弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

大阪地裁平成20・6・30
316条の20第1項棄却
主文
本件証拠開示命令請求を棄却する。
理由
第1本件証拠開示命令請求の趣旨と理由
1請求の趣旨
検察官に対し「強盗致傷事件について,検察官が被告人Aを取り調べるに際し作成
した手控えその他これに類する書類」の開示を命じる旨の裁定を求める。
2請求の理由
(1)弁護人の予定主張
弁護人は,公判期日において,「検察官が証拠調請求をしている被告人Aの検察官
に対する供述調書には自白が記載されているが,この自白は被告人Aが任意にしたも
のではない疑いがある」と主張する予定である。
その理由は,「検察官の取調べに先立って司法警察員が被告人Aを取り調べた際,
虚偽の内容に基づく理詰めの尋問や不起訴処分を仄めかす尋問によって被告人Aから
自白を内容とする供述を得たものであるところ,検察官としては,それまでの被告人
Aの供述経過などからその供述の任意性に疑義を抱き,司法警察員の取調べにおける
違法を遮断した上で被告人Aの取調べを行うべきであった。検察官がそのような遮断
措置を講じないまま取調べを行ったのであれば,その取調べ自体が違法であることに
なる」というものである。
(2)証拠開示の必要性
検察官は,被告人Aを取り調べるに際して,手控え等を作成していたはずである。検
察官が自白を内容とする検察官調書を用いて公訴事実を立証しようとしているのに対
し,被告人が防御の準備を行うためには,弁護人において,それらの開示を受け,記
載内容を検討することが必要である。
(3)開示請求に対する検察官の対応
検察官は,「弁護人の予定主張は,検察官の取調べ自体の違法を問題にするもので
はないから,弁護人が開示を請求する手控え等は,弁護人の予定主張に関連するもの
とは認められず,また,開示の必要性もない」として,開示しなかった。
3本件手控え等は,弁護人の予定主張に関連するものであり,被告人Aの防御の準備
のためにこれらを検討することが必要であるから,検察官に開示を命ずる裁定を求め
る。
第2検察官の意見
1弁護人が上記の「予定主張」として述べている事項には,被告人Aの取調過程にお
ける具体的事実について何らの主張も伴わないものであるから,これは,刑事訴訟法
316条の17に定める「主張」には該当しない。
2弁護人が本件で開示を求める手控え等は予定主張とは関連性がない。また,一般に,
取調担当者のメモに記載される事項の性質を考えると,これが捜査機関の外部に知ら
れることによって将来における円滑適正な捜査が阻害されるおそれが大きいことから
も,開示は相当とは認められない。
3検察官は,犯罪捜査規範の規律を受けるものではないから,本件は警察官の備忘録
等の開示に関する最高裁平成19年12月25日決定の射程の外にある。
また,検察官が被疑者の取調べに際してメモを作成することがあるとしても,それ
は供述調書を作成するという目的によるもので,他に見せたり提出することを全く想
定していない。上記最高裁決定は,このような性質をもつ検察官の取調べメモが開示
の対象にならないことを示すものと理解される。
なお,弁護人の主張内容からすれば,検察官の取調べの状況に関する証拠調べが行
われることも想定しがたく,この意味からも検察官の作った取調べメモは証拠開示命
令の対象にはならない。
4本件については,個人的なメモ以外の検察官作成の取調べメモ(手控え)は存在し
ない(個人的なメモの存否については論及しない)。
5以上により,弁護人の申立てには理由がない。
第3当裁判所の判断
1公務員がその職務の過程で作成するメモについては,専ら自己が使用するために作
成したもので,他に見せたり提出することを全く想定していないものがあり,これを
証拠開示命令の対象とすることは相当でない。
本件において,検察官が被告人Aを取り調べるに際し個人的なメモを作っていたと
しても,これは,専ら検察官が自ら使用するために作成したものであって,他に見せ
たり提出することを全く想定していないものであるから,開示命令の対象とすること
は相当ではない。
2検察官が個人的メモの域を超えた取調べメモを作成することも考えられるところ,
これが証拠開示命令の対象となるかどうかはさておき,検察官は,現時点でそのよう
な取調べメモは存在しないと述べている。これを疑うべき事情は見当たらない。
3したがって,弁護人が開示を請求する「検察官が取調べに際して作成した手控えそ
の他これに類する書類」については,開示命令の対象とすることは相当ではない,又
は開示すること自体が不可能である,ということになる。
第4結論
よって,本件証拠開示命令請求には理由がないから,これを棄却することとする。
(裁判長裁判官・秋山敬,裁判官・栗原保,裁判官・荒井格)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛