弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は、控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第一 控訴人の控訴の趣旨
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人が平成一一年二月一六日から同月二三日までの間に金融機能の再生の
ための緊急措置に関する法律(平成一〇年法律第一三二号)七二条四項に基づいて
した株式会社日本長期信用銀行の控訴人に対する貸付債権その他の資産が同銀行の
保有する資産として適当でない旨の判定が無効であることを確認する。
三 訴訟費用は、第一、二審を通じて、被控訴人の負担とする。
第二 事案の概要
一 本件における控訴人の本訴請求の趣旨は、右第一の控訴人の控訴の趣旨の二項
と同旨であり、当事者双方の主張等は、原判決の「事実及び理由」欄の「第二 事
案の概要」の項に記載されているとおりであるから、右の記載を引用する。
 すなわち、控訴人は、特別公的管理銀行となった長銀に対し借入金債務を負って
いたところ、金融再生法七二条四項に基づき、被控訴人によって、右の控訴人に対
する貸付金債権(本件債権)が長銀が保有する資産として適当でないものと判定さ
れたことから、この本件判定には重大かつ明白な違法があるとして、その無効確認
を求めている事件である。これに対し、被控訴人は、被控訴人の右の本件判定は、
行政事件訴訟法三条に定められている抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しない
上、控訴人には右の判定の無効確認を求める法律上の利益もないとし、控訴人の訴
えが不適法であるものとして、これを争っている。
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所も、被控訴人のした本件判定は、行政事件訴訟法三条所定の抗告訴訟
の対象となる行政処分には該当しないものであり、また、控訴人には、右判定が無
効であることの確認を求める法律上の利益も認められないものというべきであり、
いずれの点からしても、控訴人の本件訴えは不適法なものであって、却下を免れな
いものと判断する。その理由は、原判決がその「事実及び理由」欄の「第三 当裁
判所の判断」の項で説示するところと同一であるから、右の説示を引用する。
二 控訴人は、金融再生法の施行以来、被控訴人によって特別公的管理銀行が保有
する資産として適当でないものと判定された債権については、一つの例外もなく預
金保険機構がこれを買い取っているのであり、被控訴人の右のような資産判定が行
われると、その後は右の
債権についていわば自動的に預金保険機構による買取りが行われることとなるので
あるから、本件判定によって本件債権の買取りの効果が発生するものと同視するこ
とができ、したがって、本件判定は、その債務者である控訴人の権利義務を形成し
又はその範囲を確定する効果も伴うものであって、抗告訴訟の対象となる行政処分
に該当するものであると主張する。
 しかしながら、被控訴人は、総理府の外局として設置された組織であり、預金保
険機構も、預金保険法に基づいて設立された公的な性格を有する法人であるとこ
ろ、前記引用に係る原判決が認定、説示するように、金融再生法の定める手続によ
れば、特別公的管理銀行の株式を取得した預金保険機構は、特例資金援助としての
資産買取りの対象となる資産とそうでない資産とを選別するために、被控訴人に対
して右の銀行の資産の判定を求めることが義務付けられているのであって、被控訴
人においては、この求めに応じて当該銀行の資産の内容を審査した上で一定の基準
に従ってその判定をしてその結果を預金保険機構に通知することとなり、この判定
によって当該銀行の保有する資産として適当でないと判定された資産について、預
金保険機構と当該銀行との契約によって、特例資金援助としての資金の買取りが行
われ得ることとなるにとどまるのである。そうすると、この金融再生法七二条一項
に基づく買取りの対象となる資産を選別するために行われる被控訴人の判定行為
は、これによって直接国民の権利義務を形成し、あるいはその範囲を確定するとい
う法的効果を生じさせるものではなく、むしろ、行政機関相互の間で行われる内部
的な行為と同視できるものというべきことは、右の原判決の説示にあるとおりであ
り、したがって、これは抗告訴訟の対象となる行政処分には該当しないものという
べきである。
 なお、仮に控訴人の主張するように、これまで被控訴人によって特別公的管理銀
行が保有する資産として適当でないと判定された債権については、すべて預金保険
機構による買取りが行われているとの事実があったとしても、右のような仕組みか
らすると、そのことによって、被控訴人の行う資産判定行為が直接国民の権利義務
の内容等を左右するものとして、法的効果を持つものとなるものでないことは、い
うまでもないところである。
三 また、控訴人は、本件判定によって経済的、社会的にみて種々の不利益を被っ
ていると主
張し、その不利益は、本件判定の法的効果というべきであるから、控訴人には本件
判定の無効確認を求める原告適格があるとも主張しているが、控訴人が主張する不
利益は、原判決の説示にもあるとおり、いずれも法的効果とはいえない事実上のも
のにとどまるものというべきである。したがって、この点に関する控訴人の主張
も、失当なものというほかない。
第四 結論
 よって、控訴人の本件訴えを却下した原判決は相当であり、控訴人の本件控訴に
は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第一五民事部
裁判長裁判官 涌井紀夫
裁判官 合田かつ子
裁判官 宇田川基

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛