弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原判決主文第1項を次のとおり変更する。
1控訴人が平成8年10月15日にした宮城県情報公開条例に基づく宮()「
城県警察本部総務室の食糧費支出に関する一切の資料(平成7年度」の開)
示請求につき,被控訴人が平成12年5月15日にした処分のうち,原判決
別紙文書目録①(2)の非開示部分を取り消す。
2控訴人が平成12年3月31日にした宮城県情報公開条例に基づく宮()「
城県警察本部総務課職員の出張に関する一切の資料(平成6,7年度)及び
旅費受領代理人普通預金通帳(平成5,6,7年度」の開示請求につき,)
被控訴人が平成12年5月15日にした処分のうち,原判決別紙文書目録②
(1)及び同目録②(2)中の「行先情報」の非開示部分を取り消す。
(3)控訴人のその余の請求を棄却する。
2訴訟費用は,第1,2審を通じ,これを3分し,その2を控訴人の,その
余を被控訴人の各負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
(1)原判決を取り消す。
(2)控訴人が平成8年10月15日にした宮城県情報公開条例に基づく「宮城県警
()」,察本部総務室の食糧費支出に関する一切の資料平成7年度の開示請求につき
被控訴人が平成12年5月15日にした処分のうち,原判決別紙文書目録①の非開
示部分を取り消す。
(3)控訴人が平成12年3月31日にした宮城県情報公開条例に基づく「宮城県警
察本部総務課職員の出張に関する一切の資料(平成6,7年度)及び旅費受領代理
人普通預金通帳(平成5,6,7年度」の開示請求につき,被控訴人が平成12)
年5月15日にした処分のうち,原判決別紙文書目録②の非開示部分を取り消す。
(4)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2被控訴人
(1)本件控訴を棄却する。
(2)控訴費用は控訴人の負担とする。
第2事案の概要
事案の概要は,当事者双方の当審における補足主張を付加するほか,原判決当該欄
,(,「」記載のとおりであるからこれを引用するただし原判決7頁17行目の別紙①
「」,「」「」。)。を別紙文書目録①と同11頁11行目の警視を警部といずれも改める
1控訴人の当審における補足主張
(1)職務の級情報の県条例8条2号該当性
職務の級情報をめぐる争点は,既に氏名を開示した警察職員の職務の級を開示し
た場合,当該職員の給与額及び所得の状況がどの程度まで推測されるのか,その結
果プライバシー侵害発生のおそれがあるのかという問題である。
ところで,給与額は,同一の職務の級であっても,号俸によって,10数万円か
ら20数万円の幅がある。したがって,推測される内容は,公務員の昇級の状況に
ついて一定の知識を有する者が,当該職員の職務の級が分からないまま,当該職員
の地位,階級,年齢,勤続年数等に基づいて宮城県の「職員に関する給与条例」給
与別表第二から推測できる内容と大差がない。そうすると,職務の級を開示するこ
とが,開示しない場合と比較して,著しく当該職員のプライバシーを侵害すること
にはならない。
よって,既に氏名を開示した警察職員の職務の級を開示した場合,当該職員の給
与額がある程度推測されるとしても,職務の級情報が2号本文の「特定の個人を識
別することはできないが,公開することにより,なお個人の権利利益が害されるお
それがあるもの」には該当しないというべきである。
(2)職員情報の県条例8条4号該当性
「,」職員情報の開示と総務室勤務の警察職員が攻撃や懐柔の対象とされるおそれ
との間に因果関係を認めることはできない。
,,すなわち本件で問題となっている職員情報の具体的内容によって判明するのは
「当該職員の氏名」と「当該職員が県警本部総務室に配属されているということ」
のみである。そこで「当該職員の氏名」と「当該職員が県警本部総務室に配属さ,
れているということ」によって「総務室勤務の警察職員が,攻撃や懐柔の対象と,
されるおそれ」が発生したり,増大するであろうか。
まず,総務室勤務の警察職員は犯罪捜査に直接関係ない者ばかりであるから,職
員情報を開示したからといって,それらの職員が攻撃や懐柔の対象とされるおそれ
が生ずるとは到底考えられない。したがって「暴力団事件の内偵や公安関係の捜,
査及び情報収集を行っている警察官の特定が容易になり,暴力団や過激派組織によ
る攻撃及び懐柔のおそれが増すと認められる」余地はないはずである。
また,当該職員の顔と名前が一致しなければ,当該職員を襲撃したり,面談の上
懐柔することは不可能である。
次に,氏名が判明すれば,電話帳を利用して,当該職員の自宅を調査することも
考えられるが,その場合「攻撃や懐柔の対象とされるおそれ」がある警察職員が電
話帳に自宅の電話番号を掲載することは考えられないので,このような調査方法は
事実上不可能である。地図検索システムにより,氏名から自宅を調査することは可
能かも知れないが,そもそも襲撃や懐柔のおそれがあるなら地図検索システムに氏
名を掲載しないであろう。地図検索システムに警察官の氏名掲載を許容しているこ
と自体が,襲撃や懐柔のおそれがないことの証左である。
また「執念深い犯罪者」の現実的にほぼあり得ないような行動を想定して,4,
号該当性を論じることは,開示の範囲を不当に拡大することになり,原則公開の条
例の趣旨に反することが明らかである。
(3)部隊給食に係わる金額情報の県条例8条4号該当性
本件部隊給食に係わる金額情報は,ハイジャック事件に関する1件のみであり,
その開示によって判明するのは,ハイジャック事件発生後に編成された後方支援部
隊の部隊数と人員数である。
ハイジャック事件発生後に編成された後方支援部隊の部隊数と人員数の如何によ
って,ハイジャックしようとする者が計画内容を変更することは考えられず,本件
部隊給食に係わる金額情報を開示することによって,当該食数や単価から,本件事
案に即応した実働部隊員数,つまり警察力が明らかになるとの被控訴人の主張は抽
象的に過ぎる。
(4)部隊編成情報の県条例8条4号該当性
本件の部隊名が開示されたからといって「過激派等の組織が犯罪行動を起こす,
場合に,警察の対応を予測して計画を立てることを容易にする」というようなこと
はあり得ない。
(5)文書集配業務情報の県条例8条4号該当性
時期情報は,月日のみであり,時刻までの記載はないし,行先情報は,基本的に
は,各警察署であることが明らかであるから,それらのいずれかの開示によって,
過激派等の組織が,文書集配業務を妨害し,装備品等を奪取することが容易になる
ことはない。仮に,両方を開示した場合には4号該当性があるとしても,そのいず
れか一方(とりわけ行先情報)のみを開示する場合には,4号該当性はないという
べきである。
(6)預金口座情報の県条例8条4号該当性
本件預金口座情報は口座番号のみであるが,口座番号のみが開示されても,暗証
番号まで推定することは困難であり,同口座についてキャッシュカードが作成され
ていることは考えにくいし,仮に作成されているとしても容易に推測しうる暗証番
号を設定しているはずがないから,不正引き出しが行われることは考えにくい。
また,口座番号の開示によって,警察業務を妨害しようとする個人や組織が,預
金残高,入出金状況の割り出し等を行う可能性は否定できないが,口座番号が開示
されたとしても,旅費受領という口座の目的からして,預金残高,入出金状況の割
り出し等と警察業務の妨害との因果関係が不明であり,警察業務を妨害しようとす
る個人や組織が,預金残高,入出金状況の割り出し等を行うことは考えにくい。
さらに,支給された旅費の金額についての詳細は公開されているのであるから,
そもそも口座番号を手掛かりとして,預金残高,入出金状況の割り出し等を行う必
要などないはずである。
2被控訴人の当審における補足主張
(1)職務の級情報の県条例8条2号該当性
本件職務の級情報は,個人識別型情報に該当する。個人識別型は,それ自体は固
有情報でなくとも,他の情報と組み合わせることにより固有情報に迫るきっかけと
なるような,いわゆる「外延情報」をも非公開とすることで,プライバシー保護を
徹底する趣旨である。本件職務の級情報は,もともと公務員の個人に関する私的情
報というべきであり,2号本文に該当する。
(2)職員情報の県条例8条4号該当性
警察業務は,性格上,相手からの反発や反感を招きやすいものであり,総務室各
課勤務の警察職員も,刑事部や警備部等の捜査部門を担当して総務室に異動となる
から,警察組織の一員とみなされ,職員情報が開示されることにより,これまでよ
りも攻撃や嫌がらせ,懐柔を受ける危険性が増大する。
そして,氏名が判明すれば,氏名から職員の自宅を調査し,職員の家族や車両ま
で把握することができ,当初は,顔と名前が一致しなくとも,調査の過程で顔を知
り得るのであって,攻撃や懐柔をし易くなることは明らかである。また,電話帳か
ら自宅を調査することは不可能であるとしても,氏名等から住所等を割り出す地図
検索システムが市販されている現状において,氏名が分かれば他に把握する手段が
存在するので同様である。
総務室勤務の警察職員は,概ね3,4年の周期で全職員が他部署又は警察署にほ
ぼまんべんなく転出して入れ替わるが,転出先において,贈収賄事件や暴力団関係
事件等の捜査や情報収集の過程において,個々の職務の内容や目的あるいは状況に
応じて,氏名を含む身分を明らかにしないことも必要とされるときがある。したが
って,総務室勤務の警察職員の氏名が判明すれば,将来,そのような氏名を含む身
分を明らかにしない任務,犯罪の予防又は捜査に支障が生ずることになる。
(3)文書集配業務情報の県条例8条4号該当性
目的地欄には,警察署等「官公署名」ほか施設名が記載されることはなく,全て
「職員等の旅費支給規則」に定められた「起点名」が記載される。起点名は「宮城
県旅行路程図」により特定され,例えば「仙台「α「β」の如きである。」」
このような目的地(行先)情報と時期情報が開示されれば,過激派等の組織が,
文書集配業務を妨害し,装備品等を奪取することが容易となる。
第3当裁判所の判断
当裁判所は,本件請求のうち,本件処分(食糧費関係)及び同(旅費関係)のうち
原判決別紙文書目録①(2)及び同目録②(1)の職員情報並びに同目録②(2)の
行先情報の各非開示部分は取り消すべきであるが,その余の請求は棄却すべきものと
判断する。
,,,その理由は次のとおり付加訂正するほか原判決当該欄説示のとおりであるから
これを引用する。
1原判決16頁24行目を「私的情報である」と改め,同17頁6行目の次に行を。
改めて以下を加える。
「控訴人は,職務の級が開示されても号俸によって給料に幅があるので,当該職員
のプライバシーを著しく害することはないとして2号本文に該当しない旨主張す
る。しかしながら,当該職員の経歴及び経験年数等に職務の級の情報が付加される
ことにより,当該職員の給与額が推測できることになり,その程度は職務の級が分
からない場合に当該職員の経歴及び経験年数等に基づいて宮城県の『職員に関する
給与条例』給与別表第二から推測する場合と比べ,一段と当該職員の給与額の推測
が絞り込まれ,個人の財産,収入に関する私的情報が知られることになることは明
らかである。
したがって,当該職員の職務の級の情報は,2号本文に該当するというべきであ
る」。
「」「,2同18頁16行目の頻繁なから同18行目末尾までを頻繁な人事交流があり
総務室への転入者は,捜査部門,警備部門等で勤務したことがあり,概ね3,4年の
周期で全職員が他部署又は警察署にほぼまんべんなく転出して入れ替わる」と改め。
る。
3同20頁1行目の次に行を改めて以下を加える。
「警察業務のうちで,贈収賄事件や暴力団関係事件等の捜査や情報収集の過程にお
いて,個々の職務の内容や目的あるいは状況に応じて,氏名を含む身分を明らかに
しないことも必要とされるときがある」を加える。。
4同20頁9行目の次に行を改めて以下を加える。
「エ本件旅費関係文書及び本件食糧費関係文書の開示の意義
本件旅費関係文書(乙6,サンプル⑦《赴任旅費》に職名として秘書係と記載さ
れているほかは,いずれも所属は『総務課』と記載されている)において,旅行。
者(旅費受給者)の氏名を明らかにすることは,それが実際の旅費の支払を裏付け
る意味で重要である。また,本件食糧費関係文書(乙5,所属は総務課,広報課管
理係あるいは会計課管理係等と記載されている)の,施行伺の起案者や決裁者,。
請求書の検収者,施行確認書の施行確認者,時間外勤務夜食関係文書の受給者,警
察音楽隊演奏会関係文書等の出席者についても,その氏名を明らかにすることは,
当該食糧費が必要とされた目的,時期,費用,規模等を担保し,その必要性を説明
する上で意味がある。
(甲23,乙5,6」)
5同20頁10行目冒頭から同21頁21行目末尾までを次のとおり改める。
「2)県条例の目的及び公開原則の例外解釈の規準(
ア県条例1条は,行政文書の開示によって,県民に対し,県政運営の透明性の
一層の向上を図ることによって,県の有する諸活動を説明する責務が全うされ
るとともに,県民の監視と参加の充実を推進し,県民の県政に対する理解と信
頼を確保することが目的であると定める(乙1。)
上記認定事実のとおり,本件旅費関係文書において,旅行者(旅費受給者)
の氏名を明らかにすることは,当該文書が実際の旅費の支払を裏付ける意味で
重要である。また,本件食糧費関係文書の,施行伺の起案者や決裁者,請求書
の検収者,施行確認書の施行確認者,時間外勤務夜食関係文書の受給者,警察
音楽隊演奏会関係文書等の出席者について,その氏名を明らかにすることは,
当該食糧費が必要とされた目的,時期,費用,規模等を担保し,その必要性を
説明する上で意味がある。
そうすると,これらの関係文書における職員情報は,警察職員の旅費や食糧
費の支出について,県民に透明性をもって説明することによって,県民の監視
と参加を推進し,県民の理解と信頼を確保する上で有意義な情報というべきで
あるから,県条例1条の掲げる目的に沿う必要な情報ということができる。
イところで,4号の『公開することにより,犯罪の予防又は捜査,人の生命,
身体又は財産の保護その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれの
ある情報』とは,宮城県が作成した情報公開事務の手引(乙1)によれば,そ
の趣旨は,県は,県民の安全を確保する基本的な責務を有するため,公開する
ことによって,犯罪行為の発生予防や捜査活動に支障をきたすおそれのある情
報,また,人の生命,身体又は財産を犯罪の危害等から保護するのに支障が生
ずるおそれのある情報,さらに,犯罪の捜査等に関係する情報や犯罪目標とな
ることが予想される施設の所在や警備の状況等に関する情報を公開しないとし
たものと認められる。
この点,県条例8条は同1条を受けて行政文書の原則開示を定め,4号等を
例外としたが,上記手引によれば,4号等の例外は『原則公開の例外を規定し
たもので,合理的な理由のある必要最小限度の情報を,可能な限り限定的かつ
明確に類型化したものである』というのである。。
このような例外の解釈規準からすると,4号の『おそれ』は,例外の範囲が
合理的かつ必要最小限度を超えることがないように,4号挙示の上記の支障が
生ずる危険がある程度具体的に推し量れる場合をいうと解すべきである。
(3)以上の認定事実及び4号の『おそれ』の解釈に基づいて,職員情報の4号該
当性を判断する。
ア宮城県警察全体で,過去約20年間にわたり,職務上氏名を公表して,強制
的,規制的業務に当たっている警察官を含めた警察職員に対する攻撃や嫌がら
せの事例(アンケート調査の結果約250件程度確認された。証人A)によれ
ば,警察職員に対する攻撃や嫌がらせの事例(乙16)というのは,警察職員
が直接担当した相手方との関係において,威嚇や嫌がらせの目的で氏名を尋ね
られたり,脅迫的な言動を受けたというものであり,総務室勤務の警察職員が
攻撃や嫌がらせの対象となった事例は殆どなく,警察職員の個人名で勤務先に
強迫内容の葉書を送付してきた程度であって(乙17,総務室勤務の警察職)
員の氏名が情報公開された場合に,当該警察職員個人宛に,警察に敵対感情を
持つ者から何らかの嫌がらせの電話や葉書等の送付があったとしても,そのこ
とをもって,犯罪の予防又は捜査,当該警察職員やその家族の生命,身体又は
財産の保護その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがあるとは
いい難い(乙17の場合も,これによって当該警察職員が漠然とした危倶感や
緊張感を持つ以上に畏怖し,個人生活や職務上何らかの支障が生じたというこ
とは認め難い。そしてその程度の漠然とした危倶感や緊張感は,職務上覚悟さ
れているものであり,職務上の影響は認め難いというべきである。。)
イまた,被控訴人は,総務室勤務の警察職員の氏名が判明すれば,氏名からそ
の自宅を調査し,その家族や車両まで把握することができ,調査の過程で顔を
知り得るのであり,氏名等から住所等を割り出す地図検索システムが市販され
ている現状において,電話帳から自宅を調査不可能であったとしても,氏名が
分かれば地図検索システムなど他に把握する手段が存在するので同様であると
主張する。
これは,氏名が判明すれば,被控訴人主張のような調査が行われて4号挙示
の支障が生ずるおそれがあるとの主張であるが,氏名を開示して捜査部門や警
備部門で仕事をしている警察職員ですら,電話帳に掲載しない措置を講じある
いは地図検索システムに対応する措置を講じているとの主張立証はないし,総
務室勤務の氏名が開示されている警部(同相当職を含む)以上の警察職員に。
おいても,同様に電話帳に掲載しないなどの措置を講じているとの主張立証は
ない。
総務室勤務の氏名が開示されていない警察職員の氏名が判明したからといっ
て,その結果その自宅等が調査された上,4号挙示の支障が生ずるおそれがあ
るとまでは認め難いというほかない。
ウまた,総務室各課は機密情報も扱うため,総務室勤務の警察職員は懐柔を受
けやすく,情報公開による職員情報の開示によって,当該警察職員に対する懐
柔の危険が増すと考えられないわけではないけれども,本件旅費関係文書及び
本件食糧費関係文書における警察職員の配属の記載は,ほとんど課単位に止ま
っているから,開示文書記載の配属だけからは,当該警察職員が特定の機密情
報に近い職務を担当しているか否かは分からないし,総務室勤務の警察職員が
何らかの懐柔を受けたとしても,機密に近い部署に配属される警察職員ほど一
般的に職業倫理の高い職員を配属しているはずであるから,懐柔の結果4号挙
示の支障が生ずるおそれも,やはり認め難いといわざるを得ない。
エところで,被控訴人によれば,総務室勤務の警察職員は,概ね3,4年の周
期で全職員が他部署又は警察署にほぼまんべんなく転出して入れ替わり,その
中には転出先において,贈収賄事件や暴力団関係事件等の捜査や情報収集の職
務を担当する者もおり,当該警察職員は,その個々の職務の内容や目的あるい
は状況に応じて,氏名を含む身分を明らかにしないことも必要とされるときが
あるというのである。
しかし,抽象的には,警察業務に関する情報が犯罪の実行や仕返しを目論む
組織や個人にとって貴重な情報となることがあるといえるとしても,過去の事
例においても,そのような氏名を含む身分を明らかにしない職務に就いている
際やその後に4号挙示の支障が生じるおそれが顕在化してくる可能性があると
いうに止まるのであって,上記のような転出状況の総務室勤務の警察職員の氏
名が開示されたからといって,将来氏名を含む身分を明らかにしない職務の遂
行の妨げになるおそれがあるとまではいまだ認め難い。まして総務室から転出
者中,氏名を含む身分を明らかにしない職務に就く者は極一部であると認めら
れる(弁論の全趣旨。)
オまた,執念深い犯罪者が過去に自分を担当した警察官を上記職員情報の開示
によって偶々知ることはあり得ることであるが,それは宮城県警察の規模及び
広域かつ頻繁な異動からして極めて希なことであろう。また,そのような執念
深い犯罪者であれば,当該警察官の氏名や顔,過去の勤務先などを覚えている
であろうから,情報公開条例による開示文書から総務室に勤務しているか,な
いし勤務していたかを調べるというような,確率の極めて低い迂遠な方法で探
し出すより,当該警察官が過去に自分を担当したときの配属先を手掛かりに異
動先などを執拗に調査するのではないかと考えられる。
そうすると,上記職員情報を開示すれば,執念深い犯罪者が過去に自分を担
当した警察官を知り,仕返しや攻撃をすることによって,4号挙示の支障が生
ずるおそれがあるとまでは認められない。
(4)以上のとおり,本件旅費関係文書においてはそれが実際の旅費の支払を裏付
ける意味で重要で,本件食糧費関係文書においては当該食糧費が必要とされた目
的,時期,費用,規模等を担保し,その必要性を説明する上で意味があり,それ
らの開示は県条例1条の目的に叶うというべきところ,総務室勤務の警察職員の
氏名が,それらの文書の開示によって知られることによって,4号挙示の支障が
生じるおそれがあるとまでは認められないから,本件旅費関係文書及び本件食糧
費関係文書における職員情報は4号に該当しないというべきである。
したがって,本件処分(旅費関係)及び同(食糧費関係)のうち,職員情報を
非開示とする部分を取り消すこととする。
6同22頁25行目の次に行を改めて以下を加える。
「控訴人の,当審における,部隊給食に係わる金額情報及び部隊編成情報について
の主張は,何れも採用できない。部隊給食に係わる金額情報及び部隊編成情報に関
する文書(乙18の1ないし3)によれば,当該具体的な事件発生に際しての警備
部隊出動に対する給食経費が総額としては開示されているのであるから,県条例第
1条の情報公開の目的はほぼ達せられているということができる」。
7同23頁16行目の「原告は」から同24行目末尾までを「ところで,乙20及,
び弁論の全趣旨によれば,文書集配業務情報のうち,行先情報(目的地)は,宮城県
「」「」「」,の職員等の旅費支給規則別表第3宮城県旅行路程図に定められた起点名
例えば「仙台「α「β」のように記載されていると解されるところ,旅行期間が」」
開示されていなければ,目的地が開示されただけでは路程の予測が付くだけで,文書
。,集配や装備品等の陸送がいつなされるのかが明らかになるわけではないしたがって
目的地が開示されても,旅行期間が開示されていなければ,文書集配業務や装備品等
の陸送が妨害される危険が生ずるとは解されない。そして,県条例1条の目的からす
ると,旅行日数が既に開示されている(乙20)旅行期間情報よりも行先情報の方が
公開の重要性は高いと認められる」と,同25行目の「文書集配業務」から次行目。
「,,末尾までを文書集配業務情報のうち旅行期間は4号に該当するものと解されるが
行先情報を開示しても4号の「おそれ」は認め難いから,本件処分(旅費関係)のう
ち行先情報を非開示とする部分を取り消すこととする」といずれも改める。。
8同24頁15行目の次に行を改めて以下を加える。
「控訴人は,預金口座情報について,不正引き出しは考えにくいと主張するが,上記
説示のとおり,技術的に可能であると認められるから採用できない。また,預金残
高,入出金状況の割り出し等が行われることは,その必要性に乏しく考えにくいと
も主張するが,妨害等目的を持って直截に預金口座番号から預金口座情報に侵入す
るおそれはやはり否定できないものと考えられる。
他方,証拠(乙7,15,21)によれば,預金口座情報のうちの預金口座番号
及びお客様番号は,県条例第1条の目的に鑑みて,それ自体は公開の重要性が高く
ないと認められる」。
9よって,本件請求は,主文第1項(1(2)の範囲で理由があるから,その限度)
で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,これと結論を異にする原判決
をその範囲で変更し,主文のとおり判決する。
仙台高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官小野貞夫
裁判官阿部則之
裁判官高橋光雄

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