弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士岩田宙造、同山根篤、同伊達利知の上告理由、同倉重達郎の上
告理由、同長谷川一郎の上告理由は別紙のとおりである。
 上告代理人岩田宙造外二名上告理由第一点、同倉重達郎上告理由一の(2)乃至
(4)、同長谷川一郎上告理由第一点について。
 原判決(9)の投票はシゲミと読むことができるけれども、本件選挙の候補者中
に重村、滋、重田D等類似の氏名がある以上、上告人の姓の誤記とは断ずることは
できず無効とするよりほかはなく、原判決(10)の投票は上告人の姓と他の候補
者E丈一の氏名を混記したものと解すべく、「丈一」を「久市」の誤記とも認め難
いから、この一票を上告人に対する投票とは認め難く、また(11)の投票には、
附記されているa組(またはその誤記)が上告人が代表取締役である会社であるに
しても、現にA道徳なる候補者があり、その氏名が明確に記載されている以上、上
告人に対する有効投票とはいえない。原判決が右三票を無効としたのは正当であつ
て論旨は理由がない。論旨援用の当裁判所昭和三二年九月二〇日判決及び同二七年
七月六日判決は本件と場合を異にし本件の先例とすることはできない。
 上告代理人倉重達郎上告理由一の(1)、同長谷川一郎上告理由第二点の二につ
いて。
 原判決(1)、(3)、(17)、(19)の各投票は、不正確な記載ではある
が候補者鵜原の姓を誤記したものと認めることができ、植田、上田の姓の候補者が
あつても、これらの姓の誤記とは認められない。原判決が右各投票を候補者鵜原F
に対する有効投票としたのは正当であつて、その無効を主張する論旨は採用できな
い。
 上告代理人倉重達郎上告理由一の(5)、同長谷川一郎上告理由第二点の一につ
いて。
 原判決は検証の結果に基いて、(18)の投票は全部誤字であつても、なお鵜原
Fを名指したものと判断できるとしているのであつて、その無効を主張する論旨は
採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官小谷勝重の少数意見を除
き、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 裁判官小谷勝重の少数意見は次のとおりである。
 私は、上告各代理人論旨中、(11)の投票を除いたその他の投票の効力につい
ては多数意見と同意見であるが、(11)の投票については、多数意見とその見解
を異にする。
 即ち上告人は当時株式会社a組の代表者であつた事実は原判決の確定するところ
である、右(11)「A道徳/a組」なる投票は、上告人たるA久市の外に候補者
A道徳あるも、右a組なる記載は上告人に関する職業を記載したものと解するを相
当と考える。そして職業の記載は公職選挙法六八条五号により投票として有効な記
載であることは明らかである。
 そこで、右職業であるa組との記載と、姓であるAの記載との関連より考察し、
そして同法六七条後段の規定の趣旨にのつとり右投票をした投票者の意思を推測す
るとき、右は上告人A久市に投票する意思をもつて先ず氏名である「A道徳」と記
載したが、名の記憶に疑があつたため、特に職業を追記したものと解するに足る客
観性を有しておるものと私は考える。けだし本件の場合、仮りに「A」とだけの記
載投票は公職選挙法六八条の二により有効投票として上告人及びA道徳との両候補
者の有効投票数に按分されるであろうが、之に反し「a組A」又は「A/a組」と
の投票があつた場合、右は何れも上告人に対する有効投票と解すべきこと殆んど疑
なきところであろう。本件右投票の氏名の記載はA道徳候補者の氏名と全く一致す
るけれども、姓を同一にする二人以上の候補者ある場合、なかんづく特に職業の記
載がなされておる場合、そしてその職業が同姓候補者中の唯一人の職業に適合する
場合の如き、公職選挙法六七条後段規定の趣旨たる、当該投票が何人に投票したか
の投票者の意思を推究する資料としては最重要の地位にあるものと私は考える。そ
れは同姓候補者が二人以上ある場合その名については往々記憶違いや或は記憶の混
こうする場合はあるけれども、職業についてのそれは殆どないというて然るべきこ
とは凡そ常識であり或は経験則であるといつても過言でなないと考える。そして成
年者による普通選挙制(憲法一五条三項)が採用され、殊に選挙権の行使は主権在
民制憲法下における主権行使の唯一の方法であり且つ投票の秘密は憲法一五条四項
の保障するところ、それに基く無記名投票制であつてみれば、公職選挙法六七条後
段の規定は極めて重要且つ適切な規定であるというべきであり、投票者の真意の追
及について欠くるところなく力むべきである。即ち原判決は、本件(11)の投票
はA久市に対するものか、A道徳に対するものか確認できず無効投票であると認定
判断したのは、公職選挙法六七条の解釈を誤つたか、ないしは審理不尽の違法があ
り、そして以上私の考えの結果は上告人の得票は鵜原Fよりも結局〇・三四票の多
数となること明らかであるから、上告人を当選人と判定すべきである。よつて原判
決を破棄し当裁判所で以上の如く自判すべきものとの意見である。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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