弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原判決中被告人等に関する部分を破棄する。
     被告人等は、いずれも無罪。
         理    由
 弁護人伊能幹一同小林直人の上告趣意第三点、第四点、弁護人田辺恒之同松浦登
志雄の被告人Aに関する上告趣意第二点、被告人Bに関する上告趣意第三点、被告
人Cに関する上告趣意第二点、弁護人樫田忠美の上告趣意第二点及び第四点につい
て。
 原判決は被告人Aの所為は昭和二一年勅令第三一一号(連合国占領軍の占領目的
に有害な行為に対する処罰等に関する勅令)第二条第三項、第四条第一項、昭和二
〇年一二月連合国軍最高司令官総司令部参謀副官発第三号日本政府に対する覚書(
国家神道、神社神道に対する政府の保証、支援、保全、監督及び弘布の廃止に関す
る覚書、以下これを神道指令という)1のh及び4に該当するものとして被告人A
を有罪として処断しているのである。ところが神道指令の4は「日本の政府、県及
び市町村の凡ての官公吏、属官、雇員並にあらゆる教師、教育職員、市民及び居住
者は本指令の一切の規定の字句並に精神を遵守することに対し個人的責任を負うべ
きものである」と規定しているのであるが、それは右に規定した者が本指令の一切
の規定を遵守する義務があることを総括的に規定したものであつて、「規定の精神
を遵守することに対し個人的責任を負うべきものである」というのは、行為が直接
本指令の規定に違反しない場合でも本指令の趣旨を類推してこれを処罰するという
意味ではない。本指令の1のhは「神道教義の弘布はその形式と手段の如何を問わ
ず全面的又は部分的に公共資金の支援を受ける一切の教育機関によつて為されるこ
とを禁止し即時これを停止する」と規定しているのであるから、神道の弘布が公共
資金の支援を受ける教育機関によつて為された場合に始めて同規定の違反になるこ
とは同規定の字句並に精神から疑のないところである。
 しかるに原判決が確定した被告人Aの所為は原判決の自認するごとく公共資金の
支援を受ける教育機関によつて神道の弘布が為された場合に該当しないのであるか
ら、被告人Aの所為は本指令1のhに該当しないし、また従つて同指令の4にも該
当しないものであるといわなければならない。
 次に原判決は被告人Bは神奈川県視学官、被告人Cは同県中地方事務所学務課長
在職中昭和二一年一一月一二日それぞれ右視学官又は学務課長たる公的資格で判示
D文化振興会主催の判示芸能作品展覧会の終了式に、右展覧会とE神社とに関連あ
ることに疑を有しながら来賓として出席した事実を確定し、かつ被告人Bについて
は、さらに右式場において「終戦後このような展覧会の催しは時機に適した結構な
ことである」との趣旨の祝辞を述べた事実を確定し、右各被告人の所為に対し昭和
二一年勅令第三一一号第二条第三項、第四条第一項、神道指令1のa及び4を適用
処断しているのである。
 ところが右指令1のaは「日本国、県及び市町村の行政機関又は公的資格におい
て行動する官公吏、属官並びに雇員による神道の保証、支援、保全監督並に弘布を
禁止し即時これを停止する」と規定しているのであるから、官公吏に同規定の違反
があるとするには官公吏が神道の支援その他所定の行為をするという認識があり、
且つ公的資格即ち公務の執行として神道の支援その他の行為をしたことを必要とす
ることは右規定の解釈上疑のないところである。
 しかるに原判決は、被告人等の認識については「案内された会場は同町の国民学
校ではなく公会堂と称せられ外観上E神社関係の建物と一般視せられるものである
ことを直ちに観取される状況にあつたのみならず会場に入つてから被告人Aが同神
社の宮司であることを知り且つ当日は同人の会長であるD文化振興会主催の展覧会
の最終日でその終了式が挙行されるものであることが了知せられたので同神社と展
覧会とに関連あることにつき疑を有しながら」と判示するのみであつて、もとより、
これだけの事情からしては、同神社と右展覧会との確たる関連、若しくは、被告人
Aの神道弘布の意図を認識し得べき筈はなく(原判決も被告人等が、被告人Aの意
図につき認識のあつたことは認定していない)他に、原判決は右展覧会が神道の弘
布、支援等に資するところあるべき事情関係について、何等、具体的に説示すると
ころはないのである。とすれば単に両者の間に何等かの関連あることに疑を抱きな
がら、右展覧会に出席し、若しくは判示のごとき祝辞を述べたというだけでは未だ
以て判示指令1のaに違反の行為ありとすることはできないのは勿論であつて、原
判決は、右両人の行為についても、指令1の及び4を適用処断しているのであるけ
れども、右被告人等の所為が指令1のaに該当しない以上、4にも該当するもので
ないことは既に、前段説明のとおりである。
 しからば、原判決が被告人三名に対し前示のように神道指令に違反したとして処
断したことは、右指令の解釈を誤り罪とならない所為を有罪とした違法があり、論
旨はこの点において理由があるから原判決は破棄を免れない。
 よつて、他の上告論旨に関する判断を省略し刑訴施行法二条、旧刑訴四四七条、
四四八条により原判決中被告人等に関する部分を破棄し被告人等をいずれも無罪と
する。
 右は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 茂見義勝関与
  昭和二六年七月二〇日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛