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大阪地裁平成20・10・28
316条の20第1項棄却
主文
本件裁定請求を棄却する。
理由
1裁定請求の趣旨及び理由並びに弁護人の予定主張
(1)裁定請求の趣旨及び理由
本件裁定請求の趣旨及び理由は,弁護人A作成の平成20年10月7日付け証拠開示命
令請求書記載のとおりであるが,要するに,本件開示請求にかかる「被告人の取調べに関す
る警察官の取調べメモ(手控え),取調べ小票,調書案,備忘録及びこれらの電子データ」(以
下「取調べメモ等」という。)は,弁護人が公判で予定している後記主張と関連性を有し,また
取調官による暴行の事実を証明するために必要不可欠であるから開示の必要性も認められ
るので(なお弁護人は,被告人に対する取調べ時における取調官の暴行の事実は取調べの全
期間を通じた取調べメモ等を通覧することで明らかとなるのであるから,暴行があった日
以外の取調べメモ等についても予定主張との関連性及び開示の必要性があると主張する。),
検察官に対しこれらを開示するように命ずることを求めるというものである。
(2)弁護人の予定主張
証拠開示の前提となる弁護人の予定主張は,同日付け予定主張記載書面「第5量刑
において考慮されるべき事情」以下に記載のとおりであるが,概要,取調べ過程において,被
告人は警察官から暴行を受けており,この事実は量刑において考慮されるべきであるとい
うものである。この予定主張においては,平成19年10月10日,同月11日,同月16日及び同年11
月7日について,具体的な日付を特定して,警察署の取調べ室においてB警察官等から受け
たとする暴行態様をある程度明らかにしているほか,なお書として,「被告人に対するB警
察官の暴行は,上記に留まらず,刑事課に入る挨拶(強制されるもの)の際にB警察官から頭
を叩かれ,取調べ室では床にうつ伏せに転がされ,B警察官から背中を体重を乗せた膝で押
さえつけられ,首を足で踏まれ腰を殴る,首を三角締めされて失神させられるなどの暴行を
受けた。なお,これらの暴行は,平成19年10月19日まで,もっぱら続けられた。」として,日付
を特定しない形での主張もなされている。
2検察官の主張
これに対する検察官の主張は,検察官C作成の平成20年1O月17日付け意見書及び同月
28日付け求釈明に対する回答書各記載のとおりであるが,要するに,弁護人が開示を請求し
ている取調べメモ等のうち,①B警察官は,取調べ時の被告人の供述要旨を手書きのメモに
残していたが,供述調書作成後,保管の必要がないとして廃棄している,②被告人の特異言
動があった場合については,B警察官らにおいて,捜査報告書を作成しているが,ほぼ即日
作成しているため,そのためのメモは作成していない,③B警察官以外の警察官1名が,取調
状況報告書作成のため,取調べ開始時刻,終了時刻を手書きのメモに残していたが,報告書
作成後,保管の必要がないとして廃棄している,④取調べ小票は取調べのあった大正警察署
では作成していない,⑤取調べ状況につき,備忘のため電子データが作成されたことはない
として,結局弁護人が開示を求めている取調べメモ等は物理的に存在しないというもので
ある。
なお,検察官は,日付を特定して暴行の事実を主張された取調べの状況について,被告人
の特異言動等が記載された捜査報告書は,存在しているもの全てを既に開示済みであると
している。
3当裁判所の判断
当裁判所は,検察官作成の電話聴取書4通(検察官作成の平成20年10月7日付け意見書及
び同月28日付け求釈明に対する回答書各添付のもの。いずれも,上記検察官主張のとおりの
警察からの回答が記載されている。)及び既に弁護人に開示済みの証拠の標目を検討し,期
日間整理手続の経緯を踏まえ,次のとおり判断する。
(1)取調べ過程における捜査官による被告人(被疑者)に対する暴行等の違法行為の存
在が,量刑上被告人に有利に考慮されるべきか否か,考慮されうるとして,どの程度量刑に
反映されるかについては議論があるところである。そして,そのような事情を量刑上考慮し
うるという立場においては,本件において,日付を特定して,ある程度具体的に暴行態様が
主張されている取調べに係る取調べメモ等は,その内容によっては,関連性・必要性が認め
得る場合もあるといえる。しかし,その余の取調べにおける暴行についての弁護人の主張は,
上記のとおり,暴行の行われた日付や暴行に至った契機や経緯等も十分明示されておらず,
証拠開示に当たって,主張との関連性や必要性の程度等を判断するに足る主張が十分にな
されているとは言い難い。
(2)もっとも,検察官に対する警察の回答によれば,開示請求に係る被告人の取調べ期
間全般にわたる取調べメモ等は,作成されなかったか又は存在したが廃棄されているとい
うのであるから,主張との関連性・必要性等の検討は別論として,まずは上記警察の回答の
信頼性が問題となる。
この点,犯罪捜査規範13条の規定に基づき,取調べの経過等が記載された備忘録は,証拠
開示の対象となりうるものであるが,同条の趣旨は,主として備忘録が将来の公判で警察官
が証言をする際の記憶喚起に資するという点にあると解されるところ,本件では,被告人の
特異言動については,B警察官らによる捜査報告書(日付が特定される暴行の主張に対応す
るものとして,4通の捜査報告書が既に弁護人に開示されている。)がそれぞれ作成されてい
るところであり,当該捜査報告書をもってすれば警察官において当時の状況についての記
憶喚起をなしうるともいえる上,それらの報告書はいずれも取調べ当日あるいは翌日に作
成されており,記憶のはっきりした時点でメモ等の記載に基づかずに作成したというので
あるから,上記警察の回答も一応納得できるものである。また,それ以外の書面を作成して
いないとする点についてもその信頼性を疑わせる事情はうかがわれない。
(3)そうすると,開示請求に係る取調べメモ等はそもそも作成されておらず,あるいは
廃棄され,既に物理的に存在しないことに帰するから,結局,本件裁定請求を棄却するのが
相当であると判断した。
よって,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・並木正男,裁判官・本村曉宏,裁判官・安原和臣)

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