤りがある」に改め,同13行目の「重
大な」を削る。
(2)62頁14行目から15行目にかけての「,重大な」を削り,63頁2
行目の「④」の次に「エントランス・ロビー部分には2か所の吹き抜けが設
けられ,また,住宅部分には24階に中庭が設けられ,中庭から空を望むこ
とができるように24階から最上階の30階までを中空にすることにより
ロの字型とするなど複雑な形態となっている上,」を加え,同8行目から9
行目にかけての「1.30としたことが重大な誤りであるということはできな
い」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に改め,同12
行目の「理由とならない」の次に「し,鉄筋とコンクリートの標準評点数に
は労務費分が含まれているから二重に計上されることになる」を,同17行
目の「家屋については」の次に「高度で複雑な工事を要することとなり」を
それぞれ加え,同18行目の「考えられる」を「考えられ,しかも,この分
は,鉄骨等の標準評点数に含まれる労務費分では評価されていないと解され
る」に,同23行目の「その資材の輸送運搬コスト等によりその使用量比を
超えて」を「高度で複雑な工事を要することとなって」に,64頁1行目の
「各階平面」から3行目末尾までを「このことのみをもって各階平面の凹凸
によって主体構造部の労務費が増すと判断したことが誤りということはで
きないし,本件工事の主体構造部における工事形態の複雑さが標準的な建物
におけるそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべ
き程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」にそれぞれ改め,同3
行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「そうすると,主体構造部の評価上,「工事形態」により1.30の補正をし
たことが誤りであったということはできない。」
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(3)64頁21行目の「,重大な」を削り,同23行目から65頁16行目
までを次のとおり改める。
「(ウ)そこで,本件家屋の敷地の地盤が軟弱な地域等であるかどうかについ
てみると,証拠(甲29)によれば,本件家屋の地盤の根切り対象部位の
N値(標準貫入試験で調査棒を深さ30㎝まで貫入させるのに必要な打撃
回数の値で,数値が大きいほど固い地盤と評価される。)は3ないし10
であり,根切り工事を行うに当たって特別な対応をする必要はなかったこ
と,本件家屋の敷地に対する圧密試験を実施した結果,各層の圧密降伏応
力(その土が過去に受けたことのある最大の上載荷重の応力)が,いずれ
も有効土被り応力(その土が受けている上載荷重による応力)に比べて大
きく,加圧密状態と評価されたこと,本件家屋の敷地のS波速度(地盤内
部を伝わるS波(横波,せん断波)の伝搬速度で,速度が速いほど固い地
盤と評価される。)が0.21㎞/secであったこと,したがって,本件家
屋の敷地の地盤は軟弱なものではなく,普通程度のものであったことが認
められ,これを覆すに足りる証拠はない。
そうすると,本件家屋の敷地の地盤について増点補正をする理由はない
から,根切り工事の評価上,「地盤」により1.50の補正をしたことは誤
りであった(補正係数は1.00とすべきであった。)といわざるを得な
い。」
(4)66頁10行目の「,重大な」を,同12行目の「証拠」から22行
目の「また,」までをそれぞれ削り,同26行目の「さらには」から67
頁11行目末尾までを「しかも,証拠(甲11の6,甲17,18,28,
乙32)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の敷地は,主要幹線道路に
面しておらず,周辺道路の幅員も広くはないと認められる上,根切り工事
を行った場合に発生する相当量の土(総掘削量15万5400㎥)を都心
部から郊外などの離れた場所に運搬しなければならないと考えられるか
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ら,トラックを数多く往復させる必要が生じるなど搬出すべき土の運搬に
は多額の費用を要するものと考えられる。このような事情を考慮すれば,
本件家屋に係る根切り工事は,多くの費用を要する困難なものと考えるこ
とは何ら不合理でないというべきであって,根切り工事の「敷地」に係る
補正係数を1.30としたことには相応の合理性が認められるというべき
である。控訴人は,根切り工事の「敷地」に係る補正係数を1.30とした
ことが誤りであると主張するが,上記のような事情が認められるにもかか
わらず,本件家屋の根切り工事の困難性が標準的な建物におけるそれと同
程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のもので
あると認めるに足りる証拠はない。そうすると,根切り工事の評価上,「敷
地」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできな
い。」に改める。
(5)68頁8行目の「,重大な」を削り,同12行目の「甲4,」の次に
「28,」を加え,同12行目から13行目にかけての「プレキャストコ
ンクリート板(100ミリメートル厚)に花崗岩を打ち込んだ」を「重量
のある花崗岩を隙間なく敷き詰めた型にコンクリートを流し込んで成型
した」に,同19行目の「1.30としたことが重大な誤りであるというこ
とはできない」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に,
同24行目から25行目にかけての「原告は」から69頁1行目の「主張
するのであり」までを「上記のとおり,外周壁骨組に使用されたプレキャ
ストコンクリート板は,重量のある花崗岩を隙間なく敷き詰めた型にコン
クリートを流し込んで成型したものであるが」にそれぞれ改め,同8行目
の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の外
周壁骨組の普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものであ
るとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに
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足りる証拠はない。
そうすると,外周壁骨組の評価上,「施工の程度」により1.30の補正
をしたことが誤りであったということはできない。」
(6)69頁18行目の「,重大な」を削り,同26行目の「前記(3)」を「前
記(1)」に,70頁6行目から7行目にかけての「1.30としたことが重
大な誤りであるということはできない」を「1.30としたことには相応の
合理性が認められる」にそれぞれ改め,同11行目の「足りる」の次に「,
<ウ>本件家屋の外部仕上げが普通であることは,本件家屋と立地条件,規
模及び外観のイメージ・グレード感において共通するBにおける外部仕上
げの施工の程度が普通として増点補正されていないことからも明らかで
ある」を,同21行目の「不合理とはいえない。」の次に「さらに,<ウ>
本件家屋とBとが,立地条件,規模及び外観のイメージ・グレード感にお
いて共通するということができるかどうかについては判然としないし,本
件家屋の外部仕上げの普請の程度がBのそれと同程度のものであると認
めるに足りる証拠もない。」をそれぞれ加え,同22行目の末尾に行を改
めて次のとおり加える。
「そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の外
部仕上げの普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものであ
るとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに
足りる証拠はない。
そうすると,外部仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正
をしたことが誤りであったということはできない。」
(7)71頁5行目から6行目にかけての「,重大な」を削り,同24行目
から25行目にかけての「1.30としたことが重大な誤りであるというこ
とはできない」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に
改め,72頁9行目の「明らかである。」の次に「また,控訴人は,本件
-16-
家屋の内部仕上げが普通であることは,1階ロビー及び高層階ロビーの壁
面において統一された模様の花崗岩による仕上げがされ,本件家屋に劣ら
ないグレード感を感じさせるBにおける内部仕上げの施工の程度が普通
として増点補正されていないことからも明らかである旨の主張をするが,
本件家屋の内部仕上げの普請の程度がBのそれと同程度のものであると
認めるに足りる証拠はない。」を加え,同10行目の末尾に行を改めて次
のとおり加える。
「そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の内
部仕上げの普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものであ
るとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに
足りる証拠はない。
そうすると,内部仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正
をしたことが誤りであったということはできない。」
(8)72頁19行目の「,重大な」及び同25行目から26行目にかけて
の「高層階にプールがあり,防水加工がされた床工事がされていること,」
を削り,73頁11行目から12行目にかけての「1.30としたことが重
大な誤りであるということはできない」を「1.30としたことには相応の
合理性が認められる」に改め,同15行目の末尾に行を改めて次のとおり
加える。
「また,控訴人は,本件家屋の床仕上げが普通であることは,統一された
模様の花崗岩のほか,大理石の模様貼などの使用により本件家屋に劣らな
いグレード感を感じさせるBにおける床仕上げの施工の程度が普通とし
て増点補正されていないことからも明らかである旨の主張をするが,本件
家屋の内部仕上げの普請の程度がBのそれと同程度のものであると認め
るに足りる証拠はないから,これを採用することもできない。
そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の床
-17-
仕上げの普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものである
とか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足
りる証拠はない。
そうすると,床仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正を
したことが誤りであったということはできない。」
(9)73頁24行目から25行目にかけての「,重大な」を削り,74頁
13行目の「1.30としたことが重大な誤りであるということはできな
い」を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に改め,同1
8行目から19行目にかけての「二重評価になる」の次に「,<エ>本件家
屋の天井仕上げが普通であることは,システム天井が採用され,また,ロ
ビーの天井などには吹き抜けがあるほか,曲線を描いた飾り天井が採用さ
れ,本件家屋に劣らないグレード感を感じさせるBにおける天井仕上げの
施工の程度が普通として増点補正されていないことからも明らかである」
を,75頁3行目から4行目にかけての「ものではない。」の次に「さら
に,<エ>本件家屋の天井仕上げの普請の程度がBのそれと同程度のもので
あると認めるに足りる証拠はない。」をそれぞれ加え,同4行目の末尾に
行を改めて次のとおり加える。
「そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の天
井仕上げの普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものであ
るとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに
足りる証拠はない。
そうすると,天井仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正
をしたことが誤りであったということはできない。」
(10)75頁15行目の「,重大な」を削り,76頁3行目の「1.30とした
ことが重大な誤りであるということはできない」を「1.30としたことに
は相応の合理性が認められる」に改め,同17行目の末尾に行を改めて次
-18-
のとおり加える。
「そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,本件家屋の屋
根仕上げの普請の程度が標準的な建物におけるそれと同程度のものであ
るとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに
足りる証拠はない。
そうすると,屋根仕上げの評価上,「施工の程度」により1.30の補正
をしたことが誤りであったということはできない。」
(11)77頁11行目の「,重大な」を削り,78頁2行目から3行目にかけ
ての「1.30としたことが重大な誤りであるということはできない」を「1.
30としたことには相応の合理性が認められる」に改め,同11行目の「し
たがって」から12行目末尾までを削り,同行目の末尾に行を改めて次の
とおり加える。
「そして,上記のような事情が認められるにもかかわらず,建具の施工の
程度が普通程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程
度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,建具の評価上,「施工の程度」により1.30の補正をした
ことが誤りであったということはできない。」
(12)78頁23行目の「,重大な」を削り,79頁1行目から2行目にかけ
ての「1.30としたことが,重大な誤りであるということはできない」
を「1.30としたことには相応の合理性が認められる」に改め,同3行
目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「控訴人は,ルーバーの「程度」に係る補正係数を1.30としたことが誤
りであると主張し,株式会社Aの従業員が作成した陳述書(甲28)中に
は,本件家屋のルーバーは特に高級なものではないとの陳述記載がある
が,このような陳述を裏付ける客観的な証拠はないし,その他の証拠によ
っても,ルーバーの程度が1.20の補正に止めるべき程度のものであると
-19-
認めるに足りる証拠はない。
そうすると,ルーバーの評価上,「程度」により1.30の補正をしたこ
とが誤りであったということはできない。」
(13)79頁11行目から12行目にかけての「これまでに」から20行目
末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋の既成間仕切の程度が標準
的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正を
すべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同22
行目の「重大な」を削る。
(14)80頁15行目の「,重大な」を削り,同19行目の「用いられており,」
から23行目末尾までを「用いられている一方で,「普通のもの」に該当
するとされている一般動力盤モーター用配線用遮断機(モーターブレーカ
ー)や開閉用マグネットスイッチが用いられていることが認められる(甲
30)が,本件全証拠によっても,本件家屋の動力配線設備の程度が標準
的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正を
すべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同25
行目の「重大な」を削る。
(15)81頁14行目の「,重大な」を削り,同20行目の「認められ」から
82頁1行目末尾までを「認められるところであり,本件全証拠によって
も,本件家屋の電灯コンセント配線設備の工事やその仕上がりの程度が標
準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正
をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同1
1行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「そうすると,電灯コンセント配線設備の評価上,「程度」により1.30
の補正をしたことが誤りであったということはできない。」
(16)82頁26行目の「,重大な」を削り,83頁12行目の「1.30とし
た」から13行目末尾までを「1.30としたことには相応の合理性が認
-20-
められるというべきである。」に改め,同14行目から15行目までを次
のとおり改める。
「これに対し,株式会社Aの従業員が作成した陳述書(甲30)中には,
本件家屋全体の85.3%を占める事務所部分の電話配線設備は一般的な
施工によっているとの陳述記載があるが,これを裏付ける客観的な証拠は
ないし,その他の証拠によっても,本件家屋の電話配線設備で使用されて
いる資材やその仕上がりの程度が標準的な建物のそれと同程度のもので
あるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認める
に足りる証拠はない。
そうすると,電灯コンセント配線設備の評価上,「程度」により1.30
の補正をしたことが誤りであったということはできない。」
(17)84頁4行目の「,重大な」を削り,同10行目の「これまでに」から
14行目末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋の照明器具設備の
程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,被控訴人がした1.
30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証
拠はない。」に改め,同15行目の「重大な」を削る。
(18)85頁3行目から4行目にかけての「,重大な」を削り,同11行目の
「これまでに」から15行目末尾までを「本件全証拠によっても,本件家
屋の呼出信号設備の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであると
か,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足り
る証拠はない。」に改め,同16行目の「重大な」を削る。
(19)86頁10行目から11行目にかけての「,重大な」を削り,同17行
目の「これまでに」から21行目末尾までを「本件全証拠によっても,本
件家屋の盗難非常通報装置の程度が標準的な建物のそれと同程度のもの
であるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認め
るに足りる証拠はない。なお,前記陳述書(甲30)中には,金属管内配
-21-
線である他のオフィスの仕様に比べて,特に本件家屋の盗難非常装置に手
間がかかったということはなかったとの陳述記載があるが,これを裏付け
る客観的な証拠はない。」に改め,同23行目の「重大な」を削る。
(20)87頁9行目の「,重大な」を削り,同14行目の「これまでに」から
18行目末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋のインターホン配
線設備の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の
補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はな
い。」に改め,同20行目の「重大な」を削る。
(21)88頁7行目の「,重大な」を削り,同12行目の「これまでに」から
16行目末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋の拡声器配線設備
の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を
下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に
改め,同18行目の「重大な」を削る。
(22)89頁12行目の「,重大な」,同19行目の「重大な」及び同21行
目の「重大な」を削る。
(23)90頁20行目の「,重大な」を削り,同24行目の「認められる」か
ら91頁3行目末尾までを「認められるところ,本件全証拠によっても,
本件家屋の工業用テレビ配線設備の程度が標準的な建物のそれと同程度の
ものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると
認めるに足りる証拠はない。」に改め,同5行目の「重大な」を削る。
(24)91頁25行目の「,重大な」を削り,92頁4行目冒頭から5行目の
「認められる」までを「23階のシャワーや住宅部分の水栓の計上漏れが
あることが認められる(甲30,乙11,弁論の全趣旨)」に改め,同7
行目の「重大な」を削る。
(25)92頁25行目の「,重大な」を削り,93頁6行目の「されているこ
と」の次に「や,平成3年度評価基準解説では,「排水設備は「給水設備」
-22-
及び「衛生器具設備」と常に一体をなして機能するものであり,「集中性」,
「設備の多少」,「管材」等の補正はこの三つの評点項目を通して見た場
合,一貫性があるものである。」(574頁)とされていること」を加え,
同9行目の「重大な」を削る。
(26)94頁2行目の「,重大な」を削り,同6行目の「鋼板製であり」を「鋼
板製のものではあるが」に,同9行目の「不合理ではなく」から10行目
末尾までを「不合理ではないところ,中央式給湯設備全体の程度が普通程
度のものであるとか,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであ
ると認めるに足りる証拠はない。そうすると,中央式給湯設備の評価上,
「程度」により1.30の補正をしたことが誤りであったということはでき
ない。」にそれぞれ改める。
(27)94頁26行目の「重大な」を削り,95頁6行目の「これまでに」か
ら11行目末尾までを「本件全証拠によっても,本件家屋の衛生器具設備
の程度が標準的な建物のそれと同程度のものであるとか,1.30の補正を
下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。そう
すると,衛生器具設備の評価上,「程度」により1.30の補正をしたこと
が誤りであったということはできない。」に改める。
(28)96頁15行目から16行目にかけての「しなかったことは合理的」を
「しなかったことには相応の合理性が認められる」に改め,同16行目の
末尾に行を改めて次のとおり加える。
「これに対し,前記陳述書(甲30)中には,本件各空調システムが受け
持つ面積は広範囲に及んでおり,規模の経済が生まれて作業は効率的にな
る旨の陳述記載があるが,このような陳述を裏付ける客観的な証拠はない
し,その他の証拠によっても,吸収式冷凍機,パッケージエアコンディシ
ョナー2設備について減点補正をしなかったことが誤りであったと認め
るに足りる証拠はない。
-23-
そうすると,吸収式冷凍機,パッケージエアコンディショナー2設備の
評価上,「規模」による減点補正をしなかったことが誤りであったという
ことはできない。」
(29)97頁1行目の「,重大な」を削り,同11行目の「すること」から1
2行目末尾までを「することには相応の合理性が認められるというべきで
ある。控訴人は,吸収式冷凍機,パッケージエアコンディショナー2設備
の「程度」に係る補正係数を1.30としたことが誤りであると主張するが,
本件全証拠によっても,空調設備全体の程度が1.10の補正に止めるべき
程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に改め,同14行目の
「重大な」を削る。
(30)98頁6行目から7行目にかけての「1.30としたことが重大な誤りと
はいえない。」を「1.30としたことには相応の合理性が認められるとい
うべきである。控訴人は,換気設備2設備の「程度」に係る補正係数を1.
30としたことが誤りであると主張するが,本件全証拠によっても,換気
設備2設備の程度が1.10の補正に止めるべき程度のものであると認め
るに足りる証拠はない。そうすると,換気設備2設備の評価上,「程度」
により1.30の補正をしたことが誤りであったということはできない。」
に改め,同15行目から16行目にかけての「,重大な」を削る。
(31)99頁16行目の「評価することができる」から18行目の「採用でき
ない。」までを「評価することができるところ,本件全証拠によっても,
レンジフードファンの程度が普通程度のものであるとか,1.30の補正を
下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。」に
改め,同19行目の「重大な」を削る。
(32)100頁14行目の「,重大な」を削り,同21行目の「1.30」から
22行目末尾までを「1.30としたことには相応の合理性が認められると
いうべきである。」に改め,同22行目の末尾に行を改めて次のとおり加
-24-
える。「控訴人は,スプリンクラー設備の「程度」に係る補正係数を1.
30としたことが誤りであると主張するが,本件全証拠によっても,スプ
リンクラー設備の程度が普通程度のものであるとか,1.30の補正を下回
る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
そうすると,スプリンクラー設備の評価上,「程度」により1.30の補
正をしたことが誤りであったということはできない。」
(33)101頁14行目の「,重大な」を削り,同21行目の「したこと」か
ら同行目末尾までを「したことには相応の合理性が認められるというべき
である。」に改め,同行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「控訴人は,エレベーター設備の「程度」に係る補正係数を1.30とした
ことが誤りであると主張し,前記陳述書(甲30)中には,本件家屋より
多くのステンレスが使用されているCやBと比べて補正係数が著しく高
くなっているとの陳述記載があるが,これを裏付ける客観的な証拠はない
し,仮にそのような事実が認められるとしても,ステンレスの使用の多寡
によってのみエレベーター設備の程度が判断されるものではないから,こ
れを理由としてエレベーター設備の「程度」に係る補正係数を1.30とし
たことが誤りであったということはできない。そして,その他の証拠によ
っても,本件家屋のエレベーター設備の程度が普通程度のものであると
か,1.30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足り
る証拠はない。
そうすると,エレベーター設備の評価上,「程度」により1.30の補正
をしたことが誤りであったということはできない。」
(34)102頁20行目の「,重大な」を削り,同26行目の「したことが」
から103頁1行目末尾までを「したことには相応の合理性が認められる
というべきである。」に改め,同行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「控訴人は,エスカレーター設備の「程度」に係る補正係数を1.30とし
-25-
たことが誤りであると主張するが,本件全証拠によっても,本件家屋のエ
スカレーター設備の程度が普通程度のものであるとか,被控訴人がした1.
30の補正を下回る補正をすべき程度のものであると認めるに足りる証
拠はない。
そうすると,エスカレーター設備の評価上,「程度」により1.30の補
正をしたことが誤りであったということはできない。」
(35)103頁25行目の「,重大な」を削り,104頁13行目の「したこ
とが」から14行目末尾までを「したことには相応の合理性が認められる
というべきである。」に改め,同行目の末尾に行を改めて次のとおり加え
る。
「控訴人は,仮設工事の「工事の難易」に係る補正係数を1.50としたこ
とが誤りであると主張するが,本件全証拠によっても,本件家屋の仮設工
事の難易の程度が1.20の補正に止めるべき程度のものであると認める
に足りる証拠はない。
そうすると,仮設工事の評価上,「工事の難易」により1.50の補正を
したことが誤りであったということはできない。」
(36)105頁6頁の「その他の行為」を「その他の工事」に改め,同12行
目の「,重大な」を削り,106頁12行目の「付設したこと」から13
行目末尾までを「付設したことには相応の合理性が認められるというべき
である。」に改め,同20行目の末尾に行を改めて次のとおり加える。
「また,前記陳述書(甲28)中には,原判決別紙4には主体構造部から
仮設工事までの部分別工事に該当するものか,もしくは一般的に施工され
るものが含まれており,二重に工事費が計上されているとの陳述記載があ
るが,これを裏付ける客観的な証拠はない。そして,そのほかの証拠によ
っても,本件家屋のその他の工事の施工状況が5.14の補正に止めるべ
き程度のものであると認めるに足りる証拠はない。
-26-
そうすると,その他の工事の評価上,「工事の多少」により20.00
の補正をしたことが誤りであったということはできない。」
(37)106頁22行目から107頁6行目までを次のとおり改める。
「以上のとおり,根切り工事の評価上,「地盤」により1.50の補正をし
たことは誤りであった(補正係数は1.00とすべきであった。)と認め
ることができるが,その余の点については,評価に誤りがあると認めるこ
とはできない。」
3控訴人は,比較的近時に建設された建物については補正係数をほぼ1.00と
して増点補正がされていないにもかかわらず,本件家屋についてはほぼ一律に
補正係数を1.30として増点補正がされていること,被控訴人が,本件家屋に
ついて補正係数1.30を適用した理由として,「本件家屋が竣工した平成5年
当時は20階建以上の高層ビルは目新しかったこと」を挙げていることを根拠
として,被控訴人において固定資産評価基準における補正係数適用に係る主観
的判断を変遷させたとし,このような事情は固定資産評価基準が定める減点補
正を超える減価を要する特別の事情に当たると主張する。
しかし,前記引用に係る原判決の「事実及び理由」欄の第2の1(3)のとお
り,標準評点数の補正は,標準評点数が標準的な非木造家屋の各部分別の単位
当たり施工量(標準量)に対する工事費を基礎として算出されているため,評
価の対象となった非木造家屋の各部分の工事の施工量等が「補正項目及び補正
係数」欄の「標準」欄に定められている工事の施工量等と相違する場合に,当
該家屋の工事の実態に適合させるためにそれに即して行われるものであると
ころ,本件家屋の工事の実態と比較的近時に建設された建物の工事の実態とが
同一であると認めるに足りる証拠はないから,控訴人が主張するような事情が
存したからといって,直ちに被控訴人が補正係数適用にかかる主観的判断を変
遷させたということはできないし,他にそのような事情を認めるに足りる証拠
もない。
-27-
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
4結論
以上によれば,本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出に当
たり,根切り工事の評価上,「地盤」により1.50の補正をしたことは,誤り
である(増点補正はすべきでない。)ところ,弁論の全趣旨によれば,この点
の補正をせずに根切り工事の単位当たり評点数を算出すると6752点とな
り,その結果,本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数は30万96
00点(100点未満切り捨て)となることが認められる。
そして,弁論の全趣旨によれば,上記のとおりの建築当初の単位当たり再建
築費評点数を前提として,本件家屋の平成18年度の単位当たり再建築費評点
数を算出すると,別紙2計算書のとおり,鉄骨造部分については29万710
0点(100点未満切り捨て),鉄骨鉄筋コンクリート造部分は28万880
0点(100点未満切り捨て)となり,これらに基づいて平成18年度におけ
る本件家屋の固定資産税の課税標準価格を算定すると,同計算書のとおり24
8億2490万5100円となることが認められる。
そうすると,本件決定のうち価格248億2490万5100円を超える部
分は,違法であり,取消しを免れないというべきである。
よって,控訴人の請求を棄却した原判決を上記趣旨に従って変更することと
し,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第19民事部
裁判長裁判官貝阿彌誠
裁判官生島弘康
-28-
裁判官土田昭彦
-29-
(原裁判等の表示)
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
東京都固定資産評価審査委員会が原告に対して平成20年1月23日付けで
した,固定資産課税台帳に登録された別紙物件目録記載の家屋に係る平成18
年度の価格に対する審査申出を棄却した決定のうち,価格178億9770万
9700円を超える部分を取り消す。
第2事案の概要
本件は,別紙物件目録記載の家屋(以下「本件家屋」という。)の所有者で
ある原告が,本件家屋についての平成18年度固定資産税の課税標準として東
京都知事が決定して固定資産課税台帳に登録した価格を不服として,東京都固
定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ,同委員会がこれを棄
却する旨の決定をしたため,被告に対し,同決定のうち,原告が相当と考える
価格を超える部分の取消しを求める事案である。
原告は,上記不服の理由として,本件家屋の建築当初の評価に誤りがあった
こと,具体的には,平成5年度において本件家屋の価格を評価するに当たり,
単位当たり再建築費評点数を算出する際の部分別評価において適用された補正
係数に誤りがあったことを主張しているのに対し,被告は,建築当初の評価の
誤りを平成18年度の価格に対する不服として主張することはできない旨主張
するとともに,そもそも建築当初の評価に誤りはない旨主張している。
1法令の定め等
(1)地方税法
ア固定資産税の課税標準について
-30-
地方税法349条1項は,家屋に対して課する固定資産税の課税標準は,
当該家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で家屋課税台帳等に登録
されたものとする旨定め,同法341条5号は,「価格」とは適正な時価
をいう旨,また,同条6号は「基準年度」とは,昭和31年度及び昭和3
3年度並びに昭和33年度から起算して3年度又は3の倍数の年度を経過
したごとの年度をいう旨それぞれ定めている。
地方税法388条1項は,総務大臣は,固定資産の評価の基準並びに評
価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め,
これを告示しなければならない旨定め,同法403条1項は,市町村長は,
固定資産評価基準によって,固定資産の価格を決定しなければならない旨
定めている。なお,平成18年法律第4号による改正前の地方税法734
条1項は,東京都の特別区の存する地域においては,固定資産税を東京都
が課する旨を定めているから,上記の固定資産の価格の決定は,東京都知
事が行うことになる。
イ固定審査の価格に関する不服審査等について
地方税法432条1項は,固定資産税の納税者は,その納付すべき当該
年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された
価格について不服がある場合においては,固定資産課税台帳に登録した価
格等の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後60日まで若しくは都
道府県知事の勧告を受けて固定資産課税台帳に登録された価格を修正した
場合の公示の日から同日後60日(固定資産の価格の修正による更正に基
づく納税通知書の交付を受けた者にあっては,当該納税通知書の交付を受
けた後60日)までの間において,又は登録価格等の公示の日以後におけ
る価格の決定・修正の通知を受けた日から60日以内に,文書をもって,
固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる旨定めている。
同法434条1項は,固定資産税の納税者は,固定資産評価審査委員会
-31-
の決定に不服があるときは,その取消しの訴えを提起することができると
定め,同条2項は,固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができ
る事項について不服がある納税者は,審査の申出又は上記取消しの訴えに
よることによってのみ争うことができる旨定めている。
(2)平成18年度評価基準
平成18年度において適用される固定資産評価基準(平成17年総務省告
示第1345号による改正後の昭和38年12月25日自治省告示158
号。以下「平成18年度評価基準」という。)第2章は,家屋の評価につい
て,次のように定めている。
ア家屋の評価(第1節一)
家屋の評価は,木造家屋及び木造家屋以外の家屋(以下「非木造家屋」
という。)の区分に従い,各個の家屋について評点数を付設し,当該評点
数に評点1点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法による
ものとする。
イ評点数の付設(第1節二)
各個の家屋の評点数は,当該家屋の再建築費評点数を基礎とし,これに
家屋の損耗の状況による減点を行って付設するものとする。この場合にお
いて,家屋の状況に応じ必要があるものについては,さらに家屋の需給事
情による減点を行うものとする。
ウ非木造家屋の評点数の算出方法(第3節一)
(ア)非木造家屋の評点数は,当該非木造家屋の再建築費評点数を基礎と
して,これに損耗の状況による減点補正率を乗じて付設するものとし,
次の算式によって求めるものとする。この場合において,当該非木造家
屋について需給事情による減点を行う必要があると認めるときは,当該
非木造家屋の評点数は,次の算式によって求めた評点数に需給事情によ
る減点補正率を乗じて求めるものとする。
-32-
〔算式〕
評点数=再建築費評点数×経過年数に応ずる減点補正率
(括弧書き略)
(イ)市町村長は,(中略)在来分の非木造家屋(当該年度において新た
に課税の対象となる非木造家屋以外の非木造家屋をいう(第1節三2(4)
参照)。)に係る再建築費評点数は「四在来分の非木造家屋に係る再
建築費評点数の算出方法」により求めるものとする。
エ在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数の算出方法(第3節四)
在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数は,次の算式によって求める
ものとする。(ただし書略)
(算式)
再建築費評点数
=基準年度の前年度における再建築費評点数×再建築費評点補正率
オ損耗の状況による減点補正率の算出方法(第3節五)
非木造家屋の損耗の状況による減点補正率は,経過年数に応ずる減点補
正率によるものとし(ただし書略),経過年数に応ずる減点補正率は,通
常の維持管理を行うものとした場合において,その年数の経過に応じて通
常生ずる減価を基礎として定めたものであって,非木造家屋の構造区分に
従い,「非木造家屋経年減点補正率基準表」(別表第13)に示されてい
る当該非木造家屋の経年減点補正率によって求めるものとする。
なお,別表第13においては,主たる用途が事務所,経過年数が13年
で,構造が鉄骨鉄筋コンクリート造の部分の経年減点補正率は0.84,
構造が鉄骨造(骨格材の肉厚が4ミリメートルを超えるもの)の部分の経
年減点補正率は0.7689とそれぞれ定められている。
カ再建築費評点補正率(第4節一)
固定資産税に係る平成18年度における在来分の家屋の評価に係る再建
-33-
築費評点補正率は,非木造家屋については,0.95とする。
キ評点1点当たりの価額(第4節二)
平成18年度における家屋の評価における評点1点当たりの価額は,物
価水準による補正率(非木造家屋については1.00)に設計管理費等に
よる補正率(非木造家屋については1.10)とを相乗して得た額を基礎
として市町村長が定めるものとする。
(3)平成3年度評価基準
平成3年度において適用される固定資産評価基準(昭和62年自治省告示
第191号による改正後の昭和38年12月25日自治省告示158号。以
下「平成3年度評価基準」という。)第2章は,家屋の評価について,次の
ように定めている。
ア家屋の評価(第1節一),評点数の付設(第1節二)及び非木造家屋の
評点数の算出方法(第3節一)については,前記(2)アからウまでと同じ。
イ非木造家屋の再建築費評点数の算出方法(第3節二)
非木造家屋の再建築費評点数は,当該非木造家屋の構造の区分に応じ,
当該非木造家屋について適用すべき非木造家屋評点基準表によって求める
ものとする。
非木造家屋評点基準表によって非木造家屋の再建築費評点数を求める場
合においては,各個の非木造家屋の構造の区分に応じ,当該非木造家屋に
ついて適用すべき非木造家屋評点基準表によって当該非木造家屋の各部分
別に標準評点数を求め,これに補正項目について定められている補正係数
を乗じて得た数値に計算単位の数値を乗じて算出した部分別再建築費評点
数を合計して求めるものとする。
非木造家屋の再建築費評点数は,次の「非木造家屋再建築費評点数の算
出要領」によって算出するものとする。
〔非木造家屋再建築費評点数の算出要領〕
-34-
(ア)非木造家屋評点基準表の適用
各個の非木造家屋の構造の相違に応じ,当該非木造家屋について適用
すべき非木造家屋評点基準表を定める場合においては,その使用状況の
いかんにかかわらず,当該非木造家屋の本来の構造によりその適用すべ
き非木造家屋評点基準表を定めるものとする。
(イ)床面積の算定(略)
(ウ)非木造家屋評点基準表の部分別区分
非木造家屋評点基準表の部分別区分の内容は,次のとおりである。
a主体構造部
(鉄骨鉄筋コンクリート造)
骨組を鉄骨で組み,これを鉄筋で補強し,その外部に仮枠を構成し,
これにコンクリートを打込んで硬化して構築した基礎,柱,梁,壁体,
床版,小屋組,屋根版等の主体構造部分をいう。
(鉄筋コンクリート造)
骨組を鉄筋で組み,その外部に仮枠を構成し,これにコンクリート
を打ち込んで硬化して構築した基礎,柱,梁,壁体,床版,小屋組,
屋根版等の主体構造部分をいう。
(鉄骨造)
形鋼と鋼板とを組合せ,鋲接又は熔接によって構築した基礎,柱,
梁,壁体,小屋組,屋根版等の主体構造部分をいう。
b基礎工事
建物の荷重を支える地下構造部分を築造するための根切り工事,建
物による荷重と地盤の状況に応じて施工する杭打地業,潜函地業及び
割栗地業等をいう。
c外周壁骨組
建物の外周壁の骨組で主体構造部を構成しないものをいう。
-35-
d間仕切骨組
内部の各部屋を区画する間仕切の骨組をいう。
e外部仕上げ
建物の外周壁の仕上げ部分とその下地部分をいう。
f内部仕上げ
建物の内周壁の仕上げ部分とその下地部分をいう。
g床仕上げ
床の仕上げ部分とその下地部分をいう。
h天井仕上げ
天井の仕上げ部分とその下地部分をいう。
i屋根仕上げ
建物の覆蓋を構成する屋根部分のうち,主体構造部に含まれる小屋
組,屋根版等を除いた屋根葺下地,仕上げ部分,防水層等をいう。
j建具
窓,出入口等の建具及びその建付枠並びにスチールシャッター等を
いう。
k特殊設備
劇場及び映画館のステージ,銀行カウンター,金庫室等の特殊な設
備及び階段の手摺等に別に装飾を施したもの等をいう。
l建築設備
電気設備,ガス設備,衛生設備,給排水設備等家屋に付属して家屋
の機能を発揮するための設備をいう。
m仮設工事
敷地の仮囲,水盛り,遣方,足場等の建物の建築に必要な準備工事
又は工事中の保安のための工事をいう。
nその他の工事
-36-
aからmまでのいずれの部分にも含まれない木工事,金属工事等を
いう。
(エ)評点項目及び標準評点数
a「評点項目」は,非木造家屋の構造に応じ,非木造家屋評点基準表
の各部分ごとに一般に使用されている資材の種別及び品等,施工の態
様等の区分によって標準評点数を付設するための項目として設けら
れているものであり,「標準評点数」は,評点項目の区分に従い,「標
準量」(標準的な非木造家屋の各部分別の単位当たり施工量をいう。)
に対する工事費を基礎として算出した評点数である。再建築費評点数
の付設に当たっては,非木造家屋の各部分を調査し,各部分の使用資
材の種別,品等,施工の態様等に応じ,該当する評点項目について定
められている標準評点数を求めるものとする。
b各部分別に再建築費評点数を求める場合において,各部分の使用資
材等の数量が明確なときは,該当標準評点数及び当該数量を基礎とし
て当該部分の当該部分の再建築費評点数を求めるものとする。この場
合において,下記(オ)に基づく補正係数による補正は,施工の程度に
応ずる必要な補正を行うものとする。
(オ)補正項目及び補正係数
非木造家屋の各部分の工事の施工量等が「補正項目及び補正係数」欄
の「標準」欄に定められている工事の施工量等と相違する場合において
は,当該補正項目について定められている工事の施工量等と相違する場
合においては,当該補正項目について定められている該当補正係数によ
って標準評点数を補正するものとする。
この場合において,補正項目について定められている補正係数の限度
内において処理することができないものについては,その実情に応じ補
正を必要とする範囲内において,その限度を超えて補正係数を決定する
-37-
ものとする。
(カ)再建築費評点数
再建築費評点数は,各部分別の標準評点数に当該部分の補正係数を乗
じて得た数値に,その計算単位の数値を乗じて求めた各部分別の再建築
費評点数を合計して求めるものとする。
2争いのない事実等(証拠等により容易に認められる事実は,末尾に証拠等を
掲記した。)
(1)本件家屋及び原告
本件家屋は,平成5年7月2日に新築された非木造家屋であり,原告は,
新築以来本件家屋を所有している。(甲1)
(2)本件家屋についての平成18年度の固定資産税の課税標準価格の家屋課
税台帳への登録
東京都知事は,平成18年3月31日,本件家屋についての平成18年度
の固定資産税の課税標準価格を251億48万2500円と決定し(以下,
この価格を「平成18年度価格」という。),これを固定資産課税台帳に登
録した。平成18年度価格は,以下のようにして算出されたものである。
ア本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数は,平成3年度評価基
準によって算出され,その後の基準年度である平成6年度,平成9年度,
平成12年度及び平成15年度の単位当たり再建築費評点数は,それぞれ
の各前基準年度の評点数に非木造家屋に係る各再建築費評点補正率を順次
乗じて算出された。(甲6,弁論の全趣旨)
イ在来分の非木造家屋の平成18年度の評価替えに当たっては,平成18
年度評価基準により平成17年度の単位当たり再建築費評点数に再建築費
評点補正率0.95を乗じて単位当たり再建築費評点数を求めるものとさ
れているから(前記1(2)カ),本件家屋については,地下1階及び地下2
階部分を鉄骨鉄筋コンクリート造,地上階部分を鉄骨造(骨格材の肉厚が
-38-
4ミリメートルを超えるもの)に区分し,それぞれの構造別に,平成17
年度の単位当たり再建築費評点数に再建築費評点補正率0.95を乗じて
再建築費評点数(鉄骨鉄筋コンクリート造については292,000,鉄
骨造については300,400)を算出し,さらに,これらにそれぞれ損
耗の状況による減点補正率(鉄骨鉄筋コンクリート造については0.84,
鉄骨造については0.7689)を乗じて単位当たり評点数を算出した上,
これらにそれぞれ現況床面積を乗じて算出した総評点数に,評点1点当た
りの価額(いずれも1.10)を乗じて構造ごとの価格を算出し,これら
を合算して,平成18年度価格を求めた。(甲5,6)
(3)審査の申出等
ア原告は,平成18年度価格を不服として,平成18年7月28日,東京
都固定資産評価審査委員会に対し,地方税法432条1項に基づき,審査
の申出をした。原告は,この審査の申出の理由として,本件家屋の建築当
初の再建築費評点数の算出が,補正係数が不当に高いこと等により不適切
である旨を主張した。(甲3,5)
イ原告は,前記アの審査の申出に基づく審査手続が係属中であった平成1
9年2月8日,東京都港都税事務所長に対し,本件家屋の価格の再調査を
申請した。
ウ東京都港都税事務所長は,平成19年4月26日に本件家屋の再調査
(以下「本件再調査」という。)をした上で,本件家屋の家屋評価計算書
の一部を修正したが,平成18年度の固定資産課税台帳の登録価格につい
ては,増減が生じなかったとして修正はしなかった。なお,本件再調査に
おいては,平成3年度評価基準に基づき,部分別明確計算(各部分の使用
資材等が明確な場合の計算)により単位当たり再建築費評点数を求めた上
で,評価額を算出したものであるが,その際に適用された補正係数につい
ては,当初の評価において適用された補正係数といずれも変わりがなかっ
-39-
た。(甲4,乙30)
エ東京都固定資産評価審査委員会は,平成20年1月23日,原告による
前記アの審査の申出を棄却する旨の決定(以下「本件決定」という。)を
したが,原告がした建築当初の再建築費評点数の補正係数が不当に高い旨
の主張(前記ア)については,平成18年度の審査申出により審査される
べき事項ではないとして,これを判断しなかった。(甲5)
(4)本件訴えの提起
原告は,平成20年7月22日,本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著
な事実)
3争点
(1)本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出が誤っているこ
とを理由として平成18年度価格の妥当性を争うことが許されるか否か。
(2)本件家屋の平成18年度価格は適切であるか否か。具体的には,本件再調
査において本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数を算出するに
当たり,各評点項目の補正項目に対して適用された補正係数は適正であった
か否か。
4争点に関する当事者の主張の概要
(1)争点(1)(本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出が誤っ
ていることを理由として平成18年度価格の妥当性を争うことが許されるか
否か。)について
(原告の主張)
ア本件において,原告は,本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点
数の違法を主張しているが,これは,平成18年度価格が違法であること
の理由として主張しているのであり,原告が主張するのは,平成18年度
価格の違法である。
なお,本件家屋については,東京都港都税事務所が平成19年4月26
-40-
日に本件再調査を行い,本件家屋の家屋評価計算書を一部修正した建築当
初の再建築費評点数の見直しがされ,東京都固定資産評価審査委員会によ
る本件決定も本件再調査後の評価内容についての原告の主張について判断
したものであるから,本件訴訟における取消請求の対象も,本件再調査後
の評価内容に対する本件決定である。したがって,本件訴訟において原告
が主張しているのは,建築当初の時点で算出された建築当初の単位当たり
再建築費評点数の違法ではなく,平成19年の再調査評価により算出され
た建築当初の単位当たり再建築費評点数の違法である。
イそして,以下のとおり,平成18年度価格に対する審査においても,建
築当初の再建築費評点数を争うことができるというべきである。
(ア)法文上の制限はないこと
地方税法432条1項は,価格の据え置かれた第2年度及び第3年度
の登録価格については,審査を申し出ることができる場合を家屋の改築
その他特別の事情がある場合に限定しているのに対し,基準年度の登録
価格については,審査を申し出ることができる場合を何ら制限していな
いから,審査において争うことができる事項について法律上の制限はな
い。したがって,固定資産評価審査委員会の決定の取消しの訴えにおい
て争うことができる事由についても,法律上何らの制限もないというべ
きである。
そして,一般に在来家屋について前年度の再建築費評点数に再建築費
評点補正率を乗じて当該基準年度の再建築費評点数を求める方式をとる
ことが不合理でないとしても,当該基準年度の再建築費評点数を求める
基礎となっている建築当初の再建築費評点数に違法があってもこれを争
うことができないのであれば,結果として納税者としては建築当初の価
格を対象にその登録の公示・納税通知書の交付から60日以内に審査の
申出をしなければそれ以降は一切争えないこととなるから,納税義務者
-41-
の不服申立ての機会を失わせるものであり,明らかに不当である。
(イ)固定資産の価格が適正な時価を上回ることは許されないこと
地方税法は,家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準
を,当該家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で家屋課税台帳等
に登録されたものとすると規定し(同法349条1項),固定資産の価
格は総務大臣が定める評価基準によって決定しなければならないとして
いる(同法403条1項)が,同法349条1項にいう価格については,
適正な時価をいうものとしている(同法341条5号)から,固定資産
評価基準に従って固定資産の価格が決定されるとしても,客観的な交換
価値を上回る価格を決定することはできず,したがって,固定資産評価
基準に従って決定された不動産の価格が適正な時価を上回る限度で,当
該価格の決定は違法となる。そうすると,建築当初の再建築費評点数の
評価を誤ったことにより適正な時価を上回る価格が建築当初の建物の価
格として決定された場合には,当該価格決定は違法となるが,その審査
申出期間を経過したことや,次基準年度以降において建築当初の価格を
基礎に当該基準年度の価格が決定されたことをもって,その違法が治癒
されるというものではない。
ウこれに対し,被告は,建築当初の評価を無制限に争うことができると
すると,建築当初の評価額についての争いをいつでも蒸し返すことがで
き,早期確定や法的安定性といった地方税法の趣旨に反する結果となり,
当初の評価から時間が経過するほど評価対象建物に経年変化や補修等に
よる変更が生じることが予想され,当初評価の誤りの有無を的確に判断
することが困難になると主張する。
しかし,地方税法は3年ごとに登録価格を見直すこととしているので
あるから,見直しの際に誤りを補正することができないとすることは,
3年ごとに価格の見直しを行うものとした同法の趣旨を没却することと
-42-
なる。また,法的安定性確保を理由に適正な時価を上回る価格が決定さ
れたことの違法性が治癒されるものでもない。
また,行政庁が価格を決定してこれを課税台帳に登録し公示をした後
であっても,行政庁は,再調査を行い,登録価格の基礎となった事項の
うち評価における認定誤りや適用誤りがあった場合には,登録価格を修
正することができるとされているのであるから,法的安定性確保を理由
に審査において建築当初の再建築費評点数を争うことができないとする
のは不当である。
さらに,本件家屋の建築当初の固定資産課税台帳登録価格は,固定資
産税課税台帳に登録された平成6年度の登録価格であり,当該価格につ
いては,平成14年改正前の地方税法が適用されるところ,納税者は自
己の資産に係る台帳部分のみを縦覧することができ,納税通知書交付後
30日以内に限り登録価格について審査申出をすることができたにすぎ
なかった上,納税通知書や課税台帳の記載からは,納税者が価格決定に
おける違法又は不当事由の存在をうかがい知ることはできなかったので
あるから,納税者が建築当初の登録価格について審査申出をすることな
く短期間の審査申出期間を経過したことを強く非難できるような実態は
ない。それにもかかわらず納税者がその後の建物価格についての不服を
申し立てるに当たって,建築当初の登録価格の違法を主張できないとす
ることは,課税庁側の一方的な利益に偏した解釈といわざるを得ない。
そして,建築当初の登録価格の違法を理由として特定の基準年度の建
物価格が争われ,確定した審査決定又は判決により,建築当初の登録価
格の違法を理由としてその後の特定基準年度の建物価格が改められた場
合には,審査決定又は判決により当該基準年度の登録価格が将来に向か
って変更されることは当然であるが,建築当初の登録価格及び当該基準
年度より前の基準年度の登録価格は何ら変更を受けるものではなく,そ
-43-
れらの価格を基礎として既に形成された法律関係に何らの効力を及ぼす
ものでもないから,法的安定性を害することにはならないし,上記のよ
うな決定又は判決の後に,納税者が再度建築当初の登録価格の別の違法
事由を主張して更に次回以後の基準年度の価格を争うことは既判力によ
り許されず,建築当初の登録価格の違法を否定する決定又は判決の後に,
納税者が再度建築当初の登録価格の違法を主張して次回以後の基準年度
の価格を争うことも許されないであろうから,建築当初の価格を巡る争
いを何度も蒸し返すことにはならない。したがって,後年の建物価格の
違法の理由として建築当初の登録価格の違法を主張することが法的安定
性を害することはない。
被告は,早期確定の立法趣旨が害される旨の主張をするが,建築当初
の登録価格に関わる一切の紛争を封じるという意味での建築当初の登録
価格の早期確定が生じないのは,建築当初の登録価格を基礎としてその
後の基準年度の建物価格を決定するという価格決定方法を採用している
制度の構造上,やむを得ないというべきであり,また,建物の経年変化
等により当初の評価の誤りがあったかどうかを的確に判断することが困
難になるとの点については,課税庁が自ら行った評価の適正を裏付ける
資料を的確に保管することにより容易に解決可能な問題である。
(被告の主張)
ア原告の主張は,結局のところ本件家屋の新築当初の再建築費評点数に対
する不服であって,平成18年度価格に対する不服ではないところ,以下
のとおり,新築当初の再建築費評点数を争うことは許されないというべき
である。
(ア)地方税法432条1項本文や同法434条の規定の趣旨は,審査申
出期間及び取消訴訟の出訴期間に制限を設けることにより,固定資産税
の賦課決定処分の前提問題である固定資産税評価額を早期に確定される
-44-
ことによって,法的安定性を招来しようとしたものである。
ところが,新築当初の評価自体を平成18年度価格に対する審査の申
出及び固定資産評価審査委員会の決定の取消訴訟においても争うことが
できるとすると,①建築当初の評価額についての争いをいつでも蒸し返
すことができることになり,早期確定及び法的安定性といった地方税法
の趣旨に反する結果となる上,②当初の評価から時間が経過するほど,
評価の対象となった建物には経年変化が生じ,また,補修や増改築等に
よる変更が生じることが当然に予想され,そうなれば,当初の評価に誤
りがあったかどうかを的確に判断することは困難になっていくことが当
然に予想されることから,この点においても早期確定により法的安定性
を図るという地方税法の趣旨が損なわれることになる。
したがって,少なくとも,当初の評価が行われてから一定期間が経過
した後になって建築当初の評価を無制限に争うことは許されず,在来分
の家屋として評価が行われている家屋については,原則として前の基準
年度との乗率の妥当性を争うことができるにすぎないというべきであ
る。
(イ)そして,建築当初の評価を争うことができるのは,建築当初におい
て適切に評価できなかった事情がその後に判明した場合や,建築当初の
評価の誤りが重大で,それを基礎に評価することが適正な時価の算定方
法として不合理であると認められるような場合に限られるというべきで
あるところ,具体的には,隠れた瑕疵等が存在した場合や経過規定の適
用の誤りがあった場合等がこれに該当すると考えられる。
ところが,原告は,本件において部分別評価の誤りを主張していると
ころ,原告は建築当初からの本件建物の所有者であって,新築時に当初
評価の妥当性を争うことができたのであるから,原告は上記のような特
別の事情がない限り建築当初の評価を争うことはできないというべきで
-45-
ある。
イこれに対し,原告は,再調査の制度があることから,建築当初の評価を
争うことができる旨の主張をする。しかし,再調査は,土地及び家屋の評
価の適正を確保するとともに,納税者からの土地及び家屋の評価に対する
疑義に速やかに対応することによってその信頼を得ることを目的に,固定
資産課税台帳に登録された土地及び家屋の価格の算定基礎である評価の内
容について,納税者から疑義の申出があった場合に行う東京都独自の行政
制度であって,法的に認められた納税者の権利ではなく,重大な錯誤のあ
ることが発見されない限り改めて価格決定をするものではない。したがっ
て,再調査制度があるからといって,そのことから直ちに原告が建築当初
の評価の妥当性を争えることにはならないというべきである。
また,原告は,地方税法432条1項が審査を申し出ることができる場
合を何ら制限していないから,固定資産評価審査委員会の決定の取消しの
訴えにより争うことができる事由についても,法律上何らの制限もない旨
主張するが,このように解すると建築当初の再建築費評点数に不服があれ
ば,基準年度ごとにいつまでも繰り返し争うことができることになり,極
めて不当であり,このことからしても,同法は当然に争うことができる違
法事由に一定の制約を課しているとみることができる。原告は,固定資産
評価審査委員会又は裁判において一定の結論が出た場合にはもはや争うこ
とができないから問題がない旨の反論をするようであるが,基準年度ごと
の価格が適法か否かが訴訟物である以上,理由中の判断については何回で
も主張できることになるので,原告の反論は失当である。
さらに,原告は,固定資産評価基準において建築当初の再建築費評点数
を基礎に在来分の家屋の再建築費評点数を算定する旨定められているとし
ても,固定資産評価基準により適正な時価を上回る価格を定めることはで
きないと主張するが,固定資産評価基準に従って決定された家屋の価格は,
-46-
固定資産評価基準の定める方法によっては再建築費を適切に算定すること
ができない特別の事情が存しない限り,適正な時価であると推認されるの
であり,建築当初において適切に評価できなかった事情がその後に判明し
た場合や,建築当初の評価の誤りが重大で,それを基礎に評価することが
適正な時価の算定方法として不合理であると認められるような特別の事情
がある場合を除き,建築当初の評価を争うことはできないと解すべきであ
るから,原告の上記主張は誤りである。
(2)争点(2)(本件家屋の平成18年度価格は適切であるか否か。)について
原告は,本件再調査における補正係数の適用には誤りがある旨主張し,被
告はその適用には誤りがない旨主張するところ,被告による本件再調査によ
る本件家屋の建築当初の評価は,別紙1のとおりであり,原告が適正である
と主張する本件家屋の建築当初の評価は,別紙2のとおりである。また,補
正係数に争いのある評点項目及び補正項目を抜き出し,これらについて①被
告が本件再調査により適用した補正係数及び②原告が適正であると主張する
補正係数並びに③平成3年度評価基準別表第12非木造家屋再建築費評点基
準表(以下「評点基準表」という。)に記載されている非木造家屋である事
務所,店舗,百貨店用建物に係る増点補正率の上限は,別紙3のとおりであ
る。そして,原告及び被告が主張する補正係数の根拠は,次のとおりである。
ア主体構造部(補正項目「工事形態」)
(被告の主張)
家屋の工事形態は,その規模,高さに応じて相違するので,一般的な規
模の家屋(平成3年度評価基準において,使用資材の量が明確でない場合
の計算(以下「不明確計算」という。)の際に補正の上限が適用される規
模として採用されている数値(階層数地上9階,床面積1万平方メートル
など)が目安とされる。)であるか,これを超える家屋であるかで判断手
法を分けているところ,一般的規模を超える家屋の場合は,①規模,高さ
-47-
(階層数が20階を超える場合には,特に大きな増点要因となる。),②
躯体の形状の複雑性,③地下階の規模(面積)や深さ(階層数)が大きい
こと,④用途が複数であること,吹き抜けなど家屋内部の構造に複雑性が
あること,構造が複数あること,その他工事を複雑にする家屋の性状,が
増点要因となり,個々の家屋に対する補正係数の付設は,これらの要因の
該当の有無,要因が建築費に与える影響の大きさを判断して行うこととな
る。これらの要素が不明確計算の場合の補正項目として別個に設けられて
いるからといって,考慮してはならないことはない。
そして,本件家屋は,当時では数少ない超高層ビルディングの1棟であ
ること,地下階部分が鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造,
地上階部分が鉄骨造という複合構造であり,地下階部分の大きさがかなり
あること,大きく4つの用途に分けて施工されている複合的な用途の大規
模建造物であること,各階平面は,単純な長方形ではなく,短い直線や屈
折のある多角形となっていること,重厚な建物であって,建築当時として
は,事務所部分は最新のインテリジェントビル,住居部分は超高級賃貸マ
ンションであったといえること等から,本件家屋の主体構造部の工事形態
は通常の工事形態に比較して相当に複雑ということができる。さらに,高
層の建物も工事に伴う労務費等が高額になるということができる。
したがって,本件建物の主体構造部の補正にあたり,補正係数を1.3
0と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋は,建物の主体構造部の工事形態が通常の工事形態に比較して
複雑であることはなく,外壁面も直線で構成され,外観から見て建物の外
壁の凹凸は極めて少なく,形態としては非常に単純なものである。また,
本件家屋においては主体構造部の使用資材の数量が明確であり,工事形態
から生じる労務費を考慮すれば,延べ床面積が大きい建物は単位面積当た
-48-
りの労務費は低くなるのであり,この点からも本件家屋について工事形態
による増点補正,しかも評点基準表が定める補正係数を超える補正係数に
よる増点補正を行うべき理由はない。
被告は,本件家屋は,標準的な家屋とは階層数や規模等が著しく異なる
としているが,工事形態による補正は,階層数や規模により行われるべき
ものではないし,主体構造部の施工は,製作済みの鉄骨をタワークレーン
で組み立てるだけであるから,階層数が多いことをもって労務費が著しく
かさむものではない。また,平成3年度評価基準には建物の規模によって
判断手法を分ける手法を用いることを許容する旨の記載は存在せず,むし
ろ,規模や高さを考慮して「工事形態」を増点補正することは,「工事形
態」だけが補正項目となっている使用資材の使用料が明確な場合における
明確計算に,使用資材の数量が不明確な場合の不明確計算に限って補正項
目となっている「階層数」や「階高」,「地階」による補正を持ち込むも
ので,平成3年度評価基準が予定していない評価方法であるし,被告が増
点要因とする地下階の規模や深さも,基礎の根切り工事の補正項目である
「地階」で考慮されるべき要素である。さらに,本件家屋は,低層階に店
舗,中層階に事務所,高層階に住宅を単純に配置しているにすぎず,用途
が複数であることが主体構造部の複雑性をもたらすものではないし,本件
家屋のように地下部分を有する鉄骨造りでは,ほぼ全ての家屋の地下部分
は鉄骨鉄筋コンクリート造であるから,構造が複雑であることをもって増
点補正する理由にはならず,外壁や空堀については,別の評点項目におい
て評価することとされているから,これらを理由に主体構造部について増
点補正することは許されない。
イ根切り工事
(ア)補正項目「地盤」
(被告の主張)
-49-
本件家屋の現実の基礎工事においては,基礎だけでは建物の加重を支
持できない場合に支持力を増大するために行う杭打地業工事,すなわち
地盤が悪い場合に施工が多く必要になる杭打地業工事において,杭の長
さが補正値の上限を超える長さ20メートル以上,杭の口径が120セ
ンチメートルから210メートルという長く太い杭を394本も打ち込
んでいることから,本件家屋のような自重量の重い建物で,かつ,大規
模な超高層ビルであっても,地盤が良くないという推測が成り立つので
あって,評点基準表の上限である1.50の補正係数を適用したもので
あり適正である。
(原告の主張)
本件家屋の敷地は,地表面から地下5メートルないし12メートル程
度まではローム層が堆積し,その下は粘土層である上,地盤の堅さを示
すN値も概ね5ないし10のレベルにあり,更に,地下水は地下6メー
トルないし11メートルであって,基礎工事においては良好な地盤であ
り,地下水の湧水量が多いということもできないから,増点補正係数を
適用することはできない。
被告は,杭打地業工事を理由に増点補正をしたのは適正であると主張
するが,杭打地業工事については,別途評点項目が設けられているから,
これを理由に根切り工事について増点補正することは不適正であるし,
被告が主張する事由は,地盤が軟弱であると評価する事由になり得ない。
(イ)補正項目「敷地」
(被告の主張)
「敷地」による補正は,建物の密集した地域においては根切り工事が
困難で能率が悪くなること,保存すべき土量を敷地外の他の場所に移動
しなければならない場合に運搬費が増加することといった事情を反映さ
せることを目的に設けられたものである。
-50-
そして,本件家屋が所在するα×は,α××及びα×××と併せて三
方を街路に囲まれており,都市計画上も三街路に沿った「コ」の字形状
の商業地域が設定されていること,本件家屋もこの商業地域内にあって,
周囲の土地利用は事務所店舗ビル,マンション等が主となっていること,
本件家屋の地下部分は,敷地面積一杯に利用しており,建物の外回りで
ある外構部分に大規模な空掘などが施工されていて運搬土量も多いこと
に加え,敷地に高低差があり土の搬出に一層の手間を要すること等の事
情があること,工事車両は,いずれも数百メートル先の主要道路を利用
して出入りし,都心を通って土の搬出先との間を往復せざるを得ないの
だから,こうした事情は当然運搬費の増加につながること等から,隣接
宅地に根切り工事の影響を及ぼさないという観点からみて,建物密集地
域における困難な工事に該当することは明らかであり,そのような観点
から1.30の補正係数を適用したものであり適正である。
(原告の主張)
本件建物の敷地は,大規模なものであり,空地が敷地面積の約35パ
ーセントに及び,掘り出された土を敷地内に保存することは十分に可能
であり,根切り工事の施工スペースも十分に確保できる。また,本件建
物の周辺はビルが密集しているとはいえないし,交通量もとりたてて多
くない上,大型車による効率的な運搬ができる。したがって,根切り工
事が困難とは到底評価することができず,増点補正係数を適用すること
は誤りである。
なお,本件家屋のように大型の建物の根切り工事においては掘り出し
た土を敷地内に保存しておくことは一般的ではないから,これを保存し
ておくことが困難であることをもってすべからく補正係数の上限まで増
点補正するのは不適切である。
ウ外周壁骨組(補正項目「施工の程度」)
-51-
(被告の主張)
本件家屋の外周壁骨組みは,単にプレキャストコンクリート板が使用さ
れているのではなく,重量のある花崗岩を隙間なく敷き詰めた型にコンク
リートを流し込んで成形したものを超高層ビルにおいてタワークレーン等
を使用して施工しているのであるから,プレキャストコンクリート板の制
作費やタワークレーンの使用料等を考慮して施工の程度を「良」として1.
30の補正係数を適用したものであり適正である。
(原告の主張)
本件家屋の外周壁骨組には,一般的に用いられる資材であるプレキャス
トコンクリート板(100ミリメートル厚)が使用されており,特に高級
であるとはいえないから,「施工の程度」による増点補正をすることは許
されない。
被告は,プレキャストコンクリート板に花崗岩を打ち込んでいることを
もって施工の程度が良いと主張するが,花崗岩は「外周壁骨組」を構成す
るものでないから,これをもって増点補正することは許されない。また,
プレキャストコンクリート板の製作費は,標準評点数の積算基礎である資
材費評点数に含まれているものであり,タワークレーンの使用料は,仮設
工事で評価されるものであるから,これらを「施工の程度」の増点要素と
することはできない。
エ外部仕上げ(補正項目「施工の程度」)
(被告の主張)
外部仕上げにおける「施工の程度」の補正の趣旨は,個々の家屋の工事
費の実態に適合させるように標準評点数の補正を行うことにあるから,工
事費の上昇をもたらすと一般的に想定される要素について,評価対象家屋
の該当の有無,当該要素が評点数に与える影響の大小を判断の上,補正係
数を定めることになり,具体的な補正係数の決定に際しては,建築図面や
-52-
仕様書,見積書等の設計図書,実地での確認等から上記の事項の判断,工
事費との関係,他の家屋との均衡を併せて考慮していくことになる。そし
て,外部仕上げにおいて増点補正の対象となる要因としては,①凹凸,曲
面等の形状の複雑性や,高層であること等の躯体構造上の特性により,仕
上げ工事の特殊性があること,②使用資材が多様であること,使用資材に
標準的でない施工が施されていること等,工事形態が複雑なものとなる要
因があること,③その他外観上から判断できる施工の程度の良否等がある。
そして,本件家屋の外部仕上げは,単に花崗岩,小口・二丁掛タイル等
が使用されているだけでなく,花崗岩の仕上げにおいて外面に凹凸があり
装飾も施されるなど,明らかに標準的工事とは異なる意匠性を重視した程
度の良い施工であることが見て取れ,また,本件家屋は超高層ビルディン
グのため,当然その施工においても標準的な家屋とは異なり多額の工事費
を必要とする(建築現場での施工の手間と工場での施工の手間のいずれも
家屋評価には反映すべきである。)ものであるから,補正係数を1.30
と定めたことは適正である。なお,「施工の程度」の補正は,外部仕上げ
に使用されている評点項目ごとに行うものではなく,外部仕上げ全体の施
工状況を標準的な施工状況と比較して判断するものであり,資材としては
同一の評点項目に該当するものであっても,外壁としての意匠性や色合い
の均一,磨き上げの良さなど,特に高級な仕上げと認められるものについ
ては仕上げの程度がよいものとして補正を行うものであり,良い資材であ
ることを二重に評価しているわけではない。
(原告の主張)
本件家屋の外部仕上げ資材は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表に挙
げられている一般的な資材であるから,外部仕上げが一般的な施工でなく
特に高級な施工であると評価する理由はない。
なお,本件家屋に使用された花崗岩の総額はわずか11.48パーセン
-53-
トを占めるにすぎない。また,磨き仕上げの花崗岩を使用したことによっ
て増点補正することは,花崗岩を仕上げ材とすることのコスト高を二重に
評価していることになるし,本件家屋の外部仕上げに使用されている花崗
岩は装飾性のない平面であり,あらかじめ工場でコンクリート盤に打ち込
まれたものであるから,通常の家屋の外部仕上げに比べて工事費が特にか
さむということはない。
また,外部仕上げの「施工の程度」は,普請の程度の良否に応じて,特
に高級な建物であるとか,普請の程度の悪い建物の工事費を補正するため
の補正項目であり,家屋が高層であることと普請の程度の良否は関係ない
し,使用資材が多様であることも,それぞれ評点項目ごとに評価すれば足
り,一般的な範囲で多数の資材を使用する限り,これによって通常の家屋
に比して工事費がかさむことはないから,これらの要素が増点補正の要素
となるものではない。
オ内部仕上げ(補正項目「施工の程度」)
(被告の主張)
この補正の趣旨は,個々の家屋で標準量と異なった施工量によっている
ものについて,標準的なものとの相違に見合うように標準評点数の補正を
行うことにあるから,内部仕上げに係る工事費の上昇をもたらすと一般的
に想定される要素について,評価対象家屋の該当の有無,当該要素が評点
数に与える影響の大小を判断の上,補正係数を定めることになる,また,
評価上の部分別区分は,建築実務上の工事区分と異なり,評点付設の便宜
上,家屋の構造を外見的な面から目視することができる部分に区分したも
のであるから,内部仕上げから床仕上げまでの各部分は,いずれも工事見
積書では内装工事の分類に該当していて,一体的に仕上げが施工されてい
るので,それぞれの施工の程度に差がつくことはなく,これらの区分にお
ける「施工の程度」の補正係数は,形状等で特段の事情が認められない限
-54-
り,同一の補正係数を用いることになる。そして,内部仕上げにおいて,
増点補正の対象となる要因は,①凹凸,曲面などの形状の複雑性や,高層
であることや吹き抜けの存在などの躯体構造上の特性により,仕上げ工事
の特殊性があること,②使用資材が多岐にわたること,③仕上げ面積の大
きな箇所があり,模様や柄合わせなどで施工の困難性が認められること,
④その他外観上から判断できる施工の程度の良否がある。
本件家屋は,特に高層の家屋であり,低層階部分に規模の大きな吹き抜
け部分があり,施工状況の特殊性が認められること,使用資材がいずれも
20種類近くあり,仕上げ工事の多様性が認められること,家屋規模に応
じて仕上げ面積の大きな箇所があり,高度な技能が必要とされること,事
務所部分のエスカレーターホール,2階ロビー及び住宅部分の専用ロビー
等,施工の難しい大きな仕上げ部分を,大理石や花崗岩を用いて平面的に
美しく仕上げているのに加え,事務所部分では大きな仕上げ面積を占める
石膏ボードにエマルジョンペイントを吹き付けて,24階以上の高層部に
ある住宅部分では同様に大きな仕上げ面積を占める合成樹脂壁紙でそれぞ
れ仕上げをするなど,明らかに一般の事務所や共同住宅の標準的工事と比
較して程度の良い施工であるということができることから,補正係数を1.
30と定めたことは適正である。なお,「施工の程度」の補正は,内部に
使用されている評点項目ごとに行うのではなく,内部仕上げ全体の施工状
況を標準的な施工状況と比較して判断するものである。
(原告の主張)
本件家屋の内部仕上げ資材は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表に挙
げられている一般的な資材であるから,内部仕上げが一般的な施工でなく
特に高級な施工であると評価する理由はない。
なお,高層であることや使用資材が多様であることは内部仕上げの「施
工の程度」に関係がなく,吹き抜けであることによって建物内部の壁のク
-55-
ロス貼り等が対象である内部仕上げにかかる工事費がかさむことは考えら
れないのであるから,これらが考慮すべき要素にはならない。被告が主張
する仕上げ面積が大きいことについても,それが仕上げ面積の大小そのも
のに着目する趣旨であれば,それは使用材料の数量が明らかな明確計算で
は補正項目になっていない不明確計算の補正項目を考慮していることにほ
かならず,それが仕上げ面積の大きな箇所があると模様・柄合わせがあっ
て施工が困難になるという趣旨であれば,模様・柄のあるクロスを貼ると
きに柄合わせをすることは一般的なことであって,仕上げ面積が大きいこ
とと柄合わせの要否には関連性がなく,むしろ,既製品を貼る場合には,
仕上げ面積が大きい方が作業は容易になる。また,大理石や花崗岩は平面
的にカットされたものを納入して貼り付けるにとどまるから,平面的に美
しく仕上がるのは当然であり,エマルジョンペイントの吹き付けは内部仕
上げの加算評点項目に挙げられているからこれを理由に増点補正をするこ
とは許されないし,そもそも手間のかかるような工法ではない。住宅部分
の合成樹脂壁紙も労務費がかさむものではない。さらに,内部仕上げにつ
いては,使用資材に応じて評点項目が設けられているにもかかわらず,一
律に施工の程度を補正項目として増点補正することで,大理石,花崗岩や
石膏ボードの仕上げを理由として他の使用資材の評点項目について増点補
正することは許されない。資材及び人をクレーンや工事用エレベーターを
用いて高層階に運ぶことによるコストの増加は微々たるものであり,この
ような事情は増点補正の根拠にならない。
カ床仕上げ(補正項目「施工の程度」)
(被告の主張)
この補正の趣旨は,特に手間の多くかけられた施工がされている場合等
において,これに適合させるように標準評点数の補正を行うことにあるか
ら,床仕上げに係る工事費の上昇をもたらすと一般的に想定される要素に
-56-
ついて,評価対象家屋の該当の有無,当該要素が評点数に与える影響の大
小を判断の上,補正係数を定めることになり,具体的な補正係数の決定に
際しては,建築図面や仕様書,見積書等の設計図書,実地での確認等から
上記の事項の判断,工事費との関係,他の家屋との均衡を併せて考慮して
いくこととなる。そして,床仕上げにおいて増点補正の対象となる要因と
しては,①内部仕上げと同様の事情により仕上げ工事の特殊性があること,
②床仕上げ面積の大きな箇所があり,模様や柄合わせ,その他施工が困難
と認められること,③使用資材が多様である等,工事の施工に特殊性がみ
られること,④その他外観上から判断できる施工の程度の良否等がある。
本件家屋は,特に高層の家屋であること,家屋規模に応じて仕上げ面積
の大きな箇所があり,高度な技能が必要と推測され,大規模オフィス階を
有するビルで床精度が高いこと,使用資材が多く,内部にプールを備えた
階があるから,防水のため通常の内部床とは異なる施工を要する箇所があ
ること,事務所部分のエスカレーターホール,2階ロビー及び住宅部分の
専用ロビー等において,大理石や花崗岩を用いて模様貼りを施し,プール
の床タイル等に手間のかかった施工をしていることなど,明らかに一般の
事務所や共同住宅の標準的工事と比較して多額の費用を要する程度の良い
施工であるということができ,また,各部屋の床精度も高く程度の良い床
仕上げであるから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。なお,
「施工の程度」の補正は,その部分別に使用されている評点項目ごとに行
うものではないし,施工の程度はあくまでできあがった状態により判断す
るものであり,個々の施工方法のみにより定まるものではない
そして,本件家屋の事務所階で用いられているフリーアクセス床は,1
990年代以降に急速に普及したものとされ,近代的な設備を備えたイン
テリジェントビルに対応できるようになっているものであり,特に設備が
多く設置される床面などに使用されるフリーアクセス床には,その重量を
-57-
支えるだけの強度が求められ,一般規模のビルと比べ地震の際の揺れ幅が
大きくなり,パネルの割れや欠け,床のゆがみなどが生じないよう,通常
以上の施工が求められることから増点補正の要因となる。また,ホール等
の床仕上げでは,吹き抜けになっている部分のみが模様貼りとなっている
のではないし,高層階の住宅部分においても,一般住宅の内装よりも品質
が高級なものであり,それには資材面だけでなく,仕上げの精度,美しさ
をいう要素も含まれるから,これを施工の程度の増点補正要因と捉えるこ
とは適正である。
(原告の主張)
本件家屋の床仕上げ資材は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表に挙げ
られている一般的な資材であり,また,本件建物の床仕上げにおいて,各
仕上げ資材に応じた標準施工と異なって特に手間の多くかけられた施工が
されているところはなく,施工の程度による補正をする理由はないし,上
限を上回る増点補正をする必要のある場合に該当する事由はない。
なお,エスカレーターやロビー部分における高級石材による模様貼りは,
複雑なものではないし,高級石材が使用されているのは,全体の床面積の
0.79パーセントにすぎないから,この点をもって上限を超える1.3
0とすることはできず,さらに,使用資材に応じて評点項目が設けられて
いるにもかかわらず,一律に補正係数を乗ずることで,他の使用資材に係
る評点項目について増点補正をすることは許されない。また,床仕上げは,
建物内部の床の仕上げ部分と下地部分を対象とする工事であるが,家屋が
高層であるとか,吹き抜けがあるといった事情によって,工事の手間が増
すことなどおよそ考えられず,これらは増点補正の要因とならないし,仕
上げ面積が大きいことや使用資材が多様であることが増点補正の要因とな
らないことは,前記オの内部仕上げと同様である。
キ天井仕上げ(補正項目「施工の程度」)
-58-
(被告の主張)
この補正の趣旨は,個々の家屋で標準的な施工と異なった施工が施され
ている場合に,その施工に見合った評点数となるよう標準評点数の補正を
行うことにあるから,天井仕上げに係る工事費の上昇をもたらすと一般的
に想定される要素について,評価対象家屋の該当の有無,当該要素が評点
数に与える影響の大小を判断の上,補正係数を定めることになり,具体的
な補正係数の決定に際しては,建築図面や仕様書,見積書等の設計図書,
実地での確認等から上記の事項の判断,工事費との関係,他の家屋との均
衡を併せて考慮していくこととなる。そして,天井仕上げにおいて増点補
正の対象となる要因としては,①内部仕上げと同様の事情により仕上げ工
事の特殊性があること,②天井仕上げ面積の大きな箇所があり,模様や柄
合わせ,その他施工が困難と認められること,③使用資材が多様である等,
工事の施工に特殊性がみられること,④その他外観上から判断できる施工
の程度の良否等がある。
本件家屋は,特に高層の家屋であり,低層部分に規模の大きな吹き抜け
部分があり,施工状況の特殊性が認められること,各階面積が特に大きく,
高度な技能が必要と推測されること,エスカレーターホール,2階ロビー
及び住宅部分の専用ロビー等において,手の込んだ二重,三重の打ち上げ
天井が施工され,事務所部分には施工状態の良いシステム天井が施工され
ていること等,明らかに一般の事務所や共同住宅の標準的工事と比較して
多額の費用を要する程度の良い施工であるということができるから,補正
係数を1.30と定めたことは適正である。なお,平成3年度評価基準に
おける「天井」の評点項目「岩綿板(塗装吸音板12㎜)」の標準評点
数は,軽鉄天井下地,石膏ボード等の下地その他の評点数に資材費評点数,
労務費評点数を加えて設定されているので,システム天井を前提に標準評
点数が設定されているものではない。
-59-
なお,天井仕上げにおける「施工の程度」の補正は,標準的施工と異な
った施工がされて手間の多くかけられた施工がされている場合等において
これに適合するように評点数を補正するものであるから,仕上げ部分の形
状,躯体の特殊性等は,当然吹き抜け上階の天井仕上げ等の施工の手間を
増す要因として考慮される。また,設備が多く設置されるシステム天井に
は,それらの重量を支えるだけの強度が求められ,また,ゆがみ等が生じ
ないよう,通常以上の施工を行う必要があること等の事情から増点補正の
要因として考慮しているのであって,吹出口等を評点数として足し込むよ
うなことをしているわけではないから,二重評価には当たらない。
(原告の主張)
本件家屋の天井仕上げ資材は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表に挙
げられている一般的な資材であり,各仕上げ資材に応じた標準的な施工方
法と異なった施工が施されているところはなく,施工の程度による補正を
する理由はないし,まして,上限を上回る補正をする必要のある場合に該
当する事由はない。
二重,三重の打ち上げ天井は,天井仕上げの総面積のうちわずか約0.
85パーセントを占めるにすぎず,システム天井は,本件家屋の建築当時
においては,大型の事務所ビルの施工としては極めて一般的な施工方法で
あったから,これらは増点補正の理由とならない。また,システム天井は
誰にでもきれいな仕上げを手間をかけずに行うことができるという性質を
有する製品であるから,被告のいうできあがりがきれいというのは,製品
自体の特性によるものである。さらに,平成3年度評価基準における「天
井」の評点項目「岩綿板(塗装吸音板・12㎜)」の標準評点数とシステ
ム天井の施工にかかる費用の内容は,両者の違いが,現場で施工の大半を
行うか,工場から半完成品を持ち込んで仕上げを現場で行うかという点の
みであることから,実質的に同等であり,これに加えてさらに増点補正す
-60-
る理由はない。そして,各階面積が大きいからといって,面積当たりの天
井仕上げの手間が増えるということはなく,むしろ,同じ面積であればワ
ンフロアの面積が大きい方が,作業は容易になる。被告が「設備が多い」
と主張する本件家屋のシステム天井に組み込まれたエアコンの吹出口,吸
気口及び蛍光灯などは全て「建築設備」の項目で別途評価されているから,
被告の主張はこれを二重に評価しようとするものである。
被告が主張する内部仕上げと同様の事情や仕上げ面積の大きな箇所があ
ること及び使用資材が多様であることが増点補正の対象とならないこと
は,前記カの床仕上げと同様である。
ク屋根仕上げ(補正項目「施工の程度」)
(被告の主張)
この補正の趣旨は,個々の家屋で標準的な施工と異なった施工が施され
ている場合に,その施工に見合った評点数となるよう標準評点数の補正を
行うことにあるから,屋根仕上げに係る工事費の上昇をもたらすと一般的
に想定される要素について,評価対象家屋の該当の有無,当該要素が評点
数に与える影響の大小を判断の上,補正係数を定めることになり,具体的
な補正係数の決定に際しては,建築図面や仕様書,見積書等の設計図書,
実地での確認等から上記の事項の判断,工事費との関係,他の家屋との均
衡を併せて考慮していくこととなる。そして,屋根仕上げにおいて増点補
正の対象となる要因としては,①構造が大規模で施工の高度性が認められ
ること,②単一の形状でなく複数の形状であること,装飾部分の存在,そ
の他施工の複雑性をもたらす要因があること,③その他外見上判断できる
施工の程度の良否等がある。
本件家屋は,屋根部分面積が特に大きいことから,施工に高度な技能が
必要と推測されること,陸屋根と勾配屋根を組み合わせて施工されており,
勾配屋根部分が四方に装飾的に配された手の込んだ施工を施しているもの
-61-
である上,23階の屋根に相当する部分に手の込んだ中庭を設け,最上階
の30階から24階まで中空にして中庭から空が臨めるような手間のかか
る施工をするなど,明らかに一般の事務所や共同住宅の標準的工事と比較
して多額の費用を要する程度の良い施工であるということができることか
ら,補正係数を1.30と定めたことは適正である。なお,部分別「屋根
仕上げ」は屋根仕上げ及びその下地部分からなっており,当然主体構造部
に含まれる部分は含まれておらず,「施工の程度」は屋根仕上げの施工の
良し悪しにより判断するものである。
(原告の主張)
本件家屋の屋根仕上げ資材は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表に挙
げられている一般的な資材であり,各仕上げ資材に応じた標準的な施工方
法と異なった施工が施されているところはなく,単純な陸屋根と比較する
と形状が複雑なところがあるが,屋根全体の面積が大きく,部分部分も施
工が複雑にならない程度の十分な面積があるため,屋根の形状が仕上げの
難易度を増加させることにはならないのであって,補正なしには適正な評
点数が求められない極めて高級な家屋などの場合にのみ適用される補正係
数を適用する理由はなく,まして,上限を上回る増点補正をする事由はな
い。
被告が主張する陸屋根と勾配屋根の組合せ構造となっていること,中庭
を設けていること及び中空になっていることはいずれも主体構造部におい
て評価すべき事項であるし,勾配屋根の施工は鉄骨の組合せ方のみで表現
されたデザインであって,手間のかかる施工ではない。23階の中庭も,
手の込んだといえるような施工は施されていない。また,アスファルト防
水及びアルミニウム板瓦棒の使用は,それぞれ「アスファルト防水(モル
タル目地切・12層)」及び「アルミニウム板(普通板・瓦棒・0.8m)」
の評点項目で計上されており,単にあまり使用されることのない仕上げで
-62-
あるからという理由だけで増点補正することは許されない。
また,構造が大規模であっても,屋根面積が大きければ作業が行いやす
く,屋根仕上げの難易度が高くなって労務費がかさむということはないし,
屋根の形状についても,仕上げの手間に与える影響は軽微であるから,構
造が大規模で施工の高度性が認められることや,複数の形状であることは,
増点補正の要素とはならない。
ケ建具(補正項目「施工の程度」)
(被告の主張)
この補正は,他の仕上げと同様に,個々の家屋で標準的な施工と異なっ
た施工が施されている場合に付設されることに加えて,建具に対する装飾
や他の仕上げにおいては加算項目扱いとなっている断熱材,塗装・吹き付
けについても,「施工の程度」として判断する要因とされており,各施工
状況により,その程度に見合った補正係数を付設することとなるが,非木
造家屋の建具は,ほとんどが注文品であり,広さ,枠見込みとも多岐にわ
たるため,加算項目のガラスを含め,客観的に判断できる広さ,枠見込み
とともにその価格を参考にして適正な補正係数を求めることになる。そし
て,建具において増点補正の対象となる要因としては,①施工箇所や建具
の形状,大きさなどによる施工の困難性が認められること,②装飾の有無,
フラッシュ戸等に吸音材や特殊な塗装が施工されていて程度が良い建具と
認められること,③外部ガラスにおいて鏡面調整が行われているなど,外
観上施工のよいことが認められること等がある。
本件家屋の建具は,内部仕上げ等と同様の事情により仕上げ工事の特殊
性があること,事務所部分のエスカレーターホール,2階ロビー等に大型
で固定のステンレスサッシュ等を使用し,普通の家屋の建具の施工と比べ
て明らかに高級感のある仕上げとなっていること,車寄せ部分の屋根には
固定サッシュを用いて一般の使用状況と異なる建具の利用方法をしている
-63-
こと,住宅部分についても,カーテンウォールと建具(障子)の二重施工,
中庭部分の建具など手の込んだ上等な仕上げが施工されていること,ステ
ンドグラスについてはコンペ方式を用いてデザイン性の高いステンドグラ
スを設置していること,カーテンウォールのガラスで鏡面調整がされてい
ることなど,明らかに一般の事務所や共同住宅の標準的工事と比較して多
額の費用を要する程度の良い施工であるということができるから,補正係
数を1.30と定めたことは適正である。
なお,非木造家屋の建具は,ほとんどがその家屋に合わせた注文品で,
評点項目に示されていないサイズ等の資材が多種使用されることから,全
てのタイプの異なる建具の標準評点数を設定することは困難であるため,
評点項目に示されている品と相違するものについて,資材の量,重さなど
施工の困難性を増すと認められるものを補正の程度として処理している。
本件家屋の扉,窓では,竣工図の建具一覧表に記載されていた鋼製,アル
ミ製,ステンレス製建具の面積6537.76平方メートル中,評点項目
に示されている枠見込の厚さが10ミリメートルを上回っているものが約
48パーセントに当たる3169.83平方メートルで使用されており,
こうした要素も増点補正の要因となる。鏡面調整についても,一般的な家
屋のガラスの標準評点数の積算に含まれている工事の手間とは認められ
ず,増点補正の要因となる。
(原告の主張)
本件家屋に使用されている建具は,いずれも標準評点数積算基礎一覧表
に挙げられている一般的な資材である。そして,本件家屋に使用されてい
る建具において,各資材に見合った標準的な施工と異なる一般的でない程
度の施工がされているものはなく,特に手の込んだ上等のものや特殊防錆
加工を施しているものも存在しない。ステンドグラスを手の込んだ上等の
ものと評価できるとしても,その工費は建具全体のわずか0.39パーセ
-64-
ントであり。建具全体について補正係数として1.30を適用する理由は
ない。
被告は,注文品の実際の価格を参考にしていると主張するが,実際の取
得価格を考慮することは固定資産評価基準は予定していない。また,建具
の大きさについては,それぞれの建具に評点項目ごとに標準評点数が付さ
れており,その標準評点数に大きさ(面積)を乗じて評点数を算出してい
るのであるし,大型の建具は,複数からなる同じ面積の建具と比較して割
高になることがあるが,大型と思われる建具は全体の1割もなく,建具全
体に上限を超える増点補正を行うことの根拠とはならないし,サッシュが
「固定」であることをもって「施工の程度」により増点補正をすることは
許されない。
なお,車寄せ部分のトップライトサッシュは,わずか0.39パーセン
トにすぎないし,カーテンウォールや金属系サッシュ等と障子の二重施工
を行うことは当然のことであり,これらも増点補正の理由にはならない。
コ特殊設備
(ア)ルーバー(アルミニウム系)(補正項目「程度」)
(被告の主張)
本件家屋のルーバー(アルミニウム系)は,本件家屋の外周部分に施
工されており,外部の仕上げ,建具と一体となって家屋の外観をなし,
その程度は外部仕上げの花崗岩,カーテンウォール,外部建具と何ら遜
色はなく,同様に程度の良い設備であるため増点補正の対象となる。
(原告の主張)
本件家屋の特殊設備・ルーバー(アルミニウム系)の「程度」による
増点補正につき,評点基準表における上限である1.20を超える数値
によるべき理由は存在しないから,多く見てもその上限値を採用すべき
である。
-65-
(イ)既製間仕切(補正項目「程度」)
(被告の主張)
本件家屋の既製間仕切は,単に支柱が天井に達している程度のもので
はなく,一般的な既製間仕切より施工の程度を含めて「程度」が良く,
増点補正の対象になるものである。
(原告の主張)
本件家屋は,既製品の一般的な間仕切を使用しており,既製間仕切の
「程度」を上程度とすべき理由は認められないから,「程度」による増
点補正をすべきではない。
サ建築設備(電気設備)
(ア)動力配線設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
本件家屋の動力配線設備は,金属管やケーブルラック以外にバスダク
トも使用され,施工の状態も良いことから増点補正をしたものである。
(原告の主張)
本件家屋に用いられている動力配線設備には,金属管内配線でモータ
ーブレーカー,開閉用マグネットスイッチを使用した動力盤が用いられ
ているから,「程度」による増点補正,ましてや評点基準表における補
正係数の上限を上回る増点補正をする理由は何ら存在しない。
(イ)電灯コンセント配線設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
本件家屋の電灯コンセント配線設備は,リモコンスイッチや埋込タン
ブラー等の各部材の埋込工事や塗仕上げの施工が特に丁寧に行われてい
るから,補正係数をそれぞれ1.30と定めたことは適正である。
なお,補正項目「スイッチ」は,そもそもスイッチによる配線設備の
工事費の相違を,補正項目「フロアコンセント」は,床下配線の工事費
-66-
の相違を補正するものであり,これらと,各部材の埋込工事や塗工事等
が特に丁寧に行われていると認定して行った補正項目「程度」の増点補
正とは二重評価にはならない。
(原告の主張)
電灯コンセント設備について「程度」による増点補正をするためには,
標準的な施工と比して工事や仕上がりの程度が著しく異なるものに限ら
れるはずであるが,本件家屋の電灯コンセント配線設備については,塗
仕上げはそもそも行われておらず,各部材の埋め込みも作業が別途行わ
れているものではないから,他の建物と比較して手間が多くかかってい
るというものではない。したがって,「程度」による増点補正,まして
や所定の補正係数の上限を上回る増点補正をする理由はない。
なお,スイッチリモコンについては,補正項目「スイッチ」で「特殊
なもの(リモコンの使用)」を理由に増点補正係数1.03が,フロア
コンセントは,補正項目「フロアコンセント」で「全館にあるもの」と
して増点補正係数1.15がそれぞれ適用されているから,さらにこれ
らの使用を根拠に「施工の程度」で増点補正を行うことは,納税者の不
利益に二重評価することにほかならない。
(ウ)電話配線設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
この補正は,配線の内容について考慮することを趣旨とするものであ
り,使用されている資材の程度と仕上がりの良否等を目安として判定す
るものであって,「上等なもの」とは,金属管内配線で特に施工のよい
ものとされている。そして,通常,一般住戸に設置される電話設備は,
外線1回線について1個の電話機が接続されるが,本件家屋の住宅部分
に施工されているものは,電話回線を通じテレコントロール(宅内機器
のON/OFFコントロール)を行うため,「ホームオートメーション
-67-
設備」の一部として接続管理されており,ホームテレホン機能として,
外線2回線に対応でき,電話機8台,ドアホン2台まで接続可能なもの
であり,さらにプルボックスなどの仕上げ,納まり方など施工の良い仕
上げになっていることから,補正係数をそれぞれ1.30と定めたこと
は適正である。
(原告の主張)
本件家屋における電話配線設備は,非木造家屋に設置される標準的な
普通の設備であり,増点補正するべき理由は存在しない。
被告は,本件家屋の電話配線設備のプルボックスなどの仕上げ,納ま
り方など施工の良い仕上げになっていることを増点補正の対象としてい
るが,本件家屋で使用しているプルボックスは一般的なものである上,
いかなる点を捉えて施工の程度が良いとしたのか,一切主張立証がされ
ていない。
(エ)照明器具設備(蛍光灯用器具,白熱灯用器具)(補正項目「程度」)
(被告の主張)
本件家屋の蛍光灯用器具及び白熱灯用器具には注文品が設置されて
おり,既製品においても他の設備同様に建物の程度に見合った程度の良
いものが使用されているから,補正係数をそれぞれ1.30と定めたこ
とは適正である。
(原告の主張)
本件家屋に使用されている照明器具は,一般的な既製品の蛍光灯器具
及び発熱等器具がほとんどであり,注文製品を主体とした器具により構
成されている場合には到底該当せず,既製品でないものがあるとしても,
既製品の蛍光管や電球を装着できるものであり,高級品とはいえないか
ら,「程度」による増点補正,ましてや評点基準表における補正係数の
上限を上回る増点補正をする理由はない。
-68-
(オ)呼出信号設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
本件家屋の呼出信号設備は,共同住宅と身障者用トイレに設置されて
いて,住宅部分については他の設備を含めて1か所で集中管理している
など,標準的な呼出信号設備ではなく,また,配管配線の施工状況も他
の設備同様に建物の程度に見合った程度の良いものが使用されているか
ら,補正係数を1.30と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋に設けられている呼出信号設備は,一般的なメーカー既製品
であり,押しボタン盤及び信号盤は特別注文品ではないから,増点補正
をする理由はない。
なお,呼出信号設備を1か所で集中管理することは標準的であるし,
集中管理をすれば必然的に配線の長さが長くなるから「配置」による増
点補正の対象となるのであり,「程度」により増点補正すれば,同じ事
由を理由に二重に増点補正をすることとなり許されない。
(カ)盗難非常通報装置(補正項目「程度」)
(被告の主張)
「程度」の補正は,一般的には機器や配管配線等の施工状態が良いも
のを増点補正するものであるが,主に配管の使用資材やその施工の程度
により「施工の程度」の補正を行うものであるところ,本件家屋の配管
には金属管も使用されており,程度の良いものであるから,補正係数を
1.30と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋に設けられている盗難非常通報装置は,金属管内配線で普通
のものであり,「程度」による増点補正,ましてや評点基準表における
補正係数の上限を上回る補正をする理由はない。
-69-
(キ)インターホン配線設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
「程度」の補正は,一般的には機器や配管配線等の施工状態が良いも
のを増点補正するものであるが,主に配管の使用資材やその施工の程度
により「施工の程度」の補正を行うものであるところ,本件家屋の配管
には金属管も使用されており,インターホン配線設備は,住宅部分にお
いては,他の呼出信号設備等と併せてホームオートメーション設備とし
て1か所で管理できるようになっており操作盤等も程度の良いものであ
るから,補正係数をそれぞれ1.30と定めたことは適正である。
なお,平成5年当時,他の設備と併せていくつかの設備を1か所で集
中管理するのは本件家屋のような非常に程度の良い家屋に限られるもの
であり,また,1か所で集中管理することをもって「配置」による増点
補正など行ってはいない。
(原告の主張)
本件家屋に設けられているインターホン配線設備は,金属管内配線で
普通のものであるから,「程度」による増点補正,ましてや評点基準表
における補正係数の上限を上回る補正をする理由はない。インターホン
配線設備を1か所で集中管理することは標準的であるし,それは「配置」
による増点補正の対象となるから,それをもって「程度」による増点補
正をすれば,同じ事由を理由に二重に増点補正をすることになり許され
ない。
(ク)拡声器配線設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
本件家屋においては,一般的ではない住居の居室部分にまで拡声器配
線設備が設置され,配管配線の施工状況が他の設備と同様に良いことか
ら,増点補正の対象にしたものである。
-70-
(原告の主張)
本件家屋に設けられている拡声器配線設備は,金属管内配線でその仕
上げは普通であって,とりたてて「良いもの」であると評価し得るよう
な事情は何ら存在しない。なお,住居の居室部分に拡声器配線設備が配
置されていることが配線の仕上がりとは無関係であることは明らかであ
るし,器具数は「器具数」の補正項目により補正されるべき事項である
から,住居の居室部分に拡声器配線設備が配置されていることを理由に
「程度」による増点補正をすることは許されない。したがって,「程度」
による増点補正,ましてや評点基準表における補正係数の上限を上回る
補正をする理由はない。
なお,補正項目である「程度」は,「配線の内容の相違を考慮しよう
とするもので,配線に用いられている資材の程度と仕上がりの良否によ
って行うもの」であり,拡声器配線設備がどこに設置されたものかとい
ったことは考慮要素にされていない。
(ケ)工業用テレビ配線設備(補正項目「配置」,「程度」)
a補正項目「配置」
(被告の主張)
本件家屋は大規模高層家屋で複数のモニター管理室があり事務所
部分,住宅部分,駐車場部分等に広く分散的に配線されているため,
増点補正の対象としたものである。
(原告の主張)
本件家屋の工業用テレビ配線の1組1配線の長さは159メート
ルであるから,自治省固定資産課編の「平成3年度固定資産評価基準
解説(家屋篇)」(甲27。以下「平成3年度評価基準解説」という。)
(増点補正「分散的に配置されているもの」とは250メートル程度
のもの,標準「普通のもの」とは180メートル程度のもの,減点補
-71-
正「集中的に配置されているもの」とは100メートル程度のものと
する。)によると,増点補正の対象とはならず,むしろ減点補正の対
象となるものであり,「配置」について増点補正をする理由はない。
b補正項目「程度」
(被告の主張)
「程度」の補正は,一般的には機器や配管配線等の施工状態が良い
ものを増点補正するものであるが,主に配管の使用資材やその施工の
程度により「施工の程度」の補正を行うものであるところ,本件家屋
の工業用テレビ配線設備の配管には金属管も使用されており,屋外に
も設置されていて配線の仕上がり程度はよいことから,補正係数を
1.30と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋に設けられている工業用テレビ配線設備は,金属管内配線
で,普通のものであり,しかも,「施工の程度」による増点補正をす
るためには,標準的な施工と比して工事や仕上がりの程度が著しく異
なるものに限られるはずであるところ,本件家屋の工事用テレビ配線
設備は,その配線工事や塗仕上げ等はごく普通であり,とりたてて「良
いもの」であると評価し得るような事情は何ら存在しないから,「程
度」による増点補正,ましてや評点基準表における補正係数の上限を
上回る増点補正をする理由はない。
なお,平成3年度評価基準で対象としている工業用テレビには,屋
内に設置されるものだけではなく,屋外に設置される排煙状況調のた
めに設置されるものも含まれているから,屋外に設置されることをも
って増点補正することは平成3年度評価基準が予定していない。
サ建築設備(衛生設備)
(ア)給水設備(補正項目「設備の多少」)
-72-
(被告の主張)
被告の調査によれば,原告が主張するものの他に食器洗機用水洗,ハ
ンドシャワーがあり,延べ床面積100平方メートル当たり約1.84
個程度になるから,増点補正の最高限度を超えている。
(原告の主張)
「設備の多少」による補正は,給水設備数の多少により,給水栓,横
引吸水管等の工事費に相違が生ずるため,これを補正しようとするもの
であり,増点補正「給水箇所の多いもの」とは,水栓数(カランのほか
大小便器用も含む。以下同じ。)が延べ床面積100平方メートル当た
り1.8個程度のもの,標準「普通のもの」とは,1.4個程度のもの
とされているところ,本件家屋の給水設備の水栓数は,延べ床面積10
0平方メートル当たり約1.65個となるから,評点基準表における補
正係数の上限まで増点補正する理由はない。
(イ)排水設備(補正項目「設備の多少」)
(被告の主張)
排水設備と給水設備の「設備の多少」の補正の考え方は同様であり,
一般には給水箇所と排水箇所は一対になっているから,補正係数も同様
になる。
(原告の主張)
「設備の多少」の補正は,排水を必要とする衛生器具の具体的な個数
の多少による工事費の相違を考慮しようとするものであり,増点補正「排
水箇所の多いもの」とは,延べ床面積100平方メートル当たり手洗器,
水洗便器等が1.8個程度のもの,標準「普通のもの」とは,1.4個
程度のもの,減点補正「排水箇所の少ないもの」とは,1個程度のもの
であるとされているところ,本件家屋の排水設備は,延べ床面積100
平方メートル当たり約1.58個となるから,補正係数としては1.1
-73-
3程度に相当する値である。なお,被告は給水箇所と排水設備は一対に
なっているとするが,それぞれの個数が一致するとは限らない。
(ウ)中央式給湯設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
「程度」により1.30の補正をしたことは適切である。
(原告の主張)
「程度」の補正は,「湯をつくるストレージタンクの程度によって判
定するもの」と定められており,具体的には,ストレージタンクがステ
ンレス製であるものを増点補正,ストレージタンクが鉄製でステンレス
を内張りに使用したものを標準,ストレージタンクが鉄製で樹脂被覆程
度のものには減点補正を行うとされているところ,本件家屋のストレー
ジタンクは鉄製で,内部はプレクリートライニング加工であるから,増
点補正の対象となるステンレスは用いられていないにもかかわらず,増
点補正の上限を超える1.30の補正係数を適用したことに理由はない。
(エ)衛生器具設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
衛生器具設備の程度は,国産品と輸入品とにより程度差をつけるもの
ではなく,あくまでその器具が程度の良いものか否かにより判断するも
のであり,住宅部分等の衛生器具は,一般の器具より大きく程度の良い
ものが施工されていることから,増点補正の対象としたものである。
(原告の主張)
本件家屋の衛生器具設備は,いずれも国内メーカーの製品であってご
く普通のものであり,本件家屋の住宅部分で用いられる大型の衛生器具
が本件家屋全体で多く使用されるその他の既製品・量産品に占める割合
は小さいから,その一部の大型の衛生器具の存在をもって,増点補正の
上限を超える補正係数を全体に適用することに合理性が認められないこ
-74-
とは明らかである。
サ建築設備(空調設備)
(ア)吸収式冷凍機,パッケージエアコンディショナー2設備(補正項目
「規模」,「程度」)
(被告の主張)
本件家屋の空調は部分空調であるところ,部分空調の場合,計算単位
が「使用床面積」となることから,補正項目のうち「規模」の補正を除
く他の補正項目のみ補正を行うとされているのであり,「規模」による
補正を行わなかったことは適正である。また,「程度」による補正であ
るが,空調のゾーニング,すなわち空調の調整ができるブロック区分の
規模については,本件家屋の事務所部分と住宅部分の共用廊下等に施工
された吸収式冷凍機のゾーニングの規模は700平方メートル程度で非
常に効率的なものであり,さらに,住宅部分の居室に施工されているパ
ッケージエアコンディショナーは吹出口等の程度も良く,他の設備と同
様に,施工の良いものであり,空調設備の「程度」の増点対象である排
煙設備も設置されているから,「程度」の補正に当たり補正係数をそれ
ぞれ1.30と定めたことも適正である。
(原告の主張)
平成3年度評価基準によれば,「規模」について,1万平方メートル
程度のものについて0.93の減点補正をするものとされているところ,
本件家屋は,延べ床面積が9万7677.32平方メートルの大規模建
物であるから,少なくとも減点補正率0.93の適用があることは当然
であり,更にこれを下回る補正率が適用されるべき特別の理由がある。
また,空調設備の「程度」による補正については,増点補正「上等な
もの」とは,銅,ステンレス等の特殊製作品による吹出口が全体の3割
程度以上を占め,配管に銅管を用い,ゾーニングが1系統1200平方
-75-
メートル程度のもの,標準「普通のもの」とは,鉄製メラミン焼き付け
の既製品による吹出口が大部分を占め,ゾーニングが1系統2500平
方メートル程度のものであるとされているところ,本件家屋の吸収式冷
凍機,パッケージエアコンディショナー2設備はゾーニング1系統当た
りの面積は小さいものの,吹出口は鉄製の既製品であるし,配管には亜
鉛めっき鋼が使用されており銅管の使用はないから,「程度」により評
点基準表における補正係数の上限を上回る増点補正をする理由はない。
なお,システム天井とは,蛍光灯や空調の吸排気口を納まり易くする
ものであって,吹出口の材料の程度やゾーニングの規模とは無関係であ
るから,増点補正の対象とならない鋼製吹出口がシステム天井に組み込
まれていることをもって増点補正をすることは失当である。
(イ)換気設備2設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
本件家屋の換気設備は,他の配管等と同様に施工の良いものであり,
また,増点補正の対象となる排煙設備が備わっているとともに,吹出口
の程度も良く,補正係数を1.30と定めたことは適正である。
なお,本件家屋は,事務所,共同住宅,店舗,駐車場の全ての部分に
換気設備が施工されているため,1棟の延べ床面積から空調設備及び換
気設備(第1種換気のもの)が施工されている部分の床面積を除いた1
万2244.83平方メートルを換気設備(第2種又は第3種換気のも
の)として評点を付設したものである。
(原告の主張)
本件家屋における換気設備は,1系統当たりの換気面積は小さいもの
の,吹出口は鉄製の既製品で,いずれも非木造家屋に設置される標準的
な普通の設備であり,「上等なもの」として評点基準表における補正係
数の上限を超える補正係数を適用する理由はない。
-76-
なお,再調査評価では,本件家屋の換気設備のうち第2種・第3種換
気設備について,設置床面積を12,244.83平方メートルとして
計算されているが,本件家屋の換気設備は,第1種と第2種の混合であ
るところ,後者の設置床面積は4,260平方メートルであり,設置床
面積が過大に計算されている結果,再建築費評点数が過大に計上されて
いる。
(ウ)レンジフードファン(補正項目「施工の程度」)
(被告の主張)
レンジフードファンは換気扇と同様の機能であるものの,排気効率が
優れているため本件家屋の新築時点頃から一般的に普及してきた建築設
備であり,固定資産評価基準では別の評点項目としているが,本件家屋
の評価は,非木造再建築費評点基準表の「事務所・店舗・百貨店用建物」
の標準評点数によっているところ,一般にレンジフードファンは住宅用
設備であって,事務所・店舗・百貨店用建物の設備ではないことから,
評点項目として設定がないため,同様の設備である木造再建築費評点基
準表「専用普通建」の建築設備に設定されている評点項目である「レン
ジフードファン」を転用して評点を付設したものである。この転用した
基準表には,補正項目として「施工の程度」が設定されており,本件家
屋のレンジフードファンは,システムキッチンの一部として構成されて
いる程度の良いものである。したがって,「施工の程度」の補正を行い,
補正係数を1.30と定めたことことは適正である。
なお,レンジフードファンは,急速に普及し始めたことから換気設備
の一つとして昭和63基準年度において新規に評点項目に追加されたも
ので,その後付着物の処理方法等が大きく改善され現在において普及し
ているものであるところ,平成3基準年度当時の取扱いとしては,評価
替え質疑応答集に「今回新規に追加されたものは,60㎝幅程度の手動
-77-
型で浅型のものを標準としている。したがって,自動型のものは1.7
0程度,深型のものは1.20程度補正し,評点を付設することとして
差し支えない。」とされていることから,本件家屋のレンジフードファ
ンについては,深型で施工の程度の良いものとして増点補正をしたもの
である。
(原告の主張)
レンジフードファンの「施工の程度」による補正に関して平成3年度
評価基準解説に記載は見られないものの,平成18年度固定資産評価基
準解説(家屋篇)によれば,レンジフードファンの標準点数は,60セ
ンチメートル幅程度の手動,浅型のものを標準として積算されており,
自動型のもの,深型のものなどについては,適宜増点補正を必要とする
ものであり,器具又は器具の取付けが特に悪いもの又は特によいものに
ついて,若干の補正をすればよいものであって,ほとんどの場合は補正
の必要はないものであるとされているところ,レンジフードファンの器
具やその取付方法について平成3年度以降に特段の進歩は見られないか
ら,平成3年度についても同様に評価されると考えられる。ところが,
本件家屋のレンジフードファンは,64.8センチメートル幅程度の手
動,浅型のものであるから,増点補正の対象とはならない。また,シス
テムキッチンの一部であることは,増点補正をする理由にはなりえない。
したがって,レンジフードファンについて,「施工の程度」による増
点補正,ましてや所定の補正係数の上限を上回る増点補正をする理由は
ない。
シ建築設備(防災設備)のうちスプリンクラー設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
本件家屋のスプリンクラー設備は,配管に防露が施工され,エンジンが
自動起動式エンジンであって,不慮の散水により膨大な損失を回避するた
-78-
めの設備が複雑で高額な予作動式になっており,他の設備同様に程度の良
いものであるから,補正係数を1.30と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋のスプリンクラー設備は,自動起動式エンジンのものではある
が,配管の防露はないから,最大増点補正率である1.10を上回る1.
30の増点補正率を適用する理由はない。
ス建築設備(運搬設備)
(ア)エレベーター設備(乗用エレベーター・乗用荷物用エレベーター)
(補正項目「程度」)
(被告の主張)
エレベーター設備の「上等なもの」とは,かご室,かご扉及び出入口
周りにステンレスや真鍮ブロンズを多用し,床にゴムマットやゴムタイ
ル等が用いられ,扉等の全体にデラックスなものであるとされるところ,
本件家屋のエレベーターは,かご室,かご扉及び出入口周りにステンレ
ス等が多用されたものである上,本件家屋が超高層ビルディングである
ことに鑑みると,一般のエレベーターに比べて牽引溝車,ガイドレール,
ロープ等に多くの資材や工事が必要であるから,補正係数を1.30と
定めたことは適正である。
なお,本件家屋のエレベーターに非停止階が多く設けられているとこ
ろ,補正項目「着床数」で補正されるのは着床する階数分だけであって
昇降行程が長いことを考慮して,補正項目「程度」による増点補正をし
ても,同じ理由で二重に補正することにはならない。
(原告の主張)
本件家屋のエレベーター設備は,かご室,かご扉及び出入口周りにス
テンレス等が用いられているものではあるが,出入口周りに関しては,
三方枠と幕板は,1階及び2階以外のフロアは鋼板製であり,最大増点
-79-
補正率である乗用エレベーターの1.12又は1.10,乗用荷物用エ
レベーターの1.20をいずれも上回る1.30の増点補正率を適用す
る理由はない。
また,高層であることによる工事費の増加については,「着床数」に
よる増点補正の対象となるのであって,これをもって「程度」による増
点補正を行えば,同じ事由を理由に二重に増点補正をすることとなり許
されない。なお,本件家屋は,平成3年度評価基準が想定していないよ
うな例外的な高層建物であるとはいえない。
さらに,本件家屋に非停止階があるとしても,それによってエレベー
ターの価格の大半を占めるかご,扉,三方枠の使用資材の数量が増える
わけではなく,比較的安価なロープ,ガードレール及び牽引溝車などの
数量が多少増えるだけであり,エレベーター全体の価格に与える影響は
微々たるものである。
(イ)エスカレーター設備(補正項目「程度」)
(被告の主張)
エスカレーター設備の「上等なもの」とは外側板及びデッキボードに
ステンレス板又は真鍮板が用いられているものであるとされるところ,
本件家屋のエスカレーター設備は,1階の吹抜け部分に施工された特注
品のエスカレーターで,外側板やデッキボードはステンレスで仕上げら
れており,程度のよいエスカレーターであるから,補正係数を1.30
と定めたことは適正である。
(原告の主張)
本件家屋のエスカレーター設備は,外側板及びデッキボードにステン
レス板が用いられているものではあるが,最大増点補正率である1.1
5を上回る1.30の増点補正率を適用する理由はない。
セ仮設工事(補正項目「工事の難易」)
-80-
(被告の主張)
「工事の難易」による補正は,個々の建物の構造や規模等を基準に,建
物の周囲の状況及び交通の便等によって仮設工事費を多く必要とするかど
うかによって行おうとするもので,補正係数は,建物の建築に際して困難
な地域にあるかどうか,すなわち,建物の敷地に余裕があるかどうか,建
床面積に比し高層であるかなどの各種の状況を総合的に判断して決定する
ことになり,一般に高層ビル街の限られた地域に,敷地一杯に高層(10
階程度)の建物が建築され,または,交通の頻繁な地域に建築される場合
などその建物の工事に最も困難が伴う場合には,1.5の増点補正率を適
用するものとされているところ,本件家屋は,地上30階建ての超高層ビ
ルディングである上,地下部分には大規模な駐車場が設置されており,こ
の駐車場を利用するためのスロープ部分や建物の外回りである外構部分に
も大規模な空堀などが施工されており,床面積に算入されない部分も多く,
敷地一杯に利用されている。また,本件家屋は,港区α地区にあり,他の
地域に比べて交通量が多いということができる。したがって,補正係数を
1.50と定めたことは適正である。
なお,原告は,仮設工事の難易に大きな影響を及ぼすのは敷地に余裕の
ない状況における前面道路の交通量だけであると主張するが,仮設工事の
難易は,個々の建物の構造,規模等を基準に,建物の周囲の状況及び交通
の便否等によって仮設工事費を多く必要とする場合の補正項目であり,各
種の状況を総合的に判断して決定することとされ,建物の敷地の余裕,建
物が高層であるか否か,交通の頻繁な地域に建築される場合かなどが例示
されているから,原告の主張は補正の際の判断要素を根拠なく限定するも
ので不当である。
(原告の主張)
本件家屋は,地上30階建ての高層建物ではあるが,地下工事段階での
-81-
空地率は約35パーセント,地下工事完了後地上工事になった段階での空
地率は約60パーセントにまでなる。本件家屋の前面道路の幅員は,約8.
7メートル及び約4メートルであり,いずれの道路も交通頻繁な道路では
ない。したがって,本件家屋に係る仮設工事の工事の難易について,増点
補正係数の上限である1.50を適用する理由はない。
なお,仮設工事の難易に大きな影響を及ぼすのは,敷地に余裕のない状
況における前面道路の交通量だけである。
ソその他の工事(補正項目「工事の多少」)
(被告の主張)
その他の工事の「その他の工事の多少」による補正は,当該家屋の木工
事か金属工事に係る工事費が類似の家屋と比較して特に多いと認められる
場合等に,増点補正率を超えて適用して差し支えないところ,本件家屋は,
その利用用途が事務所,店舗,共同住宅,駐車場,アスレチッククラブと
多岐にわたるため,その他の工事としてよく掲げられる木工事(床の間,
敷居,鴨居等の造作工事),金属工事(鉄製階段,鉄製手すり,窓格子等)
以外にも多くの部分別「主体構造部」から「仮設工事」までに含まれてい
ない工事が施工されており,具体的には,設備基礎工事,鳩小屋関係工事,
パラペット工事,間接照明ボックス,防炎垂壁,住宅部分では,カーテン
ボックス,各木工事及び使用量に現れないライニング,巾木,廻り縁等の
多くの雑工事が施工されているており,その他工事に含まれる工事は別紙
4のとおりであるから,補正係数を20.00と定めたことは適正である。
なお,固定資産評価基準が再建築価格を基準とする評価方法を採用して
いることは,評価の際に実工事費を参考とすることを禁止するものではな
い。そして,評価において,特にその他の工事は,雑工事など他の部分別
区分で評価の対象とされていない工事を対象とするものであるから,対象
範囲も家屋により相当程度異なるところ,本件家屋は,複合用途でかつ大
-82-
規模の家屋であり,その他の工事として評価すべき工事範囲も特に大きい
から,これを適正に評価するためには,実情に応じて,一般的な限度を超
えて補正係数を決定することが必要であり,そうした際に,取得価格を参
考とすることは,現在の固定資産評価基準に基づく事務でも必要に応じて
行われているものである。
さらに,原告は,評価額は結果的に実工事費の概ね6割程度になること
が多いと述べるが,本件建物の評価額と見積額から推計した実工事費とを
対比すると,前者は後者の約63パーセントであり,基礎工事,躯体工事
などの工事区分においても評価額が工事費を上回っている箇所はないか
ら,この点からも,過大に評価されているとの原告の主張は客観的裏付け
を欠く。
(原告の主張)
「工事の多少」による増点補正率の範囲を超える補正率の適用は,木工
事か金属工事に係る工事が類似の家屋と比較して特に多いと認められる場
合等に限られるところ,本件家屋における「その他の工事」の内容は,非
木造家屋である他の高層ビルの場合と特別に異なることはなく,補正係数
の上限である1.50を大幅に上回る20.00の増点補正係数を適用す
る理由はない。
本件再調査に係る評価においてその他の工事に該当するとされた工事
(別紙4)は,平成3年度評価基準において「その他の工事」に該当する
とされている工事とかけ離れた工事が多く,別紙4に記載された工事のう
ち,「5-4-2雑鉄骨工事」から「10-1-3-3特殊室内装給湯室」
(3枚目)までの各工事については,いずれも,「事務所,店舗,百貨店
用建物」の再建築費評点基準表における部分別「主体構造部」から「仮設
工事」までの各部分別の内容に含まれているか,あるいは,含まれていな
いとしても,事務所,店舗,百貨店用建物において一般的に施工されてい
-83-
る工事であるから,これらの工事をもって工事費が類似の家屋と比較して
特に多いとは到底いえない。また,その余の工事について,その工事費を
合計しても14億1541万508円にすぎないから,補正係数として2
0.00を付すほどに類似の家屋と比較して特に多いとは到底認められな
い。
なお,本件再調査の結果では,別紙4記載の工事がすべからく「その他
の工事」に該当するとし,その工事費の合計41億6020万548円を
計上し,1平方メートル当たり4万2591円であるとして,これを標準
評点数1900で除して22.41を算出し,これをもって補正係数20.
00を付しているが,平成3年度評価基準は所定の補正係数の上限と下限
を設けているのであり,このような単純な計算によって補正係数を算出す
ることは,所定の補正係数が設定されていることを無視するものであり,
到底認められない。
そして,本件家屋の補正係数が異常な数値であることは,原告が所有す
る他の主な高層建物の補正係数と比較すれば一目瞭然である。なお,通常,
固定資産評価基準を遵守した上での家屋の評価額は,結果的に実工事費の
概ね6割程度となることが多いため,このような観点からも,被告の上記
算定方法は,他の納税者との比較において著しく均衡を欠くものである。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(本件家屋の建築当初の単位当たり再建築費評点数の算出が誤ってい
ることを理由として平成18年度価格の妥当性を争うことが許されるか否か。)
について
(1)平成18年度評価基準は,在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数につ
いて,原則として,基準年度の前年度における再建築費評点数に再建築費評
点補正率を乗じることによって求めることとしているところ(前記第2の1
(2)エ),争いのない事実等(前記第2の2(2))のとおり,本件家屋の各基
-84-
準年度(平成6年度,平成9年度,平成15年度,平成18年度)の再建築
費評点数は,例えば平成5年に新築された本件家屋については,建築当初の
再建築費評点数に当該基準年度において適用される固定資産評価基準に定め
る再建築費評点補正率を乗じて基準年度である平成6年度の再建築費評点補
正率を求めるなど,各基準年度の前年度の再建築費評点数に所定の再建築費
評点補正率を乗じることによって求められたものであり,本件家屋の平成1
8年度の再建築費評点数も,平成17年度の再建築費評点数に平成18年度
評価基準に定める再建築費評点補正率を乗じて求められたものである。
そして,原告は,このようにして求められた再建築費評点数を基にして算
出された平成18年度価格が違法である理由として,本件家屋の建築当初の
再建築費評点数の算出に誤りがあること,具体的には,別紙3に掲げられて
いる各補正項目に係る補正係数の適用に誤りがあることを主張している。
(2)ところで,地方税法432条1項本文は,固定資産税の納税者は,その納
付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に
登録された価格について不服がある場合においては,固定資産課税台帳に登
録した価格等の公示の日から納税通知書の交付を受けた日後60日まで若し
くは都道府県知事の勧告を受けて固定資産課税台帳に登録された価格を修正
した場合の公示の日から同日後60日(固定資産の価格の修正による更正に
基づく納税通知書の交付を受けた者にあっては,当該納税通知書の交付を受
けた後60日)までの間において,又は登録価格等の公示の日以後における
価格の決定・修正の通知を受けた日から60日以内において,文書をもって,
固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる旨定め,同法43
4条は,同委員会の決定に不服があるときは,その取消しの訴えを提起する
ことができ,登録価格についての不服は,上記審査の申出又は上記取消しの
訴えによることによってのみ争うことができることとしている。また,基準
年度の翌年度(第二年度)及び第二年度の翌年度(第三年度)の固定資産税
-85-
の課税標準は,原則として当該家屋の基準年度の価格とするものとされてい
る(同法349条2項,3項)ところ,同法432条1項ただし書は,第二
年度及び第三年度における家屋の価格に不服がある場合には,基準年度の価
格によることが不適当となる特段の事情を主張する場合に限り,所定の期間
内に,審査の申出ができるものとしている。
このように,地方税法が,固定資産税の課税標準である固定資産税課税台
帳の登録価格について不服があるときは,原則として基準年度の価格につい
て所定の審査申出期間内に固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をす
べきものとし,第二年度及び第三年度における価格については審査の申出を
することができる場合を限定し,これらの方法及び固定資産評価委員会の決
定に対する取消訴訟によらなければ価格を争うことができないこととしてい
るのは,固定資産税の賦課処分の前提問題である課税標準となる固定資産課
税台帳の登録価格を早期に確定させることにより,固定資産税に関連する事
項についての法的安定性を確保する趣旨であると解される。
そして,従前より存在する非木造家屋の評価を争う場合においても,建築
以降当該係争年度の前年度までの間の当該家屋に係る固定資産税の各賦課処
分は,当該家屋の建築当初の評価を前提としてされているのであって,非木
造家屋の評価を争う際に,建築当初の評価の誤りを無制限に主張できること
とすると,既に確定した固定資産税の各賦課処分の前提問題となった建築当
初の評価額についての争いがいつまでも蒸し返されることになり,上記のと
おり地方税法が固定資産課税台帳の登録価格を早期に確定させることとした
趣旨に反する結果となりかねない。また,建築当初の評価から時間が経過す
ればするほど,評価の対象となった家屋には経年変化が生じ,修復や増改築
等による変更が生じることが当然に予想され,さらには,建築当初の建築関
係書類が廃棄又は紛失されることがあることも想像に難くないのであって,
そうすると,時の経過と共に建築当初の評価に誤りがあったかどうかを的確
-86-
に判断することは困難になることも当然に予想されるものといわざるを得な
い。
以上のような点を考慮すると,地方税法は,原則として,建築当初の評価
後の基準年度が到来した後においては,建築当初の評価の誤りを理由として,
当該基準年度において固定資産課税台帳等に登録された家屋の価格の不服を
主張することや,当該誤りを理由に当該不服に理由がある旨の決定や判決を
することを予定していないものというのが相当である。
(3)もっとも,基準年度の前年度における再建築費評点数に再建築費評点補正
率を乗じる方法によって基準年度の再建築費評点数を算出している在来分の
家屋について,建築当初の再建築費評点数に誤りがあるにもかかわらず,そ
の誤りを主張してその後の基準年度の評価を争うことが一切できないことと
すると,その後の評価についての是正の手段がないことになり,このような
事態は,三年ごとに家屋の評価をし直すことを予定している地方税法(40
9条)の建前や,基準年度の家屋の課税標準は,当該家屋の基準年度に係る
賦課期日における適正な時価であって(同法349条1項,341条5号),
この適正な時価とは,正常な条件の下に成立する当該家屋の取引価格,すな
わち,客観的な交換価値をいうと解されること(最高裁判所平成10年(行
ヒ)第41号同15年6月26日第一小法廷判決・民集57巻6号723頁
参照),あるいは,市町村長が登録された価格等に重大な錯誤があることを
発見した場合には,決定した価格を修正して登録しなければならないこと(同
法417条1項),そのため,前記争いのない事実等(第2の2(3)ウ)のと
おり本件家屋においても行われたように,登録価格の再調査がされることも
あること等と整合しないことになる。
(4)これらの事情を考慮すると,建築当初の評価により固定資産課税台帳に登
録された価格についての審査申出期間や出訴期間が経過した後にあっては,
建築当初の評価において適切に評価できなかった事情がその後に判明したよ
-87-
うな場合や,建築当初の評価の誤りが重大で,それを基礎にその後の家屋の
評価をすることが適正な時価の算定方法として不合理であると認められるよ
うな場合に限っては,建築当初の評価が不合理であることを理由として,そ
の後の基準年度の価格を争うことも認められ,固定資産評価審査委員会や裁
判所において,建築当初の評価に重大な誤りがある等と認めた場合には,基
準年度の価格に対する不服に理由がある旨の判断をすることができると解す
るのが相当である。
このように解したとしても,不服の対象はあくまで当該基準年度の価格で
あって,固定資産評価審査委員会や裁判所の上記判断の効力が当該基準年度
の前年度以前の固定資産税の賦課処分の効力に直接影響を及ぼすわけではな
いことを考えるならば,前記のとおりの法的安定性を確保するという地方税
法の趣旨に反するものとはいえない。
2争点(2)(本件家屋の平成18年度価格は適切であるか否か。)について
上記1において述べたところに従い,本件において,本件家屋の建築当初の
評価において適切に評価できなかった事情がその後に判明し,又は,当該評価
の誤りが重大で,それを基礎に本件家屋の平成18年度価格の評価をすること
が適正な時価の算定方法として不合理であると認められるか否かについて検討
する。この点について,原告は,本件家屋の建築当初の評価が誤りである理由
として,本件家屋の各部分別評価において適用された補正係数が誤りであるこ
とを主張するので,まず,建築当初の本件家屋の再建築費評点数を算出するに
当たり,各部分別評価において適用された補正係数に重大な誤りがあるといえ
るか否かについて検討する。
ところで,前記第2の1(3)イ(オ)のとおり,平成3年度評価基準は,非木造
家屋の各部分の工事の施工量等が,評点基準表の「補正項目及び補正係数」欄
の「標準」欄に定められている工事の施工量等と相違する場合には,標準評点
数を補正係数によって補正するものとしている。これは,評点項目及び標準評
-88-
点数が,同種類の非木造家屋に一般的に使用されている資材の種別,施工の態
様等を考慮して決定されているものであり,個々の家屋の施工の態様等は,必
ずしもこの評点項目及び標準評点数に適合するものとはいえず,個々の家屋の
各部分の施工の状況には当然に差異が生じ得るものであることから,各個の家
屋の実態に見合った適正な再建築費評点数を算出する必要があるためであると
解される(乙38参照)。そして,使用資材の数量が明確な家屋に係る補正項
目については,使用資材の数量による補正は考えられないから,当該家屋の施
工の状況から生じる労務費の多寡等当該家屋の時価に影響を及ぼす要因を再建
築費評点数に反映させることを目的とするものと解される。このような観点か
ら,平成3年度評価基準の評点基準表には,各部分の評価項目における補正項
目について,補正係数の限度が増点補正をする場合と減点補正をする場合の双
方について定められているが,これはあくまで一般的に妥当と考えられる補正
係数の限度を定めたもので,平成3年度評価基準に定められている(前記第2
の1(3)イ(オ))とおり,補正項目について定められている補正係数の限度内に
おいて処理することができないものについては,その実情に応じて,定められ
ている補正係数の限度を超えて補正係数を決定するものとされ,証拠(乙37
の4,5)及び弁論の全趣旨によれば,そのような実例が少なからず存在する
と認められる。
したがって,本件家屋の建築当初の評価の誤りが重大であるといえるか否か
を判断するに当たっては,本件家屋の各部分別評価において適用された補正係
数に上記の観点に照らして重大な誤りがあるといえるか否かを判断することに
なる。
なお,前記争いのない事実等(第2の2(3)ウ)のとおり,本件家屋について
は,東京都港都税事務所長が本件再調査を行っており,これは建築当初の再建
築費評点数を再度算出したものであって,本件決定もこれを前提としているも
のであるから,以下においては,本件再調査により算出された部分別の再建築
-89-
費評点数についてそれぞれ判断する。
(1)主体構造部
ア本件家屋については,建築当初の主体構造部の評価上,「工事形態」に
より1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の主体構造部
の工事形態が通常の工事形態に比較して複雑であることはなく,評点基準
表の上限1.05を超える補正係数による増点補正をする必要はないなど
と主張する。
イところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,鉄骨鉄筋コンクリート造又
は鉄筋コンクリート造の非木造家屋における主体構造部とは,基礎,柱,
梁,床版,壁体,小屋組,屋根版等の主体構造部分をいい,平成3年度評
価基準の定める主体構造部の「工事形態」による補正について,平成3年
度評価基準解説(甲27)は,「「工事形態」による補正は,建物の主体
構造部の工事形態が通常の工事形態に比較して複雑であるか単純であるか
を基準として行うものである。この補正係数の判定は,(中略)主体構造
部の使用資材の数量が明確な建物については,工事形態から生ずる労態費
の相違を考慮して行うこととなるものである。工事形態における補正係数
の判定は,建物の外観から見てこれを行うものであり,(中略)通常同一
用途の建物のうち外観から見て重量感のあるもの又は凹凸の多いもの等が
増点補正率の対象となり,その形態が単純であるもの又は壁厚の薄いもの
等が減点補正率の対象となるものである。」としているところ,これは,
非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本
件家屋の主体構造部の補正項目「工事形態」についての補正係数を1.3
0としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断す
るのが相当である。
ウそこで,本件家屋の主体構造部の工事形態が通常の工事形態に比較して
複雑であるか否かについてみるに,証拠(甲27,乙9の1,乙11から
-90-
14まで)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋は,①地階部分が鉄骨鉄
筋コンクリート造及び鉄筋コンクリート造,地上階部分が鉄骨造という複
合構造であること,②地下2階地上30階塔屋1階建,高さ141メート
ル,延べ床面積97,677.72平方メートルという巨大なビルであり,
新築された平成5年当時には港区内であっても1桁の数しか存在していな
かった140メートルを超える大型高層ビルであって,平成3年度評価基
準において,使用資材の数量が明確でない建物についての階層数による補
正係数について「標準」とされている階層数(地上6階)のみならず,評
価基準表の上限の補正係数を適用するものとされている階層数(地上9階)
をはるかに上回る大型高層ビルであること,③各階平面の形状は,単純な
長方形ではなく,屈曲部分が多くある凹凸の多いものであること,④外観
からみて質感・重量感がありデザイン性に富んだものであることが認めら
れ,これらの事情を考慮すれば,本件家屋の主体構造部については,当時
想定されていた標準的な家屋に比べてはもとより,当時複雑な家屋として
想定されていたものよりもはるかに労務費がかさむ形態の家屋であると認
められるから,本件家屋の主体構造部の「工事形態」に係る補正係数を評
点基準表の上限1.05を超える1.30としたことが重大な誤りである
ということはできないというべきである。
これに対し,原告は,<ア>地上階が鉄骨造で地階がある建物は,ほぼ全
てが複合構造の形式を採用しているから,複合構造であることは増点補正
の理由とならない,<イ>家屋の規模や高さを考慮することは不明確計算の
補正項目を明確計算に持ち込むもので固定資産評価基準が予定していない
し,階層数が多いことによって労務費がかさむことはない,<ウ>外壁の凹
凸は極めて少なく,形態としては非常に単純であるなどと主張する。しか
し,<ア>地上階が鉄骨造で地階がある建物が一般的に複合構造の形式を採
用していたとしても,そのような家屋については,標準的な家屋より主体
-91-
構造部の労務費がかかると考えられるのであるし,<イ>確かに,資材の使
用量が明確でない建物についてのいわゆる不明確計算において,延べ床面
積1平方メートル当たりの鉄筋等の標準量に階層数による補正係数を乗じ
ることとされているのは,階層数の増加により鉄筋等の使用量も標準量よ
り増加することを考慮したものであろうが,階層数が大きく増えて高層化
するならば,その資材の輸送運搬コスト等によりその使用量比を超えて労
務費等が増加すると考えられるのであり,さらに,<ウ>本件家屋の各階平
面が凹凸の多いものであることは前記のとおりであり,基準階である15
階の凹み部分の面積がフロア全面積に占める割合が4.7パーセント程度
であるとしても(甲10の1),各階平面の凹凸によって主体構造部の労
務費が増すと判断したことが重大な誤りということはできない。したがっ
て,原告の上記主張は採用できない。
(2)根切り工事
ア補正項目「地盤」
(ア)本件家屋については,建築当初の基礎工事のうち根切り工事の評価
上,「地盤」により1.50の補正がされているところ,原告は,本件
家屋の敷地は,良好な地盤であり,地下水の湧水量が多いことはないか
ら増点補正をすることはできないなどと主張する。
(イ)ところで,根切り工事とは,建物の基礎その他地下部分の構築のた
めに所定の深さまで掘り下げる工事をいう(甲27)ところ,平成3年
度評価基準の定める根切り工事の「地盤」による補正について,平成3
年度評価基準解説は,「「地盤」による補正は,基礎工事における山留
工事及び排水工事の工事費の状況を標準評点数に反映させる目的のため
に設けられたものである。したがって,この補正は,地盤の軟弱な地域
及び地下水の湧水量の多い地域については増点補正率を適用することと
し,堅牢な地盤の地域及び湧水量の極めて少ない地域については減点補
-92-
正率を適用することとなるものである。」としている。これは,非木造
家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家
屋の根切り工事の補正項目「地盤」についての補正係数を1.50とし
たことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するの
が相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の敷地の地盤が軟弱な地域等であるかについてみ
ると,証拠(甲4,27,乙15)によれば,本件家屋については,長
さが20メートル以上,杭の口径が1.2メートルから2.1メートル
あるペデスタル杭を合計394本打ち込んでいることが認められるとこ
ろ,これらのペデスタル杭は,評点基準表において基礎工事のうちの評
点項目「杭打地業」における補正係数の上限が適用される長さ20メー
トル,口径50センチメートルのものより2.2倍から4倍以上とはる
かに太いものであるから,本件家屋が高層で自重量が重いことを考慮し
ても,このような杭打地業を行ったのは,地盤が軟弱であることの証左
であると合理的に推測されるところである。したがって,そのような判
断の下に,地盤が軟弱であるとして,本件家屋の根切り工事の「地盤」
に係る補正係数を1.50としたことが重大な誤りであるということは
できないというべきである。
これに対し,原告は,杭打地業工事については,別途評点項目が設け
られているから,杭打地業工事を理由に増点補正することは不適切であ
る旨主張するが,杭打地業工事の評点項目においては,杭打地業工事そ
のものによる工事費を評価するものであるのに対し,上記の判断は,根
切り工事における工事費を評価するものであって,杭打地業工事の結果
は,地盤の軟弱さを認定するために用いたにすぎないから,原告の上記
主張は採用できない。
イ補正項目「敷地」
-93-
(ア)本件家屋については,建築当初の基礎工事のうち根切り工事の評価
上,「敷地」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件
家屋の敷地は大規模なもので,土の保存や工事施工のスペースは十分確
保でき,根切り工事が困難とは到底評価することができないから,増点
補正をすることはできないなどと主張する。
(イ)ところで,平成3年度評価基準の定める根切り工事の「敷地」によ
る補正について,平成3年度評価基準解説は,「「敷地」による補正は,
建物が密集している地域に建築する場合の根切り工事の困難性に基づく
工事費の増加を標準評点数に反映させる目的で設けられたものである。
すなわち,建物の建築においては,根切りによって掘り出された土(中
略)の一部を埋戻しに使用しなければならず,一定の土量はこれを保存
する必要があり,(中略)敷地が狭く敷地外の他の場所にこの保存すべ
き土量を移動しなければならない場合には,運搬費が増加することとな
り,根切り工事費は結果的に割高となるものである。また,建物の密集
した地域においての根切り工事は極めて困難であって,それだけ能率が
悪くなり工事費も割高となるものである。」としているところ,これは,
非木造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,
本件家屋の根切り工事の補正項目「敷地」についての補正係数を1.3
0としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断
するのが相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の根切り工事が困難であるかについてみると,証
拠(甲10の1,乙11,13,17)及び弁論の全趣旨によれば,本
件家屋の地下工事前における,敷地面積(約1万4412平方メートル)
に占める空き地の割合は約35パーセントあることが認められるもの
の,本件家屋の敷地はそもそも不整形であって,空き地部分は不整形で
あり空き地一つ一つの面積は大きくないことが認められるところ,他方
-94-
で,地下2階だけで床面積合計約1万7990平方メートルを擁する本
件家屋(甲4)についての根切り工事によって掘り出される土の量は膨
大であり,およそ全部合わせても敷地面積の約35パーセントの500
0平方メートル程度の広さしかない不整形の空き地上において保管でき
る量であるとは考え難い。また,証拠(乙32)及び弁論の全趣旨によ
れば,本件家屋は,東京都港区α地区の商業地区に所在しており,建物
密集地にあることに加え,当該地区は高低差のある地域であることが認
められるから,これらの地域性に照らすと,本件家屋の根切り工事の実
施自体に相当の困難を伴うと考えられる。さらには,証拠(甲11の6,
甲17,18,乙32)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の敷地は,
主要幹線道路に面しているものではなく,周辺道路は片側一方通行のも
のもあるなどその幅員は広くはないものと認められる上,前記のとおり
根切り工事を行った場合に発生する相当量の土を都心部から郊外などの
離れた場所に運搬しなければならないと考えられるから,それほど大型
ではないトラックを数多く往復させる必要が生じるなど搬出すべき土の
運搬には多額の費用を要するものと考えられる。このような事情を考慮
するとすれば,本件家屋に係る根切り工事は,多くの費用を要する困難
なものと考えることは何ら不合理でないというべきであって,本件家屋
の根切り工事の「敷地」に係る補正係数を1.30としたことが重大な
誤りであるということはできないというべきである。
(3)外周壁骨組
ア本件家屋については,建築当初の外周壁骨組の評価上,「施工の程度」
により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の外周壁骨
組には,一般的に用いられる資材が使用されているから,増点補正をする
ことはできないなどと主張する。
イところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における外周壁
-95-
骨組とは,建物の外周壁の骨組で主体構造部を構成しないものをいい,平
成3年度評価基準解説は,外周壁骨組の「「施工の程度」による補正は,
標準評点数の積算に当たり,通常考えられる標準的な工事費が基準とされ
ているため,極めて高級な家屋の場合又は普請の程度の極めて悪い家屋の
場合であっても,実際に生ずる工事費の格差が再建築費評点数に反映され
ないこととなる。そこで普請の程度の良否により,増点又は減点すること
によって個々の家屋の工事費の実態に適合させるよう「施工の程度」によ
る補正項目を設け,当該補正係数を定めているものである。したがって,
この補正は一般的な施工の建物については適用する必要はなく,特に高級
な建物とか,普請の程度の悪い建物についてのみ適用するものである。」
としている(なお,この記載は,評点項目「外部仕上げ」の説明として記
載されているが,続けて「このことは,その他の部分別についても全く同
様である」とされていることから,評点項目「外周壁骨組」に係る補正項
目「施工の程度」についての説明としても理解することができる。)とこ
ろ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということがで
きるから,本件家屋の外周壁骨組の補正項目「施工の程度」についての補
正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に
照らして判断するのが相当である。
ウそこで,本件家屋が特に普請の程度の良い高級な建物で,標準的な建物
と比べて外周壁骨組の工事費が高いものといえるか否かについてみるに,
証拠(甲4,乙11,12)によれば,本件家屋の外周壁骨組にはプレキ
ャストコンクリート板(100ミリメートル厚)に花崗岩を打ち込んだも
のが使用されているところ,これは,通常のプレキャストコンクリート板
を使用した場合に比べてはるかに普請の程度の良いものであることが認め
られ,本件家屋が地上30階という高層ビルであることも考慮すると,外
周壁骨組の施工に通常予定されているものよりはるかに多くの工事費を要
-96-
するものとして,本件家屋の外周壁骨組の「施工の程度」に係る補正係数
について,1.30としたことが重大な誤りであるということはできない
というべきである。
これに対し,原告は,<ア>花崗岩は「外周壁骨組」を構成するものでな
い,<イ>プレキャストコンクリート板の製作費は「資材費評点数」に含ま
れており,施工に用いるタワークレーン使用料は仮設工事で評価されるも
ので,いずれも増点補正の要素とすることはできないと主張する。しかし,
<ア>原告は,本件家屋の外周壁骨組に使用されたプレキャストコンクリー
ト板は,工場で花崗岩を敷き詰め型にコンクリートを流し込み成型したも
のである旨主張するのであり,そのようなものを製作すること自体に通常
のプレキャストコンクリート板より多額の費用を要するのであるから,こ
れを外周壁骨組の評価において考慮することは何ら不合理でなく,<イ>そ
のような花崗岩を打ち込んだ特殊なプレキャストコンクリート板の製作費
は資材の通常の評点数では評価されていないし,部分別評価によって再建
築費評点数を算出する場合において,仮設工事で用いるタワークレーンの
費用とは別に,外周壁骨組の工事で用いるタワークレーンの費用を考慮す
ることは何ら不合理ではない。したがって,原告の上記主張はいずれも採
用できない。
(4)外部仕上げ
ア本件家屋については,建築当初の外部仕上げの評価上,「施工の程度」
により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の外部仕上
げ資材は一般的な資材であるから,増点補正をすることはできないなどと
主張する。
イところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における外部仕
上げとは,建物の外周壁の仕上げ部分とその下地部分をいうところ,「施
工の程度」による補正の基準は,前記(3)イのとおりであるから,本件家屋
-97-
の外部仕上げの補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30と
したことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するの
が相当である。
ウそこで,本件家屋が特に普請の程度の良い高級な建物で,標準的な建物
と比べて外部仕上げの工事費が高いものといえるか否かについてみるに,
証拠(甲4,乙11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の外部
仕上げには,花崗岩や小口・二丁掛タイル等の複数の資材が用いられてい
ること,外壁はよく磨き上げられたものである上,デザイン性に優れたも
ので,壁面全体に統一感があることが認められ,その普請の程度はよいと
いえることに加え,前記(3)のとおり,本件家屋の各階平面図の形状は単純
な長方形ではなく,その外部の形状は直方体ではなく凹凸のあるものであ
ること,高層ビルの外部仕上げには,強靱な足場の組立てや取壊し,高所
での作業に伴う各種安全確保措置など通常の施工より多くの工事費を要す
るものと考えられることも考慮すると,外部仕上げの施工に通常より多く
の工事費を要するものとして,本件家屋の外部仕上げの「施工の程度」に
係る補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはでき
ないというべきである。
これに対し,原告は,<ア>本件家屋に用いられた花崗岩の割合は低く,
また花崗岩の使用は資材による評点数で評価されている,<イ>建物が高層
であることと普請の程度は関係なく,使用資材が多様であることはそれぞ
れ評点項目ごとに評価すれば足りるなどと主張する。しかし,<ア>外部仕
上げの補正項目「施工の程度」による補正は,外部仕上げに用いられた資
材ごとに行うべきものではなく,外部仕上げ全体の仕上がり状況から見て
それに要する工事費が通常より増減するかという観点から行うものである
から,花崗岩の使用割合が相対的に少ないことから増点補正が許されない
ことになるものではないし,「施工の程度」による補正をすることで資材
-98-
による評点数で評価したものを再度評価するものではない。また,<イ>建
物が高層であれば,全体的な外部仕上げのコストがかさむことになること
は前記のとおりであり,使用資材が多様であれば,全体を統一的に仕上げ
ることにコストがかかるとも十分に考えられるのであるから,これらの要
素を「施工の程度」において考慮することは,不合理とはいえない。した
がって,原告の上記主張はいずれも採用できない。
(5)内部仕上げ
ア本件家屋については,建築当初の内部仕上げの評価上,「施工の程度」
により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の内部仕上
げ資材は一般的な資材であるから,増点補正をすることはできないなどと
主張する。
イところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における内部仕
上げとは,建物の内周壁の仕上げ部分とその下地部分をいい,「施工の程
度」による補正の基準は,前記(3)イのとおりであるから,本件家屋の内部
仕上げの補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30としたこ
とが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当
である。
ウそこで,本件家屋が特に普請の程度の良い高級な建物で,標準的な建物
と比べて内部仕上げの工事費が高いものといえるか否かについてみるに,
証拠(甲4,乙11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の内部
仕上げについては,事務所部分の吹き抜けとなったエスカレーターホール
や2階ロビーについて大きな壁面面積に大理石や花崗岩を用いてきれいな
仕上げをしていること,住宅部分の専用ロビーについては,壁面が曲面で
ある上,同様にきれいな仕上げをしていること,事務所部分の廊下や事務
室内は,大きな面積に石膏ボードにエマルジョンペイントを吹き付けてき
れいに仕上げていること,24階以上にある住宅部分の壁面も,大きな面
-99-
積について合成樹脂壁紙できれいに仕上げていること,本件家屋の内部仕
上げに使用された資材は多様であることが認められるから,本件家屋の内
部仕上げは,標準的な家屋のそれに比べて普請の程度が良く高級な仕上げ
になっているものということができ,これらの事情に,仕上げ面積が相当
に広くなるとそれに伴って柄合わせなどのために精巧な作業が必要にな
り,また施工場所の階層が相当に高くなれば必然的にそれに伴う運搬等の
コストも増すと考えられることも総合すると,内部仕上げの施工に通常よ
り多くの工事費を要するものとして,本件家屋の内部仕上げの「施工の程
度」に係る補正係数を1.30としたことが重大な誤りであるということ
はできないというべきである。
これに対し,原告は,内部仕上げについては,使用資材に応じて評点項
目が設けられているにもかかわらず,一律に一部の使用資材の仕上げを利
用して他の使用資材の評点項目について増点補正することは許されない旨
の主張をするが,前記(3)イのとおり,「施工の程度」による補正は,普請
の程度の良否による工事費の差異を評点数に反映させるためのものであ
り,評点項目ごとにされるものではないから,建物全体の内部仕上げの施
工の程度が良いことをもって,その全体について補正をすることは,何ら
平成3年度評価基準に反するものではないし,本件家屋の内部仕上げにつ
いての「施工の程度」による補正が,ごく一部の施工の程度の良さだけを
理由とするものでないことは,上記認定からも明らかである。したがって,
原告の上記主張は採用できない。
(6)床仕上げ
ア本件家屋については,建築当初の床仕上げの評価上,「施工の程度」に
より1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の床仕上げ資
材は一般的な資材であり,特に手間の多くかけられた施工がされていると
ころはないから,増点補正をすることはできないなどと主張する。
-100-
イところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における床仕上
げとは,建物の床の仕上げ部分とその下地部分をいい,「施工の程度」に
よる補正の基準は,前記(3)イのとおりであるから,本件家屋の床仕上げの
補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30としたことが,重
大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
ウそこで,本件家屋が特に普請の程度の良い高級な建物で,標準的な建物
と比べて床仕上げの工事費が高いものといえるか否かについてみるに,証
拠(甲4,乙11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の床仕上
げについては,事務所部分のエスカレーターホールや2階ロビー,住宅部
分の専用ロビー等に大理石や花崗岩を用いた模様貼りをしていること,高
層階にプールがあり,防水加工がされた床工事がされていること,住宅部
分の床も一般の住宅に比べて資材も仕上げも高級であることが認められる
から,本件家屋の内部仕上げは,標準的な家屋のそれに比べて普請の程度
が良く,高級な仕上げになっているものということができ,これらの事情
に,事務所部分の床にはフリーアクセス床が施工されているところ,確か
にフリーアクセス床であること自体は評点項目で考慮されているものの,
これを高層ビルに施工するためには,通常より強度の高いものを用いる必
要があり,施工に手間がかかるとも考えられることや,高層ビルの床の工
事には資材の輸送運搬等のために通常より費用がかかること,平面の形状
に凹凸があるために床の施工に手間がかかること等の事情も併せ考慮すれ
ば,床仕上げの施工に通常より多くの工事費を要するものとして,本件家
屋の床仕上げの「施工の程度」に係る補正係数を1.30としたことが重
大な誤りであるということはできないというべきである。
これに対し,原告は,使用資材に応じて評点項目が設けられているにも
かかわらず一律に補正係数を乗ずることは許されない旨の主張をするが,
これが採用できないことは,前記(5)ウのとおりである。
-101-
(7)天井仕上げ
ア本件家屋については,建築当初の天井仕上げの評価上,「施工の程度」
により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の天井仕上
げ資材は一般的な資材であり,特に手間の多くかけられた施工がされてい
るところはないから,増点補正をすることはできないなどと主張する。
イところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における天井仕
上げとは,建物の天井の仕上げ部分とその下地部分をいい,「施工の程度」
による補正の基準は,前記(3)イのとおりであるから,本件家屋の天井仕上
げの補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30としたことが,
重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
ウそこで,本件家屋が特に普請の良い高級な建物で,標準的な建物と比べ
て天井仕上げの工事費が高いものといえるか否かについてみるに,証拠(甲
4,10の1,乙11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の天
井仕上げについては,エスカレーターホール,2階ロビー及び住宅部分の
専用ロビーに二重,三重の打ち上げ天井が施工されていること,事務所部
分にはシステム天井が施工されており,そこには多くの設備が設置されて
いること,大きな吹き抜け部分があることが認められるから,本件家屋の
天井仕上げについては,標準的な建物に比べて普請の程度が良く,高級な
仕上がりとなっているということができる。そして,これらの事情に,本
件家屋が高層で,天井仕上げにもコストがかかると考えられること,床仕
上げと同様に仕上げ面積が大きいために,これに伴うコストも増加すると
考えられることも考慮すると,天井仕上げの施工に通常より多くの工事費
を要するものとして,本件家屋の天井仕上げの「施工の程度」に係る補正
係数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできないとい
うべきである。
これに対し,原告は,<ア>二重,三重の打ち上げ天井が占める割合はご
-102-
くわずかである,<イ>システム天井は,一般的な施工方法であり,平成3
年度評価基準の評点項目に挙げられているものと費用は実質的に同等であ
る,<ウ>システム天井に組み込まれた設備を考慮することは,「建築設備」
との二重評価になるなどと主張する。しかし,<ア>二重,三重の打ち上げ
天井が占める割合がわずかでも,このことだけから「施工の程度」による
補正をしているわけではないことは上記のとおりであるし,<イ>システム
天井が一般的な施工方法であるとしても,平成3年度評価基準の評点項目
にはシステム天井は挙げられていないから,工場での組み上げ費用やその
運搬費用なども含めて考えれば,平成3年度評価基準の評点項目に挙げら
れている標準的な天井仕上げ資材を用いた場合の施工費用よりシステム天
井の工事費の方が多額になると考えることは合理的である。また,<ウ>シ
ステム天井に設備が多いことは,システム天井の強度を強化する必要が出
たり,施工に手間がかかったりすることから天井仕上げそのものの施工に
影響があるという理由で挙げたものであって,設備そのものを評価に含め
ているものではない。したがって,原告の上記主張はいずれも採用できな
い。
(8)屋根仕上げ
ア本件家屋については,建築当初の屋根仕上げの評価上,「施工の程度」
により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の屋根仕上
げ資材は一般的な資材であり,標準的な施工方法と異なった施工がされて
いるところはないから,増点補正をすることはできないなどと主張する。
イところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における屋根仕
上げとは,建物の覆蓋を構成する屋根部分のうち,主体構造部に含まれる
小屋組,屋根版等を除いた屋根葺下地,仕上げ部分,防水層等をいい,「施
工の程度」による補正の基準は,前記(3)イのとおりであるから,本件家屋
の屋根仕上げの補正項目「施工の程度」についての補正係数を1.30と
-103-
したことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するの
が相当である。
ウそこで,本件家屋が特に普請の良い高級な建物で,標準的な建物と比べ
て屋根仕上げの工事費が高いものといえるか否かについてみるに,証拠(乙
11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の屋根仕上げについて
は,陸屋根と勾配屋根が組み合わされていること,勾配屋根部分が四方に
配置されており,デザイン性が高いこと,23階の屋根に相当する部分に
中庭が設けられ,中庭部分にも凝った施工がされていること,中庭の上空
は24階部分から30階部分まで中空となっていることが認められるか
ら,本件家屋の屋根仕上げについては,標準的な建物に比べて普請の程度
が良く,高級な仕上がりとなっているということができる。そして,これ
らの事情に,本件家屋が高層であって屋根仕上げにもコストがかかると考
えられることも考慮すると,屋根仕上げの施工に通常より多くの工事費を
要するものとして,本件家屋の屋根仕上げの「施工の程度」に係る補正係
数を1.30としたことが重大な誤りであるということはできないという
べきである。
これに対し,原告は,陸屋根と勾配屋根の組合せとなっていることや中
庭・中空があることは,いずれも主体構造部で評価すべき事項であると主
張するが,このような屋根仕上げになっていることにより,屋根の下地及
び仕上げに通常の建物に比べて施工が複雑になったり,施工費用が増加し
たりすることを屋根仕上げの「施工の程度」の評価において考慮すること
が,主体構造部との二重評価とならないことは明らかである。また,原告
は,本件家屋の勾配屋根は,鉄骨の組合せ方のみで表現されたにすぎず,
工事費を増加させるものである旨の主張をし,それを裏付けるものとして
甲11の4を提出するが,そのような施工方法が採られていても,工事費
が増大することが十分に考えられる上,上記補正係数は勾配屋根の存在の
-104-
みをもって付設されたものであるとはいえないから,原告が指摘する事情
は,上記判断を左右するものではない。したがって,原告の上記主張はい
ずれも採用できない。
(9)建具
ア本件家屋については,建築当初の建具の評価上,「施工の程度」により
1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋に使用されている
建具は一般的な資材であり,標準的な施工方法と異なった施工がされてい
るところはなく,ステンドグラスを手の込んだ上等のものと評価できると
しても,建具全体についての補正係数として1.30を適用する理由はな
いなどと主張する。
イところで,前記第2の1(3)イ(ウ)のとおり,非木造家屋における建具と
は,窓,出入口等の建具及びその建付枠並びにスチールシャッター等をい
い,「施工の程度」による補正の基準について,平成3年度評価基準解説
は,「「施工の程度」による補正は,他の部分別の場合と同様に,示され
た標準評点数が,各評点項目別に当該使用資材にかかる標準的な施工を基
準として積算されているものであるから,これと異なった施工のものにつ
いて,それに相当する補正を行う必要があることから設けられたものであ
る。したがって,施工の程度による補正係数の判定は,特に当該建具の施
工の程度が一般的でないものについてのみ行うこととし,使用資材に見合
った施工がなされている場合においては特に必要はないものである。」と
しているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があると
いうことができるから,本件家屋の建具の補正項目「施工の程度」につい
ての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記
基準に照らして判断するのが相当である。
ウそこで,本件家屋について,標準的な建物と比べて建具の施工の程度が
一般的ではないものといえるか否かについてみるに,証拠(乙11,12)
-105-
及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の建具については,事務所部分にお
いて,エスカレーターホールや2階ロビー等に大型の固定されたステンレ
スサッシュを使用していること,車寄せ部分の屋根には固定されたトップ
ライトサッシュを使用していること,2階エントランス部分には,デザイ
ン性の高いステンドグラスが設置されていること,住宅部分の入口の建具
は凝ったデザインのものであること,カーテンウォールのガラスには鏡面
調整がされていることが認められから,本件家屋の建具については,標準
的な建物に比べて手間のかかる施工がされているものということができ
る。そして,これらの事情に,平成3年度評点基準表に評点項目として掲
げられている建具は,いずれも標準的な大きさや重量等を前提としている
もので,上記証拠等によれば,本件家屋に使用されている建具の多くは,
この標準的な建具と比べて大きく,重量も重いと認められることも考慮す
ると,建具の施工の程度が一般的なものとはいえないとして,本件家屋の
建具の「施工の程度」に係る補正係数を1.30としたことが重大な誤り
であるということはできないというべきである。
これに対し,原告は,大型サッシュ(1辺が5メートルを超えるもの)
の占める割合が少ないとか,鏡面調整はある程度の規模の家屋では一般的
であるから,上記の事情は増点補正の理由にならないなどと主張するが,
大型サッシュが使用されていることは考慮要素の一つであるにすぎない
し,仮に鏡面調整をすることが当時としてもある程度一般的であったとし
ても,平成3年度評価基準においてそれが一般的な施工であるとして標準
評点数に盛り込まれているものとは認められないのであるから,それを「施
行の程度」を判断する際の一材料とすることは誤りではない。したがって,
原告の上記主張は,前記判断を左右するものではない。
(10)特殊設備
アルーバー(アルミニウム系)
-106-
(ア)本件家屋については,建築当初の特殊設備のうち,ルーバー(アル
ミニウム系)の評価上,「程度」により1.30の補正がされていると
ころ,原告は,平成3年度評点基準表上の上限値である1.20を超え
る補正をする理由はないと主張する。
(イ)ところで,ルーバーとは,光線,音波の室内流入を調節するスクリ
ーンで,外周壁開口部に施工されるものであるところ(甲27),ルー
バーに係る「程度」による補正の基準も,前記(3)イのとおりであると解
されるから,本件家屋の特殊設備のうちルーバー(アルミニウム系)の
補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な
誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)そして,証拠(乙11,12)及び弁論の趣旨によれば,本件家屋
のルーバーは,外部仕上げや外部建具と一体となっているものと認めら
れるから,これらと同様に施工の程度がよいものとして,補正係数を1.
30としたことが,重大な誤りであるということはできないというべき
である。
イ既製間仕切
(ア)本件家屋については,建築当初の特殊設備のうち,既製間仕切の評
価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原告は,既
製品の一般的な間仕切を使用しているから,増点補正をすべきでないと
主張する。
(イ)ところで,既製間仕切とは,床面から天井に達する規模のアルミニ
ウム骨組及びパネルからなるものを内容としており(甲27),その「程
度」による補正の基準も前記(3)イのとおりであると解されるところ,こ
れまでに認定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるか
に良い高級なものであることからすれば,既製間仕切については,およ
そ高級なものを用いずに標準程度のものを用いることは,既製間仕切り
-107-
が床面から天井に達する規模のアルミニウム骨組及びパネルからなるも
のであるという性状に鑑みれば建物全体のバランス上考えにくいとこ
ろ,既製間仕切のみこのようなものを利用していたことを窺わせる事情
は見出し難い。そうすると既製間仕切りも,他の設備と同様に施工に手
間がかかるものを使用しているものと推認することができ,他に補正係
数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はな
い。
したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたこと
が重大な誤りであるということはできない。
(11)建築設備(電気設備)
ア動力配線設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)のうち動力
配線設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,
原告は,本件家屋には金属管内配線でモーターブレーカー,開閉用マグ
ネットを使用した動力盤が用いられているから,増点補正をする理由は
ないなどと主張する。
(イ)ところで,動力配線設備は,家屋の建築設備を構成している各種動
力機器の動力源としての電気の配線設備をいい(甲27),平成3年度
評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補
正は,配線の内容と用いられている機器の内容の二つの面から,動力配
線設備の程度を判定して補正しようとするもの」であり,「「上等なも
の」とは,金属ダクト,バスダクト,ケーブル等を用いた配線で,各電
動機ごとにユニット化したキュービクル型動力盤を使用している程度の
もの」,「「普通のもの」とは,金属管内配線で,一般動力盤モーター
用配線用遮断機(モーターブレーカー),開閉用マグネットスイッチ等
が用いられている程度のもの」としているところ,これは,非木造家屋
-108-
の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の
動力配線設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30とした
ことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが
相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の動力配線設備についてみると,本件家屋の動力
配線設備には,増点補正の対象となる「上等なもの」に該当するとされ
ているバスダクトも用いられており,これまでに認定した本件家屋全体
の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級なものであるにもか
かわらず,動力配線設備については程度が高くないものを使用したとい
う事情は見出し難く,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤り
であると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたこと
が重大な誤りであるということはできない。
イ電灯コンセント配線設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)のうち電灯
コンセント配線設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされて
いるところ,原告は,本件家屋の電灯コンセント配線設備については,
他の建物と比較して手間が多くかかっているものでないから,増点補正
をする理由はないなどと主張する。
(イ)ところで,電灯コンセント配線設備は,建物の照明器具及び小型電
気機器類を接続するための配線設備をいい(甲27),平成3年度評価
基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,
電灯コンセント配線設備の工事及び仕上がりの程度によって行うもので
ある。」「「上等なもの」とは,各部材の埋込工事や塗仕上げ等がとく
にていねいに行われているものと解してよいもの」であるとしていると
ころ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということ
-109-
ができるから,本件家屋の電灯コンセント配線設備の補正項目「程度」
についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否か
も,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の電灯コンセント配線設備についてみると,証拠
(甲10の2)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の電灯コンセント
設備については,取付器具に塗装がされているものでないことは認めら
れるものの,リモコンスイッチや埋込タンブラの埋込作業が丁寧にされ
ていることやフロアコンセントの納まりもよいことが認められ,また,
これまでに認定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはる
かに良い高級なものであるにもかかわらず,電灯コンセント配線設備に
ついては程度が高くないものを使用したという事情は見出し難く,他に
補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証
拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数を1.30としたことが重大な
誤りであるということはできない。
これに対し,原告は,リモコンスイッチについては補正項目「スイッ
チ」で,フロアコンセントについては補正項目「フロアコンセント」で
それぞれ増点補正の対象となっているから,二重評価になる旨主張する。
しかし,平成3年度評価基準解説によれば,「スイッチ」による補正は
スイッチそのものによる相違を補正しようとするもの,「フロアコンセ
ント」による補正は床下配線の有無による工事費の相違を補正しようと
するもので,工事や仕上がりの程度による相違を補正するものではない
から,リモコンスイッチやフロアコンセントの仕上がりの程度が良いこ
とを理由に「程度」による補正をすることは二重評価とはならないとい
うことができ,原告の上記主張は採用できない。
ウ電話配線設備
-110-
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)のうち電話
配線設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,
原告は,本件家屋の電話配線設備については,非木造家屋に設置される
標準的な普通の設備であるから,増点補正をする理由はないなどと主張
する。
(イ)ところで,電話配線設備は,G株式会社(当時)の所有に属さない
部分の電話配線設備で,内線電話に係る配線設備をいい(甲27),平
成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,「「程
度」の補正は,配線の内容について考慮することを狙っているもので,
使用されている資材の程度と仕上がりの良否等を目安として判定するも
のである。」,「「上等なもの」とは,金属管内配線で特に施工がよい
ものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価の方法と
して合理性があるということができるから,本件家屋の電話配線設備の
補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な
誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の電話配線設備についてみると,証拠(甲10の
2,乙12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の電話配線設備につ
いては,金属管が用いられていること,住宅部分に設けられている電話
は,外線2回線に対応でき,電話機8台,ドアホン2台接続が可能なも
のであり,インターホン配線設備,テレビジョン共同視聴設備,拡声器
配線設備,呼出信号設備及び盗難非常装置と一体となり,住宅管理室に
オートメーション設備メインコントローラを設置して集中管理を行うホ
ームオートメーション設備の一部を構成していて,標準的な建物に比べ
てはるかに複雑な配線となっていることが認められることからすれば,
本件家屋の電話配線設備の施工の程度は非常に良いものであると評価で
き,他に補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めるに
-111-
足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数を1.30としたことが重大な
誤りであるということはできない。
エ照明器具設備(蛍光灯用器具,白熱灯用器具)
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)の照明器具
設備の蛍光灯用器具及び白熱灯用器具の評価上,いずれも「程度」によ
り1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋に使用されて
いる照明器具は,一般的な既製品がほとんどであり,既製品でないもの
も高級とはいえないから,増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)ところで,照明器具設備は,蛍光灯用器具と白熱灯用器具の別に評
点を付すものとされ,蛍光灯及び白熱灯そのものは評価の対象とならな
いものであるところ(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」
による補正の基準について,「「程度」の補正は,設備されている器具
が良い品であるか否かによって行うものである。」「「上等なもの」と
は,器具が注文製品を主体として構成されているものである。」として
いるところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるとい
うことができるから,本件家屋の電話配線設備の補正項目「程度」につ
いての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,
上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の照明器具設備についてみると,証拠(甲10の
2,乙12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋における照明器具に
設置される蛍光管及び電球は既製品であるものの,器具そのものには注
文品もあり,既製品であっても程度のよいものが使用されていることが
認められ,器具の程度は上等であると評価されるものであり,これまで
に認定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い
高級なものであるにもかかわらず,照明器具設備については程度が高く
-112-
ないものを使用したという事情は見出し難く,他に補正係数を1.30
としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数を1.30としたことが重大な
誤りであるということはできない。
オ呼出信号設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)の呼出信号
設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,原
告は,本件家屋に使用されている呼出信号設備は,一般的な既製品であ
るから,増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)ところで,呼出信号設備は,特定の人を呼び出すための設備をいい
(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準に
ついて,「「程度」の補正は,呼出信号設備のうち外部に現れている押
ボタン盤,信号盤等をみて,配線内容等まで類推判定しようとするもの
である。」「「上等なもの」とは,押ボタン盤,信号盤が特別注文品に
よっているようなものである。」としているところ,これは,非木造家
屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家屋
の呼出信号設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30とし
たことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するの
が相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の呼出信号設備についてみると,証拠(乙12)
及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋における呼出信号設備は,共同住
宅と身障者用トイレに設置されていること,住宅部分のものは,他の設
備を含めたホームオートメーション設備の一部を構成していること,押
しボタン盤及び信号盤は,多機能のものであることが認められ,これら
の事情によれば,配線内容の程度も良いことが推測されることから,呼
出信号設備の程度が上等であると評価されるものであり,これまでに認
-113-
定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級
なものであるにもかかわらず,呼出信号設備については程度が高くない
ものを使用したという事情は見出し難く,他に補正係数を1.30とし
たことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数を1.30としたことが重大な
誤りであるということはできない。
この点につき,原告は,呼出信号設備を1か所で集中管理しているこ
とを前提に,補正項目「配置」による二重評価となる旨の主張をするが,
本件家屋において呼出信号設備が1か所で集中管理されていることを認
めるに足りる証拠はなく,かえって上記のとおり共同住宅の各戸ごとに
設けられているのであって,原告の上記主張は,その前提において失当
である。
カ盗難非常通報装置
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)の盗難非常
通報装置の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,
原告は,本件家屋に使用されている盗難非常通報装置は,金属内配線で
普通のものであるから,増点補正をする理由はないと主張する。
(イ)ところで,盗難非常通報装置は,盗難防止を目的とした保障装置を
いい(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基
準について,「「程度」の補正は,使用されている資材の程度及び仕上
がりの良否等を目途に行うもので,この考え方は「電話配線設備」にお
ける「程度補正」の場合と同じである。」,「「上等なもの」とは,金
属管内配線で,良いものである。」としているところ,これは,非木造
家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家
屋の盗難非常通報装置の補正項目「程度」についての補正係数を1.3
0としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断
-114-
するのが相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の盗難非常通報装置についてみると,弁論の全趣
旨によれば,本件家屋における盗難非常通報装置には,金属管内配線で
あること,複数の機能を1つの設備で管理するホームオートメーション
設備の一部として施工されていることが認められ,これらの事情による
と,その施工の程度は良いものであると評価されるものであり,これま
でに認定した本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良
い高級なものであるにもかかわらず,盗難非常通報装置については程度
が高くないものを使用したという事情は見出し難く,他に補正係数を1.
30としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたこと
が重大な誤りであるということはできない。
キインターホン配線設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)のインター
ホン配線設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされていると
ころ,原告は,本件家屋に設けられているインターホン配線設備は,金
属内配線で普通のものであるから,増点補正をする理由はないと主張す
る。
(イ)ところで,インターホン配線設備は,構内専用の通話設備をいい(甲
27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準につい
て,「「程度」の補正は,配線内容によって判定するものである。」,
「「上等なもの」とは,金属管内配線で良いものである。」としている
ところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるというこ
とができるから,本件家屋のインターホン配線設備の補正項目「程度」
についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否か
も,上記基準に照らして判断するのが相当である。
-115-
(ウ)そこで,本件家屋のインターホン配線設備についてみると,弁論の
全趣旨によれば,上記ウ,オ及びカの各設備と同様にホームオートメー
ション設備の一部として施工されていることが認められ,その施工の程
度は良いものであると評価されるところ,これまでに認定した本件家屋
全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級なものであるに
もかかわらず,インターホン配線設備については程度が高くないものを
使用したという事情は見出し難く,他に補正係数を1.30としたこと
が重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたこと
が重大な誤りであるということはできない。
ク拡声器配線設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)の拡声器配
線設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,
原告は,本件家屋に設けられている拡声器配線設備は,金属内配線で普
通のものであるから,増点補正をする理由はないと主張する。
(イ)ところで,拡声器配線設備は,事務所等で呼出し,伝達,放送等に
利用されるものであり(甲27),平成3年度評価基準解説は,「程度」
による補正の基準について,「「程度」補正は,配線の内容の相違を考
慮しようとするもので,配線に用いられている資材の程度と仕上がりの
良否によって行うものある。」,「「上等なもの」とは,金属管内配線
で,良いものである。」としているところ,これは,非木造家屋の評価
の方法として合理性があるということができるから,本件家屋の拡声器
配線設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30としたこと
が,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当
である。
(ウ)そこで,本件家屋の拡声器配線設備についてみると,弁論の全趣旨
-116-
によれば,上記ウ,オ,カ及びキの各設備と同様にホームオートメーシ
ョン設備の一部として施工されていることが認められるから,その施工
の程度は良いものであると評価されるものであり,これまでに認定した
本件家屋全体の施工の程度が標準的な家屋よりはるかに良い高級なもの
であるにもかかわらず,拡声器配線設備については程度が高くないもの
を使用したという事情は見出し難く,他に補正係数を1.30としたこ
とが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたこと
が重大な誤りであるということはできない。
ケ工業用テレビ配線設備
(ア)補正項目配置
a本件家屋については,建築当初の建築設備(電気設備)の工業用テ
レビ配線設備の評価上,「配置」により1.20の補正がされている
ところ,原告は,本件家屋の工業用テレビ配線の1組1配線の長さは
159メートルであるから,平成3年度評価基準解説によれば,減点
補正の対象となるべきであると主張する。
bところで,工業用テレビ配線設備は,ボイラー室の監視用,排煙状
況調あるいは銀行等における盗難防止用等のために設備されるよう
なものであり,テレビ及びカメラ以外の配線設備の部分をいい(甲2
7),平成3年度評価基準解説は,「配置」による補正の基準につい
て,「「配置」の補正は,1組1配線の配線延長の長短による工事費
の相違を補正しようとするものである。」,「「分散的に配置されて
いるもの」とは,1組1配線の長さが250m程度のものである。」,
「普通のもの」とは,1組1配線の長さが180m程度のものであ
る。」,「集中的に配置されているもの」とは,1組1配線の長さが
100m程度のものである。」としているところ,これは,非木造家
-117-
屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家
屋の工業用テレビ配線設備の補正項目「配置」についての補正係数を
1.20としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照ら
して判断するのが相当である。
cそこで,本件家屋の工業用テレビ配線設備についてみると,証拠(甲
4)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋には,合計66組の工業用
テレビ配線設備が設けられていることが認められ,本件家屋の規模が
極めて大きいことに照らすと,これらは分散的に配置され相当程度の
長さの配線が施されているものと推認され,他に補正係数を1.20
としたことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「配置」の補正係数について,1.20としたこ
とが重大な誤りであるということはできない。
なお,原告は,1組1配線の長さは159メートルであると主張し,
それを裏付けるものとして甲10の2を提出するところ,甲10の2
は,本件家屋における工業用テレビ配線設備の配線延長数の合計を組
数66で除した計算上のものにすぎず,平均的な配線延長が上記のと
おりであったとしても,本件家屋の規模が極めて大きいことに照らせ
ば,これよりもはるかに長い配線があることは容易に推測され,それ
により配線工事費が増すと考えることは合理的であり,このことに,
上記bの基準が「平均的な」配線の長さにより補正すべきとするもの
でないことも併せ考慮すると,平均的な長さが159メートルである
からといって増点補正することが誤りになることはないというべき
であって,原告の上記主張は採用できない。
(イ)補正項目程度
a一方,工業用テレビ配線設備の評価においては,「程度」により1.
30の補正がされているところ,原告は,本件家屋に設けられている
-118-
工業用テレビ配線設備は,金属管内配線で普通のものであり,とりた
てて良いものであると評価し得るような事情はないから,増点補正を
する理由はないなどと主張する。
bところで,平成3年度評価基準解説は,工業用テレビ配線設備の「程
度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,配線及び仕上
がりの程度の相違を補正しようとするものである。」,「「上等なも
の」とは,各部材の配線工事や塗仕上げ等が特にていねいに行われて
いるものと解してよいもの」であるとしているところ,これは,非木
造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本
件家屋の工業用テレビ配線設備の補正項目「程度」についての補正係
数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に
照らして判断するのが相当である。
cそこで,本件家屋の工業用テレビ配線設備についてみると,弁論の
全趣旨によれば,その配線が金属管内配線であることや屋外にも設置
されていることが認められることに加え,これまでに認定したとお
り,他の電気設備の施工の程度がよいことや本件家屋全体の施工の程
度がよいことからすれば,完成後には目視により確認することができ
ない工業用テレビ配線の仕上がりの程度がよいものと判断すること
は合理的であるというべきであって,他に補正係数を1.30とした
ことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,その「程度」の補正係数について,1.30としたこ
とが重大な誤りであるということはできない。
(12)建築設備(衛生設備)
ア給水設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(衛生設備)のうち給水
設備の評価上,「設備の多少」により1.30の補正がされているとこ
-119-
ろ,原告は,本件家屋の給水設備の水栓数は,延べ床面積100平方メ
ートル当たり約1.65個であるから,評点基準表の上限までの増点補
正をする理由はないなどと主張する。
(イ)ところで,給水設備は,飲料水,水洗用水,入浴用水あるいは洗濯,
家事用水等を家屋内の必要な箇所に分配する設備をいい(甲27),平
成3年度評価基準解説は,「設備の多少」による補正の基準について,
「「設備の多少」の補正は,給水設備数の多少により,給水栓,横引給
水管等の工事費に相違が生ずるため,これを補正しようとするものであ
る。」,「「給水箇所の多いもの」とは,水栓数(カランのほか大小便
器用も含む。以下同じ。)が延べ床面積100㎡当たり1.8個程度の
ものである。」,「「普通のもの」とは,水栓数が延べ床面積100㎡
当たり1.4個程度のものである。」,「「給水箇所の少ないもの」と
は,水栓数が延べ床面積100㎡当たり1個程度のものである。」とし
ているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があると
いうことができるから,本件家屋の給水設備の補正項目「設備の多少」
についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否か
も,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の給水設備についてみると,弁論の全趣旨によれ
ば,被告の調査の結果では,本件家屋における水栓数は100平方メー
トル当たり1.84個程度になるのであり,原告が主張する1.65個
は,食器洗機用水栓やハンドシャワー等の水栓数に含まれるべきものの
数を除いたものとなっていることが認められるから,本件家屋の給水設
備の給水箇所が多いものということができ,補正係数を1.30とした
ことが重大な誤りであると認めることはできない。
イ排水設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(衛生設備)のうち排水
-120-
設備の評価上,「設備の多少」により1.30の補正がされているとこ
ろ,原告は,本件家屋の排水設備の水栓数は,延べ床面積100平方メ
ートル当たり約1.58個であるから,評点基準表の上限までの増点補
正をする理由はないなどと主張する。
(イ)ところで,排水設備は,建物から排泄される使用済みの水,汚水及
び雨水等をそのまま建物の外に排出する設備をいい(甲27),平成3
年度評価基準解説は,「設備の多少」による補正の基準について,「「設
備の多少」の補正は,排水を必要とする衛生器具の具体的な個数の多少
による工事費の相違を考慮しようとするものである。したがって,その
判定は「給水設備」における「設備の多少」の補正と同じである。」,
「「排水箇所の多いもの」とは,床面積100㎡当たり手洗器,水栓便
器等が1.8個程度のものである。」,「普通のもの」とは,延べ床面
積100㎡当たり手洗器,水栓便器等が1.4個程度のものである。」
などとしているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性
があるということができるから,本件家屋の排水設備の補正項目「設備
の多少」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであ
るか否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の排水設備についてみると,弁論の全趣旨によれ
ば,被告は,給水箇所と排水箇所の数がほぼ一致するとして補正を行っ
たこと,原告の調査によっても本件家屋における排水設備は100平方
メートル当たり少なくとも1.58個程度あることが認められるところ,
上記(イ)記載の基準によれば,100平方メートル当たりの排水設備の
数が1.4個程度のものを「普通のもの」とするものとされていること
に照らすと,被告が,上記のように考えて本件家屋における排水箇所が
多いものとし,補正係数を評点基準表の上限である1.30としたこと
が不合理とはいい難いのであって,これが重大な誤りであると認めるこ
-121-
とはできない。
ウ中央式給湯設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(衛生設備)のうち中央
式給湯設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているとこ
ろ,原告は,本件家屋のストレージタンクは鉄製で,内部はプレクリー
トライニング加工であるから,増点補正の対象とならないなどと主張す
る。
(イ)ところで,中央式給湯設備は,建物規模がある程度以上の大きさで,
給湯すべき箇所が多くかつ広範囲に及ぶような場合に設けられるもの
で,加熱機にボイラを用い,配管により大量に給湯する方式をいい(甲
27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準につい
て,「「程度」の補正は,給湯設備全体の程度をみるものであるが,具
体的には,湯をつくるストレージタンクの程度によって判定するもので
ある。」,「「上等なもの」とは,ストレージタンクがステンレス製程
度のものである。」,「「普通のもの」とは,ストレージタンクがステ
ンレス内貼り程度のものである。」,「「普通以下のもの」とは,スト
レージタンクが鉄製で内面樹脂被覆程度のものである。」としていると
ころ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということ
ができるから,本件家屋の中央式給湯設備の補正項目「程度」について
の補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記
基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の中央式給湯設備についてみると,証拠(甲10
の2)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の中央式給湯設備に用いら
れているストレージタンクの材種が鋼板製であり,内部は耐食性耐熱性
に優れているとされる特殊耐食セメントで加工するプレクリート加工が
されたものであることが認められ,給湯設備全体の程度がよいと判断す
-122-
ることは不合理ではなく,補正係数を1.30としたことが重大な誤り
であると認めることはできない。
エ衛生器具設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(衛生設備)のうち衛生
器具設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,
原告は,本件家屋の衛生器具設備は国内メーカーの製品でごく普通のも
のであり,一部大型のものがあるからといって,平成3年度評点基準表
の上限を超える増点補正を全体に適用する合理性はないなどと主張す
る。
(イ)ところで,衛生器具設備は,水を速やかに排水設備へ流し込むため
にトイレ,洗面所,浴室,給湯室等に設備される手洗器,洗面器,水飲
器,大便器,小便器,浴槽等をいい(甲27),平成3年度評価基準解
説は,「程度」による補正の基準について,「「程度」の補正は,衛生
器具の程度によって,判別するものである。」,「「上等なもの」とは,
器具が輸入品程度のものである。」,「「普通のもの」とは,器具がJ
IS合格品程度のものである。」,「「普通以下のもの」とは,器具が
JIS準用品程度のものである。」としているところ,これは,非木造
家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件家
屋の衛生器具設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.30と
したことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判断する
のが相当である。
(ウ)そこで,本件家屋の衛生器具設備についてみると,証拠(甲10の
2,乙12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の衛生器具設備は,
いずれも国内メーカーの製品でJIS合格品であることが認められるも
のの,バスタブについては,大きくて手すりのある程度の良いものが用
いられていることが認められ,これまでに認定したとおり,本件家屋の
-123-
住宅部分の施工の程度が全体として良いものであることからすれば,全
体として程度の良い衛生器具が用いられていたことが推測され,そのよ
うな事情を考慮して,本件家屋の衛生器具設備が上等なものであるとし
て,補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると認めることは
できない。
なお,上記(イ)のとおり,平成3年度評価基準解説では,「上等なも
の」とは,輸入品程度のものとしているが,輸入品でなければ増点補正
ができないというものではなく,国内産であっても,標準的な衛生器具
に比べて程度の良いものであれば,「上等なもの」であるとして増点補
正することが許されないものではないことは明らかである。
(13)建築設備(空調設備)
ア吸収式冷凍機,パッケージエアコンディショナー2設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(空調設備)のうち吸収
式冷凍機及びパッケージエアコンディショナー2設備の評価上,いずれ
も「規模」による補正はされていない一方,「程度」により1.30の
補正がされているところ,原告は,本件家屋の延べ床面積からすれば,
「規模」により0.93の減点補正がされるべきであり,また,本件家
屋の空調設備は,吹き出し口が鉄製の既製品であり,配管にはめっき鋼
が使われているから,「程度」による増点補正をする理由はないなどと
主張する。
(イ)ところで,空調設備のうち冷暖房設備(吸収式冷凍機は,冷房に用
いる冷熱源を作る機械で,熱的方法により圧縮を行うものである(甲2
7)。)に関し,評点基準表は,「規模」による補正について,延べ床
面積1万平方メートル以上のものについては,0.93の減点補正をす
る旨定めているが,他方,補正項目全体を受けて,「部分空調の場合は,
上記補正率のほかに1.25を限度とする増点補正率を用い,空調され
-124-
ている部分の「使用床面積」を計算単位とする」と定めている。この定
めについて,平成3年度評価基準解説は,「部分空調の場合は,補正項
目のうち「規模」補正を除く他の補正項目の補正を行って,更に1.2
5を限度とする割増補正を行う必要のあることを意味するもので,部分
空調は全館空調の場合に比べて割高の工事費となることに着目したもの
であり,評価対象の実態を検討のうえ,この点を十分考慮して増点補正
率を決めることが必要である。」としているところ,これは,非木造家
屋の評価の方法として合理性があるということができる。
これを本件家屋についてみると,本件家屋が部分空調であることには
争いがないから,上記基準に従って「規模」による補正をしなかったこ
とは合理的というべきである。
(ウ)次に,冷暖房設備の「程度」による補正についてみると,平成3年
度評価基準解説は,「「程度」の補正は,空調設備全体の程度について
行うものであるが,具体的な判別は吹出口の程度及びゾーニングの規模
により行うものである。」,「「上等なもの」とは,銅,ステンレス等
の特殊製作品による吹出口が全体の3割程度以上を占め,配管に銅管を
用い,ゾーニングが1系統1200㎡程度のものである。」,「「普通
のもの」とは,鉄製メラミン焼付の既製品による吹出口が6割程度を占
め,ゾーニングが1系統1800㎡程度のものである。」などとしてい
るところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるという
ことができるから,本件家屋の冷暖房設備の補正項目「程度」について
の補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記
基準に照らして判断するのが相当である。
そこで,本件家屋の冷暖房設備についてみると,証拠(甲10の2,
乙11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の事務所部分と住
宅部分の共用廊下等に施工された吸収式冷凍機のゾーニング,すなわち
-125-
空調の調整ができるブロック区分の規模は700平方メートル程度で非
常に効率的なものであること,吹出口の材質は鉄製であるものの,程度
の良いものであることが認められ,さらに住宅部分の冷暖房設備は各戸
に設けられており,そのゾーニングの規模は小さいものと考えられるこ
とも考慮すれば,本件家屋の冷暖房設備の程度が上等なものであると評
価することは合理的であると考えられ,他に補正係数を1.30とした
ことが重大な誤りであると認めるに足りる証拠はない。
したがって,「程度」による補正係数をいずれも1.30としたこと
が重大な誤りであるということはできない。
イ換気設備2設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(空調設備)のうち換気
設備2設備(第1種換気及び第2種・3種換気)の評価上,いずれも「程
度」により1.30の補正がされているところ,原告は,本件家屋の換
気設備は,1系統当たりの換気面積は小さいものの,標準的な普通の設
備であるから,増点補正の上限を超える補正をする理由はないなどと主
張する。
(イ)ところで,換気設備は,換気が空調設備や冷暖房設備とは別にダク
ト方式により行われている場合に用いられる評点項目であり(甲27),
平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,温風
暖房設備の「程度」の補正の考え方に準じて取り扱うものであり,空調
設備を行わずに換気設備とあわせて排煙設備が施設される場合には,補
正項目「程度」において1.3程度の増点補正を行うことが必要である
とし,温風暖房設備の「程度」の補正については,空調設備の「程度」
の補正の場合と同様の考え方であるとされている。
(ウ)そこで,本件家屋の換気設備についてみると,弁論の全趣旨によれ
ば,本件家屋の換気設備には,排煙設備が設置されていることが認めら
-126-
れるから,「程度」についての補正係数を1.30としたことが重大な
誤りとはいえない。
なお,原告は,本件再調査の結果には,本件換気設備のうち,第2種
換気の換気設備の設置床面積に誤りがある旨主張し,それに沿う甲10
の2を提出する。しかし,証拠(甲4)及び弁論の全趣旨によれば,本
件再調査においては,1棟の延べ床面積から第1種換気の換気設備が施
工されている部分の床面積を除いたものを第2種又は第3種換気の換気
設備が施工されているとして設置床面積を求めたものであることが認め
られるところ,本件家屋の事務所,共同住宅,店舗,駐車場等の全ての
部分に換気が施工されているとしてこのような算出をしたことは,重大
な誤りとはいえない。
ウレンジフードファン
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(空調設備)のうちレン
ジフードファンの評価上,「施工の程度」により1.30の補正がされ
ているところ,原告は,本件家屋のレンジフードファンは,64.8セ
ンチメートル幅程度の手動,浅型のものであるから,増点補正をする理
由はないなどと主張する。
(イ)ところで,レンジフードファンは,台所のコンロ上部に設置され,
箱形の覆いと換気扇を一体化した換気設備であるところ,平成3年度評
価基準及び平成3年度評価基準解説の非木造家屋の「事務所・店舗・百
貨店用建物」に係る部分には記載がないが,証拠(乙19,34)及び
弁論の全趣旨によれば,これは,レンジフードファンは,一般には住宅
用設備であって,事務所・店舗・百貨店用建物の設備ではないために評
点項目としての設定がないためであること,したがって,本件再調査で
は,木造家屋の専用普通建に係る評価基準において評点項目として設定
されている「レンジフードファン」の標準評点数を転用していること,
-127-
当該評点項目には,補正項目として「施工の程度」が設けられているこ
と,レンジフードファンが木造家屋の評点項目として追加されたのは昭
和63基準年度であり,その際には,自治省税務局固定資産税課が,6
0センチメートル幅程度で手動型で浅型のものを標準としており,深型
のものについては1.20程度補正して差し支えない旨の解説をしてい
たことが認められる。
(ウ)そして,本件家屋のレンジフードファンについてみると,証拠(甲
10の1)及び弁論の全趣旨によれば,設置幅が90センチメートル,
深さが64.8センチメートルの手動型のものであることが認められる
から,上記(イ)に照らせば,設置幅が大きく,深型のものとして,施工
の程度が良いと評価することができる。この点,原告は,設置幅が64.
8センチメートルである旨の主張をするが,上記認定したところと異な
るもので採用できない。したがって,レンジフードファンの「施工の程
度」についての補正係数を1.30としたことが重大な誤りとはいえな
い。
(14)建築設備(防災設備)のうちスプリンクラー設備
ア本件家屋については,建築当初の建築設備(防災設備)のうちスプリン
クラー設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされているところ,
原告は,本件家屋のスプリンクラー設備は,自動起動式エンジンのもので
はあるが,配管の防露はないから,平成3年度評点基準表の上限を超える
増点補正をする理由はないなどと主張する。
イところで,スプリンクラー設備は,火災が発生した場合に天井面等に取
り付けてあるスプリンクラーヘッドの感熱部分が分解又は破壊して飛散し
開口すると,常に加圧されている配管内の水が噴出し,その時の圧力の変
動,流水等により圧力スイッチ,アラーム・スイッチ又は流水作動弁等が
作動し,ポンプ等の加圧送水装置が自動的に運転し水源の水が送られ,ス
-128-
プリンクラーヘッドから連続放水して消火するものであるところ(甲2
7),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準について,
「「程度」の補正は,スプリンクラー設備における配管の防露の有無及び
エンジンの作動方法の違いによる工事費の相違を補正するものである。」,
「「上等なもの」とは,配管に防露があって,エンジンが自動起動式エン
ジン程度のものである。」,「「普通のもの」とは,配管に防露がなく,
エンジンが自動起動式エンジン程度のものである。」などととしていると
ころ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があるということが
できるから,本件家屋のスプリンクラー設備の補正項目「程度」について
の補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基
準に照らして判断するのが相当である。
ウそこで,本件家屋のスプリンクラー設備についてみると,弁論の全趣旨
によれば,本件家屋のスプリンクラー設備について,防露加工はされてい
ないものの,自動起動式エンジンであること,設備が複雑で高額な予作動
式になっていることが認められ,上記イの基準が,配管に防露があって自
動起動式エンジンのもののみを「上等なもの」とするというものではない
ことも考慮すると,補正係数を1.30としたことが重大な誤りであると
認めることはできない。
(15)建築設備(運搬設備)
アエレベーター設備(乗用エレベーター・乗用荷物用エレベーター)
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(防災設備)のうちエレ
ベーター設備(合計11設備)の評価上,「程度」により1.30の補
正がされているところ,原告は,本件家屋のエレベーターは,1階及び
2階以外のフロアの出入口周りは鋼板製であるから,平成3年度評点基
準表の上限を超える増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)ところで,エレベーターとは,固定の専用昇降路線内に設けられた
-129-
レールに沿って動力により昇降するかごを有し,それによって人又は物
を上下に運搬する設備であり(甲27),平成3年度評価基準解説は,
「程度」による補正の基準について,「「上等なもの」とは,かご室,
かご扉,出入口まわりにステンレス,真鍮ブロンズを多用し,床にゴム
マット,ゴムタイル等が用いられ,扉等の全体にデラックスなものであ
る。」,「「普通のもの」とは,かご室,かご扉,出入口回りが鋼製エ
ナメル焼付で,鋼板製の床で全体として中程度のものである。」などと
されているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性があ
るということができるから,本件家屋のエレベーター設備の補正項目「程
度」についての補正係数を1.30としたことが,重大な誤りであるか
否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
(ウ)そこで,本件家屋のエレベーター設備についてみると,証拠(甲1
1の5,乙11)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の各エレベータ
ーのかご室,かご扉及び出入口周りにステンレス等が多用されたもので
あることが認められ,1階及び2階以外のフロアについては鋼板のもの
も用いられているものの,全体として高級なものといえ,補正係数を1.
30としたことが重大な誤りであると認めることはできない。
なお,被告は,本件家屋のエレベーターに非停止階が多く設けられて
いるから,補正項目「程度」による補正の適否を考慮するに当たっては,
補正項目「着床数」で補正されない昇降行程の長さも理由となる旨の主
張をするが,証拠(甲11の5)によれば,本件家屋に設置されている
エレベーターには,非停止階があるエレベーターとそれがないエレベー
ターがあることが認められるところ,証拠(甲4)によれば,本件再調
査の結果においては,これらによって補正係数に違いを設けることなく
一律1.30を適用していることが認められるから,被告の上記主張を
直ちに採用することはできない。
-130-
イエスカレーター設備
(ア)本件家屋については,建築当初の建築設備(防災設備)のうちエス
カレーター設備の評価上,「程度」により1.30の補正がされている
ところ,原告は,本件家屋のエスカレーターについては,平成3年度評
点基準表の上限を超える増点補正をする理由はないなどと主張する。
(イ)ところで,エスカレーターとは,一定の方向に移動する傾斜階段に
よって循環的に人又は荷物を連続的に運搬する設備で百貨店等において
多数の人又は荷物を一方向に運搬する場合に設置されるものであり(甲
27),平成3年度評価基準解説は,「程度」による補正の基準につい
て,「「上等なもの」とは,外側板及びデッキボードにステンレス板又
は真鍮板が用いられている程度のものである。」,「「普通のもの」と
は,外側板に鉄板が用いられ,デッキボードにアルミニウム板が用いら
れている程度のものである。」などとされているところ,これは,非木
造家屋の評価の方法として合理性があるということができるから,本件
家屋のエスカレーター設備の補正項目「程度」についての補正係数を1.
30としたことが,重大な誤りであるか否かも,上記基準に照らして判
断するのが相当である。
(ウ)そこで,本件家屋のエスカレーター設備についてみると,証拠(乙
11,12)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋のエスカレーター設
備は,1階の吹き抜け部分に施工された特注品であること,外側板やデ
ッキボードはステンレスで仕上げられていることが認められるから,程
度のよいものということができ,補正係数を1.30としたことが重大
な誤りであると認めることはできない。
(16)仮設工事
ア本件家屋については,建築当初の仮設工事の評価上,「工事の難易」に
より1.50の補正がされているところ,原告は,本件家屋の仮設工事に
-131-
ついては,平成3年度評点基準表の上限を超える増点補正をする理由はな
いと主張する。
イところで,部分別「仮設工事」の内容は,建物を建築する場合に必要と
される敷地の仮囲,水盛り,遣方,足場等の準備工事又は工事中の保安の
ために必要とされる仮設工事部分の工事費に相当する部分をいい(甲27,
乙15),平成3年度評価基準解説は,「工事の難易」による補正の基準
について,「個々の建物の構造,規模等を基準に,建物の周囲の状況及び
交通の便否等によって,仮設工事を多く必要とするかどうかによって行お
うとするもので,補正係数は,建物の建築に際して困難を伴う地域にある
かどうか,すなわち,建物の敷地に余裕があるかどうか,建床面積に比し
高層である建物であるかどうか等の各種の状況を総合的に判断して決定す
ることとなる。一般に高層ビル街の限られた地域に敷地一杯に高層(10
階程度)の建物が建築され,または,交通の頻繁な地域に建築される場合
等その建物の工事に最も困難が伴う場合には1.5の増点補正率を適用し,
反対に最も安易に工事が施工される条件にある場合に0.7の減点補正率
を適用するものとして補正係数を示されているので,個々の建物の評価に
当たっては,これを基準とし,その状況を総合的に判断して,この範囲内
において相当とする補正係数を決定しなければならないものである。」と
されているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性がある
ということができるから,本件家屋の仮設工事の補正項目「工事の難易」
についての補正係数を1.50としたことが,重大な誤りであるか否かも,
上記基準に照らして判断するのが相当である。
ウそこで,本件家屋に係る仮設工事の難易についてみると,本件家屋は地
上30階建ての高層ビルであるところ,証拠(甲10の2,19の1,乙
12,17)及び弁論の全趣旨によれば,本件家屋の敷地の空地率は,建
築面積との関係では,地下工事段階で約35パーセント,地上工事段階で
-132-
約60パーセントあるものの,地下部分の大規模な駐車場を利用するため
のスロープ部分や空堀が設けられていることが認められ,これらの事情に
照らせば,空地部分の全てが工事のために利用できるものではなく,敷地
一杯に建築されるものと類似した状況にあるものと考えられる。そして,
前記(2)イ(ウ)のとおり,本件家屋がα地区の建物密集地域にあって,周辺
の交通量も多いと考えられることも考慮すると,本件家屋の仮設工事には,
相当な困難を伴うもので,これに要する工事費も標準的な家屋よりかなり
多額となると考えることも何ら不合理ではないというべきである。したが
って,補正係数を評点基準表の上限である1.50としたことが重大な誤
りであると認めることはできない。
これに対し,原告は,仮設工事の難易に大きな影響を及ぼすのは敷地に
余裕のない状況における前面道路の交通量だけであり,本件家屋の前面道
路は交通量が多くないから増点補正の要因とならない旨主張するが,前面
道路の交通量だけではなく,周辺道路全般の交通量も建築工事の難易に影
響を及ぼすものであると考えることは何ら不合理ではないから,原告の上
記主張は採用できない。
(17)その他の工事
ア本件家屋については,建築当初のその他の工事の評価上,「工事の多少」
により20.00の補正がされているところ,原告は,本件家屋のその他
の工事については,平成3年度評点基準表の上限を大幅に超える増点補正
をする理由はないと主張する。
イところで,部分別「その他の工事」の内容は,評点基準表における部分
別「主体構造部」から「仮設工事」までの各部分別の内容に含まれていな
い部分の木工事,金属工事その他の雑工事部分の工事費に相当する部分を
いい,その主なものには,床間,敷居,鴨居,長押等の造作工事等といっ
た木工事や樋,棚,鉄製階段,鉄製手すり,窓格子等といった金属工事が
-133-
ある。そして,平成3年度評価基準解説は,その他の工事の補正について,
「「その他の行為」の標準評点数は,各用途別に定められた標準的な非木
造家屋の当該部分の工事の施工状況を基礎として定められているものであ
るから,この状況と異なる状況によって「その他の工事」が施工されてい
る場合は,その相違を基準として補正を行うこととなるものである。」と
されているところ,これは,非木造家屋の評価の方法として合理性がある
ということができるから,本件家屋のその他の工事の補正項目「工事の多
少」についての補正係数を20.00としたことが,重大な誤りであるか
否かも,上記基準に照らして判断するのが相当である。
ウ証拠(甲4)によれば,本件再調査においては,本件家屋の「その他の
工事」の「工事の多少」については,実際に生じた他の部分別の内容に含
まれない部分の工事費を勘案し,具体的には,雑鉄骨工事,外部鉄骨階段
工事,仕上げ雑工事及び設備基礎工事など部分別「主体構造部」から「仮
設工事」までの各部分別の内容に含まれない工事に係る工事費(本件家屋
にあっては延べ床面積1平方メートル当たり4万2591円)を基礎とし
て,補正係数の上限を上回る20.00の増点補正率を付設したことが認
められる。
そして,前記1(3)のとおり,再建築費評点数は,家屋の基準年度におけ
る適正な時価を算出するために求められるものであるところ,実際に要し
た工事費用は,工事業者や注文者の個別事情等によって左右されることが
あるため,これをそのまま用いることは適当とはいえない。他方で,多種
多様な資材を用いるなどしてされる建築工事の全ての適正な時価を,標準
的な工事費を基準に定められた標準評点数のみによって算出することは困
難であるといわざるを得ず,このような場合に適正な時価を算出するため
の評点数を付設するために,補正項目が設けられているのであるから,補
正係数を決定するに当たり,実際の工事に要した費用を参考にすることも,
-134-
それが個別事情により適正な時価の算定を困難にする場合でない限り,妨
げられるものではないというのが相当である。そして,これまでに述べた
とおり,本件家屋が複雑な構造,複雑な用途の高層ビルで,工事の範囲も
大きく,また,全体としての普請の程度もよいことからすると,その他の
工事に要した費用を評価額に適切に反映させるために,実際の費用を参考
にすることも合理的であるというのが相当である。そうすると,本件家屋
の「その他の工事」の「工事の多少」について,実際の工事費を参考にし
て,20.00の補正係数を付設したことが,重大な誤りであるというこ
とはできない。
この点について,原告は,本件再調査において「その他の工事」に該当
するとされたもの(別紙4)には,「主体構造部」から「仮設工事」まで
の部分別工事に該当するものか,そうでなくても一般的に施工されるもの
であるから,これらを「工事の多少」において考慮することはできない旨
の主張をするが,原告が主張する各工事が「主体構造部」から「仮設工事」
までの部分別工事で評価されているものであることを認めるに足りる証拠
はなく,これを採用することはできない。
(18)まとめ
以上のとおり,建築当初の部分別評価を個別に検討しても,本件再調査に
おいて付設された補正係数はいずれも重大な誤りであるということはでき
ず,他に,本件家屋の建築当初の評価において適切に評価できなかった事情
がその後に判明し,又は,当該評価の誤りが重大で,それを基礎に本件家屋
の平成18年度価格の評価をすることが適正な時価の算定方法として不合理
であると認めるに足りる証拠はない。
なお,原告は,原告が所有する他の建物と比較すると,本件家屋の部分別
評価に当たって適用された補正係数は高すぎる旨の主張をするが,その比較
対象とした建物は,いずれも建築時期や建築場所等が異なるものであって,
-135-
これらとの比較をもって本件家屋の建築当初の再建築費評点数の算出が誤り
であるということはできないというべきである。
3小括
そうすると,建築当初の評価の誤りにより本件家屋の平成18年度価格の評
価に誤りがあるとは認められず,他に,本件家屋の平成18年度価格が適正な
時価であることの推認を妨げるべき事情を認めるに足りる証拠は存在しないか
ら,本件家屋の平成18年度価格は適正な時価であると認められる。
第4結論
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の
負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のと
おり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官定塚誠
裁判官小林邦夫
裁判官澤村智子

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