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平成16年(行ケ)第289号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成17年2月21日
判決
原告   トムソン ライセンシング ソシエテ 
アノニム
同訴訟代理人弁理士 川上光治
同田中 浩
被告   特許庁長官小川 洋
同指定代理人杉山 務
同橋本恵一
同小曳満昭
同宮下正之
主文
     1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
日と定める。
 事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
(1) 特許庁が不服2003-11568号事件について平成16年2月23日
にした審決を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
 主文第1,2項と同旨
第2 事案の概要
1 本件は,アメリカ合衆国デラウェア州法に基づき組織され存続する法人であ
り,アメリカ合衆国 ニュージャージー州 08540 プリンストン インデペ
ンデンス・ウエイ 2に事務所を有する訴外アールシーエー トムソンライセンシ
ング コーポレイション(以下「訴外会社」という。)が,その特許出願につきな
された拒絶査定を不服として審判の請求をしたところ,審判不成立の審決を受けた
ため,同審決後の平成16年(西暦2004年)6月21日に訴外会社から特許を
受ける権利の譲渡を受けた原告が,同審決の取消しを求めた訴訟である。
 2 特許庁における手続の経緯(証拠を掲記した箇所以外は当事者間に争いがな
い。)
  (1) 訴外会社は,平成5年3月25日,発明の名称を「テレビジョン信号受信
システム」とする発明につき特許出願(パリ条約による優先権主張平成4年3月2
6日,米国。平成5年特許願第92374号。以下「本件出願」という。)をし,
平成12年3月17日付け及び平成14年3月26日付け各手続補正書(甲3,
4)により本件出願の願書に添付された明細書の「特許請求の範囲」を補正した。
これに対し,特許庁は,平成15年3月18日,本件出願につきこれを拒絶すべき
旨の査定をした。
  (2) 訴外会社は,上記拒絶査定を不服として,平成15年6月23日,本件審
判の請求をした。特許庁は,同請求を不服2003-11568号事件として審理
した上,平成16年2月23日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決
(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同年3月9日に訴外会社に送達さ
れた。
(3) 訴外会社は,本件審決後の平成16年6月21日,原告に対し,本件出願
に係る特許を受ける権利を譲渡し,同年7月2日に特許庁長官にその旨を届け出
た。原告は,同月3日,本件審決を不服として本訴を提起した。
3 平成12年3月17日付け及び平成14年3月26日付け各手続補正書(甲
3,4)による補正後の請求項1(以下「本願請求項1」という。)に係る発明
(以下「本願発明」という。)の要旨は,同補正後の明細書(甲2なし4。以下
「本願明細書」という。)の「特許請求の範囲」に記載された,次のとおりのもの
である。
 【請求項1】 中央画像領域を表す画像情報と,上下のバー領域に含まれ,所
要の表示走査フォーマットで画像を組み立てるのを助ける補助情報とを有するテレ
ビジョン信号を受信するシステムであって,上記画像情報を処理するための画像情
報路と,上記補助情報を処理するための補助情報路と,上記画像情報路と補助情報
路からの各出力信号を合成して出力信号を生成する手段と,ビデオ信号処理手段
と,上記画像情報から動きを表す制御信号を取り出す手段と,上記取り出された制
御信号に応答して,上記ビデオ信号処理手段に(a)画像に動きがある場合は上記
合成手段からの上記出力信号を供給し,(b)画像に動きがない場合は繰り返され
た画像情報を供給する手段と,を有し,上記システムのノイズ不感性を増強するた
めに,上記制御信号は,高周波数画像情報を実質的に含まない低周波数画像情報か
ら取り出されるものである,テレビジョン信号受信システム。
4 本件審決の理由の要旨
(1) 特願平3-8917号(特開平4-252688号。公開日・平成4年9
月8日)の出願当初の明細書(甲5。以下「先願明細書」という。)又は図面に
は,名称を「走査変換回路」とする発明であって,「受像機側での走査変換のため
の補強情報を送信側より伝送するテレビジョン方式における受像機側処理回路にお
いて,静止画時には,補強信号を用いない走査変換を行い,動画時には,補強信号
を用いた走査変換を行う」ようにしたもの(以下「先願発明」という。)が記載さ
れている。
(2)本願発明と先願発明とを対比すると,本願発明では,その対象装置を「中
央画像領域を表す画像情報と,上下のバー領域に含まれ,所要の表示走査フォーマ
ットで画像を組み立てるのを助ける補助情報とを有するテレビジョン信号を受信す
るシステム」としているところ,先願発明も,受像機側での走査変換のための補強
情報(本願発明でいう補助情報に相当)を送信側から伝送するテレビジョン方式に
おける受像機側処理回路を対象とするもので,特に,これをレターボックス方式の
テレビジョン信号に適用した場合についてみると,本願発明でいう上記テレビジョ
ン信号を受信するシステムと格別変わりがないものということができる。
    また,本願発明でいう「上記画像情報を処理するための画像情報路」と
「上記補助情報を処理するための補助情報路」について,先願発明も,フィールド
内隣接走査線C,Dの平均値信号(C+D)/2を生成するとともに,補強信号Y
(上記補強情報)を263H遅延器109で遅延調整して遅延補強信号Yを得てい
るのであるから,本願発明でいう上記画像情報路と補助情報路を有しているものと
いえ,また,本願発明でいう「上記画像情報路と補助情報路からの各出力信号を合
成して出力信号を生成する手段」,「ビデオ処理手段」,「上記画像情報から動き
を表す制御信号を取り出す手段」について,これらはそれぞれ先願発明における加
算器110(上記平均値信号(C+D)/2と補強信号Yとの加算手段),倍速変
換器114(順次走査出力を得る手段),減算器111と2値化器112(動き情
報としてフレーム間差信号を求めこれを2値化して切り替え器制御信号を得る手
段)と格別変わりがないものである。
    さらに,本願発明でいう「上記取り出された制御信号に応答して,上記ビ
デオ信号処理手段に(a)画像に動きがある場合は上記合成手段からの上記出力信
号を供給し,(b)画像に動きがない場合は繰り返された画像情報を供給する手
段」について,先願発明でも,上記切り替え器制御信号により,上記動画時の補間
信号(上記加算器110の出力)と静止画時の補間信号とを切り替え器113で切
り替え,その切り替え出力を倍速変換器114に通すことにより順次走査出力を得
ているのであるから,先願発明も本願発明でいう上記手段を備えているといえる。
    そうすると,本願発明と先願発明とは,前者が「上記システムのノイズ不
感性を増強するために,上記制御信号は,高周波数画像情報を実質的に含まない低
周波数画像情報から取り出されるものである」点を要件としているのに対し,後者
はそのような要件を開示するものではない点で一応相違するものの,他に格別の違
いはないものと認められる。
  (3) そこで以下,上記一応の相違点について検討すると,同相違点に関し,特
開平2-222283号公報(甲6。以下「文献1」という。)には,テレビジョ
ン画像の動き検出回路において,テレビジョン信号の高域成分を除いた低域成分か
ら画像の動きを検出するようにし,これにより高域成分に重畳されたノイズの影響
を受けずに画像の動きを検出できるようにすることが記載され(3頁右下欄下から
3行目~4頁右上欄5行目,及び第2図),特開昭62-51390号公報(甲
7。以下「文献2」という。)には,MUSE方式テレビジョン信号のデコーダで
用いる動き検出回路において,画像データ(サブサンプル・フィルタ16,2次元
フィルタ17と18からそれぞれ出力される現フレームのデータ,現フレームと1
フレーム前のデータ,1フレーム前と2フレーム前のデータ)の低域成分から画像
の動きを検出するようになすことが記載されている(第2図とその説明,特に2頁
右下欄4~6行目)。
    また,特開昭63-197184号公報(甲8。以下「文献3」とい
う。)には,MUSE方式テレビジョン信号の復調系で用いる画像の動き検出回路
において,ローパスフィルタを経た入力映像信号から画像の動きを検出するように
なすことが記載されており(第1図とその説明,特に3頁右下欄下から4行目~4
頁左上欄8行目),これら文献1ないし3の記載によれば,画像情報の低域成分か
ら画像の動きを検出する(結果としてノイズ等の不要信号成分に対する不感性が増
強される)ようにした動き検出手法は,画像情報から画像の動きを検出する上での
周知手法というべきものと認められ,かかる動き検出手法は本願発明でいう上記相
違点に係る要件と格別変わりがないものである。
    先願発明では,前記したように,画像情報からの画像の動き検出を行って
はいるが,そのために上記のような動き検出手法を採用することについては開示が
なく,むしろ図4に例示された構成では,画像情報そのもの(高域成分をも含む画
像情報)から動き検出を行うようになされている。
    しかしながら,先願発明は,先願明細書記載の趣旨に照らすと,画像の動
きを特に上記画像情報そのものから検出することを必須の要件とするものではな
く,動き検出手法として種々の手法を採用し得るものであることが明らかであり,
先願発明でもその一実施態様として適宜上記周知の動き検出手法を採用し得,特に
これを排除するものではないと解するのが相当である。
    そうすると,上記相違点に係る本願発明の要件は,先願発明で採用し得る
種々の動き検出手法を上記周知の動き検出手法に特定したというにすぎないものと
いうべきであるから,かかる特定において本願発明が先願発明とは異なる別の発明
であるとすることはできない。
  (4) 以上のとおりであるから,本願発明は先願発明と同一であり,かつ,本願
発明の発明者及び出願人が先願発明の発明者及び出願人と同一でもないことが認め
られ,したがって,本願発明は特許法29条の2の規定により特許を受けることが
できない。
第3 当事者の主張 
(原告主張の取消事由)
   本件審決は,ア.本願発明と先願発明との一致点,相違点の認定を誤り,ま
た,イ.相違点についての判断を誤り,その結果,本願発明は特許法29条の2の
規定により特許を受けることができないとしたものであり,その誤りが本件審決の
結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,本件審決は違法として取り消される
べきである。
 1 取消事由1(一致点,相違点の認定の誤り)
  (1) 本件審決は,先願発明が,本願発明の「上記取り出された制御信号に応答
して,上記ビデオ信号処理手段に(a)画像に動きがある場合は上記合成手段から
の上記出力信号を供給し,(b)画像に動きがない場合は繰り返された画像情報を
供給する手段」を備えていると認定しているが,先願明細書には,先願発明が「上
記取り出された制御信号に応答して,上記ビデオ信号処理手段に・・・(b)画像
に動きがない場合は繰り返された画像情報を供給する手段」を備えることについて
は何ら記載されておらず,本件審決の上記認定は誤りである。
すなわち,
   ア 本願発明では,画像に動きがない場合は繰り返された画像情報を供給す
るが,先願発明では,画像に動きがない場合は前後のフィールド間の対応走査線の
平均値に基づく補間を行って補間走査線を生成する。したがって,この点に関し
て,本願発明と先願発明は相違する。その結果,先願発明では,例えば,画像の再
構成のために2フィールド分のフィールドメモリを必要とするが,本願発明では,
1フィールド分のフィールドメモリで十分である。
   本願発明の「繰り返された画像情報を供給する手段」は,本願発明の実
施例における「フィールド繰り返しルミナンス情報」を供給するユニット38を上
位概念で表現したものである。先願発明の,前後のフィールド間の対応走査線の平
均値に基づく補間を行って補間走査線を生成する点を,上位概念で表現すると,先
願発明は画像情報間の平均値を供給するものといえる。本願発明の「繰り返された
画像情報を供給する手段」と,先願発明の画像情報間の平均値を供給する点とを比
較すると,両者は,文言上だけでなく技術的にも相違することは明らかである。
 イ本願発明の「上記取り出された制御信号」は,「高周波数画像情報を実
質的に含まない低周波数画像情報から取り出されるもの」なのであるから,「上記
取り出された制御信号に応答して,上記ビデオ信号処理手段に(a)画像に動きが
ある場合は上記合成手段からの上記出力信号を供給し,(b)画像に動きがない場
合は繰り返された画像情報を供給する手段」は,正確には,「高周波数画像情報を
実質的に含まない低周波数画像情報から取り出される制御信号に応答して,上記ビ
デオ信号処理手段に(a)画像に動きがある場合は上記合成手段からの上記出力信
号を供給し,(b)画像に動きがない場合は繰り返された画像情報を供給する手
段」を意味する。このような手段は,先願明細書には記載されていない。したがっ
て,この点に関しても,本願発明と先願発明は相違する。
(2) 次に,被告は,仮に,本願発明でいう「繰り返された画像情報を供給する
手段」を,「単一フィールドの画像情報を供給するもの(本願実施例のような構
成)」に限定して解釈することができたとしても,原告主張の点が格別の相違点で
ないと主張し,その理由として,先願発明も,前後の2つのフィールドの画像情報
の平均値を供給する構成を必須の構成としているわけではないのであり,先願発明
に接した当業者は,その目的を達成し得る構成として,「繰り返された画像情報と
して単一フィールドの画像情報を供給する構成(本願実施例のような構成)」をも
直ちに想起し得るからであると主張している。
    しかし,先願発明の必須の構成とは,単に先願明細書の特許請求の範囲に
記載された構成であり,先願の出願人が先願発明の特徴点であると判断した構成で
あるというだけであって,先願発明の画像情報間の平均値を供給する点が先願発明
の先願特許請求の範囲に記載されていないということは,それが先願発明の特徴点
でないということにすぎない。被告は,先願発明に接した当業者は,その目的を達
成し得る構成として,「繰り返された画像情報として単一フィールドの画像情報を
供給する構成(本願発明の実施例のような構成)」をも直ちに想起し得ると主張し
ているが,その主張には根拠がなく,本願発明から得た知識に基づいて事後的にか
つ主観的に主張しているにすぎない。
 2 取消事由2(一応の相違点についての判断の誤り)
   本件審決の「上記相違点に係る先願発明の要件は,先願発明で採用し得る種
々の動き検出手法を上記周知の動き検出手法に特定したというにすぎないものとい
うべきものであるから,かかる特定において本願発明が先願発明とは異なる別の発
明であるとすることはできない」という判断は誤りであり,本願発明が,先願発明
とは異なる別の発明であることは明らかである。
  (1) 文献1ないし3に記載の技術事項についての認定誤り
ア 文献2及び3には,画像の動き検出において,高周波数画像情報より高
い周波数成分を除去するローパスフィルタを介して不要成分を除去した画像情報か
ら動きを検出する方法が記載されているといえるが,画像情報の動きを高周波数画
像情報を実質的に含まない低周波数画像情報から検出する手法は開示されていな
い。
本件審決は,「文献1ないし3の記載によれば,画像情報の低域成分か
ら画像の動きを検出する・・・ようにした動き検出手法は,画像情報から画像の動
きを検出する上での周知手法というべきものと認められ」ると認定しているが,こ
の認定は誤りである。文献1ないし3からは,画像の動き検出において,高周波数
画像情報より高い周波数成分を除去するローパスフィルタを介して不要成分を除去
した画像情報から動き検出を行うことが周知であるといえるにとどまる。
イ 本件審決は,文献1に関して,文献1記載の画像の動き検出に関する一
部分の記載のみを引用して,「テレビジョン信号の高域成分を除いた低域成分から
画像の動きを検出するようにし,これにより高域成分に重畳されたノイズの影響を
受けずに画像の動きを検出できるようにすることが記載されている」と認定してい
るが,文献1に記載のテレビジョン信号には,本願発明のような,上下のバー領域
に含まれ,所要の表示走査フォーマットで画像を組立てるのを助ける補助情報が含
まれていない。したがって,文献1に記載の発明では補助情報がノイズによって崩
れるという問題は生じない。
     文献1記載の発明では,補助情報を用いて表示画像の画質を向上させる
ことがないので,ノイズによって崩れた補助情報を用いると表示画像の画質が向上
するか又は逆に低下するかといったことを考慮する必要はなく,単純に輝度信号の
低域部成分の動きに応じてフレーム間補間またはフィールド内補間のみによる走査
変換を行うものである。したがって,本願発明と異なり,文献1記載の発明には,
輝度信号の低域部成分の動きに応じて補助情報を用いて表示画像の画質を向上させ
るという技術思想はない。
文献2及び3に記載のテレビジョン信号にも,本願発明のような,上下
のバー領域に含まれ,所要の表示走査フォーマットで画像を組立てるのを助ける補
助情報が含まれておらず,文献2及び3に記載の発明では補助情報がノイズによっ
て崩れるという問題は生じない。したがって,文献2及び3記載の発明において
も,輝度信号の低域部成分の動きに応じて補助情報を用いて表示画像の画質を向上
させるという技術思想はない。
したがって,仮に,画像情報の低域成分のみから画像の動きを検出する
ようにした動き検出手法が周知であるとしても,その手法は,先願発明の画像の動
き検出手法とは均等なものではない。
  (2) 本件審決は,「先願発明は,先願明細書記載の趣旨に照らすと,画像の動
きを特に上記画像情報そのものから検出することを必須の要件とするものではな
い」と判断しているが誤りである。先願発明では,既に追加的なノイズ対策が施さ
れているから,先願発明に文献1記載のノイズ対策を施すことは考えられない。
    先願発明では,追加的なノイズ対策として,低周波数信号と高周波数信号
を含む伝送信号のノイズを積極的に検出して,伝送信号にノイズが検出されたとき
は,動画時には補強信号を用いてフィールド内補間の走査信号を選択し,静止画時
には補強信号を用いずにフレーム間補間の走査信号を選択するか,又は,動画時か
又は静止画時かに関係なく,補強信号を用いずにフレーム間補間の走査信号を選択
し,一方,ノイズが検出されないときは,動画時か又は静止画時かに関係なく,補
強信号を用いてフィールド内補間の走査信号を選択する構成が採用されている。し
たがって,先願発明では,高周波数信号にノイズが多くかつ静止画であるときは,
ノイズが検出されて,補強信号を用いない補間走査信号が選択され,一方,高周波
数信号にノイズが多くかつ動画であるときは,ノイズが検出されて,補強信号を用
いた補間走査信号が選択されるか又は補強信号を用いない補間走査信号が選択され
る。このように,先願発明では,既に追加的なノイズ対策を施し,伝送信号がノイ
ズを含んでいるか又は動きを含んでいるのかを区別できるようになっており,それ
とは別途にノイズ対策を施すことは考えられない。仮に,先願発明に文献1のノイ
ズ対策を加えるとすると,それは先願発明の内容とは異なった別の発明になる。
    先願発明において,仮に,ノイズを検出せずに画像の動き検出を低周波数
信号のみから行うとすると,ノイズがなくかつ動画であるときにも,画像の動き検
出手段が動画を静止画と誤認し,静止画時と同様に補強信号を用いずにフレーム間
補間の走査信号を生成する場合があるので,動画時の画質が低下するという欠点が
生じると常識的には考えられる。したがって,先願発明において,ノイズ検出器を
設けることが記載されているにもかかわらず,ノイズを検出せずに画像の動き検出
を低周波数画像信号のみから行うことは,常識的には考えられず,先願発明の技術
思想との間に一貫性がない。先願発明において,高周波数のノイズの影響をなくす
のであれば,むしろ,ノイズ検出器401の前に周波数フィルタを設けて伝送信号
の高周波数ノイズを積極的に検出し,高周波数信号と低周波数信号を含む主信号か
ら漏れなく動きを検出し,その高周波数ノイズの検出の結果と,その動きの検出の
結果とに応じて,補強信号を用いてフィールド内のライン間内挿による補間を行
い,又は,補強信号を用いずにフレーム間内挿による補間を行うと考えるのが自然
である。
(3) 本件審決は,「動き検出手法として種々の手法を採用し得るものであるこ
とが明らかであり,先願発明でもその一実施態様として適宜上記周知の動き検出手
法を採用し得,先願発明でもその一実施態様として適宜上記周知の動き検出手法を
採用することを特に排除するものではない」と判断している。 しかし,低周波数
画像情報のみから動きを検出する手法が周知技術ではないことは既に述べたとおり
である。また,仮に,その手法が周知であったとしても,その手法は,先願発明の
画像の動き検出手法の均等手段ではなく,後記のとおり,先願発明においてそのよ
うな手法を組み合わせて用いることは,先願発明の技術的思想との間に一貫性がな
い。したがって,先願発明において,一実施態様として適宜採用し得るものではな
い。
(4) 本件審決の相違点についての判断は,本願発明の知識に基づいて,先願発
明及び文献1を事後的に分析し,本願発明の知識に基づいて,発明の技術的思想を
構成する追加的なノイズ対策の部分を切り離して,先願発明のうちの一部の構成
に,先願発明の画像の動き検出手法の均等手段ではない,文献1中の低周波数画像
情報のみから動きを検出する手法を追加的なノイズ対策として組み合わせるとい
う,高度の創意工夫によって得られた発想に基づいており,本願発明の知識なしで
は,そのような発想が得られないことは明らかである。
    先願明細書に追加的なノイズ対策を施した構成が記載されているにもかか
わらず,先願明細書に,追加的ノイズ対策として,先願発明の手法とは異なる文献
1の低域部成分から動きを検出する手法を,先願発明の一部の構成と組み合わせる
ことが記載されているかのように扱うことは,先願発明と組み合わせることが不自
然な,先願明細書に記載されていない文献1の技術的事項までも,先願明細書に記
載されているものとして扱うことになる。そのような扱いは,特許法第29条の2
の規定の趣旨に反する。
    公知でない先願発明に,文献1を組み合わせて本願発明に到達するには,
先願発明の技術的思想との整合性を無視して,先願明細書に記載の構成のうちの,
伝送信号のノイズを検出して,その検出結果に応じて補間走査信号を選択する手法
を除外して,ノイズと動きを区別できないようにし,先願明細書に記載の構成のう
ちの,高周波数及び低周波数の主信号の動きを検出して動画時には補強信号を用い
てフィールド内補間の走査信号を選択し,静止画時には補強信号を用いずにフレー
ム間補間の走査信号を選択する部分に,低周波数の主信号の動きのみに応じて補強
信号を用いて表示画像の画質を向上させる可能性を高めるために,その高周波数の
主信号の動きを検出しないことによって生じる画質の低下の可能性を甘受しつつ,
先願発明の画像の動き検出手法と均等手段ではない文献1に記載の主信号の低周波
数画像領域だけから動きを検出する手法を,追加的なノイズ対策として組合せ,先
願明細書に記載の構成のうち,補強信号を用いずにフレーム間のラインの平均値を
用いる補間走査信号を用いる構成を,繰り返された画像情報を供給する構成に変更
するという創作を行う必要があり,このような創作は,高度の創意工夫なしでは行
えない。まして,本願発明が,先願明細書に記載された発明と同一でないことは明
らかである。
 (被告の反論)
  原告の主張はいずれも理由がなく,本審決の認定ないし判断に誤りはない。
 1 取消事由1(一致点,相違点の認定の誤り)について
  (1) 原告の取消事由1の主張は,「本願発明でいう「繰り返された画像情報を
供給する手段」は,単一フィールドの情報を供給するもの(本願発明の実施例のよ
うな構成)に限定される」ということを前提にしているものと考えられるが,その
前提が誤っている。
    本願請求項1には,「繰り返された画像情報を供給する手段」が単一フィ
ールドの画像情報を供給するものである旨の限定はないのであるから,該「繰り返
された画像情報を供給する手段」には,先願発明の実施例のように繰り返された前
後のフィールド間の対応走査線の平均値に基づく補間を行って補間走査線を生成
し,供給するものも当然に含まれるというべきであり,「画像に動きがない場合は
繰り返された画像情報を供給する手段」を具備する点を本願発明と先願発明の一致
点とした本件審決の認定に誤りはない。
  (2) 仮に,本願発明でいう「繰り返された画像情報を供給する手段」を,「単
一フィールドの画像情報を供給するもの(本願発明の実施例のような構成)」に限
定して解釈することができたとしても,原告主張の点が格別の相違でないことには
変わりがない。なぜならば,先願発明も,前後の2つのフィールドの画像情報の平
均値を供給する構成を必須の構成としているわけではないのであり,先願発明に接
した当業者は,その目的を達成し得る構成として,「繰り返された画像情報として
単一フィールドの画像情報を供給する構成(本願発明の実施例のような構成)」を
も直ちに想起し得るからである。
 2 取消事由2(一応の相違点についての判断の誤り)について
  (1) 原告は,①文献2及び3には低周波数画像情報のみから動きを検出する手
法は開示されておらず,該手法は周知ではないと主張し,また,②文献1ないし3
に記載の発明には,輝度信号の低域成分の動きに応じて補助信号を用いて表示画面
の画質を向上させるという技術思想はないと主張しているが,この点に関する原告
の主張が失当であることは,次に述べるとおりである。
   ア 原告の上記主張①について
    (ア) 文献2ではフィルタ16はその出力から動画用画像信号が生成さ
れ,フィルタ17,18はその出力から静止画用画像信号が生成されているのであ
るから(2頁左下欄下から5行目~同頁右下欄3行目),これらフィルタ16ない
し18は原告主張のとおり低周波数画像情報を生成するものではないが,文献2に
は,動き検出回路22が「各フィルタ16,17,18の低域成分から1フレーム
間または2フレーム間の動き量を検出する」ものであるとの記載があり(2頁右下
欄4~6行目),同記載からすると,文献2では,上記フィルタ16ないし18の
出力,すなわち画像情報中の低域成分(高周波数画像情報を含まない低周波数画像
情報)から動きの検出を行うようにしていることは明らかである。
    (イ) また,文献3での低域濾波は,確かにその技術的意義について特段
の説明がないから,原告主張のように,画像情報以外の高域ノイズを除去するだけ
のものである場合がないとはいえないが,画像情報を低域濾波するものである以
上,特段の説明がない限り,高周波数画像情報を含まない低周波数画像情報を得る
通常の低域濾波を行うものと解するのが相当である。
(ウ) 本件審決が,文献1ないし3を引用した趣旨は,文献1には,「テ
レビジョン画像の動き検出回路において,テレビジョン信号の高域成分を除いた低
域成分から画像の動きを検出するようにし,これにより高域成分に重畳されたノイ
ズの影響を受けずに画像の動きを検出できるようにすること」が開示されていると
いうことであり,文献2には,「MUSE方式テレビジョン信号のデコーダで用い
る動き検出回路において,画像データ(サブサンプル・フィルタ16,2次元フィ
ルタ17と18からそれぞれ出力される現フレームのデータ,現フレームと1フレ
ーム前のデータ,1フレーム前と2フレーム前のデータ)の低域成分から画像の動
きを検出するようになすこと」が開示されているということであり,文献3には,
「MUSE方式テレビジョン信号の復調系で用いる画像の動き検出回路において,
ローパスフィルタを経た入力映像信号から画像の動きを検出するようになすこと」
が開示されているということである。 本件審決は,「これら文献1ないし3の記
載によれば,画像情報の低域成分から画像の動きを検出する(結果としてノイズ等
の不要信号成分に対する不感性が増強される)ようにした動き検出手
法は,画像情報から画像の動きを検出する上での周知手法というべきものと認めら
れ」と判断したものであり,この判断に誤りはない。
イ 原告の上記主張②について
 文献1ないし3が開示する画像の動き検出技術は,確かに本願発明のよ
うな補助情報を利用する走査変換を前提とするものではないが,画像の動き検出技
術自体は,その前提が本願発明のような補助情報を利用する走査変換であるか否か
によって格別異なる技術的意義を有するものではなく,動き適応制御を行う上で共
通の技術であることは明らかであるから,上記各文献の開示から動き検出技術の一
般的技術水準を判断し,本願発明と先願発明との同一性を論ずることが誤りである
とはいえない。
  (2) 原告は,先願発明では,既に追加的なノイズ対策が施されているから,先
願発明に文献1に記載のノイズ対策を施すことは考えられないと主張しているが,
この主張は,先願発明がノイズを検出して処理を切り替えるものであることを前提
としている。
    しかしながら,先願明細書には,「ノイズを検出して,処理を切り替える
ことも可能である。」との記載等からも明らかなように,ノイズ検出をしない発明
も記載されており(【請求項1】,段落【0016】),本件審決は,そのような
発明を先願発明として認定しているものである。したがって,原告の上記主張は,
その前提において失当である。
    また,仮に,先願発明としてノイズ検出の構成を具備したものを想定した
場合であっても,本件審決の結論は変わらない。なぜならば,本願発明は「ノイズ
を検出した上で,SNRが悪い時のみ動き適応処理を行うもの」を排除してしてい
ないところ,先願明細書には,ノイズを検出した上で,SNRが悪い時のみ動き適
応処理を行うことも記載されており(段落【0016】,段落【0018】等),
その場合の動き適応処理のための動き検出にも,「輝度信号の低域成分から動きを
検出する」という周知技術は,当然に利用可能だからである。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(一致点,相違点の認定の誤り)について
  (1) 原告は,本願発明では,画像に動きがない場合は繰り返された画像情報を
供給するのに対し,先願発明では,画像に動きがない場合は前後のフィールド間の
対応走査線の平均値に基づく補間を行って補間走査線を生成する点で,両発明は相
違すると主張する。
   ア そこで,検討するに,先願発明が,画像に動きがない場合は前後のフィ
ールド間の対応走査線の平均値に基づく補間を行って補間走査線を生成するもので
あること,先願発明の「倍速変換器114」が,本願発明の「ビデオ信号処理手
段」に対応するものであることについては,当事者間に争いはない。
   イ 本願請求項1には,「・・・上記取り出された制御信号に応答して,上
記ビデオ信号処理手段に(a)画像に動きがある場合は上記合成手段からの上記出
力信号を供給し,(b)画像に動きがない場合は繰り返された画像情報を供給する
手段と,を有し,上記システムのノイズ不感性を増強するために,上記制御信号
は,高周波数画像情報を実質的に含まない低周波数画像情報から取り出されるもの
である,・・・」と記載されており,また,本願明細書の「発明の詳細な説明」欄
には,「画像に動きがない場合は繰り返された画像情報を供給する」ことについ
て,次の記載がある。
    (ア) 「【発明の概要】・・・画像に動きが含まれている場合には,画像
情 報と補助情報は組み合わされてビデオプロセッサに送られる。動きがない場合
には,他の画像情報,例えば,フィールド繰り返し画像情報がビデオプロセッサに
送られる。ビデオプロセッサに送られる情報は,高周波数画像情報を実質的に含ま
ない低周波数画像情報を検出する動き検出器からの制御信号によって決められ
る。」(段落【0008】)
    (イ) 「「ソフト」スイッチ42は,その一方の入力にユニット40から
のルミナンス画像情報を受け,別の入力にユニット38からのフィールド繰り返し
ルミナンス情報を受け取る。ユニット38は,フィールド記憶メモリ装置を含むも
のを用いることができる。ユニット38は,失われた線が前のフィールドから,繰
り返しの形で得られるルミナンス情報を含む出力信号を生成する。従って,ユニッ
ト38からの出力信号は,順に,その時のフィールドからの線情報,それに続いて
その前のフィールドからの線情報,等々と続く線情報を含んでいる。スイッチ42
の動作は動き検出器45からの制御信号によって制御される。」(段落【001
9】)
    (ウ) 「・・・制御信号の一方の極限値は動きのある画像を表し,その場
合は,その時のフィールドの再構成された順次走査ルミナンス信号がスイッチ42
の出力に現れる。制御信号の他方の極限値は動きのない画像を表し,この場合は,
ユニット38からの出力信号がスイッチ42の出力に現れる。これらの両極限値の
間の中間の値により,合成されたルミナンス信号またはフィールド繰り返しルミナ
ンス信号の所定部分がスイッチ42の出力に現れるようにされる。・・・」(段落
【0020】)
   ウ 上記イ認定の本願明細書の「発明の詳細な説明」欄の記載を参照すれ
ば,本願発明にいう「画像に動きがない場合は繰り返された画像情報を供給する」
とは,画像に動きがない場合には,その時のフィールドからの線情報と,その前の
フィールドからの線情報等に基づいて該前のフィールドからの線情報等を含む画像
情報を生成し供給することを意味するものであり,したがって,本願発明にいう
「繰り返された画像情報」とは,少なくとも「前のフィールドからの情報」を要素
として含む画像情報というにとどまるものであり,上記「繰り返された画像情報」
について,これをその時のフィールドからの情報に「前のフィールドの情報」のみ
が付加された画像情報に限定されると解する根拠はないというべきである。
     そうすると,前記ア記載のとおり,先願発明でも,画像に動きがない場
合には,「前のフィールドの情報」をも用いて補間走査線を生成しているのであ
り,その「前のフィールドの情報」を含む画像情報が,「倍速変換器114」(本
願発明の「ビデオ信号処理手段」に対応)に供給されているのであるから,本願発
明の「画像に動きがない場合は繰り返された画像情報を供給する」構成を,先願発
明が有していることは明らかである。
     したがって,「画像に動きがない場合は繰り返された画像情報を供給す
る手段」を具備する点を本願発明と先願発明の一致点とした本件審決の認定に誤り
があるということはできない。
(2) 原告は,「上記取り出された制御信号に応答して,上記ビデオ信号処理手
段に・・・(b)画像に動きがない場合は繰り返された画像情報を供給する手段」
は,正確には,「高周波数画像情報を実質的に含まない低周波数画像情報から取り
出される制御信号に応答して,上記ビデオ信号処理手段に・・・(b)画像に動き
がない場合は繰り返された画像情報を供給する手段」を意味するところ,このよう
な手段は,先願明細書には記載されていないから,この点に関しても,本願発明と
先願発明は相違すると主張する。
    しかしながら,原告主張の上記相違点は,結局のところ,本願発明では,
上記制御信号が,高周波数画像情報を実質的に含まない低周波数画像情報から取り
出されるものであるのに対し,先願発明では,同様の制御信号についてそのような
構成が要件とされていないという点に帰着するというべきところ,この点は既に本
件審決が一応の相違点として取り上げ,その一応の相違点が実質的にも相違点とい
えるか否かについて判断を示しているところである(前記第2の4)。
したがって,本件審決に,原告主張の上記相違点を看過した誤りがあると
いうことはできない。
  (3) 以上のとおり,本件審決の一致点,相違点の認定に誤りがあるということ
はできない。
 2 取消事由2(一応の相違点についての判断の誤り)について
  (1) 原告は,①文献2及び3には低周波数画像情報のみから動きを検出する手
法は開示されておらず,該手法は周知ではないと主張し,また,②文献1ないし3
に記載の発明には,輝度信号の低域成分の動きに応じて補助信号を用いて表示画面
の画質を向上させるという技術思想はないと主張するので,以下検討する。
   ア 本願発明の低周波数画像情報について
    (ア) 本願明細書には,制御信号が,「高周波数画像情報を実質的に含ま
ない低周波数画像情報から取り出されるものである」ことについて,次の記載があ
る。
     a 「・・・上記制御信号は,高周波数画像情報を実質的に含まない低
周波数画像情報から取り出されるものである,・・・」(【請求項1】)
     b 「【発明の概要】・・・ビデオプロセッサに送られる情報は,高周
波数画像情報を実質的に含まない低周波数画像情報を検出する動き検出器からの制
御信号によって決められる。」(段落【0008】)
     c 「例示した実施例においては,受信テレビジョン信号は,画像領域
と圧縮された形の補助情報を含んでいる上下バー領域とを有する郵便受けフォーマ
ットの信号である。この補助情報は順次走査画像の生成を助け,また制御信号は低
域通過濾波された分離されたルミナンス成分から取り出される。」(段落【000
9】)
     d 「動き検出器45は,クロミナンス情報を含む高周波数情報を除い
て,低周波数ルミナンス信号YL(約0~1.4MHz)に伴う低周波数画像情報
を感知して,画像の動きがあるかないかを検出する。信号YLは分離されたルミナ
ンス成分から水平低域通過フィルタ(水平LPF)34によって取り出され
る。・・・フィルタ34の遮断周波数は,ノイズの効果を減じるための特定のシス
テムに必要とされる場合はそれに応じて低くしたり,あるいは,例えば,4.0M
Hzまで高くすることができる。」(段落【0020】)
     e 「以上説明したシステムは,順次走査ルミナンス信号の再構成がノ
イズによる悪影響を受けるという可能性を減じる効果を持つ。ノイズがあると,動
き検出器は動き,特に静止画像領域中の動きの存在を誤って表示してしまう可能性
がある。動き検出器45によって低周波数ルミナンス情報を検出するようにするこ
とにより,動き検出器45がノイズによる影響を受けて,動きを誤って表示した
り,スイッチ42が,ノイズによる汚染を受けている可能性のあるヘルパ信号を含
む合成器40からの出力信号を出力してしまうというようなことが減少する。ま
た,ここに開示した検出構成は,ノイズに似ているようなクロミナンス情報によっ
て,特に静止画像がある時に,動き検出器45から誤った出力が生成される可能性
を減じるという効果もある。」(段落【0021】)
    (イ) 上記(ア)認定の本願明細書の記載によれば,本願発明の「高周波数
画像 情報を実質的に含まない低周波数画像情報」とは,ノイズの効果を減じるた
めの特定のシステムに必要とされる場合に,それに応じて最高で4.0MHz以下
の周波数を含む情報を想定しているものと解される。
   イ 文献1に記載の技術事項について
    (ア) 文献1には,以下の記載がある。
a 「この発明は,例えば,インターレース方式テレビジョン信号を画
像の動きに応じたライン補間によりノンインターレース方式のテレビジョン信号に
変換する動き適応順次走査変換回路において,画像の動き量を検出する動き検出回
路及びこの動き検出回路の検出出力に従ってライン補間用の補間信号を生成する補
間信号生成回路に関する。」(2頁左下欄7~13行)
     b 「この発明は,小さいメモリ容量で動き検出を行なうことが可能
で,かつ,受信S/Nが低下してもノイズによって動き検出が誤動作することを防
止可能な動き検出回路及び補間信号生成回路を提供することを目的とする。」(4
頁左上欄4~8行)
     c 「また,フレーム間差を求めるのに水平方向の高域部に位置する成
分(以下,高域部成分と記す)を使わないので,動き検出動作がこの高域部に重畳
されたノイズ成分の影響を受けることがない。これにより,受信S/Nが低下して
も,動き検出動作の誤動作を少なくすることができる。」(4頁左上欄20行~同
頁右上欄5行)
     d 「輝度信号Yは,例えば,メモリから成るフィールド遅延回路32
により・・・遅延される。この遅延出力はローパスフィルタ(以下,LPFと記
す)と減算回路34から成る分離回路により,低域部成分と高域部成分に分離され
る。第2図にLPF33から出力される低域部成分(図中,斜線を付す)と減算回
路34から出力される高域部成分の空間周波数を示す。」(4頁右上欄20行~同
頁左下欄7行)
     e 「これにより,減算回路42には,現フレームFaの低域部成分と
これより1フレーム分前のフィールドFcの低域部成分が供給される。減算回路4
2はこれら2つの入力信号を減算処理することにより,画像の動き量を示すフレー
ム間差分信号を得る。」(5頁左上欄9~14行)
     f 「以上述べたように,この実施例は,輝度信号Yの低域部成分のみ
を使って,フレーム間差分信号を得ることにより,画像の動き量を検出するように
したものである。」(5頁左下欄3~6行)
     g 「このような構成によれば,動き検出回路をこの実施例のように補
間信号発生回路の動き検出回路として構成し,この補間信号発生回路との間で遅延
用のメモリを共用する場合であっても,少なくとも1フィールド分の遅延に関して
は,低域部成分だけ遅延すればよいので,従来に比べメモリ容量を大幅に削減する
ことができる。具体的には,低域部成分として先の第2図に示す2MHz以下の成
分を用いる場合,メモリ容量を従来の3/4に削減することができる。」(5頁左
下欄7~16行)
     h 「また,上記のような構成によれば,第2図の高域部(斜線以外の
部分)に存在するノイズの影響を受けることなく,画像の動き量を検出することが
できるので,受信S/Nが低下しても,動き検出動作が誤動作することを極力防止
することができる。さらに,水平方向の同期信号にゆらぎ(ジッタ)が存在する場
合,水平方向の高域部成分を有する画像は,従来のように,全帯域で動き検出を行
なうと,第3図に示すように,誤検出される可能性があるが,上記のように低域部
成分のみを用いて動き検出を行なう場合は,第4図に示すように,動き検出の誤検
出がなくなる。」(5頁左下欄20行~同頁右下欄12行)
    (イ) 上記認定の文献1の記載によれば,文献1には,2MHzより高い
周波数の成分を除去するローパスフィルタを介して,高域部成分を除去した低域部
成分の画像情報から,動き検出を行うことが開示されているということができる。
   ウ文献2及び3に記載の技術事項について
(ア) 文献2には,MUSE方式テレビジョン信号のデコーダに関して,
次 の記載がある。
a 「本発明は,帯域圧縮された高品位テレビ信号を元の広帯域なテレ
ビ信号にデコードするテレビ受像機の信号処理回路に係り,特にこのテレビ受像機
に好適なフリーズ機能を設けるに適した信号処理回路に関する。」(1頁右下欄8
~12行)
b 「第2図に,このミューズ方式により帯域圧縮された高品位テレビ
信号(以後 ミューズ信号と記す。)を元の広帯域な高品位テレビ信号に戻す受像
機のデコーダ部分の構成を示す。このデコーダの特徴は,1フレーム前の信号と現
フィールド信号を交互に記憶して1フィールド遅延させるフィールドメモリ14,
15及び1フレーム前の信号と現フィールドの信号を画像の動きに応じて内挿した
信号を1フィールド遅延させるフィールドメモリ24を用いて,4フィールド分の
画像を内挿することにより,元の広帯域なテレビ信号に戻していることである。以
下,このデコーダについて説明する。」(2頁左上欄6~18行)
c 「第1と第2のスイッチ回路12,13は,入力端子7から与えら
れるサブサンプルクロックでスイッチングされ,第1のフィールドメモリ14,サ
ブサンプルフィルタ16及び第1の2次元フィルタ17に,NR回路11から供給
される現ミューズ信号と,第2のフィールドメモリ15から供給される1フレーム
前の信号を交互に出力する。また,第2のフィールドメモリ15には,第1のフィ
ールドメモリ14からの現ミューズ信号に対して1フィールド前と3フィールド前
の信号が,交互に入力される。さらに第2フィールドメモリ15では,ミューズ信
号に入力端子8からの動きベクトル信号により動き補正が施される。サブサンプル
フィルタ16に導かれた信号は,ここでサブサンプルクロックにより現ミューズ信
号のみが取り出され,フィルタ処理される。また,第1の2次元フィルタ17に導
かれた現ミューズ信号と1フレーム前の信号に対し,ここで垂直と水平の2次元フ
ィルタ処理が施される。同様に,第2のフィールドメモリ15から2次元フィルタ
18に供給された1フレーム前と2フレーム前の信号は,ここで,2次元フィルタ
処理される。19は,低域通過型フィルタ(以下,LPFと記す。)
であり,サブサンプルフィルタ16からの現ミューズ信号に水平方向のフィルタ処
理を施し,動画用の信号として混合器21に導く。一方,20は低域通過フィルタ
からなる準静止処理回路であり,第1,第2の2次元フィルタ17,18からの信
号を用いて静止画処理を施し,静止画用の信号として混合器21に導く。混合器2
1では各フィルタ16,17,18の低域成分から1フレーム間または2フレーム
間の動き量を検出する動き検出回路22と,この動き量をテンポラルに引き伸ばす
テンポラルフィルタ23からの動き量信号により,上記の動画処理された信号と静
止画処理された信号の混合比が定められる。すなわち,動き適応処理が施される。
25は内挿フィルタであり,混合器21からの動き適応処理された信号と,第3の
フィールドメモリ24からの1フィールド前の信号とをフィールド内挿し,ここで
元の広帯域な信号を発生する。」(2頁右上欄13行~同頁右下欄14行)
(イ) 文献3には,MUSE方式テレビジョン信号の復調系に関して,次
の記載がある。
a 「高品位テレビ信号を12GHz帯の衛星放送で放送可能にするM
USE・・・方式が提案されている・・・。MUSE方式では,連続する4フィー
ルドの画面をフィールド毎に位置を変えて1/4に画素を間引いて伝送することで
帯域を1/4に圧縮する(第6図)。同図において,×は伝送されない画素を示
し,この伝送されない画素は,受信側で,動き補正及び動き検出を伴った時間及び
空間的な補間により再現される。すなわち,MUSE方式では,動きのある部分で
は4フィールドの重ね合わせでは不自然な画像となるので,動き領域ではその時に
送られてくる1フィールド分のデータのみを使用して画像の復元を行なう。従っ
て,受信側で,画面内の各位置において動き領域があるか否かの判定を行なわなけ
ればならない(動き検出)。」(2頁左上欄3行~同頁右上欄1行)
b 「以下,本発明の実施例を図に基づいて詳細に説明する。・・・本
発明による動き検出回路5において,LPF(ローパスフィルタ)50を経た現信
号とフレームメモリ51で1フレーム相当期間だけ遅延されかつLPF52を経た
1フレーム前の信号との差分が減算器53でとられ,更に絶対値回路54で正値化
されることによって1フレーム差分信号となる。また,LPF50を経た現信号と
フレームメモリ51及び55で2フレーム相当期間だけ遅延されかつLPF56を
経た2フレーム前の信号との差分が減算器57でとられ,更に絶対値回路58で正
値化されることによって2フレーム差分信号となる。2フレーム差信号は最大値選
択回路59の一入力となるとともに,フレームメモリ60で1フレーム相当期間だ
け遅延されて最大値選択回路59の他入力となる。最大値選択回路59は2入力の
うち信号レベルの大きい方を選択し,次段の最小値選択回路の一入力とする。最小
値選択回路61の他入力としては1フレーム差分信号が供給され,最小値選択回路
61は2入力のうち信号レベルの小さい方を選択し,これを動き情報として混合回
路6に供給する。」(3頁左下欄7行~4頁左上欄18行)
(ウ) 上記(ア)及び(イ)認定の文献2及び3の記載によれば,文献2に
は,MUSE方式テレビジョン信号のデコーダで用いる動き検出回路において,サ
ブサンプル・フィルタ16,2次元フィルタ17,18からそれぞれ出力される現
フレームのデータ,現フレームと1フレーム前のデータ,1フレーム前と2フレー
ム前のデータの低域成分から画像の動きを検出するようになすことが記載され,ま
た,文献3には,MUSE方式テレビジョン信号の復調系で用いる画像の動き検出
回路において,ローパスフィルタを経た入力映像信号から画像の動きを検出するよ
うになすことが記載されているものと認められる。
要するに,文献2及び3には,画像の動き検出において,高周波数画
像情報より高い周波数の成分を除去するローパスフィルタを介して,不要成分を除
去した画像情報から動き検出を行う技術事項が開示されており,このことは本件出
願当時において当業者に周知の事柄であったと認められる(このことは,原告も自
認するところである)。
      そして,高周波数画像情報の周波数成分を含め,どの程度の高周波数
成分から不要成分とするかは,本願明細書にも,「フィルタ34の遮断周波数は,
ノイズの効果を減じるための特定のシステムに必要とされる場合はそれに応じて低
くしたり,あるいは,例えば,4.0MHzまで高くすることができる。」(段落
【0020】)と記載されているように,除去するノイズの周波数成分を考慮し
て,適宜決めればよい技術的な設計事項にすぎない。画像の動き検出において,こ
の判断が妥当であることは,文献1に,本願発明の遮断周波数として許容されてい
る4MHzよりも低い周波数の2MHzで,不要成分を除去した画像情報から動き
検出を行うことが記載されていることからも明らかである。
エ 上記イ認定の文献1記載の技術事項に上記ウで検討したところを併せ考
えれば,本件出願当時,画像情報の低域成分(低周波数画像情報)から画像の動き
を検出する動き検出手段は,画像情報から画像の動きを検出する手法として当業者
に周知の事柄であったと認めるのが相当である。
(2) 原告は,文献1ないし3に記載の発明には,輝度信号の低域成分の画像の
動きに応じて補助信号を用いて表示画面の画質を向上させるという技術思想はな
く,上記各文献に記載の画像の動き検出手法は先願発明の画像の動き検出手法の均
等手段ではないと主張する。
    確かに,文献1ないし3が開示する画像の動き検出手法は,本願発明のよ
うな補助情報を利用する走査変換に用いることを前提とするものではない。しかし
ながら,画像の動きを検出する手法自体は,本願発明のような補助情報を利用する
走査変換に用いるものであるか否かによってその技術的意義に違いが生ずるという
ものではなく,画像の動きに対応した制御を行う上ではその制御を行う目的いかん
にかかわらず共通の技術として適用が可能なものというべきであるから,上記各文
献に基づいて画像の動き検出の手法の一般的技術水準を認定し,これをもって,本
願発明と先願発明の一応の相違点が実質的な相違点であるか否かを論ずることが誤
りであるとはいうことはできない。
(3)ア 先願明細書には,先願発明の実施例として,画像の動きを高域成分をも
含む画像情報から検出することが記載されている(段落【0021】,【002
2】)ものの,本件審決の説示するとおり,先願明細書の記載の趣旨からすれば,
先願発明は,上記の実施例記載の動き検出手法を必須の要件とするものではなく,
動き検出手法として,種々の手法を採用し得ることを前提としているというべきで
あり,したがって,前記(1)エ認定の周知の画像の動き検出手法を採用することも排
除されていないと解するのが相当である。
     そうすると,本願発明の一応の相違点に係る構成は,先願発明で採用し
得る種々の動き検出手法を上記周知の動き検出手法に特定したにすぎないものとい
うべきであり,先願発明との実質的な相違点とはいえないから,一応の相違点の存
在をもって,本願発明が先願発明とは異なる別の発明であるということはできな
い。
   イ 原告は,先願発明では,動きのみに応じて補強信号を用いるか否かを判
定する方法(第1の技術思想)では不十分であると考えて,追加的ノイズ対策とし
てノイズ検出に応じて補強信号を用いるか否かを判定する方法(第2の技術思想)
を開示しているのであるから,先願発明に文献1に記載のノイズ対策を施すことは
考えられないと主張するので,以下検討する。
    (ア) 先願明細書には,追加的ノイズ対策について,次の記載がある。
     a 「受信機側での走査変換のための補強情報を送信側より伝送するテ
レビジョン方式における受像機側処理回路において,静止画時には,補強信号を用
いない走査変換を行い,動画時には,補強信号を用いた走査変換を行うことを特徴
とする走査変換回路。」(【請求項1】)
     b 「受像機側処理回路において,伝送ノイズを検出し,その出力に応
じて,補強信号を全く使わない走査変換をするか,請求項1に示した処理をする
か,あるいは,静止,動画に関わらず,補強信号による走査変換をするか,3つの
手段のうち,少なくとも2つの手段を切り替えることによって走査変換出力を得る
ことを特徴とする走査変換回路。」(【請求項4】)
     c 「また,ノイズを検出して,処理を切り替えることも可能である。
SNRが悪いときには,上記の処理,あるいは,全く補強信号を用いない走査変換
を行い,SNRが良い時には,補強信号を用いた走査変換を行う。この時,ノイズ
の検出としては,例えば,垂直ブランキング期間のようなレベル一定の信号部分を
用いて検出することができる。」(段落【0016】)
     d 「また,上記の処理は,SNR対策であるので,ノイズを検出し,
その検出出力に応じて,処理を切り替えることもできる。SNRが悪いときには,
上記のSNR対策の処理を行い,SNRが良いときには,静動によらず,補強信号
を用いた走査変換を行う。これにより,SNRに応じた最適な処理が行われること
になる。」(段落【0018】)
     e 「本発明の他の一実施例を図7を用いて説明する。ここでは,図6
の実施例をもとに,異なる部分のみを説明する。ノイズの大小に応じて,上記の処
理と補強信号による補間の固定モードの間を切り替えることにする。よって,ノイ
ズ検出器401により伝送信号からノイズを検出し,その出力に応じ,切り替え器
309出力(上記処理出力)と加算器307出力(固定モード出力)を切り替え器
402で切り替え,補間走査線信号とすることになる。」(段落【0030】)
     f 「以上では,フレーム間補間信号と補強信号からの補間信号を2値
で切り替えているが,動き情報に応じて,重み付け加算することもできる。」(段
落【0031】)
    (イ) 上記(ア)認定の先願明細書の記載によれば,先願明細書には,第1
の技 術思想による上記請求項1に係る発明と,第2の技術思想によるノイズ対策
を加えた上記請求項4に係る発明とが開示されていることが明らかである。
しかして,本件審決は上記請求項1に係る発明を先願発明として本願
発明との同一性につき判断をしているものであり,その場合において,第2の技術
思想によるノイズ対策を講じるか否かは関係のないことであり,上記同一性の判断
をするにつき,この点について考慮する必要がないことは明らかである。
      本件審決も同様の見解に立つものと解される。原告の上記主張は,本
件審決を正解せず,独自の見解に立ってこれを論難するものといわざるを得ない。
(ウ) また,上記のとおり,第2の技術思想による追加的ノイズ対策は,
上記請求項4に係る発明であって,上記請求項1に係る発明(第1の技術思想によ
るもの)を,3つの切り替え可能な手段のうちの1つとする発明である。また,こ
の追加的ノイズ対策は,「ノイズの検出としては,例えば,垂直ブランキング期間
のようなレベル一定の信号部分を用いて検出する」というものであって,選択肢と
して「動き情報に応じて,重み付け加算することもできる」のであるから,通常は
動き情報を用いないで,処理を切り替えていると解される。したがって,この追加
的ノイズ対策が,通常は画像の動き検出とは直接関係のないSNR対策を意味して
いることは明らかである。
 他方,画像の動き検出は第1の技術思想に係る事項であるところ,動
き検出の手法において,高周波数画像情報の周波数成分を含め,どの程度の高周波
数成分から不要成分とするかは,除去するノイズの周波数成分を考慮して,当業者
が必要に応じ適宜選択し得る技術的な設計事項であることは,前示のとおりであ
る。そうすると,画像の動き検出におけるノイズ対策は,第1の技術思想による請
求項1に係る発明が,そもそも備えていておかしくないと解される構成要素である
から,これに加え,更なる別のSNR対策として,第2の技術思想による追加的ノ
イズ対策を行うことに,何ら問題は生じないというべきである。
      先願明細書に第2の技術思想による追加的ノイズ対策が開示されてい
ることを根拠として,第1の技術思想による上記請求項1に係る発明におい文献1
に記載のノイズ対策を講じることは考えられないとする原告の主張は,この観点か
らしても採用することができない。
 (エ) いずれにしても,原告の上記主張は失当として採用することができ
ない。
3 以上の次第で,原告が取消事由として主張するところはいずれも理由がな
く,その他,本件審決にこれを取り消すべき瑕疵は見出せない。
 よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文
のとおり判決する。
  東京高等裁判所知的財産第1部
  裁判長裁判官 中野哲弘
 裁判官   青栁 馨
       裁判官沖中康人

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