弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人両名を各罰金三千円に処し、完納できぬときは金三百円を一日に
換算した期間その被告人を労役場に留置する。
     被告人等に対し裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
     被告人等に対し公職選挙法第二五二条の適用をしない。
     原審における訴訟費用は被告人等の連帯負担とする。
         理    由
 弁護人和島岩吉の控訴趣意第一点について。
 公職選挙法にいわゆる労務者とは、候補者又は選挙運動者の手足となつて、それ
らに命ぜられるままに行動し、機械的労務に服する者をいい自己の判断によつて候
補者の当選又は落選に影響あるかを認定して方針を決した上行動する者は、もはや
労務者とはいえず、選挙運動者といわなければならないのであつて、このような行
動に従事する事実がある以上は、所論のようにその者の占める社会的地位如何、当
選を得しめようとする主観的意思の強弱によつて選挙運動であることを左右するこ
とはないのである。原判決挙示の証拠によると、被告人等は候補者Aが立会演説会
において、聴衆の反対派と目される者からやじられて十分演説をすることができな
かつたことがあつたので、原審相被告人B等と協議の結果、やじを封じ演説に効果
をもたせる目的をもつて、Bが労務者として参集した者から人選した者に、立会演
説会場に立入らせ、右候補者の演説中その論旨の要所要所を自らの判断によつて選
定し、演説に対し拍手し声援を送らせ、その報酬として一日金三五〇円を支給する
ことに決し、原判決別表の者等をBが集め、これらに判示のとおり各演説会場にお
いて拍手声援<要旨>をさせ、その報酬として被告人Cが判示各金員を支給したこと
が認められるのであつて、このように選挙演説会において聴衆席に立入り、
自派の演説者のために、演説中適当な個所を判断選択し、拍手又は声援をすること
は、その演説につき聴衆に感銘を与え演説の趣旨を徹底させ、その効果を強力にし
て投票を獲得するに有効であり、拍手又は声援をする者は十分このことを認識して
判定実行すること明らかで、労務者としてなしうる範囲を超え、当選を得しめるた
めの選挙運動に属するものとしなければならない。そして所論のように候補者Aは
後日の選挙における当選を期しこれに備えて選挙に臨んだもので、積極的に当選を
獲得しようとする意思に欠けるところがあり、被告人等もこれを知つていたとうか
がわれる資料があるが、仮に候補者又は選挙運動者に財産上の利益等を供与した者
の主観に積極的に当選を獲得しようとする意思の欠けるところがあつたとしても、
供与罪の成立に消長を来すことはない。従つて被告人等の行為は当選を得しめる目
的をもつて、選挙運動者に対し金銭を供与したに外ならず、これを律するのに公職
選挙法第二二一条第一項第一号をもつてした原判決には所論のような理由のくいち
がいもなく又法令の解釈適用につき誤つたところはない。
 同第二点について。
 原判決挙示の証拠によれば、被告人等は昭和三〇年二月九日頃前段説示のよう
に、B等と謀議し、その謀議に基いてBが別表の人々を集め、同人等をして前記の
選挙運動をさせその報酬として被告人Cにおいて同人等に一日金三五〇円づつを供
与したことが認められ、被告人等に共犯者としての責任があること明らかである。
なかでも被告人Dは出納責任者であつたが病気にかかり、同月一七日頃より同月二
三日頃まで旅館において療養し、選挙事務所へは出動せず、その間被告人C等から
出納責任者を辞任する旨の届を提出するようすすめられ、候補者と面談して決する
等答えている中、同月二五日に至り選挙事務所へ辞任届を携えて行き、同日既に解
任届が提出されたことを知り、其の後は一切事務所へ出ることをしなかつたことが
認められる。従つて被告人Dは少くとも右二四日までは選挙運動者として選挙運動
に従事し右謀議の実行に参加する意思があつたとしなければならないし、被告人C
等は右謀議に基き、被告人Dの参加のもとにこれを実行する意思で各供与をしたも
のとしなければならない。このように犯罪の実行を謀議した者は、その実行に着手
するまでに、その実行より脱退する意思を表明する等をして犯行に加わることを中
止し、他の者がこれを認めて実行したのでない限り、共犯者としての責任を免れる
ことはできないと解するを相当とするので、被告人Dに対し少なくとも同月二四日
までの被告人C等の犯行につき、共犯者としての責任を認めたのは正当であつて、
原判決にはいずれの点についても所論のような認定上の誤はない。
 しかしながら職権をもつて調査すると、立会演説会における反対派の演説妨害を
排除することに起因して本件犯行を行うに至つた実情及びその動機、各供与者の供
与金に対する領収書を一括保存している点よりみて違法の認識が軽度であつたこと
が認められる等諸般の点に鑑み、被告人等に対し原審執行猶予の言渡をしなかつた
のは、相当を欠くと思われるので、刑事訴訟法第三八一条第三九二条第三九七条第
四〇〇条但書に従い原判決を破棄しさらに裁判することとし、原判決認定の事実に
その摘示の法条の外刑法第二五条第一項を適用し主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 万歳規矩楼 判事 山本武 判事 小川武夫)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛