弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2控訴人の被控訴人に対する「市民参加条例策定委員会委員応募者に対する書類選,
考に関する情報を記載したもの。その他関連する資料,特に応募者提出の論文」につ
いての情報公開請求に対し,被控訴人が平成13年8月13日付けでなした決定のう
ち「応募者提出の応募論文(ただし,住所,氏名,電話番号,年齢,性別及び職,」
業を除いた部分)を非公開とする旨の決定(部分)を取り消す。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
,,()1本件は東京都小金井市の住民である控訴人が小金井市情報公開条例本件条例
に基づき,小金井市市民参加条例策定委員会の公募委員の応募者に係る書類選考に関
する情報を記載した文書その他関連する資料,特に応募者の提出した論文の公開を求
めたところ,被控訴人が,上記公開請求に係る情報のうち上記論文等について,同条
例9条2号に定める非公開情報に該当することを理由としてこれを非公開とする決定
をした(本件決定)ことから,控訴人が,上記論文のうち氏名,住所,電話番号,年
齢,性別及び職業を除いた部分を非公開としたことを不服として,上記決定の当該部
分の取消しを求めている事案である。
,「」2本件条例の定め及び本件における判断の前提となる事実は原判決事実及び理由
の「第2事案の概要」の第1,2項(原判決2ページ7行目から同4ページ11行
目まで)に摘示するとおりであるからこれを引用する。
また,当事者双方の主張及び争点は,当審において,当事者双方が後記4及び5の
とおり主張するところを付加するほかは,同「第2事案の概要」の第3,4項(原
判決4ページ12行目から同8ページ21行目まで)に摘示するとおりであるから,
これを引用する。
本件の争点について改めてふえんすると,小金井市市民参加条例策定委員会の公募
委員に応募する者は,市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等のあり方につい
ての論文(800字以内)に住所,氏名,電話番号,年齢,性別及び職業を明記のう
え,直接,郵送又はFAXで同市企画課に送付して応募することとされており,応募
者の提出した論文(本件各論文)の記載内容は,①住所,氏名,年齢,職業,電話番
号,性別等の応募者識別部分(①の部分,②「市民自治の基本理念,市民協働及び)
市民参加等のあり方」に関する記述部分(②の部分,③宛先,提出の目的,提出年)
月日等の記述部分(③の部分)から構成されるところ,本件の争点は(1)本件各,
論文を構成する上記①ないし③の部分は全体として1個の独立した一体的な情報とい
えるか,上記②の部分は,他の部分と切り離して1個の独立した一体的な情報といえ
るか(2)本件各論文が本件条例9条2号の非公開事由に該当するか否かである。,
3原判決は,上記の争点(1)について,本件各論文のうち,①の部分は,他の部分
と切り離して取り上げた場合,それ自体は単に当該論文の作成者である個人を特定す
るための記載にすぎず,社会通念上独立した情報として意味を有するものということ
はできないのであって,②の部分と合わせて,はじめて当該論文に記載された思想,
信条,意見等を有する応募者を特定する情報としての意味を持つものであり,また,
②の部分についても,他の部分と切り離して取り上げた場合,当該論文に記載された
思想,信条,意見等を表明した者が特定できない以上,社会通念上,論文としての意
味を有するものということはできないとし,さらに③の部分についても,他の情報と
切り離して取り上げた場合,独立した情報として社会通念上意味を有するものという
ことができず,その余の部分と合わせて,はじめて当該論文を提出した目的,年月日
等に関する情報としての意味を持つものであるとして,本件各論文については,①な
いし③の部分で構成される全体としてはじめて公募委員の選考のために提出された論
文として独立した一体的な情報を成すものというべきであるとし,上記の争点(2)
については,本件各論文のうち,②の部分は,市民自治の基本理念,市民協働及び市
民参加等のあり方に関する応募者個人の思想,信条,意見等が記載されているもので
あって,これを①の部分と一体の情報としてみた場合,①の部分に記載された当該論
文の作成者である特定の個人がこのような思想,信条,意見等を有することが明らか
になり,このような情報が本件条例9条2号に定める「一般に他人に知られたくない
と望むことが正当であると認められるもの」に該当することは明らかであり,同号の
定める非公開事由に該当するから,本件各論文の全体を非公開とした本件決定は適法
であり,本件決定の一部取消しを求めることはできないとして,控訴人の請求を棄却
したので,控訴人が控訴した。
4当審における控訴人の主張
(1)本件提出論文(②の部分)は,それ自体で「有意の情報」を構成する。
小金井市の市報でされた本件委員の募集方法は,市民自治の基本理念,市民協働
及び市民参加等のあり方に関する論文(800字以内)と住所,氏名,電話番号,
年齢,性別及び職業を明記のうえ,同市企画課に応募するというものであることか
らも分かるように,本件提出論文は800字以内の論文として,その他の記載事項
とは別個のものとして取り扱われたのであり,本件提出論文は,独立した情報とし
ての意味をもつものであった。
また,提出された論文の扱いについて,小金井市市民参加条例策定委員会委員公
募要領の選考基準でも「提出された論文を審査のうえ選考する」とあるように,,。
本件提出論文は,年齢,性別及び職業など,その他の情報とは別項の選考基準をな
すものとして規定されており,また,①の部分が,性別,年齢,職業等の偏りを避
け,また,現に他の審議会等の委員に就任している者を除いて選考するとされ,論
文審査でも,選考委員の評点は,②の部分に対する評点とされていることからも明
らかなように,②の部分は,①の部分とは独立の情報として扱われている。
さらに,宛先,提出の目的,提出年月日の記述部分(③の部分)は,審査の時点
で本件提出論文が期限内に提出されたものか否かを判断するうえで,本件提出論文
とは独立した意味をもつ情報であり,①の部分や③の部分は,それぞれ②の情報と
,「」,切り離して取り上げた場合でもそれ自体で有意な情報を構成するのであって
②の部分と合わせてはじめて情報としての意味を持つものではなく,①ないし③の
部分は,それぞれ独立した情報としての意味を有して作成され,かつ,取り扱われ
たものである。
原判決は,①の部分は,他の部分と切り離して取り上げた場合,それ自体は単に
当該論文の作成者である個人を特定するための記載にすぎず,社会通念上独立した
情報として意味を有するものということはできないというが,本件書類選考の最終
目的は委員となる個人を特定することであるから,①の部分は,どのような個人が
応募したかという事実を特定するという意味を有しており,応募者識別部分である
①の部分は,社会通念上独立した情報としての意味を有する。また,原判決は,②
の部分について,他の部分と切り離して取り上げた場合,当該論文に記載された思
想,信条,意見等を表明した者が特定できない以上,社会通念上,論文としての意
,(),味を有するものということはできないとするが②の部分本件提出論文自体は
たとえその思想,信条,意見等を表明した者が特定されていなくても,小金井市民
,,,の中にそのような思想信条意見等を有する者がいるという事実を意味しており
社会通念上,独立した情報としての意味を有するというべきである。原判決は,①
の部分は,当該論文の作成者である応募者を特定するための情報であるとしていな
がら,他方で,社会通念上独立した意味を有しないとするなど,整合性を備えてい
ない。
(2)原判決には,本件条例10条の解釈適用に誤りがある。
,()本件条例10条には行政機関の保有する情報の公開に関する法律情報公開法
,,,6条2項のような規定が設けられていないことから原判決は本件条例10条は
実施機関に対して,同条を根拠として,非公開事由に該当する独立した一体的な情
報をさらに細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分には非公開事由に該当
する情報が記録されていないものとみなして,これを公開すべきことを義務づけて
いるものと解することはできないとした。
しかし,小金井市情報公開条例の手引きでは「請求に係る市政情報の一部に適,
用除外事項に該当する情報が記録されている場合であっても,公開を原則とする立
,,」場から適用除外事項に該当しない部分についてできる限り公開することとした
。,,「」と説明されているのであるしたがって10条の規定は請求に係る市政情報
が本件提出論文である場合には,本件提出論文の記述内容自体に「適用除外事項に
該当する情報が記録」されているか否かを判断したうえで,当該市政情報の一部公
開を行う際に適用すべき規定であって,本件提出論文とは別の情報である①の部分
については,それが同一文書に記載されているとしても適用すべき規定ではない。
原判決は,本件条例に情報公開法6条2項のような規定がない以上,控訴人の主
張する態様の部分公開を請求する権利が付与されたものということはできないとす
るが,本件条例には,一部公開を認めない趣旨の明文の規定はない。本件条例は,
小金井市の保有する情報のうち,個人の身元を確認できる情報の部分を削除して開
示すれば,そのデータ主体のプライバシーの保全ができる場合に,それらを非公開
とする権利まで被控訴人に認めているわけではない。
(3)本件提出論文は,本件条例9条2号に定める非公開事由に該当しない。
本件提出論文は「市民自治の基本理念,市民協働及び市民参加等のあり方」に,
関する論文であって,特定の個人が識別され,又は識別され得る①の部分と分離し
てみた場合,そこに応募者が自らの私生活に係るプライバシーにかかわる情報を記
載するとは考えにくいことから,本件提出論文が一般に他人に知られたくないと望
むことが正当であると認められるものとはいえない。
また,本件条例に関する「適用除外事項細目基準」には「個人情報のうち,社,
会生活上等の情報にあっては,個人が識別されない状態であれば,これを公開して
も,プライバシーを中心とする個人の正当な権利,利益を侵害するおそれがないと
認められるものも少なくなく,その場合は,氏名その他個人識別性のある部分を除
き公開するものとする」と規定されているように,本件提出論文のうち,本件条。
例9条2号に定める非公開事由に該当する記載を除いた部分になお,①の部分に類
,,似する氏名その他個人識別性のある記載があればそれらを除いて公開することで
個人の正当な権利,利益を侵害するおそれはなくなる。
本件提出論文は,既述のとおり,応募者の氏名,生年月日,住所,電話番号等の
個人が識別できる情報である部分を除いても有意の情報を構成するものであって,
控訴人は,本件提出論文の一部分の公開を請求しているのではないから,本件条例
の規定においては,情報公開法6条2項のような規定を待つまでもなく,本件提出
論文は,本件条例9条2項の「個人に関する情報で,特定の個人が識別され,又は
識別され得るもの」には該当しない。
(4)控訴人は①の部分の公開は請求していない。
本件提出論文を①の部分と一体の情報としてみることは誤っている。
控訴人は,①の部分に記載されている当該論文の作成者の公開を請求していない
,,,,から①の部分に記載された情報がなければ特定の個人がどのような思想信条
意見等を有するかは明らかにならないし,本件提出論文である②の部分が本件条例
9条2号に該当するともいえない。
(5)本件論文8について
本件論文8の②の部分には「○年○月小金井市の行政計画(注:論文には,具,
体的な行政計画の名称が記載されている)が策定され,私も市民代表の策定委員。
として起草の場に参加させていただくことができた」との記述は,応募者の個人。
としての思想,信条の記述ではなくて,行政計画にかかわった公的な立場,経験に
ついての記述であり,このような記述をもって他人に知られたくないと望むことが
正当な情報であるとすることはできない。上記行政計画の策定委員の氏名は公表さ
れており,上記応募者もその事実が選考過程で考慮されると期待したから,その記
述を行ったものと考えられるため,公募委員への応募の動機を記述したものにすぎ
ず,したがって「○年○月小金井市の行政計画が策定され,私も市民代表の策定,
委員として起草の場に参加させていただくことができた」という形で一部を除い。
て公開することによって,本件論文8は,本件条例9条2号に定める非公開事由に
該当しないものになる。
控訴人は,市民参加条例策定委員会委員の選考において公平性が保たれているか
どうかを知りたくて,本件情報公開を求めたものであって,応募者個人までも特定
する必要はないから,本件請求は本件条例9条2号に定める非公開情報に該当しな
い以上,本件決定は取り消されるべきである。
5当審における被控訴人の主張
(1)①の部分は②の部分と合わせて独立した一体的な情報である。
,,「,,,①の部分については論文審査に当たって性別年齢職業等の偏りを避け
また,現に他の審議会等の委員に就任している者を除外して選考する」という点が
考慮されるとしても,①の部分のうち応募者の住所,氏名,電話番号の部分が②の
部分と切り離されて独立して論文審査の対象となることはないのであって,単に当
該論文の作成者である個人を特定するものにすぎず,②の部分と合わせて,はじめ
て当該論文に記載された思想,信条,意見等を有する応募者を特定する情報として
の意味をもつ。
また,年齢,性別,職業の部分も,論文審査に当たってはともかく,公開を請求
する市民にとっては,それ自体で独立した情報として社会通念上意味を有するもの
ではなく,②の部分と合わせてはじめて意味を持つ。仮に,控訴人のような立論に
,,,よっても②の部分だけを切り離した場合小金井市の市民の中にそのような思想
信条,意見等を有する者がいるとの事実が示されるだけであり,市民の中に様々な
思想,信条,意見等を有する者がいるとの事実は当然のことであって,その当然の
ことが示されても,それだけでは社会通念上意味のある情報とは到底言えず,②の
部分は①の部分と合わせてはじめて社会通念上意味のある情報となるのである。
独立した一体的な情報の範囲は,非公開事由ごとに判断されることになるが,本
件で問題となるのは本件条例9条2号であり,個人識別情報として独立した一体的
な情報の範囲の問題であるが,個人識別情報は,個人を識別させる部分とその他の
部分とから成り立っており,その全体が一つの独立した一体的な情報であり,この
ことは,情報公開法6条1項とは別に,特に個人識別情報について同法6条2項の
規定を置いていることからも明らかであり,したがって,本件各論文は,個人識別
部分を含めてその全体が本件条例9条2号に該当するものである。
控訴人は,③の部分は本件提出論文が期限内に提出されたものか否かを判断する
うえで,②の部分とは独立した意味を持つ情報であると主張するが,期限内に提出
,,されたか否かは現実に小金井市役所に提出された時期によって判断されるもので
③の部分は,独立した情報として社会通念上意味を有するものではない。
(2)控訴人は,②の部分は①の部分と分離した場合,本件条例9条2号に該当し
ないと主張するが,①の部分は②の部分と一体的な情報であり,これを分離して非
公開事由該当性を論ずるのは誤りである。
控訴人は「適用除外事項細目基準」を根拠に,個人識別部分を除外すれば個人,
の正当な権利,利益を侵害するおそれはないと主張するが「適用除外事項細目基,
準」は,法令ではなく,情報公開法6条2項のような規定のない本件条例を情報公
開法と同様に解釈しようとするものであって,誤りである。
(3)仮に,②の部分と①の部分を分離したとしても,②の部分は,本件条例9条
2号に該当する。
すなわち,②の部分の内容は,応募者の社会的関心に基づく意見,信条,理念等
を記述したもので,それらの意見等は,各人の人格,思想,社会観等と密接に結び
付いたものであるから,それらの意見等を社会に公開するべきか否か,どの範囲に
公開するかについては,元来,各応募者が自ら決すべき利益を有しているが,その
ことは,公開の対象となるべき論文から作成者が識別され得る部分を除外したとし
ても同様である。
,,,本件公募に当たっては提出論文の公開を全く予告しておらず応募者としても
本件提出論文の提出に当たり,それが後に公開されることは予想していなかった。
応募者は,本件提出論文の公開の可否について自ら決定すべき利益を有するので
あり,また,提出論文が公開されることを予想していなかったのであるから,②の
部分だけを分離しても「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認
められるもの」に該当する。
(4)本件条例10条は,独立した一体的な情報をさらに細分化して公開すること
を義務づけるものではないから,既述のとおり,①の個人識別部分と②は一体的な
情報であり,本件条例10条により部分公開すべき場合には当たらない。
(5)控訴人は,①の部分の公開を請求していないけれども,①の部分と②の部分
とは一体的な情報であり,非公開事由該当性の判断に当たっては,①の部分も含め
て判断されるものであり,そのことは控訴人が①の部分の公開を請求しているか否
かには左右されない。そのように解さなければ,情報公開法6条2項のような規定
を欠いているにもかかわらず,実施機関が独立した一体的な情報をさらに細分化し
て公開することを義務づけられる結果となり,本件条例の趣旨に反する。
(),,「,6控訴人は本件論文8について○年○月小金井市の行政計画が策定され
私も市民代表の策定委員として起草の場に参加させていただくことができた」と。
の記述部分を一部除外すれば本件条例9条2項に該当しないと主張するが,上記記
述は,②の部分の一部であり,まさに②の部分と一体的な情報であるから,これを
除外して非公開事由該当性を判断すべきでない。
6証拠関係
証拠関係は,原審及び当審記録中の各証拠関係目録記載のとおりであるから,これ
を引用する。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,①ないし③の部分から構成される本件各論文は,全体としてはじめて
公募委員の選考のために提出された論文として独立した一体的な情報を成すものであ
,,,り本件各論文には本件条例9条2号の非公開事由に該当する記載が存在するから
本件各論文は,同号に定める非公開事由に該当する情報であると認められ,本件決定
の一部取消しを求めることはできないものと判断する。そのように判断する理由は,
下記2ないし5のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3当裁
判所の判断(原判決8ページ22行目から同13ページ24行目まで)に説示する」
とおりであるから,これを引用する。
2控訴人は,本件各論文の②の部分(本件提出論文)は,それ自体で「有意な情報」
を構成し,社会通念上独立した情報としての意味を有するから,その部分に非公開情
報を含まなければ,その部分だけの公開がなされるべきであると主張する。
本件条例10条は「実施機関は,請求に係る市政情報に,前条各号のいずれかに,
該当する情報とそれ以外の情報が記録されている場合において,公開しないことがで
,,きる情報とそれ以外の情報とを分離できるときは前条各号に該当する部分を除いて
市政情報の公開をしなければならない」と規定している。同条は,1個の公文書に。
複数の情報が記録されている場合に,それらの情報のうちに非公開事由に該当するも
のがあるときは,当該部分を除いたその余の部分についてのみ,これを公開すること
を実施機関に義務づけているものにすぎず,非公開事由に該当する独立した一体的な
情報を更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分にはもはや非公開事由に
該当する情報は記録されていないものとみなして,これを公開することまでをも実施
機関に義務づけていると解することはできない。
そこで,本件において,非公開事由に該当する独立した一体的な情報の範囲が問題
となるが,その範囲を検討するに際しては,本件条例が「何人にも市政情報に関す,
る知る権利を保障するとともに,情報公開の総合的な推進に関し必要な事項を定める
ことにより,市民の市政への監視と参加を促進し,市民と市政との信頼関係を深め,
もって開かれた市政を実現することを目的」としている(本件条例1条)ことと,本
件情報公開請求が,市民参加条例策定委員会の委員の公募とその選考という市政情報
に関し,応募者から提出された論文について情報の公開を求めていることに留意され
なければならない。
,,本件では市民参加条例策定委員会委員の公募とその選考という市政情報について
その公募に応募してその選考のために提出された論文に対する情報公開請求がなされ
ているのであるから,非公開事由に該当する独立した一体的な情報としては,選考の
ために公募に応じて応募者が提出した論文が,委員の公募及び選考という市政情報と
して意義があるというべきであるから,本件においては,応募者が求められたテーマ
に関して論じた②の部分に限られず,応募者の特定に関する①の部分及び提出に関連
する事項を記載した③の部分を含め,公募委員の選考のために応募者が提出した論文
が,全体として,独立した一体的な情報に当たるというべきである。
,(),,,控訴人は本件提出論文②の部分は本件公募において800字以内とされ
公募要領の選考基準でも「提出された論文を審査のうえ選考する」とされ,①及び,
③とは独立した情報として取り扱われており,②の部分(本件提出論文)自体は,た
とえその思想,信条,意見等を表明した者が特定されていなくても,小金井市民の中
にそのような思想,信条,意見等を有する者がいるという事実を意味しており,社会
通念上,独立した情報としての意味を有すると主張する。
しかしながら,本件開示請求では,小金井市の市民参加条例策定委員会の委員の公
募及びその選考という市政情報について公開が求められているのであるから,前記の
本件条例の目的からすれば,単に,小金井市民の中にそのような思想,信条,意見等
を有する者がいるという事実が,本件開示請求にとって意味を持つ情報となると解す
るのは相当ではなく,市民参加条例策定委員会の委員の公募に応じた応募者各人がそ
の提出論文中の②の部分に記載されているような思想,信条,意見等を有しているこ
とが,市政情報としての意義を有するのであって,委員の公募及びその選考という市
政情報としては②の部分のみでは,独立した一体的な情報としての意義を有しないと
いうべきであり,したがって,①ないし③の部分は切り離すことはできず,これらが
全体として,独立した一体的な情報を構成するものと解さざるを得ないのである。控
訴人は,②の部分だけでも「有意な情報」であるとするが,本件条例の非公開情報の
,,範囲を考える際には公開請求されている市政情報との関係で検討されるべきであり
一般的な,国語的,あるいは,社会的に意味があるかどらかという観点から情報の範
囲を画するのは相当でない。
3控訴人は,原判決には本件条例10条の解釈に誤りがあり,10条の規定は「請,
求に係る市政情報」が本件提出論文である場合には,本件提出論文の記述内容自体に
「適用除外事項に該当する情報が記録」されているか否かを判断したうえで,当該市
政情報の一部公開を行う際に適用すべき規定であって,本件提出論文とは別の情報で
ある①の部分については,それが同一文書に記載されているとしても,そのような場
合に適用すべき規定ではないし,また,控訴人は①の部分の公開は請求していないか
ら,公開請求の対象である本件提出論文を,公開請求していない①の部分と一体の情
報としてみることは誤っている旨主張する。
しかしながら,前記説示のとおり,本件条例10条は,非公開事由に該当する独立
した一体的な情報を更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分にはもはや
非公開事由に該当する情報は記録されないものとみなして,これを公開することまで
をも実施機関に義務づけているものと解することはできないから,開示請求の対象が
②の部分に係る本件提出論文であるとしても,非公開情報に該当するか否か及びその
範囲については,何よりも,請求に係る市政情報として,独立した一体的な情報の範
,,囲を確定しこれに基づいて決定されるべきものといわなければならないのであるし
その決定の際に,請求者の開示請求において特定された情報の範囲がその決定の当然
の前提となるものではないと解される。
それゆえ,控訴人の前記主張は,独自の見解に基づくものであって,当を得たもの
とはいえない。
4控訴人は,本件提出論文は,②の部分だけでも有意の情報を構成するものであり,
特定の個人が識別され又は識別され得る①の部分を分離すれば,同論文は「市民自,
治の基本理念,市民協働及び市民参加等のあり方」に関する論文であるから,そこに
は応募者が自らの私生活に係るプライバシーにかかわる情報を記載するとは考えにく
く,本件提出論文が「一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認めら
れるもの」とはいえないから,本件条例9条2号に定める非公開事由には該当しない
と主張する。
既に説示したとおり,独立した一体的な情報を更に細分化して公開・非公開を決す
ることは相当でないから,本件において,①ないし③の部分の全体から成る本件情報
を,更に細分化して①の部分を切り離して,公開部分を検討することはできないと解
され,控訴人の主張はそもそも採用できないところである。
上記の点をしばらく措くとしても,本件各論文は,各応募者が,小金井市の市民参
加条例策定委員会の委員の公募に対して,その選考のために提出したものと認められ
るのであって,各応募者がこれが一般に公開されることを予想し,あるいは,公開さ
れることを承諾して提出したものとは到底認められないのであるから,氏名などの個
人が識別できる記述がなくても,公にすることにより個人の権利利益を侵害されるお
それがあるというべきであり,本件条例9条2号の「一般に他人に知られたくないと
望むことが正当であると認められるもの」に該当するものというべきである。
5控訴人は本件論文8について②の部分には○年○月小金井市の行政計画注,,,「(
:論文には,具体的な行政計画の名称が記載されている)が策定され,私も市民代。
表の策定委員として起草の場に参加させていただくことができた」との記述がある。
けれども,これは,応募者の個人としての思想,信条の記述ではなくて,行政計画に
かかわった公的な立場,経験についての記述であり,このような記述をもって他人に
知られたくないと望むことが正当な情報とはいえず,公募委員への応募の動機を記述
したものにすぎないから「○年○月小金井市の行政計画が策定され,私も市民代表,
の策定委員として起草の場に参加させていただくことができた」という形で一部を。
除いて公開することによって,本件論文8は,本件条例9条2号に定める非公開事由
に該当しないものになる旨主張する。
しかしながら,独立した一体的な情報を更に細分化して公開・非公開を決すべきで
ないことは既に述べたとおりであり,上記の記述部分は,本件条例9条2号の「特定
の個人が識別され得るもの」に当たり,本件論文8は「一般に他人に知られたくな,
いと望むことが正当であると認められるもの」に該当するものというべきである。控
訴人が,被控訴人に対し,控訴人の主張する上記のような形で本件論文8の一部につ
いて公開の措置を講ずることを権利として請求することができると認めるべき根拠は
見い出し得ないのである。
なお,控訴人は,市民参加条例策定委員会委員の選考において公平性が保たれてい
るかどうかを知りたくて,本件情報公開を求めたものであって,応募者個人までも特
定する必要はないから,②の部分は,本件請求は本件条例9条2号に定める非公開情
報に該当しない旨主張する。しかしながら,本件条例においては,請求者は,その公
開請求の目的・意図等に直接関係なくその請求をすることができるとされているので
あり,したがって,非公開情報の範囲も,請求者の請求の目的ないし意図を離れて画
されるべきものであるから,控訴人の主張は,失当というべきである。
第4結論
よって,本件決定は適法であり,控訴人の本訴請求は棄却すべきところ,これ同旨
の原判決は正当であり,控訴人の本件控訴は,理由がないから,棄却することとし,
,,,控訴費用の負担について行訴法7条民訴法67条1項61条をそれぞれ適用して
主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第9民事部
裁判長裁判官雛形要松
裁判官山崎勉
裁判官浜秀樹

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我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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