弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破毀する。
     被告人を懲役六月に処する。
     被告人より金七千五百六十円を追徴する。
         理    由
 弁護人島田武夫の上告趣意は未尾に添附した別紙書面記載の通りである。
 弁護人島田武夫上告趣意第一点について。
 按ずるに刑法第七条にいわゆる公務員は官制、職制によつて其職務権限が定まつ
ているものに限らずすべて法令によつて公務に従事する職員を指称するものであつ
て其法令中には単に行政内部の組織作用を定めた訓令と雖も抽象的の通則を規定し
ているものであれば之れを包含するものであることは大審院判例の示すところであ
つて、今之れを改むべき理由を認めない、(大審院大正五年(れ)第二一七九号大
正五年一一月六日刑事二部判決、大正八年(れ)第一八〇八号、大正九年一二月一
〇日刑事一部判決)所論昭和二〇年一一月五日勅令第六二一号戦災復興院官制第二
条に戦災復興院に左の職員を置くと規定し総裁次長、局長、営繕技監、事務官、理
事官技師属技手を挙げているのみで雇員を挙げていないことは所論の通りである。
しかし昭和二二年三月一五日戦災復興院訓令第一号戦災復興院特別建設出張所処務
規程第二条は所長は戦災復興院総裁の指揮監督を受け所務を掌理するとあり、同第
三条には所長は雇員以下の任免を専行することができると規定している点に鑑みる
ときは、雇員たる身分を有し、建築資材割当台帳に基いて建築資材需要者割当証明
書を発行することを担当していた被告人は、刑法第七条に所謂公務員であるといわ
なければならない。論旨は被告人は些末な機械的事務を担当していたもので何等智
能的創意を要する事務を担当していないから其担当事務の性質から見ても公務員と
いえないと主張する。しかし原審の認定した事実によれば被告人の担当事務は先き
に説明した通り単純な機械的肉体的の労働ではなく、普通に所謂精神的労務に属す
る一般事務と見るべきであるから仕事の性質から見て公務員でないということは当
を得ない。なお論旨は原判決は被告人が公務員であることの根拠を示さない違法が
あると主張する、しかし公務員の賄賂収受罪を判示するには公務員であることを判
断し得る具体的事実を示しその者が職務に関し賄賂を収受した事実を説明すれば足
り公務員たることの資格を認められる法令上の根拠までも示す必要なきことは当裁
判所の判例とするところであり(昭和二三年(れ)第八三九号同二三年一二月一四
日第三小法廷判決)原判決の判示自体により被告人が刑法にいわゆる公務員である
ことを判断し得るものであるから原判決の説示に欠くるところはない。論旨は理由
がない。
 第二点について。
 論旨は被告人が判示の如く板硝子割当証明書が多く判示Aの店にまわる様に仕向
けたことは被告人が戦災復興院B出張所雇として実際担当していた職務とは何等関
係なく従つて被告人が判示Aから判示のような饗応を受けたとしても其職務に関し
賄賂を収受したことにはならないと主張する。なるほど判示板硝子割当証明書を所
持している者が或特定の店舗から板硝子を買受けるように仕向けることは厳密にい
えば其職務の範囲に属するものとはいい得ないであらう、しかし被告人が権限に属
する職務執行に当り其職務執行と密接な関係を有する行為を為すことにより相手方
より金品を収受すれば賄賂罪の成立をさまたげるものではない、従つて論旨は理由
がない。
 第三点について。
 按ずるに刑法第一五五条第一項の公文書偽造罪が成立するにはその作成権限のな
い者が行使の目的を以て公務所又は公務員の作成名義を偽つて公文書を作成するこ
とを要することは異論のないところである。元来本件割当証明書の作成名義人は判
示建築出張所長総理庁技官Cであるからその作成権限は同人に属すること明らかで
ある、論旨は被告人が発券係として同出張所に印刷して備付けてある割当証明書用
紙を使用しその所要欄に必要事項を記入した上庶務係が保管している前記出張所長
の公印を押し割当証明書を発行していたことが認められしかも右公印は庶務係の者
に押して貰うべきものであるが実際は必要な場合何時でも被告人自身が自由に之れ
を使用して割当証明書に押していたこと等を挙げて右割当証明書作成の権限は被告
人が有していたと主張する。しかし所論の事実があるとしても直ちに被告人が該割
当証明書作成の権限を有していたとはいい得ない。記録を精査するに右出張所長が
該割当証明書作成権限を被告人に移したとか所長に故障がある為め被告人が臨時代
理者として本件割当証明書発行の事務を執行したという事実が認められない点に鑑
みるときは被告人がほしいままに出張所長の印章及び署名を使用して出張所長の権
限に属する割当証明書を作成したことは、明らかに刑法第一五五条第一項の公文書
偽造罪に該当し同法第一五六条同第一五七条に該当するものではない、論旨は恰も
旧法第一五五条第一項の公文書偽造罪は公務員以外の者でなければ犯し得ないもの
の如く主張するがたとい公務員であつても行使の目的を以て作成権限が無いに拘わ
らず公務所又は公務員の印書若くは署名を冒用して公務所又は公務員の作るべき文
書を作成すれば同罪の成立すること前に説明した通りであるから、論旨は採用でき
ない。
 第四点について。
 原判決は被告人が判示Aから(一)昭和二二年一〇月中旬から同年一一月初旬ま
での間三回に亘り一人分合計一五三五円に相当する酒食の饗応を受け(二)同年一
一月二九日から一二月一日までの間に一人分六〇二五円に相当する酒食遊興等の饗
応を受けたことを判示し、その擬律において判示収受した賄賂は之れを没収するこ
とができないから其価格を追徴する旨を説示している点から見て右金額を被告人か
ら追徴したものであることが認められる然るに右金額は合計七五六〇円であること
は算数上明らかであるに拘わらず原判決は被告人に対し金七五六〇円より一〇〇円
多い七六六〇円の追徴を主文において言渡しているもので正しく本来追徴し得べき
額より過大な金額を追徴したこととなり原判決は主文と理由との間に齟齬があるか
ら論旨は理由があるよつて旧刑訴第四四七条により原判決を破棄し同法第四四八条
により本件につき更に判決を為すに原判決の確定した被告人の所為中公文書偽造の
点は夫々刑法第一五五条第一項に同行使の点は夫々同法第一五八条第一項第一五五
条第一項に詐欺の点は夫々同法第二四六条第一項に(以上各共謀の点については尚
同法第六〇条を適用する)収賄の点は夫々同法第一九七条第一項に(犯意継続の点
については尚昭和二二年法律第一二四号附則第四項刑法第五五条を適用する)各該
当するところ判示第一の(一)の偽造公文書行使の点は夫々一括行使にかゝり且公
文書偽造同行使及び詐欺の各所為は夫々犯意継続にかゝると共にその間に順次手段
結果の関係があるから同法第五四条第一項前段及び後段昭和二二年法律第一二四号
附則第四項刑法第五五条第一〇条を適用し最も重いと認める偽造公文書行使罪の刑
に従い以上は同法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条第一〇条により重
い偽造公文書行使罪の刑に法定の加重を為し犯情憫諒すべきものがあるから同法第
六六条第七一条第六八条第三号に従い酌量減軽をした刑期範囲内において被告人を
懲役六月に処し尚被告人が収受した賄賂金七五六〇円は之を没収することができな
いから同法第一九七条の四に則り被告人よりその価額を追徴すべきものとする。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 田中己代治関与
  昭和二五年二月二八日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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