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平成18年(ネ)第10063号特許権侵害差止請求権不存在確認請求控訴事件
(原審・大阪地方裁判所平成17年(ワ)第11037号)
口頭弁論終結日平成18年9月19日
判決
控訴人X
被控訴人株式会社タミヤ
訴訟代理人弁護士松本好史
同猿木秀和
同竹田千穂
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人の請求を棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,原判決別紙物件目録記載の各製品(以下,これらを併せて「原告
製品」といい,同目録1記載の製品を「OP-434」,同目録2記載の製
品を「OP-435」,同目録3記載の製品を「OP-582」という。)
を製造販売している被控訴人が,発明の名称を「自動車タイヤ用内装材及び
自動車タイヤ」とする特許第3615881号の特許権(平成8年10月2
9日出願・平成16年11月12日設定登録。以下「本件特許権」といい,
その請求項1の発明を「本件発明」という。)を有する控訴人に対し,原告
製品の製造販売につき控訴人が本件特許権に基づく差止請求権を有しないこ
との確認を求めた事案である。
原審は,原告製品は本件発明の構成要件の一部を充足せず,また,本件発
明の構成と均等なものでもないから,本件発明の技術的範囲に属しないとし
て,被控訴人の請求を認容したため,控訴人は,これを不服として控訴を提
起した。
2当事者間に争いのない事実等,争点及びこれに関する当事者の主張
次のとおり補正付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第2の1,
2及び第3の1ないし3(原判決2頁4行目~9頁4行目)に記載のとおり
であるから,これを引用する。
なお,以下においては,原判決の略語表示は,当審においてもそのまま用
いる。
(1)原判決の補正
ア原判決3頁16行目の「共和ゴム工業株式会社」を「共和ゴム株式会
社」と改め,17行目末尾に「これらの数値は原告製品を数個計測した
中の平均値であり,原告製品には製造上のばらつきにより構成要件Aの
数値範囲に含まれるものや数値を少し超えているものもあるが,いずれ
も本件発明のグリップ力が上がりタイヤが摩耗しにくいという効果を奏
するから,本件発明の技術的範囲に属するというべきである。」を加え
る。
イ原判決3頁22行目及び24行目の各「試験結果」をいずれも「試験
方法」と改める。
(2)当審における控訴人の主張
ア本件発明の作用効果の不当な無視等
(ア)「グリップ力が向上しタイヤが摩耗しにくい」という本件発明の
作用効果は,本件発明の特許出願時,公知ではなかったものであり,
上記作用効果は本件発明の本質的部分であるといえる。
すなわち,従来タイヤのグリップ力を増幅(強く)する技術は,タ
イヤの幅を広くする,トレッドパターン(溝)の数を少なくする,コ
ンパウンド(ゴム質)を柔らかくする,中の空気圧を少なくするなど
タイヤに関係する技術しかなく,このことはラジコンカーのタイヤも
同様であった。
また,被控訴人が製造する製品や他社製品の内装材においても,あ
くまで空気圧のかわりに装着するハードタイプやソフトタイプで,タ
イヤのコーナリング時のよれを補い,加速,減速においてもそれ程優
れたものではなく,本件発明の上記作用効果を奏するものはなかっ
た。
本件発明は,その特許出願時,市販されていたラジコンカー用タイ
ヤでどのようにすればグリップ力を増幅(強く)し,他車よりも早く
走行できるかを考え,当時のタイヤの内装材等について何十種類もテ
ストした結果,走行後に摩耗しにくいことをも発見した発明である。
(イ)しかるに,被控訴人は,本件発明の内容が公開公報で明らかとな
った後,本件発明の上記作用効果を奏するようにしながらも,その特
許請求の範囲の数値を僅かに置き換えた原告製品を製造販売すること
によって,本件特許権に基づく差止め等の権利行使を免れようとした
ものであり,このような被控訴人の行為は,特許法の目的に反し,社
会正義の衡平の理念にも反する行為である。
そして,原判決が,本件発明の上記作用効果を無視し,数値(構成
要件A)の僅かな違いや非発泡表面層に関する表現(構成要件B)の
違いにより,原告製品は構成要件A及びBを充足しないとして,原告
製品の製造販売は本件特許権の侵害に当たらないと判断したのは不当
である。
イ均等侵害の成立
(ア)①原告製品は,本件発明の構成要件A(「見掛比重が0.20~
0.50,25%歪み時の圧縮応力が20~1000g/,破断á
伸びが150~400%の特性を有するゴム発泡体からなる帯状環
状体」)記載の圧縮応力又は破断伸びの上限値を僅かに(数g又は
数%)超えている点で本件発明の構成と異なる部分があるが,本件
発明の上記作用効果と同一の作用効果を奏するから,上記異なる部
分は本件発明の本質的部分ではない。
②上記異なる部分を原告製品の構成と置き換えても,本件発明の目
的を達することができ,上記のとおり,本件発明と同一の作用効果
を奏するものである。
③上記のように置き換えることについては,当業者が原告製品の製
造等の時点において容易に想到することができたものである。
④原告製品は,本件発明の特許出願時における公知技術と同一又は
上記公知技術から当業者が上記出願時に容易に推考できたものでは
ない。
⑤原告製品は,本件発明の特許出願手続において特許請求の範囲か
ら意識的に僅かに数値を除外したものである。
(イ)以上によれば,原告製品は,本件発明の構成と均等なものとして
本件発明の技術的範囲に属するから,被控訴人による原告製品の製造
販売は本件特許権の侵害に当たる。
(3)当審における被控訴人の反論
原告製品が本件発明の技術的範囲に属しないとした原判決の認定及び判
断は正当である。
控訴人は,原判決を非難するが,原告製品が本件発明の特許請求の範
囲(クレーム)を充足していることにつき具体的に主張することもなく,
原告製品は本件発明の作用効果を奏するから本件特許権を侵害するという
ような議論に終始しているだけであって,控訴人の非難は理由がない。
第3当裁判所の判断
当裁判所も,原告製品は,本件発明の構成要件A及びBを充足せず,ま
た,本件発明の構成と均等なものでもないから,本件発明の技術的範囲に属
するものではなく,原告製品の製造販売は本件特許権を侵害するものではな
いと判断する。その理由は,次のとおりである。以下,原判決の「第4争
点に対する判断」について,当審において,付加訂正した主要な箇所をゴシ
ック体太字で記載する。
1争点(1)(構成要件Aの充足性)について
本件発明の構成要件Aは「見掛比重が0.20~0.50,25%歪み時
の圧縮応力が20~1000g/,破断伸びが150~400%の特性をá
有するゴム発泡体からなる帯状環状体」というものであるところ,控訴人主
張の原告製品の試験結果の数値(原判決3頁15行~21行の「第3の1の
【被告の主張】(1)」参照)を前提としても,原告製品のうち,OP-434
は,破断伸びの上限値を超える点において構成要件Aを充足せず,OP-4
35及びOP-582は,圧縮応力の上限値を超える点で同様に構成要件A
を充足しないことは明らかであり,原告製品は,いずれも構成要件Aを充足
しないというべきである。
控訴人は,上記数値は原告製品を数個計測した中の平均値であり,原告製
品には製造上のばらつきにより構成要件Aの数値範囲に含まれるものや数値
を少し超えているものもあるが,いずれも本件発明のグリップ力が上がりタ
イヤが摩耗しにくいという効果を奏するから,本件発明の技術的範囲に属す
ると主張する。
しかし,破断伸び(切断時伸び)に係る試験の報告書である乙3及び圧縮
応力に係る試験の報告書である乙4の各「提出試料名」欄に「OP-435
モールドインナーミディアムナローハード,OP-434モールドインナー
ミディアムナローソフト,OP-582モールドインナーミディアムナロー
ミディアム各1個計3個」と記載されていることによれば,上記各試験で用
いられた試料は,OP-434,OP-435及びOP-582が各1個で
あることが認められ,上記試験結果の数値は,控訴人が主張するように原告
製品を数個計測した中の平均値であるものと認めることはできないし,上記
各報告書において原告製品に製造上のばらつきにより構成要件Aの数値範囲
にあるものが含まれていることをうかがわせる記載もない。他に原告製品が
本件発明の構成要件Aの数値範囲にあることを認めるに足りる証拠はない。
また,異なる構成の発明から同一の作用効果が生じることはあり得ること
であって,作用効果が同一であるからといって構成が同一であるとは直ちに
いえないから,原告製品が本件発明と同一の作用効果を奏することが構成要
件Aを充足することの根拠となるものではない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
2争点(2)(構成要件Bの充足性)について
以上のとおり,原告製品は構成要件Aを充足しないが,控訴人が均等によ
る侵害をも主張していることにかんがみ,原告製品が本件発明の構成要件B
を充足するか否かについても判断しておく。
(1)構成要件Bにいう「ゴムからなる非発泡表面層」については,発泡スポ
ンジの周囲に薄く非発泡体であるゴム素材を塗布した場合にできる表面層
がそれに当たることは明らかであるが,控訴人は,さらに,ゴム発泡体を
金型成形する際に金型の壁面において気泡が押しつぶされるためにゴム発
泡体内部と比較して,ゴム発泡体表面の気泡が目立たなくなっている表面
層(以下,控訴人の用例に従って「スキン層」ともいう。)も,「ゴムか
らなる非発泡表面層」に含まれると主張し,被控訴人はこれを争ってい
る。
特許発明の技術的範囲は,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記
定めなければならないが,その際には,上記明細書の特許請載に基づいて
求の範囲以外の部分の記載及び図面を考慮して特許請求の範囲に記載され
た用語の意義を解釈するものとされているところ(平成14年法律第24
,本件発明の構成要件B号による改正前の特許法70条1項,2項)
は,「(ゴム発泡体からなる)帯状環状体の表面に,ゴムからなる非発泡
表面層が一体化されてなる」というものであり,そこでいう「一体」が「
一つになって分けられない関係にあること」(甲7。広辞苑第4版),「
化」が「形や性質がかわること。かえること。」(同)を意味することに
よれば,上記にいう「一体化」とは,二つの異なる素材が合わさって一つ
になったことを意味し,そうすると「ゴム発泡体からなる帯状環状体」
と「ゴムからなる非発泡表面層」とはもともと別の素材のものであると理
解することが自然であるといえる。しかし,「ゴムからなる非発泡表面
層」が,控訴人のいうところのスキン層を含むか否かは,上記文言自体か
らは必ずしも明確ではない。
そこで,以下,本件明細書の「発明の詳細な説明」の記載等を参酌し
て,構成要件Bの意義を解釈する。
(2)構成要件Bの意義について
ア本件明細書の記載
(ア)本件明細書(甲2)の「発明の詳細な説明」には,次の記載があ
る。
①「この発明の自動車タイヤ用内装材(1)は,上記特性を有する発
泡体からなる帯状環状体の表面に,ゴムからなる非発泡表面層が一
体化されてなるものである。前記環状形状は,円形であることが好
ましいが,特に円形形状に限定されるものではなく,例えば,楕円
形状であっても良い。」(段落【0019】)
②「前記帯状環状体の表面に,ゴムからなる非発泡表面層が一体化さ
れていることによりタイヤ内周面(2a)との摩擦による発泡体の摩
耗を防止することができる。」(段落【0020】)
③「<実施例1>ポリクロロプレンゴムを発泡成形して,表1に示す
特性を有するポリクロロプレンゴム発泡体からなる帯状環状体(幅
22㎜,厚さ5㎜,外径60㎜)を得,この表面に厚さ0.3㎜の
非発泡クロロプレンゴムを一体化して,内装材を得た。」(段落【
0030】)
④「<実施例2>ポリウレタン樹脂を発泡成形して,表1に示す特性
を有するポリウレタン樹脂発泡体からなる帯状環状体(幅22㎜,
厚さ5㎜,外径60㎜)を得,この表面に厚さ0.3㎜の非発泡ク
ロロプレンゴムを一体化して,内装材を得た。」(段落【0032
】)
⑤「<比較例1>ポリウレタン樹脂を発泡成形して,表1に示す特性
を有するポリウレタン樹脂発泡体からなる内装材(幅22㎜,厚さ
5㎜,外径60㎜)を得た(従来より一般に使用されている内装材
である)。」(段落【0033】)
⑥「<比較例4,比較例2~3>天然ゴムを発泡成形して,表1に示
す特性を有する天然ゴム発泡体からなる内装材(幅22㎜,厚さ5
㎜,外径60㎜の帯状環状体)を得た。」(段落【0029】)
⑦「表1から明らかなように,この発明の実施例1,2の内装材をタ
イヤに内装すれば,カーブ走行安定性に優れるとともに,直進安定
性にも優れる。」(段落【0039】),「これに対し,この発明
の範囲を逸脱する比較例1~3の内装材をタイヤに内装した場合に
は,カーブ走行安定性,直進安定性ともに劣っている。」(段落【
0040】
⑧「更に,帯状環状体の表面に,ゴムからなる非発泡表面層が一体化
されているから,タイヤ内周面との摩擦による発泡体の摩耗を防止
することができる。」(段落【0043】)
(イ)これらの記載によれば,実施例1,2には,ポリクロロプレンゴ
ム発泡体又はポリウレタン樹脂発泡体からなる帯状環状体の表面に,
厚さ0.3㎜の非発泡クロロプレンゴムを一体化した内装材が開示さ
れており,このように帯状環状体の表面に非発泡クロロプレンゴムか
らなる非発泡表面層を一体化する構成を採用することにより,タイヤ
内周面との摩擦による発泡体の摩耗を防止することができる効果を奏
することが認められる。
しかし,一方で,控訴人がいうところの成形金型でゴム発泡体を成
形する際に必ず生じる非発泡(泡の状態でない)の一体化した表皮な
いしスキン層は,ゴム発泡体と同一の素材であることを前提とするも
のであるが,実施例1,2における各発泡体からなる帯状環状体とそ
の帯状環状体の表面に一体化された非発泡クロロプレンゴムからなる
非発泡表面層とは別の素材のものである。また,本件明細書において
は,実施例1,2のほかには,ゴムからなる非発泡表面層がどのよう
な構成のものが含まれるのかについての記載や示唆はなく,控訴人が
いうところの上記表皮ないしスキン層が,ゴムからなる非発泡表面層
に含まれる旨の記載や示唆もない。
かえって,実施例1,2とは異なり,ゴムからなる非発泡表面層を
一体化した構成を有しないものとして本件明細書に記載された比較例
2ないし4は,天然ゴムを発泡成形して得た天然ゴム発泡体からなる
内装材(幅22㎜,厚さ5㎜,外径60㎜の帯状環状体)であるが,
これらの比較例においては,上記帯状環状体(天然ゴム発泡体)から
控訴人がいうところの上記表皮ないしスキン層を削り取り,又は削ぎ
落とす等の工程の記載や示唆はみられないから,上記帯状環状体には
スキン層を有している構成をも含むものと認められる。
そうすると,本件明細書の「発明の詳細な説明」を参酌しても,控
訴人のいうところのスキン層が本件発明の構成要件Bの「ゴムからな
る非発泡表面層」に当たるものと認めることはできない。
イ出願経過
証拠(甲1,2,8の1ないし7,9の1ないし5)によれば,以下
の事実が認められる。
(ア)当初明細書の記載
控訴人は,平成8年10月29日,本件発明につき特許出願をし
た(以下「本件特許出願」という。)。その願書に添付した当初明細
書(甲8の2)の特許請求の範囲は,以下のとおりであった。
「【請求項1】見掛比重が0.20~0.50,25%歪み時の圧
縮応力が20~1000g/の特性を有するゴム発泡体からなá
り,帯状環状体に形成されてなることを特徴とする自動車タイヤ用
内装材。」
「【請求項2】ゴム発泡体の破断伸びが150~400%である請
求項1に記載の自動車タイヤ用内装材。」
「【請求項3】ゴム発泡体が天然ゴム発泡体である請求項1または
2に記載の自動車タイヤ用内装材。」
「【請求項4】見掛比重が0.20~0.50,25%歪み時の圧
縮応力が20~1000g/の特性を有する合成樹脂発泡体からá
なり,帯状環状体に形成されてなることを特徴とする自動車タイヤ
用内装材。」
「【請求項5】合成樹脂発泡体の破断伸びが150~400%であ
る請求項4に記載の自動車タイヤ用内装材。」
「【請求項6】前記帯状環状体の表面に,ゴムからなる非発泡表面
層が一体化されてなる請求項1~5のいずれか1項に記載の自動車
タイヤ用内装材。」
「【請求項7】請求項1~5のいずれか1項に記載の自動車タイヤ
用内装材がタイヤ内周面に積層一体化されていることを特徴とする
自動車タイヤ。」
さらに,当初明細書(甲8の2)の「発明の詳細な説明」の欄に
は,以下の各記載がある。
a請求項1の「ゴム発泡体」についての記載
「【0016】上記ゴム発泡体としては,特に限定されるも・・・
のではないが,天然ゴム,ブタジエンスチレンゴム,ブタジエンア
クリロニトリルゴム,ポリクロロプレンゴム,イソブチレンイソプ
レンゴム等が挙げられ,中でも天然ゴムが好適に用いられる。」
「【0022】この発明の自動車タイヤ用内装材(1)は,上記特
性を有する発泡体が帯状環状体に形成されてなるものである。前記
環状形状は,円形であることが好ましいが,特に円形形状に限定さ
れるものではなく,例えば,楕円形状であっても良い。」
「【0023】前記帯状環状体の表面には,ゴムからなる非発泡表
面層が一体化されていることが好ましく,これによりタイヤ内周
面(2a)との摩擦による発泡体の摩耗をことができ防止する
る。」
b請求項6についての記載
「【0014】請求項6の発明は,上記請求項1~5のいずれかの
自動車タイヤ用内装材において,帯状環状体の表面に,ゴムからな
る非発泡表面層が一体化されてなる構成を採用したものである。」
c実施例1,3,4及び6についての記載
「【0032】<実施例1,2,比較例2~3>天然ゴムを発泡成
形して,表1に示す特性を有する天然ゴム発泡体からなる内装材(
幅22㎜,厚さ5㎜,外径60㎜の帯状環状体)を得た。」
「【0033】<実施例3>ポリクロロプレンゴムを発泡成形し
て,表1に示す特性を有するポリクロロプレンゴム発泡体からな
る,実施例1と同形状の帯状環状体を得,この表面に厚さ0.3㎜
の非発泡クロロプレンゴムを一体化して,内装材を得た。」
「【0034】<実施例4,5>ポリスチレン樹脂を発泡成形し
て,表1に示す特性を有するポリスチレン樹脂発泡体からなる,実
施例1と同形状の内装材を得た。」
「【0035】<実施例6>ポリウレタン樹脂を発泡成形して,表
1に示す特性を有するポリウレタン樹脂発泡体からなる,実施例1
と同形状の帯状環状体を得,この表面に厚さ0.3㎜の非発泡クロ
ロプレンゴムを一体化して,内装材を得た。」
(イ)拒絶理由通知
特許庁審査官は,控訴人に対し,平成16年7月5日付け拒絶理由
通知書(甲8の4)をもって,本件特許出願について,拒絶理由を通
知した。
拒絶理由は,当初明細書の請求項1ないし4及び7の各発明は,各
引用文献に記載された発明に基づいて,当業者が容易になし得た発明
であるから,特許法29条2項に該当するというものであった。この
うち請求項1,2について,その備考も含めた理由の記載は概ね以下
のとおりである。
a請求項1
(a)引用文献
後記cの①ないし④(以下「引用文献1」ないし「引用文献
4」という。)
(b)備考
引用文献1ないし3のそれぞれには,ゴム発泡体を帯状環状体
に形成した自動車タイヤ用内装材が開示されており,引用文献1
には,所定の比重とすることが,引用文献3には,所定の圧縮応
力にすることが,それぞれ開示されている。また,弾性を付与す
るために内装されるゴム発泡体として,所定の比重,圧縮応力を
有するものは,引用文献4(特に,【0013】参照。)にも開
示されている。
b請求項2
(a)引用文献
引用文献1ないし引用文献4
(b)備考
また,引用文献4には,ゴム発泡体の伸び率を所定の値とする
ことも開示されている。
c引用文献の記載内容
①特開平8-132817号公報(引用文献1甲9の1)。
独立気泡を有する発泡弾性体からなるパンクレスチューブの構
成が記載されている。
②特開平6-127207号公報(引用文献2甲9の2)。
独立気泡を有する棒状又はドーナツ状体からなる発泡弾性体を
トロイド状タイヤと使用リムとの組立体の内腔に圧縮裏に封入し
て成る構成を備えたタイヤ・リム組立体の構成が記載されてい
る。
③特開昭61-1504号公報(引用文献3甲9の3)。
チューブレスタイヤのタイヤ空洞を充満する安全支持体に天然
ゴム及びそれらの結合物等を硬化したものを用いることが記載さ
れている。
④特開平7-124458号公報(引用文献4甲9の4)。
肥料などの粉粒体を造粒するために用いる回転造粒装置の内側
にゴムシートを固設する構成が記載されており,そのゴムシート
の物性値については,伸び率180%以上,25%圧縮応力40
0~800gf/,比重0.2~0.5のものが好ましく,発á
泡ゴムは望ましいものの1つであり,例えば,通常パッキング材
として市販されているクロロプレンゴム発泡体が利用できること
が記載されている。
さらに,その他の引用文献として,次の文献が請求項4,7と
の関係で指摘されている。
⑤特開昭58-93602号公報(引用文献5甲9の5)。
ポリウレタン弾性体(好ましくは発泡体)からなるトロイド状
支持部材と,ゴム組成物からなる外皮部とからなる軽車両用安全
タイヤ,特に自動二輪車,全路走行車用安全タイヤに好適な安全
タイヤについて,トロイド状支持部材の発泡体も含むポリウレタ
ン弾性体を金型を用いて成形する技術が開示されている。
(ウ)拒絶理由通知に対する意見書の記載及び当初明細書の補正内容
控訴人は,上記拒絶理由通知を受け,平成16年8月24日,手続
補正書(甲8の6)及び意見書(甲8の5)を特許庁審査官に提出し
た。
控訴人は,上記手続補正書によって,本件明細書記載のとおりに特
許請求の範囲を補正し,当初明細書における実施例1を比較例4に,
同じく当初明細書における実施例4を比較例5に補正するとともに,
実施例3を実施例1に,実施例6を実施例2とし,他の実施例2,
5,7,8についての記載を削除する補正をした。
控訴人の上記意見書の「(2)補正事項について」に,特許請求の範囲
の補正は,原請求項1に原請求項2及び原請求項6の構成を追加限定
して新請求項1とし,また原請求項2を削除し,これに伴い原請求項
3を新請求項2に繰り上げたものであるとし,発明の詳細な説明の欄
の補正は,特許請求の範囲の記載と整合せしめるべく行ったものであ
り,実施例については,出願当初の「実施例1」を「比較例4」に,
出願当初の「実施例3」を「実施例1」に,出願当初の「実施例4」
を「比較例5」に,出願当初の「実施例6」を「実施例2」にそれぞ
れ補正するとともに,出願当初の「実施例2」「実施例5」「実施例
7」「実施例8」を削除したとの記載がある。また,上記意見書の「(
4)引用文献との対比」に,引用文献1ないし3にゴム発泡体が帯状環
状体に形成されてなる自動車タイヤ用内装材が記載されていることは
認める,しかし,引用文献1ないし5のいずれにも「ゴム発泡体から
なる帯状環状体の表面にゴムからなる非発泡表面層を一体化した構
成」は記載されていないし,このような構成を採用することによっ
て「タイヤ内周面との摩擦による発泡体の摩耗を防止できる」という
格別な効果が得られることは何ら記載も示唆もない,したがって,上
記各引用文献を組み合わせても,補正後の請求項1の発明(本件発
明)を容易に想到することはできない旨の記載がある。
(エ)特許査定及び登録
本件発明は,平成16年10月1日に特許査定され,平成16年1
1月12日に設定登録された。
(3)本件明細書に上記(2)アの記載があること及び同イ認定の出願経過によ
ゴム発泡体を帯状環状体に形成しれば,控訴人は,上記意見書において,
た自動車タイヤ用内装材が引用文献1ないし3に記載されているとの上記
,引用文献1ないし5記載の公知拒絶理由通知における指摘を認めた上で
技術のいずれとも技術思想を異にする当初明細書の請求項6の発明の構
成,すなわち,「請求項6の発明は,上記請求項1~5のいずれかの自動
車タイヤ用内装材において,帯状環状体の表面に,ゴムからなる非発泡表
面層が一体化されてなる構成」(当初明細書【0014】)を当初明細書
の請求項1に,本件発明としたものである(ただ追加限定する補正を行い
し,当初明細書の請求項2の構成も請求項1に追加限定している。)。ま
た,控訴人は,補正後の請求項に整合させるために,当初明細書では実施
例1としていた単一素材である天然ゴム発泡体からなる内装材,同じく実
施例4としていた単一素材であるポリスチレン樹脂を発泡形成した発泡体
からなる内装材を,いずれも本件発明の実施例から除外してこれらを比較
例とし,補正後の本件発明の実施例としては,上記(2)アのとおり,ポリク
ロロプレンゴム発泡体ないしポリウレタン樹脂発泡体からなる帯状環状体
の表面に厚さ0.3㎜の非発泡クロロプレンゴムを一体化した内装材のみ
としたものである(本件明細書【0030】の実施例1,同【0032】
の実施例2)。
これらによれば,控訴人が当初明細書の請求項1に同請求項6の構成を
追加限定する補正をしたのは,同請求項1のゴム発泡体からなり帯状環状
体に形成される内装材は引用文献1ないし4記載の各公知技術から容易に
想到し得るとの拒絶理由を回避するために,上記帯状環状体の表面に「ゴ
ムからなる非発泡表面層が一体化」されてなる構成(同請求項6の構成。
本件発明の構成要件Bと同じ)を付加することにより,上記内装材のう
ち,ゴム発泡体からなる帯状環状体のみから構成されるものを特許請求の
範囲から除外することを目的としたものと認められる。この補正そして,
,本件発明が特許として成立したことが認められる。により
そして,控訴人が当初明細書で実施例1としていた内装材を比較例4に
補正したことは,そのような構成の内装材(天然ゴムを発泡成形した天然
ゴム発泡体からなる内装材)を本件発明の技術的範囲から除外したものに
前記認定のとおり,補正後の本件明細書中の比較例ほかならないところ,
4においては,上記帯状環状体(天然ゴム発泡体)から控訴人がいうとこ
ろのスキン層を削り取り,又は削ぎ落とす等の工程の記載や示唆はみられ
ないから,上記帯状環状体にはスキン層を有している構成をも含むものと
認められる。
ゴム発泡体からなり帯状環状体に以上の出願経過によれば,控訴人は,
形成される内装材のうち,ゴム発泡体からなる帯状環状体のみから構成さ
,スキン層に該当する表面層のあるものも含め,意識的に本件れるものを
発明の技術的範囲から除外したものと認められる。したがって,少なくと
も構成要件Bの「ゴムからなる非発泡表面層」には,帯状環状体をなすゴ
ム発泡体を成形する際に,金型の壁面において気泡が押しつぶされるため
にゴム発泡体内部と比較して,ゴム発泡体表面の気泡が目立たなくなる状
態にある表面部分(スキン層)を含まないものというべきである。
(4)以上の認定判断に基づき,原告製品の構成を本件発明と対比すると,証
拠(甲5の1ないし3)によれば,原告製品はいずれも一層のゴム発泡体
からなる帯状環状体のみで構成された自動車タイヤ用内装材であり,その
表面部分は,気泡が成形時に金型に接触することによって押しつぶされた
認められるものの,当該部分はために気泡が目立たない状態にあることが
構成要件Bの「ゴムからなる非発泡表面層」に該当しないというべきであ
り,他に原告製品の帯状環状体の表面に「ゴムからなる非発泡表面層」を
有することを認めるに足りる証拠はない。
したがって,原告製品は,いずれも本件発明の構成要件Bを充足しな
い。
3争点(3)(均等侵害の成否)について
充足しない(1)以上のとおり,原告製品は,本件発明の構成要件A及びBを
のであるから,この点において本件明細書の特許請求の範囲(請求項1)
に記載された本件発明の構成は原告製品の構成と異なるものであるとこ
,控訴人は,原告製品について均等侵害を主張する。特許請求の範囲にろ
記載された構成中に他人が製造等をする製品と異なる部分が存する場合で
あっても,①上記部分が特許発明の本質的部分ではなく,②上記部分を対
象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することがで
き,同一の作用効果を奏するものであって,③このように置き換えること
に,当業者が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することが
できたものであり,④対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知
技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものでは
なく,かつ,⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の
範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき
は,上記対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものと
して,特許発明の技術的範囲に属すると解すべきである(最高裁平成10
以下,上記年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁参照。
①を「均等の第1要件」といい,上記②ないし⑤もこれに順じて表記す
)。る。
(2)上記均等の第1要件における特許発明の本質的部分とは,特許請求の範
囲に記載された特許発明の構成のうち,特許発明特有の課題解決のための
手段を基礎付ける技術的思想の中核的,特徴的部分をいうものと解され
る。
アそこで,本件発明における特許発明の本質的部分がどこにあるのかを
検討するに,本件明細書(甲2)には,「この発明は,…自動車タイヤ
のグリップ力及び直進安定性を向上させうる内装材およびグリップ力及
び直進安定性に優れた自動車タイヤを提供することを目的とする。」(
【0007】),「【課題を解決するための手段】上記目的を達成する
ために,本発明者は鋭意研究の結果,帯状環状体に形成された,特定の
物性を有するゴム発泡体または合成樹脂発泡体を自動車タイヤに内装す
ることにより,グリップ力及び直進安定性を向上しうることを見出すに
至り,本発明を完成したものである。」(【0008】)との記載があ
り,本件発明の解決しようとする課題の解決手段として,ゴム発泡体が
特定の物性を持つことに特徴があることを明記した上で,その物性に関
しては,本件明細書(甲2)に「この発明において,前記発泡体は,見
掛比重が0.20~0.50,25%歪み時の圧縮応力が20~100
0g/の特性を有する必要がある。上記2特性の内,1つでも上記範á
囲を逸脱すると,この発明の効果が達成されない。」(【0015
】),「前記発泡体の破断伸びは150~400%である必要がある。
150%未満あるいは400%を超えるとグリップ力向上の効果が十分
に得られない。」(【0017】)と記載されている。
また,本件明細書には,「前記帯状環状体の表面に,ゴムからなる非
発泡表面層が一体化されていることによりタイヤ内周面(2a)との摩
擦による発泡体の摩耗を防止することができる。」(【0020】)と
の記載があることは前記2(2)ア(ア)②のとおりである上,前記2(2),(
3)において認定説示したとおり,控訴人は,当初明細書の請求項1ない
し4にゴム発泡体からなり帯状環状体に形成されてなる自動車タイヤ用
内装材を記載していたところ,かかる構成が引用文献1ないし3に記載
されていること等を理由に拒絶理由通知を受けたため,平成16年8月
24日付けの意見書において「引用文献1ないし5のいずれにも,『ゴ
ム発泡体からなる帯状環状体の表面にゴムからなる非発泡表面層を一体
化した構成』は記載されていないし,このような構成を採用することに
よって『タイヤ内周面との摩擦による発泡体の摩耗を防止できる』とい
う格別な効果が得られることは何ら記載も示唆もない」旨主張し,これ
に沿った補正をし,それが容れられて本件特許の特許査定がなされたも
のである。また,当初明細書(甲8の2)には,「また,帯状環状体の
表面に,ゴムからなる非発泡表面層が一体化されてなる場合には,タイ
ヤ内周面との摩擦による発泡体の摩耗を防止することができる。」(当
初明細書【0050】)と,ゴムからなる非発泡表面層を帯状環状体の
表面に一体化したことにより特有の効果を奏する旨の記載がある。
イ上記のとおり,本件明細書には,本件発明は,自動車タイヤに内装す
るゴム発泡体に,特許請求の範囲に記載された範囲内の数値に限定され
た特定の物性を有するものを使用することにより,グリップ力及び直進
安定性を向上させる効果を奏することが強調されており,この数値範囲
を逸脱するとグリップ向上の効果等の発明の効果が十分に得られないと
の記載がある。また,帯状環状体の表面にゴムからなる非発泡表面層が
一体化されてなるという点に関しても,本件明細書に上記記載があるほ
か,本件発明の上記出願経過を総合すると,控訴人は,当初明細書にお
いてはゴム発泡体からなり帯状環状体に形成されてなる自動車タイヤ用
内装材を記載していたところ,引用文献1ないし5を示されて拒絶理由
通知を受けたため,上記各引用文献には帯状環状体の表面にゴムからな
る非発泡表面層が一体化した構成は記載されておらず,そのような構成
を採用することによってタイヤ内周面との摩擦による発泡体の摩耗を防
止できるという格別な効果が得られるなどと主張し,その旨補正した上
で特許査定を受けたものである。
ウそうすると,自動車タイヤ用内装材について,特許請求の範囲に記載
された範囲内の数値に限定された特定の物性を有するゴム発泡体を使用
するとともに,の表面にゴムからな上記ゴム発泡体からなる帯状環状体
る非発泡表面層を一体化させる構成を採用したことは,いずれも本件発
明特有の課題解決の手段を基礎付ける技術的思想の中核的,特徴的な部
分すなわち本件発明の本質的部分であると認めるのが相当である。
(3)これに対し,原告製品は,①OP-434については破断伸び,OP-
435,OP-582については圧縮応力においてそれぞれ本件発明と相
違するとともに,②いずれも一層のゴム発泡体からなる帯状環状体のみで
構成された自動車タイヤ用内装材であって,別途,非発泡表面層を一体化
したものではない点において本件発明と相違するところ(前記1及び2(4
)),上記のとおり,各相違部分は,いずれも本件発明の本質的部分であっ
て,上記均等の第1要件を欠くことが明らかである(ちなみに,前記出願
本件発明の特許請求の範囲からゴム発泡経過にかんがみると,控訴人は,
,それが「スキン層」体からなる帯状環状体のみから構成される内装材を
と称する表面層を有するか否かにかかわらず,意識的に除外したものとい
うべきであるから,上記均等の第5要件をも欠くとも解される。)。
(4)以上の説示によれば,原告製品は,本件発明の特許請求の範囲と均等な
ものとしてその技術的範囲に属するものということはできず,控訴人のこ
の点に関する主張は採用できない。
4当審における控訴人の主張について
(1)控訴人は,「グリップ力が向上しタイヤが摩耗しにくい」という本件発
明の作用効果は,本件発明の特許出願時,公知ではなかったもので,本件
発明の本質的部分であるところ,被控訴人は,本件発明の内容が公開公報
で明らかとなった後,本件発明の上記作用効果を奏するようにしながら
も,その特許請求の範囲の数値を僅かに置き換えた原告製品を製造販売す
ることによって本件特許権に基づく差止め等の権利行使を免れようとした
ものであり,本件発明の上記作用効果を無視し,数値(構成要件A)の僅
かな違いや非発泡表面層に関する表現(構成要件B)の違いにより,原告
製品は構成要件A及びBを充足しないとして,原告製品の製造販売が本件
特許権の侵害に当たらないと判断するのは不当である旨主張する。
しかし,先に説示したとおり,特許発明の技術的範囲は,願書に添付し
た明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないのであ
るから,特許権侵害訴訟において,相手方が製造販売する対象製品が特許
発明の技術的範囲に属するかどうかを判断するに当たっては,特許請求の
範囲に記載された構成を充足するかどうかを基準とすべきであり,対象製
品が特許請求の範囲に記載された構成のすべてを充足しない場合には,対
象製品は,均等侵害が成立する場合を除き,特許発明の技術的範囲に属す
るということはできないものと解されるところ,前記認定のとおり,原告
製品のうち,OP-434は本件発明の構成要件Aの破断伸びの上限値を
超えている点で,OP-435及びOP-582は構成要件Aの圧縮応力
の上限値を超えている点でそれぞれ本件発明の構成要件Aを充足せず,ま
た,原告製品はその帯状環状体の表面に「ゴムからなる非発泡表面層」を
有しない点で本件発明の構成要件Bを充足しないのであるから,これらの
点において原告製品は本件発明の技術的範囲に属しないというべきであ
る。
加えて,異なる構成の発明から同一の作用効果が生じることはあり得る
ことであって,作用効果が同一であるからといって構成が同一であると直
ちにいえないことは先に説示したとおりであり,原告製品が本件発明と同
一の作用効果を奏するとしても,そのことから直ちに本件発明の構成要件
A及びBを充足するということはできないのであるから,控訴人のいう作
用効果の点は,原告製品が本件発明の技術的範囲に属しないとの上記判断
を何ら妨げるものではない。
(2)控訴人は,前記第2の2(2)イ(ア)①ないし⑤の事情があることを根拠
として,原告製品は,本件発明の構成と均等なものとして本件発明の技術
的範囲に属するから,被控訴人による原告製品の製造販売は本件特許権の
侵害に当たる旨主張する。
しかし,先に説示したとおり,特許請求の範囲に記載された構成中に対
象製品等と異なる部分が存する場合であっても,均等の第1要件ないし第
5要件を充足するときは,対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構
成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属すると解すべきである
が(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113
頁参照),前記認定のとおり,原告製品は,本件発明の構成要件A及びB
を充足しない点において,本件発明の構成と異なるものであるところ,自
動車タイヤ用内装材について,本件発明に係る特許請求の範囲(請求項
1)に記載された範囲内の数値に限定された特定の物性を有するゴム発泡
体(構成要件A)を使用するとともに,上記ゴム発泡体からなる帯状環状
体の表面にゴムからなる非発泡表面層を一体化させる構成(構成要件B)
を採用したことは,いずれも本件発明特有の課題解決の手段を基礎付ける
技術的思想の中核的,特徴的な部分すなわち本件発明の本質的部分である
と認めるのが相当であるから,上記異なる部分は本件発明の本質的部分で
あり,原告製品は,均等の第1要件を充足しないものである。
また,前記認定のとおり,本件発明の特許出願経過によれば,控訴人
は,ゴム発泡体からなり帯状環状体に形成される内装材のうち,ゴム発泡
体からなる帯状環状体のみから構成されるものを,スキン層に該当する表
面層のあるものも含め,意識的に本件発明の技術的範囲から除外したもの
であるところ,原告製品は,上記のとおり除外されたゴム発泡体からなる
帯状環状体のみから構成されるものに該当するから,均等の第5要件(「
対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的
に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき」)を充足しない
というべきである。
控訴人は,原告製品は,本件発明の構成要件A記載の圧縮応力又は破断
伸びの上限値を僅かに(数g又は数%)超えている点で本件発明の構成と
異なる部分があるが,本件発明の作用効果と同一の作用効果を奏するか
ら,上記異なる部分は本件発明の本質的部分ではなく,均等の第1要件を
充足する旨主張(前記第2の2(2)イ(ア)①)するが,均等の第1要件は,
異なる部分の構成が発明の構成の本質的部分かどうかを評価判断するもの
であって,発明の作用効果が本質的部分かどうかを問題とするものではな
いから,上記主張は採用することはできない。また,控訴人は,原告製品
は本件発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に僅かに数
値を除外したものであるから,均等の第5要件を充足する旨主張(前記第
2の2(2)イ(ア)⑤)するが,均等の第5要件は,出願人が,特許出願手続
において当該異なる部分の構成を意識的に除外したかどうかなど,特許権
者側の事情を問題とするものであるから,控訴人の上記主張はその主張自
体均等の第5要件を充足するものではない。
したがって,原告製品は,本件発明の構成と均等なものとして本件発明
の技術的範囲に属するとの控訴人の上記主張は採用することができない。
5結論
以上によれば,被控訴人の本訴請求は理由があるから,これを認容した原
判決は相当であって,控訴人の本件控訴は理由がないから,これを棄却する
こととし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官佐藤久夫
裁判官大鷹一郎
裁判官嶋末和秀

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